説明

熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

【課題】
本発明は、フィルムの弛みや張りなどによるフィルム搬送レベルの僅かな変動の影響を受けず、巻き取り時に巻き込んだ際に変形を起こすような50μm程度の大きな異物や金属片などの比重の重い異物についても効率良く除塵することが出来る巻き込み異物を改善したフィルム製造方法を提供する
【解決手段】
フィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程、フィルムを巻き取る巻取り工程をこの順に有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、前記吹き付け工程は、フィルムの上側表面よりも150mm以上離れた位置からエアーを吹き付けることにより、フィルム上側表面の異物をフィルムのエッジ側に吹き飛ばすことを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルム(磁気記録媒体、感熱転写材、電気絶縁材料、離型材、ドライフォトレジスト用、包装材料等の用途に有効に用いられるポリエステルフィルムを含む、以下記載のフィルムは同様とする)の製造方法に関し、さらに詳しくは、フィルムを巻き取る巻取り工程前に、フィルムの上側からエアーを吹き付けることにより、フィルム上側表面の異物をフィルムのエッジ側に吹き飛ばすことを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂フィルムの製造工程でフィルム表面に付着した異物を弾き飛ばして除去する目的で、通常のエアーを吹き付けてエアーナイフ効果によって、数十μm程度の粗大な付着物を表面から遊離させ、数μm程度の微細塵は高速エアー流によって生じた境界層に強固に閉じこめられるために、超音波を併用して遊離させる。さらにこの効果を確実にするため、バキュームにてフィルム表面より離脱した異物を直ちに吸引捕集し系外へ追い出す除塵装置を用いて異物の除去が行われてきた。これは、熱可塑性樹脂フィルムを製造する際に、フィルムの表面に異物が付着したことで、磁気記録媒体用途においては磁性材料のコーティング欠点や蒸着欠点を生じ、包装材料用途においては印刷工程での印刷不良を生じ、電気絶縁用途においては、絶縁不良を生じ、いずれの場合も、製品の品質を低下させるためである。
【0003】
また、前述のとおり挙げたような異物が付着したままのフィルムが巻き取り工程に巻かれると付着した異物によってフィルムが変形するという問題が発生する。このような巻き込み異物による変形は特にエア抜け性の悪い表面の平滑なフィルムでは時間が経過しないと顕在化しないため、フィルム製膜中には発見できず、後の工程へ流出し、問題となる。フィルムの変形よる問題の一例として、フィルム表面の反射状態が変わることかフィルムに光を照射する加工を要するドライフォトレジスト用途では大きな品質問題となることを挙げることができる。このような背景から、製造工程中においてフィルム上に付着した異物の除去は大きな課題となっている。
【0004】
これまで活用されている除塵装置において異物除去効率を決定する要因として、エアー吹き付け圧力及び吹き付けノズル先端からフィルムまでの距離が挙げられる。特許文献1では複数のプロセスからなる除塵装置が示されているが、その中における乾式除塵装置ではエアー吹き付け圧力を通常5〜100kPa、望ましくは20〜35kPaが高効率で好ましく使用され、同様に後者のフィルムまでの距離については通常10mm未満、望ましくは0.3〜5mmとしたものが使用されている。
【0005】
特許文献2では異物除去効率をさらに向上させる方法として、供給されるエアーの圧力によってエアーの吹き付け方向が変わるエアーノズルと吹き出されるエアーの一部を処理面側に向かって反射させるエアー反射部材を備えたことを特徴とする脈動式除塵装置が示されている。
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1,2に示されている除塵装置では除塵を行うために装置がフィルムに近接するため、フィルムの弛みや張りなどによりフィルム搬送レベルの僅かな変動により装置とフィルムが接触することによるフィルムの削れ、破れによる工程汚染が逆に問題となるばかりか、異物を吸引させる方式による除塵であるため、巻き取り時に巻き込んだ際に変形を起こすような50μm程度の大きな異物や金属片などの比重の重い異物については吸引が不十分となり易く、除塵効率が悪いという問題があった。
【0007】
特許文献3ではこれらの除塵装置を使用する際に2軸ターレットワインダで巻替時のターレットの回転や、フィルム切り替えのためのカッタによってフィルムの張力が張力制御では吸収できないほどに変化したことに起因して発生するフィルムの弛みや張りにより、フィルムが除塵装置のバキューム口に吸い付いて、フィルム表面が削れ、フィルム面に傷を付け、削れ粉によって、付着異物を増大させる事や、この吸い付きによって、フィルムが破れてしまう問題を巻替タイミングに合わせて、除塵装置のブロア回転数を制御する事で解決した熱可塑性樹脂フィルムの製造方法が示されている
この特許文献3においてはフィルムの弛みや張りなどによりフィルム搬送レベルの僅かな変動を回避できるものの、大きな異物に対しての除塵効率が悪いという問題についての解決策となっていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−79200 号公報
【特許文献2】特開2010−253431 号公報
【特許文献3】特開2007−84316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、フィルムの弛みや張りなどによるフィルム搬送レベルの僅かな変動の影響を受けず、巻き取り時に巻き込んだ際に変形を起こすような50μm程度の大きな異物や金属片などの比重の重い異物についても効率良く除塵することが出来る巻き込み異物を改善したフィルム製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、以下の特徴を有する。
(1) フィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程、フィルムを巻き取る巻取り工程をこの順に有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、前記吹き付け工程は、フィルムの上側表面よりも150mm以上離れた位置からエアーを吹き付けることにより、フィルム上側表面の異物をフィルムのエッジ側に吹き飛ばすことを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(2) 吹き付け工程において、フィルムよりも上側からはエアーを吸引しないことを特徴とする、(1)に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(3) 吹き付け工程において吹き付けるエアーの風速が、8〜12m/秒であることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(4) 前前記吹き付け工程において、フィルムのエッジから10mm外側の位置において、風速が1.5〜6.0m/秒であることを特徴とする、上記(1)から(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(5) 吹き付け工程において吹き付けるエアーは、4つ以上の吹き出し部から吹き出ていることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(6) 吹き付け工程の前に加熱工程を有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、吹き付け工程において吹き付けるエアーは、複数の吹き出し部から吹き出ており該複数の吹き出し部は、フィルムの幅方向の位置が中心に近づく程、フィルムの流れ方向の位置が加熱工程側になり、該複数の吹き出し部は、フィルムの幅方向の位置がフィルムのエッジに近づく程、フィルムの流れ方向の位置が巻取り工程側になることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(7) 吹き付け工程において、フィルムよりも下側からエアーを吸引することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、フィルムの弛みや張りなどによるフィルム搬送レベルの僅かな変動の影響を受けず、巻き取り時に巻き込んだ際に変形を起こすような50μm程度の大きな異物や金属片などの比重の重い異物についても効率良く除塵することが出来るため、巻き込み異物を改善したフィルム製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における吹き付け工程の配置箇所について側面側から見た概略図
【図2】本発明における吹き付け工程のフレームに設置されたエアノズルの配置について側面側から見た概略図
【図3】ノズル配置の一例として斜め上からノズル配置を示した概要図
【図4】フィルム中心側が加熱工程側となるノズル配置の例
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施形態の例を、図面を参照しながら説明する。
フィルムの成形方法について述べる。フィルムは通常、上記熱可塑性樹脂溶融押出し、キャスティングドラム上で冷却個化して未延伸シートを得、それを一軸延伸し、必要ならば所望の塗液を塗布、乾燥し、その後一軸延伸方向と直交する方向に延伸配向し、そして熱固定することによって得られる。得られたフィルムは巻き取り工程においてロール状に巻き取られる。溶融押出は単一種の熱可塑性樹脂を用いて行い、短層のフィルムとしてもよく、異種の熱可塑性樹脂シートを用いて、矩形のフィードブロック等により共押出をして、2層もしくは3層以上のフィルムとしてもよい。二軸延伸は例えば逐次二軸延伸、同時二軸延伸法で行うことができるが、所望するならば熱固定前にさらに縦あるいは横方向あるいは縦と横方向に再度延伸して機械的強度を高めた、いわゆる強力タイプとすることできる。
【0014】
本発明におけるフィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程について説明する。図1に本発明における吹き付け工程の配置箇所について側面側から見た概略図を示した。
【0015】
本発明におけるフィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程は、図1においてフィルムの巻取り工程より前に設置され、フィルム11の上面側に設置されたエアー吹き付け装置によって構成され、巻取り工程よりも上流側に設けられる。このことにより巻取り工程に入る前に巻き込んだ際に変形を起こす懸念のある50μm程度の大きな異物や金属片などの比重の重い異物を排除し、巻き込み異物を改善したフィルム製造方法とすることができるためである。
【0016】
また、エアーを吹き付ける吹き付け工程は、巻き取り工程直前に設けられることが好ましい。上述の通り、フィルム製造工程においては巻取り工程前に延伸工程・熱固定工程などが存在するがこれらの工程において、フィルムから昇華してくる樹脂の単量体、オリゴマー、樹脂に添加されている安定剤や滑剤等の昇華物、フィルムの微細破片等に由来する異物や工程に使用している部材に由来する異物が表面に付着する可能性がある。フィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程は、巻取り工程の直前に設けられると、これらを除去した直後にフィルムが巻取り工程で巻き取られることが可能となり、巻き込み異物を改善するにはより好適となる。
【0017】
本発明におけるフィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程は、フィルムの上側表面よりも150mm以上離れた位置からエアーを吹き付ける。フィルムの上側表面よりも150mm以上離れた位置から吹き付けることで、フィルムの弛みや張りなどによりフィルム搬送レベルの僅かな変動を回避できる。150mm未満ではフィルムの弛みや張りなどによりフィルム搬送レベルの僅かな変動による装置とフィルムの接触懸念が残る。
【0018】
本発明におけるエアー吹きつけ工程で前述したようにフィルムの上側表面よりも150mm以上離れた位置からエアーを吹き付けるための手段としては、既存のあらゆる手段を用いることができるが、例えば、図2の示したようにフィルム11の上側にエアーノズル21を設置したフレーム22を設置し、フレーム22に昇降手段23が組み付けられ、フィルムの状態に応じ、エアーノズルの高さが可変である機構が好ましい。このような機構を設けることで例えばフィルム破れなどが発生した際にノズルを退避させる事ができ、フィルムとの接触などによる装置の破損を回避出来る他、適宜調整が可能となる。
【0019】
本発明におけるフィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程では、フィルム上側表面の異物をフィルムのエッジ側に吹き飛ばすことを特徴とする。本発明では従来技術と同様に通常のエアーを吹き付けてエアーナイフ効果によって、数十μm程度の粗大な付着物を表面から遊離させるが、一方で本発明では遊離させた異物は同時に吹き付けたエアーによってフィルムのエッジ側に吹き飛ばして排除させる。
【0020】
本発明におけるフィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程においては、フィルムよりも上側からはエアーを吸引しないことが好ましい。前述の通り本発明では異物は吹きつけエアーによってフィルムのエッジ側に吹き飛ばして排除を行うため、フィルムよりも上側からはエアーを吸引すると吹きつけエアーの流れがフィルム上側に誘導され、異物をフィルムのエッジ側に吹き飛ばす効果を損ねる虞があるためである。
【0021】
本発明におけるフィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程において吹き付けるエアーの風速は8〜12m/秒であることが好ましい。吹きつけエアーの風速が8m/秒を下回るとエアーナイフ効果によって、数十μm程度の粗大な付着物を表面から遊離させる効果が不十分となり、12m/秒を超えるとなると吹きつけ箇所のフィルムへの圧力が大きく、フィルム搬送ラインの張力変動などがあるとフィルムレベルのバタツキを大きくさせてしまい、製造工程の安定性を大きく損ねるためである。
【0022】
また、前記吹き付け工程において、フィルムのエッジから10mm外側、高さ50mmの位置において、風速が1.5m/秒以上であることが好ましい。風速が1.5m/秒未満では、異物をフィルムのエッジ側に吹き飛ばす効果を少なくなり、異物低減効果が少なくなる虞があるためである。風速の上限は周囲の塵埃を巻き上げないレベルで任意に設定することができるが、6.0m/秒以下が好ましい。
【0023】
本発明においてエアーを吹き付ける吹きつけ工程で前述した吹き付けるエアーの風速を達成させるための手段としては、既存の技術により吹きつけエアーを発生させ、既存の圧力調整手段などを用いて適宜調整することでることが出来る。
【0024】
本発明におけるエアーを吹き付ける吹きつけ工程で吹きつけエアーを発生させる機構の具体的な例として、虹技(株)製 トランスベクター903の様に圧空ノズルからの随伴気流を利用して周辺の雰囲気を吹き付ける機構を挙げることが出来る。この機構では周辺の雰囲気を使用するため、装置周辺の空間の圧力バランスを維持し、且つ供給する吹きつけエアーの量を最小限にすることで効率的な設備とすることができる点で好ましい。
【0025】
本発明におけるエアーを吹き付ける吹きつけ工程において採用できる機構は前述にあげた技術以外にも、吹きつけエアーの風量・角度などは上述に記載した事項が実現できる既存の任意のものを適用することが可能であり、本発明における吹きつけエアーの風量・角度などは上述に記載した事項に基づき、適用する工程の周辺状況を鑑みて任意に設定することができる。
【0026】
また、本発明におけるエアー吹きつけ工程において、フィルムに吹き付けるエアーは、既存のエアフィルタなどの手法により濾過されたものが好ましい。エアフィルタとしては例えば、AF5000−10−2(SMC製)をあげることができるが、これに限定されるものではなく、既存の任意のものを適用することができる。
【0027】
本発明における吹きつけエアーは、4つ以上の吹き出し部から吹き出ていると、付着異物の遊離性、異物の搬送性の観点から好適に適用することが出来る。
【0028】
上述の通り、本発明における吹き付け工程において吹き付けるエアーは、複数の吹き出し部、具体的には4つ以上の吹き出し部から吹き出ていることが好ましいが、それぞれの箇所から吹き出したエアーが干渉しないようにすることが望ましく、該複数の吹き出し部はフィルムの流れ方向の位置が異なった位置に設置されていることが好ましい。図3にノズル配置の一例として斜め上からノズル配置を示した概要図を示した。図3に示したように吹き出し部を構成するエアーノズル21をフィルム11に対して流れ方向の位置が異なった位置に設置することで、製造工程中においてフィルムが流れているため、吹き飛ばし異物を効率的に排除することが出来る。
【0029】
さらには、本発明における吹き付け工程において吹き付けるエアー吹き出し部は、フィルムの幅方向の位置が中心に近づく程、フィルムの流れ方向の位置が加熱工程側(上流側)になり、該複数の吹き出し部は、フィルムの幅方向の位置がフィルムのエッジに近づく程、フィルムの流れ方向の位置が巻取り工程側になることが好ましい。なおこの場合、加熱工程は、フィルムの製造工程において、吹付工程よりも上流側に設けられる。
【0030】
図4に、フィルム中心側が加熱工程側(上流側)となるノズル配置の例として、図3と同じようにノズル配置を示した概要図を示した。図4に示したように吹き出し部を構成するエアーノズル21がフィルム中心側が加熱工程側となるノズル配置にすることで、フィルムの幅方向からフィルムエッジの両側に異物を吹き飛ばして排除することが可能となり、拭き飛ばしによる搬送距離が短くなる利点があり、好ましい。
【0031】
本発明における吹き付け工程においてノズル配置とフィルムTD方向のなす角度(図3においては31、図4においては41に相当)は、ライン速度、ノズル角度、風量のバランスから決めることができるが、図4に示したノズル配置角度41は15°〜45°程度が好ましい。15°未満では傾斜が少ないため、効率的に吹き飛ばした異物をエッジ側に輸送することが出来ず、45°を超えると傾斜がきつく、エッジに搬送する距離が長くなるためである。
【0032】
本発明における吹き付け工程において、吹き飛ばした異物がフィルムのエッジから排除される位置付近において、フィルムよりも下側からエアーを吸引することが好ましい。フィルムよりも下側からエアーを吸引することにより、吹き飛ばした異物が再び舞い上がってフィルムに付着することを防止することが可能となるためである。
【0033】
本発明においてフィルムよりも下側からエアーを吸引する手段としては、既存の技術を用いることが出来、吸引する風量などは適宜調整することが出来る。
【0034】
また、本発明において、熱可塑性樹脂とは、加熱すると塑性を示す樹脂であり、代表的な樹脂(ポリマー)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンα、β−ジカルボキシレート、P−ヘキサヒドロ・キシリレンテレフタレートからのポリマー、1,4シクロヘキサンジメタノールからのポリマー、ポリ−P−エチレンオキシベンゾエート、ポリアリレート、ポリカーボネートなど及びそれらの共重合体で代表されるように主鎖にエステル結合を有するポリエステル類、更にナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン11、などで代表されるように主鎖にアドミ結合を有するポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレンなどで代表されるように主としてハイドロカーボンのみからなるポリオレフィン類、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリオキシメチレンなどで代表されるポリエーテル類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどで代表されるハロゲン化ポリマー類およびポリフェニレンスルフイド(PPS)、ポリスルフオンおよびそれらの共重合体や変性体などである。
【0035】
本発明の場合、熱可塑性ポリマーとしては、特に、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリエーテル類、ポリフェニレンスルフイドなどが好ましく、更にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類およびポリフェニレンスルイドは特に本発明の効果が顕著であり、一層好ましい。もちろん上記したポリマーに、必要に応じて公知の添加剤、例えば安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤等を添加してもよい。
【実施例】
【0036】
以上の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を用いて、熱可塑性樹脂フィルムを製造した結果を説明する。
【0037】
本発明で規定する特性値の測定方法と評価方法を以下に述べる。
【0038】
(1)ノズル高さ
本発明における吹き付け工程においてエアー吹き出し口からフィルム搬送高さまで鉛直にとった距離をJIS金尺(0.5mm目盛)にて測定した。
【0039】
(2)フィルム高さでの吹きつけエア風速(m/秒)
本発明における吹き付け工程において搬送フィルムが無く、フィルム製造中と同様にエアー吹き出した状態でフィルム搬送高さでのエアー吹き出し口近傍における風速をANEMOMASTAR MODEL 6112(日本カノマックス社製)で測定し、最大値を採用した。
【0040】
(3)フィルム製膜性
本発明における吹き付け工程において、エアーを吹き出した状態でのフィルム製膜性を以下の指標で判断した。
【0041】
○:吹き出したエアーに起因するフィルム破れなどは特に見られなかった。
【0042】
×:吹き出したエアーに起因する搬送フィルム高さの変動が目視で確認でき、結果としてフィルム破れが発生した。
【0043】
(4)フィルムエッジ部の風速(m/秒)
フィルム製造中に本発明における吹き付け工程において同様にエアー吹き出した状態でフィルムのエッジから10mm外側、高さ50mmの位置において、近傍における風速をANEMOMASTAR MODEL 6112(日本カノマックス社製)で測定し、最大値を採用した。
(5)異物個数(個/m)
巻き取り工程で巻き取ったフィルムをスリットし、スリットしたフィルムロールを分解能50μm×50μmの透過型の光学系の欠点検出器にかけて200m検査した。検査結果で検出された異物個数をカウントし、1mあたりに換算した。
実施例1:
ジメチルテレフタレートに1.9モルのエチレングリコールおよび酢酸マグネシウム・4水塩を0.05%、リン酸を0.015%加え加熱エステル交換を行い、引き続き三酸化アンチモン0.025%を加え、加熱昇温し真空化で重縮合反応を行い、粒子を実質的に含有しない、固有粘度0.62のホモポリエステルペレットIを得た。
【0044】
さらに、凝集アルミナとしてδ型−アルミナを10%のエチレングリコールスラリーとし、サンドグラインダーを用い、粉砕、分散処理を行い、さらに捕集効率95%の3μmフィルターを用いて濾過し、これを前記と同様に調整したエステル交換反応物に添加し、引き続き三酸化アンチモンを加え、重縮合反応を行い、凝集アルミナを1.5%含有する、固有粘度0.62のマスターペレットIIを得た。
【0045】
さらに別に、平均粒径0.45μmのビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有さえ、0.45μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1%含有するマスターペレットIIIを得た。
【0046】
さらに別に、平均粒径0.30μmのビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有さえ、0.45μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し3%含有するマスターペレットIIIを得た。
【0047】
次に、A/B/Aの構成にすべく、B層の原料として、粒子を実質的に含有しないホモポリエステルを準備した(ポリエステルB)。さらに、A層の原料として、ホモポリエステルペレットI、凝集アルミナ含有マスターペレットIIおよびジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子含有マスターペレットIIIを混合し、凝集アルミナ0.05%、0.45μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を0.01%、0.45μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を0.05%含有するポリマーを準備した(ポリエステルA)。
【0048】
これらのポリエステルA、Bをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して5μmのフィルターで高精度濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステルA/ポリエステルB/ポリエステルAからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。この未延伸積層フィルムを逐次二軸延伸機により、110℃で長手方向に4.3倍、および幅方向にそれぞれ4.4倍延伸しその後、再度180℃で1.02倍幅方向に延伸し、定長下、215℃で3秒間熱処理した。その後長手方向に1%、幅方向に3%の弛緩処理を施し、総厚み15μm、両面のポリエステルA層の厚みがそれぞれ1.0μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0049】
実施例1においては熱処理工程の後から巻き取り工程の間にエアーを吹き付ける吹き付け工程を設置した。吹きつけ工程のライン速度、ノズルの配置状態、エアーの風速は表1に示した条件でフィルム製造中に適用した。
【0050】
また、実施例1ではフィルム下側での吸引装置として、吹きつけ工程の床面の高さに床と水平な方向を向いたで断面積0.0028mの吸引スリットを設け、風量1.11m/分の条件で運転をした。
【0051】
前述の条件を適用した製造方法で作製したフィルムを評価した結果を表1に示した。
【0052】
実施例2、比較例1〜3:
実施例1に準じ、エアー吹きつけ工程の条件を表1に記載した内容の製造方法でフィルムを製造した。作製したフィルムを評価した結果を表1に示した。
【0053】
実施例3、比較例4〜5:
平均粒子径1.0μmの炭酸カルシウムを準備し、10%のエチレングリコールスラリーとした。このスラリーをジェットアジターで一時間分散処理を行い、5μm以上の捕集効率95%のフィルターで高精度濾過した。このスラリーをエステル交換後に添加し、引き続き、上記と同じように重縮合反応を行い、平均粒子径1.0μmの炭酸カルシウムを1%含む、固有粘度0.63の炭酸カルシウム含有マスターペレットIVを得た。
【0054】
次に、炭酸カルシウム含有マスターペレットおよび、粒子を含有しないホモポリエステルペレットを混合し、炭酸カルシウムを0.5%含有するポリエステルCを得た。
【0055】
実施例1におけるポリエステルAに代わりとしてポリエステルCを使用し、ポリエステルC,Bをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して5μmのフィルターで高精度濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステルC/ポリエステルB/ポリエステルCからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。この未延伸積層フィルムを逐次二軸延伸機により、110℃で長手方向に3.7倍、および幅方向にそれぞれ3.6倍延伸しその後、再度180℃で1.20倍幅方向に延伸し、定長下、220℃で3秒間熱処理した。その後長手方向に1%、幅方向に4%の弛緩処理を施し、総厚み38μm、両面のポリエステルA層の厚みがそれぞれ1.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0056】
また、実施例1と同様にエアー吹きつけ工程の条件を表1に記載した内容の製造方法でフィルムを製造した。作製したフィルムを評価した結果を表1に示した。
【0057】
【表1】

【符号の説明】
【0058】
11 フィルム
12 エアー吹き付け装置
21 エアーノズル
22 フレーム
23 昇降手段
31 図3におけるノズル配置角度
41 図4におけるノズル配置角度
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のフィルム製造方法はフィルムの弛みや張りなどによるフィルム搬送レベルの僅かな変動の影響を受けず、50μm程度の大きな異物や金属片などの比重の重い異物についても効率良く除塵することが出来るため、二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法として好適に適用することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムにエアーを吹き付ける吹き付け工程、フィルムを巻き取る巻取り工程をこの順に有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、
前記吹き付け工程は、フィルムの上側表面よりも150mm以上離れた位置からエアーを吹き付けることにより、フィルム上側表面の異物をフィルムのエッジ側に吹き飛ばすことを特徴とする、熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
吹き付け工程において、フィルムよりも上側からはエアーを吸引しないことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
吹き付け工程において吹き付けるエアーの風速が、8〜12m/秒であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記吹き付け工程において、フィルムのエッジから10mm外側の位置において、風速が1.5〜6.0m/秒であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
吹き付け工程において吹き付けるエアーは、4つ以上の吹き出し部から吹き出ていることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
吹き付け工程の前に加熱工程を有する熱可塑性樹脂フィルムの製造方法において、
吹き付け工程において吹き付けるエアーは、複数の吹き出し部から吹き出ており、
該複数の吹き出し部は、フィルムの幅方向の位置が中心に近づく程、フィルムの流れ方向の位置が加熱工程側になり、
該複数の吹き出し部は、フィルムの幅方向の位置がフィルムのエッジに近づく程、フィルムの流れ方向の位置が巻取り工程側になることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
吹き付け工程において、フィルムよりも下側からエアーを吸引することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−35171(P2013−35171A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171541(P2011−171541)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】