説明

無線LAN通信機器

【課題】簡素な構成で消費電力を削減でき、しかも広範囲なロケーション環境においても使用できる無線LAN通信機器を提供すること。
【解決手段】無線LAN通信機器(10)は、固定局(1)との間でデータ通信する無線通信機能を備えた無線LANモジュール(11)と、無線LANモジュール(11)を固定局(1)とデータ通信させる特定領域において、トリガ信号を生成するトリガ生成手段と、無線LANモジュール(11)に対して電源を供給するバッテリー(26)と、バッテリー(26)から無線LANモジュール(11)への電源供給を制御する電源管理機能を備え、データ通信時は電源供給する一方、データ通信完了後は電源供給を制限して無線LANモジュール(11)を低消費電力の状態で待機させ、待機状態においてトリガ信号を受けると電源供給を再開する電源管理部(18)と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN通信機器に関し、特にデータ通信していない待機状態での消費電力を抑制するパワーセーブ機能を備えた無線LAN通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固定局(例えば、無線LANアクセスポイント)を介して多数のセンサ付無線端末をネットワーク接続し、各センサ付無線端末によってセンシングされた情報を一元的に管理するセンサーネットワークが知られている。センサーネットワークにおいては、多数のセンサ付無線端末を用いることから、平均消費電力削減のためには各センサ付無線端末における消費電力を削減することが望ましい。無線端末の消費電力の削減のため、動作モードの一つとしてスリープモードを有する無線LANデバイスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる無線LANデバイスにおいては、スリープモードでは、無線LANアクセスポイントから送信されるビーコン信号に同期するように間欠的に無線LANデバイスを駆動し、無線LANアクセスポイントからのデータ送信要求を確認する。そして、無線LANアクセスポイントからデータ送信要求がある場合には、動作モードを切り替えて無線LANアクセスポイントにデータ送信を行い、データ送信要求がない場合には、動作モードをスリープモードとする。このように、データ送信要求がない場合に無線LANデバイスを間欠的に駆動するスリープモードとすることで、消費電力の削減を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−180115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の無線LANデバイスにおいては、低消費電力のスリープモードにおいても、無線LANデバイスを間欠的に駆動して無線LANアクセスポイントからのデータ送信要求を確認する必要がある。このため、無線LANデバイスが、無線LANアクセスポイントからのビーコン信号が届かない電波圏外に存在する場合であっても、定期的に無線LANデバイスが駆動され、電力が消費される問題がある。
【0006】
例えば、物流などの広範囲なロケーション環境において、ネットワークを介して接続された複数の固定局によって、センサ付き無線LANデバイスをトラッキングするようなアプリケーションにおいては、無線LANとしての通信カバレッジが必ずしも十分でないケースがある。このため、貨物の状態(伝票番号、集配日時、貨物保存状態、配達通過フラグなどの荷受情報、貨物情報)を無線LANデバイスでセンシングして各配達先経由地へ情報伝送するようなアプリケーションの場合、通信カバレッジの広い3Gセルラーによるブリッジを併用するなどの対応を図る必要があり、システムが複雑になると共に、消費電力が増大する問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で消費電力を削減でき、しかも広範囲なロケーション環境においても使用できる無線LAN通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線LAN通信機器は、固定局の電波エリア圏内において該固定局との間でデータ通信する無線通信機能を備えた無線LAN送受信部と、前記無線LAN送受信部を前記固定局とデータ通信させる特定領域において固有の収集可能エネルギーを収集し、当該収集エネルギーから前記無線LAN送受信部を起動するためのトリガ信号を生成するトリガ生成手段と、前記無線LAN送受信部に対して電源を供給するバッテリーと、前記バッテリーから前記無線LAN送受信部への電源供給を制御する電源管理機能を備え、データ通信時は電源供給する一方、データ通信完了後は電源供給を制限して前記無線LAN送受信部を低消費電力の状態で待機させ、待機状態において前記トリガ信号を受けると電源供給を再開する電源管理部と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、電力管理部が、特定領域において固有の収集可能エネルギーを収集して生成したトリガ信号に応じてバッテリーから無線LAN送受信部への電源供給を制御するので、簡素な構成で待機状態の消費電力を削減することができる。また、無線LAN送受信部を固定局とデータ通信させる特定領域内で収集される収集可能エネルギーからトリガ信号を生成するので、広範囲なロケーション環境において使用可能な無線LAN通信機器を実現できる。
【0010】
また本発明は、上記無線LAN通信機器において、前記トリガ生成手段は、前記固定局の電波エリア圏内において固有に検出される特定周波数の無線波をアンテナで受信することによって得られる高周波信号を直流電圧に変換して前記トリガ信号を生成するレクテナ装置で構成してもよい。この構成により、固定局の電波エリア圏内における特定周波数の無線波により無線LAN送受信部への電源供給を制御できる。
【0011】
また本発明は、上記無線LAN通信機器において、前記特定領域は、無線LANアクセスポイントを構成する前記固定局の電波エリア圏としてもよい。
【0012】
また本発明は、上記無線LAN通信機器において、前記電源管理部は、前記無線LAN送受信部に対する電源供給を、オペレータが操作するスイッチから入力されるオン/オフ信号によって切替可能に構成してもよい。この構成により、無線LAN通信機器が、無線LAN送受信部を固定局とデータ通信させる特定領域内に内に存在する場合であっても、オペレータが操作するスイッチ入力されるオン/オフ信号によって無線LAN送受信部に対する電源供給を切替えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡素な構成で消費電力を削減でき、しかも広範囲なロケーション環境においても使用できる無線LAN通信機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係る無線LAN通信機器の機能ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る無線LAN通信機器における固定局との通信の概念図である。
【図3】本実施の形態に係る無線LAN通信機器における固定局の電波エリア圏を示す概念図である。
【図4】本実施の形態に係る無線LAN通信機器におけるトリガ信号の取り出しの概念図である。
【図5】本実施の形態に係る無線LAN通信機器における動作モード切替えのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る無線LAN通信機器10の機能ブロック図である。
図1に示すように、無線LAN通信機器10は、固定局1の電波エリア圏内において、当該固定局1との間でデータ通信する無線通信機能を備えた無線LAN送受信部としての無線LANモジュール11と、無線LANモジュール11を起動するためのトリガ信号を生成するトリガ生成手段としてのレクテナアンテナアレイ部12とを具備する。固定局1は、管理サーバ2を介して接続された複数の固定局1によって構成されるネットワークの一部を構成している。
【0016】
レクテナアンテナアレイ部12は、複数の送受信アンテナ13と、送受信アンテナ13の給電部に接続されるアンテナマッチング部14と、アンテナマッチング部14のレクテナ用入出力端に対して並列に接続される複数のダイオード15とを備える。複数のダイオード15の出力端には、所定容量(例えば、220μF)のコンデンサ16が接続される。レクテナアンテナアレイ部12は、固定局1の電波エリア圏内において、固定局1から送信される特定周波数の無線波(ビーコン信号)からトリガ信号を生成する。
【0017】
送受信アンテナ13は、固定局1から送信される各種の無線波(ビーコン信号、通信データ)を受信し、受信した無線波に対応して出力される受信信号をアンテナマッチング部14に出力する。また、送受信アンテナ13は、無線LANモジュール11から送出されるRF信号をアンテナマッチング部14の合成入出力端から取り込んで無線波として送信する。
【0018】
アンテナマッチング部14は、複数の送受信アンテナ13から並列に取り込まれる受信信号から特定帯域(例えば、2.4GHz)の高周波信号を抽出する。スタンバイモード時に複数の送受信アンテナ13によって受信される特定帯域の信号(ビーコン信号)は、レクテナ用入出力端から出力され、スリープモード及びアクティブモード時に複数の送受信アンテナ13によって受信される特定帯域の信号(ビーコン信号)は、合成された状態で合成入出力端から出力される。アンテナマッチング部14の合成入出力端から出力される信号は、結合コンデンサ17を介して、無線LANモジュール11に送出される。
【0019】
ダイオード15は、アンテナマッチング部14のレクテナ用出力端から出力される高周波信号をショットキーダイオード検波により直流電圧に変換し、コンデンサ16に充電する。コンデンサ16に充電された直流電圧をトリガ信号として無線LANモジュール11に出力する。
【0020】
コンデンサ16は、ダイオード15によって検波された直流電圧を、無線LANモジュール11の起動に必要な電圧値(例えば、0.4V)まで充電する。なお、コンデンサ16は、ダイオード15から出力される直流電圧で充電して所要電圧のトリガ信号を生成するため設けているが、無線LANモジュール11を起動できる電圧値に整流できれば、必ずしも設ける必要はない。
【0021】
無線LANモジュール11は、電源管理部18と、バンドパスフィルタ(B.P.F)19と、パワーアンプ(PA)20と、IEEE規格802.11b/gに準拠したWLAN21と、CPU22と、I/Oポート23と、メモリ24とを具備する。無線LANモジュール11は、固定局1から送信されるデータ通信要求に応じてセンサ部25で測定した各種データを固定局1に送信する。
【0022】
電源管理部18は、無線LANモジュール11の外部に設けられたバッテリー26(例えば、一次電池又は二次電池)に接続され、レクテナアンテナアレイ部12からのトリガ信号に応じて動作モードを切り替え、バッテリー26から無線LANモジュール11への電源供給を制御する。電源管理部18は、バッテリー26から無線LANモジュール11への電源供給を切替えるスイッチング素子27と、レクテナアンテナアレイ部12からのトリガ信号に応じて、スイッチング素子27のオン/オフを切替えるコントローラ28と、予め設定された所定時間(例えば、24時間)をダウンカウントするRTC(real time clock)カウンタ29とを備える。電源管理部18は、RTCカウンタ29によってダウンカウントされるカウント値がカウントアップする前(所定時間内)にトリガ信号が入力された場合には、コントローラ28によってスイッチング素子27をオンに切替えて無線LANモジュール11に電源供給する。なお、コントローラ28は、オペレータが操作するスイッチから入力されるオン/オフ信号によって切替可能に構成してもよい。本実施の形態では、スイッチング素子27がオフとなりバッテリー26から無線LANモジュール11への電源供給が制限された状態が待機状態(以下、スタンバイモード)となる。
【0023】
センサ部25は、各種データ(伝票番号、集配日時、貨物保存状態、配達通過フラグなどの荷受情報、貨物情報)を測定し、I/Oポート23を介して無線LANモジュール11に送信する。I/Oポート23には、A/Dコンバータ(ADC:Analog to Digital Converters)30を介してバッテリー26から電源供給される。
【0024】
メモリ24は、フラッシュメモリ31及びSDRAM32を有する。メモリ24は、センサ部25でセンシングされた各種データをフラッシュメモリ31やSDRAM32に保存する。
【0025】
バンドパスフィルタ19は、レクテナアンテナアレイ部12から入力した特定周波数の高周波信号をフィルタリング処理してパワーアンプ20に出力する。パワーアンプ20は、高周波信号を増幅してWLAN21に出力する。
【0026】
WLAN21は、パワーアンプ20から入力した高周波信号をベースバンド信号に変換し、変換した受信データに含まれるデータ通信要求を検出してCPU22に出力する。また、WLAN21は、固定局1からのデータ通信要求に応じて、CPU22から出力された各種データを特定周波数(例えば、2.4GHz)のデータ信号として固定局1へ向けて送信する。
【0027】
CPU22は、固定局1から送信されるデータ通信要求に応じて、無線LANモジュール11の動作モードを切替える。CPU22は、固定局1からデータ通信要求がない場合には、無線LANモジュール11をスリープモードに切替え、データ通信要求が有る場合には、無線LANモジュール11をアクティブモードに切替える。CPU22は、アクティブモードでは、センサ部25でセンシングされメモリ24に保存された各種データ(伝票番号、集配日時、貨物保存状態、配達通過フラグ等の荷受情報、貨物情報)をWLAN21に出力する。また、CPU22は、固定局1へのデータ通信完了時には、コントローラ28に信号を出力してスイッチング素子27をオフに切替え、バッテリー26から無線LANモジュール11への電源供給を制限するスタンバイモードに切替える。本実施の形態では、スタンバイモードにおける消費電力は5μA以下にでき、スリープモードにおける消費電力は10mA程度にできる。アクティブモードにおける消費電力は150mA程度となる。
【0028】
次に、無線LAN通信機器10の動作について説明する。
図2は、無線LAN通信機器10における固定局1との通信の概念図である。図2に示すように、固定局1は、所定周期(例えば、100m/s)でビーコン信号を無線LAN通信機器10に向けて送信する。固定局1から発信されるビーコン信号は、固定局1から離れるにつれて信号強度が減衰する性質を有しており、固定局1を中心とした所定の電波エリア圏100が形成される。ここで、図3に示すように、本実施の形態では、電波エリア圏100は、固定局1から送信されるビーコン信号の信号強度が−60dBm以上となる電波エリア圏である。また、無線LAN通信機器10から固定局1にデータ信号を送信する際のデータロスを低減する観点から、電波エリア圏100としては、ビーコン信号の信号強度が−50dBm以上となる領域であることが好ましく、−40dBm以上となる領域であることがより好ましい。
【0029】
無線LAN通信機器10が電波エリア圏100内に存在する場合、固定局1からのビーコン信号は、レクテナアンテナアレイ部12の複数の送受信アンテナ13によって受信され、アンテナマッチング部14に入力する。アンテナマッチング部14では、ビーコン信号から特定周波数(例えば、2.4GHz)の高周波信号が抽出される。ビーコン信号から抽出された高周波信号は、ダイオード15によるショットキーダイオード検波により直流電圧が取り出され、コンデンサ16が充電される。所定容量(例えば、220μF)のコンデンサ16の充電電圧が所定電圧を超えると、高周波信号から生成されたトリガ信号として、無線LANモジュール11の電源管理部18に出力される。
【0030】
図4A、図4Bに、レクテナアンテナアレイ部12による高周波信号からトリガ信号を生成する概念図を示す。図4Aに示すように、固定局10から送信されるビーコン信号は、所定の周波数(例えば、2.4GHz)の搬送波が変調されて送信される。図4Bに示すように、このビーコン信号をダイオード15によってショットキーダイオード検波すると、図4Bに点線で示すようにコンデンサ16が充電されて直流電圧が得られる。
【0031】
なお、スリープモード又はアクティブモードでの通信時は、アンテナマッチング部14で抽出された高周波信号は、複数の送受信アンテナ13で受信された高周波信号が合成され、結合コンデンサ17を介して無線LANモジュール11に出力される。無線LANモジュール11に入力した高周波信号は、バンドパスフィルタ19によるフィルタリング処理及びパワーアンプ20による増幅を経てWLAN21に出力される。WLAN21では、固定局1からの高周波信号に含まれる通信データをCPU22に出力する。
【0032】
図5は、無線LAN通信機器10の動作モード切替えのフロー図である。
図5に示すように、無線LAN通信機器10が、電波エリア圏100外に存在する場合には、バッテリー26から無線LANモジュール11への電源供給が制限された低消費電力のスタンバイモードとなる(ステップS1)。スタンバイモードでは、RTCカウンタ29により予め設定された所定時間のダウンカウントが開始される(ステップS2)。次に、電源管理部18は、RTCカウンタ29のダウンカウント中におけるトリガ信号の入力の有無を判定する(ステップS3)。無線LAN通信機器10が電波エリア圏100外に存在する場合にはトリガ信号が電源管理部18に入力されず、スタンバイモードが維持される(ステップS3:No)。
【0033】
無線LAN通信機器10が、電波エリア圏100内に移動した場合には、レクテナアンテナアレイ部12により受信されるビーコン信号のエネルギーを直流電圧に変換してトリガ信号が生成され、電源管理部18にトリガ信号が入力される(ステップS3:Yes)。電源管理部18は、入力されたトリガ信号に応じて、コントローラ28によりスイッチング素子27をオンに切替え、バッテリー26から無線LANモジュール11への電源供給を開始する(ステップS4)。この結果、無線LANモジュール11が起動され、CPU22は、動作モードをスリープモードに切替える。
【0034】
スリープモードでは、CPU22は、固定局1からのデータ通信要求の有無を判定する(ステップS5)。データ通信要求がない場合には、スリープモードが維持され、電源管理部18から無線LANモジュール11への電源供給が継続される(ステップS5:No)。固定局1からのデータ通信要求がある場合(ステップS5:Yes)には、CPU22は、動作モードをアクティブモードに切替える。
【0035】
アクティブモードでは、CPU22がメモリ24に保存された各種データを呼び出し、WLAN21に出力する。WLAN21は、各種データを所定周波数のデータ信号として固定局1に送信する(ステップS6)。アクティブモードでは、WLAN21によるデータ信号送信中、CPU22は、固定局1からのデータ通信要求の有無を判定する(ステップS7)。そして、データ通信要求が有る場合には、データ通信を継続する(ステップS7:Yes)。データ通信要求がない場合(ステップS7:No)には、CPU22は、電源管理部18のコントローラ28を介してスイッチング素子27をオフに切り替えてスタンバイモードに切替える。
【0036】
以上説明したように、上記実施の形態に係る無線LAN通信機器10によれば、固定局1の電波エリア圏100内において、固定局1から送信されるビーコン信号から、レクテナアンテナアレイ部12によってトリガ信号を生成し、生成したトリガ信号に応じて電源管理部18が無線LANモジュール11への電源供給を切替える。これにより、無線LAN通信機器10を間欠的に駆動することなく、無線LAN通信機器10が電波エリア圏外に存在する場合には、バッテリー26から無線LANモジュール11への電源供給が制限される低消費電力のスタンバイモードとなり、無線LAN通信機器10が電波エリア圏100内に入ると、バッテリー26から無線LANモジュール11へ電源供給されるスリープモード又はアクティブとなるので、簡素な構成で消費電力を削減できる。また、無線LAN通信機器10が複数の電波エリア圏100間を移動する場合においても、カバレッジの広い3Gセルラーなどをブリッジすることなく各固定局1とのビーコン信号及びデータ信号の送受信が可能となるので、広範囲なロケーション環境下において使用する場合であっても、システムを複雑化することなく消費電力を削減することが可能となる。
【0037】
また、上記実施の形態に係る無線LAN通信機器10によれば、固定局1の電波エリア圏内において、固有に検出されるビーコン信号を直流電圧に変換するレクテナアンテナアレイ部12を有するので、無線LAN通信機器10が固定局1の電波エリア圏100内に入った瞬間に、スタンバイモードに切替えることが可能となる。
【0038】
さらに、上記実施の形態に係る無線LAN通信機器10によれば、固定局1の電波エリア圏100内に入った時点でトリガ信号が生成されるので、複数の電波エリア圏100間をローミングする場合であっても、無線LAN通信機器10の消費電力を削減することが可能となる。
【0039】
また、上記実施の形態に係る無線LAN通信機器10によれば、電源管理部18は、無線LANモジュール11に対する電源供給を、オペレータが操作するスイッチから入力されるオン/オフ信号によって切替可能に構成できるので、無線LAN通信機器10が固定局1の電波エリア圏100内に存在する場合であっても、任意にスリープモードからスタンバイモードに切替えることが可能となる。これにより、オペレータによりデータ通信の必要性に応じて動作モードを切替えることが可能となるので、特に消費電力を削減できる。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0041】
例えば、上述した実施の形態においては、固定局1から送信されるビーコン信号からトリガ信号を取り出す構成について説明したが、トリガ信号としては、微量の電力(例えば、0.12μW)のワンショットのトリガ信号として印加できるものであれば、各種エネルギーハーベスト手段を利用することが可能である。例えば、特定領域において固有の収集可能エネルギーが太陽光や照明装置等による光エネルギーであれば、太陽光発電装置等の光エネルギーを直流電圧信号に変換する機構を設け、光エネルギーからトリガ信号を生成しても良い。また、特定領域において固有の収集可能エネルギーが機械的振動であれば、機械的振動によって発電するピエゾ素子で機械的振動を直流電圧信号に変換してトリガ信号としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、簡素な構成で消費電力を削減でき、しかも広範囲なロケーション環境においても使用できるという効果を有し、特に、センサーネットワーク用の無線LAN通信機器に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 固定局
2 管理サーバ
10 無線LAN通信機器
11 無線LANモジュール
12 レクテナアンテナアレイ部
13 送受信アンテナ
14 アンテナマッチング部
15 ダイオード
16 コンデンサ
17 結合コンデンサ
18 電源管理部
19 バンドパスフィルタ(B.P.F)
20 パワーアンプ(PA)
21 WLAN
22 CPU
23 I/Oポート
24 メモリ
25 センサ部
26 バッテリー
27 スイッチング素子
28 コントローラ
29 RTCカウンタ
30 A/Dコンバータ
31 フラッシュメモリ
32 SDRAM
100 電波エリア圏


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定局の電波エリア圏内において該固定局との間でデータ通信する無線通信機能を備えた無線LAN送受信部と、
前記無線LAN送受信部を前記固定局とデータ通信させる特定領域において固有の収集可能エネルギーを収集し、当該収集エネルギーから前記無線LAN送受信部を起動するためのトリガ信号を生成するトリガ生成手段と、
前記無線LAN送受信部に対して電源を供給するバッテリーと、
前記バッテリーから前記無線LAN送受信部への電源供給を制御する電源管理機能を備え、データ通信時は電源供給する一方、データ通信完了後は電源供給を制限して前記無線LAN送受信部を低消費電力の状態で待機させ、待機状態において前記トリガ信号を受けると電源供給を再開する電源管理部と、
を具備したことを特徴とする無線LAN通信機器。
【請求項2】
前記トリガ生成手段は、前記固定局の電波エリア圏内において固有に検出される特定周波数の無線波をアンテナで受信することによって得られる高周波信号を直流電圧に変換して前記トリガ信号を生成するレクテナ装置で構成されることを特徴とする請求項1記載の無線LAN通信機器。
【請求項3】
前記特定領域は、無線LANアクセスポイントを構成する前記固定局の電波エリア圏であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の無線LAN通信機器。
【請求項4】
前記電源管理部は、前記無線LAN送受信部に対する電源供給を、オペレータが操作するスイッチから入力されるオン/オフ信号によって切替可能に構成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線LAN通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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