説明

燃料電池システムのCO酸化触媒及びCO選択除去方法

【課題】 燃料電池の電極被毒を招く水素リッチガス中のCOのみを効率的に除去できる新規なCO酸化触媒及びこれを用いたCO選択除去方法の提供。
【解決手段】 燃料電池システムのメタノール改質部で生成された水素リッチガス中のCOを選択的に酸化して除去するためのCO酸化触媒として、アルミナ担体又はシリカ−アルミナ担体に、I族金属(Cu,Ag,Au),V族金属(V,Sb,Bi),VI族金属(Cr,Se,Mo,W),VII 族金属(Mn,Re),VIII族金属(Fe,Co,Ru,Pd,Pt)及びその酸化物のいずれか或いはこれらのうち任意の組み合わせからなる混合物を担持したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、次世代の電気自動車用電源として期待されている車載用燃料電池システムに係り、特にそのメタノール改質部で生成された水素リッチガス中のCOを選択的に酸化して除去するためのCO酸化触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図4は、次世代の電気自動車用電源として期待されている車載用燃料電池システムの基本的な構成を示したものである。
【0003】図示するように、この車載用燃料電池システムはメタノール等の燃料を気化する気化器1と、この気化器1で気化された燃料を水素と二酸化炭素を主成分とする水素リッチガスに改質する改質器2と、この改質器2で得られた水素リッチガスと酸素を原料として発電を行う燃料電池3とから主に構成されている。
【0004】また、この改質部2内には水素リッチガスを生成する改質部2aと共に、CO選択除去部2bが設けられており、水素リッチガスの生成過程で副反応生成物として生じた一酸化炭素(CO)をアルミナ又はシリカ−アルミナ等の触媒によって酸化し、これを無害な二酸化炭素に改質するようになっている。
【0005】すなわち、この燃料電池3は燃料極3aと空気極3bとからなる多孔性電極間に電解質3cを備え、一方の燃料極3a側に上記改質部2で得られた水素リッチガスを流すような構成となっているが、この水素リッチガス中に活性な一酸化炭素が含まれていると、この一酸化炭素によって電極が被毒してしまい、その機能を著しく悪化させてしまうおそれがあるため、予めこのCO選択除去部2bで水素リッチガス中に含まれている一酸化炭素を酸化させ、そのCO濃度を減少させるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このCO選択除去部2bに充填されている従来のアルミナ又はシリカ−アルミナ等のCO酸化触媒は、一般に約200〜400℃の反応温度範囲で使用され、しかも反応温度が高いほど酸化活性が高まり、水素リッチガス中の一酸化炭素を効率良く酸化除去することが知られている。
【0007】しかしながら、従来のCO酸化触媒では、この反応温度が高くなるにつれて一酸化炭素のみならず燃料となる水素までも酸化してしまい、一酸化炭素のみを選択的に酸化除去することは困難であった。
【0008】そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、燃料電池の電極被毒を招く水素リッチガス中の一酸化炭素のみを効率的に酸化除去することができる新規なCO酸化触媒及びこれを用いたCO選択除去方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明は、燃料電池システムのメタノール改質部で生成された水素リッチガス中のCOを選択的に酸化して除去するためのCO酸化触媒において、このCO酸化触媒として、アルミナ担体又はシリカ−アルミナ担体に、I族金属(Cu,Ag,Au),V族金属(V,Sb,Bi),VI族金属(Cr,Se,Mo,W),VII 族金属(Mn,Re),VIII族金属(Fe,Co,Ru,Pd,Pt)のいずれか或いはこれら金属及び酸化物のうち任意の組み合わせからなる混合物を担持してなるものである。
【0010】そして、このような本発明のCO酸化触媒を使用することにより、約70〜200℃前後の比較的低い温度域で水素リッチガス中の一酸化炭素のみを、電極の被毒を起こさない無害な二酸化炭素に効率的に酸化させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明を実施する好適一形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0012】図1は、本発明に係るCO酸化触媒を用いたCO選択除去部2bの実施の一形態を示したものであり、図中4は、本発明に係るCO酸化触媒5を内部に収容したケーシング、6はこのケーシング5内に上記改質部2aで生成された水素リッチガスを導入するためのガス導入口、7はこのケーシング5内に酸化用の空気(酸素)を導入する酸素導入口、8は一酸化炭素除去後の水素リッチガスを排出するためのガス出口である。
【0013】このCO酸化触媒5は、図2に示すように、直径0.5〜3mmの球形もしくは円筒形、又はハニカム形状(1〜0.05mm間隔)をしたアルミナ担体又はシリカ−アルミナ担体(Al2 3 ,Al2 3 −SiO2 )9の表面に、CO酸化触媒金属又はその酸化物10を層状に担持させたものである。
【0014】そして、このCO酸化触媒金属としては、I族金属(Cu,Ag,Au),V族金属(V,Sb,Bi),VI族金属(Cr,Se,Mo,W),VII 族金属(Mn,Re),VIII族金属(Fe,Co,Ru,Pd,Pt)のいずれか或いはこれら金属及び酸化物のうち任意の組み合わせからなる混合物からなっている。
【0015】また、CO酸化触媒5の製造方法、すなわち、このアルミナ担体又はシリカ−アルミナ担体9に対するCO酸化金属10の担持方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属の塩水溶液に単体を浸して含浸させることにより、容易に得ることができる。
【0016】そして、このCO酸化金属10としてVIII族金属のRu酸化物を用いたCO酸化触媒5を用いて水素リッチガス中の一酸化炭素及び水素の転化率を調べたところ、図3に示すように、一酸化炭素の転化率(2CO+O2 →2CO2 )にあっては触媒温度が70℃を過ぎたあたりから一気に上昇し、120〜130℃付近で90%近い転化率が得られた。一方、水素の転化率(2H+O2 →H2 O)にあっては、200℃付近までは殆ど転化率の変化がみられず、250℃を過ぎたころから徐々に上昇するような現象がみられた。
【0017】この結果からも分かるように、本発明のCO酸化触媒5にあっては、約70〜200℃といった比較的低い温度であってもCOを効率良く酸化除去することが可能となるため、本発明のCO酸化触媒5を用い、かつ約70〜200℃の比較的低温で処理することにより、水素リッチガス中の一酸化炭素のみを選択して効率良く除去することができる。例えば、従来のメタノール改質器にあっては、改質後の水素リッチガス中には約1000ppm前後の一酸化炭素が含まれているが、本発明のCO酸化触媒5を用いれば、燃料電池の電極被毒を招くことのない、約100ppm程度までCO濃度を低減することができる。
【0018】尚、これらの現象は、VIII族金属のRuのみでなく、上述したようなI族金属(Cu,Ag,Au),V族金属(V,Sb,Bi),VI族金属(Cr,Se,Mo,W),VII 族金属(Mn,Re),VIII族金属(Fe,Co,Ru,Pd,Pt)及びその酸化物のいずれかであっても同様な効果が得られ、また、これら金属及びその酸化物のうち任意の組み合わせからなる混合物であっても同様である。
【0019】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、改質後の水素リッチガス中の一酸化炭素のみを効率良く選択除去することができる。この結果、燃料電池の電極の被毒を未然に回避して燃料電池システムの信頼性を高めることができると共に、CO選択除去部における水素の減少も回避することができるため、燃料不足による発電効率の低下等といった不都合を招くことがない等といった優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るCO酸化触媒を備えたCO選択除去部の実施の一形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係るCO酸化触媒の実施の一形態を示す一部破断斜視図である。
【図3】CO酸化触媒金属としてVIII族金属のRuを用いたCO酸化触媒の転化率を示したグラフ図である。
【図4】従来の燃料電池システムの基本構成を示す概略図である。
【符号の説明】
2b CO選択除去部
4 ケーシング
5 CO酸化触媒
6 ガス導入口
7 酸素導入口
8 ガス出口
9 アルミナ又はシリカ−アルミナ担体
10 CO酸化金属又はその酸化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料電池システムのメタノール改質部で生成された水素リッチガス中のCOを選択的に酸化して除去するためのCO酸化触媒において、このCO酸化触媒として、アルミナ担体又はシリカ−アルミナ担体に、I族金属(Cu,Ag,Au),V族金属(V,Sb,Bi),VI族金属(Cr,Se,Mo,W),VII 族金属(Mn,Re),VIII族金属(Fe,Co,Ru,Pd,Pt)のいずれか或いはこれら金属及び酸化物のうち任意の組み合わせからなる混合物を担持してなることを特徴とする燃料電池システムCO酸化触媒。
【請求項2】 上記アルミナ担体又はシリカ−アルミナ担体が、直径0.5〜3mmの球形もしくは円筒形であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システムCO酸化触媒。
【請求項3】 上記燃料電池システムが、電気自動車用電源として用いられる車載用燃料電池システムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システムCO酸化触媒。
【請求項4】 燃料電池システムのメタノール改質部で生成された水素リッチガス中のCOをCO酸化触媒によって選択除去する方法において、このCO酸化触媒として上記請求項1又は2に記載のCO酸化触媒を用いると共に、その触媒反応温度を70〜200℃に設定して上記水素リッチガス中のCOを選択除去する用にしたことを特徴とする燃料電池システムCO選択除去方法。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−262899(P2000−262899A)
【公開日】平成12年9月26日(2000.9.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−78325
【出願日】平成11年3月23日(1999.3.23)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】