説明

画像処理装置

【課題】撮像素子の感度の温度特性に伴う処理精度の低下を抑える。
【解決手段】赤外線LED26に電源を供給する回路に、抵抗R3と、接地したNTCサーミスタ50と、このNTCサーミスタ50と抵抗R3とに接続した抵抗R4が組み込まれている。NTCサーミスタ50はCMOS基板10fの温度を直接的に又は間接的に検知する。温度が高くなるとNTCサーミスタ50の抵抗が低下する。これにより、抵抗R3と抵抗R4の分圧比が変化して赤外線LED26の発光光量が低下することで温度上昇に伴うCMOSイメージセンサの感度上昇を補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明用の光源を備えた撮像装置が知られている。特許文献1は、視覚センサに関し、それまで別体であったカメラとLED照明器具を一体化することを提案している。特許文献2は、カメラのレンズホルダの前端に照明基板を配置し、この照明基板に数多くのLEDを配置した撮像装置を開示している。この種の撮像装置は例えば工場設備のFAセンサとして用いられている。例えばベルトコンベアで次々と流れてくる検査対象物(ワーク)を検査するのに、この撮像装置を含む画像処理装置が用いられる。
【0003】
この種の画像処理装置は、撮像素子としてCMOSイメージセンサを用いることが多い。CMOSイメージセンサは図9に示す温度特性を有している。具体的に説明すると、温度が高くなると図9の特性線が右側にシフトしてCMOSイメージセンサの感度が高くなり、例えば欠陥検出精度が低下するという問題を有している。特に、この問題は撮像装置に赤外線LEDを組み込んだときに、温度上昇に伴うCMOSイメージセンサの感度上昇が赤外領域では大きいため上述した問題が顕在化する。
【0004】
また、特許文献1、2のようにLED照明ユニットを撮像装置に組み込んだとき、LED照明が発する熱の影響をCMOSイメージセンサが受けてしまう可能性が大きくなる。なお、LEDは温度上昇に伴って発光光量が低下することが知られており、このLEDの温度特性を補償する技術が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−320538号公報
【特許文献2】特開2007−214682号公報
【特許文献3】特開2007−142625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LEDは温度上昇に伴って発光光量が低下する特性を利用して、この特性でCMOSイメージセンサの温度特性を相殺することも考えられる。しかし、LEDの温度上昇に伴う発光光量の低下と、温度上昇に伴うCMOSイメージセンサの感度変化とは一義的な相関関係にないため、LEDの温度上昇に伴う発光光量の低下によって温度上昇に伴うCMOSイメージセンサの感度変化を補償することは事実上難しい。
【0007】
他に、CMOSイメージセンサの温度特性に関連した撮像装置特有の上記の問題に対して撮像間隔や露光時間を変化させることで対応することも理論的には可能である。しかし、撮像間隔や露光時間はユーザが設定する重要な要素であることから、これを撮像装置側で変化させることは好ましくない。以上説明したような問題は、CMOSイメージセンサの代わりにCCDイメージセンサを使用した場合にも考え得る。
【0008】
本発明の目的は、撮像素子の感度の温度特性に伴う処理精度の低下を抑えることのできる画像処理装置を提供することにある。
【0009】
本発明の更なる目的は、撮像素子であるCMOSイメージセンサの感度の温度特性に伴う処理精度の低下を抑えることのできる画像処理装置を提供することにある。
【0010】
本発明の更なる目的は、照明用に赤外線LED又は紫外線LEDを採用し且つCMOSイメージセンサの感度の温度特性に伴う処理精度の低下の抑制を赤外線LED又は紫外線LEDの電源供給回路構成で実現した画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
共通のケースに照明用光源と撮像部とが収容され、該撮像部により取得された画像データを用いて画像処理を実行する画像処理部を含む画像処理装置であって、
前記撮像部に含まれる撮像素子の温度を検出する撮像素子温度センサと、
該撮像素子温度センサが検出した温度に応じて前記照明用光源の発光光量を変化させて、前記撮像素子の温度特性を補償する発光光量制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置を提供することにより達成される。
【0012】
本発明の典型的な実施形態によれば、照明用光源として赤外線LED又は紫外線LEDなどのLEDを採用した画像処理装置に本発明が適用される。この典型例の画像処理装置においては、赤外線LED又は紫外線LEDなどの照明用光源の電源供給を制御する回路に、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサなどの撮像素子の温度を直接的又は間接的に検知するサーミスタが組み込まれ、このサーミスタの温度変化に伴う抵抗値の変化を利用して照明用光源を流れる電流値を変化させてこの照明用光源の発光光量を変化させることにより、撮像素子の温度変化に伴う感度の変化をLEDの発光光量によって補償する。
【0013】
本発明の他の目的及び作用効果は後の実施例の詳しい説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例の画像処理装置の分解斜視図であって斜め後方から見た図である。
【図2】実施例の画像処理装置の分解斜視図であって斜め前方から見た図である。
【図3】実施例の画像処理装置に含まれる照明ユニットの分解斜視図であって斜め前方から見た図である。
【図4】図3の照明ユニットの部分断面図である。
【図5】実施例の画像処理装置に含まれる複数の基板の相関図である。
【図6】実施例の画像処理装置の概念図である。
【図7】実施例の画像処理装置に組み込まれたLED照明に関連した回路図である。
【図8】図7の回路図の動作を説明するためのフロー図である。
【図9】CMOSイメージセンサの分光感度特性図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。図1及び図2は実施例の画像処理装置100を示す。画像処理装置100は、撮像機能(カメラ)とともに画像データを用いて画像処理を実行する画像処理機能を有しており、OK/NG信号(検査対象物の良否を判定する判定信号)を出力するなど、ワークの外観検査を行うことができる。
【0016】
実施例の画像処理装置100から画像処理機能を省くことも可能である。例えば、画像処理装置100にコントローラをケーブル接続し、このコントローラ側に画像処理機能をもたせてもよい。この場合には、画像処理装置100は、後に説明するカメラ4と、このカメラモジュール4によって取得された画像データを用いて画像処理を実行するコントローラとで構成される。
【0017】
図1、図2は実施例の画像処理装置100の分解斜視図である。図1は画像処理装置100を斜め後方から見た図であり、図2は画像処理装置100を斜め前方から見た図である。図1、図2を参照して、実施例の画像処理装置100は、エンド部材2を含むカメラモジュール4及びレンズモジュール6と、照明ユニット8と、複数の基板10と、前端止めリング12とを有する。複数の基板10のうち、電源基板10a(図2)とメイン基板10bはカメラモジュール4及びレンズモジュール6の2つの側面にL字状に配置されている。電源基板10aの前端縁部には、レンズモジュール6の前方位置に第1コネクタ14(図2)が固設されており、この第1コネクタ14はレンズモジュール6の前端面の前方且つこれに隣接して位置している。
【0018】
図1において、参照符号10cは照明基板を示す。この照明基板10cは照明ユニット8の後端面を構成しており、この照明基板10cの後ろ側(レンズモジュール6側)の面に第2コネクタ18が固設されている。この第2コネクタ18は前述した第1コネクタ14に対応した位置に位置決めされている。
【0019】
画像処理装置100のケース16は、その後側でカメラモジュール4及びレンズモジュール6を包囲するケース本体を有している。ケース16は、また、その前端部に照明ユニット8を収容する照明ユニット8のための照明ケース部を有している。
【0020】
画像処理装置100は次のようにして組み立てることができる。ケース16を中心に説明すると、ケース16の後端側にカメラモジュール4及びこれに隣接して且つ前方に位置するレンズモジュール6を挿入し、また、ケース16の前端に照明ユニット8を装着してエンド部材2及び前端止めリング12をケース16にネジ止めすることで画像処理装置100を組み立てることができる。図1、図2において、参照符号20は、ケース16に設けられたネジ挿入穴であり、このネジ挿入穴20にネジ(図示せず)を差し込むことで上述したエンド部材2及び前端止めリング12の相対的な位置決めを行いつつこれらがケース16にネジ止めされる。また、この組み立て作業に伴って上記の第1、第2のコネクタ14、18がコネクタ連結され、これにより照明ユニット8の照明基板10cが電源基板10aと電気的に接続され、また、電源基板10aを介してメイン基板10bと接続される。なお、図2の参照符号38は鏡筒を示し、鏡筒38はケース16の前端部照明ケース部に形成され、この鏡筒38の周囲に照明ユニット8が搭載される。
【0021】
以上、図1及び図2を用いて説明したように、本実施例に係る画像処理装置100では、カメラモジュール4と照明ユニット8とが前後方向(後述するCMOSイメージセンサの光軸方向)に沿って離間して配置されており、カメラモジュール4と照明ユニット8との間には、CMOSイメージセンサに光を集光するための集光光学系(レンズモジュール6)が配置されている。このような配置によれば、照明ユニット8で生じた熱を、ある程度、カメラモジュール4に伝わり難くすることができる。しかし、それでもカメラモジュール4と照明ユニット8とが共通のケース16(及びエンド部材2)の内部に配置されていると、照明ユニット8の発熱に起因してケース16内の温度が上昇し、その温度上昇がCMOSイメージセンサの温度特性に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、本実施例に係る画像処理装置100では、この温度特性を補償するための工夫がなされている。詳細は後述する。
【0022】
また、本実施例では、レンズモジュール6は、カメラモジュール4のフォーカス位置(焦点位置)を調整するためのフォーカス調整機能(オートフォーカス機能)を有している。具体的には、レンズモジュール6内の所定レンズが前後に移動可能となっており、これによりフォーカス位置が調整可能である。
【0023】
図3は照明ユニット8を斜め前方から見た分解斜視図である。照明ユニット8は断面円形の輪郭を有し、レンズ本体22とリフレクタ本体24とそして前述した照明基板10cの3つの構成要素で作られており、前方から後方に向けてレンズ本体22、リフレクタ本体24、照明基板10cの順に位置決めされている。
【0024】
円形のリング状の形状の照明基板10cには、投光素子の一例として、周方向に等間隔に6つの投光素子26が位置決めされ、この投光素子26はLEDで構成されている。すなわち、照明基板10cは、CMOSイメージセンサの光軸を取り囲むように配置された6つのLED26を有しており、各々のLED26が撮像領域に向けて光を照射している。実施例では、LED26は、中心電極26a(図3)を備えた赤外線LEDで構成されている。この赤外線LED26は光軸を横断する方向に広がりを有する平面視矩形の面光源ということができる(図3)。
【0025】
図3並びに照明ユニット8の部分断面図である図4を参照してレンズ本体22について説明すると、レンズ本体22は、LED26側の第1の面22aと、これとは反対側つまり検査対象側の第2の面22bとを有しており、この第1の面22aと第2の面22bは異なる機能を有している。これについて具体的に説明すると、LED26つまり光源側の第1の面22aには、6つのLED26の各々のLED26に対応した位置にフレネル面領域28が形成されており、各フレネル面領域28は円形輪郭で囲まれた領域で構成されている。他方、第1の面22aとは反対側つまり検査対象側の第2の面22bには、第1の面22aの各フレネル面領域28に対応した位置に、数多くのレンズエレメント30のレンズアレイ32で構成されたフライアイレンズ領域34が形成されており、各レンズエレメント30は平面視矩形の形状を有している。
【0026】
レンズ本体22と照明基板10cとの間に前述したリフレクタ本体24が配設されている。リフレクタ本体24は、各赤外線LED26に対応した位置に開口36が形成されており、各開口36はリフレクタ本体24の厚み方向に貫通し、開口36の後端がLED26側に開放し、他方、開口36の前端がレンズ本体22側に開放している(図4)。この開口36は、赤外線LED26からレンズ本体22に向けて徐々に拡開したすり鉢状の形状を有し、開口36の周囲壁36aが反射面で構成されている。
【0027】
上記の構成により、各赤外線LED26が発した光は、リフレクタ本体24及びレンズ本体22のフレネル面領域28、フライアイレンズ領域34を通じて矩形の照明領域に成形され、そして、画像処理装置100の有効ワーキングディスタンスの近位の撮像視野領域と遠位の撮像視野領域の全域を照明する。したがって、合計6つのLED26が発した光は、その全てが有効ワーキングディスタンスの近位の撮像視野領域と遠位の撮像視野領域の全域でオーバーラップした状態で照明する。これにより撮像視野領域の全域を均一に照明することができる。すなわち、LED26が発した光は、レンズ本体22の第1の面22aを構成するフレネル面領域28によって平行光となってレンズ本体22を通過し、そして第2の面22bを構成するフライアイレンズ領域34で散乱される。より詳しくは、フライアイレンズ領域34の矩形の各レンズエレメント30から矩形の光の束が撮像視野領域に向けて照射される。そして、隣接するレンズエレメント30の矩形の光の束同士が互いに重複した状態で撮像視野領域の全域を照明し、これに加えて、複数のフライアイレンズ領域34を通過した光が撮像視野領域でオーバーラップすることから撮像視野領域での均一照明が確実なものとなる。
【0028】
上述した実施例の画像処理装置100は、照明ユニット8を動作させて撮像視野領域を照明しながら検査対象物を撮像し、そして撮像データの画像処理(輪郭サーチ、パターンサーチ、色面積検査など)を実行して、検査対象物の良否を判定し、その判定結果を出力する。
【0029】
ここに、画像処理装置100に含まれる撮像部つまりカメラモジュール4には撮像素子としてCMOSイメージセンサが採用されている。もちろん、撮像素子としてCCDイメージセンサなど他のイメージセンサを採用することも可能である。画像処理装置100に含まれる各種の基板10を図5に示す。基板10は、先に説明した電源基板10a、メイン基板10b、照明基板10cの他に、コネクタ基板10d、通信基板10e、CMOS基板10fを有する。コネクタ基板10dは商用電源との接続に用いられる。通信基板10eは通信ポートを通じて画像処理装置100の判定結果を出力するのに用いられる。電源基板10aは、撮像装置10の各部に供給する電源を生成し、例えばカメラモジュール4にメイン基板10bを介して電源を供給する。また、電源基板10aはモータドライバ40を有し、このモータドライバ40を通じてカメラとレンズのモジュール5に含まれるモータ42に駆動電源を供給し、モータ42が駆動することによってオートフォーカスが実行される。
【0030】
メイン基板10bは、照明基板10c、CMOSイメージセンサを含む撮像部のカメラの制御と、集光光学系を構成するレンズモジュール4、6のオートフォーカス制御との撮像制御を実行する。メイン基板10bはFPGA43とDSP44を有し、FPGA43は照明用LED26及び表示LED46の照明制御や画像入力制御を実行する。DSP44はメモリ48に画像データを展開しつつ画像処理を行ってエッジ検出、パターンサーチ、画像判定等を実行する。なお、本実施例では、メイン基板10bにFPGA43とDSP44の両方を設けているが、いずれか一方のみを設けても構わない。すなわち、例えばDSP44が照明制御や画像入力制御などを担うようにしてもよい。
【0031】
図6は画像処理装置100の模式図である。照明用LED26を実装した照明基板10cと、カメラモジュール4のCMOS基板10fとの間にレンズモジュール6が介在し、照明基板10cとCMOS基板10fとは離間して配置され、また、照明用LED26を搭載した画像処理装置100は共通のケース16に照明基板10cとCMOS基板10fとが互いに離間した状態で収容されている。画像処理装置100はCMOS基板10fのCMOSイメージセンサの温度を直接的又は間接的に検知するCMOS用の温度センサ(撮像素子温度センサ)50を具備している。この温度センサ50は、CMOS基板10fに実装してもよいし、CMOS基板10fに隣接して配置してもよいし或いはケース16のCMOS基板10fの近傍部分に設置してもよい。CMOS基板10f上に実装することで、CMOSイメージセンサの温度(或いは温度変化)をより正確に検出することが可能になる。
【0032】
図7は照明用LED26の駆動に関する回路構成例を示す図である。図7を参照して、照明用LED26は、制御手段を構成するFPGA43から出力されるアナログ調光用PWM信号又はアナログ電圧に基づいて制御される。メイン基板10bに実装されたFPGA43の出力線は第1の出力線52と第2の出力線54とに分岐され、第1、第2の出力線52、54は選択的に照明基板10cに接続される。照明基板10cは、上記第1の出力線52に接続可能な第1の入力端子56と、上記第2の出力線54に接続可能な第2の入力端子58とを有する。照明基板10cは、分圧回路60と増幅回路62とLEDドライバ回路64とを有し、このLEDドライバ回路64に各LED26が直列に接続されている。
【0033】
分圧回路60は、LEDドライバ回路64の調整電圧範囲に合致するように第1抵抗R1と第2抵抗R2とで分圧を行う。増幅回路62は、LED温度特性補償用のサーミスタ66を含み、このサーミスタ66が検知した温度が高くなるほど増幅回路62の増幅率が増大して赤外線LED26に大きな電流が流れる。これにより温度が高くなると暗くなるLED一般の温度特性を補償することができる。
【0034】
実施例の画像処理装置100にあってはCMOS基板10fに実装されたCMOSイメージセンサの温度特性を補償するためのCMOS温度補償回路70が追加されている。CMOS温度補償回路70は上述した撮像素子温度センサ50を含み、この温度センサ50はNTCサーミスタで構成され、NTCサーミスタは温度が高くなると抵抗値が下がる特性を有している。CMOS温度補償回路70は、メイン基板42の第2の出力線54に接続された第3抵抗R3と、接地した温度センサ(NTCサーミスタ)50と第3抵抗R3とに接続された第4抵抗R4とを有する。
【0035】
図8は、撮像素子温度センサ(NTCサーミスタ)50が検知する温度との関係で、照明用LED26を駆動する回路の動作を説明するためのフロー図である。図7、図8を参照して、温度センサ50のNTCサーミスタは温度が上がると抵抗値が下がる特性を有していることから、CMOS基板10fの温度やCMOSイメージセンサの温度に影響を及ぼす雰囲気温度が変化すると(図8のS1)、このNTCサーミスタ50及び第4抵抗R4と第3抵抗R3との分圧比が変化する(図8のS2)。この分圧比が変化すると、メイン基板10bから照明基板10cに入力されるPWM制御のON信号の電圧、つまり照明基板10cの第2入力端子58に供給される電圧値が変化する(図8のS3)。具体的には、CMOS基板10fの温度やCMOSイメージセンサの温度に影響を及ぼす雰囲気温度が高くなるほど、照明基板10cの第2入力端子58に供給される電圧値が低くなり、その結果、LEDドライバ回路64に入力される電圧が低下して照明用LED26を流れる電流が小さくなる(図8のS4)。したがってCMOS基板10fの温度やCMOSイメージセンサの温度に影響を及ぼす雰囲気温度の上昇をNTCサーミスタ50が検知すると照明用LED26が発する照明光の光量が低下する(図8のS5)。なお、本実施例ではNTCサーミスタ50を用いたが、その他、温度センサとして、半導体温度センサ、白金薄膜温度センサなどを用いることもできる。
【0036】
実施例の画像処理装置100によれば、CMOS温度補償回路70を備えることで、CMOSイメージセンサの温度の直接又は間接的な変化に追従して自動的にLED26の照明光の光量を補正することができる。そして、この補正によってCMOSイメージセンサの温度特性つまり温度が高くなるとCMOSイメージセンサの感度が高くなるという特性をLED26が発する光の量を少なくすることで補償することができる。つまり、温度センサ50によって、CMOSイメージセンサの温度(或いは雰囲気温度)上昇が検出されると、LED26の発光光量を減らして、CMOSイメージセンサの温度特性を補償するようにしている。もちろん、変形例として、プログラムによって温度センサ50が検知した温度に対応してFPGA43のPWM制御のON信号の電圧を制御するようにしてもよい。また、ON信号の電圧を制御するのではなく、ON信号のデューティ比を制御するようにしてもよい。さらに、本実施例では、温度上昇に伴ってLED26の発光光量を減らすようにしているが、例えば回路を組み替える等して、温度上昇に伴ってLED26の発光光量を増やすようにしてもよい。
【0037】
図7に戻って、照明基板10cは第1の入力端子56、第2の入力端子58を備えているのは上述した通りであり、赤外線LED26の発光光量を変化させることによるCMOS温度特性補償を、第2入力端子58を使って行う回路構成(第5抵抗72を加入)が図7に図示してある。このCMOS温度特性補償を行わないのであれば、第2入力端子58に代えて第1入力端子56を結線して(第6抵抗74を加入し且つ第5抵抗72を省く)、この第1入力端子56を通じてメイン基板10bからPWM制御信号を受け取るようにすることができる。したがって、図7の照明基板10cは、その基本的な回路構成を共通化して、CMOS温度特性補償を行なわない第1のタイプと、CMOS温度特性補償を行う第2のタイプとに変化させることができる。もちろん、第5、第6抵抗72、74を共に加入し、そして切り替えスイッチ(図示せず)を設けて、この切り替えスイッチによって、CMOS温度特性補償を行なう場合と、CMOS温度特性補償を行わない場合とに対応するようにしてもよい。
【0038】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明のこれに限定されない。紫外線領域ではCMOSイメージセンサの感度が温度上昇に伴って低下する可能性がある(図9)。これに対応するのであれば、例えばCMOS温度センサ50としてPTCサーミスタを採用して上記の実施例とは逆の制御つまりCMOSイメージセンサの温度上昇に伴ってLED26が発する照明の光量を増大させる制御を実行するようにすればよい。
【符号の説明】
【0039】
100 実施例の画像処理装置
4 カメラモジュール
6 レンズモジュール
8 照明ユニット
10 基板
10a 電源基板
10b メイン基板
10c 照明基板
26 照明用LED(赤外線LED)
50 CMOS(撮像素子)用の温度センサ(NTCサーミスタ)
56 照明基板の第1の入力端子
58 照明基板の第2の入力端子
60 分圧回路
62 増幅回路
64 LEDドライバ回路
66 LED温度特性補償用サーミスタ
70 CMOS温度補償回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通のケースに照明用光源と撮像部とが収容され、該撮像部により取得された画像データを用いて画像処理を実行する画像処理部を含む画像処理装置であって、
前記撮像部に含まれる撮像素子の温度を検出する撮像素子温度センサと、
該撮像素子温度センサが検出した温度に応じて前記照明用光源の発光光量を変化させて、前記撮像素子の温度特性を補償する発光光量制御手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記発光光量制御手段は、前記撮像素子温度センサが検出した温度に追従して前記照明用光源の発光光量を増減させる、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記撮像素子と前記照明用光源とは、前記撮像素子の光軸方向に沿って離間して配置され、前記撮像素子と前記照明用光源との間には、前記撮像素子に光を集光するための集光光学系が配置されている、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記照明用光源は、前記撮像素子の光軸を取り囲むように配置され且つ前記撮像部により撮像される撮像領域に向けて光を照射する複数の投光素子で構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記集光光学系は、前記撮像部のフォーカス位置を調整するためのフォーカス調整機能を有する、請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記照明用光源が赤外線LED又は紫外線LEDで構成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像素子温度センサ、前記赤外線LED又は紫外線LEDに電源を供給する回路に組み込まれたサーミスタで構成され、該サーミスタが接地されて、該サーミスタが検知した温度に応じて、前記赤外線LED又は前記紫外線LEDに供給する電源を変化させる、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記照明用光源が赤外線LEDで構成され、
前記サーミスタがNTCサーミスタで構成され、
前記NTCサーミスタが検知した温度が高くなるほど、前記赤外線LEDに供給する電源を低下させる、請求項7に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−109508(P2013−109508A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253040(P2011−253040)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】