説明

生体信号測定方法及び生体信号測定用センサ

【課題】生体信号測定用センサの背面部および周縁部の形状を工夫して、装着者にも患者にも有益な生体信号測定用センサを実現する。
【解決手段】生体(2)に粘着テープ(3)で固定される生体信号測定用センサ(1)であって、前記生体信号測定用センサの生体との接触面に対向する平面または曲面な対向部(1a)を有し、前記粘着テープの粘着剤に接触する前記対向部の少なくとも一部に凹凸形状を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号を測定するための生体信号測定方法及び生体信号測定用センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非侵襲的な生体信号測定用センサは、体表上に装着されるが、測定を安定に行うため、センサの上から粘着テープを貼付して、装着部の固定を強化することが多い。
また、粘着テープは生体に適合した生体用粘着テープが使用されるが、これは、角質層の剥離によって起こる皮膚かぶれ等の皮膚刺激性を低くするため、粘着剤の粘着力を極力抑えつつ、接着面積を広くとることによって、適当な接着力を維持するよう工夫されており、そのため柔らかいゲル状の粘着剤を使用するものが多い。
従って、生体用粘着テープを長時間貼付した場合、テープ粘着剤のセンサ接着面への浸潤のため、テープ基材と粘着剤の接着力よりセンサ接着面と粘着剤の接着力が強くなることがあり、柔らかいゲル状の粘着剤のため、剥がす際に、センサ接着面つまりはセンサの背面および周縁部に粘着剤が残る、いわゆる「糊残り」が問題となることがあった。
【0003】
糊残りは、「べたつき感」を生じ、装着者に不快感を与えるだけでなく、センサ装着毎に、消毒用アルコール等によるセンサ背面および周縁部の清掃が必要になり、装着者の作業が煩雑化する。
また、再利用可能なセンサの場合は、患者間の感染等を防止する目的でも、センサは常に清潔に保つ必要があり、糊残りを生じさせないようにすることは重要な課題である。
【0004】
従来、粘着シート等で使用される「剥離紙」に見られるように、表面エネルギーの低いシリコーン樹脂やフッ素系樹脂をコーティングすることによって、粘着テープの接着力を抑え、この糊残りの問題を解決する方法があるが、これは、コーティング材やその加工に関する追加費用が必須となり、多品種少量生産型の生体信号測定用センサでは、コスト面から問題があった。
【0005】
また、プラスチック容器等にラベルを貼付する際に、ラベルを剥がし易くするため、貼付面の形状を工夫した、以下のような発明が知られている。(特許文献1−3参照)
【0006】
特許文献1に記載の発明は、ラベルの貼付に関する発明であり、ラベル周辺部は剥がれにくくするため、被着面内の外周領域の少なくとも一部に接着力の強い領域を設け、その内側領域では、接着力を弱くすることによって、ラベルを剥がし易くする工夫がなされている。
しかし、糊残りの課題に対しては、センサの接着面(センサ背面および周縁部)全てにおいて、接着力を抑える必要がある。
また、接着力の弱い領域は、表面粗さを、10.5μm ≦ RZ ≦ 11.8μm,
0.154μm ≦ RZ ≦ 0.219μm と規定したシボ模様とする特徴を持っているが、前述したように、生体用粘着テープでは柔らかいゲル状の粘着剤を用いることが多いため、そのようなテープに対しては、上記条件のシボ模様は、接着面積を下げる効果が期待できない。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明はラベル貼り付け面を有するプラスチック容器であって、特許文献1と同様、ラベル周辺部に接着力の強い領域を設ける特徴をもっており、糊残りの課題の解決には不適である。
また、特許文献3に記載の発明は、ラベル貼り付け面を有するプラスチック容器であり、
凸部の寸法および凹凸の断面形状を規定し、ラベルをより剥がしやすくする工夫を加えている。しかし、生体信号測定用センサの背面および周縁部の表面積は、特許文献3に記載の発明にて想定しているラベル貼付面と比較して、かなり小さいため、規定されている凸部の寸法では、センサ背面および周辺部にて凹凸を形成できず、有用ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−198224号公報
【特許文献2】特開2001−219936号公報
【特許文献3】特開2007−84096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題(目的)は、センサ背面および周縁部の形状を工夫することによって、この糊残りの問題を解決し、装着者にも患者にも有益な生体信号測定方法及び生体信号測定方法に用いる生体信号測定用センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の生体信号測定方法は、ゲル状粘着剤を用いた粘着テープと、
前記粘着テープで生体に固定される生体信号測定用センサで生体信号を測定する生体信号測定方法であって、
前記生体信号測定用センサは、生体との接触面に対向する平面または曲面な対向部を有し、前記粘着テープの前記ゲル状粘着剤に接触する前記対向部に凹凸形状を形成したことを特徴とする。(請求項1)
【0011】
また、前記対向部の周辺部は、一部に少なくとも凹凸形状を有する傾斜面で構成されることを特徴とする。(請求項2)
また、前記凹凸形状は、前記対向部と傾斜面とでは異なった凹凸形状であることを特徴とする。(請求項3)
また、前記粘着剤に接触する部分の前記凹凸形状の形状種は、丸、四角、長方形、三角形、多角形または前記形状種の組み合わせであることを特徴とする。(請求項4)
【0012】
本発明の生体信号測定用センサは、生体にゲル状粘着剤を用いた粘着テープで固定される生体信号測定用センサであって、
前記生体信号測定用センサの生体との接触面に対向する平面及び曲面な対向部を有し、 前記粘着テープの前記ゲル状粘着剤に接触する前記対向部及び前記対向部の周辺部に凹凸形状を形成したことを特徴とする。(請求項5)
また、前記凹凸形状は、前記対向部と傾斜面とでは異なった凹凸形状であることを特徴とする。(請求項6)
また、前記粘着剤に接触する部分の前記凹凸形状の形状種は、丸、四角、長方形、三角形、多角形または前記形状種の組み合わせであることを特徴とする。(請求項7)
また、(粘着テープと接触する凸部の表面積の総計)≦ α×(凹凸がない場合の粘着テープと接触する表面積)
(但し α:使用する生体用粘着テープの粘着剤により決まる特性係数 0<α<1 )
であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜7の構成によって、センサ背面および周縁部の形状を工夫することによって、生体用粘着テープによる「糊残り」の問題を解決でき、装着者にも患者にも有益な生体信号測定方法および生体信号測定用センサを実現できる。
また、センサ背面および周縁部に凹凸の形状を付加するのみであり、センサ部の型設計をする際に、その凹凸形状を型に作り込めば、特殊な凹凸形状でない限り、追加費用を発生することなく実現することができ、多品種少量生産型の生体信号測定用センサにおいては、シリコーン樹脂やフッ素系樹脂をコーティングする方法に比べて、低コスト化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の生体信号測定用センサの粘着テープの粘着剤に接触する部分に形成された凹凸形状の第1の実施例を示す図である。
【図2】本発明の生体信号測定用センサの粘着テープの粘着剤に接触する部分に形成された凹凸形状の第2の実施例を示す図である。
【図3】本発明の生体信号測定用センサを生体に粘着テープで固定した状態を示す図である。
【図4】本発明の生体信号測定用センサ具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
そこで、本発明は、センサ背面および周縁部に凹凸を設けることによって、センサと粘着剤との接着面積を意図的に低くし、長時間添付した後でも、センサ接着面と粘着剤の接着力がテープ基材と粘着剤の接着力より強くならないようにして、糊残りが起こらないよう工夫した。
本発明は、センサ背面および周縁部に凹凸の形状を付加するのみであり、センサ部の型設計をする際に、その凹凸形状を型に作り込めば特殊な凹凸形状でない限り追加費用を発生することなく実現することができ、前記のコーティング方法に比べて低コスト化が可能である。
【0016】
前述したように、生体信号測定用センサの背面および周縁部に対する糊残りの問題を解決するために、本発明は、センサ背面および周縁部に凹凸を設けることによって、センサと粘着剤との接着面積を意図的に低くし、長時間添付した後でも、センサ接着面と粘着剤の接着力がテープ基材と粘着剤の接着力より強くならないようにして、糊残りが起こらないよう工夫した。
【0017】
凹凸の形状に関しては、特に制約はないが、凸部(センサの接着面)の表面積が下記の式を満たすように、凹凸を設計する必要がある。ただし、比較的平坦な面を形成できる部分(例えば、センサ背面等)は、規則的な形状の凹凸を設けることが、設計上および美観上、望ましい。
【0018】
(粘着テープと接触する凸部の表面積の総計)≦ α×(凹凸がない場合の粘着テープと接触する表面積)
(但し α:使用する生体用粘着テープの粘着剤により決まる特性係数 0<α<1 )
例えば、図4に示す縦20mm、横30mmの生体信号測定用センサで、このセンサの少なくとも対向部及び傾斜部をABS樹脂にて作成し、一般的なPVCフォーム材料を基材としアクリル系の粘着剤を使用した医療用テープを貼付する場合、前記α=0.4に設定した場合にはフォームテープの粘着剤汚染が極めて少なかった。
【0019】
また、センサの周縁部は、一般に、立体的な曲面構造をとることから、凹凸を形成する場合、生体との接触面と対向する面で形成する凹凸部とは異なるパターンの凹凸が必要となる。
この場合も、凹凸形状について、特に制約はないが、凹凸部全体として、上式を満たす必要がある。
【0020】
(実施例)
次に、図1〜3を用いて、具体的な実施例について説明する。
図1は、生体信号測定用センサの粘着テープの粘着剤に接触する部分に形成された凹凸形状の第1の実施例を示す図である。
図1において、1は生体信号測定用センサであって、生体との接触面に対向する平面または曲面な対向部1aと周辺部1bの凹凸形状として、対向部1aには正方形の凸部が、周辺部1bには長方形の凸部が均等に形成されている。
【0021】
図2は、生体信号測定用センサの粘着テープの粘着剤に接触する部分に形成された凹凸形状の第2の実施例を示す図である。
図2において、1は生体信号測定用センサであって、生体との接触面に対向する平面または曲面な対向部1aと周辺部1bの凹凸形状として、平面部1aには丸形の凸部が、周辺部1bには長方形及び三角形の凸部が均等に形成されている。
【0022】
図1及び図2では、対向部及び周辺部には、それぞれの面に均一に凸部が形成されているが、それぞれの面の一部に凸部が形成されるようにしても良い。
また、それぞれの面に形成される凸部の形状は同じ形状である必要はなく、丸、四角、長方形、三角形、多角形等の異なった形状またはその組み合わせでも良い。
【0023】
次に、本発明の生体信号測定用センサを生体に粘着テープで固定した状態を図3で説明する。
図3(a)に示すように、生体信号測定用センサ1は、装着面(測定光の発光及び受光部が形成された面)を生体2に載置し、その上から粘着テープ3で固定する。
図3(b)は、図3(a)のX−1,X−2間を拡大した模式図であって、生体2上に生体信号測定用センサ1,粘着テープの粘着剤層3a及び粘着テープ素材3bが複数層になっているが、生体信号測定用センサ1と粘着テープ3の接触面は、上述の如く生体信号測定用センサの上面(対向部及び周辺部)には凹凸形状に形成されているので、粘着テープを剥がした後の、糊(粘着剤)残りが少なくなり、「べたつき感」を生じさせず、装着者に不快感を与えず、センサ装着毎に、消毒用アルコール等によるセンサ背面および周縁部の清掃が不要になり、装着者の作業が煩雑化することがなくなる。
また、再利用可能なセンサの場合は、患者間の感染等を防止する目的でも、センサは常に清潔に保つ必要があり、糊残りを生じさせることがなくなる。
【符号の説明】
【0024】
1:生体信号測定用センサ
1a:生体信号測定用センサが生体との接触面に対向する対向部
1b:生体信号測定用センサが生体の周辺部
2:生体
3:粘着テープ
3a:粘着テープの粘着剤層
3b:粘着テープ素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル状粘着剤を用いた粘着テープと、
前記粘着テープで生体に固定される生体信号測定用センサで生体信号を測定する生体信号測定方法であって、
前記生体信号測定用センサは、生体との接触面に対向する平面または曲面な対向部を有し、前記粘着テープの前記ゲル状粘着剤に接触する前記対向部に凹凸形状を形成したことを特徴とする生体信号測定方法。
【請求項2】
前記対向部の周辺部は、一部に少なくとも凹凸形状を有する傾斜面で構成されることを特徴とする請求項1に記載の生体信号測定方法。
【請求項3】
前記凹凸形状は、前記対向部と傾斜面とでは異なった凹凸形状であることを特徴とする
請求項2に記載の生体信号測定方法。
【請求項4】
前記粘着剤に接触する部分の前記凹凸形状の形状種は、丸、四角、長方形、三角形、多角形または前記形状種の組み合わせであることを特徴とする請求項2又は3に記載の生体信号測定方法。
【請求項5】
生体にゲル状粘着剤を用いた粘着テープで固定される生体信号測定用センサであって、
前記生体信号測定用センサの生体との接触面に対向する平面及び曲面な対向部を有し、 前記粘着テープの前記ゲル状粘着剤に接触する前記対向部及び前記対向部の周辺部に凹凸形状を形成したことを特徴とする生体信号測定用センサ。
【請求項6】
前記凹凸形状は、前記対向部と傾斜面とでは異なった凹凸形状であることを特徴とする
請求項5に記載の生体信号測定用センサ。
【請求項7】
前記粘着剤に接触する部分の前記凹凸形状の形状種は、丸、四角、長方形、三角形、多角形または前記形状種の組み合わせであることを特徴とする請求項5又は6に記載の生体信号測定用センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−99651(P2013−99651A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−40781(P2013−40781)
【出願日】平成25年3月1日(2013.3.1)
【分割の表示】特願2008−73036(P2008−73036)の分割
【原出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)