説明

熱安定成形組成物

【課題】公知のヨウ化銅/ヨウ化カリウム含有組成物よりも良好な熱老化性能を有するファイバー強化、熱安定化成形組成物が製造でき、微細分散された元素銅を含む組成物を製造する公知の方法のような欠点のない方法を提供すること。
【解決手段】連続相を形成する熱可塑性ポリマー、非金属繊維強化剤、および重量平均粒度が最大で450μmの元素鉄を含む構成成分を溶融混合して、組成物を形成する工程を含む成形組成物の製造方法であって、
組成物が、
a.94.95〜30質量%の熱可塑性ポリマーと、
b.5〜60質量%の非金属繊維強化剤と、
c.0.10〜10質量%の微細分散された元素鉄と、
d.0〜10質量%のキャリアポリマーと、
e.0〜59.90質量%の無機フィラーと、
f.0〜10質量%の少なくとも1つの他の添加剤とからなる、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマーと、繊維強化剤と、微細分散された元素金属の形態の熱安定剤とを含む成形組成物の製造方法および該方法により得られる成形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性材料に基づき、繊維強化剤を含む成形組成物には、通常、例えば、良好な寸法安定性、高い熱変形温度(HDT)および高引張強度や引張モジュラスなどの良好な機械的特性を備えた成形された組成物を含む複雑な特性プロフィールという特徴がある。熱安定剤の機能は、成形材料を高温にさらした際に組成物の特性を良好に保持することである。自動車アンダーフード用途やいくつかの電気または電子用途において機能する対象物の場合等、成形組成物を長時間にわたって比較的高温にさらすと、組成物は、通常、ポリマーの熱劣化のために機械的特性が減少する傾向がある。この影響は熱老化と呼ばれている。繊維強化ポリマーにおいては、これらの材料が用いられる温度は高いことが多いため、この影響はよりいっそう重要である。影響は望ましくない範囲まで生じ得る。特に、ガラス繊維強化ポリアミドの場合には、高温にさらすことにより劣化の影響が非常に著しい。熱可塑性成形組成物の多くの用途において、160℃、さらには180℃〜200℃以上と高い温度に長期間にわたってさらされた後に機械的特性を保持するのは基本的な要件となっている。熱老化特性の改善された組成物を必要とする特別な用途の数も増えている。熱安定剤を用いると、材料の種類、使用条件ならびに熱安定剤の種類および量に応じて、成形材料の耐用年数が大幅に延長できる。例えば、ポリアミドに一般的に用いられる熱安定剤としては、フェノール酸化防止剤および芳香族アミンのような有機安定剤、およびヨウ化カリウムや臭化カリウムと組み合わせた銅塩の形態か、または元素銅の形態のいずれかの銅が例示される。フェノール酸化防止剤および芳香族アミンは、約130℃までの高温での安定化に通常用いられる。安定剤を含有する銅は、高温での安定化に好適であり、長年にわたって利用されている。
【0003】
熱可塑性ポリマー、繊維強化剤および銅ベースの熱安定剤を含む成形組成物はDE−A−4305166号から公知である。公知の組成物中の熱可塑性ポリマーは脂肪族または芳香族ポリアミドである。繊維強化剤としては、ガラスファイバーを用いる。公知の組成物中の熱安定剤としては、ヨウ化銅/ヨウ化カリウムと、インサイチュで形成された微細分散された元素銅の両方に言及されている。
【0004】
ヨウ化銅/ヨウ化カリウム含有組成物は、組成物の構成成分を単に溶融混合する工程を含むコンパウンド方法により形成された。この組成物の欠点は、熱老化性能が限定されていて、多くの用途について十分なものからは程遠いことである。元素銅を含む組成物は、銅塩/ヨウ化カリウム含有組成物よりもはるかに良好な耐熱酸化性および光の作用を有すると言われている。元素銅を含む組成物は、ポリアミドとガラスファイバーを、イオン性または錯体銅安定剤および還元剤と溶融混合し、元素銅をインサイチュで形成するコンパウンド方法により形成された。かかるインサイチュの製造方法は、あまり実際的なものではない。というのは、かかる方法の結果は、混合成分とプロセス条件の比率の変動に対して非常に感受性がある一方、コンパウンドプロセス中互いに反応させなければならない数種の成分を化合させなければならないからである。もし構成成分を直接溶融混合することにより組成物を製造できれば、より実際的なものとなるであろう。しかしながら、DE−A−4305166号によれば、微細分散された元素銅はインサイチュで製造するとき、熱安定剤として有効なだけである。溶融混合方法に先行して製造された元素銅、この場合はコロイド銅を、熱安定化組成物の製造のために溶融混合方法に用いると、その組成物の熱老化性能は、DE−A−4305166号に記載されているように、ヨウ化銅/ヨウ化カリウム含有組成物より実質的に良好ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、公知のヨウ化銅/ヨウ化カリウム含有組成物よりも良好な熱老化性能を有するファイバー強化、熱安定化成形組成物が製造でき、微細分散された元素銅を含む組成物を製造する公知の方法のような欠点のない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、連続相を形成する熱可塑性ポリマー、非金属無機フィラー、重量平均粒度が最大で450μmの元素鉄粉末を溶融混合して組成物を形成する工程を含む本発明による方法により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
意外なことに、特定のサイズ範囲の元素鉄は、非常に有効な熱安定剤となることが示され、この熱安定効果は、微細分散された元素鉄をインサイチュで製造することを必要とせず、特定の粒度の元素鉄を組成物の他の成分と単に溶融混合する本発明による方法によっても得ることができる。本発明による方法の効果は、微細分散された元素鉄を含む該方法により製造した成形組成物が、公知の銅塩/ヨウ化カリウム含有組成物、および熱可塑性ポリマー、繊維強化剤および元素銅の溶融混合により製造された公知の元素銅含有組成物について、高温での機械特性のはるかに良好な保持により示される、熱老化特性において著しい改善を示すということである。本発明による方法の更なる利点は、微細分散された元素銅を含む組成物のインサイチュでの製造を含む公知の方法に比べて熱安定化組成物を製造する製造方法における柔軟性が得られるということである。本発明による組成物は、熱可塑性ポリマー、繊維強化剤、元素鉄を、キャリアポリマー中に微細分散された元素鉄のマスターバッチの形態などの好適な形態で溶融混合することを含む標準溶融混合方法により製造できるということを知見した。
【0008】
熱可塑性ポリマーおよび微細分散された元素鉄を含む組成物は米国特許第5,153,038号明細書より公知である。米国特許第5,153,038号明細書による公知の組成物は、多層ホイルや食品用容器といった、酸素バリア特性を有するパッケージング材料を作製するのに用いられている。該組成物に用いる熱可塑性ポリマーは、一般的に、低酸素透過係数のポリマーである。公知の組成物は、通常、潮解無機塩、潮解有機化合物または高水吸収樹脂などの潮解物質を更に含む。米国特許第5,153,038号明細書には、繊維強化剤またはその成形物品も、本発明による良好な熱老化特性も記載されていない。
【0009】
微細分散された元素鉄は、ここでは、重量平均粒度が最大で450μmの小粒子の形態で連続媒体中に分散された元素鉄と理解される。連続媒体は、連続相を形成し、例えば、熱可塑性ポリマーまたはキャリアポリマーとすることができる。
【0010】
粒度の小さな元素鉄は、ここでは、粉末などの、大半が粒度が小さい粒子の形態で存在する元素鉄と理解される。通常、元素鉄の重量平均粒度は最大で450μm、好ましくは最大で250μmである。更に、粒度の小さな元素鉄の重量平均粒度は最大で200μm、より好ましくは最大で100μm、さらにより好ましくは最大で50μmであるのが好ましい。元素鉄は、例えば、10または5μm、およびさらにこれ以下の重量平均粒度の非常に小さな粒度を有している。重量平均粒度の低い元素鉄の利点は、元素鉄が熱安定剤として更に有効であることである。
【0011】
重量平均粒度は、ASTM規格D1921−89、方法Aに従って、Dmとして求められる。最大寸法と理解される元素鉄粒子の少なくとも50wt%のサイズは、最大で450μm、好ましくは最大で250μm、より好ましくは最大で200μm、さらにより好ましくは最大で100μm、さらになお好ましくは最大で50μmである。鉄粒子の少なくとも75wt%、さらには90wt%のサイズが上記選択範囲を満足するのがより好ましい。
【0012】
本発明による方法に用いることのできる好適な元素鉄は、例えば、オハイオ州のSMCメタルプロダクツ(SMC Metal Products,Ohio)より入手可能なSCM鉄粉末A−131である。
【0013】
本発明による方法における元素鉄は、広範囲にわたって可変の量で用いることができる。元素鉄は、非常に低量で効果を既に示しており、非常に有効な安定剤であることが分かっている。実際、元素鉄は、熱可塑性ポリマー100重量部(以降「pbw」と略す)を基準として少なくとも0.01pbwの量で用いることができる。熱可塑性ポリマー100重量部を基準として、より好ましくは量は少なくとも0.1pbw、さらにより好ましくは少なくとも1.0pbw、最も好ましくは少なくとも2.0pbwである。熱可塑性ポリマーの重量を基準として元素鉄の量が多い利点は、組成物が良好な熱老化特性を有することである。
【0014】
一方、量は、熱可塑性ポリマー100重量部を基準として20重量部またはそれ以上でもよい。しかしながら、熱可塑性ポリマー100重量部を基準として5〜10pwbで既にかかる良好な熱老化特性が得られ、これより多い量を用いても改善は相対的に少ない。
【0015】
本発明による方法に用いることができ、かつ該方法により得られる組成の熱可塑性ポリマーは、高温にさらす用途において強化成形組成物に用いるのに好適な任意の種類の熱可塑性ポリマーとしてよい。熱可塑性ポリマーは、例えば、非晶質ポリマーまたは半結晶質ポリマーとすることができる。熱可塑性ポリマーは、任意でまた、熱可塑性エラストマー、または液晶ポリマーなどの結晶性ポリマーとしてもよい。
【0016】
通常、高温用途を目的として組成物の製造に用いる熱可塑性ポリマーは、融点が少なくとも180℃の半結晶質または結晶性ポリマーまたは熱可塑性エラストマー、あるいはガラス転移温度が少なくとも180℃の非晶質ポリマーである。
【0017】
本発明による組成物中の熱可塑性ポリマーの融解温度、または熱可塑性ポリマーが非晶質ポリマーの場合にはガラス転移温度が、好ましくは少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも220℃、さらにより好ましくは少なくとも240℃である。熱可塑性ポリマーの該融解温度またはガラス転移温度が高い本発明による方法の利点は、本方法の結果、組成物の熱変形温度(HDT)が高いこと、および該高いHDTに対応する温度での熱老化特性に与える元素鉄の影響がより強調されて、組成物の最大使用温度を更に上げることができるということである。
【0018】
本発明による方法および組成物に用いることのできる好適な非晶質ポリマーは、例えば、ポリイミド(PI)ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリアクリレート(PAR)および非晶質ポリアミドである。
【0019】
好適な半結晶質ポリマーは、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、半結晶質ポリアミド、ポリフェニルスルフィド(PPS)ならびに、ポリシクロヘキシルジメチルテレフタレート(PCT)、ポリエチレンエーテルテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステルである。
【0020】
熱可塑性ポリマーはまた異なる熱可塑性ポリマーのブレンドを含んでいてもよい。
【0021】
好ましくは、熱可塑性ポリマーはポリエステルまたはポリアミド(PA)であり、より好ましくはポリアミドである。熱可塑性ポリマーがポリアミドである本発明による利点は、繊維強化ポリアミドが、高温にさらされる悪影響を非常に受けた場合、本発明による元素鉄と組み合わせるとこの影響が大きく低減されるということである。
【0022】
本発明による方法および該方法により得られる組成物中に用いることのできる好適なポリアミドは、例えば、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドおよびこれらの混合物である。
【0023】
好適な脂肪族ポリアミドは、例えば、PA−6、PA−11、PA−12、PA−4,6、PA−4,8、PA−4,10、PA−4,12、PA−6,6、PA−6,9、PA−6,10、PA−6,12、PA−10,10、PA−12,12、PA−6/6,6−コポリアミド、PA−6/12−コポリアミド、PA−6/11−コポリアミド、PA−6,6/11−コポリアミド、PA−6,6/12−コポリアミド、PA−6/6,10−コポリアミド、PA−6,6/6,10−コポリアミド、PA−4,6/6−コポリアミド、PA−6/6,6/6,10−ターポリアミドおよび1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンから得られるコポリアミド、ならびに上述したポリアミドのコポリアミドである。
【0024】
好適な半芳香族ポリアミドは、例えば、PA−6,I、PA−6,I/6,6−コポリアミド、PA−6,T、PA−6、T/6−コポリアミド、PA−6、T/6,6−コポリアミド、PA−6,I/6,T−コポリアミド、PA−6,6/6、T/6、I−コポリアミド、PA−6、T/2−MPMD、T−コポリアミド(2−MPMD=2−メチルペンタメチレンジアミン)、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD、T(2−MOMD=2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン)、テレフタル酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンから得られるコポリアミド、イソフタル酸、ラウリンラクタムおよび3,5−ジメチル−4,4−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、イソフタル酸、アゼライン酸および/またはセバシン酸および4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸および/またはテレフタル酸および4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸および/またはテレフタル酸およびイソホロンジアミンから得られるコポリアミド、イソフタル酸および/またはテレフタル酸および/または他の芳香族または脂肪族ジカルボン酸、任意でアルキル置換ヘキサメチレンジアミンおよびアルキル置換4,4−ジアミノジシクロヘキシルアミンから得られるコポリアミド、ならびに上述したポリアミドのコポリアミドである。
【0025】
好ましくは、ポリアミドは、PA−6、PA−6,6、PA−6,10、PA−4,6、PA−11、PA−12、PA−12,12、PA−6,I、PA−6,T、PA−6,I/6、T−コポリアミド、PA−6、T/6,6−コポリアミド、PA−6、T/6−コポリアミド、PA−6/6,6−コポリアミド、PA−6,6/6,T/6、I−コポリアミド、PA−6、T/2−MPMD、T−コポリアミド、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD、T−コポリアミド、PA−4,6/6−コポリアミドおよび上述したポリアミドの混合物およびコポリアミドからなる群より選択される。より好ましくは、PA−6,I、PA−6,T、PA−6,I/6、T−コポリアミド、PA−6,6、PA−6,6/6T、PA−6,6/6、T/6,I−コポリアミド、PA−6,T/2−MPMD、T−コポリアミド、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD、T−コポリアミドまたはPA−4,6、あるいはこれらの混合物またはコポリアミドからなる群よりポリアミドとして選択される。
【0026】
ポリアミドは、任意で、変性末端基、例えば、モノカルボン酸で変性されたアミン末端基および/または単官能性アミンで変性されたカルボン酸末端基を含有していてもよい。ポリアミド中に変性末端基を適用すると、溶融混合による製造中、または該組成物の成形方法中、組成物の溶融安定性が改善され有利である。
【0027】
本発明による方法の好ましい実施形態において、熱可塑性ポリマーは、少なくとも260℃の融点を有する半結晶質ポリアミドと、260℃未満の溶融温度を有する第2のポリアミドのブレンドである。あるいは、第2のポリアミドが非晶質ポリアミドの場合には、ガラス転移温度は260℃未満である。
【0028】
本発明による方法に用いることができ、かつ該方法により得られる組成の繊維強化剤は、高温用途に用いる繊維強化熱可塑性組成物に用いるのに好適な任意の種類の非金属繊維強化剤としてよい。繊維強化剤は、本明細書においては、幅および厚さ、そして平均長さが幅と厚さの両方よりも大幅に長い長さを有する材料と考えられる。通常、かかる材料の、長さ(L)と幅と厚さの最大(D)の平均比として定義されるアスペクト比L/Dは少なくとも5である。繊維強化剤のアスペクト比は好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、さらにより好ましくは少なくとも50である。
【0029】
本発明による方法に用いることができ、かつ該方法により得られる組成の好適な非金属繊維強化剤は、例えば、ガラス繊維、カーボンまたはグラファイトファイバー、アラミドファイバー、セラミックファイバー、珪灰石などの鉱物繊維およびウィスカである。ガラス繊維を選択するのが好ましい。銅、鉄およびアルミニウム繊維などの金属繊維は、組成物について想定される適用分野を鑑みると、本発明による方法および組成物には好ましくない。
【0030】
本発明による方法に用いる繊維強化剤の量は広い範囲にわたって変えることができる。通常、その量は熱可塑性ポリマー100重量部(pbw)を基準として5〜300pwbである。その量は熱可塑性ポリマー100pbwを基準として好ましくは10〜235pbw、より好ましくは15〜150pbwである。
【0031】
本発明による方法は、繊維強化熱可塑性成形組成物を製造するのに好適な公知の溶融混合方法により実施することができる。かかる方法は、一般的に、熱可塑性ポリマーを熱可塑性ポリマーの融解温度より高く、または熱可塑性ポリマーが非晶質ポリマーの場合には、ガラス転移温度より高く加熱して、熱可塑性ポリマーの溶融物を形成することにより実施される。
【0032】
本発明による方法は、溶融混合装置で実施することができ、溶融混合装置としては、溶融混合によりポリマー組成物を製造する、当業者に公知の任意の溶融混合装置を用いることができる。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、バンブリーミキサー、単軸押出し機および二軸押出し機である。所望の全成分を押出し機、押出し機のスロートまたは溶融物に投与する手段を備えた押出し機を用いるのが好ましい。
【0033】
本発明による方法において、組成物を形成する構成成分を溶融混合装置に供給して、その装置内で溶融混合する。構成成分は、ドライブレンドとしても知られている粉末混合物または顆粒ミキサーとして同時に供給しても、別個に供給してもよい。
【0034】
本発明による方法は、元素鉄を添加する方法に限定されない。例えば、粉末として、顆粒形態の熱可塑性ポリマーを含むドライブレンドまたはプレミックスを、および粉末形態の元素鉄、またはキャリアポリマー中に微細分散された元素鉄のマスターバッチとして添加してもよい。
【0035】
元素鉄をマスターバッチの形態で添加すると有利である。というのは、これによって、元素鉄を熱可塑性ポリマーに対して少量で添加するとき、元素鉄の投与精度をより良く制御できるからである。マスターバッチを用いる他の利点は、元素鉄と熱可塑性ポリマーの均一なブレンドをより容易に得られることである。更なる利点は、マスターバッチの形態の元素鉄の添加によって、より安全な方法となることである。というのは、粉末形態の元素鉄は、空気酸化に感受性があり、非常に可燃性であることが多いからである。
【0036】
マスターバッチに用いることのできるキャリアポリマーは、熱可塑性ポリマーと同じであってもよいし、低融解熱可塑性ポリマー、エラストマーまたはゴムなどの他のポリマーであってもよい。
【0037】
好ましい実施形態において、キャリアポリマーは、同じポリマー、またはキャリアポリマーが非晶質ポリマーの場合には、熱可塑性ポリマーの融解温度に近い融解温度、または熱可塑性ポリマーが非晶質ポリマーの場合には熱可塑性ポリマーのガラス転移温度に近いガラス転移温度を有するポリマーである。これは、溶融混合方法が、熱可塑性ポリマーに必要な処理温度を修正が少しでもある場合には、限られた修正で実施できるという利点がある。他の利点は、熱変形温度(HDT)および/または得られる組成物の最大連続使用温度が良好に保持されることである。
【0038】
キャリアポリマーは、熱可塑性ポリマーと同じポリマーであるのがより好ましい。その利点は、キャリアポリマーと熱可塑性ポリマーの間の最大の相容性である。
【0039】
他の好ましい実施形態において、キャリアポリマーはエラストマーまたはゴムである。これには、本発明による方法により得られる組成物の耐衝撃性が改善され、別個の衝撃改質剤を添加する必要性を低下させる、あるいは完全に排除することができるという利点がある。
【0040】
キャリアポリマーとして用いることのできる好適なゴムは、例えば、SBSゴムおよびEPDMゴムである。
【0041】
キャリアポリマーはまた、熱可塑性ポリマーであるのが有利であり、さらに特に、低融解温度の熱可塑性ポリマーであると有利である。キャリアポリマーとして使用できる適切な低融解熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびPE/PPコポリマーである。
【0042】
キャリアポリマー中に微細分散された元素鉄のマスターバッチは、例えば、小さい平均粒度の元素鉄粉末を、押出し機などの溶融混合装置においてキャリアポリマーの溶融物に添加することにより製造してもよい。
【0043】
本発明による方法に用いるのに好適なキャリアポリマー中に微細分散された元素鉄のマスターバッチは、例えば、例としてスイスのチバ(Ciba,Switzerland)製のシェルフプラス(Shelfplus)O2 2400である。
【0044】
本発明による方法の好ましい実施形態に用いる元素鉄のマスターバッチはマスターバッチの質量を基準として少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%の鉄含量を有するのが好ましい。マスターバッチ中の鉄含量が多いと、組成物中で同じ鉄含量に到達するのに、低キャリアポリマー含量で組成物を製造でき、これにより、熱可塑性ポリマーにより与えられる特性をより良好に保持できるという利点がある。
【0045】
本発明による方法により得られる最終組成物において、熱可塑性ポリマーは、他の成分が分散相として存在する連続相を形成する。
【0046】
本発明はまた、連続相として熱可塑性ポリマーと、非金属繊維強化剤と、重量平均粒度が最大で450μmの微細分散された元素鉄とを含む成形組成物にも関する。本発明による成形組成物は、本発明による方法により得られる。本発明の組成物の利点は、公知の銅塩/ヨウ化カリウム含有組成物、および熱可塑性ポリマー、繊維強化剤および元素銅の溶融混合により製造された公知の元素銅含有組成物について、組成物の総質量を基準として同じ質量%の熱安定剤を含有しながら、高温での機械特性のはるかに良好な保持により示される、熱老化特性において著しい改善を示すということである。その他の利点は、同レベルの熱老化特性を得るために、組成物の総質量に対して低質量%の熱安定剤により組成物を製造できるということである。
【0047】
本発明による組成物の好ましい実施形態は、本発明による方法の好ましい実施形態、上述した本明細書で使用する特定の成分およびその報告された利点に直接関する。
【0048】
好ましくは、本発明による組成物は、
a.100pbwの熱可塑性ポリマーと、
b.5〜300pbwの非金属繊維強化剤と、
c.0.01〜20pbwの微細分散された元素鉄と、
d.0〜30pbwのキャリアポリマーとを含み、「pbw」とは「重量部」のことを意味する。
【0049】
本発明による組成物はまた、本発明を本質的に損なうものではない、ポリマー組成物に通常用いる、当業者に知られた、非繊維および非金属の両方のフィラーおよび他の添加剤を含有していてもよい。本発明による組成物により任意で含まれてよい他の添加剤としては、顔料、処理助剤、例えば、離型剤、核剤または結晶促進剤、UV安定剤および酸化防止剤、難燃剤、衝撃改質剤および相容剤が挙げられる。相容剤は、熱可塑性ポリマーと相容性の低いキャリアポリマーと組み合わせて用いると有利である。他の添加剤は、特に、例えば、無機塩、酸性化成分およびこれらの混合物のような熱老化特性を更に促進する物質を含む。適切な無機塩としては、アルカリ、アルカリ土類および遷移金属ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、亜硫酸塩およびリン酸塩、例えば、塩化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸第二銅、ヨウ化第二銅、酢酸第二銅およびこれらの混合物が例示される。適切な酸性化成分は、例えば、ピロリン酸ナトリウムのようなナトリウム−リンバッファである。
【0050】
特に、本発明による組成物は、無機フィラーを含有している。無機フィラーとして適切なのは、当業者に公知の非金属および非繊維無機フィラー全てであり、例えば、ガラスビーズ、ケイ酸アルミニウム、マイカ、クレイ、か焼クレイおよびタルカムである。
【0051】
本発明による組成物は、好ましくは
a.94.95〜25質量%の熱可塑性ポリマーと、
b.5〜70質量%の非金属繊維強化剤と、
c.0.05〜16質量%の微細分散された元素鉄と、
d.0〜16質量%のキャリアポリマーと、
e.0〜69.95質量%の無機フィラーと、
f.0〜16質量%の少なくとも1つの他の添加剤とからなり、
質量%は組成物の合計質量を基準としており、(b+c+e)の合計量が組成物の合計質量を基準として最大で75質量%であり、(d+f)の合計量が(a+d+f)の合計量を基準として最大で75質量%であり、(a+b+c+d+e+f)の合計量が100質量%に等しい。
【0052】
本発明による組成物は、より好ましくは
a.94.95〜30質量%の熱可塑性ポリマーと、
b.5〜60質量%の非金属繊維強化剤と、
c.0.10〜10質量%の微細分散された元素鉄と、
d.0〜10質量%のキャリアポリマーと、
e.0〜59.90質量%の無機フィラーと、
f.0〜10質量%の少なくとも1つの他の添加剤とからなり、
質量%は組成物の合計質量を基準としており、(b+c+e)の合計量が組成物の合計質量を基準として最大で65質量%であり、(d+f)の合計量が(a+d+f)の合計量を基準として最大で20質量%であり、(a+b+c+d+e+f)の合計量が100質量%に等しい。
【0053】
本発明による組成物がフィラーを含む場合には、該フィラーは、通常、組成物の総質量に対して、少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも1質量%、さらにより好ましくは少なくとも10質量%の量で存在している。高フィラー含量の組成物の利点は、生成物が良好な寸法安定性、高HDTを有し、歪みが少ないことである。
【0054】
本発明による組成物が他の添加剤を含む場合には、該添加剤は、通常、組成物の総質量に対して、少なくとも0.01質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、さらにより好ましくは少なくとも1質量%の量で存在している。
【0055】
フィラーおよび/または他の添加剤も含む本発明による組成物の製造については、標準的な溶融混合プロセスを用いることができる。元素鉄および熱可塑性ポリマーを溶融混合する同じ溶融混合工程、または別個の溶融混合工程で該組成物を製造する方法において、フィラーおよび/または添加剤を添加してもよい。フィラーおよび/または添加剤を、元素鉄を該ポリマーと溶融混合する同じ工程で熱可塑性ポリマーと溶融混合するのが好ましい。
【0056】
本発明は、熱可塑性ポリマーが、ISO75/Aに従って測定されたHDTが少なくとも220℃であり、ISO527に従った23℃での引張試験における厚さ4mmの試験バーで試験した引張強度および/または破断点伸びが、215℃で800時間の熱老化後少なくとも60%保持されている脂肪族ポリアミドである熱可塑性ポリマー組成物を提供する。
【0057】
明瞭にするために、HDTは、該組成物で作製した成形品で測定しており、引張試験は、同じ組成物で作製した他の成形品で測定している。
【0058】
該組成物の機械的特性は、215℃で800時間の熱老化後少なくとも70%保持されるのが好ましい。
【0059】
本発明はまた、熱可塑性ポリマーが、ISO75/Aに従って測定されたHDTが少なくとも250℃であり、ISO527に従った23℃での引張試験における厚さ4mmの試験バーで試験した引張強度および/または破断点伸びが、230℃で800時間の熱老化後少なくとも50%保持されている半芳香族ポリアミドである熱可塑性ポリマー組成物も提供する。
【0060】
該組成物の機械的特性は、215℃で800時間の熱老化後、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%保持される。
【0061】
熱老化後試験したときに引張強度および/または破断点伸びを良好に保持する熱可塑性ポリマー組成物中の熱可塑性ポリマーは、好ましくはポリエステルまたはポリアミド、より好ましくはポリアミドである。
【0062】
熱老化後に試験したときに、引張強度および/または破断点伸びを良好に保持する熱可塑性ポリマー組成物の利点は、成形品に、およびそれで作製された成形品の用途に用いることができ、熱老化後機械的特性を良好に保持しない成形品よりもその成形品の耐用年数は長く、高温で用いることができるということである。更なる利点は、引張強度および/または破断点伸びを良好に保持する熱可塑性ポリマー組成物はより高い連続使用温度で用いることができ、かつ/または同じ連続使用温度でより長い期間にわたって用いることができるということである。
【0063】
本発明はまた、成形品の作製についての本発明による組成物の使用、および本発明による組成物を含む成形品にも関する。本発明による成形品の利点は、非常に良好な熱老化特性を有するということである。
【0064】
成形品は、エンジンカバーについては、主に二次元形状を有することができる。成形品はまた、高温用途に用いられる多くの部品の場合等は、より複雑な三次元形状を有していてもよい。
【0065】
通常、部品の厚さは少なくとも0.5mmである。ただし、これより薄い厚さの部品もある。部品の厚さは好ましくは少なくとも1mm、より好ましくは少なくとも2mm、さらに好ましくは少なくとも4mmである。厚い部品の利点は、高温での熱老化条件下で機械的特性が良好に保持されることである。
【0066】
特に、成形品は、例えば、マイカー、モータバイク、トラックおよびバンなどの自動車、列車、飛行機および船をはじめとする一般輸送手段、芝刈り機および小エンジンなどの屋内電気器具、およびポンプ、コンプレッサ、コンベヤベルトなどの一般工業施設に適用することのできる機械およびエンジンに用いる成形品、または家庭用電気機器およびポータブル電気装置のような電気電子施設に用いる成形品である。
【0067】
部品は、例えば、ベアリング、ギヤボックス、エンジンカバー、エアダクト、吸気マニホルド、インタークーラーエンドキャップ、キャスタまたはトロリ部品としてもよい。
【0068】
本発明はまた、本発明による成形品の、エンジン、機械、電子電気器具における使用、更に、本発明による成形品を含むエンジン、機械および組み立て物品にも関する。
【0069】
本発明は更に、自動車、一般輸送手段、屋内電気器具および一般工業施設、電気電子施設をはじめとする、本発明による成形品を含む製品に関する。利点は、高温にさらすことによる成形品の劣化のために該成形品を交換する必要性に関して、該製品の耐用年数が長くなり、かつ/またはヨウ化銅/ヨウ化カリウム安定系を含む公知の組成物で作製された成形品を含む対応の製品に比べて、製品を高温で操作できるということである。
【0070】
以下の実施例および比較実験により本発明を更に説明する。
【0071】
材料
PA−6−1番 ポリアミド6、種類K122、粘度数115ml/g(ISO307に従って測定)(例えば、オランダのDSM(DSM, The Netherlands)製)
PA−6−2番 ポリアミド6、種類K123、粘度数129ml/g(ISO307に従って測定)(例えば、オランダのDSM(DSM, The Netherlands)製)
PA−6,6 ポリアミド−6,6、種類S222、粘度数115ml/g(ISO307に従って測定)(例えば、オランダのDSM(DSM, The Netherlands)製)
PA−4,6 ポリアミド−4,6、種類K200、粘度数160ml/g(ISO307に従って測定)(例えば、オランダのDSM(DSM, The Netherlands)製)
PA−6,6/6,T ポリアミド−6,6/6,T、種類FE5011(例えば、スイスのEMS(EMS, Switzerland))
相容剤−I 無水マレイン酸変性ポリエチレン(例えば、オランダのDSM(DSM, The Netherlands)製)
強化剤 ガラス繊維:ポリアミド用標準型
元素鉄マスターバッチ PE中、平均粒度が30μmの20質量%の鉄粒子を含有するマスターバッチ
安定助剤A ヨウ化物安定剤201(ステアリン酸中ヨウ化銅/ヨウ化カリウム(80/10/10))(例えば、スイスのチバ(Ciba,Switzerland)製)
安定助剤B ヨウ化銅(Cul)(例えば、DSMミネラBV(DSM Minera BV)...)
安定助剤C ヨウ化カリウム(Kl)(例えば、DSMミネラBV(DSM Minera BV))
処理助剤 アクラワックス(Acrawax)C(潤滑剤)(例えば、イタリアのロンツァ(Lonza, Italy))
Amodel AS1133HS 半芳香族ポリアミド組成物、PA−6,6/6,T/6,I、ガラス含量33質量%、黒色、例えば、ソルベイ(Solvay)製
Amodel AS1145HS 半芳香族ポリアミド組成物、PA−6,6/6,T/6,I、ガラス含量45質量%、黒色、例えば、ソルベイ(Solvay)製
Amodel AS4145HS 半芳香族ポリアミド組成物、PA−6,6/6,T、ガラス含量45質量%、天然色、例えば、ソルベイ(Solvay)製
グリボリー(Grivory)HTV5H1 半芳香族ポリアミド組成物、PA−6,T/6,I、ガラス含量50質量%、天然色、例えば、EMS製
ザイテル(Zytel)HTN51G35HSL 半芳香族ポリアミド組成物、PA−6,T/2−MPMD,T、ガラス含量35質量%、天然色、例えば、デュポン(Du Pont)製
ザイテル(Zytel)HTN52G35HSL 半芳香族ポリアミド組成物、PA−6,6/6,T、ガラス含量35質量%、天然色、例えば、デュポン(Du Pont)製
【実施例】
【0072】
実施例1および比較実験A
ZSK25二軸押出し機(例えば、ヴェルナ&フライデラー(Werner&Fleiderer)製)を用いて、実施例1および比較実験Aの組成物を製造した。押出し機のシリンダ温度は260℃、スクリューの回転速度は275RPMおよび処理量20kg/時であった。強化剤以外は、全成分をホッパーを介してスロートで添加した。強化剤をサイド投与により溶融物に添加した。コンパウンドされた材料を、ストランドの形態で押出し、水浴中で冷却して、切断して顆粒とした。得られた顆粒を真空下で105℃で16時間乾燥した。
【0073】
乾燥した顆粒を、厚さ4mm、ISO527型1Aに沿った試験バーの形態の直径22mmのスクリューを備えた射出成形機型75(例えば、エンジェル(Engel)製)で射出成形した。射出成形機の溶融物の温度は280℃、金型の温度は80℃であった。
【0074】
試験バーをグレンコ(GRENCO)オーブン(型:GTTS12500S)にて215℃で熱老化した。特定の熱老化時間後、試験バーをオーブンから取り出し、室温まで冷やし、ISO527に従って23℃で引張試験により機械的特性を試験した。
【0075】
実施例1および比較実験Aの組成および一般試験結果を表1にまとめてある。
【0076】
【表1】

【0077】
実施例2および比較実験B
コンパウンドについて押出し機のシリンダ温度が280℃、射出成形について溶融物の温度が290℃であった以外は、実施例2および比較実験Bの組成物およびそれで作製された試験バーを、実施例1および比較実験Aと同様にして製造した。熱老化を230℃で行った。実施例2および比較実験Bの組成および一般試験結果を表2にまとめてある。
【0078】
【表2】

【0079】
実施例3および比較実験C
コンパウンドについて押出し機のシリンダ温度が310℃、射出成形について溶融物の温度が315℃であった以外は、実施例3および比較実験Cの組成物およびそれで作製された試験バーを、実施例1および比較実験Aと同様にして製造した。熱老化を230℃で行った。実施例3および比較実験Cの組成および一般試験結果を表3にまとめてある。
【0080】
【表3】

【0081】
実施例4
コンパウンドについて押出し機のシリンダ温度が300℃、射出成形について溶融物の温度が335℃、金型の温度が140℃であった以外は、実施例4の組成物およびそれで作製された試験バーを、実施例1と同様にして製造した。熱老化を230℃で行った。実施例4の組成および一般試験結果を表4にまとめてある。
【0082】
【表4】

【0083】
比較例D−1
比較実験D−1については、市販の半芳香族ポリアミド組成物を用いた。溶融温度および金型温度を表5に示したようにした以外は実施例4と同様に射出成形によりこれらの組成物から試験バーを作製した。熱老化を実施例4に関して230℃で行った。比較実験D−1の組成および一般試験結果を表5にまとめてある。
【0084】
【表5】

【0085】
表4および5の結果を比較すると、比較例のガラス含量が実施例4のガラス含量より高いという事実にも関らず、本発明による組成物、この場合は実施例4が、比較例D−1による比較組成物よりも老化後にはるかに高い引張強度を保持していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相を形成する熱可塑性ポリマー、非金属繊維強化剤、および重量平均粒度が最大で450μmの元素鉄を含む構成成分を溶融混合して、組成物を形成する工程を含む成形組成物の製造方法であって、
組成物が、
a.94.95〜30質量%の熱可塑性ポリマーと、
b.5〜60質量%の非金属繊維強化剤と、
c.0.10〜10質量%の微細分散された元素鉄と、
d.0〜10質量%のキャリアポリマーと、
e.0〜59.90質量%の無機フィラーと、
f.0〜10質量%の少なくとも1つの他の添加剤とからなり、
質量%は組成物の合計質量を基準としており、(b+c+e)の合計量が組成物の合計質量を基準として最大で65質量%であり、(d+f)の合計量が(a+d+f)の合計量を基準として最大で20質量%であり、(a+b+c+d+e+f)の合計量が100質量%に等しい、方法。
【請求項2】
前記元素鉄の重量平均粒度が最大で250μmである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記元素鉄が、キャリアポリマー中に微細分散された元素鉄を含むマスターバッチの形態で添加される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリアポリマーと前記熱可塑性ポリマーの両方がポリアミドである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーが、融点が少なくとも180℃の半結晶または結晶性ポリマー、またはガラス転移温度が少なくとも180℃の非晶質ポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリマーが、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドまたはこれらの混合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
連続相として熱可塑性ポリマーと、非金属繊維強化剤と、重量平均粒度が最大で450μmの微細分散された元素鉄の形態の熱安定剤とを含む成形組成物であって、
当該組成物が、
a.94.95〜30質量%の熱可塑性ポリマーと、
b.5〜60質量%の非金属繊維強化剤と、
c.0.10〜10質量%の微細分散された元素鉄と、
d.0〜10質量%のキャリアポリマーと、
e.0〜59.90質量%の無機フィラーと、
f.0〜10質量%の少なくとも1つの他の添加剤とからなり、
質量%は組成物の合計質量を基準としており、(b+c+e)の合計量が組成物の合計質量を基準として最大で65質量%であり、(d+f)の合計量が(a+d+f)の合計量を基準として最大で20質量%であり、(a+b+c+d+e+f)の合計量が100質量%に等しい、組成物。
【請求項8】
前記組成物が少なくともフィラー、または他の添加剤を更に含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記キャリアポリマーと前記熱可塑性ポリマーの両方がポリアミドである請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーが、ISO75/Aに従って測定された熱変形温度が少なくとも220℃であり、ISO527に従った23℃での引張試験における厚さ4mmの試験バーで試験した引張強度および/または破断点伸びが、215℃で800時間の熱老化後少なくとも60%保持されている脂肪族ポリアミドである請求7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーが、ISO75/Aに従って測定された熱変形温度が250℃以上であり、ISO527に従った23℃での引張試験における厚さ4mmの試験バーで試験した引張強度および/または破断点伸びが、230℃で800時間の熱老化後少なくとも50%保持されている半芳香族ポリアミドである請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
成形品を製造するための請求項7〜11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の組成物を含む成形品。
【請求項14】
請求項13に記載の成形品を含む組立物品。
【請求項15】
機械、エンジン、電気または電子設備における請求項13に記載の成形品の使用。
【請求項16】
請求項13に記載の成形品または請求項14に記載の組立物品を含む電気または電子設備。
【請求項17】
請求項13に記載の成形品を含む機械、エンジン、電気または電子設備。
【請求項18】
請求項13に記載の成形品または請求項17に記載の機械またはエンジンを含む自動車、列車、飛行機、船、屋内電気器具または一般工業設備。

【公開番号】特開2011−179017(P2011−179017A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137458(P2011−137458)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【分割の表示】特願2006−521018(P2006−521018)の分割
【原出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】