説明

熱可塑性樹脂発泡ボード及びその製造方法

【課題】軽量で圧縮剛性や特定方向への曲げ剛性に優れた熱可塑性樹脂発泡ボードを提供する。
【解決手段】芯部と、芯部の上下に表皮部2を有する熱可塑性樹脂発泡ボードにおいて、前記芯部が複数の熱可塑性樹脂発泡シート1を積層してなり、かつ、前記熱可塑性樹脂発泡シートの表面が熱可塑性樹脂発泡ボードの厚み方向に配向していることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡ボード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂発泡ボード及びその製造方法に関する。更に詳しくは、熱可塑性樹脂発泡シートの二次加工により、軽量で圧縮剛性や特定方向への曲げ剛性に優れた熱可塑性樹脂発泡ボード、及び該熱可塑性樹脂発泡ボードを簡便な調整により様々な厚みで製造し得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂からなる発泡ボードは、軽量で省資源であり、断熱性、緩衝性に優れ、かつリサイクル可能であることから、断熱材や包材など、様々な用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、発泡ボードは低密度にするほど圧縮剛性や曲げ剛性が低下する傾向にあり、建築においてフローリング材の下に敷設する床下地材や、サンドイッチパネルや繊維強化複合材の芯材など、面圧に対し高い剛性が求められる用途においては、軽量化との両立が困難であった。
【0004】
発泡ボードの圧縮剛性を改良する方法として、特許文献1および2には、気泡構造を、厚み方向での大きさが他方向での大きさよりも大きくすることが提案されている。しかしながら、気泡構造の調整だけでは圧縮剛性を充分に改良することは困難であり、また厚みを変更すると気泡の大きさや異方性が変化するため、厚みにより物性が変化するといった欠点があった。また特許文献2の方法は、成形型間を厳密な速度で開く必要があり制御が複雑になるといった欠点があった。
【0005】
一方、特許文献3には、軟質合成樹脂発泡シートを蛇腹状に折り畳み、表裏いずれか一方に可撓性の合成樹脂シートをラミネートした積層シートが提案されている。しかしながら特許文献3は、被包装物の角部に追随して曲がることで包装し得る保護材に関するものであり、高剛性の熱可塑性樹脂発泡ボードについては何ら開示されていない。
【特許文献1】特開昭60−198230号公報
【特許文献2】特許3067548号公報
【特許文献3】実開平4−71233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、軽量で圧縮剛性に優れ、また、特定方向の曲げ剛性に優れた熱可塑性樹脂発泡ボード、及び、熱可塑性樹脂発泡ボードの簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂発泡シートを縦に配列してなる芯部と、該芯部を一体化し得る表皮部からなる熱可塑性樹脂発泡ボードが、圧縮剛性に優れ特定方向への曲げ剛性に優れることを見出した。
【0008】
即ち、本発明の第1は、芯部と、芯部の上下に表皮部を有する熱可塑性樹脂発泡ボードにおいて、前記芯部が複数の熱可塑性樹脂発泡シートを積層してなり、かつ、前記熱可塑性樹脂発泡シートの表面が熱可塑性樹脂発泡ボードの厚み方向に配向していることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡ボードに関する。
【0009】
本発明の第2は、前記熱可塑性樹脂発泡ボードの製造方法に関する。
【0010】
好ましい態様としては、熱可塑性樹脂発泡シートを一定間隔で折り畳むことによって熱可塑性樹脂発泡シートを積層して芯部となし、熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳んで形成される稜部で構成される面に面材を接着して表皮部を形成することを特徴とする前記記載の熱可塑性樹脂発泡ボードの製造方法に関し、別の好ましい態様としては、熱可塑性樹脂発泡シートを一定間隔で折り畳むことによって熱可塑性樹脂発泡シートを積層して芯部となし、熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳んで形成される稜部で構成される面を加熱して、隣接する熱可塑性樹脂発泡シートの稜部同士を融着して表皮部を形成することを特徴とする前記記載の熱可塑性樹脂発泡ボードの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂発泡ボードは、熱可塑性樹脂発泡シートの表面が得られる熱可塑性樹脂発泡ボードの厚み方向に配向することから、軽量でありながら剛性が高く、更に、熱可塑性樹脂発泡ボードの芯部を構成する熱可塑性樹脂発泡シートの配向方向と直交する方向の曲げ剛性が高い。そのため、サンドイッチパネルの芯材などに有用である。
【0012】
また、本発明の製造方法によれば、熱可塑性樹脂発泡シートに簡便な二次加工を加えることにより、剛性に優れた様々な厚みの熱可塑性樹脂発泡ボードを簡便に得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂発泡ボードは、芯部と、芯部の上下に表皮部を有する熱可塑性樹脂発泡ボードであり、前記芯部が複数の熱可塑性樹脂発泡シートを積層してなり、かつ、前記熱可塑性樹脂発泡シートの表面が熱可塑性樹脂発泡ボードの厚み方向に配向していることを特徴とする。
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂発泡ボードに用いる熱可塑性樹脂発泡シートは、公知のものを使用することが出来る。また、例えば、熱可塑性樹脂と揮発型発泡剤を押出機内で混練し、発泡可能温度まで冷却して、Tダイまたはサーキュラーダイから低圧下に押出する方法、熱可塑性樹脂と分解型発泡剤を押出機内で混練し、分解型発泡剤を熱分解させた後に発泡可能温度まで冷却して、Tダイまたはサーキュラーダイから低圧下に押出する方法、熱可塑性樹脂と分解型発泡剤を、発泡剤が実質的に分解しない温度で押出機内で混練し、Tダイからシート状に押出し電子線などで架橋した後、加熱発泡する方法など、既知の方法にて発泡シート化したものが挙げられる。
【0015】
前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、芳香族アルケニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。これらの内、耐油性に優れることからポリオレフィン系樹脂が好ましく、更には耐熱性に優れることからポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0016】
前記熱可塑性樹脂発泡シートの密度としては、得られる発泡ボードが軽量かつ高い剛性となることから、30〜300kg/mであることが好ましい。
【0017】
また前記熱可塑性樹脂発泡シートの厚みとしては、前述した既知の方法にて発泡シートを得やすく、また、後述する、折り畳んで熱可塑性樹脂発泡ボードを作製する場合において、稜部以外の部位での折れ曲がり(座屈)が生じにくいことから、0.8〜5mmであることが好ましい。
【0018】
さらに、得られる熱可塑性樹脂発泡ボードの剛性を更に高める目的で、前記熱可塑性樹脂発泡シートの少なくとも片面に、フィルムまたはTダイから押し出した熱可塑性樹脂からなる非発泡層を積層した熱可塑性樹脂発泡シートを使用しても良い。非発泡層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂発泡シートとの接着性やリサイクル性の観点から、発泡シートと同種の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0019】
前記発泡層に積層する非発泡層の厚みとしては、特に限定はないが、後述する、折り畳んで熱可塑性樹脂発泡ボードを作製する場合において、折り畳みが容易であることから、0.5mm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂発泡ボードの製造方法としては、熱可塑性樹脂発泡ボードの芯部が複数の熱可塑性樹脂発泡シートを積層してなり、かつ、前記熱可塑性樹脂発泡シートの表面が熱可塑性樹脂発泡ボードの厚み方向に配向するように出来れば特に限定はなく、熱可塑性樹脂発泡シートを積層して芯部を形成する方法としては、例えば、(1)熱可塑性樹脂発泡シートを一定間隔で短冊状に切断し、積層させる、(2)熱可塑性樹脂発泡シートを一定間隔で折り畳むことによって積層させる、などの方法が挙げられる。
【0021】
中でも、(2)熱可塑性樹脂発泡シートを、所望とする熱可塑性樹脂発泡ボードの概ね厚み分の一定間隔で折り畳むことによって積層させて芯部を形成する方法が、作業上簡便であるため好適である。
【0022】
なお、本発明において熱可塑性樹脂発泡シートが積層しているとは、熱可塑性樹脂発泡シートの表面同士が、接触していることをいう。
【0023】
前記熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳む方法としては、公知の方法が使用でき、例えば、断面が歯車状のロールに熱可塑性樹脂発泡シートを通す、多数のロールで徐々に折り目をつける、などが挙げられる。
【0024】
前記熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳む工程において所望の位置にて折ることを目的として目的で、発泡シートを切断しない程度の切れ目などの凹条を予め施しておくことが好ましい。前記凹条の深さは、その後の折り畳む工程で熱可塑性樹脂発泡シートが切断されず、かつ充分に折り目をつけることが可能となることから、凹条の底部、切り目の場合には切れていない残余の部分の厚みを0.05〜0.5mmとするのが好ましい。但し、ミシン目のように貫通した切断部が部分的にあっても、折り畳む工程で熱可塑性樹脂発泡シートが完全に切断されなければ構わない。
【0025】
前記凹条を、熱可塑性樹脂発泡シートの表面と裏面に交互に一定間隔で施すことにより、折り畳み間隔の精度が向上し、最終的に得られる熱可塑性樹脂発泡ボードの厚み精度や表面平滑性が向上する。
【0026】
そして熱可塑性樹脂発泡シートに前記凹条を施す方法としては、例えば、刃のついたロールに通す、引き取りつつ幅方向に並べた多数の固定刃で切る、幅方向に走行するカッターで切る、刃のついたプレスで挟む、などが挙げられる。
【0027】
熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳んで芯部を形成する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂発泡ボードの側面に該当する1面のみが開口し他の5面が閉じた空間に、前記開口部から蛇腹状にした熱可塑性樹脂発泡シートを送り込む方法や、熱可塑性樹脂発泡シートの端部に勘合し得る、または、クランプする冶具にて、熱可塑性樹脂発泡シートの折り畳まれた各面の送り量を調節する方法、などが挙げられる。
【0028】
本発明において、前記熱可塑性樹脂発泡シートを短冊状に切断する、或いは、折り畳む間隔は、目的とする熱可塑性樹脂発泡ボードの厚みや構成により決定される。例えば、芯部の上下に面材を接着する場合は目的とする発泡ボードの厚み近傍とすることが好ましく、芯部の上下を加熱して融着させる場合は、目的とする熱可塑性樹脂発泡ボードの厚みよりも広い間隔であることが好ましい。
【0029】
本発明において、特に断りのない限り、熱可塑性樹脂発泡シートを短冊状に切断したときの切断面を、「切断端部」と称し、熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳んだ場合にはその折り目部分を「稜部」と称するが、芯部の上下に表皮部を形成する方法としては、(3)芯部の切断端部、或いは、稜部で構成される面、即ち芯部の上下に、面材を接着する方法、(4)芯部の切断端部、或いは、稜部で構成される面、即ち芯部の上下を加熱して、隣接する熱可塑性樹脂発泡シートの切断端部、或いは、稜部同士を融着する、等の方法が挙げられる。
【0030】
前記接着に使用する面材としては特に制限はないが、リサイクルが容易となることから、熱可塑性樹脂発泡シートと同一樹脂もしくは同系樹脂であることが好ましい。
【0031】
また、剛性や耐熱性などの大幅な改良を目的に、面材として金属薄板などの他素材を用いても良い。
【0032】
芯部の上下に面材を接着する方法としては、例えば、接着剤の使用や、面材からの加熱もしくは面材積層前の予熱による熱接着、などが挙げられる。これらの内、簡便なプロセスで確実な接着強度が得られることから、ホットメルト接着剤を用いた接着が好ましい。ホットメルト接着剤で接着を行う場合、面材や熱可塑性樹脂発泡シートが溶融せず、接着剤のみが溶融する温度で行うことが好ましい。ここで、面材や熱可塑性樹脂発泡シートが溶融しない温度とは、結晶性樹脂であれば融点未満、非晶性樹脂であればガラス転移温度未満のことをいう。
【0033】
芯部の切断端部或いは稜部で構成される面を加熱して、隣接する熱可塑性樹脂発泡シートの切断端部或いは稜部同士を融着する場合、切断端部或いは稜部を溶融し圧縮することで隣接する熱可塑性樹脂発泡シートの切断端部或いは稜部同士を一体化することから、前述のとおり得られる熱可塑性樹脂発泡ボードの厚みは、短冊状に切断、或いは、折り畳んだ熱可塑性樹脂発泡シートの間隔よりも薄くなる。
【0034】
芯部に表皮部を形成させるにあたり、熱可塑性樹脂発泡ボードの厚み方向に圧縮する際、予熱を充分に行って可塑化させることが、熱可塑性樹脂発泡シートの座屈による剛性低下を抑制できることから、好ましい。前記予熱温度としては、熱可塑性樹脂が充分に溶融し、かつ熱可塑性樹脂の過度な劣化を抑制できることから、結晶性樹脂であれば融点+10〜融点+50℃、非晶性樹脂であればガラス転移温度+10〜ガラス転移温度+80℃であることが好ましい。また圧縮する割合としては、軽量性を維持し、かつ切断端部或いは稜部が充分に融着して一体化することから、加熱前の厚みの0.5〜0.9倍とすることが好ましい。
【0035】
本発明の製造方法において好ましい態様としては、熱可塑性樹脂発泡シートを一定間隔で折り畳むことによって熱可塑性樹脂発泡シートを積層して芯部となし、熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳んで形成される稜部で構成される面に面材を接着して表皮部を形成することである。
【0036】
また別の好ましい態様は、熱可塑性樹脂発泡シートを一定間隔で折り畳むことによって熱可塑性樹脂発泡シートを積層して芯部となし、熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳んで形成される稜部で構成される面を加熱して、隣接する熱可塑性樹脂発泡シートの稜部同士を融着して表皮部を形成することである。
【0037】
これらの態様で本発明の熱可塑性樹脂発泡ボードを作製することで、熱可塑性樹脂発泡シートへの簡単な二次加工だけで、軽量で圧縮剛性や特定方向への曲げ剛性に優れた所望の厚みの熱可塑性樹脂発泡ボードを効率よく製造できるため好ましい。
【0038】
以上のようにして得られた、本発明の熱可塑性樹脂発泡ボードは、軽量であるにもかかわらす、優れた剛性を示し、また、更に、熱可塑性樹脂発泡ボードの熱可塑性樹脂発泡シートの配向方向、熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳む場合には稜部、と直交する方向の曲げ剛性が高いという特徴を有する。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
〈熱可塑性樹脂発泡ボードの圧縮弾性率評価〉
断面が50mm×50mm、厚みが約10mmの試験片を、23℃の恒温室にて1昼夜放置した後、ミネベア株式会社製オートグラフ、TG−20kNを用いて圧縮試験を行い、初期圧縮弾性率を測定した。ロードセルの最大応力は20kN、試験速度は25mm/分で応力が20kNになるまで試験を行った。初期弾性率は、ミネベア株式会社製データ処理ソフトウェアSR−01を用いて、歪―応力曲線の初期応力立ち上がり部から求めた。
【0041】
〈熱可塑性樹脂発泡シートの融点またはガラス転移温度測定〉
示差走査熱量計法による測定において、発泡シート4〜10mgを切り出して試料とし、40℃から210℃まで10℃/分の速度で昇温して融解した時に得られる吸熱曲線において、ポリプロピレン系樹脂などの結晶性樹脂の場合は吸熱量が最大となるピークを樹脂融点とし、ポリスチレン系樹脂などの非晶性樹脂の場合は吸熱曲線の傾きが変化する温度域の中間点をガラス転移温度とした。
【0042】
(実施例1)
プロピレン単独重合体(230℃におけるメルトフローレート3g/10分)100重量部とt−ブチルパーオキシベンゾエート0.25重量部をブレンダーで撹拌混合した後、44mmφ二軸押出機に供給し、液添ポンプを用いてイソプレン0.5重量部を押出機途中から圧入し、200℃にて溶融混練して改質ポリプロピレン系樹脂を得た。
【0043】
上記改質ポリプロピレン系樹脂100重量部および気泡核形成剤として重曹系発泡剤0.14重量部をリボンブレンダーで撹拌混合した配合物を、115mmφ単軸−150mmφ単軸からなるタンデム型押出機に供給し、200℃に設定した第1段押出機(115mmφ)にて溶融させた後、発泡剤としてイソブタンを前記樹脂組成物100重量部に対し1.7重量部圧入混合し、162℃に設定した第2段押出機(150mmφ)中で冷却し、サーキュラーダイ(225mm)より大気圧下に吐出し、670mmφの冷却筒にて成形しながら引き取りつつ内部に空気を吹き付けて延伸・冷却し、これをカッターで2枚に切り分けることにより1050mm幅の押出発泡シートを得た。得られた押出発泡シートの密度は145kg/m、独立気泡率は78%、厚さは1.9mmおよび目付量は0.28kg/mであり、融点は158℃であった。
【0044】
上記押出発泡シートを、270mm(幅方向)×50mm(押出方向)に切り出し、幅方向に10mm間隔で表面と裏面に交互にカッターにて切れ目を施した。なお、切れ目を施した部位において切れていない残余の部分の厚みは概ね0.1mmだった。そしてこの切れ目の部位で折り目を表裏交互につけ、蛇腹状になった発泡シートを内寸50mm×50mmの木製の枠にはめ込んでボード状とし、上下にホットメルト接着剤フィルム(接着推奨温度125℃、厚み40μm)を介して無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルム(厚み30μm)を積層し、130℃に設定した加熱プレスを用いて5分間加熱を行い、厚み10mmの発泡ボードに成形した。なお、加熱する際は、プレス面の間隔を10mmとした。得られた発泡ボードの圧縮弾性率は320N/mmだった。
【0045】
(実施例2)
実施例1と同様にして、蛇腹状になったポリプロピレン系樹脂押出発泡シートを内寸50mm×50mmの木製の枠にはめ込んでボード状とし、これを離型紙に挟んで170℃に設定した加熱プレスにて、プレス面間隔10mmで4分間予熱を行った後、プレス面間隔を8mmまで圧縮して1分間保持、さらにプレス面間隔8mmの冷却プレスにて5分間冷却を行い、厚み8mmの発泡ボードに成形した。得られた発泡ボードの圧縮弾性率は340N/mmだった。
【0046】
(比較例1)
実施例1のポリプロピレン系樹脂押出発泡シート、ホットメルト接着剤フィルム及び無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを50mm×50mmに切り出し、発泡シート5枚、ホットメルト接着剤フィルム2枚、ポリプロピレン系樹脂フィルム2枚を重ねて厚みを概ね10mmとし、圧縮弾性率を測定したところ、280N/mmだった。
【0047】
(実施例3)
実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂押出発泡シートを得、これを135mm(幅方向)×50mm(押出方向)に切り出し、幅方向に5mm間隔で表面と裏面に交互にカッターにて切れ目を折り目をつけ、蛇腹状になった発泡シートを内寸50mm×50mmの木製の枠にはめ込んでボード状とした。その後は実施例1と同様にホットメルト接着剤フィルムと無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを積層し、130℃に設定した加熱プレスを用いて、プレス面間隔5mmで5分間加熱を行い、厚み5mmの発泡ボードに成形した。得られた発泡ボードの圧縮弾性率は350N/mmだった。
【0048】
(実施例4)
押出ラミネート設備を用いて、プロピレン単独重合体(230℃におけるメルトフローレート9g/10分)をTダイからフィルム状に押出し、実施例1の押出発泡シートおよび二軸延伸フィルム(厚さ25μmおよび幅1030mm)を繰り出して、2本のロール間で圧着しながら引取ることにより、二軸延伸フィルムと押出樹脂からなる非発泡層の厚みが100μmであるポリプロピレン系樹脂積層発泡シートを得た。
【0049】
この積層発泡シートを実施例1と同様にして蛇腹状に折り畳み、ホットメルト接着剤フィルムと無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを用いて厚み10mmの発泡ボードに成形した。得られた発泡ボードの圧縮弾性率は440N/mmだった。
【0050】
(比較例2)
実施例1の改質ポリプロピレン系樹脂積層発泡シート、ホットメルト接着剤フィルム及び無延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを50mm×50mmに切り出し、発泡シート5枚、ホットメルト接着剤フィルム2枚、ポリプロピレン系樹脂フィルム2枚を重ねて厚みを概ね10mmとし、圧縮弾性率を測定したところ、270N/mmだった。
【0051】
(実施例5)
実施例1の改質ポリプロピレン系樹脂の代わりに、ポリスチレン系樹脂(190℃におけるメルトフローレート1.5g/10分)を用い、気泡核形成剤としてタルク0.5重量部を用い、第2段押出機(150mmφ)の設定温度を105℃とした他は、実施例1と同様にして、1050mm幅の押出発泡シートを得た。得られた押出発泡シートの密度は100kg/m、独立気泡率は96%、厚さは2mmおよび目付量は0.2kg/mであり、ガラス転移温度は101℃であった。
【0052】
上記押出発泡シートを、250mm(幅方向)×50mm(押出方向)に切り出し、幅方向に10mm間隔で表面と裏面に交互にカッターにて切れ目を施し折り目をつけ、蛇腹状になった発泡シートを内寸50mm×50mmの木製の枠にはめ込んでボード状とし、上下にホットメルト接着剤フィルム(接着推奨温度80℃、厚み40μm)を介して無延伸ポリスチレン系樹脂フィルム(厚み30μm)を積層した。これを、プレス面間隔を10mmとした80℃設定の加熱プレスを用いて5分間加熱を行い、厚み10mmの発泡ボードに成形した。得られた発泡ボードの圧縮弾性率は510N/mmだった。
【0053】
(比較例3)
実施例5のポリスチレン系樹脂押出発泡シート、ホットメルト接着剤フィルム及び無延伸ポリスチレン系樹脂フィルムを50mm×50mmに切り出し、発泡シート5枚、ホットメルト接着剤フィルム2枚、ポリプロピレン系樹脂フィルム2枚を重ねて厚みを概ね10mmとし、圧縮弾性率を測定したところ、450N/mmだった。
【0054】
本発明における熱可塑性樹脂発泡ボードの製造方法を行うことにより、同じ熱可塑性樹脂発泡シートの厚み方向と熱可塑性樹脂発泡ボードの厚み方向と一致させて単に積層するよりも剛性の高い熱可塑性樹脂発泡ボードを得ることができ、また熱可塑性樹脂発泡ボードの厚みも任意に変更することが可能であることが判る。さらに本発明における方法は、様々な樹脂の発泡シートを用いて発泡ボードを作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の熱可塑性樹脂発泡ボードの概略斜視図である。
【図2】表皮部が面材で形成された本発明の熱可塑性樹脂発泡ボードの概略斜視図である。
【図3】表皮部が加熱融着によって形成された本発明の熱可塑性樹脂発泡ボードの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 熱可塑性樹脂発泡シート
2 面材から形成された表皮部
3 稜部
4 加熱融着して形成された表皮部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部と、芯部の上下に表皮部を有する熱可塑性樹脂発泡ボードにおいて、前記芯部が複数の熱可塑性樹脂発泡シートを積層してなり、かつ、前記熱可塑性樹脂発泡シートの表面が熱可塑性樹脂発泡ボードの厚み方向に配向していることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡ボード。
【請求項2】
熱可塑性樹脂発泡シートを一定間隔で折り畳むことによって熱可塑性樹脂発泡シートを積層して芯部となし、熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳んで形成される稜部で構成される面に面材を接着して表皮部を形成することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂発泡ボードの製造方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂発泡シートを一定間隔で折り畳むことによって熱可塑性樹脂発泡シートを積層して芯部となし、熱可塑性樹脂発泡シートを折り畳んで形成される稜部で構成される面を加熱して、隣接する熱可塑性樹脂発泡シートの稜部同士を融着して表皮部を形成することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂発泡ボードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−143148(P2009−143148A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323780(P2007−323780)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】