説明

無線通信装置、電力送信装置およびICカード装置

【課題】受信した電力を有効利用して、安定した高速通信を行うことができる。
【解決手段】無線通信装置は、受信した電力を利用して無線通信を行う電力受信無線通信部と、電力受信無線通信部で受信した電力の一部を蓄電する蓄電部と、蓄電部に蓄電された電力量が第1基準量を超えた場合に、前記蓄電部に蓄電された電力の一部を利用して、電力受信無線通信部よりも高速かつ高効率で無線通信を行う第1無線通信部と、を備える。電力受信無線通信部は、電力を受信して、受信した電力の一部を蓄電部に供給する電力受信部と、電力受信部で受信された電力の一部を利用して、第1無線通信部よりも低速かつ低効率で無線通信を行う第2無線通信部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受信した電力を利用して無線通信を行う無線通信装置、電力送信装置およびICカード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Felica(登録商標)等のNFC(Near Field Communication:近距離無線通信)では、コイルによる電磁誘導を用いた通信を行うものであり、近接無線または非接触無線と呼ばれる場合もある。以下これらを非接触無線と呼ぶこととする。非接触無線では、電磁誘導により電力が供給され、その電力を利用して無線通信を行うことが1つの特徴である。そのため、カード型装置などの装置内部からの電源供給がない装置にも適用できるという利点がある一方で、非接触無線では通信速度が遅く、大容量データを転送するのに長い時間を要するという問題がある。
【0003】
この問題を解決する手法の1つとして、非接触無線と高速な無線通信を組み合わせる技術が提案されている。この技術は、非接触無線を用いて接続を行い、その後の通信を高速な無線通信を用いて行うことで、通信速度の向上を図るものである。しかしながら、高速な無線通信は一般に消費電力が大きいため、非接触無線で供給される電力では、高速な無線通信を行うのに電力不足が生じ、安定した無線通信を行えないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-218845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、受信した電力を有効利用して、安定した高速通信を行うことができる無線通信装置、電力送信装置およびICカード装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態では、受信した電力を利用して無線通信を行う電力受信無線通信部と、
前記電力受信無線通信部で受信した電力の一部を蓄電する蓄電部と、
前記蓄電部に蓄電された電力量が第1基準量を超えた場合に、前記蓄電部に蓄電された電力の一部を利用して、前記電力受信無線通信部よりも高速かつ高効率で無線通信を行う第1無線通信部と、を備え、
前記電力受信無線通信部は、
電力を受信して、受信した電力の一部を前記蓄電部に供給する電力受信部と、
前記電力受信部で受信された電力の一部を利用して、前記第1無線通信部よりも低速かつ低効率で無線通信を行う第2無線通信部と、を有することを特徴とする無線通信装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る無線通信装置1の概略構成を示すブロック図。
【図2】図1の無線通信装置1の動作タイミング図。
【図3】図2よりも長い時間間隔での図1の無線通信装置1の動作タイミング図。
【図4】第2の実施形態に係る無線通信装置1aの概略構成を示すブロック図。
【図5】第3の実施形態に係る無線通信装置1bの概略構成を示すブロック図。
【図6】第4の実施形態に係る無線通信装置1の動作タイミング図。
【図7】図2よりも長い時間間隔での第4の実施形態に係る無線通信装置1の動作タイミング図。
【図8】第2トリガー信号を設けた場合の動作タイミング図。
【図9】図8よりも長い時間間隔での第4の実施形態に係る無線通信装置1の動作タイミング図。
【図10】第5の実施形態に係る無線通信装置1cの概略構成を示すブロック図。
【図11】電力送信装置20の概略構成を示すブロック図。
【図12】図11の電力送信装置20をより具体化したブロック図。
【図13】図12の変形例を示すブロック図。
【図14】第1〜第6の実施形態における無線通信装置1を内蔵するICカード30の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る無線通信装置1の概略構成を示すブロック図である。図1の無線通信装置1は、受信した電力を利用して無線通信を行う電力受信無線通信部2と、電力受信無線通信部2で受信した電力の一部を蓄電する蓄電部3と、蓄電部3に蓄電された電力量が第1基準量を超えた場合に蓄電部3に蓄電された電力の一部を利用して電力受信無線通信部2よりも高速かつ高効率で無線通信を行う第1無線通信部4と、蓄電部3および第1無線通信部4を制御する制御部5と、電力受信無線通信部2に接続される第1コイル6と、第1無線通信部4に接続される第1アンテナ7とを備えている。第1無線通信部4は、電力受信無線通信部2よりも高速かつ高効率で無線通信可能であればよく、電力受信無線通信部2よりも低速又は低効率の無線通信を行うことができても良い。
【0010】
高速とは、データレートが大きいことを意味し、あるサイズのデータを送信するのに要する時間が短いことを意味する。高速とは、一般的には、bps(Bit Per Sec:ビットパーセック)という単位の値が大きいことである。高効率とは、通信に関わる消費電力の効率が高いことを意味し、あるサイズのデータを送信するのに要する消費電力量が小さいことを意味する。一般的には、高効率とは、J/bit(Joule per bit: ジュールパービット)という単位の値が小さいことである。
【0011】
電力受信無線通信部2は、電力受信部8と第2無線通信部9を有する。電力受信部8は、第1コイル6にて電磁誘導により受信した電力の一部を蓄電部3に供給する。第2無線通信部9は、電力受信部8で受信された電力の一部を利用して、第1無線通信部4よりも低速かつ低効率で無線通信を行う。
【0012】
第1無線通信部4が行う高速かつ高効率の無線通信は、ミリ波帯域の無線通信、TransferJet(登録商標)、無線LANおよびBluetooth(登録商標)などであり、具体的な無線方式は問わない。また、第2無線通信部9が行う低速かつ低効率の無線通信は、Felica等のNFCであり、第1無線通信部4よりも低速かつ低効率の無線通信を行う無線方式であれば、具体的な方式は問わない。
【0013】
図2は図1の無線通信装置1の動作タイミング図である。図2の横軸は時間軸を表し、縦軸は無線通信装置1内で動作する各部の名称を示している。図示のように、時刻t1のときに、電力受信部8は電力の受信を開始し、それに合わせて、蓄電部3は受信電力の蓄電を開始する。時刻t2になると、蓄電部3に蓄電された電力量が第1基準量を超える。従って、第1無線通信部4は蓄電部3に蓄電された電力を利用して、高速かつ高効率の無線通信を開始する。
【0014】
制御部5は、蓄電部3に蓄電された電力量を継続してモニターしており、いったん第1無線通信部4が無線通信を開始しても、蓄電部3に蓄電された電力量が第2基準量以下になると、第1無線通信部4の無線通信を中断させ、その後に、再度電力量が第1基準量を超えたときに、第1無線通信部4の無線通信を再開させる。したがって、第1無線通信部4は、間歇的に無線通信を行うことになる。
【0015】
図3は図2よりも長い時間間隔での図1の無線通信装置1の動作タイミング図である。図示のように、第1無線通信部4は、蓄電部3で蓄電された電力量が第1基準量を超えている期間(t2〜t3、t4〜t5、t6〜t7)のみ、不図示の電力送信装置と無線通信を行う。これらの期間では、蓄電部3は放電処理を行い、これらの期間以外では、蓄電部3は電力受信部8で受信された電力を蓄電する充電処理を行う。放電中も継続して、電力受信部8で電力を受信し、また蓄電部3にて並行して蓄電を行ってもよい。このようにすると、より長い時間通信を継続できるという利点が得られる。
【0016】
このように、第1の実施形態では、高速かつ高効率で無線通信を行う第1無線通信部4と、第1無線通信部4よりも低速かつ低効率で無線通信を行う第2無線通信部9と、第1コイル6にて電磁誘導で受信した電力を受信する電力受信部8と、受信した電力の一部を蓄電する蓄電部3とを備えて、蓄電部3に蓄電された電力量が第1基準量を超えた場合に限って、第1無線通信部4での無線通信を行うため、電力不足で第1無線通信部4の無線通信が不安定になるおそれはない。例えば、大容量のデータを送信する必要がある場合には、第1無線通信部4は間歇的に動作して、複数回に分けてデータ送信を行うため、大容量のデータ送信も支障なく行うことができる。
【0017】
すなわち、第1の実施形態では、高速かつ高効率で無線通信を行う能力を持つ第1無線通信部4に対して、十分な電力を供給できるときだけ、第1無線通信装置4を駆動するため、第1無線通信装置4の潜在能力を十分に生かして高速かつ高効率の無線通信を行うことができる。
【0018】
また、第1の実施形態は第1無線通信部4よりも低速かつ低効率の無線通信を行う第2無線通信部9も備えており、この第2無線通信部9では、電力受信部8で受信した電力を利用して継続して無線通信を行うため、データ量の少ない低速の無線通信を継続的に行うことができ、第1無線通信部4の無線通信が中断されている間も、第2無線通信部9を介した無線通信を継続的に行うことができる。
【0019】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態のより具体的な第1例である。
【0020】
図4は第2の実施形態に係る無線通信装置1aの概略構成を示すブロック図である。図4の無線通信装置1aは、図1と共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0021】
図4の無線通信装置1aは、電力受信無線通信部2内の電力受信部8に第1コイル6が接続されている点と、電力受信部8と第2無線通信部9が双方向に信号の送受を行う点とで、図1と異なっている。
【0022】
図4の電力受信部8は、不図示の電力送信装置から送信されたRF信号を、第1コイル6を介して受信する。また、図4の第2無線通信部9は、この第1コイル6を利用して、電力送信装置にRF信号を送信する。より詳細には、第2無線通信部9は、第1コイル6で受信されたRF信号の定包絡信号の振幅を変調して新たなRF信号を生成して、第1コイル6を介して電力送信装置に送信する。
【0023】
電力受信部8と第2無線通信部9は、第1コイル6を用いた電磁誘導で電力送信装置と無線通信を行うため、図4の無線通信装置1aと電力送信装置は近接した距離に置かれた場合のみ無線通信が可能となる。したがって、無線通信装置1aと電力送信装置との無線通信は、例えばNFCのような電磁誘導を利用した通信を行うことを想定している。
【0024】
このように、第2の実施形態は、電力受信無線通信部2内の電力受信部8と第2無線通信部9がいずれも、第1コイル6を用いた電磁誘導により、電力送信装置と無線通信を行う。これにより、電力受信部8と第2無線通信部9が別個にアンテナやコイルを備える必要がなくなり、無線通信装置1aの内部構成を簡略化でき、小型化が図れる。
【0025】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態のより具体的な第2例である。
【0026】
図5は第3の実施形態に係る無線通信装置1bの概略構成を示すブロック図である。図5の無線通信装置1bは、図1と共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0027】
図5の無線通信装置1bは、電力受信無線通信部2内の電力受信部8に第1コイル6が接続される点では図4と共通するが、第2無線通信部9に第2アンテナ10が接続される点で図4とは異なる。
【0028】
第2無線通信部9は、電力受信部8が第1コイル6による電磁誘導で受信した電力の一部を利用して、第2アンテナ10を介して不図示の電力送信装置にRF信号を送信するとともに、電力送信装置から送信されたRF信号を第2アンテナ10を介して受信する。
【0029】
このように、第3の実施形態の第2無線通信部9は、第1コイル6とは別個の第2アンテナ10を介して、電力送信装置と無線通信を行うため、電磁誘導が生じる距離よりも離れた距離に電力送信装置が存在する場合でも、蓄電部3に電力が蓄電されている限り、安定した無線通信を行うことができる。
【0030】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、蓄電部3に蓄電された電力量が第1基準量を超えたことを電力送信装置と第1無線通信部4に通知するものである。
【0031】
第4の実施形態に係る無線通信装置1の内部構成は、上述した図1、図4および図5のいずれでもよい。無線通信装置1内の制御部5は、蓄電部3に蓄電された電力量を継続してモニターし、電力量が第1基準量を超えると、第1トリガー信号を生成して、第2無線通信部9に供給する。第2無線通信部9は、第1トリガー信号を含むRF信号を不図示の電力送信装置と第1無線通信部4に送信する。このとき、第2無線通信部9は、図4の構成では第1コイル6を介して、図5の構成では第2アンテナ10を介して、上述した第1トリガー信号を含むRF信号を電力送信装置に送信する。
【0032】
この第1トリガー信号を受信した電力送信装置は、第1無線通信部4との無線通信が行える状態になったことを把握する。同様に、制御部5からの第1トリガー信号を受信した第1無線通信部4は、電力送信装置との無線通信を行うのに十分な電力が蓄電部3に蓄電されたことを把握する。そして、電力送信装置と第1無線通信部4は、お互いに無線通信を開始する。
【0033】
図6は第4の実施形態に係る無線通信装置1の動作タイミング図である。時刻t1で電力受信部8は電力送信装置からの電力の受信を開始して、受信した電力を蓄電部3に蓄電し始める。時刻t2になると、制御部5は、蓄電部3に蓄電された電力量が第1基準量を超えたことを検出して、第1トリガー信号を生成する。この第1トリガー信号は第2無線通信部9を介して電力送信装置に送信されるとともに、第1無線通信部4にも送信される。そして、第1無線通信部4は、電力送信装置との間で無線通信を開始する。
【0034】
図7は図2よりも長い時間間隔での第4の実施形態に係る無線通信装置1の動作タイミング図である。図7に示すように、第1無線通信部4と電力送信装置は、第1トリガー信号を受信してから所定の期間だけ無線通信を行う。この所定の期間とは、蓄電部3に蓄電された電力量が第2基準量以下にならない期間である。これにより、第1無線通信部4と電力送信装置は、第1トリガー信号を受信した場合のみ、間歇的に無線通信を行うことになる。したがって、大容量のデータを送受する必要がある場合でも、間歇的に第1無線通信部4と電力送信装置で無線通信を行うことで、比較的短い時間で、大容量データの送受が可能となる。
【0035】
ところで、第1トリガー信号だけだと、第1無線通信部4と電力送信装置は、蓄電部3に蓄電された電力量が第2基準量以下になったか否かを正しく判断できない。そこで、制御部5は、蓄電部3に蓄電された電力量が第2基準量以下になった場合に第2トリガー信号を生成して、この第2トリガー信号を第2無線通信部9を介して電力送信装置に送信するとともに、第1無線通信部4にも送信してもよい。
【0036】
図8は第2トリガー信号を設けた場合の動作タイミング図である。図8に示すように、制御部5は、時刻t1で、蓄電部3に蓄電された電力量が第1基準量を超えたことを検知して第1トリガー信号を生成する。この第1トリガー信号を受信した第1無線通信部4と電力送信装置は無線通信を開始し、その後、時刻t2で、制御部5は、蓄電部3に蓄電された電力量が第2基準量以下になったことを検知して第2トリガー信号を生成する。この第2トリガー信号を受信した第1無線通信部4と電力送信装置は無線通信を停止する。
【0037】
図9は図8よりも長い時間間隔での第4の実施形態に係る無線通信装置1の動作タイミング図である。図9に示すように、第1無線通信部4と電力送信装置は、第1トリガー信号を受信してから次に第2トリガー信号を受信するまでの間のみ、無線通信を行う。これにより、第1無線通信部4は、蓄電部3に蓄電された電力量が第1基準量を超えている場合のみ高速かつ高効率の無線通信を行うことになり、安定した高速通信を行うことができる。
【0038】
このように、第4の実施形態では、蓄電部3に蓄電された電力量が第1基準量を超えた場合に第1トリガー信号を生成して、第1無線通信部4と電力送信装置に送信するようにしたため、第1無線通信部4と電力送信装置は、どのタイミングで無線通信を開始すればよいかを的確に把握でき、無駄な消費電力を費やさなくて済む。これに加えて、蓄電部3に蓄電された電力量が第2基準量以下になった場合に第2トリガー信号を生成して、第1無線通信部4と電力送信装置に送信するようにすれば、いったん開始した無線通信の停止時期を的確に把握でき、蓄電部3に蓄電された電力が低くなっても第1無線通信部4で無線通信を継続するおそれがなくなり、無線通信の安定度を向上できる。
【0039】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、第1無線通信部4が電力送信装置との間で無線通信を行うのに先立って行う接続処理に必要な情報を予め保持しておくものである。
【0040】
図10は第5の実施形態に係る無線通信装置1cの概略構成を示すブロック図である。図10の無線通信装置1cは、図1と共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0041】
図10の無線通信装置1cは、図1の構成に加えて、通信情報保持部11を備えている。通信情報保持部11は、第1無線通信部4を識別する情報と、第1無線通信部4の通信性能に関する情報と、第1無線通信部4の標準規格対応情報との少なくとも一つを保持する。
【0042】
通信情報保持部11に保持される情報は、第1無線通信部4が電力送信装置と無線通信を行うのに先立って行われる接続処理に必要な情報である。接続処理を行っている最中は、第1無線通信部4は電力送信装置との無線通信を行えないため、接続処理に要する時間が長いと、せっかく第1無線通信部4が高速かつ高効率の無線通信を行う能力を持っていたとしても、その能力を生かせなくなる。そこで、本実施形態では、接続処理に必要な情報を予め通信情報保持部11に保持しておくことで、接続処理に要する時間を短縮する。
【0043】
より具体的には、電力送信装置との高速通信を行うタイミングになると、第1無線通信部4は、通信情報保持部11から、電力送信装置との接続処理に必要な情報を読み出して、接続処理を行い、接続処理が完了すると、電力送信装置との高速通信を開始する。
【0044】
このように、第5の実施形態では、無線通信装置1c内に通信情報保持部11を設けて、第1無線通信部4と電力送信装置との接続処理に必要な情報の少なくとも一部を保持するため、第1無線通信部4と電力送信装置との接続処理に要する時間を短縮でき、無線通信を迅速に開始できるようになる。
【0045】
(第6の実施形態)
上述した第1〜第5の実施形態では、無線通信装置1の内部構成について説明した。以下では、これらの無線通信装置1との間で電力の送受および無線通信を行う電力送信装置の構成について説明する。
【0046】
図11は電力送信装置20の概略構成を示すブロック図である。図11の電力送信装置20は、無線通信装置1に電力を送信するとともに無線通信装置1との無線通信を行う電力送信無線通信部21と、無線通信装置1との間で高速かつ高効率で無線通信を行う第3無線通信部22と、電力送信無線通信部21に接続される第2コイル23と、第3無線通信部22に接続される第3アンテナ24とを備えている。
【0047】
電力送信無線通信部21は、電力送信部25と第4無線通信部26を有する。電力送信部25は、第2コイル23にて電磁誘導により電力を送信する。
【0048】
第3無線通信部22は、無線通信装置1内の第1無線通信部4との間で、高速かつ高効率の無線通信を行う。第4無線通信部26は、無線通信装置1内の第2無線通信部9との間で、低速かつ低効率の無線通信を行う。
【0049】
図12および図13は図11の電力送信装置20をより具体化したブロック図である。図12および図13では、図11と共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0050】
図12の電力送信装置20aは、電力送信無線通信部21内の電力送信部25に第2コイル23が接続されている。電力送信部25は、第2コイル23の電磁誘導を利用して、RF信号を無線通信装置1に送信する。無線通信装置1内の電力受信部8は、電力送信部25が送信したRF信号から電力を取り出す。
【0051】
第4無線通信部26は、電力送信部25が送信するRF信号の振幅を変調した新たなRF信号を生成して、第2コイル23を介して電力受信部8に送信する。
【0052】
第3無線通信部22は、無線通信装置1内の第1無線通信部4との間で、高速かつ高効率の無線通信を行う。
【0053】
このように、図12の電力送信装置20a内の電力送信無線通信部21は、第2コイル23だけで、電力の送信と第4無線通信部26による無線通信を行うため、第4無線通信部26用のアンテナを別個に設けなくて済み、電力送信装置20の構成を簡略化でき、小型化が図れる。
【0054】
ただし、第2コイル23による電磁誘導で無線通信を行うため、電力送信装置20aは、近接した距離に置かれた無線通信装置1との間で、NFCのような電磁誘導を利用した通信を行うことになる。
【0055】
一方、図13の電力送信装置20bは、第4無線通信部26用の第4アンテナ27を設ける点で図12と異なっている。第4無線通信部26は、第4アンテナ27を用いて、無線通信装置1内の第2無線通信部9と無線通信を行う。第4アンテナ27を用いる以上、第4無線通信部26は、NFCによる通信距離よりも遠くに位置する第2無線通信部9と無線通信を行うことができる。従って、図13の電力送信装置20bは、図12の電力送信装置20aよりも、第4無線通信部26の通信距離を広げることができ、使い勝手が向上する。
【0056】
第4の実施形態で説明したように、無線通信装置1内の第2無線通信部9が第1トリガー信号を含むRF信号を送信する場合、図12および図13の第4無線通信部26は、この第1トリガー信号を受信することにより、無線通信装置1内の蓄電部3に蓄電されている電力量が第1基準量を超えたことを把握し、第3無線通信部22に無線通信を指示する。これを受けて、第3無線通信部22は、無線通信装置1内の第1無線通信部4と高速かつ高効率で無線通信を行う。
【0057】
同様に、無線通信装置1内の第2無線通信部9が第2トリガー信号を含むRF信号を送信する場合、図12および図13の第4無線通信部26は、この第2トリガー信号を受信することにより、無線通信装置1内の蓄電部3に蓄電されている電力量が第2基準量以下になったことを把握し、第3無線通信部22に無線通信の停止を指示する。これを受けて、第3無線通信部22は、無線通信装置1内の第1無線通信部4との無線通信を停止する。
【0058】
このように、第6の実施形態では、第1乃至第5の実施形態に係る無線通信装置1の内部構成に合わせて、電力送信装置20内に電力送信無線通信部21と第3無線通信部22を設けるため、低速かつ低効率の無線通信は電力送信無線通信部21内の第4無線通信部26で連続的に行い、高速かつ高効率の無線通信は第3無線通信部22で間歇的に行うことができ、消費電力を抑制しつつ、簡易な構成で、低速かつ低効率の無線通信と高速かつ高効率の無線通信とを並行して行うことができる。
【0059】
(その他の変形例)
第1〜第5の実施形態における無線通信装置1は、ICカード等のカード形状であってもよい。図14は第1〜第6の実施形態における無線通信装置1を内蔵するICカード30の一例を示す図である。図14のICカード30は、第1〜第5の実施形態に係る無線通信装置1が内蔵されるICチップ31と、第1コイル6と、第1無線通信部4に接続された第1アンテナ7とを有する。無線通信装置1内の第2無線通信部9に、第1コイル6とは別個の第2アンテナ10(図5参照)が接続されている場合は、この第2アンテナ10もICカード30内に実装する必要があるが、図14では第2アンテナ10を省略している。また第1アンテナ7は、ICチップ31に内蔵されていてもよい。
【0060】
なお、第1アンテナ7、第2アンテナ10および第1コイル6の形状は、無線通信帯域に応じて変化するため、図14に示したものに限定されない。また、1個のICチップ31ではなく、複数のICチップ31で無線通信装置1を構成してもよく、また、無線通信装置1を構成する一部部品は、ICチップ31ではなく、ディスクリート部品を実装してもよい。
【0061】
上述した各実施形態では、大容量データは第1無線通信部4を用いて間歇的に送信する例を説明したが、少量データで、かつ高速送信の必要がないデータについては、必ずしも第1無線通信部4で送信する必要はなく、第2無線通信部9で送信してもよい。すなわち、第1無線通信部4と第2無線通信部9のどちらを使用するかを、送信するデータごとに、任意に選択できるようにしてもよい。
【0062】
上述した各実施形態における蓄電部3は、電力を蓄電することができるものであれば、その形態は問わない。例えば、簡易にはキャパシタで構成してもよいし、出力電圧を制御できるようなレギュレータ機能を蓄電部3に持たせてもよい。また、蓄電部3に電力を蓄電するか、蓄電部3に蓄電された電力を放電するかを切り替えるスイッチを設けてもよい。さらに、蓄電部3に蓄電された電力は、無線通信装置1以外の周辺装置を駆動する目的に利用してもよい。例えば、蓄電部3に蓄電された電力を用いて、周辺装置内のメモリなどを駆動してもよい。
【0063】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 無線通信装置、2 電力受信無線通信部、3 蓄電部、4 第1無線通信部、5 制御部、6 第1コイル、7 第1アンテナ、8 電力受信部、9 第2無線通信部、10 第2アンテナ、11 通信情報保持部、20 電力送信装置、21 電力送信無線通信部、22 第3無線通信部、24 第3アンテナ、25 電力送信部、26 第4無線通信部、27 第4アンテナ、30 ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した電力を利用して無線通信を行う電力受信無線通信部と、
前記電力受信無線通信部で受信した電力の一部を蓄電する蓄電部と、
前記蓄電部に蓄電された電力量が第1基準量を超えた場合に、前記蓄電部に蓄電された電力の一部を利用して、前記電力受信無線通信部よりも高速かつ高効率で無線通信を行う第1無線通信部と、を備え、
前記電力受信無線通信部は、
電力を受信して、受信した電力の一部を前記蓄電部に供給する電力受信部と、
前記電力受信部で受信された電力の一部を利用して、前記第1無線通信部よりも低速かつ低効率で無線通信を行う第2無線通信部と、を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記電力受信部に接続され、電力送信装置から送信されたRF信号を電磁誘導により受信可能な第1コイルを備え、
前記第2無線通信部は、前記RF信号により得られる電力の一部を利用して、前記RF信号に変調を施した電力変調信号を生成して、前記第1コイルから前記電力送信装置に送信するとともに、前記電力送信装置から送信された前記RF信号を前記第1コイルを介して受信し、
前記蓄電部は、前記RF信号により得られる電力の一部を蓄電することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第1無線通信部に接続され、前記電力送信装置から送信されたRF信号を受信するとともに、前記電力送信装置にRF信号を送信する第1アンテナと、
前記電力受信部に接続され、電力送信装置から送信されたRF信号を電磁誘導により受信可能な第1コイルと、
前記第2無線通信部に接続され、前記電力送信装置から送信されたRF信号を受信するとともに、前記電力送信装置にRF信号を送信する第2アンテナと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記蓄電部に蓄電された電力量が前記第1基準量を超えたことを示す第1トリガー信号を生成する制御部を備え、
前記第2無線通信部は、前記第1トリガー信号を含むRF信号を送信し、
前記第1無線通信部は、前記制御部から前記第1トリガー信号が供給されると、高速かつ高効率の無線通信を開始することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記蓄電部に蓄電された電力量が第2基準量を下回った場合に、第2トリガー信号を生成し、
前記第2無線通信部は、前記制御部が生成した前記第2トリガー信号を含むRF信号を送信し、
前記第1無線通信部は、前記制御部から前記第2トリガー信号が供給されると、高速かつ高効率の無線通信を停止することを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第1無線通信部を識別する情報と、前記第1無線通信部の通信性能に関する情報と、前記第1無線通信部の標準規格対応情報との少なくとも一つを保持する通信情報保持部を備え、
前記第1無線通信部は、前記通信情報保持部に保持された情報を参照して電力送信装置との間で接続処理を行い、該接続処理の完了後に前記電力送信装置との間で無線通信を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項7】
請求項4または5に記載の無線通信装置内の前記電力受信無線通信部に電力を送信するとともに、前記電力受信無線通信部と無線通信を行う電力送信無線通信部と、
前記電力送信無線通信部が前記第1トリガー信号を受信した場合に、前記第1無線通信部との間で高速かつ高効率の無線通信を行う第3無線通信部と、を備え、
前記電力送信無線通信部は、
前記電力受信部に対して電力を無線送信する電力送信部と、
前記第3無線通信部よりも低速かつ低効率で前記第2無線通信部と無線通信を行って、前記第1トリガー信号を受信する第4無線通信部と、を有することを特徴とする電力送信装置。
【請求項8】
前記電力送信部に接続され、電磁誘導による電力伝送が可能な第2コイルを備え、
前記第4無線通信部は、前記第2コイルを介して前記第2無線通信部と無線通信を行うことを特徴とする請求項7に記載の電力送信装置。
【請求項9】
前記第1無線通信部に接続され、前記電力送信装置から送信されたRF信号を受信するとともに、前記電力送信装置にRF信号を送信する第3アンテナと、
前記電力送信部に接続され、電磁誘導による電力伝送が可能な第2コイルと、
前記第4無線通信部に接続され、前記第2無線通信部から送信されたRF信号を受信するとともに、前記第2無線通信部にRF信号を送信する第4アンテナと、を備えることを特徴とする請求項7または8に記載の電力送信装置。
【請求項10】
受信した電力を利用して無線通信を行う電力受信無線通信部と、前記電力受信無線通信部で受信した電力の一部を蓄電する蓄電部と、前記蓄電部に蓄電された電力量が第1基準量を超えた場合に、前記蓄電部に蓄電された電力の一部を利用して前記電力受信無線通信部よりも高速かつ高効率で無線通信を行う第1無線通信部と、を内蔵する1つ以上のICチップと、
前記電力受信無線通信部に接続される第1コイルと、
前記第1無線通信部に接続される第1アンテナと、
を備え、
前記電力受信無線通信部は、
電力を受信して、受信した電力の一部を前記蓄電部に供給する電力受信部と、
前記電力受信部で受信された電力の一部を利用して、前記第1無線通信部よりも低速かつ低効率で無線通信を行う第2無線通信部と、を有することを特徴とするICカード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−115577(P2013−115577A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259464(P2011−259464)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】