説明

物体の向き検出システム

【課題】簡易かつ安価で正確に物体の姿勢を検出できる物体の向き検出システムを提供することを目的とする。
【解決手段】測定対象物30の両面にはRFタグユニット20a,20bが取り付けられている。RFタグユニット20a,20bは、それぞれRFタグ21a,21bと高透磁率シート22a,22bと電磁波遮断シート23a,23bとが順に積層されている。RFタグリーダ10の送信信号生成部11で生成された送信信号は、アンテナ13から電磁波として放射される。受信信号判定部12は、RFタグ21a,21bからの応答の有無に基づいて、測定対象物30のいずれの面がRFタグリーダ10のアンテナ13側を向いているのか判定し、うつ伏せ状態を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の姿勢を検出する物体の向き検出システムに係り、特に、RFID(Radio Frequency IDentification)による物体の向き検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の向きを検出するための技術として、例えば、測定対象物の1つの面、例えば背中側にRFタグが貼付された衣服を対象となる人間に着用させ、RFタグリーダのアンテナ部分が配置されたシートの上に寝かせる。このとき、対象となる人間がうつ伏せになると、シートに配置されたRFタグリーダがRFタグからの信号を受信しなくなるため、対象となる人間がうつ伏せになったと検出し、スピーカや表示装置で直接報知したり、有線や無線により遠隔地に設けた報知部で報知したりすることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
他にも、薄膜容器に容量の約半分程度の導電性液体を封入し、封入した導電性液体にリード端子が浸されるときに電波を発信する2つの高周波送信部を薄膜容器に取り付け、その薄膜容器を対象となる人間の額や胸部表面に貼り付ける。そして、導電性液体の傾斜により高周波送信部の2つともから電波が発信されない場合、対象となる人間がうつ伏せ状態であると判定し、うつ伏せ状態が予め設定した時間以上経過したときに警報を出力する技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−212053号公報
【特許文献2】特開2007−195837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、うつ伏せ状態か仰向け状態かを検出する際に、腹側か背中側かの一方の面にだけRFタグを貼付する構成である。そのため、例えば体が小さい乳児の場合、うつ伏せ状態と仰向け状態とでRFタグリーダとRFタグ間の交信距離の差が小さいため、うつ伏せ状態の検出を行うにあたり、うつ伏せ状態であると判定する交信距離の感度調整が難しく、正確にうつ伏せ状態を検出しにくい。
【0006】
また、特許文献2の技術では、うつ伏せ状態を検知するために特殊な専用装置を作成する必要があるため、装置が複雑で高価となってしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易かつ安価で正確に物体の姿勢を検出できる物体の向き検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、非接触でRFタグと交信を行うRFタグリーダによって物体の向きを検出する物体の向き検出システムであって、前記RFタグは、前記物体の中心に対して互いに対向する両面に取り付けられ、前記RFタグリーダは、前記RFタグからの応答に基づいて前記RFタグが取り付けられた前記物体の面が前記RFタグリーダの位置する方向を向いていると判定することを特徴とする。
また、前記RFタグリーダは、一方のRFタグのみから応答を受信した場合に、該RFタグの取り付けられた前記物体の面が前記RFタグリーダの位置する方向を向いていると判定してもよい。
また、前記RFタグは、高透磁率シートと電波遮断シートとが積層されてもよい。
また、前記RFタグは、前記電波遮断シートに対して前記物体の外側に面してもよい。
また、前記物体に取り付けられた複数の前記RFタグは、互いに異なるIDを有していてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の物体の向き検出システムによれば、簡易かつ安価で正確に物体の姿勢を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る物体の向き検出システムWの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る物体の向き検出システムWにおいて、測定対象物の向きを判定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態1に係る物体の向き検出システムWにおいて、図1の状態から測定対象物が図中右方向に90度横転した状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る物体の向き検出システムXにおいて、RFタグリーダがメリーゴーラウンド玩具に内蔵されている例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る物体の向き検出システムXにおいて、RFタグユニット20が衣服63に装着されている様子を示す図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る物体の向き検出システムYの全体構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る物体の向き検出システムYのRFタグリーダの構成を示す図である。
【図8】本発明の実施形態4に係る物体の向き検出システムZの全体構成を示す図である。
【図9】本発明の実施形態4に係る物体の向き検出システムZにおいて、ロボットアーム型のRFタグリーダの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施形態4に係る物体の向き検出システムZにおいて、測定対象物の向きを判定し、判定結果に基づいて測定対象物の向きを変える処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
まず、図1を参照して、本実施形態の物体の向き検出システムWの全体構成を説明する。
【0012】
RFタグリーダ10は、送信信号生成部11と受信信号判定部12とアンテナ13とを備えている。送信信号生成部11は、RFタグ21a,21b(以下、RFタグ21a,21bを区別しない場合、RFタグ21とする)に送信する送信信号を生成し、生成した送信信号をアンテナ13に出力する。アンテナ13は、取得した送信信号を送信波(電磁波)として放出するとともに、RFタグ21からの応答波(電磁界)を受信し、受信信号として受信信号判定部12に出力する。
【0013】
受信信号判定部12は、不図示のメモリにRFタグ21が測定対象物30のいずれの面に貼付されているかを予め記憶しており、同一測定対象物30に貼付されているRFタグ21の内、いずれのRFタグ21から応答があったかに基づいて測定対象物30の向きを判定する。例えば、受信信号判定部12は、2つのRFタグ21a,21bが測定対象物30の中心に対して対向する両面に貼付されている場合に、一方のRFタグ21aから応答があり、他方のRFタグ21bから応答がないときに、RFタグ21aが貼付されている面が測定対象物30の上面であると予め記憶されていれば、測定対象物30が上を向いていると判定する。なお、図1では、RFタグリーダ10側を測定対象物30の上面とし、測定対象物30を挟んで上面に対向する面を下面として、上面及び下面にそれぞれRFタグ21a,21bが取り付けられている。
【0014】
RFタグ21は、IC(集積回路)及びアンテナ(いずれも不図示)を備えており、RFタグリーダ10からの電磁波により誘導起電力を得て、自身のID番号等を含む応答波をRFタグリーダ10に送信する。
【0015】
RFタグ21は、向きを検出したい測定対象物30の中心に対して対向する少なくとも両面に貼付等して取り付けられる。RFタグ21が貼付される面は、測定対象物30の対向する2面以上であればよく、3面や4面など多数面であってもよい。すなわち、RFタグ21は、2つ以上測定対象物に取り付けてもよい。このように、測定対象物30の両面にRFタグ21を貼付する場合、測定対象物30が小さい(厚みが薄い)ときに、交信距離の感度調整によっては、RFタグリーダ10からの電磁波が測定対象物30を貫通し、両面のRFタグ21と交信できてしまうことがある。
【0016】
この場合、例えばRFタグ21bが測定対象物30を貫通した電磁波で応答しないように、すなわち、両面に添付されたRFタグ21の内、一方のRFタグ21aだけが応答するようにするには、RFタグ21が電磁波遮断シート23に対して測定対象物30の外側に面すればよい。つまり、測定対象物30とRFタグ21との間に電磁波を遮る電磁波遮断シート23(図中23a,23b)を挟めばよい。
【0017】
しかし、RFタグ21は、電磁波遮断シート23に接していると正常に動作しない。これは、電磁波遮断シート23が金属でできていることに関係している。磁界が金属を貫通すると金属に渦電流が流れ、渦電流により金属を貫通した磁界と逆の向きの反磁界を生じるため、交信用の磁界が弱まって交信距離が著しく短くなるからである。
【0018】
このため、本実施形態では、フェライトに代表される透磁率の高い材質である高透磁率シート22(図中22a,22b)をRFタグ21と電磁波遮断シート23との間に挿入した積層構造とする。これにより、交信用の磁界は、反磁界の影響を受けずに、高透磁率シート22を介してRFタグ21のアンテナ又はRFタグリーダ10のアンテナ13と鎖交できるとともに、測定対象物30を貫通した電磁波にRFタグ21bが反応せずにすむ。以下、RFタグ21と高透磁率シート22と電磁波遮断シート23とが積層されたものを、RFタグユニット20a,20b(以下、RFタグユニット20a,20bを区別しない場合、RFタグユニット20とする)として説明する。
【0019】
RFタグユニット20は、人体等の測定対象物30に取り付けたときに違和感を感じさせないように、薄く柔軟性のある構造とするとよい。例えば、電磁波が貫通しない程度の網目からなるメッシュ状構造で電磁波遮断シート23を生成したり、エポキシ樹脂にフェライト粉を混練した薄いフィルム状構造で高透磁率シート22を生成したり、RFタグ21も柔軟性のある薄膜形状にするとよい。
【0020】
このように、RFタグユニット20は、電磁波遮断シート23を備えているので、各RFタグユニット20を同一の共振周波数とし、RFタグリーダ10からその単一共振周波数で送信波を出力しても、測定対象物30を貫通した電磁波によって誤検知することがないので、簡単に測定対象物30に取り付けて設定することができる。
【0021】
次に、図1及び図2を参照して、RFタグリーダ10が測定対象物30の向きを判定する処理の流れを説明する。予め、受信信号判定部12には、RFタグ21aが測定対象物30の上面に、RFタグ21bが測定対象物30の下面に取り付けられていると記憶されているものとする。
【0022】
まず、送信信号生成部11は、送信信号を生成し、アンテナ13に出力する(ステップS10)。アンテナ13は取得した送信信号を送信波として放射する(ステップS11)。このとき図1において、RFタグリーダ10から電磁波が放射されると、RFタグ21aは、RFタグリーダ10側を向いているのでRFタグリーダ10からの電磁波を遮る物がなく、電磁波を受信しRFタグリーダ10に応答波を返す。一方、RFタグ21bは、RFタグリーダ10からの電磁波を受信する方向に電磁波遮断シート23bがあるので、電磁波を受信することができず、RFタグリーダ10への応答を行わない。なお、このときRFタグ21a,21bは、それぞれ異なるIDで応答している。
【0023】
したがって、この場合、RFタグリーダ10の受信信号判定部12は、応答してきたRFタグ21のIDに基づいて、測定対象物30に貼付された2つのRFタグ21a,21bの内、RFタグ21aのみから応答があり、RFタグ21bから応答がないと判定する(ステップS12)。このとき、受信信号判定部12は、アンテナ13から送信波が放射されてから所定時間経過するまでの間、RFタグ21からの応答を待ち受け、所定時間経過しても応答の無いRFタグ21を応答無しと判定すればよい。受信信号判定部12は、RFタグ21からの応答の有無に基づいて、測定対象物30の向きを検出する(ステップS13)。すなわち、図1において、測定対象物30は上向き(仰向け状態)であると検出される。
【0024】
このように、測定対象物30の両面にRFタグ21を貼付することにより、例えば乳児のように測定対象物30の大きさ(厚み)が小さい場合にも、いずれのRFタグ21から応答があったかを判定することで、簡単かつ安価で正確に測定対象物30の向きを検出できる。
【0025】
図3は、図1の状態から測定対象物30が図中右方向に90度横転した状態を示す。このとき、RFタグ21a,21bはともにRFタグリーダ10からの電磁波を受信できるので、RFタグ21a,21bの両方が応答波を返す。受信信号判定部12は、RFタグ21a,21bの両方から応答があることから、測定対象物30がうつ伏せ状態でないと検出する。なお、RFタグリーダ10は、このとき測定対象物30が横向き状態であると検出してもよい。また、受信信号判定部12が、測定対象物30を横向き状態であると判定する角度は90度に限定されず、RFタグ21a,21bの両方が応答波を返し得る角度であることは言うまでもない。
【0026】
なお、本実施形態の物体の向き検出システムWでは、RFタグリーダ10が少なくとも2つ以上のRFタグ21を一括読み取りする構成であるため、複数のRFタグ21が一度に応答して混信(衝突)が生じないようにするとよい。例えば、各RFタグ21には、コリジョンが発生しないIDをそれぞれ付与するとよい。
【0027】
また、RFタグリーダ10とRFタグ21との交信は、電磁誘導方式以外にも、電磁結合方式や電波方式で行ってもよい。ただし、RFタグ21は、RFタグリーダ10との交信距離が近距離であること、及び人体の近傍に装着される可能性があることから、電源を内蔵しないパッシブ型がよい。
【0028】
また、図示しないが、高透磁率シート22と電磁波遮断シート23とを用いずに、RFタグ21の受信強度に基づいて測定対象物30の向きを判定することもできる。RFタグリーダ10と両面のRFタグ21のそれぞれとの交信距離には測定対象物30の厚みの分だけ差があるので、RFタグリーダ10のアンテナ13がそれぞれのRFタグ21から受信する電磁波の受信強度に差がでる。このことから、受信信号判定部12は、両面のRFタグ21から応答があった場合、両面のRFタグ21からの電磁波の受信強度を比較し、最も受信強度の高いRFタグ21がRFタグリーダ10のアンテナ13側を向いていると判定してもよい。このとき、RFタグ21は測定対象物30の両面に貼付されているので、細かく受信感度の調整を行わなくても、2つのRFタグ21からの受信強度を比較することで、簡易に測定対象物30の向きを判定できる。
【0029】
また、本実施形態では、予め各RFタグ21が測定対象物30のいずれの面に貼付されているかをRFタグリーダ10に記憶させ、RFタグリーダ10からの送信波に対してRFタグ21の応答があるか否かにより、測定対象物30の向きを判定する構成を説明したが、RFタグリーダ10ではなく、RFタグ21に記憶させてもよい。具体的には、測定対象物30のいずれの面に貼付されているかをRFタグ21自身に記憶させ、RFタグリーダ10からの送信波に対して応答可能なRFタグ21が自身の貼付している面を応答する構成とすれば、受信信号判定部12は応答してきたRFタグ21が貼付されている面を知ることができるので、測定対象物30の向きを判定できる。
【0030】
以上、上述した本実施形態によれば、測定対象物30の両面に貼付されたRFタグ21からの応答を受信信号判定部12で判定することにより測定対象物30の向きを検出しているので、測定対象物30が小さいためにうつ伏せ状態と仰向け状態とでRFタグリーダ10とRFタグ21との間の交信距離に差がない場合も正確に判定できる。また、RFタグ21には、高透磁率シート22と電磁波遮断シート23とが積層されているので、測定対象物30を貫通した電磁界によって両面に貼付されたRFタグ21が反応することもなく、正確に測定対象物30の向きを判定できる。
【0031】
<実施形態2>
本実施形態は、実施形態1におけるRFタグリーダ10とRFタグユニット20とを乳児等の向きを検出する場合に適用した例である。本実施形態において、RFタグリーダはメリーゴーラウンド玩具に内蔵されており、RFタグ21は乳児等の衣服63に装着されている。なお、上述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
図4は、本実施形態の物体の向き検出システムXの全体を示す構成図である。乳児等用のベッド62には、上下面(衣服63の腹側と背中側)にRFタグユニット20が装着された衣服63を着用した乳児等が寝かされている(図中で乳児等は省略して示す)。また、乳児等用のベッド62には、その四方を覆うように安全柵61が設けられており、安全柵61の上部にメリーゴーラウンド玩具型のRFタグリーダ50が取り付けられている。
【0033】
メリーゴーラウンド玩具型のRFタグリーダ50は、上述したアンテナ13と送信信号生成部11と受信信号判定部12に加え、タイマとスピーカと乳児等用のベッド62の安全柵61への取付具とを備えている(いずれも不図示)。
【0034】
アンテナ13は、メリーゴーラウンド玩具の回転部の先端54に内蔵されており、メリーゴーラウンド玩具型のRFタグリーダ50が安全柵61に配置されることにより、乳児等の上面から電磁波を放出する。送信信号生成部11にはタイマが接続されており、RFタグリーダ50が電磁波を放出する周期を生成する。また、受信信号判定部12にはスピーカが接続されており、受信信号判定部12の判定結果に応じて、通常時、すなわちうつ伏せ状態が検知されないときはメリーゴーラウンド玩具として音楽を流し、うつ伏せ状態であることが検知されたときにアラーム音を音楽に優先させて出力する。取付具は、安全柵61に固定可能に構成されていればよく、ネジ止め式等その形状を問わない。
【0035】
図5は、RFタグユニット20が衣服63に装着されている様子を示す図であり、図5(a)は、衣服63の前面(腹側)にRFタグユニット20aが装着されている様子を示し、図5(b)は、衣服63の裏面(背中側)にRFタグユニット20bが装着されている様子を示す。RFタグユニット20は、上記実施形態と同様に、電波遮断シート23、高透磁率シート22、RFタグ21の順に積層されており、電波遮断シート23が衣服63側となるように衣服63の両面に装着される。
【0036】
RFタグユニット20を装着する衣服63の形状は、少なくとも2つのRFタグユニット20を腹側と背中側にそれぞれ配置できれば形状に制限はなく、肌着やTシャツ等だけでなく、例えばゼッケンのような形状でもよい。また、衣服63が洗濯されることを考慮し、RFタグユニット20は着脱可能にするとよい。例えば、衣服63の装着箇所にポケット等を設け、そのポケットの中にRFタグユニット20を格納すれば、洗濯時にRFタグユニット20を取外せるのでRFタグユニット20の破損を防止できる。
【0037】
図4及び図5を参照して、具体的に、本実施形態における物体の向き検出システムXの動作を説明すると、まず、送信信号生成部11は、タイマによって生成された周期に応じて送信信号を生成しアンテナ13から電磁波として送信波を出力する。乳児等がうつ伏せ状態のとき、背中側に装着されたRFタグユニット20bは、RFタグリーダ50からの電磁波を遮る物がないので、電磁波を受信しRFタグリーダ50に応答波を返す。一方、腹側に装着されたRFタグユニット20aは、RFタグリーダ50からの電磁波を受信する方向に電磁波遮断シート23aがあるので、電磁波を受信することができず、RFタグリーダ50への応答を行わない。なお、このとき各RFタグユニット20はそれぞれ異なるIDで応答する。
【0038】
したがって、この場合、RFタグリーダ50の受信信号判定部12は、異なるIDで応答するRFタグユニット20に基づいて、測定対象物30に貼付された2つのRFタグ21の内、背中側に装着されたRFタグ21bのみから応答があり、腹側に装着されたRFタグ21aから応答がないことから、乳児等(測定対象物30)がうつ伏せ状態(下向き)であると判定する。スピーカは、受信信号判定部12が乳児等をうつ伏せ状態であると判定したことを受けて、音楽を出力していた場合は、その音量に優先させて、乳児等がうつ伏せ状態であることを示すアラーム音を出力する。
【0039】
このように、本実施形態によれば、乳児など自分の力で寝返りをする力が弱い又は無い者の姿勢を監視し、うつ伏せ状態となったときにスピーカからアラーム音を出力して、例えば保護者など周囲に注意を働きかけることができる。また、タイマにより周期的に送信信号を生成させているので、定期的に測定対象物30の向きを監視することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、RFタグリーダがメリーゴーラウンド玩具と一体化している例を示したが、例えば、安全柵61上部の矩形の枠組みにRFタグリーダのアンテナ13を配置し、RFタグリーダの本体部(アンテナ13以外の構成要素)を安全柵61近傍に配置してもよい。
【0041】
また、RFタグリーダが配置される位置は、測定対象物30の上部から測定対象物30へ電磁波を放出できる位置に限らず、例えば測定対象物30の下部から測定対象物30へ電磁波を放出できる位置であってもよい。
【0042】
例えば、RFタグリーダのアンテナ13を、ベッド62のマットに内蔵し、RFタグリーダの本体部をマットの近傍に配置してもよい。これにより、安全柵61が不要となり、例えば床に直接敷いた布団にも適用することができる。この場合、上記した実施形態とは逆に、腹側に装着されているRFタグユニット20aから応答があり、背中側に装着されているRFタグユニット20bから応答がないときに、測定対象物30がうつ伏せ状態であると判定される。
【0043】
また、測定対象物の側面へRFタグリーダから電磁波を放射するようにRFタグリーダを配置することで、測定対象物30の上下関係だけでなく側面の向きを判定できる。
【0044】
<実施形態3>
本実施形態は、複数の測定対象物30の向きを検出し管理するものである。上述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
図6は、本実施形態の物体の向き検出システムYにおける全体構成を示す図である。各RFタグリーダ80は、そのアンテナ13がマット70に内蔵されており、アンテナ13以外の構成要素を有する本体部がマット70の近傍に配置されている。なお、本体部の配置される場所は、ネットワークケーブル92と接続可能な位置であればよい。また、各RFタグリーダ80は、ネットワークケーブル92によりハブ91を介して管理サーバ90に接続されている。図6では図示していないが、両面にRFタグユニット20が取り付けられた測定対象物30が、各マット70の上に寝かされているものとする。
【0046】
図7を参照して、具体的にRFタグリーダ80の構成及び動作を説明する。RFタグリーダ80は、ネットワークインタフェース部81と送信信号生成部11と受信信号判定部12とアンテナ13とを備えている。送信信号生成部11と受信信号判定部12とは、ネットワークインタフェース部81及びアンテナ13に接続されている。管理サーバ90は、ネットワークケーブル92により、ハブ91及びネットワークインタフェース部81を介して、送信信号判定部11に送信信号を出力するタイミング(周期)を出力する。また、管理サーバ90は、ネットワークケーブル92により、ハブ91及びネットワークインタフェース部81を介して、受信信号判定部12からうつ伏せ状態であるか否かの判定結果を取得して、取得した判定結果がうつ伏せ状態であるときに、スピーカや表示装置等の報知手段により、その旨を音や文字で報知して監視者に知らせる。なお、管理サーバ90は、各RFタグリーダ80を識別可能であり、各RFタグリーダ80の制御を行ってもよい。また、管理サーバ90は、ネットワークケーブル92のように有線ではなく、無線によってRFタグリーダ80と接続してもよい。また、送信信号判定部11は、管理サーバ90からの周期に非同期で、測定対象物30の向きを検出したいタイミングで送信信号を生成し、アンテナ13から出力してもよい。
【0047】
例えば、腹側にRFタグユニット20aを、背中側にRFタグユニット20bを装着した衣服を着用した測定対象となる人間が、アンテナ13を内蔵したマット70の上に寝かされているとする。当該人間が仰向け状態の場合、RFタグリーダ80からの電磁波に対して、受信信号判定部12は、それぞれ異なるIDで応答するRFタグユニット20に基づいて、背中側に装着されたRFタグユニット20bから応答があり、腹側に装着されたRFタグユニット20aから応答がないと判定する。そして、受信信号判定部12は、RFタグユニット20からの応答に基づいて、当該人間が仰向き状態であることを検出し、ネットワークインタフェース部81及びハブ91を介して、管理サーバ90に当該人間が仰向き状態であることを送信する。一方、当該人間がうつ伏せ状態の場合、RFタグリーダ80からの電磁波に対して、受信信号判定部12は腹側に装着されたRFタグユニット20aから応答があり、背中側に装着されたRFタグユニット20bから応答がないと判定するので、当該人間がうつ伏せ状態であると判定し、ネットワークインタフェース部81及びハブ91を介して、管理サーバ90に当該人間がうつ伏せ状態であることを送信する。管理サーバ90は、受信信号判定部12からの通知により、うつ伏せ状態である当該人間のいる場所及び当該人間がうつ伏せ状態であることを報知する。
【0048】
このように、例えば複数の人間の状態を管理する必要がある病院や保育所において、管理対象となる人間がうつ伏せ状態であるか否かを管理サーバ90で一括管理することができる。また、うつ伏せ状態であると判定される頻度の高い人間については、送信信号生成部11の送信信号を生成する周期の設定を通常の設定よりも短くなるようにしてもよい。
【0049】
<実施形態4>
本実施形態は、上述したRFタグリーダ10とRFタグユニット20とを物流過程における荷物の向きを管理する場合に適用した例である。上述した実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
図8を参照して本実施形態の物体の向き検出システムZにおける全体の構成を説明する。両側面にRFタグユニット20が取り付けられた測定対象物30である荷物は、ベルトコンベヤー110に所定間隔で載せられており、ベルトコンベヤー110の流れに従って移動する際にベルトコンベヤー110の途中に設けられたロボットアーム型のRFタグリーダ100の前(図面中、RFタグリーダ100の奥側)を通過する。RFタグリーダ100は、ロボットアーム型をしており、ベルトコンベヤー110上を流れてくる荷物に取り付けられたRFタグユニット20と交信を行い、交信結果に基づいて荷物の向きを判定し、荷物が所定方向を向くようにアーム部102で荷物を回転させる。
【0051】
図9を参照して、具体的にロボットアーム型のRFタグリーダ100の構成を説明する。ロボットアーム型のRFタグリーダ100は、送信信号生成部11と受信信号判定部12とアンテナ13とアーム駆動部101とアーム部102とベルトコンベヤー駆動制御部103とを備えている。
【0052】
ベルトコンベヤー駆動制御部103は、ベルトコンベヤー110を駆動させる不図示のベルトコンベヤー駆動部に接続されており、受信信号判定部12により、荷物が所定方向を向いていないと判定されると、ベルトコンベヤー110の駆動を停止させ、また、荷物が所定方向を向いていると判定されると、ベルトコンベヤー110の駆動の停止を解除する。すなわち、荷物が所定方向を向いていないと判定された場合、その荷物が所定方向を向いていると判定されるまで、ベルコンベヤー110の動きは止まっており、荷物が所定方向を向くまでロボットアーム型のRFタグリーダ100の前から荷物は動かない。なお、ベルトコンベヤー110の動作する速度は、荷物がRFタグリーダ100の前を通過する際に、ベルトコンベヤー110の駆動を停止させなくても、測定対象物30の向きを判定するのに十分な時間があるものとする。
【0053】
送信信号生成部11は、送信信号を生成しアンテナ13から送信波を出力させる。送信信号生成部11が送信信号を生成するタイミングは所定周期(少なくとも荷物がRFタグリーダ100の前を通過する際に送信波が放射されるタイミング)でもよいし、常時でもよい。RFタグユニット20は、電磁波を受信するとRFタグリーダ100に応答波を返す。受信信号判定部12は、各RFタグユニット20が同一測定対象物のいずれの面に取り付けられているのか測定対象物毎に関連付けて記憶している。受信信号判定部12は、それぞれ異なるIDで応答するRFタグユニット20からの応答に基づいて、荷物の向きを判定し、所定方向であるか否かを判定する。アーム駆動部101は、受信信号判定部12の判定結果に基づいて、アーム部102を駆動させて荷物が所定方向となるように荷物の向きを回転させる。
【0054】
より具体的に、ロボットアーム型のRFタグリーダ100の動作について図8〜図10を参照しながら説明する。なお、図8において、RFタグユニット20aが取り付けられている面がRFタグリーダ100のアンテナ13側を向く方向を所定方向とし、ロボットアーム型のRFタグリーダ100は、RFタグユニット20aが取り付けられている面がRFタグリーダ100側を向くように、荷物の向きを変えるものとする。
【0055】
まず、送信信号生成部11は、送信信号の生成を行い(ステップS20)、荷物がRFタグリーダ100の前を通過する際にアンテナ13から送信波を放射する(ステップS21)。このとき、RFタグリーダ100の前に位置する荷物に貼付されたRFタグユニット20bは、RFタグリーダ100側を向いて荷物に取り付けられているので、送信波に対して応答波を返す。一方、RFタグユニット20bに対向する面に貼付されたRFタグユニット20aは、電磁波遮断シート23aによりRFタグリーダ100からの電磁波を受信できず、RFタグリーダ100へ応答しない。
【0056】
したがって、受信信号判定部12は、所定時間経過したときに、応答してきたRFタグユニット20のIDに基づいて、RFタグユニット20bから応答があり、RFタグユニット20aから応答がなかったと判定する(ステップS22)。受信信号判定部12は、RFタグユニット20からの応答の有無に基づいて、荷物の向きが所定方向(RFタグユニット20aが貼付されている面)でないと判定する(ステップS24でNo)。
【0057】
ステップS24でNo、すなわち、受信信号判定部12が測定対象物30の向きが所定方向でないと判定したのを受けて、ベルトコンベヤー駆動制御部103は、ベルトコンベヤー110の駆動を停止する(ステップS25)。そして、アーム駆動部101は、アーム部102を駆動させ荷物の向きを所定方向に回転させる(ステップS26)。その後、処理は、送信信号を生成するステップS20へ戻され、測定対象物30の向きが所定方向となるまで、ステップS20からステップS26が繰り返される。
【0058】
一方、ステップS24でYes、すなわち、受信信号判定部12が測定対象物30の向きが所定方向であると判定した場合、ステップS27に進み、ベルトコンベヤー駆動制御部103は、ベルトコンベヤー110の駆動を停止している場合は、その停止を解除し、ベルトコンベヤー110の駆動を再開する。その後、処理は、送信信号を生成するステップS20に戻り、ベルトコンベヤー110を流れてくる次の荷物の向きを検出することを繰り返す。
【0059】
このように、本実施形態によれば、測定対象物30の向きを検出して、測定対象物30が所定方向となるように向きを変えることができる。これにより、例えば物流過程の中で複数の測定対象物30の向きを一定方向に揃えることができるので、宛名のラベル貼りなど方向性を必要とする作業が容易となる。
【0060】
以上、本発明を概説すると、本発明は、非接触でRFタグと交信を行うRFタグリーダによって物体の向きを検出する物体の向き検出システムであって、前記RFタグは、前記物体の中心に対して互いに対向する両面に取り付けられ、前記RFタグリーダは、前記RFタグからの応答に基づいて前記RFタグが取り付けられた前記物体の面が前記RFタグリーダの位置する方向を向いていると判定することを特徴とする。
また、前記RFタグリーダは、一方のRFタグのみから応答を受信した場合に、該RFタグの取り付けられた前記物体の面が前記RFタグリーダの位置する方向を向いていると判定してもよい。
また、前記RFタグは、高透磁率シートと電波遮断シートとが積層されてもよい。
また、前記RFタグは、前記電波遮断シートに対して前記物体の外側に面してもよい。
また、前記物体に取り付けられた複数の前記RFタグは、互いに異なるIDを有していてもよい。
また、前記物体のうつ伏せ状態を検出したときに報知する報知手段を備えてもよい。
また、前記RFタグリーダに接続するネットワーク装置を備え、前記RFタグリーダは、前記ネットワーク装置により制御されてもよい。
また、前記物体の向きを変える回転手段を備え、前記回転手段は、前記RFタグリーダによって判定された前記物体の面が向いている方向に応じて前記物体の向きを変えてもよい。
また、前記RFタグリーダは、複数の前記RFタグから応答があった場合に、最も受信強度の高い前記RFタグが取り付けられた前記物体の面が前記RFタグリーダの位置する方向を向いていると判定してもよい。
【0061】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々様々に変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10,50,80,100・・・RFタグリーダ
11・・・送信信号生成部
12・・・受信信号判定部
13・・・アンテナ
20a,20b・・RFタグユニット
21a,21b・・RFタグ
22a,22b・・高透磁率シート
23a,23b・・電磁波遮断シート
30・・・測定対象物
61・・・安全柵
62・・・ベッド
63・・・衣服
70・・・マット
81・・・ネットワークインタフェース部
90・・・管理サーバ
91・・・ハブ
92・・・ネットワークケーブル
110・・ベルトコンベヤー
101・・アーム駆動部
102・・アーム部
103・・ベルトコンベヤー駆動制御部
W,X,Y,Z・・・物体の向き検出システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触でRFタグと交信を行うRFタグリーダによって物体の向きを検出する物体の向き検出システムであって、
前記RFタグは、前記物体の中心に対して互いに対向する両面に取り付けられ、
前記RFタグリーダは、前記RFタグからの応答に基づいて前記RFタグが取り付けられた前記物体の面が前記RFタグリーダの位置する方向を向いていると判定する
ことを特徴とする物体の向き検出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−111247(P2011−111247A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266410(P2009−266410)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】