説明

焼酎粕の廃液濾過装置

【課題】濾布の有効利用面積に向上させ、濾過効率が低下しない装置を提供すること。また、フィルタの目詰まりを解消する装置を提供すること。さらに、固液分離に係る電気エネルギーの電力使用量を抑え、エネルギーフリー構造とする装置を提供する。
【解決手段】水平に配置され、化学繊維からなる長繊維の濾布が設けられたフィルタ1と、前記フィルタ1に焼酎粕廃液を供給する供給装置3と、フィルタ1で濾した濾過液を回収するトレー2と、フィルタ1を傾けて残渣を回収するための駆動手段4と、を備えたことを特徴とする焼酎粕の廃液濾過装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタに焼酎粕廃液を供給し、固液分離する焼酎粕の廃液濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
焼酎の蒸留過程で発生する余剰廃液から、焼酎粕などの固形物を分離する焼酎粕の廃液濾過装置がある。一般に、焼酎粕の絞り粕は、粒子が極めて小さく繊維質が細かいため、フィルタを利用した場合、目詰まりがはげしく、濾過するのに時間を要する。
【0003】
図8は、従来の焼酎粕の廃液濾過装置の全貌を示す断面図である。図8に示すように、従来の焼酎粕の廃液濾過装置20は、同一出願人が試作研究を重ね、開発した装置である。直方体の容器21の上部に、廃液分配器22が配置され、下部にはフィルタユニット30が配置されている。廃液分配器22は、架橋フレーム32に支持され、濾過区画室25に1つ置きに廃液を貯蔵する区画化された廃液区画室26を備えている。
焼酎粕廃液は、図示しない廃液槽からポンプにより上部から供給され、廃液分配器22内の仕切り28を乗り越えて各廃液区画室26に注がれる。つぎに、電磁弁27により弁23が上昇し開口すると、焼酎粕廃液は、下部に配置されたフィルタユニット30の濾過区画室31に注がれる。
【0004】
図9は、図8に示すフィルタユニットの分解斜視図である。図9に示すように、フィルタユニット30は、立て置きにしたフィルタ33群によって構成され、濾過区画室31が形成されている。
図8に示すように、各2枚のフィルタ33によって構成された濾過区画室31に注がれた焼酎粕廃液は、綿布のフィルタで濾された液が矢印で示すように、外側に漏れ出るようにして廃液ライン37へ回収される。フィルタ33とフィルタ33の間に残った残渣の固形分は、シャットオフ弁34の開口によって、固形ライン38へと別々に回収される。
【特許文献1】特開2007−283185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図8、図9に示すような従来の焼酎粕の廃液濾過装置は、フィルタが立列に並べて焼酎粕廃液(以下、廃液)をためる方式では、濾過の経過にしたがって、水面が下がってくるため、下部で処理することになり、フィルタの有効利用面積が減少する結果になり、濾過効率が低下するという問題があった。
また、従来のフィルタには綿布の濾布を使用していたため、目詰まりが激しく、濾布が頻繁に目詰まりを起すので、頻繁に交換が必要になり、メンテナンスに多大な労力がかかり、その間濾過作業を中断しなければならないという問題があった。
【0006】
これまで、濾布1aとして使用されていた綿布(従来から豆腐や醤油のしぼりに使用されてきている)は、目詰まりをさせながら濾過能力を上げるという逆手の使い方であった。植物性綿布の濾布の特徴は、短繊維であり、毛ば立ちした毛が多く、この毛が残渣を捕捉する。
そこで、フィルタ1の濾布1aに短繊維の綿布を採用した場合、傾斜させて残渣を排出させようとして傾斜させても、毛に捕捉され、また、綿布の隙間に入り込んだ細かな残渣が付着して排出されず、2回目、3回目の焼酎粕廃液の供給で、濾過能力も喪失してしまい、濾布自体を交換しなければならないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明では、固液を分離する焼酎粕の廃液濾過装置において、濾布の有効利用面積に向上させ、濾過効率が低下しない焼酎粕の廃液濾過装置を提供することを第1の課題とする。また、フィルタの目詰まりを解消する装置を提供することを第2の課題とする。さらに、固液分離に係る電気エネルギーの電力使用量を抑え、エネルギーフリー構造とする装置を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明の焼酎粕の廃液濾過装置(10)は、水平に配置され、化学繊維からなる長繊維の濾布が設けられたフィルタ(1)と、前記フィルタ(1)に焼酎粕廃液を供給する漏斗(3)と、前記フィルタ(1)で濾した濾過液を回収するトレー(2)と、前記フィルタ(1)を傾けて残渣を回収するための駆動手段(4)と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の焼酎粕の廃液濾過装置であって、前記フィルタ(1)が上下方向へ複数枚設けられた下部フィルタユニット(11e)と、前記フィルタ(1)が上下方向へ複数枚設けられた上部フィルタユニット(11f)と、を備え、下部フィルタユニット(11e)の上に、上部フィルタユニット(11f)を重ねて配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明の焼酎粕の廃液濾過装置によれば、フィルタが水平に配置され、化学繊維からなる長繊維の濾布が設けられたことにより、短繊維の綿布のような毛ばたちがなく、濾布の目詰まりが起きにくいため、メンテナンスフリーの廃液濾過装置を提供することができる。また、水平配置によりフィルタの有効面積をフルに使うことができるので、高い濾過効率を発揮することができる。さらに、濾布交換のメンテナンスに多大な労力がかかり頻繁な濾布の交換等が不要になることから、経済的である。また、フィルタの水平配置により、重力を利用した濾過装置となる固液分離装置にしたことにより、固液分離に係る電気および化石燃料の使用量を抑え、エネルギーフリー構造とすることができる。
【0011】
請求項2に係る本発明の焼酎粕の廃液濾過装置によれば、フィルタが上下方向へ複数枚設けられた下部フィルタユニットの上に、上部フィルタユニットを重ねて配置したことにより、2段、3段、4段重ねが可能であり、濾過に時間を要する濾過効率を向上させると共に、さらに、多大な労力がかかり頻繁な濾布の交換等が不要になることから、極めて経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の処理方法を施す「焼酎粕の廃液」とは、焼酎の原料であるところの米や麦等に麹菌と酵母を作用させて得られるいわゆる「二次もろみ」を、最終製品である焼酎を調製するために行う蒸留過程において生成する廃液のことをいう。
なお、本発明の処理方法を施す対象となる焼酎は、現在焼酎乙類として分類される本格焼酎のことをいい、醸造用アルコールを薄めた甲類焼酎は対象外である。さらに、乙類焼酎であれば、本発明の処理方法を施しうる種類が限定されるものではなく、芋焼酎、米焼酎、麦焼酎、そば焼酎、黒糖焼酎、白糠焼酎、きび焼酎等について本発明の処理方法を施すことが可能である。
【0013】
本発明の焼酎粕の廃液濾過装置の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の焼酎粕の廃液濾過装置の正面図であり、図2は図1の右側面図である。図1に示すように、焼酎粕の廃液濾過装置10は、左ユニット11aと右ユニット11bの2つから構成されている。また、左ユニット11aには2つの下部、上部のフィルタユニット11c,11dが構成され、右ユニット11bにも2つの下部、上部のフィルタユニット11e,11fが構成されており、左右に2つずつ、上下に2段重ねに配置されている。
なお、フィルタユニット11の説明は、図1の右下に図示された下部フィルタユニット11eについてのみ、詳細に説明し、その他は同符合を付し、詳細に説明は省略する。
下部フィルタユニット11eのケースの外形は、図1に示す正面視で、正方形に形成され、そのサイズは約1.1mである。また、図2に示す側面視では長方形に形成され、その長方形の長さは約1.6mである。
【0014】
図1に示すように、焼酎粕の廃液濾過装置10の架台であるフレーム12は軽量鉄骨によって構成され、床(フロア)6の上には、ベース12aが配置され、このベース12aから上方へ8本のポスト12bが立設され、左ユニット11aと右ユニット11bのつなぎには、下方にステー12cと中央にステー12d、上方に柵12fが設けられている。また、上部フィルタユニット11d,11fのメンテナンス用に、図示しない梯子が背面に配置され、2階には足場の床12h(図2参照)が設けられている。
また、左ユニット11aと右ユニット11bとは、左右対称に構成されている。
【0015】
下部フィルタユニット11eは、図2の下方に示すように、複数枚設けられたフィルタ1と、濾過液を回収するトレー2と第1樋5(図1参照)と、焼酎粕廃液を供給する漏斗3と、残渣を排出するための駆動手段4のエアシリンダ4aと、残渣を回収する第2樋9(図1参照)と、から構成されている。図2に示すように、フィルタユニット11eの両側からシャフト(軸)11gが突設されており。この両端のシャフト11gが両端に設けられた軸受箱4eに回動自在に挿通されている。なお、下部フィルタユニット11eと上部下部フィルタユニット11fとは、それぞれ同様である。
【0016】
図3は、図1に示すフィルタの拡大断面図である。図3に示すように、フィルタ1の外枠1bには開口部が形成され、この開口部には金網1cの底板が固定されている。そして、金網1cの上面に濾布1aが設けられ、濾布1aは外枠1bの縁に配置した押え金具1dによって固定されている。フィルタ1の深さは約50〜70mmであり、金網1cの下面近傍には1〜3度の傾斜角を有してトレー2が配置されている。
フィルタ1は、例えば、10枚が水平に配置され、上下方向へ等間隔に設けられている
。また、フィルタ1の濾布1aは、化学繊維の長繊維から構成されており、外枠1b上面
に張り、45度の傾斜で残渣が流れ落ちる際に、外枠1bに出っ張り等の障害がないよう
になっている。
【0017】
化学繊維の長繊維とは、綿花の短繊維を紡いで糸にするのではなくて、化学的に作り出した一本の細い糸が途切れずに通った長い繊維をいう。化学繊維には多くの種類がある。石油を原料にした石油化学製品と、パルプなど植物を原料にして作られている。強靭で耐摩耗性のあるナイロン、ポリエチレンテレフタレート樹脂を溶融紡糸した合成繊維のポリエステル、プロピレンを重合して製造されるポリプロピレン製等は濾布に好適である。
また、湿式紡糸の方法で製造されるセルロース系の繊維のレーヨンや、酢酸ビニルから誘導されたポリビニルアルコールを原料とする合成繊維であるビニロンであってもよい。石油を原料とする合成繊維で、シルクに似た長繊維のアクリルであっても構わない。なお、化学繊維のアクリルは、ウールに似た性質の短繊維のものも製造されているが、アクリルの短繊維は不向きである。
【0018】
図4は、濾布の種類別の目詰まりの検証結果を示す折れ線グラフである。縦軸が濾過された濾過液の量(cc)、横軸が焼酎粕廃液の供給回数である。また、折れ線グラフの黒丸印は、フィルタが短繊維の濾布のときのデータ、白丸印はフィルタが長繊維の濾布のときのデータである。
このデータは、短繊維の綿布(黒丸印)と化学繊維の長繊維の濾布(白丸印)に5分間毎、フィルタ1の濾布1aに焼酎粕廃液を100cc供給し、濾過されて落下する濾過液量(cc)を測定したものである。なお、データは5分置きに測定したものである。
【0019】
図4から判るように、黒丸印の綿布の短繊維は、最初、ほとんど目詰まりがないため、濾過量が14ccともっとも多く、2回目から8回目までは、低落傾向が顕著であり、6cc〜5.5ccで一定となる。これは、綿布がフィルタの場合、綿布特有の毛ばたちが多く、残渣への絡みつきにより、また、残渣が隙間の奥深く入り込むため、と考えられる。
これに対し、白丸印の長繊維の場合は、最初の1回目から10回目までの濾過量に変化がなく、7.5〜7.0ccの範囲でほぼ一定であることが判る。これは、長繊維の濾布の場合、毛ばたちがないため、残渣との絡みつきがなく、さらに目詰まりが起こしにくいため、と考えられる。この結果はメンテナンスフリーであるとする証明でもある。
【0020】
そこで、本発明は、濾布の目詰まりが起きにくい特徴のある化学繊維の長繊維をフィルタ1に使用することで、目詰まりの問題を解消した。長繊維の特徴は、毛ばたちが一切ないため、毛へのからみつきがなく、また、隙間に入り込んでも残渣が付着することがない。そのため、フィルタ1を傾斜させただけで、残渣がきれいにすべり落ちて排出されることが判った。それにより、目詰まりのない、繰り返しの使用が可能な濾布を提供できる。濾布の目詰まりが起こらないので、濾過の作業が安定する。メンテナンスが容易である点が、もっとも圧倒的に有利なメリットである。
【0021】
トレー2は、図3に示すように、フィルタ1の下面にそれぞれ接近させて配置されている。正面視のトレー2には内側に向かって濾過液が流れるように内向きに1〜3度の傾斜角が設けられているが、図2に示す側面視でのトレー2には傾斜角は不要である。正面視のトレー2には、1度の傾斜角を採用している。これにより、フィルタ1の枚数、例えば10枚分だけ、トレー2が配置されて、1回で10枚分の濾過ができる。この結果、濾過効率を飛躍的に高めることができる。
フィルタ1で濾した濾過液はトレー2を流下させ、第1樋5(図1参照)で回収している。
【0022】
供給装置3は、漏斗、または、如雨露(じょうろ)、または、それ以外の供給装置であってよい。供給装置3は、10本に分岐された熊手のような形状をしており、フィルタ1にそれぞれ1本の漏斗3が配置されて焼酎粕廃液を供給する。フィルタユニット11eには太い1本のパイプが配管され、この太いパイプからゴムホースまたはビニールホース等の可撓性のある柔軟な材質で構成したホース8が電磁弁7を介して接続されている。フィルタユニット11eの45度の回動に伴う漏斗3の回動は、このホース8により、支障がなくできる。
この電磁弁7は、アルコールにより膨潤しない材質のシールを内蔵した電磁バルブであり、焼酎粕廃液の供給を流通(ON)、遮断(OFF)する。
この電磁弁7から前記した10本に分岐された漏斗3が配管され、漏斗3の1本ずつが各フィルタ1に配管されている。
【0023】
第1樋5は、図1に示すように、左ユニット11aの右(中央)側と、右ユニット11bの左(中央)側に配設され、一旦各トレー2で受けて流下させた後、各トレー2から流下した濾過液をまとめて回収する。この第1樋5の設置により、濾過液が外に飛散することを防止している。
また、第2樋9は、左ユニット11aの左(外)側と、右ユニット11bの右(外)側に配設されており、残渣を流下させて回収する。各フィルタユニット11c〜11fの下部には、回動の際の干渉がない位置に大きく勾配が設けられたシュート9aが配置されている。この第2樋9の設置により、残渣が外に飛散することが遮断される。
これらの第1樋5および第2樋9、シュート9a等は、ステンレス薄板またはその代替品によって形成されている。
【0024】
駆動手段4は、環境にやさしいエアシリンダ4aであり、漏れがあっても大気中に開放
されるため、床9が汚れることがない。このエアシリンダ4aは、後端部を中心に回動可
能にした2山タイプのクレビス形エアシリンダである。なお、1山タイプのクレビス形で
あってもよい。シリンダ4aの後退端には回動自在にピン穴が設けられている。また、フ
レーム(架台)12のベース12aにはステー12gが突設されており、このピン穴とシ
リンダ4aのピン穴にピン4eが装着され、エアシリンダ4aが回動自在になっている。
また、ポスト12bとポスト12bに渡したステー(横架材)12eの中央には軸受箱
4eがボルトによって固定されている。この軸受箱4eにはフィルタユニット11eのシ
ャフト(軸)11gが挿通され、挿通されたシャフト11gの端面にアーム4fが固定さ
れ、シャフト11gを回動自在に支持している。
また、シリンダ4aのピストンロッド4bには、図1に示すように、リンク機構が構成
されている。また、長尺リンク4dもそれぞれのアーム4fの先端に設けられたピン穴と長尺リンク4dの両端に設けられたピン穴とがピン4gによって連結され、かつ、この接続ピン4gには、シリンダロッド4bの先端部が連結されている。
【0025】
つまり、下部フィルタユニット11eのシャフト11gが軸受箱4eに軸支され、このシャフト11gに固定された第1アーム4fと、上部フィルタユニット11fのシャフト11gが軸受箱4eに軸支され、このシャフト11gに固定された第2アーム4hに、長尺リンク4dの両端を連結し、駆動手段4のエアシリンダ4aを第1アーム4fに連結したことによって、下部フィルタユニット11eと上部フィルタユニット11fと、を一本のエアシリンダ4aによって連動させて傾けることができる。
このエアシリンダ4aの駆動により、濾過液を回収する中央側とは反対方向の外側にフィルタ1を大きく傾け、例えば床面との角度αが45度に傾けると、残渣(固体とは言えないほどの液体が含んでいる状態になっている)は、毛ばたちが一切ない化学繊維の長繊維の濾布1aから、絡みが小さいため、スムーズにすべり落ちて排出される(破線の矢印参照)。この状態で一定時間の傾斜により、残渣のほとんどがすべり落ち、第2樋9に流下する。
【0026】
つぎに、焼酎粕の廃液濾過装置10の動作について説明する。
図5は、駆動手段の駆動によりフィルタユニットの姿勢が回動した状態を示す正面図である。なお、フィルタユニット11c,11d,11e,11fの回動は同じであるので、フィルタユニット11eを中心に説明する。
フィルタユニット11eの通常の姿勢は、図1、図2に示すように、床(フロア)6に平行であり、10枚のフィルタ1の姿勢も床6に平行であるが、フィルタ1の下面に近接するトレー2は1度の傾斜面になっている。そこで、サイクルタイム5分のうち最初の4分間は漏斗3から焼酎粕廃液が供給される。この焼酎粕廃液が供給されると、図3に示すフィルタ1の濾布1aによって濾過された濾過液がトレー2に落ち、トレー2を流下して第1樋5に集められ、図示しないタンクに回収される。
また、4分間供給の後、1分間の供給停止により、フィルタ1に供給された焼酎粕廃液が、フィルタ1の濾過機能によりすべて濾過させるに十分な時間となっている。
【0027】
1サイクル5分間の20秒前に、図5に示す駆動手段4のエアシリンダ4aに駆動指令が入いると、図示しない空圧電磁弁が切り替えられ、高圧エア(0.5MPa)によってピストンロッド4bが伸張する。そうすると、図5に示すように、右ユニット11bのフィルタユニット11e,11fは、リンク機構の働きによりαが45度、左回転方向へ回動する。同様に左ユニット11aのフィルタユニット11c,11dも、リンク機構の働きにより、αが45度分だけ、左回転方向へ回動して静止する。
なお、仕様によっては、αは60度であってもよいし、90度であっても構わない。
そうすると、フィルタ1の長繊維の濾布1a上に残った残渣が、すべり落ちて第2樋9に直接落下する。あるものは下部に設けられたシュート9aにガイドされて第2樋9に流下し、図示しないタンクに回収される。
この約5秒間の傾斜により、長繊維の濾布1a上にたまった残渣がすべり落ちて、第2樋5に回収される。
そして、フィルタユニット11の姿勢を元に戻すため、1サイクルの10秒前に、図示しない空圧電磁弁が切り替えられ、エアシリンダ4aのピストンロッド4bが短縮されて水平状態に戻され、1サイクル5分の工程が終了する。その後は、この1サイクル5分の繰り返しであり、昼夜問わず、延々と24時間繰り返される。
【0028】
なお、図1に示す焼酎粕の廃液処理装置10は、1バッチ当り、1tonの焼酎粕の廃液を濾過する処理能力あり、建屋のレイアウトに合わせて高層配置、平置き配置が可能であり、柔軟な構成が容易である。
図6は高層配置を示す正面図、図7は平置き配置を示す正面図である。図6に示すように、顧客の建屋の天井の高さに余裕がある場合は、フロアスペースを節約した高層配置にする。このように、廃液処理装置10の高さを3重、4重にすることができる。また、図7に示すように、顧客の建屋の天井の高さに制約がある場合は、平置き配置にすることも可能であり、いかようにも対応できる柔軟性を備えている。
【0029】
以上述べたように、本発明の焼酎粕の廃液処理装置によれば、従来の処理装置とは比較にならないほどの簡素な構成の組み合わせであり、固液分離処理に重力だけを利用するため、電気エネルギーを極力使用いない、CO2の発生を抑えたエネルギーフリー構造である。また、長繊維の濾布を採用することにより、短繊維の綿布のような濾過能力の喪失や、頻繁な濾布自体の交換の必要がなく、メンテナンスフリーを可能にした。フィルタの目詰まりがないフィルタの採用により、メンテナンスフリーの焼酎粕の廃液濾過装置を提供することができる。
なお、この焼酎粕の廃液処理装置は、焼酎粕以外の液を濾過する浄化装置としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の焼酎粕の廃液濾過装置の正面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1に示すフィルタの拡大断面図である。
【図4】濾布の種類別の目詰まりの検証結果を示す折れ線グラフである。
【図5】駆動手段の駆動によりフィルタユニットの姿勢が回動した状態を示す正面図である。
【図6】高層配置を示す正面図である。
【図7】平置き配置を示す正面図である。
【図8】従来の焼酎粕の廃液濾過装置の全貌を示す断面図である。
【図9】図8に示すフィルタユニットの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 フィルタ
1a 濾布(長繊維の布)
1b 外枠
1c 金網
1d 外枠
2 トレー
3 供給装置
4 駆動手段
4a エアシリンダ
4b ピストンロッド
4c ピン
4d 長尺リンク
4e ピン
4f 第1アーム
4g ピン
4h 第2アーム
5 第1樋(濾過液用)
6 床(フロア)
7 電磁弁
8 ホース
9 第2樋(残渣用)
10 廃液濾過装置
11 フィルタユニット
11c,11e 下部フィルタユニット
11d,11f 上部フィルタユニット
11a 左ユニット
11b 右ユニット
11g シャフト(軸)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に配置され、化学繊維からなる長繊維の濾布が設けられたフィルタ(1)と、
前記フィルタ(1)に焼酎粕廃液を供給する供給装置(3)と、
前記フィルタ(1)で濾した濾過液を回収するトレー(2)と、
前記フィルタ(1)を傾けて残渣を回収するための駆動手段(4)と、
を備えたことを特徴とする焼酎粕の廃液濾過装置(10)。
【請求項2】
前記フィルタ(1)が上下方向へ複数枚設けられた下部フィルタユニット(11e)と、
前記フィルタ(1)が上下方向へ複数枚設けられた上部フィルタユニット(11f)と、
を備え、
下部フィルタユニット(11e)の上に、上部フィルタユニット(11f)を重ねて配置したことを特徴とする請求項1に記載の焼酎粕の廃液濾過装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−247974(P2009−247974A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98208(P2008−98208)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(594056823)株式会社内田製作所 (1)
【Fターム(参考)】