説明

環状オレフィン系樹脂フィルム、偏光板及び液晶表示装置

【課題】Rthが大きく、Reが実質的に位相差を有さない程度の非常に小さな環状オレフィン系樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】 環状オレフィン系樹脂を含み、下記式(1)〜(4)を満たす、環状オレフィン系樹脂フィルム。
|Re|≦4nm (1)
50nm≦Rth≦300nm (2)
10μm≦d≦70μm (3)
1×10−3≦Rth/d≦1×10−2 (4)
式中、Reはフィルムの面内方向のレターデーション値、Rthはフィルムの厚み方向のレターデーション値、dはフィルムの厚みである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂フィルム及びその製造方法に関する。より詳しくは、環状オレフィン重合体を含み、Rthが大きく、偏光板加工後にパネルに貼り付けた際の表示が面内において均一となる環状オレフィン系樹脂フィルム及びその製造方法に関する。また、該光学フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示装置は薄型化が進み、その傾向は特に高品質や大画面といった高付加価値を求められるテレビ用の液晶表示装置に顕著である。それに応じて各構成部品の薄型化が求められているが、特に偏光板や光学補償フィルム等のフィルム形態の部材は、薄型化への要求を満たしつつ、同時に好適な光学性能や機械物性を有する光学フィルムが求められている。
【0003】
また、光学性能の設計において、2軸性フィルムの採用など光学フィルムの機能複合化による薄型化の傾向とは別に、液晶の各種動作モードへの設計対応や部材構成の選択・導入の容易性と、湿度や熱などをはじめとする環境による性能変動へのロバストネスの確保や剛性の確保のために面内方向にのみ位相差を有するいわゆるAプレートや厚み方向にのみ位相差を有するいわゆるCプレートなどの1軸性のフィルムの積層も検討されており、汎用性の高い1軸性のフィルム、特に薄型化を考えた場合、厚み方向にのみ位相差を有するCプレートの必要性が増してくると考えられる。
【0004】
特許文献1には、光学異方性層を積層する際に好適な環状オレフィン重合体からなるフィルムが示されているが、このフィルムが持つ厚み方向の位相差は検討されておらず、積層される光学異方性層によって厚み方向のレターデーションが付与されたCプレートとなっている。
特許文献2には、環状オレフィン重合体からなるCプレートが記載されているが、厚み方向のレターデーションが得られているが、面内方向のレターデーションが若干ながら存在しており、汎用性の高い1軸性のフィルムとしては不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−246339号公報
【特許文献2】特許4373335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学フィルムの素材である環状オレフィン重合体について、そのレターデーションの発現性が高いほど、高い厚み方向レターデーションRthが得られるが、同時に面内方向レターデーションReが生じてしまうため、より1軸性に近い性能を持たせることは非常に困難であった。
【0007】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、環状オレフィン重合体を用い、厚み方向のレターデーションRthが大きく、面内方向のレターデーションReが実質的に位相差を有さない程度に非常に小さな環状オレフィン系樹脂フィルムを提供することにある。また、該環状オレフィン系樹脂フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題に対して、本発明者が鋭意検討を進めた結果、特定の製造条件を採用することで、上記物性と光学特性を両立し、上記課題を解決できる各種光学フィルムを提供することができることを見出した。
具体的には、以下の手段により、上記課題を解決した。
【0009】
[1]
環状オレフィン系樹脂を含み、下記式(1)〜(4)を満たす、環状オレフィン系樹脂フィルム。
|Re|≦4nm (1)
50nm≦Rth≦300nm (2)
10μm≦d≦70μm (3)
1×10−3≦Rth/d≦1×10−2 (4)
式中、Reはフィルムの面内方向のレターデーション値、Rthはフィルムの厚み方向のレターデーション値、dはフィルムの厚みである。
[2]
下記式(4)で表されるΔRth(RH)が10未満である[1]に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
Rth(RH)=|Rth(10%)−Rth(80%)| (4)
式中、Rth(10%)は25℃10%RHの環境下で測定したフィルムのRthであり、Rth(80%)は25℃80%RHの環境下で測定したフィルムのRthである。
[3]
前記環状オレフィン系樹脂フィルムが溶液製膜法で成形された[1]又は[2]に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
[4]
前記環状オレフィン系樹脂フィルムが可塑剤又はレターデーション発現剤を含む[3]に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
[5]
前記環状オレフィン系樹脂フィルムが溶融製膜法で成形された[1]又は[2]に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
[6]
前記環状オレフィン系樹脂フィルムが二軸延伸処理により成形された[5]に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
[7]
[1]〜[6]のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムを用いた偏光板。
[8]
[1]〜[6]のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム、又は[7]に記載の偏光板を用いた液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Rthが大きく、Reが実質的に位相差を有さない程度に非常に小さな環状オレフィン系樹脂フィルム及び該フィルムを用いた偏光板を提供することができる。また、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムによって、液晶の各種動作モードへの設計対応や部材構成の選択・導入の容易となり、湿度や熱などに対する環境変動に対する安定性を備えた液晶表示装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。本明細書中、フィルム搬送方向のことを縦方向、フィルム長手方向又はMD方向と言うことがあり、フィルム搬送方向に直交する方向のことを横方向、フィルム幅方向又はTD方向と言うことがある。
【0012】
[環状オレフィン系樹脂フィルム]
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、環状オレフィン系樹脂を含み、下記式(1)〜(4)を満たす、環状オレフィン系樹脂フィルム。
|Re|≦4nm (1)
50nm≦Rth≦300nm (2)
10μm≦d≦70μm (3)
1×10−3≦Rth/d≦1×10−2 (4)
式中、Reはフィルムの面内方向のレターデーション値、Rthはフィルムの厚み方向のレターデーション値、dはフィルムの厚みである。
【0013】
<フィルム特性>
(レターデーション)
Re及びRthは、下記式により定義される。
Re=(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d(後述の式(12))
式中、nxはフィルム面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは該面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dはフィルムの膜厚(nz方向の膜厚)である。
【0014】
本願明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション値及び厚さ方向のレターデーション値を表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは550nmとし、単にRe、Rthと表すものとする。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
【0015】
【数1】

【0016】
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
式(12): Rth={(nx+ny)/2−nz}xd
式(11)及び(12)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0017】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
【0018】
上記の測定において、平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0019】
本発明のフィルムは、|Re|≦4nmであり、Reを実質的に有していないとみなすことができる。なお、|Re|≦2nmであることが好ましい。
また、Rthは、50nm≦Rth≦300nmを満たし、55nm≦Rth≦150nmを満たすことが好ましく、65nm≦Rth≦150nmを満たすことがより好ましい。このようなRthとすることにより、よりRthの発現性の高い薄膜のCプレートを作製できる。
【0020】
(Rth/d)
本発明のフィルムは、下記式(4)を満たす。これにより、フィルムの薄膜化及び十分なRth発現の両立をし、かつフィルムの原料コストを下げることができる。
1×10−3≦Rth/d≦1×10−2 (4)
(式中、Rthは波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションの値(単位:nm)を表し、dはフィルム厚み(単位:nm)を表す。)
前記Rth/dは1.3〜9.5×10−3であることが好ましく、1.3〜9.0×10−3であることがより好ましい。
【0021】
(ΔRth(RH))
本発明のフィルムは、湿度変化による性能劣化を防ぐ観点から、下記式(5)で表されるΔRth(RH)が小さいことが好ましい。
ΔRth(RH)=|Rth(10%)−Rth(80%)| (5)
式中、Rth(10%)は25℃10%RHの環境下で測定したフィルムのRthであり、Rth(80%)は25℃80%RHの環境下で測定したフィルムのRthである。
Rth(RH)は10未満であることが好ましく、5未満であることがより好ましい。
【0022】
(弾性率)
本発明のフィルムは、フィルムの弾性率E’が下記式(6)を満たすことが好ましい。
1.0GPa<E’<5.0GPa (6)
(式中、E’はフィルムの弾性率(単位:GPa)を表す。)
このような物性を満たすフィルムを用いることで、大面積化しても自己支持性を損なわず、積層体の支持体として用いる場合にも良好なハンドリング性を有するため好ましい。
前記フィルムのTD方向又はMD方向の弾性率E’は、1.0〜5.0GPaであることが好ましく、1.5〜4.5GPaであることがより好ましい。
また、TD方向とMD方向の弾性率の比であるE’(TD)/E’(MD)は、0.9〜1.1であることが好ましく、0.95〜1.05であることがより好ましく、1.0であることが特に好ましい。
【0023】
(膜厚)
本発明のフィルムの厚さdは、10μm≦d≦70μmを満足し、より好ましくは35〜60μmである。フィルムの厚さを70μm以下とすることにより、部材による薄型化に寄与することができ、合わせて原料使用量が減ることでコストを下げることができ好ましい。
【0024】
(フィルム幅)
本発明のフィルムは、フィルム幅が1000mm以上であることが好ましく、1500mm以上であることがより好ましく、1800mm以上であることが特に好ましい。
【0025】
<環状オレフィン系樹脂>
本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムに用いられる環状オレフィン系樹脂(環状ポリオレフィン、又は環状ポリオレフィン系樹脂とも言う)について、説明する。
本発明において環状ポリオレフィン系樹脂とは、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂を表す。環状オレフィン構造を有する重合体樹脂の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。例えば、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン及び必要に応じ、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンが挙げられる。また、一般式(III)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体も挙げることができる。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
【化3】

【0029】
式中、mは0〜4の整数を表す。R1〜R6は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜X3、Y1〜Y3は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、又はX1とY1若しくはX2とY2若しくはX3とY3から構成された(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11,R12,R13,R14,R15は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16pD3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16又は−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
【0030】
1〜X3、Y1〜Y3の置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、光学用フィルムの厚さ方向レターデーション(Rth)を大きくすることができる。
【0031】
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−1159767号あるいは特開2004−309979号等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R5〜R6は水素原子又は−CH3 が好ましく、X3、及びY3は水素原子、Cl、−COOCH3が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0032】
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
【0033】
本発明においては、環状ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)に制限はないが、例えば200〜400℃というような高いTgの環状ポリオレフィンも用いることができる。
【0034】
<添加剤>
本発明のフィルムは、各種の添加剤を含んでいてもよい。
本発明では添加剤として、環状オレフィン系樹脂フィルムの添加剤として公知の高分子量添加剤及び低分子量添加剤を広く採用することができる。
本発明のフィルムでは、添加剤の添加量は、各種添加剤の総量として、環状オレフィン系樹脂に対して1〜45質量%であることが好ましく、2〜35質量%であることがより好ましく、4〜25質量%であることが更に好ましい。添加剤の添加量が1質量%以上であれば、温度湿度変化に対応しやすく、添加量が35質量%以下であればフィルムが白化しにくい。更に、物理的特性も優れるものとなる。
ここで、本発明における添加剤とは、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムの諸機能の向上等を目的として添加される成分をいう。すなわち、不純物や残留溶媒等は、本発明における添加剤ではない。
【0035】
前記添加剤としては、例えば、重縮合エステル、アクリル酸エステル重合体、フタル酸エステル、リン酸エステル系の化合物、糖エステル化合物などの可塑剤;レターデーション調整剤(レターデーション発現剤及びレターデーション低減剤);劣化(酸化)防止剤;紫外線吸収剤;マット剤;有機酸(剥離促進剤であってもよい)などの添加剤を加えることができる。
特に製膜方法が溶液製膜法であれば、レターデーション発現剤、紫外線吸収剤、可塑剤、有機酸を用いることが好ましく、製造法が溶融製膜法であれば、劣化(酸化)防止剤を用いることが好ましい。
以下、本発明のフィルムに用いることができる添加剤について詳細に説明する。
【0036】
(可塑剤)
<重縮合エステル>
本発明に係る重縮合エステルは、少なくとも一種の芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸との混合物、例えば、炭素数の平均が5.5以上10.0以下のジカルボン酸と、少なくとも一種の平均炭素数が2.5以上7.0以下の脂肪族ジオールとから得られることが好ましい。
【0037】
脂肪族ジカルボン酸残基の平均炭素数の計算は、ジカルボン酸残基とジオール残基で個別に行う。
ジカルボン酸残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値を平均炭素数とする。例えば、アジピン酸残基とフタル酸残基が50モル%ずつから構成される場合は、平均炭素数7.0となる。
また、ジオール残基の場合も同様で、脂肪族ジオール残基の平均炭素数は、脂肪族ジオール残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値とする。例えばエチレングリコール残基50モル%と1,2−プロパンジオール残基50モル%から構成される場合は平均炭素数2.5となる。
【0038】
重縮合エステルの数平均分子量は700〜2500であることが好ましく、700〜1500がより好ましく、700〜1200が更に好ましい。本発明において、重縮合エステルの数平均分子量は700以上であれば揮発性が低くなり、環状オレフィン系樹脂フィルムの延伸時の高温条件下における揮散によるフィルム故障や工程汚染を生じにくくなる。また、2500以下であれば環状オレフィン系樹脂との相溶性が高くなり、製膜時及び加熱延伸時のブリードアウトが生じにくくなる。
本発明の重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、質量あたりの水酸基の量(以下、水酸基価)により算出することもできる。水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定する。
【0039】
本発明にかかる芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物としてのジカルボン酸は、炭素数の平均が5.5以上10.0以下のジカルボン酸であることが好ましい。より好ましくは5.6以上8以下である。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れたフィルム及び偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセ環状オレフィン系樹脂への相溶性が優れ、環状オレフィン系樹脂フィルムの製膜過程でブリードアウトの発生を抑制することができる。
本発明に係る重縮合エステルは、可塑剤として用いることができる。
【0040】
芳香族ジカルボン酸残基は、ジオールと芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルに含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明に用いる重縮合エステルの芳香族ジカルボン酸残基比率は40mol%以上であることが好ましく、40mol%〜95mol%であることが好ましい。45mol%〜70mol%であることがより好ましく、50mol%〜70mol%であることが更に好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示す環状オレフィン系樹脂フィルムが得られ、耐久性に優れたフィルム及び偏光板を得ることができる。また、95mol%以下であれば環状オレフィン系樹脂との相溶性に優れ、環状オレフィン系樹脂フィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
【0041】
本発明に用いる芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、フタル酸、テレフタル酸がより好ましく、テレフタル酸が更に好ましい。
重縮合エステルには混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
具体的には、芳香族ジカルボン酸残基は、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸残基、テレフタル酸残基の少なくとも1種を含み、更に好ましくはテレフタル酸残基を含む。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、より環状オレフィン系樹脂との相溶性に優れ、環状オレフィン系樹脂フィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくい環状オレフィン系樹脂フィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
フタル酸とテレフタル酸の2種の芳香族ジカルボン酸を併用することにより、常温での重縮合エステルを軟化することができ、ハンドリングが容易になる点で好ましい。
重縮合エステルのジカルボン酸残基中のテレフタル酸残基の含有量は40mol%〜95mol%であることが好ましく、45mol%〜70mol%であることが好ましく、50mol%〜70mol%であることが好ましい。
テレフタル酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示す環状オレフィン系樹脂フィルムが得られる。また、95mol%以下であれば環状オレフィン系樹脂との相溶性に優れ、環状オレフィン系樹脂フィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
【0042】
脂肪族ジカルボン酸残基は、ジオールと脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルに含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステルには混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
ジカルボン酸残基は、平均炭素数が5.5以上10.0以下であることが好ましく、5.5〜8.0であることがより好ましく、5.5〜7.0であることが更に好ましい。脂肪族ジオールの平均炭素数が7.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、環状オレフィン系樹脂のウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジオールの平均炭素数が2.5以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。1種用いる場合は、コハク酸を用いることが好ましい。ジオール残基の平均炭素数を所望の値に調整することができ、環状オレフィン系樹脂との相溶性の点で好ましい。
【0043】
本発明において、ジカルボン酸は2種又は3種を用いることが好ましい。2種を用いる場合は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを1種ずつ用いることが必要であり、3種を用いる場合は脂肪族ジカルボン酸を1種と芳香族ジカルボン酸を2種又は脂肪族ジカルボン酸を2種と芳香族ジカルボン酸を1種用いることができる。ジカルボン酸残基の平均炭素数の値を調整しやすく、かつ芳香族ジカルボン酸残基の含有量を好ましい範囲とすることができ、フィルムの耐久性を向上し得るためである。
【0044】
脂肪族ジオール残基は、脂肪族ジオールとジカルボン酸を含むジカルボン酸とから得られた重縮合エステルに含まれる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジオールHO−R−OHより形成されるジオール残基は−O−R−O−である。
重縮合エステルを形成するジオールとしては芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、少なくとも脂肪族ジオールを含む。
重縮合エステルには平均炭素数が2.5以上7.0以下の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましい。好ましくは平均炭素数が2.5以上4.0以下の脂肪族ジオール残基である。脂肪族ジオール残基の平均炭素数が3.0以下であれば、環状オレフィン系樹脂との相溶性が低くならず、ブリードアウトが生じ難くなり、また、化合物の加熱減量が増大し過ぎず、環状オレフィン系樹脂のウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生し難い。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.0未満では合成が困難となる。
本発明に用いられる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
【0045】
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールの少なくとも1種であり、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールの少なくとも1種である。2種用いる場合は、エチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールを用いることが好ましい。1,2−プロパンジオール、又は1,3−プロパンジオールを用いることにより重縮合エステルの結晶化を防止することができる。
重縮合エステルには混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
ジオール残基はエチレングリコール残基、1,2−プロパンジオール残基、及び1,3−プロパンジオール残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコール残基又は1,2−プロパンジオール残基であることがより好ましい。
脂肪族ジオール残基のうち、エチレングリコール残基が20mol%〜100mol%であることが好ましく、50mol%〜100mol%であることがより好ましい。
【0046】
本発明の重縮合エステルの末端は封止がなくジオールあるいはカルボン酸のままであるか、更にモノカルボン酸類又はモノアルコール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。
封止に用いるモノカルボン酸類としては酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。封止に用いるモノアルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が好ましく、メタノールが最も好ましい。重縮合エステルの末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
本発明の重縮合エステルの末端はより好ましくは封止がなくジオール残基のままか、酢酸又はプロピオン酸による封止が更に好ましい。
本発明にかかる重縮合エステルの両末端は封止、未封止を問わない。
縮合体の両末端が未封止の場合、重縮合エステルはポリエステルポリオールであることが好ましい。
本発明にかかる重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5以上7.0以下であり、縮合体の両末端は未封止である重縮合エステルを挙げることができる。
縮合体の両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合エステルの両末端はモノカルボン酸残基となっている。本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。好ましくは脂肪族モノカルボン酸残基であり、モノカルボン酸残基が炭素数22以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることが更に好ましい。また、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
本発明にかかる重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5より大きく7.0以下であり、縮合体の両末端はモノカルボン酸残基である重縮合エステルを挙げることができる。
重縮合エステルの両末端のモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、重縮合エステルの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することが可能である。
即ち封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸が炭素数2から22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることが更に好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
本発明の重縮合エステルの両末端は酢酸又はプロピオン酸による封止が好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基(アセチル残基と称する場合がある)となることが最も好ましい。
両末端を封止した場合は常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、耐久性に優れた環状オレフィン系樹脂フィルムを得ることができる。
【0047】
本発明にかかる重縮合エステルとして、以下の脂肪族高分子量可塑剤(PA)及び芳香族高分子可塑剤(PB)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
以下に、数平均分子量が700〜10000であって脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオール、及び場合により脂肪族モノカルボン酸または脂肪族モノアルコールからなる繰り返し単位を有する脂肪族高分子量可塑剤(PA)について、その具体的な例を記載するがこれらに限定されるものではない。
【0049】
PA-1:エチレングリコール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量1100)
PA-2:1,3−プロパンジオール/グルタル酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量1500)
PA-3:1,3−プロパンジオール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量900)
PA-4:1,3−プロパンジオール/エチレングリコール/アジピン酸(1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量1500)
【0050】
PA-5:2−メチル−1,3−プロパンジオール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量1400)
PA-6:エチレングリコール/コハク酸/アジピン酸(2/1/1モル比)からなる縮合物の両末端のアセチルエステル化体(数平均分子量1000)
PA-7:1,4−シクロヘキサンジオール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量1800)
【0051】
PA-8:1,3−プロパンジオール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のブチルエステル化体(数平均分子量1200)
PA-9:1,3−プロパンジオール/グルタル酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のシクロヘキシルエステル化体(数平均分子量1500)
PA-10:エチレングリコール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のアセチルエステル化体(数平均分子量3000)
PA-11:1,3−プロパンジオール/エチレングリコール/アジピン酸(1/1/2モル比)からなる縮合物の両末端のイソノニルエステル化体(数平均分子量1500)
【0052】
PA-12:2−メチル−1,3−プロパンジオール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のプロピルエステル化体(数平均分子量1300)
PA-13:2−メチル−1,3−プロパンジオール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のアセチルエステル化体(数平均分子量1700)
【0053】
PA-14:2−メチル−1,3−プロパンジオール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のイソノニルエステル化体(数平均分子量1500)
PA-15:1,4−ブタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のブチルエステル化体(数平均分子量1100)
PA-16:ポリ(平均重合度5)プロピレンエーテルグリコール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2800)
【0054】
PA-17:ポリ(平均重合度3)エチレンエーテルグリコール/グルタル酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2300)
PA-18:ポリ(平均重合度4)プロピレンエーテルグリコール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2200)
PA-19:ポリ(平均重合度5)プロピレンエーテルグリコール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端ブチルエステル化体(数平均分子量1900)
【0055】
PA-20:ポリ(平均重合度3)エチレンエーテルグリコール/グルタル酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端2−エチルヘキシルエステル化体(数平均分子量2500)
PA-21:ポリ(平均重合度4)プロピレンエーテルグリコール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端アセチルエステル化体(数平均分子量1500)
PA-22:ポリ(平均重合度4)プロピレンエーテルグリコール/フタル酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端プロピオニルエステル化体(数平均分子量1900)
PA-23:エチレングリコール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量1000)
【0056】
芳香族高分子量可塑剤(PB)に使用される脂肪族ジオールについても同様に、前述した脂肪族高分子可塑剤(PA)で記載した脂肪族ジオールを利用でき、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールも同様に使用できる。
次に、芳香族高分子量可塑剤(PB)ではジオールとして芳香族環含有ジオールも使用できる。好ましい該芳香族環含有ジオールとしては、炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールであり、ビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ベンゼン−1,4−ジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ベンゼン−1,4−ジメタノールである。
【0057】
また、芳香族高分子可塑剤(PB)は、数平均分子量が700〜10000であって、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールの少なくともいずれかからなる繰り返し単位を有する。
更に芳香族高分子量可塑剤(PB)においては、場合により脂肪族モノカルボン酸、脂肪族モノアルコール、芳香環含有モノカルボン酸あるいは芳香環含有モノアルコールを使用することも好ましい。その場合、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族モノアルコールについては、前述した脂肪族高分子可塑剤(PA)で記載した脂肪族モノカルボン酸、脂肪族モノアルコールを利用でき、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールも同様に使用できる。
【0058】
あるいは芳香環含有モノアルコールについては、炭素数6〜20の芳香族環含有基、炭素数2〜22の脂肪族カルボニル基、及び炭素数7〜20の芳香族カルボニル基から選ばれた少なくとも一種を含有することが好ましく、例えばフェノール、クレゾール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェネチルアルコール、1−ナフチルアルコールなどであり、好ましくはベンジルアルコール、フェニルエタノールが挙げられる。 また、芳香環含有モノカルボン酸については、炭素数6〜20の芳香族環含有基、炭素数2〜22の脂肪族カルボニル基、及び炭素数7〜20の芳香族カルボニル基から選ばれた少なくとも一種を含有することが好ましく、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、n−プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸等があり、好ましくは安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸である。これらはそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
【0059】
本発明に係る重縮合エステルの合成は、常法によりジオールとジカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係る重縮合エステルについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0060】
環状オレフィン系樹脂フィルムにおける前記重縮合エステルの含有量は、環状オレフィン系樹脂量に対し5乃至40質量%であることが好ましく、8乃至30質量%であることが更に好ましく、10乃至25質量%であることが最も好ましい。
【0061】
本発明の重縮合体が含有する原料の脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、又はジオールエステルの環状オレフィン系樹脂フィルム中の含有量は、1質量%未満が好ましく、0.5質量%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
本発明で使用される重縮合エステルに含まれるジカルボン酸残基、ジオール残基、モノカルボン酸残基の各残基の種類及び比率はH−NMRを用いて通常の方法で測定することができる。通常、重クロロホルムを溶媒として用いることができる。
重縮合エステルの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができ、通常、ポリスチレンを標準資料として用いることができる。
重縮合エステルの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法当を適用できる。重縮合体がポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が50以上190以下であることが好ましく、50以上130以下であることが更に好ましい。
【0062】
<アクリル酸エステル重合体>
アクリル酸エステル重合体はアクリル酸エステル系単量体から得られる構造単位である。当該アクリル酸エステル系単量体の例としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、アクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(o又はm又はp−トリル)、メタクリル酸(o又はm又はp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。これらの単量体は、二種以上を共重合成分として用いてもよい。これらのうち、工業的に入手が容易で、かつ安価な点で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものが好ましい。
【0063】
<重縮合エステル・アクリル酸エステル以外の可塑剤>
本発明に用いられる可塑剤としては、環状オレフィン系樹脂の可塑剤として知られる多くの化合物も有用に使用することができる。重縮合エステル以外の可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステル、糖エステル等の化合物が用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。
【0064】
(レターデーション発現剤)
本発明のフィルムはRthレターデーション値を発現するために、レターデーション発現剤を含有してもよいが、レターデーション発現剤の含有量は前記環状オレフィン系樹脂に対して8質量%以下であることが好ましく、1質量%以上であることが好ましい。前記レターデーション発現剤としては、特に制限はないが、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。上記棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂成分100質量部に対して8質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。前記レターデーション発現剤中に含まれる円盤状化合物が、前記環状オレフィン系樹脂100質量部に対して8質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、4質量部以下であることが特に好ましい。
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0065】
(円盤状化合物)
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニール類が好ましい。特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
【0066】
レターデーション発現剤が有する芳香族環の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることが更に好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0067】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環及びキノリン環が好ましい。
【0068】
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環又は非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0069】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−又はそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0070】
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
【0071】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、更に置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基及び2−ジエチルアミノエチル基の各基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及び1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基及び1−ヘキシニル基が含まれる。
【0072】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基及びブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、更に置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基及びエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0073】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基及びオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基及びエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基及びn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及び2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基及びジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基及びモルホリノ基が含まれる。
レターデーション発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
【0074】
円盤状化合物として下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物を用いることが好ましい。
【0075】
【化4】

【0076】
上記一般式(I)中:
201は、各々独立に、オルト位、メタ位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環又は複素環を表す。
201は、各々独立に、単結合又はNR202−を表す。ここで、R202は、各々独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。
【0077】
201が表す芳香族環は、フェニル又はナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。R201が表す芳香族環はいずれかの置換位置に少なくとも一つの置換基を有してもよい。前記置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基及びアシル基が含まれる。
【0078】
201が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子であることが好ましく、窒素原子であることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジル又は4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
201が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。ここで、−C49nは、n−C49を示す。
【0079】
【化5】

【0080】
202が表すアルキル基は、環状アルキル基であっても鎖状アルキル基であってもよいが、鎖状アルキル基が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素原子数は、1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8が更にまた好ましく、1〜6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)及びアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)が含まれる。
【0081】
202が表すアルケニル基は、環状アルケニル基であっても鎖状アルケニル基であってもよいが、鎖状アルケニル基を表すのが好ましく、分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基を表すのがより好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2〜30であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることが更に好ましく、2〜8であることが更にまた好ましく、2〜6であることが最も好ましい。アルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、前述のアルキル基の置換基と同様である。
202が表す芳香族環基及び複素環基は、R201が表す芳香族環及び複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基及び複素環基は更に置換基を有していてもよく、置換基の例にはR201の芳香族環及び複素環の置換基と同様である。
【0082】
一般式(I)で表される化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の方法等、公知の方法により合成することができる。レターデーション発現剤の詳細は公開技報2001−1745の49頁に記載されている。
【0083】
棒状化合物として、例えば、下記一般式(Ia)、(IIa)又は(IIIa)で表される化合物が好ましい。
【0084】
【化6】

【0085】
(式中、Rは、エーテル結合を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、Aは、トランス1,4シクロヘキシレン又は1,4フェニレンを表す。)
【0086】
【化7】

【0087】
(式中、Rは、エーテル結合を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、Aは、トランス1,4シクロヘキシレン又は1,4フェニレンを表し、Xは、シアノ基、エーテル結合を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を表す。)
【0088】
【化8】

【0089】
(式中、Rは、エーテル結合を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、Aは、トランス1,4シクロヘキシレン又は1,4フェニレンを表し、Xは、シアノ基、エーテル結合を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を表す。)
【0090】
一般式(Ia)で表される化合物において、Rはエーテル結合を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基である。エーテル結合を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、メトキシメチル、メトキシエチル等が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ、エトシキ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等が挙げられる。Rとしては、特に、粘度の点から、炭素原子数2〜7の直鎖のアルキル基が好ましく、具体的には、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチルが好ましい。また、Aは、トランス−1,4−シクロヘキシレン又は1,4−フェニレンである。
【0091】
一般式(IIa)で表される化合物において、Rはエーテル結合を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基である。エーテル結合を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、メトキシメチル、メトキシエチル等が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ、エトシキ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等が挙げられる。Rとしては、特に、粘度)の点から、炭素原子数2〜7の直鎖のアルキル基が好ましく、具体的にはプロピル、ペンチルが好ましい。
【0092】
また、Xはシアノ基、エーテル結合を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基である。エーテル結合を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、メトキシメチル、メトキシエチル等が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ、エトシキ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等が挙げられる。Xは、液晶性の広さ、屈折率異方性の大きさの点からはシアノ基、粘度の低さからはアルキル基、又はエーテル基を有するアルキル基が好ましい。
【0093】
また、Aは、トランス−1,4−シクロヘキシレン又は1,4−フェニレンである。
【0094】
一般式(IIIa)で表される化合物において、Rはエーテル結合を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基である。エーテル結合を有してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、メトキシメチル、メトキシエチル等が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトシキ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等が挙げられる。Rとしては、特に、粘度の点から、炭素原子数2〜7の直鎖のアルキル基が好ましく、具体的には、エチル、プロピル、ペンチル、ヘプチルが好ましい。
【0095】
また、Xはシアノ基、エーテル結合を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基である。エーテル結合を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、メトキシメチル、メトキシエチル等が挙げられ、炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ、エトシキ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等が挙げられる。Xは、シアノ基が好ましく、粘度低さや低温での保存性が良好である点からはアルキル基又はエーテル結合を有するアルキル基が好ましく、特に直鎖のアルキル基が好ましい。
【0096】
一般式(Ia)〜(IIIa)のいずれかで表される化合物の具体的な構造は特開2010−159361号に記載された化合物を用いることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本発明のレターデーション発現剤としては、前記低分子化合物と同様に、高分子系添加剤を使用することもできる。ここで、本発明において前記重縮合エステルとして用いられているポリマーがレターデーション発現剤としての機能を兼ねていてもよい。前記重縮合エステルでもある高分子系のレターデーション発現剤としては、前記芳香族ポリエステル系ポリマー及び前記芳香族ポリエステル系ポリマーとその他の樹脂の共重合体が好ましい。
【0098】
(レターデーション低減剤)
本発明ではレターデーション制御の手段の1つとして、レターデーション低減剤として、リン酸系であるエステル系の化合物や、環状オレフィン系樹脂フィルムの添加剤として公知の化合物を広く採用することができる。
【0099】
高分子系レターデーション低減剤としては、リン酸系であるポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマー及びアクリル系ポリマー及びこれら等の共重合体から選択され、アクリル系ポリマー及びスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
【0100】
低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。更にまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は環状オレフィン系樹脂溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
【0101】
低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に記載されている。
【0102】
特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に一般式(1)として記載される化合物は、以下の方法にて作成することができる。
該公報一般式(1)の化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
【0103】
特開2007−272177号公報一般式(2)に記載の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いた、カルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、又はカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0104】
(劣化防止剤)
本発明においては環状オレフィン系樹脂溶液に公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4、4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1、1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2、2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2、5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。更に、トリス(4−メトキシ−3、5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。劣化防止剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加する。
【0105】
(紫外線吸収剤)
本発明においては環状オレフィン系樹脂溶液に、偏光板又は液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2、2−メチレンビス(4−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2、4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1、3、5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、セルロースアシレートフィルム全体中に質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0106】
(マット剤)
本発明のフィルムは、マット剤を含有することが、フィルムすべり性、及び安定製造の観点から好ましい。前記マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0107】
これらのマット剤を環状オレフィン系樹脂溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望の環状オレフィン系樹脂溶液を得ることができれば問題ない。例えば、環状オレフィン系樹脂と溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、環状オレフィン系樹脂と溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003−053752号公報には、環状オレフィン系樹脂フィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lが、主原料配管内径dの5倍以下とする事で、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす発明が記載されている。更に好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)が、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とし、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器又は動的攪拌型管内混合器であることが記載されている。更に具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1〜500/1、好ましくは50/1〜200/1であることが開示されている。更に、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを目的とした発明の特開2003-014933号にも、添加剤を添加する方法として、溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で添加剤や添加剤を溶解又は分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
【0108】
(有機酸)
本発明のフィルムは、下記一般式(6)で表される有機酸を含むことが好ましい。
一般式(6)
X−L−(R1n
(式中、Xは酸解離定数が5.5以下の酸性基を表し、Lは単結合又は2価以上の連結基を表し、R1は炭素数6〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数6〜30の複素環基を表し、更に置換基を有していてもよい。nはLが単結合の場合は1であり、Lが2価以上の連結基の場合は(Lの価数−1)である。)
【0109】
前記一般式(6)で表される有機酸において、酸性基である前記X部分により溶液製膜設備(ドープを流涎するときの金属支持体)からの剥離性を改善することができる。
更に、酸性基である前記X部分が支持体の金属表面に付着し、特定の構造の疎水性基である前記R1部分が支持体の金属表面を酸素等の酸化剤からブロックすることにより、前記R1の範囲から外れる疎水性基を有する有機酸に比べて、金属の腐食を防止することができる。
以下、本発明のフィルムに用いることができる剥離促進剤について説明する。
【0110】
一般式(6)中、Xは酸解離定数が5.5以下の酸を表し、カルボキシル基、スルフォン酸基、スルフィン酸基、リン酸基、スルフォンイミド基、アスコルビン酸基が好ましく、カルボキシル基、スルフォン酸基が更に好ましく、カルボキシル基が最も好ましい。なお、Xがアスコルビン酸基を表す場合は、アスコルビン酸の水素原子のうち、5位、6位の位置の水素原子が外れてLと連結していることが好ましい。
本明細書中、酸解離定数としては、化学便覧、丸善株式会社刊に記載の値を採用する。
【0111】
一般式(6)中、R1は水素原子、炭素数6〜30のアルキル基(置換基を有してもよい)、アルケニル基(置換基を有してもよい)、アルキニル基(置換基を有してもよい)、アリール基(置換基を有してもよい)、複素環基(置換基を有してもよい)を表す。置換基として、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、水酸基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルフォンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基等が挙げられる。
1は更に好ましくは、炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基
であり、最も好ましくは炭素数10〜24の直鎖のアルキル基、アルケニル基である。
【0112】
一般式(6)におけるLは、単結合、あるいは、下記ユニット群から得られる2価以上の連結基又は下記ユニット群から選択される2以上のユニットを組み合わせて得られる2価以上の連結基であることが好ましい。ユニット:−O−、−CO−、−N(−R2)−(前記R2は炭素数1〜5のアルキル基)、−CH=CH−、−CH(OH)−、−CH2−、−SO2−、
【0113】
【化9】

【0114】
一般式(6)におけるLは、単結合、エステル基由来の連結基(−COO−、−OCO−)、又はアミド基由来の連結基(−CONR2−、−NR2CO−)を部分構造として有することが特に好ましい。
また、前記Lは、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限はなく前記R1が有していてもよい置換基を挙げることができるが、その中でも−OH基が好ましい。
これらの中でも、前記Lはグリセリン由来の基を含む連結基であることがより好ましい。
【0115】
前記Lとしては、具体的に以下の構造であることが好ましい。但し、以下においてp、q、rはそれぞれ1〜40の整数を表し、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜6であることが特に好ましい。また、qは2〜4であることがより特に好ましい。
−(CH2p−CO−O−(CH2q−O−;
−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OH))−(CH2r−O−;
−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OCO−R3))−(CH2r−O−;
−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OH))−(CH2r−O−CO−;
−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OCO−R3))−(CH2r−O−CO−。
【0116】
なお、上記のLの具体例に含まれるR3は、前記一般式(6)における前記R1と同義である。すなわち、−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OCO−R3))−(CH2r−O−という連結基におけるR3は便宜上Lの内部に記載しているだけであり、連結基LはR3を除いた部分を意味する。つまり、この場合Lは3価である。一般式(6)で表すと、X−L−(R12、[但しLは−(CH2p−CO−O−(CH2q−(CH(OCO−))−(CH2r−O−を表す]と記載でき、すなわちこのときの連結基Lは3価の連結基となっている。
前記Lと前記Xはエステル結合又はアミド結合で結合していることが好ましく、エステル結合で結合していることがより好ましい。また、前記Xにはエステル結合やアミド結合が存在しない方が好ましい。
前記Lと前記R1はエステル結合、エーテル結合又はアミド結合で結合していること
が好ましく、エステル結合又はアミド結合で結合していることがより好ましく、エステル結合で結合していることが特に好ましい。また、前記R1にはエステル結合やエーテル結合やアミド結合が存在しない方が好ましい。
【0117】
以下に前記一般式(6)で表される有機酸の好ましい具体例を以下に挙げる。
《脂肪酸》
ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、ウンデカン酸。
《アルキル硫酸》
ミリスチル硫酸、セチル硫酸、オレイル硫酸。
《アルキルベンゼンスルフォン酸》
ドデシルベンゼンスルフォン酸、ペンタデシルベンゼンスルフォン酸。
《アルキルナフタレンスルフォン酸》
セスキブチルナフタレンスルフォン酸、ジイソブチルナフタレンスルフォン酸。
《ジアルキルスルフォコハク酸》
ジオクチルスルフォコハク酸、ジヘキシルスルフォコハク酸、ジシクロヘキシルコハク酸、ジアミルスルフォコハク酸、ジトリデシルシクロコハク酸。
【0118】
《多価有機酸の一部誘導体》
前記一般式(6)で表される有機酸は、多価有機酸の一部誘導体であることが好ましい。本明細書中、多価有機酸の一部誘導体とは、多価アルコール1分子に脂肪酸1分子と多価有機酸がエステル結合した構造を有しており、多価カルボン酸由来の無置換の酸性基を少なくとも1つ有する化合物のことを言う。なお、本明細書中、脂肪酸とは、脂肪族モノカルボン酸を意味する。すなわち、本明細書中における脂肪酸は、いわゆる高級脂肪族に限定されるものではなく、酢酸やプロピオン酸などの炭素数12以下の低級脂肪酸も含まれる。
前記多価有機酸の一部誘導体は、多価カルボン酸の一部誘導体であることが好ましい。すなわち、前記一般式(6)で表される有機酸は、多価アルコール1分子に脂肪酸1分子と多価カルボン酸1分子がエステル結合した構造を有しており、多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を少なくとも1つ有することが好ましい。前記多価カルボン酸の一部誘導体に用いられる多価カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸が好ましい。
【0119】
前記多価有機酸の一部誘導体に用いられる前記多価アルコールとしては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、グリセリン等を挙げることができる。その中でも、グリセリンが好ましく、前記一般式(6)で表される有機酸はいわゆる有機酸グリセリドであることが好ましい。
【0120】
前記一般式(6)で表される有機酸としては、有機酸の酸性基Xが、グリセリン由来の基を含む連結基Lを介して、疎水性部R1と結合している有機酸グリセリド(グリセリン脂肪酸有機酸エステル)が好ましい。ここで、本明細書中における有機酸グリセリドとは、グリセリンの3個の水酸基のうち1個又は2個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基のうち1個又は2個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物のことを言う。
その中でも、有機酸モノグリセリド又は有機酸ジグリセリドがより好ましく、有機酸モノグリセリドがより特に好ましい。本明細書中における有機酸モノグリセリドとは、グリセリンの3個の水酸基のうち1個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基のうち1個又は2個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物のことを言う。本明細書中における有機酸ジグリセリドとは、グリセリンの3個の水酸基のうち2個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基1個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物のことを言う。
【0121】
前記有機酸モノグリセリドの中でも、グリセリンの3個の水酸基のうち1個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基のうち1個が無置換の水酸基であり、残りの水酸基1個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物であることがより特に好ましい。前記有機酸モノグリセリドの脂肪酸とエステル結合している水酸基は非対称の位置(いわゆるαモノグリセリドの位置)であることが好ましく、前記有機酸モノグリセリドの多価有機酸とエステル結合している水酸基は同様に非対称の位置(いわゆるαモノグリセリドの位置)であることが好ましい。すなわち、前記有機酸モノグリセリドの中でも、無置換の水酸基を有し、かつ脂肪酸とエステル結合している水酸基の直結する炭素原子と、多価有機酸とエステル結合している水酸基の直結する炭素原子とが隣り合わない構造の化合物であることが好ましい。
【0122】
前記有機酸モノグリセリドの中でも、多価カルボン酸のモノグリセリドがより特に好ましい。前記多価カルボン酸のモノグリセリドとは、多価カルボン酸のうち、少なくとも1つが無置換のカルボキシル基を有し、その他のカルボキシル基がモノグリセリドで置換されている有機酸のことを言う。すなわち、グリセリン1分子に脂肪酸1分子と多価カルボン酸1分子が結合したカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドが特に好ましい。
【0123】
前記多価カルボン酸のモノグリセリドに用いられる前記多価カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸が好ましい。
前記多価カルボン酸のモノグリセリドに用いられる前記脂肪酸は限定されないが、炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸が好ましく、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等があげられる。
【0124】
本発明で使用することができるカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドは、一般的には、特開平4−218597号公報、特許第3823524号公報等に記載されている方法に従って、多価有機酸の無水物と脂肪酸モノグリセリドを反応させることにより得られる。
反応は、通常、無溶媒条件下で行われ、例えば無水コハク酸と炭素数18の脂肪酸モノグリセリドの反応では、温度120℃前後においえて90分程度で反応が完了する。かくして得られた有機酸モノグリセリドは、通常、有機酸、未反応モノグリセリド、ジグリセリド、及びその他オリゴマーを含む混合物となっている。本発明においては、このような混合物のまま使用してもよい。
前記カルボキシル基含有有機酸モノグリセリドの純度を高めたい場合は、上記のような混合物中のカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドを蒸留等により精製すればよく、また、純度の高いカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドとしては、蒸留モノグリセリドとして市販されているものを使用できる。前記カルボキシル基含有有機酸モノグリセリドの市販品としては、例えば、同ポエムK−37V(グリセリンクエン酸オレイン酸エステル)、花王社製ステップSS(グリセリンステアリン酸/パルミチン酸コハク酸エステル)等があげられる。
【0125】
本発明のフィルムに含まれる前記一般式(6)で表される有機酸の添加量は、前記環状オレフィン系樹脂に対して0.1質量%〜20質量%の割合であり、0.5質量%〜10質量%であることが特に好ましく、0.6質量%〜5質量%であることがより特に好ましく、1.5質量%〜5質量%であることがより特に好ましい。
添加量が0.1%以上であれば偏光子耐久性改良効果及び剥離性改良効果が十分となる。また、20質量%以下の添加量であれば、高温高湿経時において有機酸がブリードアウトし難く、偏光板の直交透過率が上昇しにくく、好ましい。
前記一般式(6)で表される有機酸の分子量は、200〜1000であることが好ましい。
【0126】
《光安定剤》
光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物が挙げられ、これは既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。このような化合物には、下記一般式(7)で表される化合物が含まれる。
【0127】
【化10】

【0128】
上記一般式(7)中、R及びRは、H又は置換基である。ヒンダードアミン光安定剤化合物の具体例には、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリト酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジブチル−アジパミド、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、α−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル。好ましいヒンダードアミン光安定剤の例には、以下のHALS−1及びHALS−2が含まれる。以下において、nは繰り返し単位数を表す。
【0129】
【化11】

【0130】
《酸捕捉剤》
酸捕捉剤としては、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸捕捉剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油等の組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリド又は不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、及び下記一般式(8)で表される他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
【0131】
【化12】

【0132】
上記一般式(8)中、nは0〜12である。用いることができる更に可能な酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
【0133】
《酸化防止剤》
本発明においては、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために、環状オレフィン系樹脂等の樹脂混合物が酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明において、好ましい酸化防止剤は、リン系又はフェノール系酸化防止剤であり、少なくとも1種以上のリン系酸化防止剤(りん系劣化防止剤)を含有することが好ましい。特にリン系とフェノール系酸化防止剤を同時に組み合わせるとより好ましい。
【0134】
[フィルムの製造方法]
<環状オレフィン系樹脂をフィルム状に形成する工程>
本発明の製造方法では、環状オレフィン系樹脂をフィルム状に形成する工程において、溶液流延製膜法を用いても、溶融製膜法を用いてもよい。
【0135】
(溶液製膜法)
(ドープの製造)
本発明の製造方法において、ドープ中に含まれていることが好ましい各成分について説明する。
【0136】
本発明に用いられるドープにおいて、環状オレフィン系樹脂の量は、得られるドープ中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。環状オレフィン系樹脂の量は、10〜30質量%であることが更に好ましい。
【0137】
本発明の製造方法においてドープ中に用いられる溶媒は、溶液流延に用いられる溶媒であれば公知のものを採用することができるが、よりヘイズを低下させる観点から、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0138】
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることが更に好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素の例として、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化メチル、四塩化炭素、トリクロル酢酸、臭化メチル、ウ化メチル、トリ(テトラ)クロロエチレン等が挙げられ、少なくともジクロロメタンを含むことが好ましい。
【0139】
本発明では更に、貧溶媒を3〜30質量%の割合で含むことが好ましく、5〜20質量%の割合で含むことがより好ましい。貧溶媒を上記範囲内で含むことにより、セルロースアシレートとの相溶性が向上し、ヘイズがより低下する傾向にあり好ましい。
更に、貧溶媒の沸点は、120℃以下であることが好ましく、40〜100℃であることがより好ましい。沸点を120℃以下とすることにより、溶媒の乾燥速度をより早くすることができ好ましい。このような貧溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及び水が好ましい例として挙げられ、メタノールがより好ましい。
【0140】
一般的な方法で前記ドープを調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温又は高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。ドープは、常温(0〜40℃)でセルロースアシレートと溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、環状オレフィン系樹脂と溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、更に好ましくは80〜110℃である。
【0141】
各成分は予め粗混合してから容器(タンク等)に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0142】
冷却溶解法により、前記ドープを調製することもできる。
【0143】
(製膜工程)
本発明では、調製したドープから、ソルベントキャスト法により環状オレフィン系樹脂フィルムを製造することが好ましい。
【0144】
本発明のフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供するのと同様の溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(環状オレフィン系樹脂溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0145】
ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離することが好ましい。得られるウェブの両端をクリップで挟み、テンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
調製したドープは、無端金属支持体上、例えば金属ドラム又は金属支持体(バンドあるいはベルト)上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成することが好ましい。流延前のドープは、セルロース量が10〜35質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
更に特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平7−032391号、特開平3−193316号、特開平5−086212号、特開昭62−037113号、特開平2−276607号、特開昭55−014201号、特開平2−111511号、及び特開平2−208650号の各公報に記載のセルロースアシレート製膜技術を本発明では応用できる。
【0147】
ドープは、表面温度が30℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましく、特には−50〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。本発明の製造方法は、前記金属支持体上に流延された前記ドープに対して、該金属支持体の裏面及び表面の双方から乾燥風を吹き当てることが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラム又はバンドから剥ぎ取り、更に100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラム又はバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0148】
本発明の製造方法は、前記ドープとして、環状オレフィン系樹脂の種類や濃度等が互いに異なる2種以上のドープを用い、支持体上に各ドープを共流延することが好ましい。
本発明のフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、特に同時共流延法を用いることが、安定製造及び生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法及び逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用の環状オレフィン系樹脂溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンド又はドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でも良い)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
【0149】
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつ又は両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
【0150】
(剥ぎ取り)
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブの残留揮発分(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0151】
本発明の製造方法は、環状オレフィン系樹脂の種類によらず、前記フィルムを金属支持体から下記式(i)を満たす残留揮発分H1で剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。
式(i) 20%≦H1≦60%
前記H1は22〜55%であることが好ましく、25〜45%であることが特に好ましい。
残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0152】
ドラムやベルト上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送されることが好ましい。
【0153】
本発明の製造方法は、前記剥ぎ取り工程から前記延伸工程までの渡り部分において、前記フィルムが少なくともラップ角60°以上のパスロールを3本以上通過することが好ましく、5本以上のパスロールを通過することがより好ましく、7本〜51本のパスロールを通過することが特に好ましい。また、本発明の製造方法は、上述のとおり、前記ラップ角60°以上のパスロールとして少なくとも1本のダンサを含むことが好ましく、前記ダンサは1本であることが好ましい。なお、本明細書におけるラップ角とは、フィルムがロールをラップしている円弧領域とロール中心とを結ぶ中心角の大きさを意味し、例えば完全な千鳥状に配置されたロールをフィルムが通過する場合のラップ角は180度となる。
【0154】
乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
【0155】
(延伸工程)
本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を延伸する工程を含むことができる。
【0156】
本発明の製造方法は、剥ぎ取られたフィルムを、下記式(ii)を満たす残留揮発分H2の状態でフィルム搬送方向に2〜100%で延伸する工程と、剥ぎ取られたフィルムを、下記式(i)を満たす残留揮発分H3の状態でフィルム搬送方向に直交する方向に2〜150%延伸する工程を含み、前記延伸工程が下記式(iv)を満たすことが好ましい。式(ii) 10%≦H2≦60%式(iii) 5%≦H3≦45%式(iv) TD延伸倍率≧2%(式中、TD延伸倍率はフィルム搬送方向に直交する方向への延伸倍率(単位:%)を表す。)
【0157】
フィルム搬送方向への延伸における延伸倍率は、1〜25%であることが好ましく、1〜10%であることがより好ましい。
なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
【0158】
ウェブをフィルム搬送方向に延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。前記縦方向への延伸は、2つのニップロールを有する装置を用い、入口側のニップロールの回転速度よりも、出口側のニップロールの回転速度を速くすることにより、搬送方向(縦方向)に環状オレフィン系樹脂フィルムを好ましく延伸することが好ましい。このような延伸を行うことによって、レターデーションの発現性も調整することができる。
【0159】
また、このとき前記H2は20〜55%であることが好ましく、25〜50%であることがより好ましい。
ウェブ中の残留揮発分が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。
【0160】
本発明の製造方法は、前記フィルム搬送方向への延伸を、テンション変動値が10N/m未満の状態に制御しながら延伸することが好ましく、8N/m未満に制御することがより好ましく、0N/m〜6N/mに制御することが特に好ましい。
フィルム搬送方向に直交する方向への延伸における延伸倍率は、1〜60%であることが好ましく、1〜10%であることがより好ましい。
【0161】
ウェブをフィルム搬送方向に直交する方向に延伸する方法には特に限定はない。例えば、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。本発明においては、フィルム搬送方向に直交する方向に延伸する方法として、テンター装置を用いて延伸することが好ましい。
【0162】
また、このとき前記H3は8〜40%であることが好ましく、10〜35%であることがより好ましい。
ウェブ中の残留揮発分が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。
【0163】
また、フィルム幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、例えばテンター法を用いた場合にみられることがあるが、幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボ−イング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボ−イング現象を抑制でき、幅手の位相差の分布を少なく改善できるのである。更に、互いに直交する2軸方向に延伸することにより得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。環状オレフィン系樹脂フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなる。環状オレフィン系樹脂フィルムの膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的においても、式(iv)を満たすように互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効である。
【0164】
本発明の製造方法では、延伸温度がTe+30℃以下、但し
延伸温度≦Te+30℃ (Ib)
Te=T[tanδ]−ΔTm (IIb)
ΔTm=Tm(0)−Tm(x) (IIIb)
(式(IIb)中、T[tanδ]は残留溶媒量が0%のときの環状オレフィン系樹脂の動的粘弾性tanδを測定した際にtanδがピークを示す温度を表し、Tm(0)は残留溶媒量が0%のときの環状オレフィン系樹脂の結晶融解温度を表し、Tm(x)は該環状オレフィン系樹脂に対する残留溶媒量がx%のときの環状オレフィン系樹脂の結晶融解温度を表す。)、であることが好ましい。
【0165】
以下、このような温度範囲での延伸を低温延伸とも言う。フィルム状に形成されたフィルムを低温延伸することにより、本発明のフィルムの膜厚を厚くせずにRth発現性を高めることができ、すなわちRth(550)/dをより高めることができ、好ましい。いかなる理論に拘泥するものでもないが、前記低温延伸では延伸中のポリマーや添加剤の配向が高温延伸時よりもおきにくいため、Rthを低下させずに、Reを発現することができる。前記延伸温度はTe−30〜Te℃であることがより好ましい。フィルム搬送方向に延伸する場合も、フィルム幅方向に延伸する場合も好ましい範囲は同様である。
【0166】
(熱処理工程)
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に前述のような熱処理工程を設けてもよい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。
【0167】
熱処理は、搬送中のフィルムに所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法により行われる。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことが更に好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことが更に好ましい。
【0168】
(巻き取り)
得られたフィルムを巻き取る巻き取り機には、一般的に使用されている巻き取り機が使用でき、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロ−ル法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。以上の様にして得られた環状オレフィン系樹脂フィルムロールは、フィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±2度であることが好ましく、更に±1度の範囲であることが好ましい。または、巻き取り方向に対して直角方向(フィルムの幅方向)に対して、±2度であることが好ましく、更に±1度の範囲にあることが好ましい。特にフィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±0.1度以内であることが好ましい。あるいはフィルムの幅手方向に対して±0.1度以内であることが好ましい。
【0169】
(残留揮発分)
以上の本発明のフィルムの製造方法によって得られた環状オレフィン系樹脂フィルムは、最終仕上がりフィルムの残留揮発分で1質量%以下、更に0.2質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
【0170】
なお、本発明の製造方法では、インラインでフィルム長手方法の遅相軸方位を検出しながら、フィルムを製造する工程を含んでいてもよい。その場合の好ましい態様は、本発明のフィルムのフィルム長手方法の遅相軸方位の標準偏差をインラインで求める方法として上述した態様と同様である。
【0171】
(溶融製膜法)
次に、フィルムの製造方法として、溶融製膜法について説明する。
溶融製膜法は、押出機などにより、熱により、本発明の環状オレフィン系樹脂を含む組成物を溶融し、ダイから押し出すことにより製膜する方法である。より詳細には、例えば、以下の方法を挙げることができる。
【0172】
本発明のフィルムの溶融製膜法による好ましい製造方法は、熱可塑性樹脂である本発明の環状オレフィン系樹脂を含有する組成物をダイから溶融押出しする工程と、溶融押出しされた溶融物(以下、メルトともいう)を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧してフィルム状に成形する工程と、を含むフィルムの製造方法において、
該ダイ中央部分から出た溶融物の温度と該ダイ端部から出た溶融物の温度の温度差が10℃以内となるように溶融押出しし、前記挟圧装置によって該溶融物に20〜500MPaの圧力を与え、前記挟圧装置によって該溶融物1m幅あたり3000〜30000Nのせん断応力を与え、前記第一挟圧面の移動速度を前記第二挟圧面の移動速度よりも速くすることを特徴とする。
【0173】
前記第一挟圧面と第二挟圧面とで速度の異なる挟圧装置としては、例えば互いに周速が異なる2つのロールの組合せや、特開2000−219752号公報に記載の互いに速度の異なるロールとタッチベルトの組合せ(片面ベルト方式)や、ベルトとベルトの組合せ(両面ベルト方式)等が挙げられる。この中でも、20〜500MPaの高圧を均一にかけられること、及び傾斜構造の発現性の観点から、から、互いに周速が異なる2つのロールであることが好ましい。ロール圧力は、圧力測定フィルム(富士フィルム社製 中圧用プレスケール等)を2つのロールに通すことで測定することが出来る。
以下、本発明のフィルムの溶融製膜法による製造方法(以下、本発明の製造方法ともいう)について詳細に説明する。
【0174】
(溶融押出し)
本発明の製造方法では、まず、前記熱可塑性樹脂(環状オレフィン系樹脂)を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を溶融押出しする。溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
【0175】
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、更に好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることが更に好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
【0176】
次に、乾燥したペレットを、押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練及び溶融させる。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。押出温度は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。更に残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
【0177】
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、更に好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
【0178】
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
【0179】
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。前記ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。
【0180】
本発明の製造方法では、ダイ中央部分から出た溶融物の温度と該ダイ端部から出た溶融物の温度の温度差が10℃以内となるようにダイの放熱量を制御する。すなわち、ダイが全幅において一定温度ではない。一般に、ダイから出たメルトの両端は外気と接触し易いため、温度が低下し易い。
【0181】
本発明の製造方法では、前記温度差を付与するに特に制限は無いが、以下の方法のいずれか一つ、または複数を組み合わせて前記温度差を付与することが好ましい。
【0182】
(1) 前記ダイの中央部の放熱量をダイ両端部の放熱量よりも高くすることにより前記温度差を付与する方法。具体的には、ダイ中央部にファンやファンを取り付け、両端部にはそれらを取り付けないことによって、放熱率を調整する方法が挙げられる。
【0183】
(2) ダイの中央部からダイ両端部にかけて前記ダイの放熱量を連続的に減少させることにより前記温度差を付与する方法。具体的には、ダイ全体を均一な断熱材で覆い、断熱材を両端部から中央部にむかって次第に薄くなるように断熱材を削る方法が挙げられる。
【0184】
(3) 前記ダイの両端部を断熱効果の高い断熱部材で覆い、前記ダイの中央部を断熱効果の低い断熱部材で覆うことにより前記温度差を付与する方法。具体的には、ダイ全体を均一な断熱材で覆い、断熱材の中央部のみに微細な穴をあける方法が挙げられる。また、熱伝導率の異なる断熱材をダイ中央部、ダイ両端部にそれぞれ設置する方法が挙げられる。
【0185】
(4) 前記ダイを組成が同一である断熱部材で覆い、かつ、ダイ両端部の該断熱部材の厚みを大きくし、前記ダイの中央部の該断熱部材の厚みを小さくすることで前記温度差を付与する方法。具体的には、熱伝導率が等しく、厚みが異なる断熱材2種を用い、ダイ中央部、ダイ両端部にそれぞれ設置する方法が挙げられる。
【0186】
(5) 前記ダイの両端部の外表面を覆う断熱部材の面積を、ダイの中央部の外表面を覆う断熱部材の面積よりも大きくすることで前記温度差を付与する方法。具体的には、ダイ両端部を完全にある断熱材で覆い、ダイ中央部は同じ断熱材を用いて一部のみ覆う方法が挙げられる。また、ダイ両端部を完全にある断熱材で覆い、ダイ中央部は断熱材を用いない方法も挙げられる。
【0187】
(6) 前記ダイが、ダイ両端部の外表面積よりもダイの中央部の外表面積が大きい形状であることにより前記温度差を付与する方法。具体的には、ダイの幅方向の放熱度合いが異なるようにする態様が挙げられる。このような方法としては、ダイ両端部の外表面積よりもダイの中央部の外表面積が大きい形状になるように、ダイに溝を掘る等、ダイ自体を加工する方法が挙げられる。
【0188】
なお、断熱材の熱伝導率を制御する方法としては、異なる材質の断熱材を用いる方法や、発泡率の異なる断熱材を用いる方法が挙げられる。また前記断熱材としては特に制限はないが、発泡ポリイミドや、ガラスウールなどを用いることができる。
【0189】
本発明の製造方法では、前記(1)〜(6)の方法によって前記温度差を付与する際に、ダイの設定温度を中央部と両端部で同じ温度にすることが、溶融物の温度均一性をより正確に制御する観点から好ましい。
【0190】
ダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜30倍がよく、好ましくは5.0〜20倍である。本発明の製造方法において、ダイリップの先端の曲率半径は特に制限はなく、公知のダイを用いることができる。
【0191】
前記ダイは5〜50mm間隔で製膜するフィルムの厚みを調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整装置にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、更に好ましくは4分〜30分である。
【0192】
(キャスト)
次に、熱可塑性樹脂の溶融物をダイからフィルム状に押し出し、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧し、冷却固化して、フィルムを得る。この際、第一挟圧面と第二挟圧面のうち、いずれか一方の面と溶融物が先に剥離し、その後もう一方の面と溶融物が剥離することが生産性の安定化及び剥離不良に起因する面状不良を抑制するという観点から好ましい。本発明の製造方法において第一挟圧面の移動速度は前記第二挟圧面の移動速度よりも速いが、先に剥離する側の面は、第一挟圧面であっても第二挟圧面であってもよいが、剥離ダンを抑制する観点から、先に先に剥離する側の面は、第一挟圧面(移動速度が速い挟圧面)であることが好ましい。
【0193】
本発明の製造方法では、溶融押出しされた溶融物を挟圧装置を構成する第一挟圧面と第二挟圧面の間に連続的に挟圧する際に、挟圧装置間に圧力を20〜500MPaかけることが好ましい。挟圧装置間の圧力をこの範囲とすることで、メルト内に温度むら(粘度むら)が存在してもスリップを発生しにくくでき、擦り傷を発現しにくい。20MPa以上であれば挟圧装置がスリップしにくく、これに因る擦り傷が発生しにくい。500MPa以下であれば僅かなスリップで傷がつくことを防止でき、好ましい。より好ましい圧力は25〜400MPaであり、更に好ましくは30〜250MPaである。
更に、上記挟圧装置間圧力とすることで上記γを達成できる。即ち、20MPa以上であれば十分に速度差の効果を発現でき(ズリの効果をフィルムに十分伝えることができ)、上記γを発現できる。一方500MPa以下であれば剪断力がメルトに伝播しすぎず、γが大きくなりすぎない。いずれの場合も液晶表示板に組み込んだ際の視野角が向上し、このように視野角が向上すると液晶表示板に組んだ際に画像が視認し易くなり、この結果干渉むらが視認されにくくなり好ましい。
【0194】
本発明の製造方法では、下記式(I)で定義される前記挟圧装置の第一挟圧面と第二挟圧面の移動速度比を0.60〜0.99に調製し、溶融樹脂が挟圧装置を通過する際にせん断応力を付与し、本発明のフィルムを製造することが好ましい。挟圧装置の移動速度比は、0.60〜0.99とすることが好ましく、0.75〜0.98とすることがより好ましい。
移動速度比=第二挟圧面の速度/第一挟圧面の速度 (I)
【0195】
本発明の製造方法における溶融物の粘度の範囲は、300〜8000Pa・sであることが好ましく、500〜6000Pa・sであることがより好ましく、700〜4000Pa・sであることが特に好ましい。なお、ここで云う溶融物の粘度とは、溶融物がダイから押し出された瞬間の温度における粘度を指す。
【0196】
(吐出温度)
本発明の製造方法では、吐出温度(ダイ出口の樹脂温度)は、ダイ中央部分から出た溶融物の温度と、ダイ端部から出た溶融物の温度の温度差が10℃以内であることを特徴とする。このようにダイから吐出された溶融物の温度を幅方向均一に制御することにより、得られるフィルムのRe[0°]のMD方向のむらとγのMD方向のむらを本発明の範囲内に制御することができる。また、同時にフィルム耳部としてカットされるようなRe[0°]のMD方向のむらとγのMD方向のむらが悪い端部を著しく少なくすることができる。
また、前記吐出温度は共に、樹脂の成形性向上と劣化抑制の観点から、Tg+50〜Tg+200℃であることが好ましく、Tg+70〜Tg+180℃であることがより好ましく、Tg+90〜Tg+150℃であることが特に好ましい。すなわち、Tg+50℃以上であれば、樹脂の粘度が十分低くなるため成形性が良好となり、Tg+200℃以下であれば、樹脂が劣化しにくい。
【0197】
(吐出量)
本発明の製造方法では、前記ダイから押出される溶融物の流量が、ダイ吐出口面積あたり2.5〜30Kg/cm2であることがRe[0°]のMD方向のむらとγのMD方向のムラを小さくする観点から好ましい。前記ダイから押出される溶融物の流量は3〜25Kg/cm2であることがより好ましく、4〜20Kg/cm2であることが特に好ましい。
【0198】
(エアーギャップ)
本発明の製造方法では、エアーギャップ(ダイ出口から挟圧装置の溶融物着地点までの距離)は、ダイと挟圧装置間におけるメルトの保温の観点から、可能な限り近接することが好ましく、具体的には10〜300mmであることが好ましく、より好ましくは、20〜250mm、特に好ましくは、30〜200mmである。
【0199】
(せん断応力)
本発明の製造方法では、前記挟圧装置によってメルト1m幅あたり3000〜30000Nのせん断応力を与える。前記せん断応力は、5000〜28000Nであることが好まし8000〜25000Nであることがより好ましい。
【0200】
(2つのロールを用いたキャスト)
前記挟圧装置置間を連続的に通過させる方法の中でも、2つのロール(例えば、タッチロール(第1ロール)及びチルロール(第2ロール))間を通過させることが好ましい。なお、本明細書では、前記溶融物を搬送するキャスティングロールを複数有している場合、最上流のダイに最も近いキャスティングロールのことをチルロールともいう。以下、2つのロールを用いた本発明の製造方法の好ましい態様を説明する。
【0201】
本発明のフィルムの製造方法では、前記ダイから押し出された溶融物の着地点に特に制限はなく、該ダイから押出されたメルトの着地点と、該タッチロールと該キャストロールとが最も接近する部分における隙間の中点を通る鉛直線との距離がゼロであっても、ずれていてもよい。
前記メルトの着地点とは、ダイから押し出されたメルトが初めてタッチロールあるいはチルロールに接触(着地)する地点を指す。また前記タッチロールとキャストロールの隙間の中点とは、タッチロールとキャストロールの隙間が最も狭くなった所のタッチロール表面とキャストロール表面の中点を指す。
【0202】
本発明のフィルムの製造方法では、Re[0°]のMD方向のむらとγのMD方向のムラを小さくする観点から、前記2つのロールにより挟圧される溶融物の長さ(ニップ幅)が0mmより大きく2mm以下であることが好ましく、0.3〜1.8mmであることがより好ましく、0.5〜1.5mmであることが特に好ましい。
【0203】
前記2つのロール(例えば、タッチロールやキャスティングロール)の表面は、算術平均高さRaが100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは25nm以下である。
【0204】
本発明の製造方法では、前記2つのロール間のタッチ圧は、20〜500MPaである。より好ましいタッチ圧は、前記挟圧装置間の圧力の効果と同様である。
【0205】
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、シリンダー設定値を適宜変更することとなる。前記シリンダー設定値は、用いる樹脂材料や2つのロールの材質によっても異なるが、例えば、フィルム状の溶融物の実効幅が2000mmの場合、30〜1000KNであることが好ましく、40〜800KNであることがより好ましく、50〜500KNであることが特に好ましい。
【0206】
本発明の製造方法では、前記範囲のロール圧力を加圧するために、ロールのショア硬さが45HS以上のロールを使用することが好ましい。好ましい前記2つのロールのショア硬さは50HS以上であり、更に好ましくは60〜90HSである。ショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点及び周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
【0207】
前記2つのロールの材質は、製膜幅1m以上の広幅製膜や、製膜速度10m/分以上の高速製膜を達成できる観点から、金属であることが好ましい。即ち広幅製膜や高速製膜を行うとタッチロールに加える応力が大きくなり、ロール変形が大きくなる。金属ロールを用いることで剛性が強く、広幅化に伴い応力が増加しても変形しにくくなり、これに伴うタッチ不良も発生しにくいため、擦り傷の発生が抑制される。また、前記ショア硬さを達成する観点からも前記2つのロールの材質は金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。また、2つのロールの材質は金属であれば、表面の凹凸が小さく、フィルムの表面に傷が付きにくいため、好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールは、前記ロール圧力を達成できれば特に制限なく用いることができる。
【0208】
本発明の製造方法では、前記タッチロールの厚みは、製膜幅1m以上の広幅製膜や製膜速度10m/分以上の高速製膜を達成できる観点から、6mm〜45mmであることが好ましく、より好ましくは10mm〜40mm、更に好ましくは15mm〜35mmである。タッチロールの厚みが6mm以上であれば、広幅製膜や高速製膜としても撓みが発生しにくく、これによる擦り傷が抑制でき好ましい。タッチロールの厚みが45mm以下であれば、ロール内部に循環させる媒体との熱交換性悪化が防止でき、光学ムラが発生し難いのみでなく、ロールが剛直すぎず、メルトの厚みむら等に応じて適宜微妙に変形できる。このように微妙に変形できるロールを用いることでスリップ発生を抑制でき、擦り傷発生を抑制できるため好ましい。本発明では、このような厚みのロールを用いることで更に擦り傷の発生を抑制でき、干渉ムラを抑制できることができる。従来金属製のタッチロールは特開平11−235747号公報のように2〜5mmと薄いものか、カレンダーロールのように厚み50mm以上が用いられており、6mm〜45mmの厚みのロールを用いることや、このような厚みのロールを採用した際の効果については知られていなかった。
【0209】
前記タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
【0210】
〈延伸工程〉
本発明では、溶融製膜方法により得られたフィルムは、特にニ軸延伸処理を行うことが好ましく、縦(フィルム搬送方向、MD方向とも呼ぶ)、横(巾方向、TD方向とも呼ぶ)両方向にそれぞれ延伸することが好ましい。溶融製膜法により得られたフィルムは厚み方向のレタデーション(Rth)が発現しにくいため、延伸することで厚み方向の配向性を上げ、所望のRthを得ることができる。
横延伸及び/又は縦延伸と組み合わせて緩和処理を行ってもよい。これらは例えば以下の組合せで実施できる。
(1)横延伸
(2)横延伸→緩和処理
(3)縦延伸→横延伸
(4)縦延伸→横延伸→緩和処理
(5)縦延伸→緩和処理→横延伸→緩和処理
(6)横延伸→縦延伸→緩和処理
(7)横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
(8)縦延伸→横延伸→縦延伸
(9)縦延伸→横延伸→縦延伸→緩和処理
(10)縦延伸
(11)縦延伸→緩和処理
これらの中でより好ましいのが、(3)〜(9)であり、さらに好ましいのが(3)〜(7)である。これらの中でより好ましいのが、(3)、(6)である。さらにこのような均一な延伸により、フィルム内で丸まっていた分子を効率的に引き延ばすことができ、この結果分子間で絡み合いを形成することができ、破断強度を向上させる効果も有する。
また、延伸方向により面内レターデーションも上昇してしまうこともあるので、MD方向の延伸倍率とTD方向の延伸倍率を調整することにより、面内方向のレターデーションをキャンセルすることが好ましい。そのため、MD方向の延伸倍率/TD方向の延伸倍率の比率は0.8〜1.2であることが好ましく、0.9〜1.1であることがより好ましい。
【0211】
(縦延伸)
縦延伸は2対のニップロールを設置し、この間を加熱しながら出口側のニップロールの周速を入口側のニップロールの周速より速くすることで達成できる。この際、ニップロール間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。縦延伸と横延伸の比L/W(縦横比と称する)が2を超え50以下(長スパン延伸)ではRthを小さくでき、縦横比が0.01〜0.3(短スパン延伸)ではRthを大きくできる。本発明では、長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域の延伸(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)どれを使用しても良いが、配向角を小さくできる長スパン延伸または短スパン延伸が好ましい。さらに、高いRthを得たい場合は、短スパン延伸が好ましく、低いRthを得たい場合は、長スパン延伸と適宜選択して採用することができる。
【0212】
(1長スパン延伸)
延伸に伴いフィルムは伸張されるが、この時フィルムは体積変化を小さくしようと厚み、幅を減少させる。このときニップロールとフィルム間の摩擦により幅方向の収縮が制限される。このためニップロール間隔を大きくすると幅方向収縮しやすくなり厚み減少を抑制できる。厚み減少が大きいとフィルムが厚み方向に圧縮されたことと同じ効果があり、フィルム面内に分子配向が進みRthが大きくなり易い。縦横比が大きく厚み減少が少ないとこの逆でRthは発現し難く低いRthを実現できる。
更に縦横比が長いと幅方向の均一性を向上することができる。これは以下の理由による。
・縦延伸に伴いフィルムは幅方向に収縮しようとする。幅方向中央部では、その両側も幅方向に収縮しようとするため、綱引き状態となり自由に収縮できない。
・一方フィルム幅方向端部は片側としか綱引き状態とならず、比較的自由に収縮できる。
・この両端と中央部の延伸に伴う収縮挙動の差が幅方向の延伸ムラとなる。
このような両端と中央部の不均一性により、幅方向のレターデーションむら、軸ズレ(遅相軸の配向角分布)が発生する。これに対し、長スパン延伸は長い2本のニップロール間でゆっくり延伸されるため、延伸中にこれらの不均一性の均一化(分子配向が均一になる)が進行する。これに対し、通常の縦延伸(縦横比=0.3を超え2未満)では、このような均一化は発生しない。
【0213】
縦横比は2を越え50以下が好ましく、3〜40がより好ましく、4〜20がさらに好ましい。延伸温度は、好ましくは(Tg−5℃)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃である。延伸倍率は、好ましくは1.05〜3倍であり、より好ましくは1.05〜1.7倍であり、さらに好ましくは1.05〜1.4倍である。このような長スパン延伸は3対以上ニップロールで多段延伸してもよく、多段のうち最も長い縦横比が上記範囲に入っていれば良い。
このような長スパン延伸は所定の距離離した2対のニップロールの間でフィルムを加熱して延伸すればよく、加熱方法はヒーター加熱法(赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等をフィルム上や下に設置し輻射熱で加熱)でも良く、ゾーン加熱法(熱風等を吹き込み所定の温度に調温したゾーン内で加熱)でも良い。本発明では延伸温度の均一性の観点からゾーン加熱法が好ましい。この時、ニップロールは延伸ゾーン内に設置しても良く、ゾーンの外に出しても良いが、フィルムとニップロールの粘着を防止するためにはゾーンの外に出すのが好ましい。このような延伸の前にフィルムを予熱することも好ましく、予熱温度は(Tg−80)℃〜(Tg+100)℃である。
【0214】
(1短スパン延伸)
縦横比(L/W)を、好ましくは0.01を越え0.3未満、より好ましくは0.03
〜0.25、さらに好ましくは0.05〜0.2で縦延伸(短スパン延伸)を行う。このような範囲の縦横比(L/W)で延伸を行うことで、ネックイン(延伸に伴う延伸と直行する方向の収縮)を小さくすることができる。延伸方向の伸張を補うため幅、厚みが減少するが、このような短スパン延伸では幅収縮が抑制され厚み減少が優先的に進む。この結果、厚み方向に圧縮されたようになり、厚み方向の配向(面配向)が進む。この結果、厚み方向の異方性の尺度であるRthが増大し易い。一方、従来は縦横比(L/W)が1前後(0.7〜1.5)で行われるのが一般的であった。これは、通常ニップロール間に加熱用ヒーターを設置して延伸するが、L/Wが大きくなりすぎるとヒーターでフィルムを均一に加熱できず延伸むらが発生し易く、L/Wが小さすぎるとヒーターが設置しにくく加熱が十分に行えないためである。
上述の短スパン延伸は2対以上のニップロール間で搬送速度を変えることにより実施できるが、通常のロール配置と異なり、2対のニップロールを斜めに(前後のニップロールの回転軸を上下にずらす)配置することで達成できる。これに伴いニップロール間に加熱用ヒーターは設置できないため、ニップロール中に熱媒を流しフィルムを昇温することが好ましい。さらに入口側ニップロールの前に内部に熱媒を流した予熱ロールを設け、フィルムを延伸前に加熱することも好ましい。
延伸温度は、好ましくは(Tg-5℃)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃である。予熱温度は、好ましくは、(Tg−80)℃〜(Tg+100)℃である。
【0215】
(横延伸)
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリ
ップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風
を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、(Tg−10)℃〜(Tg+60)℃
が好ましく、(Tg−5)℃〜(Tg+45)℃がより好ましく、Tg〜(Tg+30)
℃がさらに好ましい。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であっても良いが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より、好ましくは1℃〜50℃、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃高くする。予熱時間は、好ましくは1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは、例えば、未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より、好ましくは1℃〜50℃、より好ましく2℃〜40℃、さらに好ましくは3℃〜30℃低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。予熱時間は、好ましくは1秒〜10分であり、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすくRe、Rthの経時変動を増大し易く好ましくない。
このように熱固定温度<延伸温度<予熱温度であることが好ましい。
このような予熱、熱固定により配向角やRe、Rthのバラツキを小さくできるのは以下の理由による。すなわち、図3(a)に示すとおり、予熱温度=延伸温度=予熱温度の場合、フィルムは幅方向に延伸され、直行方向(長手方向)に細くなろうとする(ネックイン)。このため横延伸前後のフィルムが引っ張られ応力が発生する。しかし幅方向両端はチャックで固定されており応力により変形を受けにくく、幅方向の中央部は変形を受け易い。この結果、ネックインによる応力は弓(bow)状に変形しボーイングが発生する。これにより面内のRe、Rthむらや配向軸の分布が発生する。そこで、熱固定温度<延伸温度<予熱温度とすることにより、予熱側(延伸前)の温度を高くし、熱処理(延伸後)の温度を低くすると、ネックインはより弾性率の低い高温側(予熱)で発生し、熱処理(延伸後)では発生しにくくなる。この結果、延伸後のボーイングを抑制できる。
【0216】
このような延伸によりさらに、Re、Rthの幅方向、長手方向のばらつきを、いずれも、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にできる。さらに配向角を好ましくは90°±5°以下または0°±5°以下とすることができ、より好ましくは90°±3°以下または0°±3°以下、さらに好ましくは90°±1°以下または0°±1°以下とすることができる。
本発明ではこのような効果が高速延伸でも達成できることが特徴であり、好ましくは2
0m/分以上、より好ましくは25m/分以上、さらに好ましくは30m/分以上でも顕
著に効果が現れる。
【0217】
(緩和処理)
さらにこれらの延伸の後に緩和処理を行うことで寸法安定性を改良できる。熱緩和は縦延伸後、横延伸後のいずれか、あるいは両方の後で行うことが好ましく、より好ましく横延伸後である。緩和処理は延伸後に連続してオンラインで行っても良く、延伸後巻き取った後、オフラインで行っても良い。
緩和処理は、好ましくは(Tg−30)℃〜(Tg+30)℃、より好ましくは(Tg−30)℃〜(Tg+20)℃、さらに好ましくは(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃の温度で、好ましくは1秒〜10分、より好ましくは5秒〜4分、さらに好ましくは10秒〜2分の時間、好ましくは0.1kg/m〜20kg/m、より好ましく1kg/m〜16kg/m、さらに好ましくは2kg/m〜12kg/mの張力で搬送しながら実施するのが好ましい。
【0218】
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明の環状オレフィン系樹脂フィルムを含むことを特徴とする。
本発明のフィルムは、フィルム光学特性が良好であり、フィルム弾性率も良好であるため、偏光板用保護フィルムに好ましく用いられる。また、本発明のフィルムは面状が良好であり、フィルム面状を偏光板クロスニコル下にて観察した際にむらが少ないため、偏光板用保護フィルムに好適である。偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼り合わせ積層することによって形成される。偏光子は従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如き親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。環状オレフィン系樹脂フィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコ−ル水溶液が好ましく用いられる。
また、本発明のフィルムを用いた偏光板は遅相軸分布にバラツキが少なく、良好な表示性能の液晶表示装置を提供することができる。更に、本発明のフィルムが広幅の好ましい態様である場合、本発明のフィルムを用いて偏光子と貼り合わせて偏光板を製造するときに、フィルム幅方向においていわゆる偏光板の2丁取り、3丁取りを行なうことが可能となり、偏光板の製造コストを低減することができる。また、フィルム幅方向のσ600、σ−600も良好である態様である場合、更に2丁取り、3丁取りを行なった偏光板の性能も改善することができる。
【0219】
<液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、環状オレフィン系樹脂フィルム又は本発明の偏光板を含むことを特徴とする。
本発明のフィルムは、偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルム/液晶セル/本発明のフィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成、もしくは偏光板用保護フィルム/偏光子/本発明のフィルム/液晶セル/本発明の偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成で好ましく用いることができる。特に、TN型、VA型、OCB型などの液晶セルに貼り合わせて用いることによって、視野角に優れ、着色が少ない視認性に優れ、かつ、面内均一性にも優れた液晶表示装置を提供することができる。また、本発明のフィルムを用いた偏光板は高温高湿条件下での劣化が少なく、長期間安定した性能を維持することができ、すなわち本発明の液晶表示装置は耐久性も良好である。
【実施例】
【0220】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0221】
[環状オレフィン系樹脂]
以下の環状オレフィン系樹脂P−1〜P−5及びC−1を準備した。
【0222】
<環状オレフィン系樹脂P−1の合成>
精製トルエン100質量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100質量部を反応釜に投入した。次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni 25mmol%(対モノマー)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225mol%(対モノマー)及びトルエンに溶解したトリエチルアリミニウム0.25mol%(対モノマー)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後過剰のエタール中に反応混合物を投入し、重合物沈殿を生成させた。沈殿を精製し得られた環状オレフィン系樹脂P−1を真空乾燥で65℃24時間乾燥した。
得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーエミションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は79,000、重量平均分子量は205,000であった。得られた重合体をアッベの屈折計で測定した屈折率は1.52であり、Tgは250℃であった。
【0223】
<環状オレフィン系樹脂P−2の合成>
6−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン100質量部に、重合触媒としてトリエチルアルミニウムの15質量%シクロヘキサン溶液10質量部、トリエチルアミン質量部5部、および四塩化チタンの20質量%シクロヘキサン溶液10質量部を添加して、シクロヘキサン中で開環重合し、得られた開環重合体をニッケル触媒で水素添加してポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をイソプロピルアルコール中で凝固させ、乾燥し、粉末状の樹脂P−2を得た。この樹脂の数平均分子量は40,000、水素添加率は99.8%以上であり、Tgは139℃であった。
【0224】
P−3: ARTON D5023(JSR株式会社製)、Tg170℃
P−4: ZF14 (株式会社オプテス製、フィルム状の製品)、Tg139℃
P−5: TOPAS 6013(ポリプラスチック株式会社製)、Tg134℃
C−1:酢酸セルロース(アセチル置換度=2.85)
【0225】
[実施例1〜16及び比較例1〜3]
以下のように溶液製膜法により、実施例1〜16及び比較例1〜3の環状オレフィン系樹脂フィルムを作製した。
【0226】
(溶液製膜法)
(1)ドープ調製
<1−1> 環状オレフィン系樹脂溶液
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃で約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
環状オレフィン系樹脂溶液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
表1に記載の環状オレフィン系樹脂 100.0質量部
ジクロロメタン 276.0質量部
メタノール 34.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0227】
<1−2> マット剤分散液
次に上記方法で作成した環状オレフィン系樹脂溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子径16nmのシリカ粒子 2.0質量部
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製)
ジクロロメタン 75.4質量部
メタノール 4.6質量部
環状オレフィン系樹脂溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0228】
<1−3> 添加剤含有環状オレフィン系樹脂溶液
上記方法で作成した環状オレフィン系樹脂溶液を94.6質量部、マット剤分散液を1.3質量部をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、下記表1に記載の各添加剤(可塑剤、レターデーション発現剤)を添加して、添加剤含有環状オレフィン系樹脂溶液を調製した。下記表1に記載の添加剤の添加量(質量部)は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対する量である。表1中、添加剤の欄が空欄のものは、添加剤を添加していないことを意味する。
また、各添加剤について以下説明する。
【0229】
(レターデーション発現剤)
化合物R−1は、下記構造の化合物である。
【0230】
【化13】

【0231】
(可塑剤)
化合物PA−1及びPC−1は、下記化合物である。
PA−1:エチレングリコール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量1100)
PC−1:UMM1001(アクリル系重合体、綜研化学株式会社製)
【0232】
なお、ドープの原料として用いたセルロースアシレート及び各種添加剤は、あらかじめ(株)奈良機械製作所製のサイロを用いて120℃にて2時間乾燥を行ったものを用いた。
【0233】
上記で作製した各添加剤含有環状オレフィン系樹脂溶液(ドープ)を、完成した環状オレフィン系樹脂フィルムが所望の膜厚となるように流量を調整して、製膜ラインで流延した。ドープが自己支持性を持つまでベルト上で乾燥した後にフィルムとしてはぎ取って、テンターに導入した。このときのドープの温度は35℃、ベルト上の滞留時間は、5秒で、剥ぎ取った後のフィルムは、放射型膜面温度計(堀場製作所製、IT540S)で計測した際、0℃であった。
テンターへの導入時のフィルムの揮発分はどの試料も剥ぎ取りの揮発分から5%〜15%低い値であった。剥ぎ取り時の揮発分は、30%〜50%であった。テンター内温度は140℃として幅方向にフィルムを把持しながら搬送させた。テンター離脱直後から25N/mのテンションでロール搬送を行い、更に140℃で乾燥して巻き取った。
【0234】
こうして、幅1500mm、及び表1記載の膜厚の環状オレフィン系樹脂フィルムを得た。
【0235】
(フィルム光学特性)
上記で作製した環状オレフィン系樹脂フィルムについて、面内のレターデーションReを前述の方法により自動複屈折計KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて3次元複屈折測定を行って求め、膜厚方向のレターデーションRthは傾斜角を変えてReを測定することで求めた。
更に、得られたRth(単位:nm)の値を各フィルムの膜厚(単位:μm)で割り、フィルム膜厚当たりのRth(Rth/d)を求めた。
また、25℃10%RH及び25℃80%RHの環境下でRth(10%)とRth(80%)を測定し、下記式(5)よりΔRthを求めた。
ΔRth(RH)=|Rth(10%)−Rth(80%)| (5)
これらの結果をフィルムの厚みdとともに下記表1に示した。
【0236】
【表1】

【0237】
〔実施例18〜20、26〜28及び比較例5〜6〕
下記表2に示す成分を使用し、以下のように溶融製膜法により、実施例18〜20及び比較例5〜6の環状オレフィン系樹脂フィルムを作製した。表2に示す環状オレフィン系樹脂は、前出のものと同様である。
【0238】
(溶融製膜法)
80℃で6時間乾燥済み(水分率200ppm)の環状オレフィン系樹脂100質量部、紫外線吸収剤LA−31(ADEKA(株)製)1.2質量部、Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.5質量部、アデカスタブPEP−36(ADEKA(株)製)0.08質量部、SumilizerGS(住友化学(株)製)0.2質量部、二酸化珪素微粒子(AEROSIL−R972V)0.4質量部を真空ナウターミキサーで80℃、1Torrで3時間混合しながら更に乾燥した。更に、得られた混合物を、二軸式押出機を用いて235℃で溶融混合しペレット化した。
【0239】
環状オレフィン樹脂フィルムの製膜、延伸方法は以下のように行った。
ペレット(水分率50ppm)を、1軸押出機を用いてTダイから表面温度が100℃の第1冷却ロール上に溶融温度245℃でフィルム状に溶融押し出し、初期膜厚80μm、幅1.36mのキャストフィルムを毎分30mの長さで3000m得た。尚、この際に第1冷却ロール上でフィルムを2mm厚の金属表面を有する弾性タッチロールで押圧した。
得られたフィルムは、表2に示す延伸温度(Tgは環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度)及び延伸倍率により、先ずロール周速差を利用した延伸機によって195℃で製膜方向に延伸速度1500%/minで延伸した。次に、予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーン(各ゾーン間には各ゾーン間の断熱を確実にするためのニュートラルゾーンも有する)を有するテンターにて横方向へ145℃で延伸速度400%/minで延伸を行い、その後30℃まで冷却し、クリップから開放し、両端部を各々100mmスリット加工により切除した。その後、両端部とフィルムの中央部に温度270℃押し圧0.04MPaで幅15mmでナーリング加工を施し凹凸部を形成し、表2に記載した膜厚で巾2.08m、長さ4000mの環状オレフィン系樹脂フィルムロールの原反を得た。この時、ナーリング高さはフィルム厚に対し両端部のナーリングで15%、中央部のナーリングで25%とした
【0240】
〔実施例21〜25及び比較例4〕
環状オレフィン系樹脂として前出のP−4(フィルム状)を、実施例18等で用いた延伸機を用いて表2に示す延伸温度(Tgは環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度)及び延伸倍率により延伸して、その後の処理を実施例18等と同様にして、実施例21〜25及び比較例4の環状オレフィン系樹脂フィルムを作製した。
【0241】
(フィルム光学特性)
上記で作製した環状オレフィン系樹脂フィルムについて、面内のレターデーションReを前述の方法により自動複屈折計KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて3次元複屈折測定を行って求め、膜厚方向のレターデーションRthは傾斜角を変えてReを測定することで求めた。
更に、得られたRth(単位:nm)の値を各フィルムの膜厚(単位:μm)で割り、フィルム膜厚当たりのRth(Rth/d)を求めた。
また、25℃10%RH及び25℃80%RHの環境下でRth(10%)とRth(80%)を測定し、下記式(5)よりΔRthを求めた。
ΔRth(RH)=|Rth(10%)−Rth(80%)| (5)
これらの結果をフィルムの厚みdとともに下記表2に示した。
【0242】
【表2】

【0243】
(パネル性能)
〔偏光板の製造〕
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
コロナ処理した実施例1の環状オレフィン系樹脂フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)に鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作成した実施例1のフィルムを貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に鹸化処理後のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と作成した実施例1のフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。また、偏光子の透過軸と市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。
このようにして本発明の偏光板を作製した。
ハンドリング性や加工性に支障なく、良好な偏光板を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂を含み、下記式(1)〜(4)を満たす、環状オレフィン系樹脂フィルム。
|Re|≦4nm (1)
50nm≦Rth≦300nm (2)
10μm≦d≦70μm (3)
1×10−3≦Rth/d≦1×10−2 (4)
式中、Reはフィルムの面内方向のレターデーション値、Rthはフィルムの厚み方向のレターデーション値、dはフィルムの厚みである。
【請求項2】
下記式(4)で表されるΔRth(RH)が10未満である請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
ΔRth(RH)=|Rth(10%)−Rth(80%)| (5)
式中、Rth(10%)は25℃10%RHの環境下で測定したフィルムのRthであり、Rth(80%)は25℃80%RHの環境下で測定したフィルムのRthである。
【請求項3】
前記環状オレフィン系樹脂フィルムが溶液製膜法で成形された請求項1又は2に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【請求項4】
前記環状オレフィン系樹脂フィルムが可塑剤又はレターデーション発現剤を含む請求項3に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【請求項5】
前記環状オレフィン系樹脂フィルムが溶融製膜法で成形された請求項1又は2に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
【請求項6】
前記環状オレフィン系樹脂フィルムが二軸延伸処理により成形され、フィルム長手方向のMD延伸倍率と該長手方向と直交する方向のTD延伸倍率が下記式(6)を満たすことを特徴とする請求項5に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム。
0.8≦MD延伸倍率/TD延伸倍率≦1.2 (6)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂フィルムを用いた偏光板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂フィルム、又は請求項7に記載の偏光板を用いた液晶表示装置。

【公開番号】特開2013−29792(P2013−29792A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167755(P2011−167755)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】