説明

無鉛高オクタン価ガソリン

【目的】 排出ガスのNOx抑制効果及びエンジン冷機時の運転性に優れた無鉛高オクタン価ガソリンの提供。
【構成】 リサーチ法オクタン価が98.0以上、リード蒸気圧(Rv)が0.45〜0.95kgf/cm2 、密度(於15℃)が0.735 〜0.755g/cm3 、硫黄分が50質量ppm 以下であって、ガソリン全量中のメチル−t−ブチルエーテル含有量、ガソリン中の炭化水素成分全量中の炭素数5の炭化水素含有量、同じく炭素数6の炭化水素含有量、同じく炭素数6のパラフィン系炭化水素含有量が、それぞれ特定な範囲にあるガソリン。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車用燃料として特に有用なガソリンに関し、詳しくは特定された性状及び特定された成分組成を有する、各種性能に優れた新規なガソリンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガソリンは、蒸気圧が低すぎると低温始動性に問題が生じ、蒸気圧が高すぎると高温運転性に問題を生じることが知られている。したがって、ガソリンはそれが使用される季節や地域によって、蒸気圧を調整する必要がある。わが国においては、夏期(5月〜9月)に使用されるガソリンは比較的蒸気圧が低いことが望まれ、一方、冬期(10月〜4月)に使用されるガソリンは比較的蒸気圧が高いことが望まれる。昭和58年にはリサーチ法オクタン価98の無鉛高オクタン価ガソリンが、昭和62年からはリサーチ法オクタン価100 の無鉛高オクタン価ガソリンが登場した。しかし、これらの無鉛高オクタン価ガソリンはメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を含まないものであり、炭化水素だけでリサーチ法オクタン価100 を維持する必要があるため、重質な芳香族分を比較的多量に含むものであった。また、加速性などの各種性能に優れたガソリンとするため、特定された蒸留性状及び特定された成分組成を有すること(特公平3-75595 号など)が求められていた。一方、MTBEは従来から高オクタン価のガソリン基材として知られており、米国では、排出ガス中の一酸化炭素、炭化水素を減少させるためにMTBEを配合することが注目されている。わが国でもMTBEを配合したガソリンに関しては、例えば、特公昭50-35524号や同60-11958号などに開示され、平成3年からはMTBE配合ガソリンが市販されだしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、MTBEは高オクタン価でありながら、沸点から見るとガソリン基材として比較的軽質な成分に属するため、MTBEの配合によって高いオクタン価を維持しながらガソリンの軽質化をはかることができる。一般的には、ガソリンの軽質化により、特にエンジン冷機時の運転性の向上が期待できるが、MTBEによる軽質化の場合、必ずしも運転性が向上しない場合があることが報告されている。また、ガソリンにMTBEを配合することで、排出ガス中のNOxが増加する場合があることも知られている。本発明者らは、このMTBEによるNOxの増加を抑制するために、炭素数5以下の炭化水素の含有量及び炭素数6の炭化水素の含有量を規定したガソリン(特願平3-358561号)や、特定の蒸留性状を有しかつ軽質ナフサを特定量含有したガソリン(特願平3-358562号)を、先に特許出願した。しかし、本発明者らはより優れた性能を有するMTBE配合ガソリンを開発すべくさらに検討を重ねた結果、炭素数5の炭化水素の含有量及び炭素数6の炭化水素の含有量に加えて、炭素数5のパラフィン系炭化水素の含有量を詳細に規定することで、大きな NOxの抑制効果が得られること、及び同時に、エンジン冷機時の運転性をさらに向上させることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。本発明は排出ガス中のNOxが少なく、エンジン冷機時の運転性に優れたMTBE配合無鉛高オクタン価ガソリンを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明はリサーチ法オクタン価が98.0以上、リード蒸気圧(Rv)0.45〜0.95kgf/cm2 、15℃における密度が0.735 〜0.755g/cm3 、硫黄分が50質量ppm (重量ppm )以下であり、かつ以下の(1)〜(5)式を満たすことを特徴とする無鉛ガソリンを提供するものである。
(1)3≦V(M)≦15(2)■0.45≦Rv<0.65の場合、17≦V(C5 )≦20■0.65≦Rv≦0.70の場合、18≦V(C5 )≦25■0.70<Rv≦0.95の場合、20≦V(C5 )≦35(3)15≦V(C6 )≦30(4)11.5+0.1 ×V(M)≦V(C5p)≦30(5)0.55≦V(C5p)/V(C5 )≦0.90なお、上式中、V(M)はガソリン全量に対するメチル−t−ブチルエーテルの容量%を、Rvはガソリンのリード蒸気圧(kmf/cm2 )を、V(C5 )はガソリン中の炭化水素成分全量に対する炭素数5の炭化水素の容量%を、V(C6 )はガソリン中の炭化水素成分全量に対する炭素数6の炭化水素の容量%を、V(C5p)はガソリン中の炭化水素成分全量に対する炭素数5のパラフィン系炭化水素の容量%をそれぞれ示している。なお、このガソリン中の炭化水素成分全量とは、ガソリン全量からMTBEの含有量を除いた部分を意味している。
【0005】ここでいう無鉛ガソリンとは、四エチル鉛などのアルキル鉛化合物を実質的に含有しないガソリンを意味し、たとえ極微量の鉛化合物を含有する場合でも、その含有量はJIS K 2255「ガソリン中の鉛分試験方法」の適用区分下限値未満である。本発明のガソリンのリサーチ法オクタン価は98.0以上、より好ましくは99.5以上、最も好ましくは100.0 以上である。なお、このリサーチ法オクタン価とは、JIS K 2280「オクタン価及びセタン価試験方法」により測定されるオクタン価を意味するものである。本発明のガソリンのリード蒸気圧(Rv)は0.45〜0.95kgf/cm2 、好ましくは0.55〜0.95kgf/cm2 、より好ましくは0.55〜0.85kgf/cm2 である。このリード蒸気圧とは、JIS K 2258「原油及び燃料油蒸気圧試験法(リード法)」により測定される蒸気圧を意味するものであり、リード蒸気圧がこの範囲に達しない場合は低温始動性に不具合を起こす可能性があり、一方リード蒸気圧がこの範囲を越える場合はベーパーロックなどにより運転性に不具合を生ずる場合があるため、それぞれ好ましくない。上述した通り、低温始動性などの問題によりガソリンが使用される季節や地域によってそのリード蒸気圧を調整する必要がある。一般に、夏期(5月〜9月)には0.45〜0.70kgf/cm2 、好ましくは0.55〜0.70kgf/cm2 、より好ましくは0.55〜0.68kgf/cm2 、最も好ましくは0.55〜0.65kgf/cm2 にリード蒸気圧を調整することが望ましく、一方、冬期(10月〜4月)では0.65〜0.95kgf/cm2 、好ましくは0.68〜0.95kgf/cm2 、より好ましくは0.70〜0.95kgf/cm2 、最も好ましくは0.70〜0.85kgf/cm2 にリード蒸気圧を調節することが望ましい。
【0006】本発明のガソリンの15℃における密度は0.740 〜0.755g/cm3 、好ましくは0.741 〜0.755g/cm3 、より好ましくは0.742 〜0.755g/cm3 、さらに好ましくは0.745 〜0.755g/cm3 、最も好ましくは0.745 〜0.750g/cm3 である。この密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味するものであり、密度がこの範囲に達しない場合は燃費の悪化が生じる可能性があり、一方、密度がこの範囲を越える場合は加速性の悪化や点火プラグのくすぶりを生じる可能性があるため、それぞれ好ましくない。本発明のガソリンの硫黄分は50質量ppm 以下、好ましくは30質量ppm 以下、より好ましくは20質量ppm 以下である。この硫黄分とはJIS K 2541「原油及び石油製品硫黄分試験方法」により測定される硫黄分を意味しており、硫黄分がこの範囲を越える場合は、自動車の排出ガス浄化装置の性能に悪影響を及ぼす場合があるため好ましくない。
【0007】本発明のガソリンは上記(1)式に示すとおり、MTBEを必須成分とするものであり、そのガソリン全量に対する含有量(V(M)容量%)は、3〜15容量%、好ましくは3〜10容量%、より好ましくは4〜7容量%、最も好ましくは4〜6容量%である。含有量がこの範囲に達しない場合にはMTBE配合の効果が小さく、一方、含有量がこの範囲を越える場合には、燃費が悪化し、排出ガス中のNOxが著しく増加する可能性があるため、それぞれ好ましくない。なお、MTBEは一般的にはイソブチレンとメタノールを反応させて得られるが、本発明においてはその製造方法を特に限定するものではない。本発明のガソリンにおいて、炭素数5の炭化水素のガソリン中の炭化水素成分全量に対する含有量(V(C5 )容量%)は、ガソリンのリード蒸気圧(Rvkgf/cm2 )の値によって次のように規定される。
■0.45≦Rv<0.65の場合、17≦V(C5 )≦20、好ましくは18≦V(C5 )≦20、■0.65≦Rv≦0.70の場合、18≦V(C5 )≦25、好ましくは20≦V(C5 )≦25、より好ましくは22≦V(C5 )≦25、■0.70<Rv≦0.95の場合、20≦V(C5 )≦35、好ましくは22≦V(C5 )≦35、より好ましくは24≦V(C5 )≦30、V(C5 )がこの範囲に達しない場合は冷機時の運転性が向上せず、またNOxの発生抑制効果が小さく、一方、V(C5 )がこの範囲を越える場合は燃費が悪化し、ベーパーロックなどにより運転性に不具合を生じる可能性があるため、それぞれ好ましくない。
【0008】また(3)式で示すとおり、本発明のガソリンにおいて、炭素数6の炭化水素のガソリン中の炭化水素成分全量に対する含有量(V(C6 )容量%)は、15≦V(C6 )≦30、好ましくは16≦V(C6 )≦30、より好ましくは17≦V(C6)≦30である。V(C6 )がこの範囲に達しない場合は冷機時の運転性が向上せず、またNOxの発生抑制効果が小さく、一方、V(C6 )がこの範囲を越える場合は燃費の悪化を生じる可能性があるため、それぞれ好ましくない。本発明において、ガソリン中の炭化水素成分全量に対する炭素数5のパラフィン系炭化水素の含有量(V(C5p)容量%)は、MTBEの含有量をV(M)容量%として、(4)式に示すとおり、11.5+0.1 ×V(M)≦V(C5p)≦30で規定されるが、好ましくは12.0+0.1 ×V(M)≦V(C5p)≦30、より好ましくは12.5+0.1 ×V(M)≦V(C5p)≦30で規定される。V(C5p)がこの範囲に達しない場合はNOxの発生抑制効果が小さく、一方、V(C5p)がこの範囲を越える場合はガソリンのオクタン価が低下する場合があるため、それぞれ好ましくない。また、本発明のガソリンにおいて、炭素数5の炭化水素のガソリン中の炭化水素成分全量に対する含有量(V(C5 )容量%)と、ガソリン中の炭化水素成分全量に対する炭素数5のパラフィン系炭化水素の含有量(V(C5p)容量%)の比(V(C5p)/V(C5 ))は、(5)式で示すとおり、一般には、0.55≦V(C5p)/V(C5 )≦0.90の範囲にあって、好ましくは0.59≦V(C5p)/V(C5 )≦0.86、より好ましくは0.61≦V(C5p)/V(C5 )≦0.86、最も好ましくは0.61≦V(C5p)/V(C5 )≦0.80の範囲にある。V(C5p)/V(C5 )がこの範囲に達しない場合NOxの発生抑制効果が小さく、一方、V(C5p)/V(C5 )がこの範囲を越える場合はガソリンのオクタン価が低下する場合があるため、それぞれ好ましくない。
【0009】上記した炭素数5の炭化水素のガソリン中の炭化水素成分全量に対する含有量(V(C5 )容量%)、炭素数6の炭化水素のガソリン中の炭化水素成分全量に対する含有量(V(C6 )容量%)及びガソリン中の炭化水素成分全量に対する炭素数5のパラフィン系炭化水素の含有量(V(C5p)容量%)は、いずれも以下に示すガスクロマトグラフィー法により定量される値である。すなわち、カラムにはメチルシリコンのキャピラリーカラム、キャリアガスにはヘリウム又は窒素を、検出器には水素イオン化検出器(FID)を用い、カラム長は25〜50m、キャリアガス流量は0.5 〜1.5ml/min 、分割比は1:50〜1:250、注入口温度は150 〜250 ℃、初期カラム温度は-10 〜10℃、終期カラム温度は200 〜250 ℃、検出器温度は150 〜250 ℃の条件で測定した値である。
【0010】本発明のガソリンに含まれる炭素数5の炭化水素としては、具体的には例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、シクロペンタンなどを挙げることができ、一方、炭素数6の炭化水素としては、具体的には例えば、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−2−ブテン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロヘキセン、1−メチルシクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、ベンゼンなどを挙げることができる。また、炭素数5のパラフィン系炭化水素としては、具体的にはn−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタンが挙げられる。
【0011】本発明のガソリンにおいて蒸留性状は任意であるが、■0.45≦Rv<0.65の場合は、30%留出温度を60〜70℃、50%留出温度を85〜95℃、70%留出温度を113℃以下、90%留出温度を160 ℃以下に、■0.65≦Rv≦0.70の場合は、30%留出温度を57〜67℃、50%留出温度を80〜93℃、70%留出温度を108 ℃以下、90%留出温度を155 ℃以下に、■0.70<Rv≦0.95の場合は、30%留出温度を55〜65℃、50%留出温度を77〜90℃、70%留出温度を105 ℃以下、90%留出温度を150 ℃以下にするのがよい。なお、ここでいう30%留出温度、50%留出温度、70%留出温度及び90%留出温度とは、JIS K 2254「燃料油蒸留試験方法」によって規定されている留出温度を意味する。さらに、本発明のガソリンにおいてガソリン中の炭化水素成分の組成は任意であるが、ガソリン中の炭化水素成分についてはオレフィン分含有量を18容量%以下、芳香族分含有量を42容量%以下とするのが好ましい。ここでいうオレフィン分含有量及び芳香族分含有量は、JIS K 2536の燃料油炭化水素成分試験方法(けい光指示薬吸着法)によって測定される値を意味している。
【0012】本発明の無鉛高オクタン価ガソリンの製造方法は任意であるが、通常、MTBEと通常のガソリンに用いられている基材を適宜調合することにより製造することができる。これらの調合基材としては、具体的には例えば、接触分解法、水素化分解法などで得られる分解ガソリン、接触改質法などで得られる改質ガソリン、オレフィンの重合により得られる重合ガソリン、イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加(アルキル化)することにより得られるアルキレート、軽質ナフサ、異性化ガソリン、脱n−パラフィン油、またこれらの特定範囲の留分や芳香族炭化水素などが挙げられる。特に炭素数5の炭化水素及び炭素数6の炭化水素は、具体的には例えば、軽質ナフサ、改質ガソリンの軽質留分、分解ガソリンの軽質留分、異性化ガソリンを調合することにより得ることができ、また炭素数5のパラフィン系炭化水素は、具体的には例えば、軽質ナフサ、改質ガソリンの軽質留分、異性化ガソリンなどから主として得ることができる。本発明のガソリンは、上述したとおり、必須成分であるMTBE3〜15容量%以外の調合材は任意のものが使用でき、またそれら調合材の調合割合も任意であるが、具体的には例えば、MTBE3〜15容量%の他に、軽質ナフサ0〜10容量%、改質ガソリンの沸点が初留点〜120 ℃程度の軽質留分5〜35容量%、改質ガソリンの沸点が110 ℃程度〜終点までの重質留分15〜45容量%、分解ガソリンの沸点が初留点〜90℃程度の軽質留分15〜45容量%、アルキレート0〜25容量%、ブタン0〜10容量%を調合することなどによって得ることができる。しかしながら本発明においては、最終的に調合されたガソリンが、無鉛で、リサーチ法オクタン価、リード蒸気圧、密度及び硫黄分の範囲を規定しただけでなく、(1)〜(5)式を満たす、すなわちガソリン全量中のMTBE含有量、ガソリン中の炭化水素成分全量中の炭素数5の炭化水素の含有量、炭素数6の炭化水素の含有量及び炭素数6のパラフィン系炭化水素の含有量の範囲を細かく規定したことによって初めてNOxの抑制効果とエンジン冷機時の運転性の向上という優れた性能を有する無鉛高オクタン価ガソリンを得ることができたものであり、そのためには単に上記の例のように調合材を混ぜれば良いというものではなく、使用する調合材の性状、組成に応じた調合割合を厳密に選択する必要がある。
【0013】さらに、本発明のガソリンにおいて、必要に応じてフェノール系、アミン系などの酸化防止剤、シッフ型化合物やチオアミド型化合物などの金属不活性化剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどの清浄分散剤、多価アルコール及びそのエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤及びアゾ染料などの着色剤など、公知の燃料油添加剤を1種又は数種組み合わせて添加してもよい。これら燃料油添加剤の添加量は任意であるが、通常、その合計添加量が0.1 重量%以下となるように添加するのが好ましい。またさらに、本発明のガソリンに、必要に応じてメタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、エチル−t−ブチルエーテル、メチル−t−アミルエーテル及びエチル−t−アミルエーテルなどのオクタン価向上剤を添加してもよい。これらオクタン価向上剤の添加量も任意であるが、通常、ガソリン全量に対し、10容量%以下であるのが好ましい。
【0014】
【実施例】以下、本発明の内容を、実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに何等限定されるものではない。なお、表1は実施例及び比較例に用いた調合材の組成を示す。
【0015】
表1 軽 質 アルキ ナフサ 留分A 留分B 留分C 留分D レート ブタンリサーチ法オクタン価 74.1 93.0 84.1 114.0 96.2 96.5 92.0V(C5 )容量% 43.1 16.7 34.6 0.0 52.2 6.7 0.0V(C6 )容量% 43.1 36.9 40.2 0.0 33.6 6.1 0.0V(C5p)容量% 39.0 16.2 32.7 0.0 30.5 6.4 0.0オレフィン分容量% 0 2 3 0 50 1 0芳香族分 容量% 0 40 17 92 1 0 0 注)留分A=改質ガソリン軽質留分(沸点:初留点〜120 ℃)
留分B=改質ガソリン軽質留分(沸点:初留点〜105 ℃)
留分C=改質ガソリン重質留分(沸点:110 ℃〜終点)
留分D=分解ガソリン軽質留分(沸点:初留点〜90℃)
【0016】実施例1及び比較例1MTBE5容量%、軽質ナフサ4容量%、上記の留分A14容量%、留分C38容量%、留分D28容量%、アルキレート11容量%を配合し、本発明に係る実施例1の無鉛ガソリンを得た。なお、比較のため、MTBEを同量含有し、かつ表1に示す調合材を使用して比較例1の無鉛ガソリンを得た。得られた無鉛ガソリンの性状及び組成を表2に示す。これらの実施例と比較例に示すガソリンを用いて、以下の各種の性能試験を行い、その結果も表2に併記した。
[排出ガス試験]総排気量2156cc、燃料噴射式、オートマチックトランスミッション、三元触媒、酸素センサを有する乗用車を使用し、10モード排出ガス試験によりNOxを測定した。
[冷機状態での加速性試験]総排気量1838cc、燃料噴射式、マニュアルトランスミッション、三元触媒、酸素センサを有する乗用車を使用した。シャシダイナモ上試験室温度0℃にて、冷機状態からエンジンを始動し、3速で30→70km/hの全開加速を繰り返し加速所要時間を測定した。3回〜5回目の加速所要時間の平均値を冷機時の運転性の指標とした。
【0017】
表2 実施例1 比較例1リサーチ法オクタン価 100.2 101.4 リード蒸気圧(Rv) kgf/cm2 0.64 0.60 密度@15℃ g/cm3 0.749 0.754硫黄分 質量ppm 3 3 V(M) 容量% 5 5 V(C5 ) 容量% 19.4 15.5 V(C6 ) 容量% 17.0 13.2 V(C5p) 容量% 13.1 9.2 V(C5p)/V(C5 ) 0.68 0.59 11.5+0.1×V(M)容量% 12.0 12.0 30%留出温度 ℃ 68 70 50%留出温度 ℃ 91 97 70%留出温度 ℃ 117 126 90%留出温度 ℃ 142 146 オレフィン分 容量% 14 15 芳香族分 容量% 41 43 NOx濃度 g/km 0.029 0.035 加速所要時間 秒 9.30 9.45
【0018】本発明に係る実施例1の無鉛ガソリンは排出ガス試験及び冷機状態での加速性試験において、いずれも良好な性能を示している。それに対して比較例1はV(C5 )、V(C6 )及びV(C5p)の値が本発明の範囲に達しない場合であるが、排出ガス試験におけるNOx濃度及び冷機状態での加速性試験における加速所要時間とも実施例1より大きく、本発明のガソリンより性能が劣るものである。
【0019】実施例2及び比較例2MTBE5容量%、表1の留分A11容量%、留分B10容量%、留分C33容量%、留分D31容量%、アルキレート10容量%を配合し、本発明に係る実施例2の無鉛ガソリンを得た。比較のため、MTBEを同量含有し、かつ表1に示す調合材を使用して比較例2の無鉛ガソリンを得た。得られた無鉛ガソリンの性状及び組成を表3に示す。これらの実施例と比較例に示すガソリンを用いて、以下の各種の性能試験を行い、その結果も表3に併記した。
[排出ガス試験]総排気量1998cc、燃料噴射式、マニュアルトランスミッション、三元触媒、酸素センサを有する乗用車を使用し、10モード排出ガス試験によりNOxを測定した。
[冷機状態での加速性試験]総排気量1998cc、燃料噴射式、マニュアルトランスミッション、三元触媒、酸素センサを有する乗用車を使用した。シャシダイナモ上試験室温度0℃にて、冷機状態からエンジンを始動し、3速で30→70km/hの全開加速を繰り返し加速所要時間を測定した。3回〜5回目の加速所要時間の平均値を冷機時の運転性の指標とした。
【0020】



【0021】本発明に係る実施例2の無鉛ガソリンは排出ガス試験及び冷機状態での加速性試験において、いずれも良好な性能を示している。それに対して比較例2はV(C5 )、V(C6 )、V(C5p)及びV(C5p)/V(C5 )の値が本発明の範囲に達しない場合であるが、排出ガス試験におけるNOx濃度及び冷機状態での加速性試験における加速所要時間とも実施例2より大きく、本発明のガソリンより性能が劣るものである。
【0022】実施例3及び比較例3、4MTBE5容量%、軽質ナフサ3容量%、留分B15容量%、留分C35容量%、留分D30容量%、アルキレート10容量%、ブタン2容量%を配合し、本発明に係る実施例3の無鉛ガソリンを得た。比較のため、MTBEを同量含有し、かつ表1に示す調合材を使用して比較例3及び4の無鉛ガソリンを得た。得られた無鉛ガソリンの性状及び組成を表4に示す。これらの実施例と比較例に示すガソリンを用いて、以下の各種の性能試験を行い、その結果も表4に併記した。
[排出ガス試験]総排気量1998cc、燃料噴射式、三元触媒、酸素センサを有するエンジンを使用した。触媒温度を350 ℃、エンジン回転数を800rpmに一定とし、吸気負圧を-550mmHg→-400mmHgと変化させた排出ガス試験において、排出ガス中NOx濃度の最高値を測定した。
[空燃比応答性試験]総排気量2960cc、燃料噴射式エンジンを使用した。エンジン冷却水温度を40℃、エンジン潤滑油温度を40℃、エンジン回転数を1200rpm 、吸気負圧を-400mmHgの条件下で、空燃比18→12になるような信号を燃料噴射装置に与え、10サイクル中のシリンダー内混合気の実際の空燃比変化を測定した。この結果より燃料噴射量変化に対するシリンダー内混合気空燃比の変化率を空燃比応答性として、冷機時の運転性の指標として評価した。
【0023】
表4 実施例3 比較例3 比較例4リサーチ法オクタン価 100.3 101.1 100.4 リード蒸気圧(Rv) kgf/cm2 0.72 0.70 0.72 密度@15℃ g/cm3 0.746 0.749 0.743 硫黄分 質量ppm 4 4 4 V(M) 容量% 5 5 5 V(C5 ) 容量% 22.8 19.6 28.7 V(C6 ) 容量% 18.2 16.8 16.0 V(C5p) 容量% 15.9 11.6 12.2 V(C5p)/V(C5 ) 0.70 0.59 0.43 11.5+0.1×V(M)容量% 12.0 12.0 12.0 30%留出温度 ℃ 63 67 60 50%留出温度 ℃ 85 91 80 70%留出温度 ℃ 114 116 118 90%留出温度 ℃ 141 143 141 オレフィン分 容量% 16 16 25 芳香族分 容量% 35 41 35 NOx濃度 ppm 610 930 800 空燃比応答性 % 78 75 78
【0024】本発明に係る実施例3の無鉛ガソリンは排出ガス試験及び空燃比応答性試験において、いずれも良好な性能を示している。それに対して比較例3はV(C5 )の値のみが本発明の範囲に達しない場合であるが、排出ガス試験におけるNOx濃度及び空燃比応答性試験における空燃比応答性とも実施例より劣っている。また比較例4はV(C5p)/V(C5 )の値のみが本発明の範囲に達しない場合であるが、空燃比応答性には優れるものの、排出ガス試験におけるNOx濃度が極めて大きく、比較例のいずれの無鉛ガソリンも本発明のガソリンより性能が劣るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 リサーチ法オクタン価が98.0以上、リード蒸気圧(Rv)が0.45〜0.95kgf/cm2 、15℃における密度が0.735 〜0.755g/cm3 、硫黄分が50質量ppm 以下であり、かつ以下の(1)〜(5)式を満たすことを特徴とする無鉛ガソリン。
(1)3≦V(M)≦15(2)■0.45≦Rv<0.65の場合、17≦V(C5 )≦20■0.65≦Rv≦0.70の場合、18≦V(C5 )≦25■0.70<Rv≦0.95の場合、20≦V(C5 )≦35(3)15≦V(C6 )≦30(4)11.5+0.1 ×V(M)≦V(C5p)≦30(5)0.55≦V(C5p)/V(C5 )≦0.90上記式中、V(M)はガソリン全量に対するメチル−t−ブチルエーテルの容量%を、Rvはガソリンのリード蒸気圧(kmf/cm2 )を、V(C5 )はガソリン中の炭化水素成分全量に対する炭素数5の炭化水素の容量%を、V(C6 )はガソリン中の炭化水素成分全量に対する炭素数6の炭化水素の容量%を、V(C5p)はガソリン中の炭化水素成分全量に対する炭素数5のパラフィン系炭化水素の容量%をそれぞれ示す。

【公開番号】特開平6−128570
【公開日】平成6年(1994)5月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−301855
【出願日】平成4年(1992)10月14日
【出願人】(000004444)日本石油株式会社 (1,898)