説明

熱交換システム

【課題】複数種の流体間で熱交換可能に構成された複合型熱交換器を備える熱交換システムにおいて、複合型熱交換器にて熱交換対象流体の温度を所望の温度に調整可能とすることを目的とする。
【解決手段】複合型熱交換器13をヒートポンプサイクル10の高圧冷媒が流れる第1熱交換部131と低圧冷媒が流れる第2熱交換部132を車室内送風空気が高圧冷媒および低圧冷媒の双方と熱交換可能に一体化する。そして、第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の温度および第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度の一方を変更することで、第1熱交換部131における高圧冷媒と車室内送風空気との間の熱交換量、および第2熱交換部132における低圧冷媒と車室内送風空気との間の熱交換量のうち、少なくとも一方を調整することで、車室内送風空気の温度を所望の温度に調整可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の流体間で熱交換可能に構成された複合型熱交換器を備える熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種の流体間で熱交換可能に構成された複合型熱交換器を備える熱交換システムが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
具体的には、特許文献1には、圧縮機から吐出された吐出冷媒(第1流体)を車室内に送風する送風空気(熱交換対象流体)と熱交換させて送風空気を加熱する暖房用熱交換部、および燃焼式温水ヒータにて加熱されたブライン(第2流体)と送風空気(熱交換対象流体)とを熱交換させて送風空気を加熱するヒータコア部が一体的に構成された複合型熱交換器を備える熱交換システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、特許文献1と同様の暖房用熱交換部、およびエンジンを冷却するエンジン冷却水(第2流体)と送風空気(熱交換対象流体)とを熱交換させて送風空気を加熱するヒータコア部が一体的に構成された複合型熱交換器を備える熱交換システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3275414号公報
【特許文献2】特許第4311115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2のいずれも、熱交換対象流体(送風空気)よりも高い温度の第1、第2流体(吐出冷媒、ブライン又はエンジン冷却水)が有する熱量を複合型熱交換器にて放熱させて、熱交換対象流体を加熱する熱交換システムを開示しているにすぎない。つまり、特許文献1、2に記載の熱交換システムでは、複合型熱交換器を単に第1、第2流体が有する熱量により熱交換対象流体を加熱する手段として機能させるだけで、熱交換対象流体の温度を調整するための手段として機能させておらず、複合型熱交換器にて熱交換対象流体の温度を所望の温度に調整することができなかった。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、複数種の流体間で熱交換可能に構成された複合型熱交換器を備える熱交換システムにおいて、複合型熱交換器にて熱交換対象流体の温度を所望の温度に調整可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1流体と熱交換対象流体とを熱交換させる第1熱交換部(131)、および第2流体と熱交換対象流体とを熱交換させる第2熱交換部(132)を有する複合型熱交換器(13)を備える熱交換システムであって、第1熱交換部(131)に流入する第1流体の温度は、第2熱交換部(132)に流入する第2流体の温度と異なる値になっており、複合型熱交換器(13)は、熱交換対象流体が第1流体および第2流体の双方と熱交換可能に一体化され、第1熱交換部(131)における第1流体と熱交換対象流体との間の熱交換量、および第2熱交換部(132)における第2流体と熱交換対象流体との間の熱交換量のうち、少なくとも一方を調整することで、熱交換対象流体の温度が変更されることを特徴とする。
【0009】
これによれば、複合型熱交換器(13)における第1流体と熱交換対象流体との間の熱交換量、および第2流体と熱交換対象流体との間の熱交換量の少なくとも一方を調整することで、熱交換対象流体の温度が変更されるので、複合型熱交換器(13)にて第1、第2流体を熱交換対象流体と熱交換させると共に、熱交換対象流体の温度を所望の温度に調整することが可能となる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の熱交換システムにおいて、第1熱交換部(131)は、第1流体が流れる複数の第1流体側チューブ(131a)を有し、第2熱交換部(132)は、第2流体が流れる複数の第2流体側チューブ(132a)を有し、第1流体側チューブ(131a)の外表面および第2流体側チューブ(132a)の外表面には、熱交換対象流体が流れる熱交換対象流体用通路(133)が形成され複数の第1流体側チューブ(131a)および複数の第2流体側チューブ(132a)の一方のうち少なくとも1つは、他方の間に配置され、第1流体側チューブ(131a)および第2流体側チューブ(132a)は、互いに離間して配置され、第1流体側チューブ(131a)および第2流体側チューブ(131a)の間に、熱交換対象流体用通路(133)が形成されていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、第1流体側チューブ(131a)と第2流体側チューブ(132a)との間に熱交換対象流体が流れる熱交換対象流体用通路(133)を形成しているので、熱交換対象流体を第1流体および第2流体の双方と熱交換可能な構成を具体的かつ容易に実現することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の熱交換システムにおいて、熱交換対象流体用通路(133)には、第1熱交換部(131)および第2熱交換部(132)それぞれにおける熱交換を促進するアウターフィン(134)が配置されていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、第1流体と熱交換対象流体との熱交換、および第2流体と熱交換対象流体との熱交換を促進することができるので、複合型熱交換器(13)における熱交換効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、第1熱交換部(131)における第1流体と熱交換対象流体との間の熱交換量、および第2熱交換部(132)における第2流体と熱交換対象流体との間の熱交換量のうち、少なくとも一方を調整する熱交換量調整手段(11、26、28a、41、136、137)を備え、熱交換量調整手段(11、26、28a、41、136、137)は、第1熱交換部(131)に流入する第1流体の温度、および第2熱交換部(132)に流入する第2流体の温度のうち少なくとも一方を調整することを特徴とする。
【0015】
このように、熱交換量調整手段(11、26、28a、41、136、137)にて第1熱交換部(131)および第2熱交換部(132)に流入する各流体の流入量のうち少なくとも1つを調整することで、複合型熱交換器(13)における流体と熱交換対象流体の熱交換量の調整を具体的に実現することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、第1熱交換部(131)における第1流体と熱交換対象流体との間の熱交換量、および第2熱交換部(132)における第2流体と熱交換対象流体との間の熱交換量のうち、少なくとも一方を調整する熱交換量調整手段(41、136、137)を備え、熱交換量調整手段(41、136、137)は、第1熱交換部(131)に流入する第1流体の流入量、および第2熱交換部(132)に流入する第2流体の流入量のうち少なくとも一方を調整することを特徴とする。
【0017】
このように、熱交換量調整手段(41、136、137)にて第1熱交換部(131)および第2熱交換部(132)に流入する各流体の温度のうち少なくとも1つを調整することで、複合型熱交換器(13)における流体と熱交換対象流体の熱交換量の調整を具体的に実現することができる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)を有する装置に適用され、第1流体は、冷凍サイクル(10)の高圧冷媒であり、第2流体は、冷凍サイクル(10)の低圧冷媒であることを特徴とする。
【0019】
これによれば、第1熱交換部(131)における高圧冷媒と熱交換対象流体との熱交換量および第2熱交換部(132)における低圧冷媒と熱交換対象流体との熱交換量を適宜調整することで、複合型熱交換器(13)にて熱交換対象流体の温度を広範囲にわたって調整することが可能となる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)および外部熱源(EG)を有する装置に適用され、第1流体は、外部熱源(EG)の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、第2流体は、冷凍サイクル(10)の低圧冷媒であることを特徴とする。
【0021】
これによれば、第1熱交換部(131)における外部熱源(EG)の有する熱量を吸熱した熱媒体と熱交換対象流体との熱交換量および第2熱交換部(132)における低圧冷媒と熱交換対象流体との熱交換量を調整することで、複合型熱交換器(13)にて広範囲にわたって熱交換対象流体の温度を調整することが可能となる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明では、請求項6または7に記載の熱交換システムにおいて、装置は、車両における空調対象空間へ温度調整された送風空気を送風する車両用空調装置(1)であって、熱交換対象流体は、送風空気であることを特徴とする。
【0023】
これによれば、複合型熱交換器(13)にて空調対象空間に送風する送風空気の温度を所望の温度に調整することができ、空調対象空間を適切な温度に調整することが可能となる。
【0024】
また、請求項9に記載の発明では、請求項6または7に記載の熱交換システムにおいて、装置は、作動時に所定の温度帯に調整する必要がある作動機器(5)の温度を調整する温度調整装置であって、熱交換対象流体は、作動機器(5)の温度を調整するための温度調整媒体であることを特徴とする。
【0025】
これによれば、複合型熱交換器(13)にて作動機器(5)の温度を所望の温度に調整することができ、作動機器(5)を適切に作動させることが可能となる。
【0026】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係る複合型熱交換器の外観斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る複合型熱交換器の分解斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る複合型熱交換器における高圧冷媒および低圧冷媒の流れを説明するための模式的な斜視図である。
【図5】複合型熱交換器へ高圧冷媒および低圧冷媒が流入したときの送風空気の流れ方向から見たアウターフィン周囲を流れる送風空気の温度分布を示す温度分布図である。
【図6】第2実施形態に係る複合型熱交換器の模式的な斜視図である。
【図7】第3実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【図8】第4実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【図9】第5実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【図10】第6実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【図11】第7実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0029】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態では、本発明の熱交換システムを走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆる電気自動車の車両用空調装置1に適用している。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図である。
【0030】
本実施形態の車両用空調装置1に適用される熱交換システムは、蒸気圧縮式の冷凍サイクルであるヒートポンプサイクル10の複合型熱交換器13等によって構成されている。
【0031】
本実施形態のヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、車両における空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を加熱あるいは冷却する機能を果たす。つまり、ヒートポンプサイクル10は、冷媒流路を切り替えて、車室内へ送風する送風空気(以下、車室内送風空気と称する。)を加熱して車室内を暖房する暖房運転、および車室内送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房運転を実行できる。
【0032】
さらに、このヒートポンプサイクル10では、車室内送風空気の除湿および温度調整する除湿暖房運転を実行することもできる。なお、図1では、冷房運転時の冷媒の流れ白抜き矢印、暖房運転時の冷媒の流れを黒矢印、および除湿暖房運転時の冷媒の流れを白斜線矢印で示している。
【0033】
また、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を越えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には、後述する圧縮機11を循環するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒と共にサイクルを循環している。
【0034】
圧縮機11は、エンジンルーム(図示略)内に配置されて、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機である。固定容量型圧縮機11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。
【0035】
電動モータ11bは、後述する制御装置(図示略)から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータ11bが圧縮機11の吐出能力変更手段を構成する。
【0036】
圧縮機11の吐出口側には、電気式の第1三方弁12の入口側が接続されている。この第1三方弁12は、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって、その作動が制御されるものである。
【0037】
より具体的には、第1三方弁12は、暖房運転時および除湿暖房運転時には、圧縮機11の吐出口側と、後述する複合型熱交換器13の第1熱交換部131入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転時には、圧縮機11の吐出口側と、圧縮機11吐出冷媒を複合型熱交換器13を迂回させる熱交換器用迂回通路14の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。なお、熱交換器用迂回通路14は、複合型熱交換器13の第1熱交換部131出口側に接続されている。このように、第1三方弁12は、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、第1三方弁12は、冷媒流路切替手段としての機能を果たす。
【0038】
本実施形態の複合型熱交換器13は、後述する室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と車室内送風空気とを熱交換させる熱交換器である。
【0039】
複合型熱交換器13は、ヒートポンプサイクル10の高圧冷媒を車室内送風空気と熱交換させる第1熱交換部131、および低圧冷媒と車室内送風空気とを熱交換させる第2熱交換部132を有する。本実施形態では、高圧冷媒が「第1流体」に対応し、低圧冷媒が「第2流体」に対応し、車室内送風空気が「熱交換対象流体」に対応している。なお、複合型熱交換器13の詳細構成については後述する。
【0040】
複合型熱交換器13における第1熱交換部131の出口側には、逆止弁16を介して暖房運転時に複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した冷媒を減圧膨張させる第1減圧手段としての第1固定絞り15が接続されている。この第1固定絞り15としては、オリフィスやキャピラリーチューブを採用することができる。第1固定絞り15の出口側には、後述する室外熱交換器19の入口側が接続されている。
【0041】
ここで、逆止弁16は、第1熱交換部131の出口側から第1固定絞り15の入口側への冷媒の流れを許容し、第1固定絞り15の入口側から第1熱交換部131の出口側への冷媒の流れを禁止する逆流防止手段である。この逆止弁16によって、熱交換器用迂回通路14を流れる冷媒が、複合型熱交換器13の第1熱交換部131の出口側に流れてしまうことを防止することができる。
【0042】
また、複合型熱交換器13の第1熱交換部131の出口側には、上述の逆止弁16を介して、冷媒を第1固定絞り15を迂回させて室外熱交換器19側へ導くための固定絞り用迂回通路17が接続されている。
【0043】
この固定用絞り用迂回通路17には、固定絞り用迂回通路17を開閉する開閉弁18が配置されている。開閉弁18は、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
【0044】
また、冷媒が開閉弁18を通過する際に生ずる圧力損失は、第1固定絞り15を通過する際に生ずる圧力損失に対して極めて小さい。従って、複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した冷媒、および熱交換器用迂回通路14から流出した冷媒は、開閉弁18が開いている場合には固定絞り用迂回通路17を介して室外熱交換器19の入口側へ流入し、開閉弁18が閉じている場合には第1固定絞り15を介して室外熱交換器19の入口側へ流入する。
【0045】
このように、開閉弁18は、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の開閉弁18は、第1三方弁12と共に冷媒流路切替手段としての機能を果たす。なお、開閉弁18に変えて、複合型熱交換器13の第1熱交換部131出口側および熱交換器用迂回通路14出口側と第1固定絞り15入口側とを接続する冷媒流路、および複合型熱交換器13出口側および熱交換器用迂回通路14出口側と、固定絞り用迂回通路17入口側とを接続する冷媒流路を切り替える電気式の三方弁等を設ける構成としてもよい。
【0046】
室外熱交換器19は、内部を流通する冷媒と送風ファン20から送風された外気とを熱交換させるものである。この室外熱交換器19は、エンジンルーム内に配置されて、暖房運転時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転時および除湿暖房運転時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器である。
【0047】
送風ファン20は、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって回転数(外気の送風空気量)が制御される電動式送風機である。なお、送風ファン20は、室外熱交換器19に向けて外気を送風する外気送風手段を構成している。
【0048】
室外熱交換器19の出口側には、電気式の第2三方弁21が接続されている。この第2三方弁21は、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって、その作動が制御されるものである。
【0049】
より具体的には、第2三方弁21は、暖房運転時に室外熱交換器19出口側と後述する第2固定絞り22入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転時および除湿暖房運転時に室外熱交換器19出口側と後述するアキュムレータ23とを接続する冷媒流路に切り替える。なお、第2三方弁21は、上述の第1三方弁21および開閉弁18と共に冷媒流路切替手段としての機能を果たす。
【0050】
第2固定絞り22は、冷媒運転時および除湿暖房運転時に室外熱交換器19から流出した冷媒を減圧膨張させる第2減圧手段であり、その基本構成は、上述の第1固定絞り15と同様である。第2固定絞り22の出口側には、複合型熱交換器13の第2熱交換部132の入口側に接続されている。このため、複合型熱交換器13の第2熱交換部132には、第2固定絞り22にて減圧膨張された低圧冷媒が流入する。
【0051】
複合型熱交換器13の第2熱交換部132の出口側には、アキュムレータ23の入口側が接続されている。アキュムレータ23は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ23の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。従って、アキュムレータ23は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されることを抑制し、圧縮機11における液圧縮を防止する機能を果たす。
【0052】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、上述の複合型熱交換器13等を収容したものである。
【0053】
ケーシング31は、車室内送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
【0054】
内外気切替装置33には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置33の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0055】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して導入された空気を車室内に向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)32aを電動モータ32bにて駆動する電動送風機であって、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって回転数(送風量)が制御される。
【0056】
送風機32の空気流れ下流側には、複合型熱交換器13が配置されている。そして、ケーシング31の送風空気流れ最下流側には、複合型熱交換器13にて温度調整された空調風を、空調対象空間である車室内へ吹き出す吹出口(図示略)が配置されている。具体的には、吹出口としては、車室内の乗員の上半身へ空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元へ空調風を吹き出すフット吹出口、および車両前面窓ガラス内側面へ空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。
【0057】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の送風空気流れ上流側には、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア(図示略)、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア(図示略)、およびデフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(図示略)が配置されている。
【0058】
これらのフェイスドア、フットドア、およびデフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、後述する制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御されるサーボモータ(図示略)によって駆動される。
【0059】
ここで、本実施形態の複合型熱交換器13の詳細構成について図2〜図4に基づいて説明する。図2は、本実施形態に係る複合型熱交換器13の外観斜視図であり、図3は、本実施形態に係る複合型熱交換器13の分解斜視図である。また、図4は、本実施形態に係る複合型熱交換器13における高圧冷媒および低圧冷媒の流れを説明するための模式的な斜視図である。
【0060】
本実施形態の複合型熱交換器13は、第1熱交換部131および第2熱交換部132が、熱交換対象流体である車室内送風空気が、第1流体である高圧冷媒および第2流体である低圧冷媒の双方と熱交換可能に一体化されたものである。
【0061】
第1熱交換部131および第2熱交換部132それぞれは、内部に冷媒を流通させる複数のチューブ131a、132a、当該複数のチューブ131a、132aの両端側に配置されて冷媒の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用のタンク131b、132b等を有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器として構成されている。
【0062】
より具体的には、第1熱交換部131は、高圧冷媒が流れる複数の高温チューブ(第1流体側チューブ)131a、および高温チューブ131aの長手方向に対して直交する方向に延びて高温チューブ131a内を流れる高圧冷媒の集合あるいは分配を行う高温側ヘッダタンク部131bを有し、高温チューブ131aを流れる高圧冷媒と高温チューブ131aの周囲を流れる車室内送風空気とを熱交換させて、車室内送風空気を加熱する加熱用の熱交換部である。
【0063】
一方、第2熱交換部132は、高圧冷媒よりも温度の低い低圧冷媒が流れる複数の低温チューブ(第2流体側チューブ)132a、および低温チューブ132aの長手方向に対して直交する方向に延びて低温チューブ132a内を流れる低圧冷媒の集合あるいは分配を行う低温側ヘッダタンク部132bを有し、低温チューブ132aを流れる低圧冷媒と低温チューブ132aの周囲を流れる車室内送風空気とを熱交換させて、車室内送風空気を冷却(除湿)する冷却用の熱交換部である。
【0064】
高温チューブ131aおよび低温チューブ132aは、その長手方向に直交する断面形状が扁平形状となる扁平チューブで構成されて、伝熱性に優れる金属(アルミニウム合金等)で形成されている。
【0065】
本実施形態の高温チューブ131aおよび低温チューブ132aは、それぞれ送風機32からの送風空気の流れ方向Xに沿って2列配置されている。そして、本実施形態の高温チューブ131aおよび低温チューブ132aは、その外表面の平坦面同士が互いに平行、かつ、所定の間隔をあけて離間した状態で交互に配置されている。すなわち、高温チューブ131aは、低温チューブ132aの間に配置され、逆に、低温チューブ132aは、高温チューブ131aの間に配置されている。
【0066】
そして、高温チューブ131aと低温チューブ132aとの間に形成される空間は、車室内送風空気が流通する送風空気通路(熱交換対象流体用通路)133を構成している。つまり、高温チューブ131aの外周および低温チューブ132aの外周には、車室内送風空気が流通する送風空気通路133が形成されている。
【0067】
さらに、送風空気通路133には、第1熱交換部131における高圧冷媒と車室内送風空気との熱交換、および第2熱交換部132における低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換を促進する伝熱促進手段としてアウターフィン134が配置されている。アウターフィン134は、対向する高温チューブ131aの外表面および低温チューブ132aの外表面に接合された状態で配置されている。
【0068】
なお、本実施形態の複合型熱交換器13は、第1熱交換部131における高圧冷媒と車室内送風空気との熱交換面積と、第2熱交換部132における低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換面積とが同等となるように構成されている。
【0069】
また、高温チューブ131aおよび低温チューブ132aは、高温側ヘッダタンク部131bと低温側ヘッダタンク部132bとの間に配置されている。具体的には、高温チューブ131aおよび低温チューブ132aの長手方向一端側に高温側ヘッダタンク部131bが配置され、高温チューブ131aおよび低温チューブ132aの長手方向他端側に低温側ヘッダタンク部132bが配置されている。
【0070】
図3に示すように、高温側ヘッダタンク131bは、2列に配置された各チューブ131a、132aに接続される高温側接続プレート131c、高温側接続プレート131cに固定された高温側中間プレート131d、および高温側タンク形成部材131eを有している。
【0071】
高温側中間プレート131dには、高温側接続プレート131cが固定されることによって、高温側接続プレート131cとの間に、2列の低温チューブ132a同士を互いに連通する複数の空間を有する複数の凹み部131fが形成されている。
【0072】
また、高温側中間プレート131dにおける高温チューブ131aに対応する部位には、その表裏を貫通する貫通穴が形成され、当該貫通穴に高温チューブ131aが嵌挿されている。なお、高温チューブ131aおよび低温チューブ132aの高温側ヘッダタンク部131b側の端部では、高温チューブ131aが、低温チューブ132aよりも高温側タンク形成部材131e側に突出している。
【0073】
高温側タンク形成部材131eは、高温側接続プレート131cおよび高温側中間プレート131dに固定されることによって、その内部に高圧冷媒を集合させる集合空間131g、および高圧冷媒を分配する分配空間131hを形成する。具体的には、高温側タンク形成部材131eは、平板金属にプレス加工を施すことにより、その長手方向から見たときに二山状(W字状)に形成される。
【0074】
そして、高温側タンク形成部材131eの二山状の中央部が、高温側中間プレート131dに接合されることで、集合空間131gおよび分配空間131hが区画されている。なお、本実施形態では、送風空気の流れ方向Xの風下側に集合空間131gが配置され、風下側に分配空間131hが配置されている。
【0075】
また、高温側タンク形成部材131eの長手方向一端側には、分配空間131hへ高圧冷媒を流入させる高温側流入配管13aが接続されると共に、集合空間131gから高圧冷媒を流出させる高温側流出配管13bが接続されている。さらに、高温側タンク形成部材131eの長手方向他端側は、閉塞部材により閉塞されている。
【0076】
一方、低温側ヘッダタンク部132bは、高温側ヘッダタンク部131bと基本的構成が同様であり、各チューブ131a、132aに接続される低温側接続プレート132c、低温側接続プレート132cに固定された低温側中間プレート132d、および低温側タンク形成部材132eを有している。
【0077】
そして、低温側中間プレート132dには、低温側接続プレート132cが固定されることによって、低温側接続プレート132cとの間に、2列の高温チューブ131a同士を互いに連通する複数の空間を有する複数の凹み部132fが形成されている。
【0078】
また、低温側中間プレート132dにおける低温チューブ132aに対応する部位には、その表裏を貫通する貫通穴が形成され、当該貫通穴に低温チューブ132aが嵌挿されている。なお、高温チューブ131aおよび低温チューブ132aの低温側ヘッダタンク部132b側の端部では、低温チューブ132aが、高温チューブ131aよりも低温側タンク形成部材132e側に突出している。
【0079】
低温側タンク形成部材132eは、低温側接続プレート132cおよび低温側中間プレート132dに固定されることによって、その内部に低圧冷媒を集合させる集合空間132g、および低圧冷媒を分配する分配空間132hを形成する。具体的には、低温側タンク形成部材132eは、高温側タンク形成部材131eと同様に、その長手方向から見たときに二山状(W字状)に形成される。
【0080】
そして、低温側タンク形成部材132eの二山状の中央部が、低温側中間プレート132dに接合されることで、集合空間132gおよび分配空間132hが区画されている。なお、本実施形態では、送風空気の流れ方向Xの風上側に集合空間132gが配置され、風下側に分配空間132hが配置されている。
【0081】
また、低温側タンク形成部材132eの長手方向一端側には、分配空間132hへ低圧冷媒を流入させる低温側流入配管13cが接続されると共に、集合空間132gから低圧冷媒を流出させる低温側流出配管13dが接続されている。さらに、低温側タンク形成部材132eの長手方向他端側は、閉塞部材により閉塞されている。
【0082】
このように構成される本実施形態の複合型熱交換器13では、図4の実線矢印で示すように、高温側流入配管13aを介して高温側ヘッダタンク部131bの分配空間131hから流入した高圧冷媒が、2列に並べられた高温チューブ131aのうち、外気流れ方向の風上側の各高温チューブ131aへ流入する。
【0083】
そして、外気流れ方向の風上側の各高温チューブ131aから流出した高圧冷媒が、低温側ヘッダタンク部132bの低温側接続プレート132cと低温側中間プレート132dとの間に形成された空間を介して、外気流れ方向の風下側の各高温チューブ131aへ流入する。
【0084】
さらに、外気流れ方向の風下側に配置された各高温チューブ131aから流出した高圧冷媒が、高温側ヘッダタンク部131bの集合空間131gにて集合し、高温側流出配管13bから流出する。つまり、本実施形態の複合型熱交換器13では、高温側流入配管13aから流入した高圧冷媒が、風上側の各高温チューブ131a→低温側ヘッダタンク部132b→風下側の各高温チューブ131aの順にUターンして、高温側流出配管13bへ流出する。
【0085】
同様に、低温側流入配管13cから流入した低圧冷媒は、図4の破線矢印で示すように、風下側の各低温チューブ132a→高温側ヘッダタンク部131b→風上側の各低温チューブ132aの順にUターンして、低温側流出配管13dへ流出する。
【0086】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。本実施形態の制御装置(図示略)は、CPU、ROM、およびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御機器11、12、15、18、20、21、22、32等の作動を制御する。
【0087】
また、制御装置の入力側には、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、複合型熱交換器13の吹出空気温度(複合型熱交換器13流出側における車室内送風空気の温度)を検出する複合型熱交換器温度センサ、複合型熱交換器13に流入する高圧冷媒(圧縮機11の吐出冷媒)の温度を検出する温度検出手段としての高圧側温度センサ、高圧冷媒の圧力を検出する圧力検出手段としての高圧側圧力センサ、複合型熱交換器13に流入する低圧冷媒の温度を検出する温度検出手段としての低圧側温度センサ、低圧冷媒の圧力を検出する圧力検出手段としての低圧側圧力センサ等のセンサ群が接続されている。
【0088】
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル(図示略)に接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた操作スイッチとしては、車両用空調装置の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ、運転モード設定スイッチ等が設けられている。
【0089】
なお、制御装置は、圧縮機11の電動モータ11b等の制御機器を制御する制御手段が一体に構成され、これらを制御するものであるが、本実施形態では、制御装置のうち、各制御機器の作動を制御するための構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御機器の制御手段として機能する。例えば、圧縮機11の作動を制御する構成が吐出能力制御手段を構成し、送風ファン20による外気の送風量を制御する構成が外気送風量制御手段を構成している。
【0090】
次に、上述のように構成される本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内を暖房する暖房運転、車室内を冷房する冷房運転に加えて、除湿暖房運転を実行することができる。なお、暖房運転、冷房運転、および除湿暖房運転のいずれの運転を実行するかは、操作パネルの運転モード設定スイッチの操作信号に応じて決定される。
(a)暖房運転
暖房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、操作パネルの運転モード設定スイッチにて暖房運転モードが選択されると開始される。
【0091】
暖房運転時には、制御装置が、開閉弁18を閉じると共に、第1三方弁12を圧縮機11の吐出口側と複合型熱交換器13の第1熱交換部131の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、さらに、第2三方弁21を室外熱交換器19の出口側とアキュムレータ23の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒(高圧冷媒)が、図1の黒矢印に示すように流れる。
【0092】
第1、第2三方弁12、21および開閉弁18にて、暖房運転時の冷媒流路に切り替えた後、制御装置が、上述のセンサ群の検出信号や操作パネルの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号や操作信号に応じて、車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出し、当該目標吹出温度TAOおよび各センサの検出信号に基づいて、制御装置の出力側に接続された各制御機器の作動状態(例えば、制御信号)を決定する。
【0093】
例えば、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、目標吹出温度TAOと複合型熱交換器温度センサによって検出された複合型熱交換器13からの吹出空気温度との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて複合型熱交換器13からの吹出空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように決定される。また、送風ファン20へ出力される制御信号については、予め設定された目標回転数になるように決定される。
【0094】
そして、目標吹出温度TAO等により決定された制御信号等を各種制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各制御機器の作動状態の決定→各制御機器の制御といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンは、基本的には他の運転モードが設定された場合にも同様に行われる。
【0095】
これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒(高圧冷媒)が、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する。複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入した高圧冷媒は、送風機32から送風された車室内送風空気と熱交換して放熱し、車室内送風空気が加熱される。
【0096】
複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した高圧冷媒は、第1固定絞り15へ流入して減圧膨張される。そして、第1固定絞り15にて減圧膨張された冷媒(低圧冷媒)は、室外熱交換器19へ流入する。室外熱交換器19へ流入した低圧冷媒は、送風ファン20から送風された外気から吸熱して蒸発する。
【0097】
室外熱交換器19から流出した低圧冷媒は、複合型熱交換器13の第2熱交換部132を迂回して、アキュムレータ23に流入し、当該アキュムレータ23にて気液分離される。そして、アキュムレータ23にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0098】
以上の如く、暖房運転時には、複合型熱交換器13の第1熱交換部131にて高圧冷媒との熱交換によって加熱された車室内送風空気を車室内に吹き出すことで、車室内の暖房を実現することができる。
【0099】
この際、本実施形態の暖房運転時には、圧縮機11の回転数(電動モータ11bに出力される制御信号)を変更し、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の温度(圧力)を調整することで、第1熱交換部131での高圧冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0100】
このため、複合型熱交換器13にて車室内送風空気の温度を暖房運転の目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態の暖房運転では、圧縮機11が複合型熱交換器13の第1熱交換部131における冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整する熱交換量調整手段として機能する。
【0101】
ここで、本実施形態の暖房運転時における「高圧冷媒」は、圧縮機11の吐出口側から第1固定絞り15の入口側に至る冷媒流路を流れる冷媒に相当し、「低圧冷媒」は、第1固定絞り15の出口側から圧縮機11の吸入口側に至る冷媒流路を流れる冷媒に相当する。
(b)冷房運転
次に、冷房運転について説明する。冷房運転では、操作パネルの運転モード設定スイッチにて冷房運転モードが選択された場合に開始される。
【0102】
冷房運転時には、制御装置が、開閉弁18を開くと共に、第1三方弁12を圧縮機11の吐出口側と熱交換器用迂回通路14の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、さらに、第2三方弁21を室外熱交換器19の出口側と第2固定絞り22の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒(高圧冷媒)が、図1の白抜き矢印に示すように流れる。
【0103】
また、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、複合型熱交換器13からの吹出空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように決定される。また、送風ファン20へ出力される制御信号については、予め設定された目標回転数になるように決定される。
【0104】
ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒(高圧冷媒)が、複合型熱交換器13の第1熱交換部131および第1固定絞り15を迂回して室外熱交換器19へ流入する。室外熱交換器19へ流入した高圧冷媒は、送風ファン20から送風された外気に放熱する。
【0105】
室外熱交換器19から流出した高圧冷媒は、第2固定絞り22へ流入して減圧膨張される。そして、第2固定絞り22にて減圧膨張された冷媒(低圧冷媒)は、複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入する。複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発し、車室内送風空気が冷却される。
【0106】
複合型熱交換器13の第2熱交換部132から流出した低圧冷媒は、アキュムレータ23に流入し、当該アキュムレータ23にて気液分離される。そして、アキュムレータ23にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0107】
以上の如く、冷房運転時には、複合型熱交換器13の第2熱交換部132にて低圧冷媒との熱交換によって冷却された車室内送風空気を車室内に吹き出すことで、車室内の冷房を実現することができる。
【0108】
この際、本実施形態の冷房運転時には、圧縮機11の回転数を変更し、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度(圧力)を調整することで、第2熱交換部132での低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0109】
このため、複合型熱交換器13にて車室内送風空気の温度を冷房運転時の目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態の冷房運転では、圧縮機11が複合型熱交換器13の第2熱交換部132における低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整する熱交換量調整手段として機能する。
【0110】
ここで、本実施形態の冷房運転時における「高圧冷媒」は、圧縮機11の吐出口側から後述する第2固定絞り22の入口側に至る冷媒流路を流れる冷媒に相当し、「低圧冷媒」は、第2固定絞り22の出口側から圧縮機11の吸入口側に至る冷媒流路を流れる冷媒に相当する。なお、本実施形態の冷房運転時における「高圧冷媒」および「低圧冷媒」は、次に説明する除湿暖房運転時と同様である。
(c)除湿暖房運転
次に、除湿暖房運転について説明する。除湿暖房運転は、操作パネルの運転モード設定スイッチにて除湿暖房運転モードが選択された場合に開始される。なお、除湿暖房運転は、運転モード設定スイッチによる除湿暖房運転モードの選択以外に限らず、暖房運転時に車室内の相対湿度に基づいて除湿の要否を判定し、当該判定結果に応じて自動的に開始するようにしてもよい。
【0111】
除湿暖房運転時には、制御装置が、開閉弁18を開くと共に、第1三方弁12を圧縮機11の吐出口側と複合型熱交換器13の第1熱交換部131の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、さらに、第2三方弁21を室外熱交換器19の出口側と第2固定絞り22の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒(高圧冷媒)が図1の白斜線矢印に示すように流れる。
【0112】
また、本実施形態の圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、複合型熱交換器13からの吹出空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように決定される。また、送風ファン20へ出力される制御信号については、外気温および高圧冷媒の温度により室外熱交換器19における放熱量が所定の目標放熱量となるように決定される。
【0113】
ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒(高圧冷媒)が、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する。複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入した高圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気と熱交換して放熱し、車室内送風空気が加熱される。
【0114】
複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した高圧冷媒は、開閉弁18が開いているので、第1固定絞り15を迂回して室外熱交換器19へ流入する。室外熱交換器19へ流入した高圧冷媒は、送風ファン20から送風された外気に放熱する。
【0115】
室外熱交換器19から流出した高圧冷媒は、第2固定絞り22へ流入して減圧膨張される。そして、第2固定絞り22にて減圧膨張された冷媒(低圧冷媒)は、複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入する。複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発し、車室内送風空気が除湿冷却される。
【0116】
複合型熱交換器13の第2熱交換部132から流出した低圧冷媒は、アキュムレータ23に流入し、当該アキュムレータ23にて気液分離される。そして、アキュムレータ23にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0117】
ここで、図5は、複合型熱交換器13へ高圧冷媒および低圧冷媒が流入したときの送風空気の流れ方向Xから見たアウターフィン134周囲を流れる送風空気の温度分布を示す温度分布図である。
【0118】
図5に示すように、複合型熱交換器13における送風空気通路133を流れる空気は、高温チューブ131aの外表面付近(放熱領域)で高温チューブ131aを流れる高圧冷媒により加熱されて昇温し、低温チューブ132aの外表面付近(吸熱領域)で低温チューブ132aを流れる低圧冷媒により冷却されて除湿される。つまり、複合型熱交換器13では、高温冷媒により加熱されると共に低圧冷媒により除湿された車室内送風空気が流出する。
【0119】
以上の如く、除湿暖房運転時には、複合型熱交換器13の第1熱交換部131にて高圧冷媒を車室内送風空気と熱交換させると共に、第2熱交換部132にて低圧冷媒を車室内送風空気と熱交換させることで、温度調整されると共に除湿された車室内送風空気を車室内に吹き出すことで、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0120】
この際、本実施形態の除湿暖房運転時には、圧縮機11の回転数を変更すると共に、送風ファン20の回転数を調整して室外熱交換器19における放熱量を低減することで、第1熱交換部131における高圧冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0121】
このため、車室内送風空気を除湿すると共に除湿暖房運転時の目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態の除湿暖房運転では、圧縮機11および送風ファン20が複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整する熱交換量調整手段として機能する。
【0122】
以上、説明したように、本実施形態の車両用空調装置1に適用した熱交換システムでは、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路の切り替えると共に、圧縮機11によって複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の温度、第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度、および送風ファン20の送風量の調整によって、複合型熱交換器13における第1熱交換部131および第2熱交換部132における冷媒と送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0123】
これにより、複合型熱交換器13にて車室内送風空気の温度を広範囲にわたって調整することができるので、車室内送風空気の温度を冷房運転、暖房運転、および除湿暖房運転における目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となり、車室内を適切に空調することが可能となる。
【0124】
また、本実施形態では、室内空調ユニット30に車室内に吹き出す空気の温度を調節する温度調節手段(例えば、エアミックスドア)等を設けることなく、複合型熱交換器13にて車室内送風空気を所望の温度に調整することができるので、室内空調ユニット30の体格の小型化等を図ることができる。
【0125】
さらに、複合型熱交換器13といった単一の熱交換器にて車室内送風空気の除湿暖房(除湿および温度調整)を実現することができ、室内空調ユニット30の体格の小型化等を図ることができる。
【0126】
また、本実施形態の複合型熱交換器13では、高温チューブ131aと低温チューブ132aとの間に車室内送風空気が流れる送風空気通路133を形成しているので、車室内送風空気を高圧冷媒および低圧冷媒の双方と熱交換可能な構成を具体的かつ容易に実現することができる。
【0127】
さらに、本実施形態の複合型熱交換器13は、高温チューブ131aと低温チューブ132aとの間に形成された送風空気通路133に第1熱交換部131および第2熱交換部132それぞれにおける熱交換を促進するアウターフィン134を配置する構成としている。
【0128】
このため、複合型熱交換器13の第1熱交換部131における高圧冷媒と車室内送風空気との熱交換、および低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換を促進することができるので、複合型熱交換器13における熱交換効率の向上を図ることができる。
【0129】
さらにまた、本実施形態の複合型熱交換器13では、各高温チューブ131aの間に低温チューブ132aを配置する構成(各低温チューブ132aの間に高温チューブ131aを配置する構成)を採用しているので、複合型熱交換器13流出側における車室内送風空気の温度分布の均一化を図ることが可能となる。
【0130】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図6に基づいて説明する。図6は、本実施形態に係る複合型熱交換器13の模式的な斜視図である。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同等または均等な構成については、同一の符号を付し、その説明を省略、あるいは簡略化して説明する。
【0131】
本実施形態では、第1実施形態に対して、複合型熱交換器13の第2熱交換部132における低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換面積、および第1熱交換部131における高圧冷媒と車室内送風空気との熱交換面積を変更した例を説明する。
【0132】
図6に示すように、本実施形態の複合型熱交換器13は、各ヘッダタンク部131b、132bのうち、高温側ヘッダタンク部131bの集合空間131gおよび分配空間131hに、当該集合空間131gおよび分配空間131hを高温側流入配管13aおよび高温側流出配管13bに連通する連通空間、および連通しない非連通空間に仕切る仕切り板135が配置されている。つまり、高温側ヘッダタンク部131bの内部に形成された集合空間131gおよび分配空間131hは、仕切り板135によって、その一部が高温側流入配管13aおよび高温側流出配管13bと非連通とされている。
【0133】
このように構成される本実施形態の複合型熱交換器13における高圧冷媒および低圧冷媒の流れについて説明すると、図6の実線矢印で示すように、第1熱交換部131では、高温側流入配管13aを介して高温側ヘッダタンク部131bの分配空間131hの連通空間に高圧冷媒が流入する。そして、分配空間131hの連通空間に流入した冷媒が、分配空間131hの連通空間に連通する外気流れ方向の風上側の各高温チューブ131aへ流入する。なお、分配空間131hの非連通空間には、仕切り板135によって冷媒の流入が阻止されるので、分配空間131hの非連通空間に連通する各高温チューブ131aへ冷媒が流入しない。
【0134】
そして、外気流れ方向の風上側の各高温チューブ131aから流出した冷媒が、低温側ヘッダタンク部132bの低温側接続プレート132cと低温側中間プレート132dとの間に形成された空間を介して、外気流れ方向の風下側の各高温チューブ131aへ流入する。
【0135】
さらに、外気流れ方向の風下側に配置された各高温チューブ131aから流出した冷媒が、高温側ヘッダタンク部131bの集合空間131gの連通空間にて集合し、高温側流出配管13bから流出する。
【0136】
一方、図6の破線矢印で示すように、第2熱交換部132では、低温側流入配管13cを介して低温側ヘッダタンク部132bの分配空間132hに流入した冷媒が、風下側の各低温チューブ132a→風上側の各低温チューブ132a→低温側ヘッダタンク部132bの集合空間131gへと流れ、低温側流出配管13dから流出する。
【0137】
このように、本実施形態の複合型熱交換器13では、第2熱交換部132における低圧冷媒が流れる低温チューブ132aの本数が、実質的に第1熱交換部131における高圧冷媒が流れる高圧チューブ131aの本数よりも多くなる構成とすることで、第2熱交換部132における低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換面積を、第1熱交換部131における高圧冷媒と車室内送風空気との熱交換面積よりも大きくするようにしている。
【0138】
これによれば、除湿暖房運転時において、各熱交換部131、132における高圧冷媒および低圧冷媒それぞれが流れる領域(高低圧領域)では、高圧冷媒の有する熱を吸熱することで低圧冷媒の気化が促進される。これにより、各熱交換部131、132における高低圧領域における低温チューブ132a内の圧力損失が増大するので、各熱交換部131、132における高低圧領域に流入する低圧冷媒の流入量が減少させることができる。この結果、当該高低圧領域における車室内送風空気への放熱量を増大させ、暖房性能の向上を図ることができる。
【0139】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図7に基づいて説明する。図7は、本実施形態に係る車両用空調装置1の全体構成図である。
【0140】
本実施形態では、本発明の熱交換システムを内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両の車両用空調装置1に適用している。
【0141】
ハイブリッド車両は、車両の走行負荷等に応じてエンジンを作動あるいは停止させて、エンジンおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、ハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力をエンジンのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させることができる。
【0142】
本実施形態の車両用空調装置1に適用される熱交換システムは、蒸気圧縮式の冷凍サイクルであるヒートポンプサイクル10および外部熱源であるエンジンEGを冷却するエンジン冷却水(熱媒体)が循環する冷却水循環回路40の各構成機器等によって構成されている。
【0143】
本実施形態のヒートポンプサイクル10は、車室内送風空気を冷却する機能を果たす。本実施形態のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11の吐出口側に室外熱交換器19が接続され、室外熱交換器19の出口側には、室外熱交換器19から流出した冷媒の気液を分離して、余剰液相冷媒を蓄えるレシーバ24が配置されている。そして、レシーバ24の液相冷媒の出口側には、温度式膨張弁25の入口側が接続され、温度式膨張弁25の出口側には、複合型熱交換器13の第2熱交換部132の入口側が接続されている。
【0144】
この温度式膨張弁25は、複合型熱交換器13の第2熱交換部132出口側の冷媒通路に配置された感温部(図示略)を有し、第2熱交換部132の温度と圧力に基づいて、第2熱交換部132出口側の冷媒の過熱度を検知し、第2熱交換部132出口側の冷媒の過熱度が予め定めた所定範囲の値となるように機械的機構により弁開度を調整する減圧手段である。
【0145】
また、本実施形態の複合型熱交換器13は、上述の第1実施形態と基本的構成は同様である。本実施形態の複合型熱交換器13の第2熱交換部132は、温度式膨張弁25によって減圧膨張された低圧冷媒と車室内送風空気とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させることによって車室内送風空気を冷却する冷却用の熱交換部である。複合型熱交換器13の第2熱交換部132の出口側には、圧縮機11の吸入口が接続されている。
【0146】
ここで、本実施形態のヒートポンプサイクル10における「高圧冷媒」は、圧縮機11の吐出口側から温度式膨張弁25の入口側に至る冷媒流路を流れる冷媒に相当し、「低圧冷媒」は、温度式膨張弁25の出口側から圧縮機11の吸入口側に至る冷媒流路を流れる冷媒に相当する。
【0147】
次に、本実施形態の冷却水循環回路40について説明する。冷却水循環回路40は、外部熱源であるエンジンEGの内部に形成された冷却水通路に、熱媒体としてのエンジン冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を流通させてエンジンEGを冷却する熱媒体循環回路である。
【0148】
この冷却水循環回路40には、エンジン冷却水をエンジンEGの内部に形成された冷却水通路へ圧送する冷却水ポンプ41が配置されている。冷却水ポンプ41は、電動式の水ポンプであり、制御装置から出力される制御信号によって回転数(流入量)が制御される。
【0149】
冷却水ポンプ41の出口側には、エンジンEGの内部に形成された冷却水通路の入口側が接続されている。そして、エンジンEGの内部に形成された冷却水通路の出口側には、分岐部を介して複合型熱交換器13の第1熱交換部131の入口側、およびエンジン冷却水を第1熱交換部131を迂回して流すパイパス通路42の入口側の双方が接続されている。
【0150】
本実施形態の複合型熱交換器13の第1熱交換部131は、エンジンEGの内部に形成された冷却水通路から流出したエンジン冷却水と車室内送風空気とを熱交換させて、エンジン冷却水の有する熱を車室内送風空気に放熱させて、車室内送風空気を加熱する加熱用の熱交換部として機能する。
【0151】
このように、本実施形態の複合型熱交換器13は、第1熱交換部131にエンジン冷却水が流れ、第2熱交換部131に低圧冷媒が流れる。このため、複合型熱交換器13では、第1熱交換部131にてエンジン冷却水と車室内送風空気とが熱交換され、第2熱交換部132にて低圧冷媒と車室内送風空気とが熱交換熱されることになる。なお、本実施形態では、エンジン冷却水が「第1流体」に対応し、低圧冷媒が「第2流体」に対応し、車室内送風空気が「熱交換対象流体」に対応している。
【0152】
また、冷却水ポンプ41の出口側から冷却水ポンプ41へ至る冷却水通路には、当該冷却水通路を開閉する開閉弁43が配置されている。この開閉弁43は、制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
【0153】
このように構成される冷却水循環回路40では、制御装置が冷却水ポンプ41を作動させると、エンジン冷却水がエンジンEGを通過する際に、エンジンEGの廃熱を吸熱してエンジンEGを冷却する。さらに、エンジンEGの廃熱を吸熱して昇温した冷却水は、複合型熱交換器13の第1熱交換部131へ流入して、車室内送風空気に放熱して冷却される。このように、エンジンEGは、冷却水を加熱する外部熱源としても機能する。
【0154】
次に、上述のように構成される本実施形態の作動について説明する。なお、本実施形態では、上述の実施形態と同様の作動について説明を省略あるいは簡略化して説明する。
(a)暖房運転
暖房運転時には、制御装置が、冷却水循環回路40の開閉弁43を開き、エンジン冷却水が複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流れる循環流路に切り替える。そして、制御装置が、センサ群の検出信号や操作パネルの操作信号等に基づいて、制御装置の出力側に接続された各制御機器の作動状態を決定する。
【0155】
例えば、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、圧縮機11の作動を停止するように決定される。また、冷却水ポンプ41に出力される制御信号(流入量)については、複合型熱交換器13からの吹出空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように決定される。
【0156】
これにより、冷却水循環回路40では、エンジンEGの廃熱により昇温したエンジン冷却水が複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する。そして、第1熱交換部131に流入したエンジン冷却水は、車室内送風空気と熱交換して放熱し、車室内送風空気が加熱される。なお、ヒートポンプサイクル10では、冷媒が循環しないので、複合型熱交換器13の第2熱交換部132では、低圧冷媒と車室内送風空気とが熱交換しない。
【0157】
以上の如く、暖房運転時には、複合型熱交換器13の第1熱交換部131にてエンジン冷却水との熱交換によって加熱された車室内送風空気を車室内に吹き出すことで、車室内の暖房を実現することができる。
【0158】
この際、本実施形態の暖房運転時には、冷却水ポンプ41の回転数を変更し、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入するエンジン冷却水の流入量を調整することで、第1熱交換部131でのエンジン冷却水と車室内送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0159】
このため、複合型熱交換器13にて車室内送風空気の温度を暖房運転時の目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態の暖房運転では、冷却水ポンプ41が熱交換量調整手段として機能する。
(b)冷房運転
冷房運転時には、制御装置が、冷却水循環回路40の開閉弁43を閉じて、エンジン冷却水が複合型熱交換器13の第1熱交換部131を迂回して流れる冷却水流路に切り替える。また、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、複合型熱交換器13からの吹出空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように決定される。
【0160】
ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒が、室外熱交換器19へ流入し、送風ファン20から送風された外気に放熱する。そして、室外熱交換器19から流出した高圧冷媒は、レシーバ24にて気液が分離され、分離された液冷媒が温度式膨張弁25に流入して減圧膨張される。
【0161】
温度式膨張弁25にて減圧膨張された低圧冷媒は、複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入する。複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発し、車室内送風空気が冷却される。なお、冷却水循環回路40では、エンジン冷却水が、複合型熱交換器13の第1熱交換部131を迂回して流れるので、複合型熱交換器13の第1熱交換部131にてエンジン冷却水と車室内送風空気とが熱交換しない。
【0162】
以上の如く、冷房運転時には、複合型熱交換器13の第2熱交換部132にて低圧冷媒との熱交換によって冷却された車室内送風空気を車室内に吹き出すことで、車室内の冷房を実現することができる。
【0163】
この際、本実施形態の冷房運転時には、圧縮機11の回転数を変更し、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度(圧力)を調整することで、第2熱交換部132での低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0164】
このため、複合型熱交換器13にて車室内送風空気の温度を冷房運転時の目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態の冷房運転では、圧縮機11が熱交換量調整手段として機能する。
(c)除湿暖房運転
除湿暖房運転時には、制御装置が、冷却水循環回路40の開閉弁43を閉じて、エンジン冷却水が複合型熱交換器13の第1熱交換部131を迂回して流れる冷却水流路に切り替える。そして、制御装置が、センサ群の検出信号や操作パネルの操作信号等に基づいて、制御装置の出力側に接続された各制御機器の作動状態を決定する。
【0165】
例えば、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、車室内送風空気の温度が所定の露点温度以下となるように決定される。一方、冷却水ポンプ41に出力される制御信号については、複合型熱交換器13からの吹出空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように決定される。
【0166】
これにより、ヒートポンプサイクル10では、複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入した低圧冷媒が、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発し、車室内送風空気が除湿冷却される。
【0167】
また、冷却水循環回路40では、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入したエンジン冷却水の有する熱量が車室内送風空気に放熱されて、車室内送風空気が加熱される。
【0168】
以上の如く、除湿暖房運転時には、複合型熱交換器13の第2熱交換部132にて低圧冷媒との熱交換により除湿され、第1熱交換部131にてエンジン冷却水との熱交換により加熱された車室内送風空気を車室内に吹き出すことで、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0169】
この際、本実施形態の除湿暖房運転時には、圧縮機11の回転数を変更し、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度(圧力)を変更することで、第2熱交換部132での低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整することができる。加えて、冷却水ポンプ41の回転数を変更し、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入するエンジン冷却水の流入量を調整することで、第1熱交換部131におけるエンジン冷却水と車室内送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0170】
このため、車室内送風空気を除湿暖房運転の目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態の除湿暖房運転では、圧縮機11および冷却水ポンプ41が熱交換量調整手段として機能する。
【0171】
以上説明したように、本実施形態の熱交換システムでは、冷却水ポンプ41によって複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入するエンジン冷却水の流入量を調整すると共に、圧縮機11によって複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度を調整することで、複合型熱交換器13の第1熱交換部131におけるエンジン冷却水と車室内送風空気との熱交換量、および第2熱交換部132における低圧冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0172】
これにより、複合型熱交換器13において車室内送風空気の温度を広範囲にわたって調整することができるので、第1実施形態と同様に、車室内送風空気の温度を冷房運転、暖房運転、および除湿暖房運転における目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。
【0173】
なお、本実施形態では、除湿暖房運転時に、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入するエンジン冷却水の流入量を変更すると共に、第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度を変更することで、複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における熱交換量を調整しているが、第1熱交換部131に流入するエンジン冷却水の流入量、および第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度のいずれか一方を変更し、第1、第2熱交換部131、132の一方の熱交換量を調整することで、車室内送風空気の温度を調整するようにしてもよい。
【0174】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図8に基づいて説明する。図8は、本実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【0175】
本実施形態では、本発明の熱交換システムをハイブリッド車両に搭載された車載バッテリ5の温度を調整する温度調整装置としても機能する車両用空調装置1に適用している。本実施形態の車両用空調装置1に適用される熱交換システムは、ヒートポンプサイクル10の各構成機器等によって構成されている。
【0176】
車載バッテリ5は、車載された各種電気機器に供給する電力を蓄える蓄電手段を構成するもので、所定の温度帯にて作動(充放電)させる必要がある作動機器である。例えば、車載バッテリ5は、バッテリ温度が所定の下限温度以下となる際に作動(充放電)させると本来の機能が発揮できず、バッテリ温度が所定の上限温度以上となる際に作動させると急速に劣化することがある。なお、車載バッテリ5には、バッテリ温度を検出するバッテリ温度センサが設けられ、バッテリ温度センサの検出信号が制御装置に出力される。
【0177】
本実施形態のヒートポンプサイクル10は、車室内送風空気を冷却する機能に加えて、車載バッテリ5に向かって吹き出す温度調整媒体である送風空気(以下、バッテリ送風空気と称する。)の温度を加熱または冷却する機能を果たす。具体的には、ヒートポンプサイクル10は、冷媒流路を切り替えて、バッテリ送風空気を温度調整して車載バッテリ5を所定の温度帯に調整する温度調整運転、およびバッテリ送風空気を加熱して車載バッテリ5を早期に昇温させる暖機運転を実行できる。
【0178】
本実施形態のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11の吐出口側に室外熱交換器19が接続され、室外熱交換器19の出口側には、レシーバ24が配置されている。そして、レシーバ24の液相冷媒の出口側には、全開機能付きの第1電磁弁26の入口側が接続され、第1電磁弁26の出口側に複合型熱交換器13の第1熱交換部131の入口側が接続されている。
【0179】
第1電磁弁26は、制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって作動が制御されるものであって、レシーバ24の出口側から複合型熱交換器13の第1熱交換部131の入口側に至る冷媒通路の絞り開度を変更可能な電気式の可変絞り機構で構成されている。この第1電磁弁26は、室外熱交換器19から流出した冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての機能に加えて、冷媒通路を全開する全開機能を有している。
【0180】
この際、本実施形態の複合型熱交換器13は、上述の第1実施形態と基本構成は同様である。本実施形態の複合型熱交換器13は、バッテリ送風ファン(図示略)にて送風されるバッテリ送風空気の空気通路における車載バッテリ5の空気流れ上流側に配置されており、車載バッテリ5に送風するバッテリ送風空気の温度を調整するものである。バッテリ送風ファンは、制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0181】
複合型熱交換器13の第1熱交換部131の出口側には、電気式の三方弁27を介して温度式膨張弁25の入口側およびバイパス通路28の入口側が接続されている。
【0182】
三方弁27は、制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって作動が制御されるものである。より具体的には、三方弁27は、複合型熱交換器13の第1熱交換部131の出口側と温度式膨張弁25の入口側とを接続する冷媒流路と、複合型熱交換器13の第1熱交換部131の出口側とバイパス通路28の入口側とを接続する冷媒流路とに切り替える流路切替手段である。
【0183】
バイパス通路28は、複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した冷媒を室内蒸発器34を迂回して流す冷媒通路であり、その出口側には、複合型熱交換器13の第2熱交換部132の入口側が接続されている。
【0184】
バイパス通路28には、第2電磁弁28aが配置されている。この第2電磁弁28aは、後述する制御装置から出力される制御信号(制御電圧)によって作動が制御されるものであって、バイパス通路28の絞り開度を変更可能な電気式の可変絞り機構で構成されている。この第1電磁弁28aは、バイパス通路28に流入した冷媒を減圧膨張させる減圧手段としての機能を有している。
【0185】
温度式膨張弁25の出口側には、室内蒸発器34の入口側が接続されている。室内蒸発器34は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置され、その内部に流通する冷媒(低圧冷媒)と車室内送風空気とを熱交換させる冷却用熱交換器である。
【0186】
室内蒸発器34の出口側には、逆止弁29を介して複合型熱交換器13の第2熱交換部132の入口側が接続され、複合型熱交換器13の第2熱交換部132の出口側には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
【0187】
このように、本実施形態の複合型熱交換器13は、第1熱交換部131に高圧冷媒が流れ、第2熱交換部131に低圧冷媒が流れる。このため、複合型熱交換器13では、第1熱交換部131にて高圧冷媒とバッテリ送風空気とが熱交換され、第2熱交換部132にて低圧冷媒とバッテリ送風空気とが熱交換されることになる。なお、本実施形態では、高圧冷媒が「第1流体」に対応し、低圧冷媒が「第2流体」に対応し、バッテリ送風空気が「熱交換対象流体(温度調整媒体)」に対応している。
【0188】
ここで、逆止弁29は、室内蒸発器34の出口側から圧縮機11の吸入側への冷媒の流れを許容し、圧縮機11の吸入側から室内蒸発器34の出口側への冷媒の流れを禁止する逆流防止手段である。この逆止弁29によって、バイパス通路28を流れる冷媒が、室内蒸発器34の出口側に流れてしまうことを防止することができる。
【0189】
次に、本実施形態の室内空調ユニット30について説明する。本実施形態の室内空調ユニット30は、室内蒸発器34の送風空気流れ方向の下流側に、エンジン冷却水の有する熱量を車室内送風空気と熱交換させるヒータコア等が配置されている。
【0190】
次に、本実施形態における車両用空調装置1を温度調整装置として機能させた場合の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車載バッテリ5の温度を所定の温度帯に調整する温度調整運転、および車載バッテリ5を昇温する暖機運転を実行することができる。なお、温度調整運転、および暖機運転のいずれの運転を実行するかは、バッテリ温度センサの検出信号に応じて決定される。
(a)温度調整運転
温度調整運転は、例えば、車載バッテリ5の温度が所定の温度帯から外れる場合に実行される。まず、温度調整運転時には、制御装置が、バイパス通路28の第2電磁弁28aを閉じると共に、三方弁27を複合型熱交換器13の第1熱交換部131の出口側と室内蒸発器34の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒が、図8の白抜き矢印で示すように流れる。
【0191】
そして、制御装置が、センサ群の検出信号や操作パネルの操作信号等に応じてバッテリ送風空気の目標吹出温度を算出し、当該目標吹出温度およびセンサ群の検出信号等に基づいて、制御装置の出力側に接続された各制御機器の作動状態を決定する。
【0192】
例えば、第1電磁弁26に出力される制御信号については、車載バッテリ5の温度に応じて所定の絞り開度となるように決定される。より詳しくは、第1電磁弁26は、車載バッテリ5を冷却する必要がある場合(車載バッテリ5の温度が所定の温度帯よりも高い温度となる場合)に、第1熱交換部131に流入する冷媒の温度を上昇させるべく、絞り開度が小さくなるように決定され、車載バッテリ5を加熱する必要がある場合(車載バッテリ5の温度が所定の温度帯よりも低い温度となる場合)に、第1熱交換部131に流入する冷媒の温度を低下させるべく、絞り開度が大きくなるように決定される。
【0193】
ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒(高圧冷媒)が、室外熱交換器19へ流入し、送風ファン20から送風された外気に放熱する。そして、室外熱交換器19から流出した高圧冷媒は、レシーバ24にて気液が分離され、分離された液冷媒が第1電磁弁26に流入して減圧膨張される。
【0194】
第1電磁弁26にて減圧膨張された冷媒は、複合型熱交換器13の第1熱交換部131へ流入する。複合型熱交換器13の第1熱交換部131へ流入した冷媒は、バッテリ送風ファンから送風されたバッテリ送風空気と熱交換し、バッテリ送風空気の温度が調整される。
【0195】
複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した冷媒は、温度式膨張弁25にて減圧膨張されて室内蒸発器34に流入し、室内蒸発器34に流入した冷媒は、車室内送風空気と熱交換して蒸発し、車室内送風空気が冷却される。
【0196】
室内蒸発器34から流出した冷媒は、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する。そして、複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入した冷媒は、バッテリ送風ファンから送風されたバッテリ送風空気と熱交換し、バッテリ送風空気の温度が調整される。
【0197】
以上の如く、温度調整運転時には、複合型熱交換器13の各熱交換部131にて冷媒との熱交換によって温度調整されたバッテリ送風空気を車載バッテリ5に向けて吹き出すことで、車載バッテリ5の温度調整を実現することができる。
【0198】
この際、本実施形態の温度調整運転時には、第1電磁弁26の絞り開度を変更し、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の温度(圧力)を調整することで、第1熱交換部131における冷媒とバッテリ送風空気との熱交換量を調整することができる。このため、バッテリ送風空気を目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態の温度調整運転では、第1電磁弁26が熱交換量調整手段として機能する。
【0199】
ここで、本実施形態の温度調整運転時における「高圧冷媒」は、圧縮機11の吐出口側から後述する温度式膨張弁25の入口側に至る冷媒流路を流れる冷媒に相当し、「低圧冷媒」は、温度式膨張弁25の入口側から圧縮機11の吸入口側へ至る冷媒流路を流れる冷媒に相当する。
(b)暖機運転
暖機運転は、例えば、車両起動時や車載バッテリ5の温度が所定の下限温度より低い場合に実行される。まず、暖機運転時には、制御装置が、バイパス通路28の第2電磁弁28aを開くと共に、三方弁27を複合型熱交換器13の第1熱交換部131の出口側とバイパス通路28とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒が、図8の黒矢印で示すように流れる。
【0200】
そして、第1電磁弁26に出力される制御信号については、レシーバ24の出口側から複合型熱交換器13の第1熱交換部131の入口側に至る冷媒通路を全開するように決定される。また、第2電磁弁28aに出力される制御信号については、車載バッテリ5の温度が下限温度以上となるように所定の絞り開度となるように決定される。さらに、送風ファン20に出力される制御信号については、送風ファン20の作動を停止するように決定される。
【0201】
ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒が、室外熱交換器19へ流入し、外気に放熱することなく、室外熱交換器19から流出する。そして、室外熱交換器19から流出した冷媒は、レシーバ24を介して第1電磁弁26に流入し、減圧膨張されることなく、第1電磁弁26から流出する。
【0202】
第1電磁弁26から流出した冷媒は、複合型熱交換器13の第1熱交換部131へ流入する。複合型熱交換器13の第1熱交換部131へ流入した冷媒は、バッテリ送風ファンから送風されたバッテリ送風空気に放熱し、バッテリ送風空気が加熱される。そして、複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した冷媒は、バイパス通路28に流入し、第2電磁弁28aにて減圧膨張される。
【0203】
第2電磁弁28aにて減圧膨張された冷媒は、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する。複合型熱交換器13の第2熱交換部132へ流入した冷媒は、バッテリ送風ファンから送風されたバッテリ送風空気から吸熱し、バッテリ送風空気が冷却される。
【0204】
以上の如く、暖機運転時には、圧縮機11から吐出された冷媒の有する熱量を室外熱交換器19にて放熱させることなく、複合型熱交換器13の第1熱交換部131にて放熱させるので、温度調整運転時に比べて、バッテリ送風空気の温度を早期に上昇させることが可能となる。これにより、複合型熱交換器13にて温度調整されたバッテリ送風空気を車載バッテリ5に向けて吹き出すことで、車載バッテリ5の早期暖機を実現することができる。
【0205】
この際、本実施形態の暖機運転時には、第2電磁弁28aの絞り開度を変更し、複合型熱交換器13の第2熱交換部132における低圧冷媒の温度(圧力)を調整することで、第2熱交換部132における冷媒とバッテリ送風空気との熱交換量を調整することができる。このため、バッテリ送風空気を暖機運転時の目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態の暖機運転では、第2電磁弁28aが熱交換量調整手段として機能する。
【0206】
ここで、本実施形態の暖機運転時における「高圧冷媒」は、圧縮機11の吐出口側から後述する第2電磁弁28aの入口側に至る冷媒流路を流れる冷媒に相当し、「低圧冷媒」は、第2電磁弁28aの入口側から圧縮機11の吸入口側へ至る冷媒流路を流れる冷媒に相当する。
【0207】
以上、説明した本実施形態の温度調整装置に適用した熱交換システムでは、第1電磁弁26および第2電磁弁28aによって複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の温度、および第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度を調整することで、複合型熱交換器13における各熱交換部131、132における冷媒とバッテリ送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0208】
これにより、複合型熱交換器13にてバッテリ送風空気の温度を広範囲にわたって調整することができるので、バッテリ送風空気の温度を温度調整運転、および暖機運転における目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となり、車載バッテリ5を適切に作動させることが可能となる。
【0209】
また、本実施形態では、車載バッテリ5の温度調整が必要でない場合(例えば、車載バッテリ5の温度が所定の温度帯となる場合)には、バッテリ送風ファンの作動を停止することで、複合型熱交換器13を、ヒートポンプサイクル10の室外熱交換器19から流出した冷媒(高圧冷媒)と、室内蒸発器34から流出した低圧冷媒とを熱交換させる内部熱交換器として機能させることができる。
【0210】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図9に基づいて説明する。図9は、本実施形態に係る車両用空調装置1の全体構成図である。本実施形態では、第4実施形態においてヒートポンプサイクル10のバイパス通路28に配置した第2電磁弁28aを廃した構成としている。なお、本実施形態の温度調整運転時におけるヒートポンプサイクル10の構成は、第4実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0211】
本実施形態では、暖機運転時に三方弁27を複合型熱交換器13の第1熱交換部131の出口側とバイパス通路28とを接続する冷媒流路に切り替える。そして、第1電磁弁26に出力される制御信号については、車載バッテリ5の温度に応じて所定の絞り開度となるように決定される。また、送風ファン20に出力される制御信号については、送風ファン20の作動を停止するように決定される。
【0212】
ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された冷媒が、室外熱交換器19へ流入し、外気に放熱することなく、室外熱交換器19から流出する。そして、室外熱交換器19から流出した冷媒は、レシーバ24を介して第1電磁弁26に流入し、第1電磁弁26にて減圧膨張される。
【0213】
第1電磁弁26から流出した冷媒(第1流体)は、複合型熱交換器13の第1熱交換部131へ流入して、バッテリ送風ファンから送風されたバッテリ送風空気に放熱し、バッテリ送風空気が加熱される。
【0214】
複合型熱交換器13の第1熱交換部131から流出した冷媒(第2流体)は、バイパス通路28を介して、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入して、バッテリ送風ファンから送風されたバッテリ送風空気から吸熱し、バッテリ送風空気が冷却される。
【0215】
以上の如く、本実施形態の暖機運転時には、第4実施形態と同様に、圧縮機11から吐出された冷媒の有する熱量を室外熱交換器19にて放熱させないので、温度調整運転時に比べて、バッテリ送風空気の温度を早期に上昇させることが可能となる。
【0216】
この際、本実施形態の暖機運転時には、第1電磁弁26の絞り開度を変更し、複合型熱交換器13の第1熱交換部131における冷媒(第1流体)の温度(圧力)を調整することで、第1熱交換部132における冷媒とバッテリ送風空気との熱交換量を調整することができる。このため、バッテリ送風空気を暖機運転時の目標吹出温度に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態の暖機運転では、第1電磁弁26が熱交換量調整手段として機能する。
【0217】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図10に基づいて説明する。図10は、本実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【0218】
本実施形態では、ブラインを循環させるブライン回路60を設け、複合型熱交換器13にてブラインを温度調整し、温度調整されたブラインを温度調整媒体として車載バッテリ5の温度調整を行う。なお、ブラインとしては、エンジン冷却水と同様に、エチレングリコール水溶液等を採用することができる。
【0219】
本実施形態の複合型熱交換器13としては、第1熱交換部131の高温チューブ131aと第2熱交換部132の低温チューブ132aとの間にブラインが流通するブライン通路を設け、当該ブライン通路にブラインを流すことで、高温チューブ131aおよび低温チューブ132aの双方に流れる冷媒とブラインとを熱交換させる構成とすればよい。
【0220】
このように、本実施形態の複合型熱交換器13は、第1熱交換部131に高温冷媒が流れ、第2熱交換部131に低温冷媒が流れる。このため、複合型熱交換器13では、第1熱交換部131にて高温冷媒とバッテリ送風空気とが熱交換され、第2熱交換部132にて低温冷媒とバッテリ送風空気とが熱交換熱されることになる。なお、本実施形態では、高温冷媒が「第1流体」に対応し、低温冷媒が「第2流体」に対応し、バッテリ送風空気が「熱交換対象流体」に対応している。
【0221】
また、ブライン回路60としては、図10に示すように、ブラインを圧送するブラインポンプ61の出口側を複合型熱交換器13のブライン通路の入口側に接続すると共に、ブライン通路の出口側を車載バッテリ5と熱移動可能なように(熱的に接触するように)隣接配置された熱交換器62の入口側に接続し、さらに、当該熱交換器62の出口側をブラインポンプ61の吸入口側に接続する構成とすればよい。
【0222】
このような構成によっても、第4実施形態に記載の温度調整装置と同様に、複合型熱交換器13における各熱交換部131、132における冷媒とブラインとの熱交換量を調整し、ブラインの温度を所望の温度に調整することができ、車載バッテリ5を適切に作動させることが可能となる。
【0223】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図11に基づいて説明する。図11は、本実施形態に係る車両用空調装置1の全体構成図である。
【0224】
本実施形態では、本発明の熱交換システムを車載バッテリ5の温度を調整する温度調整装置としても機能する車両用空調装置1に適用している。本実施形態の温度調整装置に適用される熱交換システムは、ヒートポンプサイクル10の各構成機器等によって構成されている。
【0225】
まず、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、第1実施形態において室内空調ユニット30に配置した複合型熱交換器13を車載バッテリ5の温度を調整するための熱交換器として用い、室内空調ユニット30に室内蒸発器34および室内凝縮器35を配置する構成としている。
【0226】
具体的には、室内凝縮器35は、その入口側が第1三方弁12を介して圧縮機11の突出口側に接続され、その出口側が逆止弁16の入口側に接続されている。室内凝縮器35は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通する高温高圧冷媒と室内蒸発器34を通過した車室内送風空気とを熱交換させて、車室内送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0227】
また、室内蒸発器34は、その入口側が第2固定絞り22の出口側に接続され、その出口側がアキュムレータ23の入口側に接続されている。室内蒸発器34は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通する低圧冷媒と送風機32から送風された車室内送風空気とを熱交換させて、車室内送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。なお、室内蒸発器34は、ケーシング31内において室内凝縮器の空気流れ上流側に配置されている。
【0228】
さらに、室内蒸発器34の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器35の空気流れ上流側には、室内蒸発器34通過後の送風空気のうち、室内凝縮器35を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア36が配置されている。また、室内凝縮器35の空気流れ下流側には、室内凝縮器35にて高圧冷媒によって加熱された車室内送風空気と、室内凝縮器35を迂回して加熱されていない車室内送風空気とを混合させる混合空間37が設けられている。
【0229】
従って、エアミックスドア36が室内凝縮器35を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間35にて混合された空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア36は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。なお、エアミックスドア36は、制御装置から出力される制御信号によって作動が制御されるサーボモータ(図示略)によって駆動される。
【0230】
本実施形態の複合型熱交換器13は、上述の第1実施形態と基本構成は同様である。本実施形態の複合型熱交換器13は、バッテリ送風ファンにて送風されるバッテリ送風空気の空気通路における車載バッテリ5の空気流れ上流側に配置されており、車載バッテリ5に送風するバッテリ送風空気の温度を調整するものである。
【0231】
具体的には、本実施形態の複合型熱交換器13の第1熱交換部131は、その入口側が第1三方弁12の出口側と室内凝縮器35の入口側との間の冷媒通路に接続され、その出口側が室内凝縮器35の出口側と逆止弁16の入口側との間の冷媒通路に接続されている。また、複合型熱交換器13の第2熱交換部132は、その入口側が第2固定絞り22の出口側と室内蒸発器34の入口側との間の冷媒通路に接続され、その出口側が室内蒸発器34の出口側とアキュムレータ23の入口側との間の冷媒通路に接続されている。
【0232】
そして、複合型熱交換器13の第1熱交換部131の入口側には、第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の流量を調整する第1流量調整弁136が配置されている。また、複合型熱交換器13の第2熱交換部131の入口側には、第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の流量を調整する第2流量調整弁137が配置されている。これら第1、第2流量調整弁136、137は、制御装置から出力される制御信号により作動が制御される電気式の流量調整手段である。
【0233】
本実施形態では、第1流量調整弁136によって、ヒートポンプサイクル10の各運転時に、複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の流入量を変更することで、第1熱交換部131における高圧冷媒とバッテリ送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0234】
また、本実施形態の第2流量調整弁137によって、ヒートポンプサイクル10の各運転時に、複合型熱交換器13の第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の流入量を変更することで、第2熱交換部132における低圧冷媒とバッテリ送風空気との熱交換量を調整することができる。
【0235】
このため、第1、第2流量調整弁136、137のうち、少なくとも一方を制御することで、複合型熱交換器13における冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整することで、バッテリ送風空気を運転状態に応じた所望の温度に調整することが可能となる。なお、本実施形態では、第1、第2流量調整弁136、137が熱交換量調整手段として機能する。
【0236】
以上説明した本実施形態の構成によっても、複合型熱交換器13にてバッテリ送風空気の温度を広範囲にわたって調整することができるので、バッテリ送風空気を所望の温度に調整して、車載バッテリ5を適切に作動させることが可能となる。
【0237】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0238】
(1)上述の第1実施形態では、除湿暖房運転時に、圧縮機11および送風ファン20を複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整する熱交換量調整手段として機能させる例について説明したが、これに限定されない。
【0239】
例えば、第1、第2固定絞り15、22といった減圧手段を、絞り開度を変更可能な可変絞り機構(第1、第2可変絞り)に変更し、当該可変絞りの少なくとも一方にて複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の温度、第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の温度の少なくとも一方を変更することで、複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整するようにしてもよい。この場合、第1、第2固定絞り15、22が複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整する熱交換量調整手段として機能する。
【0240】
また、流路切替手段を構成する第1、第2三方弁12、21を各出口側に流出する流量を調整可能な分流型三方弁に変更し、当該分流型三方弁の少なくとも一方にて複合型熱交換器13の第1熱交換部131に流入する高圧冷媒の流入量、第2熱交換部132に流入する低圧冷媒の流入量の少なくとも一方を変更することで、複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整するようにしてもよい。この場合、第1、第2三方弁12、21が複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整する熱交換量調整手段として機能する。
【0241】
(2)上述の第2実施形態では、複合型熱交換器13の第1熱交換部131における熱交換面積に対して、第2熱交換部132における熱交換面積を拡大する構成について説明したが、これに限定されない。
【0242】
例えば、複合型熱交換器13の第2熱交換部132における熱交換面積に対して、第1熱交換部131における熱交換面積を拡大する構成としてもよい。この場合、第2熱交換部132における低温側ヘッダタンク部132bの内部に仕切り板135を配置することで、複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における熱交換面積を変更すればよい。
【0243】
(3)上述の第2実施形態では、本実施形態では、複合型熱交換器13の高温側ヘッダタンク部131bの内部に仕切り板135を配置することで、複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における熱交換面積を変更する構成について説明したが、これに限定されない。
【0244】
例えば、複合型熱交換器13の第1熱交換部131における高温チューブ131aの本、および第2熱交換部132における高温チューブ131aの本数を変更することで、複合型熱交換器13の各熱交換部131、132における熱交換面積を変更してもよい。
【0245】
(3)上述の第3実施形態では、外部熱源としてエンジンEGを採用する例を説明したが、これに限定されない。例えば、ヒートポンプサイクル10を据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用する場合は、走行用電動モータや走行用電動モータに電力を供給するインバータといった電気機器等を外部熱源として採用してもよい。また、ヒートポンプサイクル10を据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用する場合は、圧縮機の駆動手段(電動モータやインバータ)等を外部熱源として採用してもよい。この場合、外部熱源として採用した機器を冷却する熱媒体が第1流体となる。
【0246】
(4)上述の第4〜第7実施形態では、作動時に所定の温度帯に調整する必要がある作動機器として車載バッテリ5を採用する例について説明したが、これに限定されず、例えば、外部熱源として採用されていない他の電気機器等を作動機器としてもよい。この場合、作動機器として採用した機器の温度を調整する温度調整媒体が熱交換対象流体となる。
【0247】
(5)上述の実施形態では、第1流体としてヒートポンプサイクル10の高圧冷媒やエンジン冷却水等が採用され、第2流体としてヒートポンプサイクル10の低圧冷媒等が採用され、熱交換対象流体として車室内送風空気やバッテリ送風空気やブラインが採用された熱交換システムについて説明したが、第1、第2流体、熱交換対象流体はこれに限定されず、第1流体と第2流体とが異なる温度となる流体であれば他の流体を変更してもよい。
【0248】
(6)上述の実施形態の如く、複合型熱交換器13の高温チューブ131aと低温チューブ132aとの間に形成される送風空気通路133にアウターフィン134を配置することが望ましいが、例えば通風抵抗等を減ずる必要がある場合にはアウターフィン134を廃した構成としてもよい。
【0249】
(7)上述の実施形態では、複合型熱交換器13全域において高温チューブ131aおよび低温チューブ132aを交互に配置する構成としているが、これに限定されず、複合型熱交換器13の一部において高温チューブ131aおよび低温チューブ132aを交互に配置する構成としてもよい。また、複数の高温チューブ131aおよび複数の低温チューブ132aの一方の少なくとも1つを、他方の間に配置するようにしてもよい。
【0250】
(8)上述の実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが冷媒の種類はこれに限定されない。例えば、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0251】
5 車載バッテリ(作動機器)
10 冷凍サイクル
11 圧縮機(熱交換量調整手段)
13 複合型熱交換器
131 第1熱交換部
131a 高温チューブ(第1流体側チューブ)
132 第2熱交換部
132a 低温チューブ(第2流体側チューブ)
133 送風空気通路(熱交換対象流体用通路)
134 アウターフィン
136 第1流量調整弁(熱交換量調整手段)
137 第2流量調整弁(熱交換量調整手段)
26 第1電磁弁(熱交換量調整手段)
28a 第2電磁弁(熱交換量調整手段)
41 冷却水ポンプ(熱交換量調整手段)
EG エンジン(外部熱源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体と熱交換対象流体とを熱交換させる第1熱交換部(131)、および第2流体と前記熱交換対象流体とを熱交換させる第2熱交換部(132)を有する複合型熱交換器(13)を備える熱交換システムであって、
前記第1熱交換部(131)に流入する前記第1流体の温度は、前記第2熱交換部(132)に流入する前記第2流体の温度と異なる値になっており、
前記複合型熱交換器(13)は、前記熱交換対象流体が前記第1流体および前記第2流体の双方と熱交換可能に一体化され、
前記第1熱交換部(131)における前記第1流体と前記熱交換対象流体との間の熱交換量、および前記第2熱交換部(132)における前記第2流体と前記熱交換対象流体との間の熱交換量のうち、少なくとも一方を調整することで、前記熱交換対象流体の温度が変更されることを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
前記第1熱交換部(131)は、前記第1流体が流れる複数の第1流体側チューブ(131a)を有し、
前記第2熱交換部(132)は、前記第2流体が流れる複数の第2流体側チューブ(132a)を有し、
前記第1流体側チューブ(131a)の外表面および前記第2流体側チューブ(132a)の外表面には、前記熱交換対象流体が流れる熱交換対象流体用通路(133)が形成され、
前記複数の第1流体側チューブ(131a)および前記複数の第2流体側チューブ(132a)の一方のうち少なくとも1つは、他方の間に配置され、
前記第1流体側チューブ(131a)および前記第2流体側チューブ(132a)は、互いに離間して配置され、前記第1流体側チューブ(131a)および前記第2流体側チューブ(131a)の間に、前記熱交換対象流体用通路(133)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記熱交換対象流体用通路(133)には、前記第1熱交換部(131)および前記第2熱交換部(132)それぞれにおける熱交換を促進するアウターフィン(134)が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換システム。
【請求項4】
前記第1熱交換部(131)における前記第1流体と前記熱交換対象流体との間の熱交換量、および前記第2熱交換部(132)における前記第2流体と前記熱交換対象流体との間の熱交換量のうち、少なくとも一方を調整する熱交換量調整手段(11、26、28a、41、136、137)を備え、
前記熱交換量調整手段(11、26、28a、41、136、137)は、前記第1熱交換部(131)に流入する前記第1流体の温度、および前記第2熱交換部(132)に流入する前記第2流体の温度のうち少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項5】
前記第1熱交換部(131)における前記第1流体と前記熱交換対象流体との間の熱交換量、および前記第2熱交換部(132)における前記第2流体と前記熱交換対象流体との間の熱交換量のうち、少なくとも一方を調整する熱交換量調整手段(41、136、137)を備え、
前記熱交換量調整手段(41、136、137)は、前記第1熱交換部(131)に流入する前記第1流体の流入量、および前記第2熱交換部(132)に流入する前記第2流体の流入量のうち少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項6】
蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)を有する装置に適用され、
前記第1流体は、前記冷凍サイクル(10)の高圧冷媒であり、
前記第2流体は、前記冷凍サイクル(10)の低圧冷媒であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項7】
蒸気圧縮式の冷凍サイクル(10)および外部熱源(EG)を有する装置に適用され、
前記第1流体は、前記外部熱源(EG)の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、
前記第2流体は、前記冷凍サイクル(10)の低圧冷媒であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項8】
前記装置は、車両における空調対象空間へ温度調整された送風空気を送風する車両用空調装置(1)であって、
前記熱交換対象流体は、前記送風空気であることを特徴とする請求項6または7に記載の熱交換システム。
【請求項9】
前記装置は、作動時に所定の温度帯に調整する必要がある作動機器(5)の温度を調整する温度調整装置であって、
前記熱交換対象流体は、前記作動機器(5)の温度を調整するための温度調整媒体であることを特徴とする請求項6または7に記載の熱交換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−201215(P2012−201215A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67559(P2011−67559)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】