照明用マイクロキャビティOLED
マイクロキャビティを有する有機発光ダイオード(OLED)に関する様々な方法とシステムが提供される。一実施形態では、白色光源は、青色光の狭いスペクトルを発光するように構成された第1のマイクロキャビティ有機発光ダイオード(OLED)と、緑色光の狭いスペクトルを発光するように構成された第2のマクロキャビティOLEDと、赤色光の狭いスペクトルを発光するように構成された第3のマクロキャビティOLEDと、を含む。別の実施形態では、光源は、ガラス基板上に配置された複数のOLEDを含む。OLEDの各々は、予め規定されたスペクトルでガラス基板に実質的に直交する光を発光するように構成されている。OLEDの各々は、半反射ミラーと、 発光層を含み、各OLED中の発光層がOLEDによって発光された光のそれぞれの色に対応する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]この出願は、2010年2月23日に出願されシリアル番号61/307,191を有する“MICROCAVITY OLEDS FOR LIGHTING”と題された同時係属中の米国仮出願の優先権を主張し、その全体がここで引用によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
広帯域光源は、自然な太陽光に類似する照明スペクトルを有する高品質照明を提供するのに使われることができる。可視光スペクトル全体に渡る光を提供しない光源は、物体の色が鈍く見えるようにするかまたは、物体が違う色であるように見えるようにすることさえできる。例えば、限定された量の赤色光を発光する商業用蛍光灯は、物体が鈍い赤かまたは茶色にさえ見えるようにすることができる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の多くの側面が、以下の図面を参照することでより良く理解されることができる。図中のコンポーネンツは必ずしも実寸大ではなく、代りに本開示の原理を明確に描写することに強調が置かれている。しかも、図において、同様の参照番号はいくつかの図を通して対応する部分を指し示す。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、本開示の様々な実施形態に従った、白色発光するOLEDの複数の層を通した発光された光の伝導の非限定的な例を描いているグラフィック表現である。
【図2】図2は、本開示の様々な実施形態に従った、図1の白色発光するOLEDの複数の層の様々なモードを描いているグラフィック表現である。
【図3】図3は、本開示の様々な実施形態に従った、マイクロキャビティ有機発光ダイオード(OLED)の例のグラフィック表現である。
【図4】図4は、本開示の様々な実施形態に従った、マイクロキャビティ有機発光ダイオード(OLED)の例のグラフィック表現である。
【図5】図5は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDの半反射ミラーの例のグラフィック表現である。
【図6】図6は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDの半反射ミラーの例のグラフィック表現である。
【図7】図7は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDとマイクロキャビティを欠いたOLEDの光強度の非限定的な例を描いているグラフィック表現である。
【図8】図8は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDとマイクロキャビティを欠いたOLEDの光強度の非限定的な例を描いているグラフィック表現である。
【図9】図9は、本開示の様々な実施形態に従った、複数の図3および4のマイクロキャビティOLEDを含んだ白色光を発光する光源の例のグラフィック表現である。
【図10】図10は、本開示の様々な実施形態に従った、図9の白色光を発光する光源の光強度の非限定的な例を描いているグラフィック表現である。
【図11】図11は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDの製作を描いているフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ここに開示されるのは、マイクロキャビティを有する1つ以上の有機発光ダイオード(OLED)を含んだ光源の様々な実施形態と、それを製作する方法である。ここで図面中に描かれた通りの実施形態の記載を詳細に参照するが、そこではいくつかの図を通して同様の参照番号が同様の部分を指し示す。
【0006】
マイクロキャビティOLEDは、OLED基板と実質的に直交する光を発光する。OLEDのマイクロキャビティは、発光された光がOLED内に保持されることを許容する代わりに、OLEDによって発光された光がOLEDから外に向けられるのでOLEDが非常に効率的となり強い光を作成することを許容する。加えて、本出願は複数のマイクロキャビティOLEDを含んだ白色光源を記載する。いくつかの実施形態では、白色光源は、狭いスペクトルで強い赤色光を発光するマイクロキャビティOLEDと、狭いスペクトルで強い緑色光を発光するマイクロキャビティOLEDと、狭いスペクトルで強い青色光を発光するマイクロキャビティOLEDを含む。各マイクロキャビティOLEDが狭いスペクトルで特定の色を強く発光するので、白色光源が物体を照した時に、物体によって反射された可視色は、強度と白色光源によって発光された光の帯域の選択のために、明るく刺激的で暖かくなり得る。
【0007】
白熱および/または蛍光電球を使った人工照明を含んだ種々の光源が利用可能である。人工照明は、商業的、工業的またはオフィス設定で時々使われ、しばしば光パネルの形である。人工照明は、貧しい光抽出のためにそれらが発光する光の40−50%を失い得る。また、最新技術のLEDのような光源が100lm/W(ルーメンパーワット)の視感度を有しているとしても、人工照明の視感度は40lm/Wまで低くなり得る。
【0008】
光源が発光する光の帯域が広ければ広いほど、光源によって発光された光は太陽光により類似したものとなる。照明において使われる効果尺度は色調指数(CRI)である。CRIは、太陽のような自然光源との比較で様々な物体の色を再生する光源の能力の定量的測度である。可視スペクトル全体をカバーする広帯域光源は、90より大きなCRIを有する。対照的に、少量の赤色光を発光する商業用蛍光灯は、50まで低いCRIを有する。この赤色光の欠如のために、商業用蛍光灯によって照らされた時、赤い物体は鈍い赤かまたは茶色にさえ見える。白色発光するOLEDは、有機材料が幅広い発光スペクトルを有するので照明のために有用である。単一のOLEDパネル中に赤色、緑色および青色の発光体を組み合わせることは、発光スペクトルに応じて80よりも高いCRIを有するOLEDを生み出す。
【0009】
いくつかの効率的な白色発光するOLEDは、100lm/Wまでの視感度を有する。しかしながら、それは製造について実用的ではないエキゾチックな光抽出方法を要求する。図1は、白色発光するOLED100の複数の層を通した発光された光102の伝導の非限定的な例の図である。図1に見ることができるように、白色発光するOLED100から発光された光が有機層104、酸化インジウム錫(ITO)層106および/またはガラス基板108中の屈折および反射のために閉じ込められるので、発光された光102の僅かな部分のみが空気110中に抽出される。有機層104、ITO層106およびガラス基板108についての屈折率(n)の例も描かれている。
【0010】
図2は、白色発光するOLED100の複数の層の様々なモードの図である。図2に見ることができるように、薄膜導波モード202(即ち、図1の有機層104および/またはITO層106のモード)は発光された光102のおよそ40−50%を閉じ込め、基板モード204(即ち、図1のガラス基板108のモード)は発光された光102のおよそ20−30%を閉じ込め、発光された光102のおよそ20−30%だけが空気モード206に達する。ガラス基板モード204はレンズアレイまたはフォトニック結晶を使って排除され得る一方で、薄膜導波モード202は、有機/ITO層104/106がOLED100の内部にあって外部にアクセス可能ではないので、排除することが非常に難しい。
【0011】
図3は、マイクロキャビティOLED300の非限定的な実施形態の図である。マイクロキャビティOLED300は、ガラス基板302と、ガラス基板302上に形成された半反射ミラー304を含む。いくつかの実施形態では、半反射ミラー304は薄い銀層(例えば、およそ10−20nmの厚さ)であり、その他の実施形態では、半反射ミラー304は二酸化珪素(SiO2)と二酸化チタン(TiO2)のスタックを含んだ1/4波長スタックであり、それは更に詳細に後述される。更には、ITO層306が半反射ミラー304上に形成される。いくつかの実施形態では、ITO層306は、およそ10nmの厚さである。
【0012】
正孔輸送層308が、ITO層306上に形成される。いくつかの実施形態では、正孔輸送層308は、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(1,1-bis[(di-4-tolylamino)phenyl]cyclohexane)(TAPC)層を含み、それはおよそ50nmの厚さであっても良い。発光層310が、正孔輸送層308上に形成される。発光層310に含まれた材料が、マイクロキャビティOLED300によって発光される光の色(またはスペクトル周波数)を決定する。例えばおよそ585nmからおよそ675nmの範囲中の赤色光を発光するマイクロキャビティOLED300については、発光層310は、例えばトリス(2−フェニルイソキノリン)イリジウム(tris(2-phenylisoquinoline)iridium)(“Ir(pig)3”)を添加した3,5’−N,N’−ジカルバゾール−ベンゼン(3,5’-N,N’-dcarbazole-benzene)(“mCP”)を含んでいても良い。同様に、例えばおよそ525nmからおよそ655nmの範囲中の緑色光を発光するマイクロキャビティOLED300については、発光層310は、例えばファク−トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(fac-tris(2-phenylpyridinato)iridium(III)(“Ir(ppy)3”)を添加したmCPを含んでいても良い。同様に、例えばおよそ435nmからおよそ540nmの範囲中の青色光を発光するマイクロキャビティOLED300については、発光層310は、例えば3,5’−N,N’−ジカルバゾール−ベンゼン(mCP):イリジウム(III)ビス[(4,6−ジ−フルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2’]ピコリン酸(3,5’-N,N’-dicarazole-benzene(mCP):iridium(III)bis
[(4,6-di-fluorophenyl)-pyridinato-N,C2’]picolinate)(“Flrpic”)を含んでいても良い。
【0013】
電子輸送層312が、発光層310上に形成される。電子輸送層312は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10フェナントロリン(2,9-dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline)(BCP)層および/またはトリス[3−(3−ピリジル)−メシチル]ボラン(tris[3-(3-pyridyl)-mesityl]borane)(“3TPYMB”)層を含んでいても良い。更には、陰極314が、電子輸送層312上に形成される。陰極314は金属層を含む。例えば、陰極314は、炭酸セシウム(CsCO3)(およそ1nmの厚さ)とアルミニウム(Al)(およそ100nmの厚さ)かまたはフッ化リチウム(LiF)(およそ1nmの厚さ)とAl(およそ100nmの厚さ)を含んでいても良い。
【0014】
図4は、青色光を発光するマイクロキャビティOLED300の別の非限定的な実施形態の図である。図4に描かれた実施形態では、陰極314は、およそ100nmの厚さであるアルミニウム(Al)層414aと、およそ1nmの厚さであるLiF層414bを含む。LiF層414bは、およそ40nmの厚さであるBCP層412を含んだ電子輸送層312上に蒸着される。BCP層412は、およそ20nmの厚さであるmCP:Flrpic層410を含んだ発光層310上に蒸着される。加えて、発光層310は、およそ50nmの厚さであるTAPC層408aを含んだ正孔輸送層308上に蒸着される。更には、発光層310は、およそ25nmの厚さであり、およそ50nmの厚さのITO層306上に形成された、PEDOT:PSS層408bを含む。
【0015】
図5は、図3および4に描かれたマイクロキャビティOLED300の実施形態の半反射ミラー304の非限定的な例の図である。半反射ミラー304の描かれた例は、二酸化チタン(TiO2)層504b上に形成された、二酸化珪素(SiO2)層504aを含む1/4波長スタックである。SiO2層504aとTiO2層504bの厚さは各々、光の1/4波長に対応する。従って、半反射ミラー304の層504aおよび504bの厚さは、マイクロキャビティOLED300によって発光された光の波長に依存する。一実装では、二酸化珪素層504aはおよそ79nmの厚さであり。二酸化チタン層504bはおよそ48nmの厚さである。半反射ミラー304は、およそ1mmの厚さであっても良いガラス基板302上に形成される。いくつかの実施形態では、半反射ミラー304の面積は、およそ1インチ×およそ1インチである。また、いくつかの実施形態では、半反射ミラー304は、475nmにおいて0.39に実質的に等しい反射率(R)を有する。半反射ミラー304の反射能は、およそ40%とおよそ70%の間で変動しても良く、反射スペクトルは広い。
【0016】
図6は、図3および4に描かれたマイクロキャビティOLED300の実施形態の半反射ミラー304の別の非限定的な例の図である。図6に描かれた半反射ミラー304の例は、図5に描かれたような1セット(504a/504b)の代わりに図6に描かれた半反射ミラー304が2セットの二酸化珪素と二酸化チタン層(504a/504bおよび604a/604b)を含むこと以外は、図5に描かれた半反射ミラー304の例と同様である。一実装では、二酸化珪素層504aおよび604aはおよそ79nmの厚さであり、二酸化チタン層504bおよび604bはおよそ48nmの厚さである。その他の実装では、二酸化珪素層504aと604aおよび/または二酸化チタン層504bと604bは、異なる厚さを有していても良い。更には、その他の実施形態では、半反射ミラー304は、3セット以上の二酸化珪素および二酸化チタン層を含んでいても良い。図6に描かれたもののようないくつかの実施形態では、半反射ミラー304は、475nmにおいて0.70に実質的に等しいRを有する。図5および6に描かれた半反射ミラー304の各々は、低い屈折率を有する材料(例えば、SiO2)と高い屈折率を有する材料(例えば、TiO2)の交番する層を含む。
【0017】
図3に戻って、マイクロキャビティOLED300の動作がここで記載される。マイクロキャビティOLED300の陰極314が反射ミラーとしての役目を果たし、半反射ミラー304がハーフミラーとしての役目を果たし、よって陰極314と半反射ミラー304の間にマイクロキャビティ320を形成する。マイクロキャビティ320は、低い透過率と高い反射能の両方の性質を有する。言い換えると、半反射ミラー304は、部分的に透過性で部分的に透明な層である。光子がマイクロキャビティ320の内部で生成されるにつれて、それらはミラーによってマイクロキャビティ320bの両サイドから反射され、半反射ミラー304によって提供されたハーフミラーから伝導される。従って、ガラス基板302を通して半反射ミラー304から伝導された光316は、全ての方向への代わりに、ガラス基板302に実質的に直交する方向に伝導される。マイクロキャビティ320が発光された光を特定の方向に向き付けするので、マイクロキャビティOLED300によって発光された光のかなりの量もまたマイクロキャビティOLED300から伝導され、マイクロキャビティOLED300内に保持はされない。
【0018】
上述したマイクロキャビティ効果のために、マイクロキャビティOLED300は、マイクロキャビティ320を欠いたOLEDとは非常に異なる発光特性を有する。マイクロキャビティ320を欠いたOLEDは、全ての方向に光を発光するランベルト型光源である。ランベルト型光源は、発光された光の多くの量が無駄にされる(例えば、照らされるべき物体またはエリアを直接照らさない)ので、照明には望ましくない。他方、マイクロキャビティOLED300は、マイクロキャビティ320の反射性質に依存した方向性発光体である。結果として、マイクロキャビティOLED300は、マイクロキャビティ320を欠いたOLEDの効率のおよそ3〜4倍の効率を有することができる。
【0019】
図7は、図3に描かれたマイクロキャビティOLED300の実施形態と、マイクロキャビティ320を欠いたOLEDの実施形態の発光スペクトルのグラフである。特定には、図7は、マイクロキャビティOLED300対マイクロキャビティ320を欠いた緑色発光するOLEDについての、EL強度対波長のグラフである。図7に見ることができるように、マイクロキャビティOLED300の輝度はおよそ385nitsであるのに対し、緑色発光するOLEDの輝度はおよそ108nitsである。
【0020】
図8は、図7のマイクロキャビティOLED300の実施形態対マイクロキャビティ320を欠いたOLEDについての光の強度対光の角度の極座標プロットである。図8に見ることができるように、(「キャビティ無し」810と標記された)マイクロキャビティ320を欠いたOLEDは、(「キャビティ」820と標記された)マイクロキャビティOLED300よりも低い強度を有し、光は主に−30度と+30度の間の角度で光源から発光される。図7および8を一緒に考慮すると、マイクロキャビティOLED300については、発光された光のスペクトルと発光の角度の両方が狭いことを見ることができる。
【0021】
図9は、複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cを含んだ白色光を発光する光源900の非限定的な実施形態の図である。マイクロキャビティOLED300a、300b、300cは、非常に効率的であることができる燐光性のOLEDである。例えば、緑色光を発光するマイクロキャビティOLED300bの視感効率は、300lm/Wまで高くなることができる一方で、マイクロキャビティ無しの緑色光を発光するOLEDは、100lm/Wだけの視感効率を有し得る。更には、青色光を発光するマイクロキャビティOLED300aと赤色光を発光するマイクロキャビティOLED300cの効率は、各々60lm/Wより上であり得る。従って、複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cを含んだ白色発光する光源900は、およそ150−200lm/Wの全体的効率を達成し得る。この効率は、人工照明に使われたLEDの効率よりも3〜4倍大きくなり得る。
【0022】
赤、緑および青のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cから生成された白色光は、図10に示されたスペクトルと同様の発光スペクトルを有する。図10に見ることができるように、青色光316a(図9)は、実質的におよそ435nmからおよそ540nmの範囲内の波長に対応する強度1010を含んでいても良く、緑色光316b(図9)は、実質的におよそ525nmからおよそ655nmの範囲内の波長に対応する強度1020を含んでいても良く、赤色光316c(図9)は、実質的におよそ585nmからおよそ675nmの範囲内の波長に対応する強度1030を含んでいても良い。同様に、これも図10に見ることができるように、青色光は、実質的におよそ450nmからおよそ480nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含んでいても良く、緑色光は、実質的におよそ530nmからおよそ575nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含んでいても良く、赤色光は、実質的におよそ620nmからおよそ650nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含んでいても良い。従って、白色光を発光する光源900によって発光された白色光は、全ての波長について同じ強度を含んでおらず、むしろ発光スペクトルは或る色についてのピーク強度を含んだ狭いスペクトルを含む。光源900が物体を照らす時、物体から反射する色は、マイクロキャビティOLED300a、300b、300cによって発光された光の3つの狭い発光帯域が飽和したRGB色においてピークになるので、飽和しているように見える。白色光を発光する光源900の実施形態が物体を照らす時、物体の色は、白色光を発光する光源900によって発光され物体から反射された光の予め規定された帯域の結果として、より暖かく、より明るく刺激的で、より少なく鈍く見える。例えば、赤い物体は、物体が白熱光源によって照らされた時に見えるレンガの赤または赤ワインの赤よりも、白色光を発光する光源900によって照らされた時により多くの消防車の赤を有するように見える。加えて、白色光を発光する光源900によって発光された光は非常に方向性であるので、外部人工照明は必要無い。
【0023】
次に図11を参照すると、示されているのはマイクロキャビティOLED300(図3)を製作する方法の例を描いているフローチャート1100である。ブロック1102で始まって、ガラス基板302(図3)が提供される。ブロック1104では、半反射ミラー304(図3)がガラス基板302上に蒸着される。SiO2およびTiO2層のスタックを含んだ半反射ミラー304の場合(図5および6)には、SiO2およびTiO2の各層はスパッタリングによって蒸着されても良い。銀の薄い層を含んだ半反射ミラー304の場合には、銀は真空蒸着によって蒸着されることができる。いくつかの実施形態では、銀の層はおよそ10−20nmの厚さである。
【0024】
次に、ブロック1106では、ITO層306(図3)がスパッタリングによって蒸着される。いくつかの実施形態では、ITO層306はおよそ100nmの厚さである。正孔輸送層308(図3)がそれからブロック1108で蒸着される。正孔輸送層308をITO層306上に蒸着するのに真空蒸着が使われても良い。その後、発光層310(図3)がそれからブロック1110で正孔輸送層308上に蒸着される。発光層310を蒸着するのに真空蒸着が使われても良い。更には、電子輸送層312(図3)がブロック1112で発光層310上に蒸着される。電子輸送層312を蒸着するのに真空蒸着が使われても良い。発光層310が蒸着された後、陰極314(図3)がブロック1114で形成される。いくつかの実装では、陰極314は、炭酸セシウム(CsCO3)(およそ1nmの厚さ)、アルミニウム(Al)(およそ100nmの厚さ)および/またはフッ化リチウム(LiF)(およそ1nmの厚さ)の層を電子輸送層312上に蒸着することによって形成されても良い。
【0025】
図9を参照すると、白色光を発光する光源900を製作する方法は、複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cを製作することを含む。複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cは、図9に描かれているように共通の基板302上に製作されても良い。加えて、方法は、青色、緑色および赤色光に対応する3つの異なる発光層310a、310bおよび310cが各マイクロキャビティOLED300a、300b、300cのために蒸着されること以外は、マイクロキャビティOLED300を製作することについて上述されたステップを含む。例えば、共通の基板302がブロック1102で提供されても良い。複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cの各々がそれから、ブロック1104から1114について記載されたように製作されても良い。複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cは、同時にまたは連続して共通の基板302上に製作されても良い。図9が3つのマイクロキャビティOLED300a、300b、300cを描く一方で、白色光を発光する光源900のその他の実施形態は、その他の複数、組み合わせおよび/または構成のマイクロキャビティOLEDを含むことができる。
【0026】
本開示の上述した実施形態は、開示の原理の明確な理解のために説明された実装の可能な例に過ぎないことが強調されるべきである。多くの変形および変更が、開示の精神と原理から実質的に逸脱することなしに上述された実施形態に対してなされても良い。全てのそのような変更および変形が、ここでこの開示の範囲内に含まれ、以下の請求項によって保護されることが意図されている。
【0027】
比、濃度、量およびその他の数値的データは、ここでは範囲の形式で表現されても良いことに注意すべきである。そのような範囲の形式は、便利さと簡潔さのために使われ、よって、範囲の限界として明記された数値のみを含むのではなく、その範囲内に包含されるサブ範囲の個々の数値の全ても含むように、あたかも数値とサブ範囲が明記されているかのように、柔軟なやり方で解釈されるべきであることが理解されるべきである。描写すると、「およそ0.1%からおよそ5%」の濃度範囲は、およそ0.1重量%からおよそ5重量%の明記された濃度のみを含むのではなく、示された範囲内の個々の濃度(例えば、1%、2%、3%および4%)とサブ範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.2%、3.3%および4.4%)も含むように解釈されるべきである。「およそ」という用語は、数値の有効数字に従った伝統的な丸めを含むことができる。加えて、「およそxからy」という表現は「およそxからおよそy」を含む。
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]この出願は、2010年2月23日に出願されシリアル番号61/307,191を有する“MICROCAVITY OLEDS FOR LIGHTING”と題された同時係属中の米国仮出願の優先権を主張し、その全体がここで引用によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
広帯域光源は、自然な太陽光に類似する照明スペクトルを有する高品質照明を提供するのに使われることができる。可視光スペクトル全体に渡る光を提供しない光源は、物体の色が鈍く見えるようにするかまたは、物体が違う色であるように見えるようにすることさえできる。例えば、限定された量の赤色光を発光する商業用蛍光灯は、物体が鈍い赤かまたは茶色にさえ見えるようにすることができる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の多くの側面が、以下の図面を参照することでより良く理解されることができる。図中のコンポーネンツは必ずしも実寸大ではなく、代りに本開示の原理を明確に描写することに強調が置かれている。しかも、図において、同様の参照番号はいくつかの図を通して対応する部分を指し示す。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、本開示の様々な実施形態に従った、白色発光するOLEDの複数の層を通した発光された光の伝導の非限定的な例を描いているグラフィック表現である。
【図2】図2は、本開示の様々な実施形態に従った、図1の白色発光するOLEDの複数の層の様々なモードを描いているグラフィック表現である。
【図3】図3は、本開示の様々な実施形態に従った、マイクロキャビティ有機発光ダイオード(OLED)の例のグラフィック表現である。
【図4】図4は、本開示の様々な実施形態に従った、マイクロキャビティ有機発光ダイオード(OLED)の例のグラフィック表現である。
【図5】図5は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDの半反射ミラーの例のグラフィック表現である。
【図6】図6は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDの半反射ミラーの例のグラフィック表現である。
【図7】図7は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDとマイクロキャビティを欠いたOLEDの光強度の非限定的な例を描いているグラフィック表現である。
【図8】図8は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDとマイクロキャビティを欠いたOLEDの光強度の非限定的な例を描いているグラフィック表現である。
【図9】図9は、本開示の様々な実施形態に従った、複数の図3および4のマイクロキャビティOLEDを含んだ白色光を発光する光源の例のグラフィック表現である。
【図10】図10は、本開示の様々な実施形態に従った、図9の白色光を発光する光源の光強度の非限定的な例を描いているグラフィック表現である。
【図11】図11は、本開示の様々な実施形態に従った、図3および4のマイクロキャビティOLEDの製作を描いているフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
ここに開示されるのは、マイクロキャビティを有する1つ以上の有機発光ダイオード(OLED)を含んだ光源の様々な実施形態と、それを製作する方法である。ここで図面中に描かれた通りの実施形態の記載を詳細に参照するが、そこではいくつかの図を通して同様の参照番号が同様の部分を指し示す。
【0006】
マイクロキャビティOLEDは、OLED基板と実質的に直交する光を発光する。OLEDのマイクロキャビティは、発光された光がOLED内に保持されることを許容する代わりに、OLEDによって発光された光がOLEDから外に向けられるのでOLEDが非常に効率的となり強い光を作成することを許容する。加えて、本出願は複数のマイクロキャビティOLEDを含んだ白色光源を記載する。いくつかの実施形態では、白色光源は、狭いスペクトルで強い赤色光を発光するマイクロキャビティOLEDと、狭いスペクトルで強い緑色光を発光するマイクロキャビティOLEDと、狭いスペクトルで強い青色光を発光するマイクロキャビティOLEDを含む。各マイクロキャビティOLEDが狭いスペクトルで特定の色を強く発光するので、白色光源が物体を照した時に、物体によって反射された可視色は、強度と白色光源によって発光された光の帯域の選択のために、明るく刺激的で暖かくなり得る。
【0007】
白熱および/または蛍光電球を使った人工照明を含んだ種々の光源が利用可能である。人工照明は、商業的、工業的またはオフィス設定で時々使われ、しばしば光パネルの形である。人工照明は、貧しい光抽出のためにそれらが発光する光の40−50%を失い得る。また、最新技術のLEDのような光源が100lm/W(ルーメンパーワット)の視感度を有しているとしても、人工照明の視感度は40lm/Wまで低くなり得る。
【0008】
光源が発光する光の帯域が広ければ広いほど、光源によって発光された光は太陽光により類似したものとなる。照明において使われる効果尺度は色調指数(CRI)である。CRIは、太陽のような自然光源との比較で様々な物体の色を再生する光源の能力の定量的測度である。可視スペクトル全体をカバーする広帯域光源は、90より大きなCRIを有する。対照的に、少量の赤色光を発光する商業用蛍光灯は、50まで低いCRIを有する。この赤色光の欠如のために、商業用蛍光灯によって照らされた時、赤い物体は鈍い赤かまたは茶色にさえ見える。白色発光するOLEDは、有機材料が幅広い発光スペクトルを有するので照明のために有用である。単一のOLEDパネル中に赤色、緑色および青色の発光体を組み合わせることは、発光スペクトルに応じて80よりも高いCRIを有するOLEDを生み出す。
【0009】
いくつかの効率的な白色発光するOLEDは、100lm/Wまでの視感度を有する。しかしながら、それは製造について実用的ではないエキゾチックな光抽出方法を要求する。図1は、白色発光するOLED100の複数の層を通した発光された光102の伝導の非限定的な例の図である。図1に見ることができるように、白色発光するOLED100から発光された光が有機層104、酸化インジウム錫(ITO)層106および/またはガラス基板108中の屈折および反射のために閉じ込められるので、発光された光102の僅かな部分のみが空気110中に抽出される。有機層104、ITO層106およびガラス基板108についての屈折率(n)の例も描かれている。
【0010】
図2は、白色発光するOLED100の複数の層の様々なモードの図である。図2に見ることができるように、薄膜導波モード202(即ち、図1の有機層104および/またはITO層106のモード)は発光された光102のおよそ40−50%を閉じ込め、基板モード204(即ち、図1のガラス基板108のモード)は発光された光102のおよそ20−30%を閉じ込め、発光された光102のおよそ20−30%だけが空気モード206に達する。ガラス基板モード204はレンズアレイまたはフォトニック結晶を使って排除され得る一方で、薄膜導波モード202は、有機/ITO層104/106がOLED100の内部にあって外部にアクセス可能ではないので、排除することが非常に難しい。
【0011】
図3は、マイクロキャビティOLED300の非限定的な実施形態の図である。マイクロキャビティOLED300は、ガラス基板302と、ガラス基板302上に形成された半反射ミラー304を含む。いくつかの実施形態では、半反射ミラー304は薄い銀層(例えば、およそ10−20nmの厚さ)であり、その他の実施形態では、半反射ミラー304は二酸化珪素(SiO2)と二酸化チタン(TiO2)のスタックを含んだ1/4波長スタックであり、それは更に詳細に後述される。更には、ITO層306が半反射ミラー304上に形成される。いくつかの実施形態では、ITO層306は、およそ10nmの厚さである。
【0012】
正孔輸送層308が、ITO層306上に形成される。いくつかの実施形態では、正孔輸送層308は、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(1,1-bis[(di-4-tolylamino)phenyl]cyclohexane)(TAPC)層を含み、それはおよそ50nmの厚さであっても良い。発光層310が、正孔輸送層308上に形成される。発光層310に含まれた材料が、マイクロキャビティOLED300によって発光される光の色(またはスペクトル周波数)を決定する。例えばおよそ585nmからおよそ675nmの範囲中の赤色光を発光するマイクロキャビティOLED300については、発光層310は、例えばトリス(2−フェニルイソキノリン)イリジウム(tris(2-phenylisoquinoline)iridium)(“Ir(pig)3”)を添加した3,5’−N,N’−ジカルバゾール−ベンゼン(3,5’-N,N’-dcarbazole-benzene)(“mCP”)を含んでいても良い。同様に、例えばおよそ525nmからおよそ655nmの範囲中の緑色光を発光するマイクロキャビティOLED300については、発光層310は、例えばファク−トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(fac-tris(2-phenylpyridinato)iridium(III)(“Ir(ppy)3”)を添加したmCPを含んでいても良い。同様に、例えばおよそ435nmからおよそ540nmの範囲中の青色光を発光するマイクロキャビティOLED300については、発光層310は、例えば3,5’−N,N’−ジカルバゾール−ベンゼン(mCP):イリジウム(III)ビス[(4,6−ジ−フルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2’]ピコリン酸(3,5’-N,N’-dicarazole-benzene(mCP):iridium(III)bis
[(4,6-di-fluorophenyl)-pyridinato-N,C2’]picolinate)(“Flrpic”)を含んでいても良い。
【0013】
電子輸送層312が、発光層310上に形成される。電子輸送層312は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10フェナントロリン(2,9-dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline)(BCP)層および/またはトリス[3−(3−ピリジル)−メシチル]ボラン(tris[3-(3-pyridyl)-mesityl]borane)(“3TPYMB”)層を含んでいても良い。更には、陰極314が、電子輸送層312上に形成される。陰極314は金属層を含む。例えば、陰極314は、炭酸セシウム(CsCO3)(およそ1nmの厚さ)とアルミニウム(Al)(およそ100nmの厚さ)かまたはフッ化リチウム(LiF)(およそ1nmの厚さ)とAl(およそ100nmの厚さ)を含んでいても良い。
【0014】
図4は、青色光を発光するマイクロキャビティOLED300の別の非限定的な実施形態の図である。図4に描かれた実施形態では、陰極314は、およそ100nmの厚さであるアルミニウム(Al)層414aと、およそ1nmの厚さであるLiF層414bを含む。LiF層414bは、およそ40nmの厚さであるBCP層412を含んだ電子輸送層312上に蒸着される。BCP層412は、およそ20nmの厚さであるmCP:Flrpic層410を含んだ発光層310上に蒸着される。加えて、発光層310は、およそ50nmの厚さであるTAPC層408aを含んだ正孔輸送層308上に蒸着される。更には、発光層310は、およそ25nmの厚さであり、およそ50nmの厚さのITO層306上に形成された、PEDOT:PSS層408bを含む。
【0015】
図5は、図3および4に描かれたマイクロキャビティOLED300の実施形態の半反射ミラー304の非限定的な例の図である。半反射ミラー304の描かれた例は、二酸化チタン(TiO2)層504b上に形成された、二酸化珪素(SiO2)層504aを含む1/4波長スタックである。SiO2層504aとTiO2層504bの厚さは各々、光の1/4波長に対応する。従って、半反射ミラー304の層504aおよび504bの厚さは、マイクロキャビティOLED300によって発光された光の波長に依存する。一実装では、二酸化珪素層504aはおよそ79nmの厚さであり。二酸化チタン層504bはおよそ48nmの厚さである。半反射ミラー304は、およそ1mmの厚さであっても良いガラス基板302上に形成される。いくつかの実施形態では、半反射ミラー304の面積は、およそ1インチ×およそ1インチである。また、いくつかの実施形態では、半反射ミラー304は、475nmにおいて0.39に実質的に等しい反射率(R)を有する。半反射ミラー304の反射能は、およそ40%とおよそ70%の間で変動しても良く、反射スペクトルは広い。
【0016】
図6は、図3および4に描かれたマイクロキャビティOLED300の実施形態の半反射ミラー304の別の非限定的な例の図である。図6に描かれた半反射ミラー304の例は、図5に描かれたような1セット(504a/504b)の代わりに図6に描かれた半反射ミラー304が2セットの二酸化珪素と二酸化チタン層(504a/504bおよび604a/604b)を含むこと以外は、図5に描かれた半反射ミラー304の例と同様である。一実装では、二酸化珪素層504aおよび604aはおよそ79nmの厚さであり、二酸化チタン層504bおよび604bはおよそ48nmの厚さである。その他の実装では、二酸化珪素層504aと604aおよび/または二酸化チタン層504bと604bは、異なる厚さを有していても良い。更には、その他の実施形態では、半反射ミラー304は、3セット以上の二酸化珪素および二酸化チタン層を含んでいても良い。図6に描かれたもののようないくつかの実施形態では、半反射ミラー304は、475nmにおいて0.70に実質的に等しいRを有する。図5および6に描かれた半反射ミラー304の各々は、低い屈折率を有する材料(例えば、SiO2)と高い屈折率を有する材料(例えば、TiO2)の交番する層を含む。
【0017】
図3に戻って、マイクロキャビティOLED300の動作がここで記載される。マイクロキャビティOLED300の陰極314が反射ミラーとしての役目を果たし、半反射ミラー304がハーフミラーとしての役目を果たし、よって陰極314と半反射ミラー304の間にマイクロキャビティ320を形成する。マイクロキャビティ320は、低い透過率と高い反射能の両方の性質を有する。言い換えると、半反射ミラー304は、部分的に透過性で部分的に透明な層である。光子がマイクロキャビティ320の内部で生成されるにつれて、それらはミラーによってマイクロキャビティ320bの両サイドから反射され、半反射ミラー304によって提供されたハーフミラーから伝導される。従って、ガラス基板302を通して半反射ミラー304から伝導された光316は、全ての方向への代わりに、ガラス基板302に実質的に直交する方向に伝導される。マイクロキャビティ320が発光された光を特定の方向に向き付けするので、マイクロキャビティOLED300によって発光された光のかなりの量もまたマイクロキャビティOLED300から伝導され、マイクロキャビティOLED300内に保持はされない。
【0018】
上述したマイクロキャビティ効果のために、マイクロキャビティOLED300は、マイクロキャビティ320を欠いたOLEDとは非常に異なる発光特性を有する。マイクロキャビティ320を欠いたOLEDは、全ての方向に光を発光するランベルト型光源である。ランベルト型光源は、発光された光の多くの量が無駄にされる(例えば、照らされるべき物体またはエリアを直接照らさない)ので、照明には望ましくない。他方、マイクロキャビティOLED300は、マイクロキャビティ320の反射性質に依存した方向性発光体である。結果として、マイクロキャビティOLED300は、マイクロキャビティ320を欠いたOLEDの効率のおよそ3〜4倍の効率を有することができる。
【0019】
図7は、図3に描かれたマイクロキャビティOLED300の実施形態と、マイクロキャビティ320を欠いたOLEDの実施形態の発光スペクトルのグラフである。特定には、図7は、マイクロキャビティOLED300対マイクロキャビティ320を欠いた緑色発光するOLEDについての、EL強度対波長のグラフである。図7に見ることができるように、マイクロキャビティOLED300の輝度はおよそ385nitsであるのに対し、緑色発光するOLEDの輝度はおよそ108nitsである。
【0020】
図8は、図7のマイクロキャビティOLED300の実施形態対マイクロキャビティ320を欠いたOLEDについての光の強度対光の角度の極座標プロットである。図8に見ることができるように、(「キャビティ無し」810と標記された)マイクロキャビティ320を欠いたOLEDは、(「キャビティ」820と標記された)マイクロキャビティOLED300よりも低い強度を有し、光は主に−30度と+30度の間の角度で光源から発光される。図7および8を一緒に考慮すると、マイクロキャビティOLED300については、発光された光のスペクトルと発光の角度の両方が狭いことを見ることができる。
【0021】
図9は、複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cを含んだ白色光を発光する光源900の非限定的な実施形態の図である。マイクロキャビティOLED300a、300b、300cは、非常に効率的であることができる燐光性のOLEDである。例えば、緑色光を発光するマイクロキャビティOLED300bの視感効率は、300lm/Wまで高くなることができる一方で、マイクロキャビティ無しの緑色光を発光するOLEDは、100lm/Wだけの視感効率を有し得る。更には、青色光を発光するマイクロキャビティOLED300aと赤色光を発光するマイクロキャビティOLED300cの効率は、各々60lm/Wより上であり得る。従って、複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cを含んだ白色発光する光源900は、およそ150−200lm/Wの全体的効率を達成し得る。この効率は、人工照明に使われたLEDの効率よりも3〜4倍大きくなり得る。
【0022】
赤、緑および青のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cから生成された白色光は、図10に示されたスペクトルと同様の発光スペクトルを有する。図10に見ることができるように、青色光316a(図9)は、実質的におよそ435nmからおよそ540nmの範囲内の波長に対応する強度1010を含んでいても良く、緑色光316b(図9)は、実質的におよそ525nmからおよそ655nmの範囲内の波長に対応する強度1020を含んでいても良く、赤色光316c(図9)は、実質的におよそ585nmからおよそ675nmの範囲内の波長に対応する強度1030を含んでいても良い。同様に、これも図10に見ることができるように、青色光は、実質的におよそ450nmからおよそ480nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含んでいても良く、緑色光は、実質的におよそ530nmからおよそ575nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含んでいても良く、赤色光は、実質的におよそ620nmからおよそ650nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含んでいても良い。従って、白色光を発光する光源900によって発光された白色光は、全ての波長について同じ強度を含んでおらず、むしろ発光スペクトルは或る色についてのピーク強度を含んだ狭いスペクトルを含む。光源900が物体を照らす時、物体から反射する色は、マイクロキャビティOLED300a、300b、300cによって発光された光の3つの狭い発光帯域が飽和したRGB色においてピークになるので、飽和しているように見える。白色光を発光する光源900の実施形態が物体を照らす時、物体の色は、白色光を発光する光源900によって発光され物体から反射された光の予め規定された帯域の結果として、より暖かく、より明るく刺激的で、より少なく鈍く見える。例えば、赤い物体は、物体が白熱光源によって照らされた時に見えるレンガの赤または赤ワインの赤よりも、白色光を発光する光源900によって照らされた時により多くの消防車の赤を有するように見える。加えて、白色光を発光する光源900によって発光された光は非常に方向性であるので、外部人工照明は必要無い。
【0023】
次に図11を参照すると、示されているのはマイクロキャビティOLED300(図3)を製作する方法の例を描いているフローチャート1100である。ブロック1102で始まって、ガラス基板302(図3)が提供される。ブロック1104では、半反射ミラー304(図3)がガラス基板302上に蒸着される。SiO2およびTiO2層のスタックを含んだ半反射ミラー304の場合(図5および6)には、SiO2およびTiO2の各層はスパッタリングによって蒸着されても良い。銀の薄い層を含んだ半反射ミラー304の場合には、銀は真空蒸着によって蒸着されることができる。いくつかの実施形態では、銀の層はおよそ10−20nmの厚さである。
【0024】
次に、ブロック1106では、ITO層306(図3)がスパッタリングによって蒸着される。いくつかの実施形態では、ITO層306はおよそ100nmの厚さである。正孔輸送層308(図3)がそれからブロック1108で蒸着される。正孔輸送層308をITO層306上に蒸着するのに真空蒸着が使われても良い。その後、発光層310(図3)がそれからブロック1110で正孔輸送層308上に蒸着される。発光層310を蒸着するのに真空蒸着が使われても良い。更には、電子輸送層312(図3)がブロック1112で発光層310上に蒸着される。電子輸送層312を蒸着するのに真空蒸着が使われても良い。発光層310が蒸着された後、陰極314(図3)がブロック1114で形成される。いくつかの実装では、陰極314は、炭酸セシウム(CsCO3)(およそ1nmの厚さ)、アルミニウム(Al)(およそ100nmの厚さ)および/またはフッ化リチウム(LiF)(およそ1nmの厚さ)の層を電子輸送層312上に蒸着することによって形成されても良い。
【0025】
図9を参照すると、白色光を発光する光源900を製作する方法は、複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cを製作することを含む。複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cは、図9に描かれているように共通の基板302上に製作されても良い。加えて、方法は、青色、緑色および赤色光に対応する3つの異なる発光層310a、310bおよび310cが各マイクロキャビティOLED300a、300b、300cのために蒸着されること以外は、マイクロキャビティOLED300を製作することについて上述されたステップを含む。例えば、共通の基板302がブロック1102で提供されても良い。複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cの各々がそれから、ブロック1104から1114について記載されたように製作されても良い。複数のマイクロキャビティOLED300a、300b、300cは、同時にまたは連続して共通の基板302上に製作されても良い。図9が3つのマイクロキャビティOLED300a、300b、300cを描く一方で、白色光を発光する光源900のその他の実施形態は、その他の複数、組み合わせおよび/または構成のマイクロキャビティOLEDを含むことができる。
【0026】
本開示の上述した実施形態は、開示の原理の明確な理解のために説明された実装の可能な例に過ぎないことが強調されるべきである。多くの変形および変更が、開示の精神と原理から実質的に逸脱することなしに上述された実施形態に対してなされても良い。全てのそのような変更および変形が、ここでこの開示の範囲内に含まれ、以下の請求項によって保護されることが意図されている。
【0027】
比、濃度、量およびその他の数値的データは、ここでは範囲の形式で表現されても良いことに注意すべきである。そのような範囲の形式は、便利さと簡潔さのために使われ、よって、範囲の限界として明記された数値のみを含むのではなく、その範囲内に包含されるサブ範囲の個々の数値の全ても含むように、あたかも数値とサブ範囲が明記されているかのように、柔軟なやり方で解釈されるべきであることが理解されるべきである。描写すると、「およそ0.1%からおよそ5%」の濃度範囲は、およそ0.1重量%からおよそ5重量%の明記された濃度のみを含むのではなく、示された範囲内の個々の濃度(例えば、1%、2%、3%および4%)とサブ範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.2%、3.3%および4.4%)も含むように解釈されるべきである。「およそ」という用語は、数値の有効数字に従った伝統的な丸めを含むことができる。加えて、「およそxからy」という表現は「およそxからおよそy」を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色光の狭いスペクトルを発光するように構成された第1のマイクロキャビティ有機発光ダイオード(OLED)と、
緑色光の狭いスペクトルを発光するように構成された第2のマクロキャビティOLEDと、
赤色光の狭いスペクトルを発光するように構成された第3のマクロキャビティOLEDと、
を含む白色光源。
【請求項2】
青色光は、実質的におよそ435nmからおよそ540nmの範囲内の波長に対応する強度を含み、緑色光は、実質的におよそ525nmからおよそ655nmの範囲内の波長に対応する強度を含み、赤色光は、実質的におよそ585nmからおよそ675nmの範囲内の波長に対応する強度を含む、請求項1の光源。
【請求項3】
青色光は、実質的におよそ450nmからおよそ480nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含み、緑色光は、実質的におよそ530nmからおよそ575nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含み、赤色光は、実質的におよそ620nmからおよそ650nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含む、請求項2の光源。
【請求項4】
第1のマイクロキャビティOLED、第2のマイクロキャビティOLEDおよび第3のマイクロキャビティOLEDは、各々共通のガラス基板上に配置されている、請求項1の白色光源。
【請求項5】
発光された赤色光、緑色光および青色光は、共通のガラス基板に実質的に直交している、請求項4の白色光源。
【請求項6】
ガラス基板上に配置された複数のOLEDであって、複数のOLEDの各々は、予め規定されたスペクトルでガラス基板に実質的に直交する光を発光するように構成されており、複数のOLEDの各々は、
半反射ミラーと、
発光層であって、各OLED中の発光層がOLEDによって発光された光のそれぞれの色に対応するものを含むものと、
を含む光源。
【請求項7】
半反射層が1/4波長スタックを含む、請求項6の光源。
【請求項8】
半反射層が高い屈折率を有する層の上に形成された低い屈折率を有する層を含む、請求項6の光源。
【請求項9】
半反射層が複数の二酸化チタン層と交番する複数の二酸化珪素層を含む、請求項6の光源。
【請求項10】
半反射層が銀膜を含む、請求項6の光源。
【請求項11】
OLEDの各々が更に、
電子輸送層の上に形成された陰極であって、電子輸送層は発光層の上に形成されているものと、
酸化インジウム錫(ITO)層の上に形成された正孔輸送層であって、発光層は正孔輸送層の上に形成されているものと、を含み、
ITO層が半反射ミラーの上に形成されている、請求項6の光源。
【請求項12】
電子輸送層が、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10フェナントロリン(BCP)層またはトリス[3−(3−ピリジル)−メシチル]ボラン(“3TPYMB”)層を含む、請求項11の光源。
【請求項13】
陰極が、炭酸セシウム(CsCO3)とアルミニウム(Al)かまたはフッ化リチウム(LiF)とAlを含む、請求項11の光源。
【請求項14】
正孔輸送層が、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)を含む、請求項11の光源。
【請求項15】
複数のOLEDに含まれた第1のOLEDの発光層が、トリス(2−フェニルイソキノリン)イリジウム(“Ir(pig)3”)を添加した3,5’−N,N’−ジカルバゾール−ベンゼン(“mCP”)を含む、請求項6の光源。
【請求項16】
複数のOLEDに含まれた第2のOLEDの発光層が、ファク−トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(“Ir(ppy)3”)を添加したmCPを含む、請求項15の光源。
【請求項17】
複数のOLEDに含まれた第3のOLEDの発光層が、mCP:イリジウム(III)ビス[(4,6−ジ−フルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2’]ピコリン酸(“Flrpic”)を含む、請求項16の光源。
【請求項18】
OLEDの各々が、半反射ミラーと陰極によって規定されたマイクロキャビティを含む、請求項6の光源。
【請求項1】
青色光の狭いスペクトルを発光するように構成された第1のマイクロキャビティ有機発光ダイオード(OLED)と、
緑色光の狭いスペクトルを発光するように構成された第2のマクロキャビティOLEDと、
赤色光の狭いスペクトルを発光するように構成された第3のマクロキャビティOLEDと、
を含む白色光源。
【請求項2】
青色光は、実質的におよそ435nmからおよそ540nmの範囲内の波長に対応する強度を含み、緑色光は、実質的におよそ525nmからおよそ655nmの範囲内の波長に対応する強度を含み、赤色光は、実質的におよそ585nmからおよそ675nmの範囲内の波長に対応する強度を含む、請求項1の光源。
【請求項3】
青色光は、実質的におよそ450nmからおよそ480nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含み、緑色光は、実質的におよそ530nmからおよそ575nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含み、赤色光は、実質的におよそ620nmからおよそ650nmの範囲内の波長に対応するピーク強度を含む、請求項2の光源。
【請求項4】
第1のマイクロキャビティOLED、第2のマイクロキャビティOLEDおよび第3のマイクロキャビティOLEDは、各々共通のガラス基板上に配置されている、請求項1の白色光源。
【請求項5】
発光された赤色光、緑色光および青色光は、共通のガラス基板に実質的に直交している、請求項4の白色光源。
【請求項6】
ガラス基板上に配置された複数のOLEDであって、複数のOLEDの各々は、予め規定されたスペクトルでガラス基板に実質的に直交する光を発光するように構成されており、複数のOLEDの各々は、
半反射ミラーと、
発光層であって、各OLED中の発光層がOLEDによって発光された光のそれぞれの色に対応するものを含むものと、
を含む光源。
【請求項7】
半反射層が1/4波長スタックを含む、請求項6の光源。
【請求項8】
半反射層が高い屈折率を有する層の上に形成された低い屈折率を有する層を含む、請求項6の光源。
【請求項9】
半反射層が複数の二酸化チタン層と交番する複数の二酸化珪素層を含む、請求項6の光源。
【請求項10】
半反射層が銀膜を含む、請求項6の光源。
【請求項11】
OLEDの各々が更に、
電子輸送層の上に形成された陰極であって、電子輸送層は発光層の上に形成されているものと、
酸化インジウム錫(ITO)層の上に形成された正孔輸送層であって、発光層は正孔輸送層の上に形成されているものと、を含み、
ITO層が半反射ミラーの上に形成されている、請求項6の光源。
【請求項12】
電子輸送層が、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10フェナントロリン(BCP)層またはトリス[3−(3−ピリジル)−メシチル]ボラン(“3TPYMB”)層を含む、請求項11の光源。
【請求項13】
陰極が、炭酸セシウム(CsCO3)とアルミニウム(Al)かまたはフッ化リチウム(LiF)とAlを含む、請求項11の光源。
【請求項14】
正孔輸送層が、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)を含む、請求項11の光源。
【請求項15】
複数のOLEDに含まれた第1のOLEDの発光層が、トリス(2−フェニルイソキノリン)イリジウム(“Ir(pig)3”)を添加した3,5’−N,N’−ジカルバゾール−ベンゼン(“mCP”)を含む、請求項6の光源。
【請求項16】
複数のOLEDに含まれた第2のOLEDの発光層が、ファク−トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(“Ir(ppy)3”)を添加したmCPを含む、請求項15の光源。
【請求項17】
複数のOLEDに含まれた第3のOLEDの発光層が、mCP:イリジウム(III)ビス[(4,6−ジ−フルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2’]ピコリン酸(“Flrpic”)を含む、請求項16の光源。
【請求項18】
OLEDの各々が、半反射ミラーと陰極によって規定されたマイクロキャビティを含む、請求項6の光源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−520784(P2013−520784A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555076(P2012−555076)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2011/025667
【国際公開番号】WO2011/106306
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(507371168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (38)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2011/025667
【国際公開番号】WO2011/106306
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(507371168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (38)
【Fターム(参考)】
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