説明

生薬由来成分を含有する製剤及びその製造方法

【課題】吸湿性の生薬エキスまたは漢方エキスを用いても、ケーキング(固化)及び変色を有効に抑制できる固形製剤を提供する。
【解決手段】吸着能が4〜6ml/gである第1の吸着剤(ケイ酸カルシウムなど)と、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤(軽質無水ケイ酸など)とで構成された吸着剤に生薬エキスまたは漢方エキス(水分含有量20〜40質量%の軟エキス)を吸着させ、固形製剤(医薬組成物)を得る。固形製剤は、生薬に由来する成分の含有量が高くても、ケーキング(固化)及び着色又は変色を防止できる。固形製剤は、さらに解熱鎮痛剤を含んでいてもよく、結合剤、賦形剤、崩壊剤および矯味剤から選択された少なくとも1つの成分を含有していてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬エキスまたは漢方エキスと吸着剤とを含む生薬製剤(又は漢方製剤)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生薬エキス(または漢方エキス)を配合した製剤には、生薬原末を配合した製剤と、抽出エキスを配合した製剤とが知られている。生薬原末をそのまま仕込むと配合量が大きくなるため、これら原末から抽出したエキスが好んで用いられる。
【0003】
また、生薬エキス(または漢方エキス)は、乾燥エキスと軟エキスとに大別される。
【0004】
特開平6−287144号公報(特許文献1)には、サイコ(柴胡)、カッコン(葛根)、サイシン(細辛)、ゼンコ(前胡)及びソヨウ(蘇葉)から選ばれる1種以上の生薬と非生薬薬物を配合してなるかぜ薬製剤が開示されている。この特許文献1には、サイコエキスを吸着剤、例えば、軽質無水ケイ酸(商品名;サイロイド)などの賦形剤、添加剤を加えて湿式造粒法及び噴霧乾燥法(スプレードライ)などでエキス末を得て用いてもよいこと、乾燥サイコエキス、アセトアミノフェンなどを含む製剤が記載されている。しかし、軽質無水ケイ酸は吸着能が低く多量の軽質無水ケイ酸が必要となるので製剤が大型化又は大量化し、服用感を損なう。
【0005】
特開平9−176027号公報(特許文献2)には、ダイオウなどのアントロン系化合物を主成分とする生薬エキスと多孔性ケイ酸カルシウムとを配合し、平衡相対湿度40%以下で製した医薬組成物が開示されている。この特許文献2には、軟エキスを多孔性ケイ酸カルシウムに吸着させ、製剤工程で製剤を低水分化することにより、生薬含有率が高く、しかも安定な医薬組成物が得られること、軽質無水ケイ酸及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムに比べて多孔性ケイ酸カルシウムは吸着剤としての使用量が少なくて済むことが開示されている。しかし、ケイ酸カルシウムは吸着性や成型性においても優れた吸着剤ではある一方、飛散性があり、湿度下では流動性が低下し、ケーキング(固化)を起こす。特に、高用量の軟エキスを含む製剤では、ケーキングが生じやすくなり、製剤の形態を安定して維持できなくなり、服用時等に問題となる。また、配合する軟エキスの量が多い場合、ケイ酸カルシウムだけでは製剤化することは難しい。
【0006】
特開2001−294533号公報(特許文献3)には、特殊なケイ酸カルシウムに水を加え、均一に混合・分散させた後、漢方エキス粉末又は生薬エキス粉末を加えて撹拌造粒し、造粒物を製造することが開示されている。この文献では、高速撹拌造粒機を用いて造粒性を改善し、漢方エキス又は生薬エキスの含有量の高い造粒物を得ること、造粒物の崩壊性を改善することについて言及されている。しかし、この文献には、製造後の製品の品質に関するケーキングや変色について言及されていない。
【0007】
なお、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及びケイ酸カルシウムはいずれも賦形剤として機能することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−287144号公報(特許請求の範囲、段落[0006]、実施例)
【特許文献2】特開平9−176027号公報(特許請求の範囲、段落[0004][0008])
【特許文献3】特開2001−294533号公報(特許請求の範囲、段落[0047])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、ケーキング(固化)および製剤の変色を有効に抑制できる生薬製剤(または漢方製剤)及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、生薬エキスまたは漢方エキス(特に軟エキス)に由来する成分の含有量が高くても、固化または変色を抑制できる組成物(造粒物など)及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、高湿度下で保存しても、流動性低下の抑制のみならず、変色を抑制できる生薬製剤(または漢方製剤)及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、攪拌造粒法などの簡単な造粒法により、前記優れた特性を有する固形製剤を製造できる方法を提供することにある。
【0013】
本発明の更なる目的は、原生薬換算量と比較して低容量であり、かつ生薬エキスまたは漢方エキスの含有量が高い固形製剤(医薬組成物、造粒物など)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、吸着量の高い第1の吸着剤(ケイ酸カルシウムなど)と、この第1の吸着剤よりも吸着量の低い第2の吸着剤(軽質無水ケイ酸など)との複数の吸着剤を用いると生薬エキスまたは漢方エキス(複数の軟エキスなど)を大量に原料として用いても、ケーキング(固化)を有効に防止でき、外観変化を起こしにくい固形製剤が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、(1)本発明の固形製剤(医薬組成物)は、生薬エキスまたは漢方エキスと吸着剤とを含む固形製剤であって、前記吸着剤が、吸着能が4〜6ml/gである第1の吸着剤と、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤とを含んでいる。(2)第1の吸着剤がケイ酸カルシウムを含み、第2の吸着剤が、軽質無水ケイ酸およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択された少なくとも1種の吸着剤を含んでいてもよく、(3)第1の吸着剤と第2の吸着剤との割合は、前者/後者=20/80〜90/10(質量比)程度であってもよい。(4)生薬エキスは、ナンテンジツエキス、キキョウエキス、ショウキョウエキス、及びチンピエキスから選択された少なくとも一種のエキスであってもよく、(5)生薬エキスまたは漢方エキスは、水分含有量20〜40質量%の軟エキスであってもよく、(6)生薬エキスまたは漢方エキスの100質量部に対する吸着剤の総含有量は10〜45質量部程度であってもよい。(7)固形製剤(医薬組成物)は、さらに解熱鎮痛剤を含んでいてもよい。また、(8)固形製剤(医薬組成物)は、さらに、結合剤、賦形剤、崩壊剤、矯味剤(甘味剤)から選択された少なくとも1つの成分を含有していてもよい。さらに、(9)固形製剤(医薬組成物)は、散剤、顆粒剤又は錠剤の形態であってもよい。
【0016】
本発明は、(10)吸着能が4〜6ml/gである第1の吸着剤と、この第1の吸着剤よりも吸着量が低く、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤とを含む吸着剤と、生薬エキスまたは漢方エキスとを湿式造粒する固形製剤の製造方法、(11)生薬エキスまたは漢方エキスを、吸着能が4〜6ml/gである第1の吸着剤と、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤とを含む吸着剤に吸着させて湿式造粒し、造粒物のケーキング及び/又は変色を防止する方法も包含する。
【0017】
なお、本明細書において、生薬、漢方または非生薬活性成分を単に活性成分と称する場合がある。また、第1の吸着剤及び第2の吸着剤を単に吸着剤と総称する場合がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、第1及び第2の吸着剤を用いるため、固形製剤において、吸湿性を有する生薬エキスまたは漢方エキスを用いても、ケーキング(固化)を有効に抑制できる。特に、生薬エキスまたは漢方エキス(特に軟エキス)に由来する生薬成分の含有量が高くても、少量の吸着剤で製剤の固化を抑制できる。さらに、高湿度下で保存しても、流動性のみならず、安定性も高く変色又は着色を抑制できる。さらには、本発明の方法では、攪拌造粒法などの簡単な造粒法により、前記優れた特性を有する固形製剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
生薬エキスとは、生薬原末から水、エタノールのような有機溶媒またはその混合物を用いてエキスを抽出させたものをいう。また、生薬エキスは、生薬原末から抽出したエキスの濃縮エキスまたは複数の生薬から抽出したエキスまたはその混合物であってもよい。
【0020】
生薬エキスに用いられる生薬の種類は、植物性の生薬のみならず動物性又は鉱物性の生薬であってもよく、特に制限されないが、日本薬局方に記載されている生薬が好ましく、例えば、アセンヤク、イレイセン(威霊仙)、ウイキョウ(茴香)、エンゴサク(延胡索)、オウギ(黄耆)、オウゴン(黄岑)、オウバク(黄柏)、オウヒ(桜皮)、オウレン(黄連)、オンジ(遠志)、ガジュツ、カンキョウ(乾姜)、カッコン(葛根)、カッコウ、カロニン、カノコソウ、カンゾウ(甘草)、カミツレ、キキョウ(桔梗)、キクカ(菊花)、キジツ(枳実)、キョウニン(杏仁)、キョウカツ、クジン(苦参)、ケイガイ(荊芥)、ケイヒ(桂皮)、ゲンチアナ、コウカ(紅花)、コウブシ(香附子)、コウベイ、コウボク(厚朴)、ゴオウ、ゴシツ(牛膝)、ゴシュユ(呉茱萸)、ゴボウシ(牛蒡子)、ゴミシ(五味子)、サイコ(柴胡)、サイシン(細辛)、サンシシ(山梔子)、サンシュユ(山茱萸)、サンショウ(山椒)、サンザシ(山査子)、サンズコン(山豆根)、サンソウニン(酸棗仁)、サンヤク(山薬)、サンナ(山奈)、ジオウ(地黄)、シオン、シャクヤク、ジャコウ、ショウマ(升麻)、シツリシ、シャゼンシ、シャゼンソウ、シャジン(シュクシャ(縮砂))、獣胆(ユウタンを含む)、ショウキョウ(生姜)、ジリュウ(地竜)、シンイ(辛夷)、ジコッピ(地骨皮)、シコン、セキサン(石蒜)、セッコウ(石膏)、セネガ、センコツ(川骨)、ゼンコ(前胡)、センキュウ、センブリ、ソウジュツ(蒼朮)、ソウハクヒ(桑白皮)、ソヨウ(蘇葉)、ダイオウ(大黄)、タイソウ、チクジョ、チクセツニンジン(竹節人参)、チョウジ(丁子)、チョレイ(猪苓)、チンピ(陳皮)、テンナンショウ(天南星)、トウガシ(冬瓜子)、トウキ(当帰)、トウニン(桃仁)、トコン、トチュウ、ナンテンジツ、ニンジン(人参)、ニンドウ(忍冬)、バイモ、バクモンドウ、ハッカ(薄荷)、ハンゲ(半夏)、ビャクシ、ビャクシャク、ビャクジュツ(白朮)、ビワヨウ(枇杷葉)、ビンロウジ(檳榔子)、ブクリョウ(茯苓)、ボタンピ(牡丹皮)、マオウ(麻黄)、マシニン(麻子仁)、モッコウ(木香)、ヨクイニン、リュウガンニク(竜眼肉)、リョウキョウ(良姜)、リュウコツ(竜骨)、リュウタン(竜胆)、レンニク(蓮肉)、レンギョウ(連翹)などが例示できる。
【0021】
生薬は、疾患の種類に応じて選択でき、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。より具体的には、かぜ症候群の治療及び/又は予防に用いられる生薬(例えば、総合感冒剤などの成分)としては、例えば、マオウ、ナンテンジツ、オウヒ、オンジ、カンゾウ、キキョウ、キョウニン、シャゼンシ、シャゼンソウ、セキサン(石蒜)、セネガ、セッコウ(石膏)、バイモ、ウイキョウ、オウバク、オウレン、ガジュツ、カノコソウ、カミツレ、ケイヒ、ゲンチアナ、ゴオウ、サンショウ、シャジン、ショウキョウ、ジリュウ、ソウジュツ、チョウジ、チンピ、ビャクジュツ、ボタンピ、ジオウ(地黄)、チクセツニンジン、トコン、ニンジン、アセンヤク、ウイキョウ、オウゴン、カッコン、カロニン、キョウニン、ケイヒ、ゴオウ、コウブシ、コウベイ(粳米)、コウボク、ゴミシ、サイコ、サイシン、シオン、ジャコウ、シャクヤク、ソウハクヒ、ソヨウ、タイソウ、チクセツニンジン、バクモンドウ、ハンゲ、バイモ、ブクリョウ、リュウコツ(竜骨)、獣胆(ユウタンを含む)などが例示できる。代表的なかぜ症候群の治療及び/又は予防に用いられる生薬(例えば、総合感冒剤などの生薬成分)は、ナンテンジツエキス、キキョウエキス、ショウキョウエキス、及びチンピエキスから選択された少なくとも一種を含む場合が多く、これらの全ての生薬を含んでいてもよい。
【0022】
なお、これらの生薬は、生薬エキスの形態ではない非抽出生薬と組み合わせて使用してもよい。
【0023】
また、生薬エキスの代わりに漢方エキスが用いられてもよい。漢方エキスは、生薬原末から抽出したエキスの濃縮エキスまたは複数の生薬から抽出したエキスまたはその混合物であってもよい。本発明に使用される漢方エキスとしては、内服投与によって使用されるものであって、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよく、構成する生薬の組合せやその配合比率についても特に制限されないが、例えば、「改定 一般用漢方処方の手引き」(財団法人 日本公定書協会監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)および「改定 一般用漢方処方の手引き 平成22年4月1日通知(加減方追加)対応追補版」(財団法人 日本公定書協会監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載されている漢方配合を有するエキスが挙げられる。具体的には、安中散、安中散加茯苓、胃風湯、胃苓湯、茵ちん蒿湯、茵ちん五苓散、温経湯、温清飲、温胆湯、延年半夏湯、黄耆建中湯、黄ごん湯、応鐘散、黄連阿膠湯、黄連解毒湯、黄連湯、乙字湯、乙字湯去大黄、化食養脾湯、かっ香正気散、葛根黄連黄ごん湯、葛根紅花湯、葛根湯、葛根湯加川きゅう辛夷、加味温胆湯、加味帰脾湯、加味解毒湯、加味逍遙散、加味逍遙散加川きゅう地黄、加味平胃散、乾姜人参半夏丸、甘草瀉心湯、甘草湯、甘麦大棗湯、帰耆建中湯、桔梗湯、帰脾湯、きゅう帰膠艾湯、きゅう帰調血飲、きゅう帰調血飲第一加減、響声破笛丸、杏蘇散、苦参湯、駆風解毒散(湯)、荊芥連翹湯、鶏肝丸、桂枝湯、桂枝加黄耆湯、桂枝加葛根湯、桂枝加厚朴杏仁湯、桂枝加芍薬生姜人参湯、桂枝加芍薬大黄湯、桂枝加芍薬湯、桂枝加朮附湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、桂枝加苓朮附湯、桂枝人参湯、桂枝茯苓丸、桂枝茯苓丸料加よく苡仁、啓脾湯、荊防敗毒散、桂麻各半湯、鶏鳴散加茯苓、堅中湯、甲字湯、香砂平胃散、香砂養胃湯、香砂六君子湯、香蘇散、厚朴生姜半夏人参甘草湯、五虎湯、牛膝散、五積散、牛車腎気丸、呉茱萸湯、五物解毒散、五淋散、五苓散、柴陥湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡桂枝湯、柴胡清肝湯、柴芍六君子湯、柴朴湯、柴苓湯、左突膏、三黄散、三黄瀉心湯、酸棗仁湯、三物黄ごん湯、滋陰降火湯、滋陰至宝湯、紫雲膏、四逆散、四君子湯、滋血潤腸湯、七物降下湯、柿蒂湯、四物湯、炙甘草湯、芍薬甘草湯、鷓鴣菜湯、蛇床子湯、十全大補湯、十味敗毒湯、潤腸湯、蒸眼一方、生姜瀉心湯、小建中湯、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏、小承気湯、小青竜湯、小青竜湯加杏仁石膏、小青龍湯加石膏、椒梅湯、小半夏加茯苓湯、消風散、升麻葛根湯、逍遙散、四苓湯、辛夷清肺湯、秦ぎょう姜活湯、秦ぎょう防風湯、参蘇飲、神秘湯、参苓白朮散、清肌安蛔湯、清湿化痰湯、清上けん痛湯、清上防風湯、清暑益気湯、清心蓮子飲、清肺湯、折衝飲、川きゅう茶調散、千金鶏鳴散、銭氏白朮散、疎経活血湯、蘇子降気湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、大建中湯、大柴胡湯、大柴胡湯去大黄、大半夏湯、竹茹温胆湯、治打撲一方、治頭瘡一方、治頭瘡一方去大黄、中黄膏、調胃承気湯、丁香柿蒂湯、釣藤散、猪苓湯、猪苓湯合四物湯、通導散、桃核承気湯、当帰飲子、当帰建中湯、当帰散、当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散、当帰湯、当帰貝母苦参丸料、独活葛根湯、独活湯、二朮湯、二陳湯、女神散、人参湯、人参養栄湯、排膿散、排膿湯、麦門冬湯、八味地黄丸、半夏厚朴湯、半夏瀉心湯、半夏白朮天麻湯、白虎湯、白虎加桂枝湯、白虎加人参湯、不換金正気散、伏竜肝湯、茯苓飲、茯苓飲加半夏、茯苓飲合半夏厚朴湯、茯苓沢瀉湯、分消湯、平胃散、防已黄耆湯、防已茯苓湯、防風通聖散、補気健中湯、補中益気湯、補肺湯、麻黄湯、麻杏甘石湯、麻杏よく甘湯、麻子仁丸、麻黄附子細辛湯、楊柏散、よく苡仁湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、六君子湯、立効散、竜胆瀉肝湯、苓姜朮甘湯、苓桂甘棗湯、苓桂朮甘湯、六味丸、黄耆桂枝五物湯、解労散、加味四物湯、枳縮二陳湯、こ菊地黄丸、柴胡疎肝湯、柴蘇飲、芍薬甘草附子湯、沢しゃ湯、竹葉石膏湯、知柏地黄丸、中建中湯、定悸飲、当帰芍薬散加黄耆釣藤、当帰芍薬散加人参、当帰芍薬散加附子、排膿散及湯、八解散、附子理中湯、味麦地黄丸、明朗飲、抑肝散加芍薬黄連、連珠飲、麻黄湯等のエキスが例示される。代表的なかぜ症候群の治療及び/又は予防に用いられる漢方(例えば、総合感冒剤などに配合される漢方成分)は、葛根湯、桂枝湯、香蘇湯、柴胡桂枝湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯、半夏厚朴湯、麻黄湯から選択された一種を含んでいてもよい。
【0024】
本発明では、製剤の製造において、生薬または漢方は軟エキスの形態で用いてもよい。軟エキスは、溶媒を含む液状又は粘稠な形態であればよく、通常、水分含有量15〜50質量%、特に、20〜40質量%程度の軟エキスである。軟エキスは、通常、粘稠で粘性の高い液体である。
【0025】
生薬エキスまたは漢方エキスの1日当たりの使用量(投与量)は、種類に応じて、例えば、原生薬換算で、100〜50000mg、好ましくは250〜10000mg程度から選択できる。より具体的には、1日当たりの使用量(投与量)は、原生薬換算で、ナンテンジツエキスでは、例えば、1000〜20000mg、好ましくは2500〜15000mg、さらに好ましくは3000〜13000mg程度であってもよく、チンピエキスでは、例えば、1000〜10000mg、好ましくは2500〜7500mg、さらに好ましくは3000〜6500mg程度であってもよく、キキョウエキスでは、500〜5000mg、好ましくは1000〜4500mg、さらに好ましくは1500〜4000mg程度であってもよく、ショウキョウエキスでは、750〜6000mg、好ましくは1000〜5000mg、さらに好ましくは2000〜4000mg程度であってもよい。
【0026】
なお、本発明では、エキス成分の含有量が高くても、ケーキング(固化)及び外観変化を防止できる。そのため、製剤中の生薬由来成分の含有量は、広い範囲で選択でき、例えば、25〜75質量%、好ましくは30〜65質量%、さらに好ましくは35〜55質量%(例えば、35〜45質量%)程度であってもよい。
【0027】
[他の活性成分]
本発明の固形製剤(又は医薬組成物)は、活性成分として少なくとも生薬由来成分を含んでいればよく、活性成分は生薬由来成分単独で形成してもよく、生薬由来成分と他の活性成分(非生薬活性成分)とを組み合わせてもよい。他の活性成分は生理活性成分であってもよく薬理活性成分であってもよい。
【0028】
上記生薬の少なくとも1種と組み合わせて用いられる非生薬薬物(非生薬系合成薬物、非生薬活性成分)は、所望する活性に応じて選択でき、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤鎮咳剤、ノスカピン類、去痰剤、気管支拡張剤、胃粘膜保護剤、カフェイン類、ビタミン類催眠鎮静薬、喀痰溶解剤などであってもよい。これらの活性成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
解熱鎮痛剤としては、例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、エテンザミド、サザピリン、ラクチルフェネチジン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウ、アセトアミノフェンなどが例示でき、抗ヒスタミン剤としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、酒石酸アリメマジン、塩酸イソチペンジル、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、塩酸ジフェニルピラリン、テオクル酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェテロール、リン酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ナパジシル酸メブヒドロリン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸イプロヘプチン、塩酸プロメタジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸フェネタジン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、などが例示できる。鎮咳剤としては、例えば、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、デキストロメトルファン・フェノールフタリン塩、塩酸アロクラミド、塩酸クロペラスチン、フェンジゾ酸クロペラスチン、クエン酸ペントキシベリン(クエン酸カルベタペンタン)、ヒベンズ酸チペピジン、ジブナートナトリウム、クエン酸チペピジン、フェンジゾ酸クロベラスチン、などが例示でき、ノスカピン類としては、例えば、ノスカピン、塩酸ノスカピンなどが例示でき、去痰剤としては、グアヤコールスルホン酸カリウム、塩酸ブロムヘキシン、グアイフェネシン、クエン酸チペピジン、カルボシステイン、塩化アンモニウム、l−メントール、アンモニア・ウイキョウ精、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシン、クレゾールスルホン酸カリウムなどが例示でき、気管支拡張剤としては、例えば、dl−塩酸メチルエフェドリン、dl−メチルエフェドリンサッカリン塩、塩酸トリメトキノール、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸メトキシフェナミン、l−塩酸メチルエフェドリン塩酸プソイドエフェドリン、アミノフィリン、ジプロフィリン、テオフィリン、プロキシフィリンなどが例示できる。カフェイン類としては、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェインなどが例示でき、喀痰溶解剤としては、塩化リゾチーム、塩酸エチルシステイン、塩酸メチルシステインなどが例示でき、ビタミン類としては、例えば、ビタミンB類またはその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンB類またはその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンC類またはその誘導体若しくはそれらの塩類、ビタミンP(ヘスペリジン)またはその誘導体若しくはそれらの塩類などが例示できる。胃粘膜保護剤としては、例えば、アミノ酢酸、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩、水酸化アルミニウムゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが例示できる。また、催眠鎮静薬として、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素などが例示できる。固形製剤は、これらの非生薬活性成分のうち、解熱鎮痛剤(アセトアミノフェンなど)を含む場合が多い。
【0030】
[吸着剤]
本発明では、前記吸着剤として、吸着能の高い第1の吸着剤と、第1の吸着剤よりも吸着能の低い第2の吸着剤とを用いる。このような吸着剤を組み合わせて用いると、多量の生薬エキスまたは漢方エキスを用いた製剤であっても、少量の吸着剤で製剤のケーキングを防止できる。しかも、吸着能の高い第1の吸着剤を多量に用いると、外観変化(着色または変色)を生じる場合があるが、そのような場合であっても、第1の吸着剤と第2の吸着剤とを組み合わせることにより、外観変化を有効に防止できる。
【0031】
吸着剤の吸着能とは、吸油量とも称され、その吸着剤の多孔質中に液体を保持できる能力を意味する。吸着剤の吸着能(吸油量)は、亜麻仁油を用いてJIS K 5101などに従って測定できる。第1の吸着剤の吸着能は、例えば、4〜6ml/g、好ましくは4.2〜5.8ml/g、さらに好ましくは4.5〜5.5ml/g、特に4.7〜5.3ml/g程度であってもよい。このような第1の吸着剤としては、例えば、ケイ酸カルシウムなどが例示できる。このケイ酸カルシウムは、多孔質であり、式 2CaO・3SiO・mSiO・nHO(式中、1<m<2、2<n<3である)で表すことができる。第1の吸着剤(ケイ酸カルシウム)の平均粒子径は、1〜100μm(例えば、5〜50μm)程度であってもよい。
【0032】
第2の吸着剤の吸着能は、第1の吸着剤よりも吸着能が低く、例えば、2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満、好ましくは2.2〜3.8ml/g、さらに好ましくは2.3〜3.7ml/g、特に2.5〜3.5ml/g程度であってもよい。このような第2の吸着剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが例示できる。これらの第2の吸着剤は多孔質であり、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい第2の吸着剤は軽質無水ケイ酸である。第2の吸着剤(軽質無水ケイ酸など)の平均粒子径は、0.01〜250μm(例えば、1〜10μm)程度であってもよい。
【0033】
第1の吸着剤と第2の吸着剤との割合は、前者/後者(質量比)=20/80〜90/10(例えば、30/70〜85/15)、好ましくは35/65〜80/20、さらに好ましくは35/66〜75/25(例えば、40/60〜70/30)、特に、40/60〜60/40(例えば、40/60〜55/45)程度であってもよい。
【0034】
吸着剤の総含有量は、例えば、生薬エキスまたは漢方エキス100質量部に対して10〜45質量部(例えば、15〜40質量部)、好ましくは17〜38質量部(例えば、20〜35質量部)、さらに好ましくは22〜32質量部(例えば、25〜30質量部)程度であり、通常、20〜30質量部程度である。
【0035】
さらに、生薬エキスまたは漢方エキス100質量部に対する第1の吸着剤の割合は、例えば、5〜40質量部程度の範囲から選択でき、通常、5〜25質量部(例えば、7〜23質量部)、好ましくは8〜20質量部(例えば、10〜20質量部)、さらに好ましくは10〜18質量部(例えば、12〜16質量部)程度である。
【0036】
本発明では、第1及び第2の吸着剤(ケイ酸カルシウム及び軽質無水ケイ酸など)に原料として吸湿性のある複数の生薬エキスを吸着させても、ケーキング又はブロッキングを有効に防止できると共に、外観変化(着色又は変色)をもたらす現象(特に、高湿度下での外観変化)を抑制できる。また、漢方エキスまたは生薬エキス(ナンテンジツエキス、キキョウエキス、ショウキョウエキス、及びチンピエキスなど)と非生薬活性成分(アセトアミノフェンなど)とを併用しても、上記と同様にケーキング及び変色又は着色を防止でき、長期間に亘り安定な流動性を示す。
【0037】
[担体又は添加剤]
本発明の組成物は、さらに、担体(結合剤、賦形剤、崩壊剤から選択された少なくとも1つの成分)を含有していてもよい。
【0038】
賦形剤としては、例えば、D−マンニトール、D−ソルビトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコール、乳糖、ブドウ糖、果糖、白糖、粉末還元麦芽糖水アメなどの糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、デンプン類(バレイショデンプン、トウモロコシデンプンなど)、デキストリン、βーシクロデキストリン、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降性炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、タルク、カオリンなどが例示できる。賦形剤としては、糖類、結晶セルロース、デンプン類、無水リン酸水素カルシウムなどを用いる場合が多い。賦形剤の使用量は、活性成分及び吸着剤の全量100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは3〜75質量部、さらに好ましくは5〜50質量部程度であってもよい。なお、第1及び/又は第2の吸着剤を賦形剤として機能させることができるため、賦形剤は必ずしも必要ではない。そのため、賦形剤の使用量は、活性成分及び吸着剤の全量100質量部に対して、0〜30質量部、好ましくは3〜20質量部(例えば、5〜10質量部)程度であってもよい。
【0039】
結合剤としては、例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドン共重合体(コポリビドン)、アクリル酸系高分子、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、アルファー化デンプン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、白糖などが例示できる。結合剤としては、セルロース誘導体(MC、HPC、HPMCなど)、ポビドンなどを用いる場合が多い。結合剤の使用量は、活性成分及び吸着剤の全量100質量部に対して、1〜50質量部、好ましくは3〜30質量部、さらに好ましくは5〜25質量部(例えば、5〜15質量部)程度であってもよい。
【0040】
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、デンプン類(トウモロコシデンプンなど)、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン、アルギン酸、ベントナイトなどが例示できる。崩壊剤としては、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、デンプン類などを用いる場合が多い。崩壊剤の使用量は、活性成分及び吸着剤の全量100質量部に対して、1〜30質量部、好ましくは3〜25質量部、さらに好ましくは5〜20質量部(例えば、5〜15質量部)程度であってもよい。
【0041】
本発明の組成物は、他の担体又は添加剤、例えば、滑沢剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、ポリエチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、ミツロウ、サラシミツロウなど);抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、クエン酸など);保存剤(パラオキシ安息香酸エステル類など);着色剤(ウコン抽出液、リボフラビン、カロチン液、タール色素、カラメル、酸化チタン、ベンガラなど);界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンなど)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類、ショ糖脂肪酸エステルなど);流動化剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、含水二酸化ケイ素など);可塑剤(クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチン、セタノールなど);甘味剤又は矯味剤(ショ糖、マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスコルビン酸、ステビア、メントール、カンゾウ粗エキス、単シロップなど);着香剤又は香料(メントール、ジンジャーオイルなど);色素、清涼化剤、防腐剤又は保存剤、湿潤剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの担体又は添加剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0042】
[剤形]
本発明の製剤(医薬組成物)の形態は特に制限されず、種々の固形製剤(経口固形製剤)、例えば、散剤、顆粒剤(細粒又は顆粒剤)、丸剤、錠剤、カプセル剤、チュアブル錠などであってもよい。前記組成物は、通常、造粒物(散剤、粒剤)又は錠剤の形態である場合が多く、粒剤には、細粒剤及び顆粒剤が含まれる。
【0043】
[製剤の製造方法など]
本発明では、少なくとも生薬エキスまたは漢方エキスを含む活性成分を、吸着剤(第1及び第2の吸着剤)を用いて湿式製粒することにより、本発明の固形製剤を製造することができる。この方法では、少なくとも生薬エキスまたは漢方エキス(例えば、少なくとも軟エキスを含む活性成分)を吸着剤に吸着させて造粒すればよく、通常、担体(例えば、賦形剤、崩壊剤及び結合剤から選択された少なくとも一種)を含む製剤成分(造粒成分)と併用して造粒する場合が多い。湿式造粒では、練合造粒法、押出造粒法などが利用できる。本発明では、生薬エキスまたは漢方エキスを用いるため、練合造粒法、流動層造粒法を利用するのが有利である。これらの方法は慣用の方法で行うことができる。造粒物は、通常、乾燥及び整粒される。また、この造粒物と担体との混合物を打錠することにより錠剤を得ることもできる。
【0044】
このような方法で得られた製剤は、製造後のケーキングを有効に防止できる。また、製剤の着色又は変色を防止することもできる。そのため、安定な形態を長期間に亘り維持できる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
バーチカルグラニュレーター(FM−VG−25:パウレック製)に、表1の実施例1に示す割合で、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)、結晶セルロース、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸(サイリシア320、有限会社ワイ・ケイ・エフ)及びケイ酸カルシウム(フローライトRE、エーザイフードケミカル)を仕込み、攪拌しながら、ナンテンジツエキス(アルプス薬品工業株式会社製)、キキョウエキス(日本粉末薬品株式会社製)、ショウキョウエキス(日本粉末薬品株式会社製)、チンピエキス(日本粉末薬品株式会社製)、水200mLに溶解したアセスルファムカリウム、スクラロースを添加し、粉末状態になるまで練合した。造粒してパワーミル(昭和化学、P−7型、パンチングサイズ:1.0mmφ)で整粒後、得られた粉末にステアリン酸マグネシウム、ジンジャーオイルを添加し、均一に混合して散剤とした。なお、軽質無水ケイ酸(サイリシア320)の吸着能は、約3ml/gであり、ケイ酸カルシウム(フローライトRE)の吸着能は、約5ml/gである。また、本実施例で用いたナンテンジツエキスの原生薬質量換算比(カタログ値)は、エキス:原生薬=1:5.5であり、キキョウエキスの原生薬質量換算比(カタログ値)は、エキス:原生薬=1:4であり、ショウキョウエキスの原生薬質量換算比(カタログ値)は、エキス:原生薬=1:10.3であり、チンピエキスの原生薬質量換算比(カタログ値)は、エキス:原生薬=1:5である。
[実施例2]
表1の実施例2に示す原料を用いる以外、実施例1と同様の方法で散剤を得た(表1の実施例2参照)。
[比較例1]
ケイ酸カルシウムを添加することなく、実施例1と同様の方法で散剤を得た(表1の比較例1参照)。
[比較例2]
軽質無水ケイ酸を添加することなく、実施例1と同様の方法で散剤を得た(表1の比較例2参照)。
[実施例3]
バーチカルグラニュレーターに、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸及びケイ酸カルシウムとともにアセトアミノフェンを仕込むこと以外は、表1の実施例3に示す原料を用いて実施例1と同様の方法で散剤を得た(表1の実施例3参照)。
【0046】
そして、実施例1〜3、比較例1、2の散剤を以下の外観安定性試験に供した。
【0047】
実施例1〜3、比較例1、2の散剤をガラス瓶に収容して25℃及び63%RHの条件下で、開栓状態で4日間保存した。保存後の製剤に関して、外観変化とケーキングを調べた。外観変化はスペクトロフォトメーターCM−3500d(コニカミノルタ製色差計)を用いて色差(ΔE*)を測定した。ケーキングは、以下の基準で、瓶を傾斜させたときの散剤の流動性で確認した。結果を以下の表1に示す。
−:ケーキングなし(流動性良好)
+:ケーキングあり(振動を与えるとほぐれる)
++:ケーキングあり(振動を与えてもほぐれない)
【0048】
【表1】

【0049】
上記の結果より、ケイ酸カルシウムと軽質無水ケイ酸を併用して用いれば、生薬エキス又は漢方エキスの含有率が高くても、医薬製剤の外観変化及びケーキングを抑制できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、生薬エキスまたは漢方エキスを用いた組成物(又は製剤)のケーキング(固化)を有効に防止できる。さらに、変色又は着色も抑制できる。そのため、長期間に亘り固形製剤の流動性及び外観品質の低下などを防止するのに有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生薬エキスまたは漢方エキスと吸着剤とを含む固形製剤であって、前記吸着剤が、吸着能が4〜6ml/gである第1の吸着剤と、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤とを含む固形製剤。
【請求項2】
第1の吸着剤がケイ酸カルシウムであり、第2の吸着剤が、軽質無水ケイ酸およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択された少なくとも1種の吸着剤である、請求項1記載の固形製剤。
【請求項3】
第1の吸着剤と第2の吸着剤との割合が、前者/後者=20/80〜90/10(質量比)である請求項1または2記載の固形製剤。
【請求項4】
生薬エキスが、ナンテンジツエキス、キキョウエキス、ショウキョウエキス、及びチンピエキスから選択された少なくとも一種の軟エキスである請求項1〜3のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項5】
生薬エキスまたは漢方エキスが水分含有量20〜40質量%の軟エキスである請求項1〜4のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項6】
生薬エキスまたは漢方エキス100質量部に対して吸着剤の総量が10〜45質量部である請求項1〜5のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項7】
さらに解熱鎮痛剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項8】
さらに、結合剤、賦形剤、崩壊剤および矯味剤から選択された少なくとも1つの成分を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項9】
散剤、顆粒剤又は錠剤の形態である請求項1〜8のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項10】
吸着能が4〜6ml/gである第1の吸着剤と、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤とを含む吸着剤と、生薬エキスまたは漢方エキスとを湿式造粒する固形製剤の製造方法。
【請求項11】
生薬エキスまたは漢方エキスを、吸着能が4〜6ml/gである第1の吸着剤と、吸着能が2ml/g以上であり、かつ4ml/g未満である第2の吸着剤とを含む吸着剤に吸着させて湿式造粒し、造粒物のケーキング及び/又は変色を防止する方法。

【公開番号】特開2013−32346(P2013−32346A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−146981(P2012−146981)
【出願日】平成24年6月29日(2012.6.29)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】