説明

熱交換器の接合構造及びその接合方法

【課題】 工数を削減することができ、溶接作業の簡略化を図ることができる熱交換器の接合構造及びその接合方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、板状の第1部材21,25をその両側から挟持するように配置された第2部材15,26及び第3部材15,27に溶接するための熱交換器11の接合構造であって、第1部材21,25の端部23は、溶加材として機能可能なように第2部材15,26及び第3部材15,27の接合部24から所定長突出して設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の接合構造及びその接合方法に関し、特に、板状の部材とその板状の部材を両側から挟持するように配置された部材とを溶接するための熱交換器の接合構造及びその接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱交換器を製造するに当り、板状の部材とその板状の部材を両側から挟持するように配置された部材とを接合する場合に、溶接が使用されることがある。
【0003】
このような場合の従来の熱交換器の接合構造及びその接合方法は、図5や図6に示すように、板状の部材1とその板状の部材1を両側から挟持するように配置された2つの部材2,3とをそれぞれ別々に連続隅肉溶接していた。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−137054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の熱交換器の接合構造及びその接合方法では、板状の部材1とその板状の部材1を両側から挟持するように配置された部材2,3とを溶接する場合には、連続隅肉溶接を2回行う必要があるため、工数が増え、溶接作業に手間が掛かるといった問題があった。また、隅肉の余盛りが必要となるため、溶加材が必要になるといった問題もあった。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、工数を削減することができ、溶接作業の簡略化を図ることができる熱交換器の接合構造及びその接合方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、板状の第1部材をその両側から挟持するように配置された第2部材及び第3部材に溶接するための熱交換器の接合構造であって、前記第1部材の端部は、溶加材として機能可能なように前記第2部材及び第3部材の接合部から所定長突出して設けられていることを特徴とする。
【0007】
そして、好ましくは、前記第2部材及び第3部材の接合部からの前記第1部材の端部の突出長が前記第1部材の厚みの0.6〜1.4倍になるように設けられているのがよい。
【0008】
また、前記第1部材の厚みは、前記第2部材及び第3部材の接合部より薄くなっているのがよい。
【0009】
また、本発明は、板状の第1部材をその両側から挟持するように配置された第2部材及び第3部材に溶接するための熱交換器の接合構造であって、前記第1部材は、その厚みが、溶加材として機能可能なように前記第2部材及び第3部材の接合部の厚みの1/3〜1/2になるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、板状の第1部材をその両側から挟持するように配置された第2部材及び第3部材に溶接するための熱交換器の接合方法であって、前記第1部材の端部を前記第2部材及び第3部材の接合部から所定長突出するように配置する工程と、前記第1部材の突出端部を溶融させると共に前記第2部材及び第3部材を溶融させ、前記第1部材を前記第2部材及び第3部材に一度に溶接する工程とを含んでいることを特徴とする。
【0011】
そして、好ましくは、前記第2部材及び第3部材の接合部からの前記第1部材の端部の突出長が前記第1部材の厚みの0.6〜1.4倍になるように前記第1部材を配置する工程を含んでいるのがよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1部材の端部が溶加材として機能し、1回の溶接により、第1部材を第2部材及び第3部材に確実に溶接することができるため、工数の削減が可能となり、溶接作業の簡略化を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、本発明を、多流体熱交換器に適用した場合について例示して説明する。
【0014】
先ず、図1及び図2を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る熱交換器の接合構造について説明する。ここで、図1はその多流体熱交換器を示す断面図、図2は本実施の形態に係る熱交換器の接合構造及びその接合方法を示す断面図であり、(a)は接合前の状態を示し、(b)は接合後の状態を示している。
【0015】
本発明が適用される多流体熱交換器11は、被冷却流体が流通可能な複数(図1では3個)のコア12と、各コア12の両端にそれぞれ設けられたアッパタンク13及びロアタンク14と、複数のコア12を一体に収容するケース部材15とから概略構成されており、各コア12とケース部材15の間に冷却水が流通可能となっている。
【0016】
コア12は、複数(図1では2本)の扁平チューブ16と、扁平チューブ16の周りに設けられたフィン(図示せず)とから成り、扁平チューブ16の両端部はアッパタンク13及びロアタンク14に連通している。また、アッパタンク13及びロアタンク14の側面には被冷却流体入口又は出口17が接続されている。
【0017】
ケース部材15には、側壁部の上部及び下部にそれぞれ冷却水入口18及び冷却水出口19が接続されている。また、ケース部材15には、各コア12の間にそれぞれスリット孔20が形成され、該各スリット孔20に仕切り板21が挿入され、仕切り板21はケース部材15に溶接されるようになっている。さらに、各仕切り板21の上端部又は下端部には、互い違いとなるようにそれぞれ通過孔22が形成されており、図1において矢印で示すように、冷却水はケース部材15と各コア12との間を全体として蛇行しながら流通するようになっている。
【0018】
仕切り板21は、図2(a)に示されているように、仕切り板21の端部23を両側から挟持するように配置されたケース部材15の接合部24から所定長、外側に突出するように設けられており、仕切り板21をケース部材15に溶接する場合、図2(b)に示されているように、仕切り板21の端部23が溶加材として機能するようになっている。好ましくは、ケース部材15の接合部24からの仕切り板21の端部23の突出長Lは、仕切り板21の厚みtの0.6〜1.4倍になるように設けられるのがよく、また、仕切り板21の厚みtはケース部材15の接合部24(厚みt及びt)より薄くなっているのがよい。より具体的には、ケース部材15の接合部24の厚みt及びtが1.5mmで、仕切り板21の厚みtが0.5mmの場合、ケース部材15の接合部24からの仕切り板21の端部23の突出長Lは0.3〜0.7mm程度とするのが好ましい。
【0019】
次に、主に図2(a)及び(b)を参照しつつ、前記多流体熱交換器11において、仕切り板21をケース部材15に接合する方法について説明する。
【0020】
先ず、図2(a)に示されているように、ケース部材15の接合部24からの仕切り板21の端部23の突出長Lが仕切り板21の厚みの0.6〜1.4倍になるように仕切り板21をスリット孔20に挿入する。
【0021】
次いで、仕切り板21の突出した端部23を局部的に加熱して溶融させると共にケース部材15の接合部24を溶融させ、仕切り板21の端部23をケース部材15の接合部24に一度に溶接させる。
【0022】
このように、仕切り板21の端部23が溶加材として機能するため、1回の溶接により良好な溶接余盛りを形成させることができる。また、仕切り板21の端部23をケース部材15の接合部24から所定長さ突出させることにより、仕切り板21の端部23とケース部材15の接合部24をいずれも完全に溶融させることができる。したがって、仕切り板21をその両側のケース部材15に確実に溶接することができ、溶接箇所からの水漏れを完全に防止することができると共に、溶接作業の簡略化を図ることができる。
【0023】
なお、上記した実施の形態では、多流体熱交換器11において仕切り板21をケース部材15に溶接する場合について説明したが、これは単なる例示に過ぎず、本発明は、排ガス再循環クーラ(EGRクーラ)においてヘッダプレートをケーシング及びタンク本体に溶接する場合など、板状の第1部材をその両側から挟持するように配置された第2部材及び第3部材に溶接する場合において広く適用することができる。例えば、図3に示すように、板状の第1部材25を両側から挟持するように配置された第2部材26及び第3部材27が外側に折曲している場合や、その反対に、図4に示すように、第2部材26及び第3部材27が内側に折曲している場合にも、本発明を適用することができる。
【0024】
また、上記した実施の形態では、仕切り板21や板状の第1部材25の端部は、ケース部材15や第2部材26及び第3部材27の接合部24から所定長突出して設けられているが、仕切り板21や板状の第1部材25の厚みtが、ケース部材15や第2部材26及び第3部材27の接合部24の厚みt及びtの1/3〜1/2になるように形成されていれば、それだけで仕切り板21や板状の第1部材25の端部は溶加材として機能するため、必ずしも、ケース部材15や第2部材26及び第3部材27の接合部24から突出していなくてもよい。より具体的には、仕切り板21や板状の第1部材25の厚みtが0.5mmの場合、ケース部材15や第2部材26及び第3部材27の接合部24の厚みt及びtは1.0〜1.5mm程度とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る熱交換器の接合構造及びその接合方法を適用した多流体熱交換器を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る熱交換器の接合構造及びその接合方法を示す断面図であり、(a)は接合前の状態を示し、(b)は接合後の状態を示している。
【図3】本発明の実施の形態に係る熱交換器の接合構造及びその接合方法の別の例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る熱交換器の接合構造及びその接合方法のさらに別の例を示す断面図である。
【図5】従来例を示す断面図である。
【図6】別の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
11 多流体熱交換器
15 ケース部材
21 仕切り板
23 端部
24 接合部
25 板状の第1部材
26 第2部材
27 第3部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1部材をその両側から挟持するように配置された第2部材及び第3部材に溶接するための熱交換器の接合構造であって、
前記第1部材の端部は、溶加材として機能可能なように前記第2部材及び第3部材の接合部から所定長突出して設けられていることを特徴とする熱交換器の接合構造。
【請求項2】
前記第2部材及び第3部材の接合部からの前記第1部材の端部の突出長が前記第1部材の厚みの0.6〜1.4倍になるように設けられている請求項1に記載の熱交換器の接合構造。
【請求項3】
前記第1部材の厚みは、前記第2部材及び第3部材の接合部より薄くなっている請求項1又は2に記載の熱交換器の接合構造。
【請求項4】
板状の第1部材をその両側から挟持するように配置された第2部材及び第3部材に溶接するための熱交換器の接合構造であって、
前記第1部材は、その厚みが、溶加材として機能可能なように前記第2部材及び第3部材の接合部の厚みの1/3〜1/2になるように形成されていることを特徴とする熱交換器の接合構造。
【請求項5】
板状の第1部材をその両側から挟持するように配置された第2部材及び第3部材に溶接するための熱交換器の接合方法であって、
前記第1部材の端部を前記第2部材及び第3部材の接合部から所定長突出するように配置する工程と、
前記第1部材の突出端部を溶融させると共に前記第2部材及び第3部材を溶融させ、前記第1部材を前記第2部材及び第3部材に一度に溶接する工程と、
を含んでいることを特徴とする熱交換器の接合方法。
【請求項6】
前記第2部材及び第3部材の接合部からの前記第1部材の端部の突出長が前記第1部材の厚みの0.6〜1.4倍になるように前記第1部材を配置する工程を含んでいる請求項5に記載の熱交換器の接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−218508(P2006−218508A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34115(P2005−34115)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】