説明

特に高視認性衣類のための難燃性材料を用いる材料構造

【課題】防護機能と同時に高視認性の衣類を製造するために使用することができる、少なくとも部分的に難燃性である材料の構造を提供すること。
【解決手段】本発明は、第1面(12)と第2面(14)とを有する、難燃性材料を少なくとも部分的に含む基本構造(10)を含む材料構造(1)に関する。基本構造の少なくとも第1面(12)は、基本構造(10)を可視的にする開放領域(50)を含む模様(20)でプリントされる。前記模様(20)は、発光色素(40)を含有する材料(30)で作製される。基本構造(10)の第1面(12)の可視表面は、模様(20)と組み合わされて、欧州規格EN471による要求基準に適合する、材料構造の色を発する。前記材料構造は、特に、反射性防護服を製造するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料構造に関し、特に、少なくとも部分的に難燃性材料を含み、特に高視認性の防護服を製造するために使用され得る衣類のための編織布の材料の製造のための材料構造に関する。本発明は、そのような材料構造を有する衣料品にも関係する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも部分的に特定の信号色を備えた高視認性衣類などの、非常に見えやすい作業衣が、種々の領域において必要とされる。信号色の使用は、作業衣の着衣者が、広範囲の環境条件において、発光性及び信号色の色彩効果により高度に認識可能であるという目的に特に役立つ。作業衣の着衣者を火及び熱などの危険な環境条件から防護するために、作業衣がさらに耐炎性などの防護機能を満たすこともしばしば不可欠である。そのような高視認性の防護服の使用領域は、特に、消防署及び救急隊において認められる。
【0003】
そのような高視認性衣類に使用されるべき「目立つ」材料に対する要求基準が、欧州規格EN471(2003)で制定されている。そこでは、目立つことが、衣類と衣類が浮き立って見える背景との間の強い対照、及び目立つ材料の大きい表面により増大することが特に規定されている。この目的のために、背景材料及び組み合わされた特性を有する材料について、3色の範囲が考慮される。使用される材料における色の性質に対する要求基準も制定されている。この目的のために、背景材料及び組み合わされた特性を有する材料に対する色彩要求基準が、3種の基本的な信号色、蛍光性黄色、蛍光性橙赤色及び蛍光性赤色についての標準色値成分(Normfarbwertanteile)及び輝度率を定める色テーブルにおいて、定められている。高視認性衣類がEN471の要求基準に対応するためには、その色値及び輝度率が、この色テーブルにおいて決められた値の範囲内になければならない。
【0004】
そのような高視認性衣類は種々の方法で製造することができる。第1に、衣類の比較的大きい表面へ対応する信号色による色づけを得るために、高視認性衣類の製造に使用される材料又は材料の最外層自体を、信号色で染色することができる。しかしながら、この製造方法は、ある種の材料及び材料組成物にのみ適する。特に、アラミドなどの特定の繊維又は糸から製造された、防火服に特に適する耐熱及び耐炎性衣類用の材料構造は、普通の染色方法では、信号色には相当苦労して僅かに染色できるか又は全く染色することができない。この理由で、高視認性衣類は、これらの使用領域のために利用できないか、又は防護服のよく考えて決めた位置に蛍光性の細長い布きれを縫い付けるなどの補助的な方便でしのぐかのいずれかである。他の可能性は、製造及び発光色素の急速な黄化という欠点のある色又はEN471に従わない色の使用で、一定の妥協をすることである。
【0005】
他の可能性は、消防署又は救急隊などの対応する施設で、火又は熱の影響下の使用条件のためにデザインされた信号色を使用しない防護服、及びEN471規格に適合して事故救助などの用途に使用し得る高視認性ベストなどの高視認性衣類の両方を手元に置くことである。しかしながら、これには、取得経費が増大するので比較的費用がかかり、また、防護服が耐熱性及び耐火性を満たし、且つ高視認性効果も有するという両方を必要とする使用条件、例えば、事故の状況における消火活動が時々ある。
【0006】
少なくとも部分的に、蛍光染色された背景材料との組合せで欧州規格EN471の要求基準に適合する色を有する材料から製造された、永続的防汚性を有する衣類が、国際出願公開WO01/66851A及び欧州特許第1,143,062A1号に記載されている。該物質は、糸材料からなり、その中で、撚糸は本質的に完全にシリコーン被覆で被覆されているが、シリコーン被覆は撚糸間の中間の間隙を完全に埋め尽くしてはいない。一方では、そのようにして製造された防護服がEN471の規格に適合する状況が達成され、他方では、中間の間隙が、着用の快適性を増進するために、一定の湿気の外部への輸送が可能になることを確実にする。シリコーン材料及び蛍光色顔料の量は、上記の色テーブルのEN471で制定された要求基準が満たされるように選択される。個々の糸の表面は、染色されたシリコーン材料により完全に封じられ、その場合、被覆された材料はもはや要求基準に従った耐炎症でも耐熱性でもないという欠点が生ずる。それに加えて、粘着性で硬直した感触のシリコーン糸の構造は必ずしも望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、防護機能と同時に高視認性の衣類を製造するために使用することができる、少なくとも部分的に難燃性である材料の構造を提供する課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特に請求項1の特徴による衣類用の材料編織布の製造を目的とした材料構造、並びに請求項32の特徴によるそのような材料構造を用いる衣料品に関係する。
【0009】
本発明による材料構造は、第1面と第2面とを有し、少なくとも部分的に難燃性材料を含む基本構造を含み、その中で、少なくとも基本構造の第1面は、基本構造の表面を見通せる開放領域を有する模様でプリントされている。この場合、模様は、発光色素を含有する材料を含み、その結果、基本構造の第1面の表面は、模様との組合せで、欧州規格EN471の要求基準を満たす材料構造の色を生ずる。
【0010】
欧州規格EN471の要求基準に適合する材料構造の信号色は、基本構造を模様と組み合わせて作ることができるので、本発明による材料構造は、高視認性機能を同時に有する難燃性防護服を製造するために使用することができる。同時に、難燃性材料を少なくとも部分的に含む基本構造により、この材料構造で製造された衣類の難燃性防護効果が得られる。特に、技術的理由でアラミド糸又は繊維の直接染色により得ることができない、EN471において要求される信号色は、このようにして得ることができる。
【0011】
原則として、材料構造の表面をほとんど任意の色の組み合わせで再染色することも、このようにして可能である。特に、EN471の色テーブルに記載された全ての色値及び輝度率を得ることができる。したがって、基本構造自体がEN471の要求基準に適合することは不必要であり、それは、染色された部分的被覆を基本構造の色と組み合わせて適用することにより基準を達成できるからである。基本構造の色/明度、模様づけされた被覆の色/明度、及び不透明度(%)というパラメータを適当に変えることにより、原則として、任意の色をつけることができる。基本構造の可視側を明色で染色し、模様を不透明に染色された部分的被覆としてデザインすれば、それが有利である。
【0012】
それに加えて、材料構造は、一定の湿気輸送が模様の開放領域を通して保証される状況を獲得し、その結果着用の快適性は、本質的に制限されない。模様づけされた被覆の水蒸気の透過性がないか又は限られたものに過ぎない場合については、低い不透明度が一般的に求められる。例えば、模様は、基本構造の表面のおよそ20%から80%、特に30%から70%の不透明度、及び、例えば、40%から60%の不透明度を有することができる。EN471による色の要求基準を満たす典型的模様は、特に、不透明度60%の格子模様として形成される、模様づけされた蛍光性橙色被覆を有する、基本構造としての蜜黄色のアラミド布地で達成される。
【0013】
しかしながら、本発明の他の実施形態においては、模様が格子模様又は水玉模様としてデザインされることも可能である。例えば、基本構造は、アラミド、ビスコース、及び/又はポリイミドから製造することができる糸又は繊維を含むことができる。例えば、基本構造は、アラミド糸から織られ、縦編みされ又は編まれて作製された材料、又はアラミド繊維から作製された不織布の材料から製造することができ、このようにして、高度に難燃性及び耐熱性の防護効果を保証することができる。
【0014】
本発明による材料構造は、特に、衣料品を製造するために、特に、高視認性機能を有する防護服、特に消防署のための耐炎性及び耐熱性防護服を製造するために使用することができる。そのような材料構造は、特に、ジャケット、コート、ズボン、シャツ、靴、手袋、帽子など衣類又は衣類の一部を製造するために使用することができる。
【0015】
本発明の一実施形態により、基本構造の可視側から見て外方に向いた基本構造の第2面は、防水性の水蒸気透過性機能層に接続するか、又は気密な(風を通さない)水蒸気透過性機能層に接続する。このようにして、本発明者らは、組合せで、防水性で気密であると同時に水蒸気透過性の機能層を通して、外部へある程度湿気を輸送することが可能な難燃性防護服を得る。一方で、そのような防護服の防護効果は増大し、他方で、着用の快適性は付け加わる防護効果により制限されることがない。
【0016】
本発明による材料構造を用いて、消防士のための、防護服の蛍光性の上側、即ち外側の材料を製造することができる。例えば、防護服において、外側の材料は、少なくとも1種の難燃性で耐熱性の糸又は繊維で織られ又は編まれた布材料の明色の布地を含み、且つその可視側の表面は、外側材料の可視側の表面を見通せる開放領域を有する模様に、ポリマー材料でプリントされる。この場合、ポリマー材料は、外側材料の可視側表面の色との組合せで、欧州規格EN471の要求基準に適合する衣料品の色を生ずる、明るい蛍光色顔料を含有する。
【0017】
本発明による材料構造で製造される衣料品は、リバーシブルであるように、例えば、模様をプリントされた基本構造の面が、用途に応じて、衣料品の外側材料又は内側材料部分の両方として使用することができるリバーシブルジャケットの形態でデザインすることもできる。内側材料として使用されるとき、模様づけされた被覆は、下側に着用された衣類に対する摩耗保護として作用し得る。本発明による材料構造においては、非常に滑らかな表面を得ることができるので、特に模様づけされた被覆の追加に基づいて、防汚及び耐摩耗性など、衣料品の追加の製品特性を得ることができる。
【0018】
本発明のさらなる実施形態及び改良は、添付の請求項において明確に提示する。
【0019】
以下、本発明の実施形態の例を表す図面に示した概念図を参照して、本発明をさらに説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による材料構造の実施形態の図式的断面図である。
【図2】図1の材料構造の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明による材料構造の他の実施形態の図式的断面図である。
【図4】本発明による材料構造を用いた衣料品の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による材料構造の実施形態を図1に示す。それは、第1面12と第2面14とを有する基本構造10を含む。第1面12は、基本構造10の外側に向かった、外側から見える面である。材料構造が衣料品を製造するために使用されるとき、面12は、この場合、衣料品の着衣者の身体の外側を向く。この場合、反対側の第2面14は衣料品の着衣者に向かい、したがって外側から見えない。
【0022】
基本構造10は、アラミド糸若しくはアラミド繊維などの糸若しくは繊維、並びに/又はビスコース及び/若しくはポリイミドからの糸若しくは繊維から製造された難燃性材料を、少なくとも部分的に含む。一実施形態において、基本構造10は、アラミド糸の織布、縦編布、編布、又はアラミド不織布の材料としてデザインすることができる。基本構造10は、布地構造を形成するために、糸又は繊維材料などの防火材料を有する布地材料を含むことができる。それは、単一層又は多層(例えば、ラミネート構造)でデザインすることができる。織布又は縦編布はアラミド糸から製造することができ、いわゆる不織布材料はアラミド繊維から製造することができる。
【0023】
本発明の実施形態の例において、基本構造10の外側から見える面12は、蛍光色素を含む材料30で形成された模様でプリントされる。図2と合わせて見てわかるように、模様20は開放領域50を有し、その領域から面12の表面を通して基本構造10が見られる。開放領域50は、1から9mm2のサイズの面積を各々含むことができる。例えば、基本構造10の面12は、ポリマー材料30を含む模様20でプリントされる。ポリマー材料30は、例えば、シリコーンであり、それは、これが比較的良好に着色されて、且つ下にある難燃性材料の布地とよく結合するからである。このように、不燃性の材料混合物を含む材料構造1を製造することができて、その結果、材料構造1は相応の防護服の外側として有利に使用することができる。
【0024】
ポリマー材料又はシリコーンは、基本構造上の模様の流出を防止する粘度を有すべきであり、粘度は、ポリマー材料がスクリーン印刷などの印刷方法で加工され得るようなものであるべきである。
【0025】
模様20は、例えばスクリーン印刷テンプレートを使用して、基本構造10上でスクリーン印刷法により適用することができる。模様20は、格子模様又は水玉模様としてデザインすることができ、本発明の実施形態の例においては、格子模様としてデザインされる。模様の間隙が相応の不透明度を有し、且つ模様内の最大の間隙が3〜4mm以下であれば、模様は、任意の他の所望の形状又はデザインを有することもできる。格子模様は、特に、並行している2組の細長い片から形成され、異なる組の片は交差し、またこれらの片は基本構造10の上に20から870μmの高さhで形成される。本発明の実施例において、開放領域50は、開放領域の所望の表面を得るために適宜選択される幅bの、ほぼ正方形であるようにデザインされる。
【0026】
材料30に添加される蛍光色素40は、そのようにして作製される模様の30重量パーセント以下を占める着色顔料を含有する。特に、蛍光色素40には、蛍光性黄色、蛍光性赤色、及び/又は蛍光性橙色(EN471による橙赤色)色素がある。上記のように、基本構造10の外側から見える面12は、明色、例えば、蜜黄色で染色されるが、模様20は、上記のように、蛍光色素で不透明に染色された格子状の被覆としてデザインされる。これらの組み合わせの結果、信号色の蛍光性黄色、蛍光性橙赤色又は蛍光性赤色に関するEN471の要求基準に適合する材料構造1の色が作製される。
【0027】
本出願の開示においてここに明示的に含まれるEN471の5.1項、表2に従って、色値は、表2のコーナー(Eckpunkte)により規定される色領域内にあって、且つ表2で要求される最小輝度率を超えなければならない。方向依存性の再帰反射性材料の輝度率は、7.3項に制定された2つの回転角での測定により決定された平均で、表2の要求基準に対応しなければならない。7.3項で制定されている両方の回転角についての、方向依存性の再帰反射材料の標準色値成分は、表2の要求基準に対応しなければならない。
【0028】
測定表面の全ての色値及び明度値は、Y(明度)並びに色座標x及びyに平均される。ここで輝度率Yは、100倍してEN471による輝度率βminに対応する。分光光度計により、材料構造1の色値成分x及びy及び輝度率Yが測定される。例えばミノルタのCM508光度計が、分光光度計として使用される。
【0029】
本発明により、EN471の要求基準は、この場合、格子模様の形態で、着色された部分的被覆を基本構造10に適用することにより達成される。例えば、アラミド繊維又はアラミド糸を含有する布地としてデザインすることができる基本構造10自体が、技術的に可能な限り明るい色で染色される。自由なパラメータ、基本構造10の色/明度、模様づけされた被覆20の色/明度、及び不透明度(%)を適当に変えることにより、原則として任意の色を適宜生じさせることができる。EN471の信号色に関する要求基準を達成するために、被覆は、不透明であって透けて見えないようにデザインされるべきである。この関連で、用語「不透明」は、基本構造の色が被覆の領域においては見えないような、層厚さが20μmと80μmの間の連続的部分被覆を記述する。
【0030】
被覆が水蒸気を透過しないか又は僅かしか透過しない場合については、可能な限り最低の不透明度が求められる。
【0031】
EN471による色の要求基準に適合する材料構造1は、例えば、蛍光性橙色の被覆を有する蜜黄色のアラミド布地(不透明度約60%、格子模様)により達成された。被覆は、ここでは、スクリーン印刷テンプレートにより布地に適用された。スクリーン印刷に加えて、例えば、水玉模様(水玉プリント)の形態で模様を作製するために、他のタイプの適用も使用することができる。シリコーンに加えて、全ての着色可能なペースト状のものも使用可能である。模様を作製するために、接着剤で予備被覆してから、それに着色顔料を適用することも原則として可能である。
【0032】
模様材料の滑らかな表面特性に基づいて、材料構造1の滑らかな表面を、この技術的解決で得ることができるので、湿潤表面における、防汚性及び耐摩耗性、又は摩擦抵抗の大なる減少などの追加の製品特性を、模様づけされた被覆20により得ることができる。リバーシブルジャケットなどのリバーシブルな衣料品で使用されるとき、被覆は、下に着用された衣類に対する摩耗防護として作用し得る。被覆の耐摩耗性並びに被覆の耐洗濯性は、保証されなければならない。
【0033】
信号色の橙色についてEN471の要求基準に適合するために、材料構造は、Y≧40の輝度率を有する。この目的のために、基本構造10の可視側12がY≧35の輝度率を有することが提案される。このようにして、着色された模様20との組合せで、材料構造1全体についてY≧40の輝度率が得られる状況が達成される。
【0034】
EN471による信号色の赤色の要求基準に適合するために、基本構造10の可視側12がY≧25の輝度率を有することが特に提案される。その場合、材料構造1は、Y≧25の輝度率を有する。
【0035】
信号色の黄色に対するEN471の要求基準に適合するために、基本構造10の可視側12は、Y≧50の輝度率を有する。材料構造1は、全体として、Y≧70の輝度率を有する。
【0036】
記載した3通りの実施形態の全てにおいて、対応する信号色に対する色値成分が、表2に対応して選択される(x値及びy値)。この目的のために、カラースクエア(Farb-Vierecks)のコーナーポイントが、表2のx値及びy値から決められ、その場合、対応する信号色に対する材料構造1の色成分は、EN471規格に対応するために、そのようなカラースクエア内に位置しなければならない。ここで、x値及びy値は、EN471による標準色値成分を決めるx軸及びy軸により測られる座標系のx座標及びy座標を表す。
【0037】
EN471による色の要求基準を満たす材料構造1は、例えば、格子状蛍光性橙色被覆(Wacker Chemie AGのシリコーンElastosil LR6200、不透明度約60%、約80g/m2)を有する蜜黄色アラミド布地(265g/m2)から得られた。被覆は、スクリーン印刷テンプレートにより室温で布地に適用して、炉中150℃で2分間硬化させた。
【0038】
このようにして形成された材料構造は難燃性である。欧州規格EN533(1997)により、火炎伝播に関して指定され得る最高指数3が得られる。このことは、火炎に材料を当てている間に、火炎伝播がなく、孔が開かず、焼け落ちがなく、残燼がなく、且つ2秒を超える後燃が起こらないことを意味する。したがって、本発明による材料は、消防士用の防護服としてISO11613(1999)に適合する。その結果、高視認性機能を有し且つ熱及び火炎に対する防護を提供する、消防士用の防護服の材料が利用可能になり得る。
【0039】
材料構造1の他の実施形態を図3に示す。この実施形態によれば、基本構造10の不可視側14は、防水性水蒸気透過性機能層60に接続されている。別に又はそれに加えて、機能層60は、風を通さない水蒸気透過性機能層としてデザインすることもできる。この関連において、そのような機能層の全ての知られたタイプは、例えば、多層ラミネートの形態で、原則として、使用することができる。機能層60を提供することにより、上記の防護特性に加えて、水蒸気透過性があるため高い着用の快適性を有する水を通さない防護服も得ることができるような、さらなる防護機能材料構造1を得ることができる。
【0040】
2種の構造が生じ得る:具体的に、a)基本構造が機能層と接合(接着)されて2層又は3層ラミネートを形成する;b)機能層が、基本構造の内側についた裏地構造として、2層又は3層ラミネートの形態でゆるく懸垂して、その端部で基本構造に接合され得る。
【0041】
防水性で水蒸気透過性機能層のための適当な材料は、特に、ポリウレタン、ポリプロピレン、並びに米国特許第4,725,418号及び米国特許第4,493,870号の文書中に記載されたポリエーテルエステル及びそれらのラミネートを含むポリエステルである。しかしながら、例えば、米国特許第3,953,566号、並びに米国特許第4,187,390号の文書に記載された、発泡微孔性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)は特に好ましく、また親水性含浸剤及び/又は親水性層を備えた発泡ポリテトラフルオロエチレンも同様である。例えば、米国特許第4,194,041号の文書を参照されたい。「微孔性機能層」とは、平均孔サイズが約0.2μmと約0.3μmの間である機能層を意味すると理解される。
【0042】
孔サイズは、Coulter Electronics,Inc.(米国フロリダ州、Hialeath)製のCoulter Porometer(商標)を用いて測定することができる。
【0043】
機能層は、それが少なくとも1×104Paの水進入圧に対して保証すれば、機能層に備わった縫い目を場合により含めて、「防水性」とみなされる。機能層材料は、1×105Paを超える水進入圧に対して保証することが好ましい。そのとき、水進入圧は、機能層の100cm2の試料に、20±2℃の蒸留水で圧力を上昇させながらかける試験方法により、測定することができる。水の圧力上昇は、毎分60±3cmH2Oである。そのとき、水進入圧は、試料の反対側に水が最初に現れる圧力に対応する。手順の詳細は、1981年からISO規格0811に規定されている。
【0044】
その場合、機能層は、それが150m2×Pa×W-1未満の水蒸気透過率Retを有すれば、「水蒸気透過性」とみなされる。水蒸気透過率はHohenstein皮膚モデルに従って試験される。この試験方法は、DIN EN31092(02/94)及びISO11092(1993)に記載されている。
【0045】
「気密(風を通さない)」という用語は、バリア層又は、バリア層と組み合わされた材料編織布が、25l/m2/s未満、多くの実施形態においては5l/m2/s未満の空気透過率を有することを意味する。
【0046】
空気透過率:
材料編織布(布地)の空気透過率を測定するために、材料編織布を通る気流を測定することができる試験装置が使用される。試験見本は、100cm2の試験面積を生ずる2つの環の間に置かれる。空気を、100Paの一定圧力で試験標本を通して引く。試験標本を通過する空気量を測定してl/m2/sで計算する。該試験方法は、EN ISO9237に記載されている。
【0047】
図4は、外衣の形態をした衣料品70の例、例えば、上で説明した本発明による材料構造1で組み立てた、高視認性又は防護ジャケットを示す。特に、基本構造10の第1面12は、衣料品70の外側71を形成する。一実施形態において、衣料品70は、基本構造10の第1面12を衣料品の外側71、又は内側材料部分72として使用するリバーシブルである。
【0048】
この発明に関連する「難燃性」という用語は、材料構造が限度のある火炎伝播を有することを意味する。欧州規格EN533(1997)は、EN532(EN ISO15025(2003)に対応する)による試験結果に基づいて、材料の限度のある火炎伝播に対する性能の要求基準を定めている。性能は、限度のある火炎伝播の指数により表される。3つの性能段階が定められている:
指数1の材料においては、火炎に接触中に、火炎伝播は起こらず、孔の形成が起こり得る。
指数2の材料においては、火炎に接触中に、火炎伝播は起こらず、孔の形成も起こらない。
指数3の材料においては、火炎に接触中に、火炎伝播は起こらず、孔の形成も起こらず、限度のある後燃が起こるのみである。
消火用防護服のためには、指数3の材料(ISO11613:1999に対応する)が要求される。
【0049】
「耐熱性」という用語は、材料が、EN ISO15025(2003)の炉中試験に従って、180℃を超える温度に5分の間耐えることを意味する。
【0050】
本発明においては以下の基準が参照される:
EN471(2003):高視認性衣類
EN15025(2003):防護服、熱及び火炎に対する防護、限度のある火炎拡大に対する試験方法。
ISO11613(1999):消防士用の防護服 実験室試験方法及び性能の要求基準。
EN533(1997):防護服、熱及び火炎に対する防護、火炎拡大に限度のある材料及び材料組立品。
【0051】
例となる材料構造
基本構造:
坪量が205g/m2のアラミド織布からなり、蜜黄色、輝度率Y=50の2層ラミネート。アラミド織布を、標準的ラミネート化法を使用して、水蒸気透過性且つ防水性の発泡PTFE(ePTFE)の多孔質膜に接合する。膜は、米国特許第3,953,566号及び米国特許第4,187,390号に従って製造し、米国特許第4,194,041号に記載された水蒸気透過性親水性ポリウレタンの連続層で被覆した。2層ラミネートを製造するために、アラミド織布は、米国特許第4,532,316号に記載された斑点状のポリウレタン接着剤を使用して、被覆された膜のePTFE側にラミネートされる。このようにして製造されたラミネートは、252g/m2の坪量を有し、水蒸気透過性及び防水性である。
【0052】
ラミネートの布地層の輝度率及び色度は、このラミネートから決定される。
【0053】
模様材料:
Wacker Chemie AG(ドイツ)のシリコーンLR6200を、15%(使用したシリコーンの量に関して)のRadiant Color Companyから得た蛍光性橙色の蛍光性顔料と、蛍光性顔料がシリコーン中に均一に分布するまで混合する。使用されるシリコーンの粘度は、約20,000mPa/sである。
【0054】
方法:
染色されたシリコーンを、スクリーン印刷テンプレートにより、2層ラミネートの布地側に適用する。その際に、個々の片が約50μmの高さを有する格子構造が形成される。基本構造上の格子構造を、160℃の温度で2分間炉中で硬化させる。被覆されたラミネート(材料構造)の坪量は、345g/m2である。
【0055】
試験方法:
色度(x、y)及び最小輝度率(Y)を試料から測定した。測定はミノルタCM508C分光光度計を用いて行った。
【0056】
【表1】

【0057】
被覆されていない2層ラミネートは、EN471による十分高い輝度率を有するが、色度は、EN471による蛍光性橙色に対する色座標から遠い外側にある。他方、本発明による被覆されたラミネートの色度は、EN471の色座標内にある。したがって、被覆されたラミネートは、EN471による蛍光色を有する。
【0058】
上で製造された試料を火炎耐性について検討した。この目的のために、試料を火炎試験にかけた。試料を、ISO15025(2000)(EN532に対応する)による表面着火及びISO694による端部着火に10秒間曝した。試料は、両方の火炎曝露に耐えて、火炎伝播及び孔の形成を示さなかった(指数3)。
【0059】
試験方法:
色度及び輝度率:
色度及び輝度率は、ミノルタCM508ブランドの分光光度計を用いてEN471(2003)の条項7.3に従って測定した。調製中に加工された下側にある材料を含む各試料を測定した。これは、機能層が、膜及び布地支持材料からなる2層ラミネートの裏地の形態で、各試料の下に配置されていることを意味する。膜は、試料の直下にある。分光光度計で測定されたとき、x軸及びy軸に対する値が、色度を決定すると解釈される。輝度率Yも測定される。しかしながら、EN471には、最小輝度率βminが、各色領域について明記されている。βminとYとの比は以下の通りである:輝度率Yはβmin×100に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、衣類用の材料編織布の製造のための材料構造(1)であって、
第1面(12)と第2面(14)とを有する難燃性材料を、少なくとも部分的に含む基本構造(10)を含み、
基本構造の少なくとも第1面(12)は、基本構造の表面(10)を見通せる開放領域(50)を有する模様(20)でプリントされており、
模様(20)は、少なくとも1種の蛍光色素(40)を含有する材料(30)を含み、
基本構造(10)の第1面(12)の可視表面が、模様(20)との組合せで、欧州規格EN471の要求基準を満たす材料構造色を生ずる
材料構造(1)。
【請求項2】
基本構造(10)の第1面(12)が明色を有する、請求項1に記載の材料構造。
【請求項3】
模様(20)が不透明に染色された部分的被覆としてデザインされた、請求項1に記載の材料構造。
【請求項4】
基本構造(10)の第1面(12)が蜜黄色の色素で染色され、模様(20)が、不透明な蛍光性橙色の部分的被覆として、好ましくは基本構造(10)の表面のおよそ60%の不透明度でデザインされた、請求項1に記載の材料構造。
【請求項5】
模様(20)が格子模様又は水玉模様としてデザインされた、請求項1に記載の材料構造。
【請求項6】
模様(20)が、基本構造(10)の表面のおよそ20から80%、好ましくは30から70%、特に40から60%の不透明度を有する、請求項1に記載の材料構造。
【請求項7】
基本構造(10)の難燃性材料が、アラミド、ビスコース、及びポリイミドを含む群から選択された糸又は繊維を特色とする、請求項1に記載の材料構造。
【請求項8】
基本構造(10)の難燃性材料が、アラミド糸から作製された織布、縦編布若しくは編布、又はアラミド繊維から作製された不織布を特色とする、請求項1に記載の材料構造。
【請求項9】
基本構造(10)の第1面(12)が、材料構造(1)の可視前面としてデザインされた、請求項1に記載の材料構造。
【請求項10】
基本構造(10)の第1面(12)の表面が、模様(20)との組合せで、信号色の黄色について欧州規格EN471の要求基準に適合する、材料構造(1)の色を生ずる、請求項1に記載の材料構造。
【請求項11】
材料構造(1)がY≧70の輝度率を有する、請求項10に記載の材料構造。
【請求項12】
基本構造(10)の第1面(12)がY≧50の輝度率を有する、請求項10に記載の材料構造。
【請求項13】
基本構造(10)の第1面(12)の表面が、模様(20)との組合せで、信号色の橙色について、欧州規格EN471の要求基準に適合する、材料構造(1)の色を生ずる、請求項1に記載の材料構造。
【請求項14】
材料構造(1)がY≧40の輝度率を有する、請求項13に記載の材料構造。
【請求項15】
基本構造(10)の第1面(12)がY≧35の輝度率を有する、請求項13に記載の材料構造。
【請求項16】
基本構造(10)の第1面(12)の表面が、模様(20)との組合せで、信号色の赤色について、欧州規格EN471の要求基準に適合する、材料構造(1)の色を生ずる、請求項1に記載の材料構造。
【請求項17】
材料構造(1)がY≧25の輝度率を有する、請求項16に記載の材料構造。
【請求項18】
基本構造(10)の第1面(12)がY≧25の輝度率を有する、請求項1に記載の材料構造。
【請求項19】
基本構造(10)の開放領域(50)が、各々、1から9mm2のサイズの面積を囲む、請求項1に記載の材料構造。
【請求項20】
基本構造(10)の第1面(12)が、ポリマー材料(30)で模様(20)をプリントされる、請求項1に記載の材料構造。
【請求項21】
基本構造(10)の第1面(12)が、染色可能なペースト状材料で模様(20)をプリントされる、請求項1に記載の材料構造。
【請求項22】
ポリマー材料(30)がシリコーン又はポリウレタンである、請求項20に記載の材料構造。
【請求項23】
基本構造(10)の第1面(12)が、接着性被覆に適用された着色顔料の模様で形成された、請求項1に記載の材料構造。
【請求項24】
基本構造(10)の第2面(14)が、防水性で水蒸気透過性の機能層(60)に接合された、請求項1に記載の材料構造。
【請求項25】
基本構造(10)の第2面(14)が、気密で水蒸気透過性の機能層(60)に接合された、請求項1に記載の材料構造。
【請求項26】
基本構造の水蒸気透過率の50%を超える水蒸気透過率を有する、請求項1に記載の材料構造。
【請求項27】
蛍光色素(40)が、蛍光性黄色、蛍光性赤色、及び蛍光性橙色を含む群から選択された色素を含む、請求項1に記載の材料構造。
【請求項28】
蛍光色素が、模様(20)の30重量パーセント以下の量になる着色顔料(40)を含む、請求項1に記載の材料構造。
【請求項29】
模様(20)が、20から80μmの高さ(h)で基本構造(10)の上に形成された、請求項1に記載の材料構造。
【請求項30】
模様(20)がスクリーン印刷法により適用された、請求項1に記載の材料構造。
【請求項31】
材料構造が、ISO6141で制定された試験による火炎試験に合格する、請求項1に記載の材料構造。
【請求項32】
DIN EN533(1997)の要求基準による限度のある火炎伝播について難燃性である、請求項1に記載の材料構造。
【請求項33】
材料が、消防士用の防護服について、ISO11613(1999)の要求基準に適合する、請求項1に記載の材料構造。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか一項に記載の、材料構造(1)を用いる衣料品(70)。
【請求項35】
基本構造(10)の第1面(12)が、衣料品(70)の上部材料部分(71)を形成する、請求項34に記載の衣料品。
【請求項36】
衣料品(70)が、基本構造(10)の第1面(12)を、衣料品の外側材料部分(71)又は内側材料部分(72)として使用するリバーシブルである、請求項34に記載の衣料品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−32612(P2013−32612A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−219506(P2012−219506)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2010−529266(P2010−529266)の分割
【原出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(391018178)ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (40)
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】