説明

生体代謝パラメーターを改善するための組成物

【課題】生体代謝パラメーター改善組成物の提供。
【解決手段】尿酸値および/または肝機能の指標成分が示す値である生体代謝パラメーターを低下させるために、ぶどう糖、果糖および/または異性化糖をアルカリ異性化することにより含ませたD−プシコースを5g以上/1回として継続して摂取させるためのD−プシコースを有効成分とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D−プシコースを有効成分とする、生体代謝パラメーターを改善する組成物に関する。
本発明において、肝機能の指標成分値と尿酸値をあわせて生体代謝パラメーターという。
【背景技術】
【0002】
肝臓は人体最大の腺臓器で、生体の生存に不可欠な臓器である。肝臓は、総数約3000億個の細胞から構成されている。肝臓の機能上の特徴は、栄養素の代謝貯蔵、解毒、異物や微生物の貪食、血液循環量の調節など多彩な生体反応を営んでいる点が挙げられる。
この肝機能の代表的な指標としては、γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALP(血清中のアルカリフォスファターゼ)など種々の指標がある。
γ-GTPは、肝ミクロゾームにおける薬物代謝に関わる酵素で、その数値は、胆汁うっ滞又はアルコール性若しくは薬剤性肝障害により上昇するので、肝臓および胆道系機能のスクリーニングに用いる検査指標となる。
ALTは、ピリドキサールリン酸を補酵素とするアミノ基転移酵素で、γ-GTPと同じく代表的な肝機能の検査指標である。ALTは、特に肝臓に多く含まれており、ASTと比較して他臓器への分布が少なく、肝障害に特異的に現れるため、肝炎の病勢指標に用いられる。
ASTもALTと同じく、ピリドキサールリン酸を補酵素とするアミノ基転移酵素で、代表的な肝機能の検査指標である。肝細胞障害により血中に逸脱するが、骨格筋、心筋、赤血球などの破壊によっても数値が上昇する。
ALPの血清中における濃度上昇は、臓器の壊死や破壊後の再生からの合成亢進と考えられるため、この数値も肝機能評価の1つとして用いられる。
実際の肝臓障害判定では、1種類のみの増減ではなく、多種類のパラメーターの結果を見て総合的に判断するが、γ-GTPとALTの数値は、肝機能判断に特に優先度が高いと言われている。
一方で、尿酸値もまた、重要な生体代謝パラメーターであり、血中尿酸濃度が7mg/dLを超えると高尿酸血症となる。
【0003】
一方、D−プシコースは、低カロリー(特許文献1、非特許文献1、2)で、殆どエネルギーにならない。ヒトが摂取した場合、その7割は、そのまま吸収されて尿中に排泄される。残りの3割は、大腸へ到達し、腸内細菌に殆ど資化されることなく便に排泄されることが報告されている。機能性として、食後血糖抑制効果(非特許文献2)が報告されており、糖質の分解阻害、肝臓におけるブドウ糖の取り込み促進作用などが主なメカニズムとされている。また、脂肪減少(特許文献2)などの特質も明らかにされているが、その作用メカニズムは未だ明らかにされていない。
【0004】
アルカリ異性化とは、特許文献3に詳述された、糖の工業的な異性化法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−51137号公報
【特許文献2】特開2010−18528号公報
【特許文献3】WO2010/113785
【特許文献4】特開平6−125776号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Metabolism. 59(2),206-214,2010
【非特許文献2】J Nutr Sci Vitaminol.48 : 77-80.
【非特許文献3】J. Am. Chem.Soc. 1955. 77. 3323-3325
【非特許文献4】Biochemistry. 16 (10): 2169-75, 1977
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、D−プシコースの様々な機能性についてはある程度明らかにされているものの、肝臓に関しては特許文献2の肝臓脂肪の減少が報告されているのみである。また、尿酸値への影響を記したものは見当たらない。更に種々有る肝臓の指標に関しても、どの指標に対してどれだけの摂取量で効果があるのかに関しては、明らかにされていなかった。
【0008】
したがって、本発明は、尿酸値や肝機能の指標であるγ-GTP、AST、ALTおよび/またはALPの値を低下させる作用量もしくは作用期間を示すことを目的とする。
また、尿酸値低下や肝疾患を効果的に治療できる薬剤、日々摂取することで尿酸値低下や肝機能障害を予防または治療できる健康飲食品または動物用飼料の開発が切望されている。本発明の目的は、尿酸値低下や肝機能保護剤または改善剤、尿酸値低下や肝機能保護または改善用飲食品、飼料、医薬品、尿酸値低下や肝機能保護作用または改善作用を有する飲食品用添加剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、D-プシコースには、尿酸および肝機能の指標成分が示す生体代謝パラメーター(γ-GTP、AST、ALT、ALP、尿酸値)の低減作用があることを見いだし、その作用量、作用期間を決定することで、低減剤としての本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、D-プシコースを有効成分とする生体代謝パラメーター改善剤(γ-GTP、AST、ALT、ALP、尿酸値低下剤)を提供するものである。
【0011】
本発明は、下記(1)ないし(6)に記載された生体代謝パラメーターを改善する組成物を要旨とする。
(1)尿酸値および/または肝機能の指標成分が示す値である生体代謝パラメーターを低下させるためにD−プシコースを5g以上/1回として継続して摂取させるためのD−プシコースを有効成分とする組成物。
(2)ぶどう糖、果糖および/または異性化糖をアルカリ異性化することにより含ませたD−プシコースを有効成分とする上記(1)に記載の組成物
(3)肝機能の指標成分が、γ-GTP、AST、ALTおよび/またはALPである上記(1)または(2)に記載の組成物。
(4)D−プシコースとして1日用量を15g/日として2週間摂取させるための組成物である上記(1)、(2)または(3)に記載の組成物。
(5)肝機能保護剤または改善剤である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)肝機能保護または改善用飲食品、飼料、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、化粧品、または肝機能保護作用または改善作用を有する飲食品用添加剤である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、尿酸値や肝機能の指標であるγ-GTP、AST、ALTおよび/またはALPを低下させる作用量もしくは作用期間が、5g以上/1回として継続して摂取させる、好ましくは1日用量を15g/日として2週間摂取させることであることが実施例により裏付けられた。
また、本発明により、尿酸値低下や肝疾患を効果的に治療できる薬剤、日々摂取することで尿酸値低下や肝機能障害を予防または治療できる健康飲食品または動物用飼料を提供することができる。すなわち、尿酸値低下や肝機能保護剤または改善剤、尿酸値低下や肝機能保護または改善用飲食品、飼料、医薬品、尿酸値低下や肝機能保護作用または改善作用を有する飲食品用添加剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−1】実施例1のγ-GTP、ALPの推移を示す図面である。
【図1−2】実施例1の尿酸値の推移を示す図面である。
【図2】実施例2のγ-GTP、ALT、ALPの推移を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、肝機能の指標成分が、γ-GTP、AST、ALTおよび/またはALPであり、これらの値である肝機能の指標成分値と尿酸値をあわせて生体代謝パラメーターという。
本発明のD−プシコース含有素材の機能を具体的に示すと、尿酸値や肝機能指標であるγ-GTP、AST、ALT、ALPの低下作用であり、そのことは肝細胞その他の保護効果を示す。
【0015】
本発明でいうD−プシコースとは、D-フラクトースや間接的にはD-グルコースからエピメリ化によって酵素的もしくは化学的に生産されたもの、または植物から抽出されたもので、完全に精製されたものでも良いし、生産される際に少量含まれる不純物を含んだものでもよい。すなわち、比較的容易には、例えば、エピメラーゼを用いた手法(例えば、特許文献4参照)により調製される。また、化学的に製造されたものでも良い(非特許文献3)。
得られたD−プシコース液は、必要により、例えば、除蛋白、脱色、脱塩などの方法で精製され、濃縮してシラップ状のD−プシコース製品を採取することができ、さらに、カラムクロマトグラフィーで分画、精製することにより99%以上の高純度の標品も容易に得ることができる。このようなD−プシコースは単糖としてそのまま利用できる。
【0016】
また混合糖、例えばD−グルコース、D−フラクトースやその他の希少糖(アロースなど)の混じった混合糖としても使用しても良い。
【0017】
D−プシコースは、D−プシコースおよび/またはその誘導体として用いることができる。
【0018】
本発明で用いるD−プシコースの誘導体について説明する。ある出発化合物から分子の構造を化学反応により変換した化合物を出発化合物の誘導体と呼称する。D−プシコースを含む六炭糖の誘導体には、様々なものがあるが、例えばアミノ糖(糖分子のOH基がNH基で置換されたもの、グルコサミン、コンドロサミン、配糖体などがある)などがあるが、それらに限定されるものではない。特に、単糖の生理作用の場合、酵素に対する特異性が主な作用メカニズムの原因となっており、糖の立体構造が特に重要である。例えば、肝臓におけるフラクトキナーゼという酵素は、フラクトースを主な基質としリン酸化する。フラクトースのC-3位の異性体であるD-タガトースやD-プシコースもこの酵素によりリン酸化されるが、そのリン酸化速度は各々の立体構造により異なる(非特許文献4)。この酵素では、特に、2、3、4、5位の炭素の関係がトランスであるか、アキシャルであるかによって、反応速度に影響が認められる。よって、誘導体であってもその立体構造がある程度保たれていれば、十分本発明の作用が認められることが推測される。
【0019】
D−プシコースの作用量として、1回の服用量は、2.5g〜20gの範囲であり、生体代謝パラメーターをどの程度下げたいか、体重が標準体重の範囲かどうかなどを考慮して決めることができる。通常は5g以上/1回であることが望ましい。実施例1では1回の服用量が5gで一日3回、実施例2は、実施例1のように15gを3回に分けずに一度に摂取した。その場合は、摂取期間を短くすることができる。
【0020】
またD−プシコースの摂取期間として1週間程度、望ましくは2週間、あるいはそれ以上が望ましい。
【0021】
さらに本発明でいうD-プシコースの形態は、粉末、微粉、顆粒、結晶、錠剤等の固形物、水溶液、溶液などのいずれの形態でも良い。またこの製造方法についても特に制限されるものではない。さらに、本発明の目的を阻害しない範囲で、さらに別の甘味成分や呈味成分ではない増量剤や、担体等として使用するものを含有することができる。
【0022】
さらに本発明は、上記の本発明のD−プシコース含有素材、特に機能性を持った素材を使用して得られたことを特徴とする飲食品などがある。
【0023】
本発明でいう飲食物とは、飲料、キャンディー、冷菓、ヨーグルト、チョコレートなど甘味を必要とする食品全般を言う。その他甘味を付与された製品には医薬品、口腔用組成物などの甘味を付与された製品を包含する。
【0024】
例えば、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、フリカケ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼き肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなど各種調味料への甘味料として、また、呈味改良剤、品質改良剤などとして有利に利用できる。
また、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子、パン、ビスケット、クラッカー、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディーなどの各種洋菓子、アイスクリーム、シャーベットなどの氷菓子、果実のシロップ漬、氷蜜などのシロップ類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのペースト類、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖菓などの果実、野菜の加工食品類、パン類、麺類、米飯類、人造肉などの穀類加工食品類、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬などの漬物類、たくわん漬の素、白菜漬の素などの漬物の素類、ハム、ソーセージなどの畜産製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、天ぷらなどの魚肉製品、ウニ、イカの塩辛、酢コンブ、さきするめ、ふぐのみりん干しなどの各種珍味類、のり、山菜、するめ、小魚、貝などで製造される佃煮類、煮豆、ポテトサラダ、コンブ巻などの惣菜食品、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜の瓶詰め、缶詰類、合成酒、果実酒、洋酒、リキュールなどの酒類、コーヒー、ココア、ジュース、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックスなどのプレミックス粉類、即席ジュース、即席コーヒー、即席汁粉、即席スープなど即席飲食品などの各種飲食物への添加剤として利用できる。
特に機能性を持たせた飲料としては、コーラなどの炭酸飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、乳性飲料、茶系飲料などを挙げることができるが、特に大量飲用により肥満の問題の生ずる炭酸飲料が格好のターゲットと言うことができる。
【0025】
上記飲食物は、機能性食品、栄養補助食品或いは健康食品類としても用いることができる。その形態は、特に限定されるものではなく、例えば、食品の製造例としては、アミノ酸バランスのとれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミンなどの蛋白質、これらの分解物、卵白のオリゴペプチド、大豆加水分解物などの他、アミノ酸単体の混合物などを、常法に従って使用することができる。また、ソフトカプセル、タブレットなどの形態で利用することもできる。
【0026】
栄養補助食品或いは機能性食品の例としては、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、化剤、香料などが配合された流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工形態を挙げることができる。上記各種食品には、例えば、スポーツドリンク、栄養ドリンクなどの飲食物は、栄養バランス、風味を良くするために、更にアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物や組成物、香辛料、香料、色素などを配合することもできる。
【0027】
本発明の組成物は、食品、保健用食品、患者用食品、食品素材、保健用食品素材、患者用食品素材、食品添加物、保健用食品添加物、患者用食品添加物、飲料、保健用飲料、患者用飲料、飲料水、保健用飲料水、患者用飲料水、薬剤、製剤原料、飼料、患畜および/または患獣用飼料になど、肝機能指標もしくは/または体脂肪低減させる効果を必要とするものすべてに使用することができる。
【0028】
本発明の組成物を食品に利用する場合、そのままの形態、オイルなどに希釈した形態、乳液状形態食、または食品業界で一般的に使用される担体を添加した形態などのものを調製してもよい。飲料の形態は、非アルコール飲料またはアルコール飲料である。非アルコール飲料としては、例えば、炭酸系飲料、果汁飲料、ネクター飲料などの非炭酸系飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、茶、コーヒー、ココアなど、また、アルコール飲料の形態では薬用酒、酎ハイ、梅酒、ビール、発泡酒、第3ビールなどの一般食品の形態を挙げることができる。
本発明の組成物の、前記生体作用改善を目的とした食品素材あるいは食品添加物としての使用形態としては、錠剤、カプセル剤、飲料などに溶解させる粉末あるいは顆粒などの固形剤、ゼリーなどの半固形体、飲料水などの液体、希釈して用いる高濃度溶液などがある。
さらに、本発明の組成物を適宜食品に添加して生体機能改善などを目的とした保健食または病人食とすることができる。任意的成分として、通常食品に添加されるビタミン類、炭水化物、色素、香料など適宜配合することができる。食品は液状または固形の任意の形態で食することができる。ゼラチンなどで外包してカプセル化した軟カプセル剤として食することができる。カプセルは、例えば、原料ゼラチンに水を加えて溶解し、これに可塑剤(グリセリン、D-ソルビトールなど)を加えることにより調製したゼラチン皮膜でつくられる。
【0029】
本発明の組成物は、家畜、家禽、ペット類の飼料用に応用することができる。例えば、ドライドッグフード、ドライキャットフード、ウェットドッグフード、ウェットキャットフード、セミモイストドックフード、養鶏用飼料、牛、豚などの家畜用飼料に配合することができる。飼料自体は、常法に従って調製することができる。
これらの治療剤および予防剤は、ヒト以外の動物、例えば、牛、馬、豚、羊などの家畜用哺乳類、鶏、ウズラ、ダチョウなどの家禽類、は虫類、鳥類或いは小型哺乳類などのペット類、養殖魚類などにも用いることができる。
【0030】
本発明の組成物の効果を生かした薬剤は、これらを単独で用いるほか、一般的賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤などの適当な添加剤を配合し、液剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、軟膏剤、貼付剤、散布剤、スプレー剤または注射剤等の適当な剤型を選んで製剤し、経口的、経鼻的、経皮的あるいは経静脈的に投与することができる。
【0031】
経口投与、経鼻投与、経皮投与または経静脈投与に適した医薬用の有機又は無機の固体、半固体又は液体の担体、溶解剤もしくは希釈剤を、本発明の組成物を薬剤として調製するために用いることができる。水、ゼラチン、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、動・植物油、ベンジルアルコール、ガム、ポリアルキレングリコール、石油樹脂、ヤシ油、ラノリン、又は医薬に用いられる他のキャリアー(担体)は全て、本発明の組成物を含む薬剤の担体として用いることができる。また、安定剤、湿潤剤、乳化剤や、浸透圧を変えたり、配合剤の適切なpHを維持するための塩類を補助薬剤として適宜用いることができる。
【0032】
また、化粧品等の製剤化に、可溶性フィルムが使用されるようになってきている。例えば、香料等を保持させたフレーバーフィルム等として気分転換、口臭予防等を目的として、可食性の可溶性フィルムが使用されている。また、保湿剤等を保持させた化粧品用フィルムを、パックとして使用したり、水に溶解して乳液として使用するといったアイディアも出されている。更に、抗炎症剤等を保持させて湿布薬として使用したりすることも検討されている。食品、医薬品等の包装材として、又食品、医薬品等の有効成分を保持する担体として、優れた溶解性とフィルム特性を示し、これらの用途に好適に用いることができる可溶性フィルムが提案されており(特開2007−91696号公報)、このようにして、本発明の組成物を医薬品もしくは医薬部外品、化粧品に適応することができる。
【0033】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。
【0034】
生体代謝パラメーター改善組成物としてのD-プシコースの影響を調べるために、倫理委員会の承認のもと臨床試験を行った。
【実施例1】
【0035】
<実験方法>
日本においては、生活習慣病特に糖尿病の患者が増えていることが問題視されている。そこで、糖尿病に関わる被験者を募集し臨床試験を行いD-プシコースの生体代謝パラメーターの変動を検討した。被験者としては、糖尿病境界域被験者(空腹時血糖値が110〜126mg/dl:12名)及び糖尿病患者(糖尿病の薬物治療を受けている2型糖尿病患者:6名)(同意取得時において20歳以上の男女)を募集した。摂取期間は12週間とし、摂取量としては、毎食5gD−プシコースとした。D−プシコースは株式会社希少糖生産技術研究所から購入した。検査日は、摂取開始日(0週)、摂取2週間後(2週)、摂取4週間後(4週)、摂取8週間後(8週)、摂取12週間後(12週)および摂取終了4週間後(16週:後観察期間)として、試験日前日の夕食以降は絶食とした。測定項目は、γ-GTP、ALT、ALP、尿酸値とし測定は株式会社BMLに委託した。統計は、摂取前後を対応のあるt検定で比較した。図中の有意差は、*:0.05<P、**:0.01<P
によって示した。
【0036】
<結果>
結果はγ-GTP、ALPについては図1−1、尿酸値については図1−2に示した。γ-GTPは摂取4週目から有意な低下を示した。ALPは、摂取2週目から有意な低下が認められた。
これらのことから、D-プシコース(5g/1回程度)の2〜4週間程度の反復摂取によって、γGTP、ALPの明らかな減少が認められヒトにおいて生体機能のパラメーター(主に肝機能)が改善することが明らかとなった。また、糖尿病境界域、糖尿病患者と層別解析した結果、糖尿病境界域のγ-GTPでは摂取後4週目に有意な低下が(P<0.01)、糖尿病患者のγ-GTPでは摂取後8週目に有意な低下が(P<0.01)認められた。ALPに関しては、糖尿病境界域、糖尿病患者とも摂取後2週目から有意な低下が(P<0.05)認められた。これらのことから、糖尿病境界域、糖尿病患者のそれぞれにD-プシコースが有効であることが明らかとなった。検査値の減少程度から、1週間程度、もしくは今回の半量程度の摂取によっても効果があることが推察される。尿酸値に関しても、摂取2週目から有意な低下が認められた。層別解析では、糖尿病境界域の摂取2週目から有意な低下が認められたことから、特に糖尿病罹患前の状態でより効果が大きいことが推察される。
一方、ALTに有意な低下は認められなかったので、結果は示していない。
【実施例2】
【0037】
<実験方法>
健常者(空腹時血糖値が110mg/dl:8名)及び糖尿病境界域被験者(空腹時血糖値が110〜126mg/dl、或いはHbA1cが5.9〜6.5%:6名)(同意取得時において20歳以上の男女)を集めてD-プシコースの4週間の摂取試験を行った。摂取量としては、1日1回15gのD-プシコース摂取とした。
D-プシコースは株式会社希少糖生産技術研究所から購入した。検査日は、摂取開始日(0週)、摂取2週間後(2週)、摂取4週間後(4週)、および摂取終了4週間後(8週:後観察期間)として、試験日前日の夕食以降は絶食とした。測定項目は、γ-GTP、ALT、ALPとし測定は株式会社第一臨床検査センターに委託した。統計は、摂取前後を対応のあるt検定で比較した。図中の有意差は、
*:0.05<P、**:0.01<P
によって示した。
【0038】
<結果>
結果は図2に示した。γ-GTP、ALT、ALP共に摂取2週目から有意な低下を示した。これらのことから、D-プシコース(15g/1日)の2週間程度の反復摂取によって、γGTP、ALT、ALPの明らかな減少が認められヒトにおいて生体機能のパラメーターが改善することが明らかとなった。特に、ALTは本試験での15g/1回の摂取により低下が認められたので、15g程度の摂取が必要であることが推察される。また、健常者、糖尿病患者と層別解析した結果、特に健常者のγ-GTP、ALPでは摂取後2週目に有意な低下が(P<0.01)認められた。検査値の減少程度から、1週間程度、もしくは今回の半量程度の摂取によっても効果があることが推察される。
【実施例3】
【0039】
<実験方法>
実験動物として3週齢のWistar系雄性ラット(日本クレア株式会社)を1群7匹で14匹用いた。馴化期間の1週間は固形飼料CE-2(日本クレア株式会社)にて飼育した。馴化期間終了後に体重に準じて群分けを行った。飼料の基本組成は表1に示した。希少糖含有シロップは、異性化糖10%(w/v)溶液を、温度60℃、強塩基性イオン交換樹脂に送液し作成した(樹脂:アンバーライトIRA900J[Cl])。反応溶液の糖組成は、D-グルコース40%、D-フラクトース31%、D-プシコース7%、D-マンノース及びD-アロース等を含むその他糖質22%であった。
飼料ならびに飲料水は自由に摂取させ、それぞれ8週間飼育した。飼育終了後,エーテル麻酔下で順次ラットを開腹し、腎臓下の腹部大動脈よりヘパリン処理した注射器を用いて採血した。血漿の測定として、AST(GOT)、ALT(GPT)、尿酸値を市販キットにより測定した。実験データを平均値±標準誤差で示し、各群間の平均値の有意差検定については、対応の無いt検定を用いた。
【0040】
【表1】

【0041】
<結果>
表2に示す様に、AST、ALT、尿酸値に関して希少糖含有シロップを摂取させることで、有意な低下を示す結果が得られた。
これらのことから、アルカリ異性化により異性化糖を再異性化し、D-プシコースを含ませた組成物は、AST、ALT、尿酸値に対して改善傾向を示すことが明らかとなった。
【0042】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、生化学的な生体機能のパラメーターの改善分野で利用が可能である。本発明の生体代謝パラメーターを改善する組成物、すなわち生体代謝パラメーター改善剤を用いることにより、特に中年域に達するものにとり頭の痛い健康診断のこれら肝機能の指標成分が示す生体代謝パラメーター(γ-GTP、AST、ALT、ALP、尿酸値)の改善を図ることができる。これをもって健康に資することが可能である。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿酸値および/または肝機能の指標成分が示す値である生体代謝パラメーターを低下させるためにD−プシコースを5g以上/1回として継続して摂取させるためのD−プシコースを有効成分とする組成物。
【請求項2】
ぶどう糖、果糖および/または異性化糖をアルカリ異性化することにより含ませたD−プシコースを有効成分とする請求項1に記載の組成物
【請求項3】
肝機能の指標成分が、γ-GTP、AST、ALTおよび/またはALPである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
D−プシコースとして1日用量を15g/日として2週間摂取させるための組成物である請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
肝機能保護剤または改善剤である請求項1ないし4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
肝機能保護または改善用飲食品、飼料、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、化粧品、または肝機能保護作用または改善作用を有する飲食品用添加剤である請求項1ないし4のいずれかに記載の組成物。




【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−53121(P2013−53121A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194037(P2011−194037)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(511217522)合同会社希少糖食品 (1)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】