説明

燃料用フィルタ

【課題】フィルタ体の濾過精度の向上とロングライフ化をできるだけ図りながら、袋状をなすフィルタ体を容易かつ適切に構成できるようにする。
【解決手段】燃料タンクT内の燃料吸い込み口や燃料ラインP’中に備えられて燃料の濾過に用いられる燃料用フィルタFである。この燃料用フィルタFを構成する濾材14の少なくとも一つを、この濾材14における開口径を、この濾材14の一次側12と二次側13とで異ならせると共にこの二次側13に向かうに連れて小さくするようにして、異なる粒径の塵埃を段階的に捕捉する機能を持った多機能濾材14aとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料タンク内にある燃料吸い込み口や燃料ライン中に備えられて用いられる燃料用フィルタの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内の燃料はこの燃料タンク内に配される吸い込みパイプなどを通じて内燃機関側に移送される。このように移送される燃料から水を取り除くと共に、塵埃がフューエルポンプに送り込まれないようにするために、かかる吸い込みパイプの燃料吸い込み口などにはフィルタ装置が取り付けられる。こうしたフィルタ装置として、本出願人開示の特許文献1に示されるものがある。
【0003】
特許文献1のフィルタ装置にあっては、燃料タンク内にある燃料吸い込み口に内部空間を連通させる袋状のフィルタ体を有している。かかるフィルタ体は、織物メッシュよりなる最外層の濾材と、スパンボンド法によって生成された不織布よりなる最内層の濾材との間に、メルトブローン法によって生成された不織布よりなる濾材を二層有している。そして、外側に位置されるメルトブローン法によって生成された不織布の平均開口径よりも内側に位置されるメルトブローン法によって生成された不織布の平均開口径が小さくなるようにしてあり、フィルタ体にろ過勾配(ろ過精度勾配などとも称される。)が付けられている。これにより、微細な塵埃を捕捉できるようにしながら、平均開口径の小さい内側に位置されるメルトブローン法によって生成された不織布よりなる濾材の負担を軽減してフィルタ装置のロングライフ化を図っている。
【0004】
このように構成されたフィルタ装置では、平均開口径を異ならせる、メルトブローン法によって生成された不織布よりなる濾材を、さらに多く重ね合わせてろ過勾配を緩やかにすることで、(隣り合う濾材の平均開口径の差を小さくする。)ろ過精度を向上させながらフィルタ装置のロングライフ化を図ることができるが、フィルタ体の製造コストなどを考慮すると、濾材の重ね合わせ数には限界がある。また、濾材の重ね合わせ数が多くなればなるほど、袋状にするために施される溶着箇所での濾材数は多くなるため、こうした溶着によって適切にフィルタ体を構成し難くなる。
【特許文献1】特開2005−48721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の燃料用フィルタを構成するフィルタ体の濾過精度の向上とロングライフ化をできるだけ図りながら、かかるフィルタ体を容易かつ適切に構成できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明にあっては、燃料用フィルタを、燃料タンク内の燃料吸い込み口や燃料ライン中に備えられて燃料の濾過に用いられる燃料用フィルタであって、
この燃料用フィルタを構成する濾材の少なくとも一つを、この濾材における開口径を、この濾材の一次側と二次側とで異ならせると共にこの二次側に向かうに連れて小さくするようにして、異なる粒径の塵埃を段階的に捕捉する機能を持った多機能濾材としたものとした。
【0007】
かかる燃料用フィルタによれば、単一のかかる多機能濾材によって、粗い塵埃から微細な塵埃までの、粒径の異なる塵埃をこの多機能の濾材の厚さ方向における異なる箇所においてそれぞれ捕捉することができ、目詰まりを生じさせ難い状態で、吸引される燃料から塵埃を適切に除去させることができる。すなわち、かかる多機能濾材の一次側において比較的粗い塵埃を、二次側において比較的微細な塵埃を捕捉することができ、さらにはその中間ではこれらの間に位置される粒径の塵埃を捕捉するようにすることもできる。
【0008】
また、溶着可能な複数のシート状ないしはマット状の濾材を重ね合わせた後にこれを二つ折りにして折った箇所以外の箇所に線状又は帯状に施した溶着とこの折った箇所とにより燃料用フィルタの主体となる袋状のフィルタ主体を成形したり、あるいはまた、このように濾材を重ね合わせてなる二つの濾材組を、それぞれのフィルタ主体の内側となる側を対面させるように重ね合わせた状態で、これらに周回状をなす溶着を施して前記袋状のフィルタ主体を成形したりする場合には、溶着箇所の濾材の積層枚数を最小にして、容易且つ適切にかかる溶着がなされるようにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、多機能濾材によって濾材の重ね合わせ数を過大にすることなく、燃料用フィルタの濾過精度の向上とロングライフ化をできるだけ図ることができ、この結果、燃料用フィルタを容易かつ適切に、さらに低廉に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1および図9に基づいて、この発明を実施するための最良の形態の一つについて説明する。
【0011】
なお、ここで図1はこの発明を適用して構成される燃料用フィルタFの利用状態を理解しやすいように燃料タンクTと燃料ラインP’の一部とを模式的に表しており、図2はかかる燃料タンクT内にある燃料吸い込み口Pに燃料用フィルタFを取り付けた状態を示した構成図であり、また、図3は、かかるフィルタ装置Fを構成するフィルタ主体1の断面構成の一例を、図4は、かかるフィルタ装置Fを構成するフィルタ主体1の断面構成の他の一例を示している。(図3および図4においては、フィルタ主体1の上面側と下面側の断面構成のみを表し、フィルタ主体1内に納められる間隔形成部材3の記載を省略している。)
【0012】
また、図5〜図9はこの発明にかかる燃料用フィルタFを構成する多機能濾材14aとなる不織布の製造過程を理解しやすいようにこれを模式的に表すと共に、(各図の(a)図)、それぞれの製造過程を経て得られる不織布の断面構造を模式的に表している。(各図の(b)図)
【0013】
この実施の形態にかかる燃料用フィルタFは、自動車や二輪自動車などの燃料タンクT内にある燃料吸い込み口Pや、燃料ラインP’中に取り付けられて、内燃機関側に移送される燃料に水や異物を入り込ませないようにするためのものである。
【0014】
典型的には、かかる燃料用フィルタFは、燃料タンクT内に燃料吸い込み口Pを位置させた吸い込みパイプのこの燃料吸い込み口Pに取り付けられる、いわゆるフィルタ(インタンク式燃料フィルタあるいはサクションフィルタなどと称される。)として、あるいはまた、燃料タンクTとインジェクターとの間において燃料ラインP’中に配されるフィルタとして用いられる。(図1)
【0015】
また、かかる燃料吸い込み口Pを通じた内燃機関側への燃料の移送は、燃料タンクT内に配されるフューエルポンプあるいは燃料タンクT外に配されるフューエルポンプによってなされる。
【0016】
図2は前記サクションフィルタとしての構成例を示している。かかる燃料用フィルタFは、袋状をなすフィルタ主体1を有している。そして、かかる燃料用フィルタFは、この袋状をなすフィルタ主体1の内部空間10を、前記燃料吸い込み口Pに連通させるように、この燃料吸い込み口Pに取り付けられるものとなっている。具体的には、図示の例にあっては、前記燃料用フィルタFが、一端部20を前記燃料吸い込み口Pへの接続端部とすると共に、他端部21を前記フィルタ主体1に形成された連通穴11への接続端部としたプラスチック製の筒状ソケット体2を有しており、この筒状ソケット体2によってフィルタ主体1の内部空間10が燃料吸い込み口Pに連通されるようにしてある。また、この例にあっては、かかる燃料用フィルタFは、前記フィルタ主体1内に納められてこのフィルタ主体1を常時膨らんだ袋状に保つ間隔形成部材3を有している。具体的には、図示の例にあっては、前記間隔形成部材3は、袋状をなすフィルタ主体1の上部の内面にその上面を接しさせると共に、このフィルタ主体1の下部の内面にその下面を接しさせる厚さを持つように構成されており、フィルタ主体1の内部に入れ込まれてこのフィルタ主体1を膨らんだ袋状に常時保つようになっている。この間隔形成部材3には、その上面と下面との間に亘る複数の燃料の通過部(図示は省略する。)が形成されている。また、かかるフィルタ主体1は、二つ以上の濾材14を重ね合わせて構成されている。それと共に、これら二つ以上の濾材14の少なくとも一つは、その開口径を、この濾材14の一次側12と二次側13とで異ならせるように構成されて異なる粒径の塵埃を段階的に捕捉する機能を持った多機能濾材14aとなっている。ここで、本明細書において濾材14の一次側12とは、この濾材14におけるフィルタ主体1の外側に位置される側であってこの濾材14への燃料の流入側(上流側)を意味し、また、濾材14の二次側13とは、この濾材14におけるフィルタ主体1の内側に位置される側であってこの濾材14からの燃料の流出側(下流側)を意味している。
【0017】
これにより、かかる燃料用フィルタFによれば、単一のかかる多機能濾材14aによって、粗い塵埃から微細な塵埃までの、粒径の異なる塵埃をこの多機能の濾材14の厚さ方向における異なる箇所においてそれぞれ捕捉することができ、かかる燃料用フィルタFにおける前記フィルタ主体1の目詰まりを生じさせ難い状態で、吸引される燃料から塵埃を適切に除去させることができる。
【0018】
また、溶着可能な複数のシート状ないしはマット状の濾材14を重ね合わせた後にこれを二つ折りにして折った箇所以外の箇所に線状又は帯状に施した溶着とこの折った箇所とにより燃料用フィルタFの主体となる袋状のフィルタ主体1を成形したり、あるいはまた、このように濾材14を重ね合わせてなる二つの濾材組を、それぞれのフィルタ主体1の内側となる側を対面させるように重ね合わせた状態で、これらに周回状をなす溶着を施して前記袋状のフィルタ主体を成形したりする場合には、溶着箇所の濾材14の積層枚数を最小にして、容易且つ適切にかかる溶着がなされるようにすることができる。
【0019】
また、前記濾材14の平均開口径、すなわち、濾材14における微細な燃料の通過孔の平均孔径を異ならせる二枚以上の濾材14を積層させてこのような溶着によって袋状のフィルタ主体1を成形する場合には、その溶着箇所において濾材14の積層枚数が過大となり、溶着によってこれらを一体化させ難くなる。この実施の形態にかかるフィルタ装置Fにあっては、単一のかかる多機能濾材14aによってこうした溶着・一体化を行いやすい態様で目詰まりを生じがたいフィルタ主体1を構成させることができる。この実施の形態にあっては、かかる多機能濾材14aは不織布として構成されており、この多機能濾材14aにおける開口径は、この多機能濾材14aの二次側13に向かうに連れて漸次小さくなるようにしてある。これにより、この実施の形態にあっては、多機能濾材14aの一次側12において比較的粗い塵埃を、二次側13において比較的微細な塵埃を、その中間ではこれらの間に位置される粒径の塵埃をそれぞれ位置を異ならせて捕捉するようになっている。
【0020】
この実施の形態にあっては、かかる多機能濾材14aを、不織布生成の乾式法であるスパンボンド法及びメルトブローン法の双方又はいずれか一方の製法を用いて生成させている。メルトブローン法では極細繊維を紡糸可能であり、多機能濾材14aにおける微細な塵埃を捕捉する密な層を適切に生成させることができる。スパンボンド法では、メルトブローン法に比べると生成される繊維を極細化させ難いが、生成される繊維の強度を高めやすく、また、スパンボンド法は不織布の効率的な生産に適している。
【0021】
図5〜図7は、多機能濾材14aを、開口径を異ならせる、つまり、微細な燃料の通過孔の平均孔径を異ならせる二以上の層Lを、前記製法のいずれかによって先行して生成された層Lの上に前記製法のいずれかによって次の層Lを生成させて構成させる例を示している。各図中、符号4は不織布製造装置であり、符号5はコンベヤであり、符号6はこのコンベヤ5により搬送される多機能濾材14aとなる不織布の巻き取り装置であり、符号4bはスパンボンド法による不織布製造装置4”を構成する繊維延伸装置である。
【0022】
具体的には、図5はメルトブローン法による不織布製造装置4’を多段化して、それぞれの不織布製造装置4’によって生成される繊維の太さとノズル4aからの吐出量を異ならせるようにすると共に、コンベヤ5の搬送方向に間隔を開けてこのコンベヤ5上に各不織布製造装置4’のノズル4aを配させ、このコンベヤ5の搬送手前側に位置される先順位のノズル4aによってコンベヤ5上に生成された前記層L上に、次順位のノズル4aによって前記次の層Lを生成させて、多機能濾材14aとなる不織布を生成させている。このように生成された多機能濾材14aとなる不織布は、細い繊維から構成される密な層Laと、太い繊維から構成される粗い層Lcと、この両層La、Lcの間に中間の太さの繊維から構成される粗密も両層La、Lcの中間となる中間層Lbを一体に備える。(図5(b)図)この場合、多段化されたそれぞれの不織布製造装置4’によって生成される繊維の太さを変えずにノズル4aからの吐出量を異ならせるようにすることによっても、密な層Laと、粗い層Lcと、この両層La、Lcの間に粗密を両層La、Lcの中間とする中間層Lbと一体に備えた多機能濾材14aとなる不織布を生成することができる。
【0023】
また、図6はスパンボンド法による不織布製造装置4”を多段化して、それぞれの不織布製造装置4”によって生成される繊維の太さとノズル4aからの吐出量を異ならせるようにすると共に、コンベヤ5の搬送方向に間隔を開けてこのコンベヤ5上に各不織布製造装置のノズル4aを配させ、このコンベヤ5の搬送手前側に位置される先順位のノズル4aによってコンベヤ5上に生成された前記層L上に、次順位のノズル4aによって前記次の層Lを生成させて、多機能濾材14aとなる不織布を生成させている。このように生成された多機能濾材14aとなる不織布も、細い繊維から構成される密な層Laと、太い繊維から構成される粗い層Lcと、この両層La、Lcの間に中間の太さの繊維から構成される粗密も両層La、Lcの中間となる中間層Lbを一体に備える。(図6(b)図)この場合にも、多段化されたそれぞれの不織布製造装置4”によって生成される繊維の太さを変えずにノズル4aからの吐出量を異ならせるようにすることによっても、密な層Laと、粗い層Lcと、この両層La、Lcの間に粗密を両層La、Lcの中間とする中間層Lbと一体に備えた多機能濾材14aとなる不織布を生成することができる。
【0024】
また、図7は前記のように多段化されたメルトブローン法による不織布製造装置4’にスパンボンド法による不織布製造装置4”をさらに組み合わせると共に、コンベヤ5の搬送方向に間隔を開けてこのコンベヤ5上に各不織布製造装置4のノズル4aを配させ、このコンベヤ5の搬送手前側に位置される先順位のノズル4aによってコンベヤ5上に生成された前記層L上に、次順位のノズル4aによって前記次の層Lを生成させて、多機能濾材14aとなる不織布を生成させている。この例では、スパンボンド法による不織布製造装置4”によって最も太い繊維からなる最も粗い層Ldを最初に生成させるようにしている。(図7(a)図)このように生成された多機能濾材14aとなる不織布は、細い繊維から構成される密な層Laと、太い繊維から構成される粗い層Lcと、この両層La、Lcの間に中間の太さの繊維から構成される粗密も両層La、Lcの中間となる中間層Lbを一体に備えると共に、この粗い層Lcの外側に前記スパンボンド法による最も粗い層Ldを備える。(図7(b)図)
【0025】
一方、図8および図9は、多機能濾材14aを、この多機能濾材14aの厚さ方向において流路の断面積が徐々に変化するように、前記製法の紡糸条件を経時的に変化させることによって生成させて構成させる例を示している。各図中、符号4は不織布製造装置であり、符号5はコンベヤであり、符号6はこのコンベヤ5により搬送される多機能濾材14aとなる不織布の巻き取り装置であり、符号4bはスパンボンド法による不織布製造装置4”を構成する繊維延伸装置である。
【0026】
具体的には、この図8および図9に示される例では、メルトブローン法又はスパンボンド法による不織布製造装置4’(4”)によって生成される繊維の太さとノズル4aからの吐出量を経時的に変化させながらコンベヤ5上に一定面積の多機能濾材14aとなる不織布を生成させている。一定面積のかかる不織布の生成が終了した段階でコンベヤ5を走行させこのように生成された不織布に連続する次の一定面積の不織布を同様に紡糸条件を経時的に変化させながら生成させる。このように生成された多機能濾材14aとなる不織布は、その一面側から他面側に向かうに連れて繊維の太さを徐々に変化させながら次第に粗となるように、または次第に密となるように構成される。(図8(b)図、図9(b)図)この場合にも、不織布製造装置4’(4”)によって生成される繊維の太さを変えずにノズル4aからの吐出量を経時的に変化させることによっても、一面側から他面側に向かうに連れて繊維の太さを徐々に変化させながら次第に粗となるように、または次第に密となるように構成された多機能濾材14aとなる不織布を生成することができる。
【0027】
このようにすることで、スムースな密度勾配を持った不織布の濾材14、すなわち多機能濾材14aを比較的低廉に得ることができ、これにより濾過精度の高く目詰まりし難い燃料用フィルタFを低廉に供給することができる。
【0028】
より具体的には、かかる多機能濾材14aを構成する不織布は、前記密な層Laと中間層Lbと粗い層Lcとを一体に備えてなる場合には、各層La、Lb、Lcを以下のよう構成させることが、濾過精度を向上させると共に多機能濾材14aの目詰まりをし難くしてそれをロングライフ化させる観点から最適である。なお、下記の平均開口径は、米国ポーラスマテリアルズ社 (Porous Materials Inc.)製の自動細孔径分布測定器パームポロメーター(PERM POROMETER)により測定した。
密な層La:平均開口径 2μm〜20μm
目付け 5g/m2〜40g/m2
繊維径 0.4μm〜5μm
中間層Lb:平均開口径 10μm〜60μm
目付け 10g/m2〜100g/m2
繊維径 1μm〜20μm
粗い層Lc:平均開口径 20μm〜100μm
目付け 10g/m2〜100g/m2
繊維径 10μm〜40μm
【0029】
また、かかる多機能濾材14aを構成する不織布は、以下の材料によって構成させることが最適である。
ポリオレフィン(耐薬品性が高く、低廉、加水分解し難い)
ポリエステル(耐薬品性、耐熱性が高い)
ポリアミド(耐薬品性、耐熱性が高い)
ポリフェニレンサルファイド(耐薬品性、耐熱性が非常に高い)
ポリアセタール(耐薬品性が高い)
【0030】
また、図4に示されるフィルタ主体1の構成例では、多機能濾材14aの二次側13に、メルトブローン法によって生成され、且つ多機能濾材14aの平均開口径よりも平均開口径を小さくさせた濾材14bが重ねられている。
【0031】
これにより、この図4に示される例では、平均開口径を小さくさせやすいメルトブローン法による不織布の濾材14bをメインフィルタとして、そして前記多機能濾材14aをプレフィルタとして、このメインフィルタの負担を最小にさせた状態でロングライフのフィルタ装置を構成させることができる。
【0032】
また、この図4に示される例では、フィルタ主体1の最も内側に位置される濾材14が、スパンボンド法により形成された濾材14cとしてある。
【0033】
このようにした場合、かかるスパンボンド法により形成された濾材14cによってフィルタ主体1に剛性(こわさ)を付与してフィルタ主体1を保形し易くできる。また、前記間隔形成部材3に、メルトブローン法によって形成された濾材14を接しさせずに、これより剛性の高いスパンボンド法によって形成された濾材14cが接するようにすることができる。
【0034】
また、この図4に示される例では、フィルタ主体1の最も外側に位置される濾材14が、織物メッシュ14dとしてある。このようにした場合、燃料タンクTの内圧の変化などによってこの燃料タンクTの下部内壁面Taが内外に移動することなどに伴なって(つまり、燃料タンクTの膨縮などに伴って)フィルタ主体1の下面部とこの燃料タンクTの下部内壁面Taとの間に擦れが生じても、不織布からなる多機能濾材14aがその影響を直接受けることがないようすることができる。
【0035】
かかる織物メッシュ14dは、典型的には、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタールなどの合成繊維を油水分離に十分な細かさの網目を持つように織り込むことによって構成される。かかる織物メッシュ14dは、例えば、畳織、平織、あや織、朱子織などによって構成することができる。
【0036】
フィルタ主体1を構成する各濾材14を同一の合成樹脂材料によって構成しておくこともできる。例えば、かかる各層をいずれもポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド又はポリアセタールによって構成する。
【0037】
このようにした場合、重ね合わせた各濾材14相互を溶着によって馴染み良く一体化させて袋状をなすフィルタ主体1を構成させることができる。
【0038】
すなわち、図4に示される例では、フィルタ主体1の最外層を織物メッシュ14dとし、最内層をスパンボンド法によって形成された濾材14cとすると共に、両者の間の織物メッシュ14d側にプレフィルタ(多機能濾材14a)を両者の間のスパンボンド法によって形成された濾材14c側にメインフィルタ(メルトブローン法によって形成された濾材14b)を位置させるようにしてこのメインフィルタとプレフィルタを挟み込んでフィルタ主体1を構成させている。一方、図3に示される例では、フィルタ主体1の最外層を織物メッシュ14dとし、最内層をスパンボンド法によって形成された濾材14cとすると共に、両者の間に多機能濾材14aを位置させるようにしてフィルタ主体1を構成させている。
【0039】
図示の例にかかるフィルタ主体1は、このように濾材14を重ね合わされた状態からスパンボンド法によって形成された濾材14cを内方に位置させるようにして、かつ、前記間隔形成部材3を挟み込ませた状態で二つ折りにし、この後、折った辺部を除く辺部に亘って、あるいは、この折った辺部を除く辺部に沿ってこの辺部よりも内方に、二つ折りにされて重ね合わされた一方の側と他方の側とを一体化させる熱シール部(溶着箇所15)を形成させることにより、構成することができる。前記筒状ソケット体2への連通穴11は、かかる二つ折りを施すに先立って、前記のように重ね合わせた四枚の濾材14に予め穿設させておく。
【0040】
あるいはまた、図示の例にかかるフィルタ主体1は、三枚(図3の態様)又は四枚(図4の態様)の濾材14を重ね合わせてなる第一の濾材14組と、前記のように四枚の濾材14を重ね合わせてなる第二の濾材14組とを、第一の濾材14組のスパンボンド法によって形成された濾材14cと、第二の濾材14組のスパンボンド法によって形成された濾材14cとが向き合わされるようにして、かつ、両者の間に前記間隔形成部材3を挟み込ませた状態で重ね合わせ、この後、挟み込まれた間隔形成部材3の外郭を巡るように第一の濾材14組と第二の濾材14組とを一体化させる熱シール部を形成させることにより、構成することができる。前記筒状ソケット体2への連通穴11は、事前に第一の濾材14組又は第二の濾材14組に、穿設させておく。
【0041】
このように形成されるフィルタ主体1にはさらに、その形成に先だってフィルタ主体1を構成する各濾材14を前記熱シール部以外で一体化させるようにスポット的な溶着を適宜施すようにすることもある。
【0042】
また、前記熱シール部15よりも外方に位置される不要箇所は、必要に応じてカッティングして、フィルタ主体1の形状を整えるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】燃料用フィルタFの利用箇所を示した構成図
【図2】同利用状態を示した断面構成図
【図3】フィルタ主体1の構成例の一つを示した拡大断面構成図
【図4】フィルタ主体1の構成例の他の一つを示した拡大断面構成図
【図5】多機能濾材14aとなる不織布の製造過程(第一例)を示した構成図((a)図)及びこの製造過程を経て生成された多機能濾材14aの断面構成図((b)図)
【図6】多機能濾材14aとなる不織布の製造過程(第二例)を示した構成図((a)図)及びこの製造過程を経て生成された多機能濾材14aの断面構成図((b)図)
【図7】多機能濾材14aとなる不織布の製造過程(第三例)を示した構成図((a)図)及びこの製造過程を経て生成された多機能濾材14aの断面構成図((b)図)
【図8】多機能濾材14aとなる不織布の製造過程(第四例)を示した構成図((a)図)及びこの製造過程を経て生成された多機能濾材14aの断面構成図((b)図)
【図9】多機能濾材14aとなる不織布の製造過程(第五例)を示した構成図((a)図)及びこの製造過程を経て生成された多機能濾材14aの断面構成図((b)図)
【符号の説明】
【0044】
F 燃料用フィルタ
T 燃料タンク
12 一次側
13 二次側
14 濾材
14a 多機能濾材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内の燃料吸い込み口や燃料ライン中に備えられて燃料の濾過に用いられる燃料用フィルタであって、
この燃料用フィルタを構成する濾材の少なくとも一つを、この濾材における開口径を、この濾材の一次側と二次側とで異ならせると共にこの二次側に向かうに連れて小さくするようにして、異なる粒径の塵埃を段階的に捕捉する機能を持った多機能濾材としていることを特徴とする燃料用フィルタ。
【請求項2】
多機能濾材は、スパンボンド法及びメルトブローン法の双方又はいずれか一方の製法により生成されていると共に、
開口径を異ならせる二以上の層を、前記製法のいずれかによって先行して生成された層の上に前記製法のいずれかによって次の層を生成させてなることを特徴とする請求項1記載の燃料用フィルタ。
【請求項3】
多機能濾材は、スパンボンド法及びメルトブローン法のいずれか一方の製法により生成されていると共に、
多機能濾材の厚さ方向においてその開口径が徐々に変化するように、前記製法の紡糸条件を経時的に変化させることによって生成させてなることを特徴とする請求項1記載の燃料用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−19151(P2010−19151A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179816(P2008−179816)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】