説明

画像形成体、個人認証媒体およびその製造方法

【課題】本発明は、偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正がなされた場合であっても被疑不正品を観察等すると容易に発見できるような視認性の高い発見容易性能を備える画像形成体、個人認証媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】透明基材51上の一方の面に、個別情報59を画像として表示してなり、かつ、前記個別情報59がOVD層を有する微小面積のドット状セル49を複数設け、該ドット状セル49を構成要素とした画像からなり、かつ、前記個別情報59が、前記OVD層の少なくとも一部を、外部刺激によって任意に輝度を制御することにより表現されるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポートや査証などの冊子または、カード等の被転写基材を用いた個人認証媒体上に個人特定の要である顔画像や指紋を印刷・印字・描画する画像形成体、個人認証媒体に係り、特に、正当な所有者の顔や指紋の画像といった個人識別情報を、回折格子または回折格子状に凹凸を設けたセルを組み合わせることにより、偽造および改竄を困難にし、かつ個人認証を実施する審査官が識別しやすくしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
パスポートや査証用ステッカー、あるいはカード類といった個人認証に係わる情報記録媒体においては、従来、色々なセキュリティ手法が提案されてきている。例えば、パスポートにおいては、現在使用されているパスポートの場合、いわゆるICAO(International Civil Aviation Organizationの略)の規定によれば、目視および光学文字識別方式の両方で読めなければならないとされている。このICAOの規定は、パスポートに使用する材質やセキュリティに関し、各国の自由裁量であり、セキュリティ機能として一般に使われているのは、有機溶剤等で反応する化学反応体、虹彩色のパールチップ、ファイバー(絹もしくは合成繊維、可視もしくは不可視、蛍光もしくは非蛍光)、ホログラムやマイクロ文字の印刷されたフィルムのセキュリティ糸、透かし模様等を盛り込んだ用紙や退色性インキ、蛍光インキ、感熱インキ、光学的に変化するインキ(いわゆるOVIなど)等の各種インキ、細線印刷、レインボー印刷、凹版印刷、ピクセル印刷等の様々な技法を組み込んでセキュリティと美観の同時向上を図っている。
【0003】
また、パスポートの目視確認情報としての顔写真は、従来写真を貼り合わせたものであったが、近年では写真情報をデジタル化し、これをパスポートに再現する傾向にある。パスポートへの画像再現方法としては、昇華性(熱移行性)染料や、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプを用いた転写リボンによる感熱転写記録法、あるいは電子写真法などが検討されている。
【0004】
パスポートへの画像再現方法としては、上記方式以外に、インクジェットプリンターによる記録法(例えば、特許文献1参照)や、COもしくはYAGレーザーおよび感熱発色剤を使用したレーザー印字記録法(例えば、特許文献2参照)、さらには基材中に存在する炭素を利用して基材の深さ方向にも印字記録するレーザーエングレービング印字記録法(例えば、特許文献3参照)などがある。
【0005】
査証用ステッカーにおいても、ステッカー自体を剥がそうとしても綺麗に剥がすことが困難な様に切り込みを一定パターン状に設けたものを使用するなどの工夫がされているものもある。
【0006】
さらに、この種の個人認識データの入った画像表示体としては、画像データに基づいて形成された画像パターンをポリ塩化ビニル等のカード基材上に備えたもの、あるいは上記画像パターンに加えてホログラムや回折格子あるいは多層干渉を用いた光学的薄膜(光学設計によりカラーシフト等の効果を得られる)を用いることによる画像に代表されるいわゆるOVD(Optical Variable Deviceの略)画像を具備するもの等が知られている。
【0007】
これらホログラムや回折格子のOVD技術は、高度な製造技術を要し、複製の難しいことから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、IDカード、プリペイドカード等のカード類に利用されてきた。さらには、その装飾性の高さから、包装材、書籍、パンフレット、POP等への利用も少なくない。これらOVDを物品に貼着するための手段として従来から転写箔を用いて転写形成するといった方法が採られている。この種の転写は、支持体上に剥離層、ホログラムや回折格子の画像パターンが形成されているレリーフ層と、公知の薄膜形成手段により形成される反射層、接着層を順次積層してなる構成のものが知られている。これら、転写箔に刻まれたOVDパターン(ホログラムおよび回折格子パターン)は、微少な凹凸パターンをニッケル性のプレス版に複製し、レリーフ層に加熱押圧するという周知の方法により大量複製が行われている。
【0008】
また、上記反射層は、屈折率の異なる透明な物質を真空蒸着法等の公知の薄膜形成手段により形成することで(以下透明薄膜層と呼ぶ)、透明ホログラムや透明回折格子形成体となることは、公知の技術である。この場合、レリーフ層と透明薄膜層との間の屈折率差が大きい程、反射率も大きくなることは、光学的見地からも明らかである。但し、ここで一般的には、(レリーフ層の屈折率)<(透明薄膜層の屈折率)の関係がある。
【0009】
この様にして得られたホログラムまたは回折格子構造物は、偽造防止手段としてクレジットカード、キャッシュカード、会員証カード、社員証カード、プリペイドカード、運転免許証等の各種カード類、商品券、ギフト券、株券等の各種紙券類や申込用紙、領収書、複写伝票等の各種帳票類や、パスポート、通帳、年金手帳等の各種冊子類の他、本や手帳などの表紙や、パネル等のディスプレイ用途等の一部または全体に貼着して使用されている。
【0010】
尚、本発明で述べている全体とは、概念的な意味であり、柄、パターン等を問わず、スポット状、ストライプ状、格子上に貼着されたものや、定型、不定形の網点状のドットで貼着されたものも含まれる。
【0011】
このようなOVD転写箔は偽造防止効果としては、充分な機能を果たすが、パスポートの様に顔写真などの画像形成後に該画像上にOVD転写層を熱的に転写して形成しているため、偽造技術の発達した現在では何らかの手法により転写層をいったん取り去り、画像データ等の改竄を行った後に改めてOVD転写箔を載せるといったことが行われる可能性もでてきた。
【0012】
また、顔写真などの画像情報を形成する手段としての昇華転写方式、熱溶融性の転写リボン方式あるいは電子写真方式などのプリンタは、昨今では一般に広く普及している状況を考慮すると、画像形成部を取り除いた後の領域に新たに画像を形成することは、必ずしも困難とは、言いきれなくなりつつある。
【0013】
上記のような問題を解決すべく、顔写真の他に個人を特定する情報を複数個入れる方法が考えられている。顔写真の中に電子透かし情報を入れ、その情報を同一媒体中のICチップに記憶して、電子透かし情報とICチップの情報を照合することで認証する方法がある(例えば、特許文献4参照)。また、顔写真情報の特徴点を数値化して、その値を2次元コード化し、同一媒体中に印字する。2次元コードのデータと顔写真の特徴点を照合することで認証する方法がある(例えば、特許文献5参照)。
【0014】
しかしながら、上記の方式では、顔写真やICチップや2次元コードを読み取るための専用のデコーダーが必要であり、読み取り装置およびデコーダーを所有している人以外認証出来ないという問題がある。
【0015】
他の検証方法として、目視情報による認証が可能な顔写真を複数個入れる方法が考えられる。前記方式で設けた顔写真の他に蛍光材料を用いて同じ顔写真を形成する方法がある(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8参照)。また、パール顔料を溶融型熱転写インクリボン化して顔写真を形成する方法がある(例えば、特許文献9参照)。
【0016】
しかしながら、上記蛍光材料を用いる方法では、紫外線ランプ(ブラックライト)を用いる必要があるため、認証できる場面が限られている。一方、パール顔料による顔写真は、目視による確認は可能であるが、パール顔料の粒子が大きいため、精細な画像の形成が困難なことより、あくまで補助的な認証にしかならないという問題がある。
【0017】
また、個人認証媒体の偽造防止技術として、顔写真等の個人情報をオンデマンドでホログラム化する方法も考えられている。例えば、ホログラムリボンを用いた熱転写方式(例えば、特許文献10参照)が知られているが、この方法であると、表現できるオンデマンドホログラムの解像度に限界があり、解像度を上げるほど画質が汚くなってしまい、目視での真偽判定が困難になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2002−226740号公報
【特許文献2】特開昭49−131142号公報
【特許文献3】特開2006−123174号公報
【特許文献4】特開2001−126046号公報
【特許文献5】特開2004−70532号公報
【特許文献6】特開平7−125403号公報
【特許文献7】特開2000−141863号公報
【特許文献8】特開2002−226740号公報
【特許文献9】特開2003−170685号公報
【特許文献10】特開平10−049647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、前記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能を持ち、また表示された個人情報が高解像度ではっきり視認でき、万一それらの不正がなされた場合であっても被疑不正品を観察すると容易に発見できる高セキュリティ性を有する画像形成体、個人認証媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に係る発明は、偽造防止、及び個人認証の用途で用いられる画像形成体において、透明基材上の少なくとも一方の面に、該個別認証媒体を保持する正当な所有者、もしくは使用者、発行者、作成者を識別できる顔画像、指紋、サイン等の少なくとも一つ以上を有する個別情報を画像として表示されてなり、かつ、前記個別情報が、前記透明基材上に接着層、OVD層、透明樹脂層の順に積層した微小面積のドット状セルを複数設けることにより、該ドット状セルを構成要素として画像を表示したものであり、かつ、前記個別情報が、前記OVD層の少なくとも一部を、外部刺激によって任意に輝度を制御することにより表現されることを特徴とする画像形成体である。
【0021】
請求項2に係る発明は、前記透明OVD層が、ホログラムもしくは回折格子状の微細凹凸を形成する透明樹脂層と、該微細凹凸面を被覆するよう設けられた透明被膜層を有することを特徴とする画像形成体である。
【0022】
請求項3に係る発明は、前記透明OVD層が、ホログラムもしくは回折格子状の微細凹凸を形成する透明樹脂層と、該微細凹凸面を被覆するよう設けられた金属被膜層を有することを特徴とする画像形成体である。
【0023】
請求項4に係る発明は、前記OVD層の少なくとも一部を、前記外部刺激として熱圧をかけることによって白化させ、該熱圧の強さによって輝度低下を制御することを特徴とする画像形成体である。
【0024】
請求項5に係る発明は、前記OVD層の少なくとも一部を、前記外部刺激として放射線を照射することによって変色させ、該放射線の強度によって輝度低下を制御することを特徴とする画像形成体である。
【0025】
請求項6に係る発明は、前記個別情報を表示する側の面上に、前記個別情報と同一であってカラーインキにより有色表示(白および黒を含む)されてなる画像、及び文字情報を表示してなる個別情報印刷層を設けてなることを特徴とする画像形成体である。
【0026】
請求項7に係る発明は、前記個別情報印刷層に表示される画像の面積が、前記個別情報の面積に対して0.1〜30倍であることを特徴とする画像形成体である。
【0027】
請求項8に係る発明は、ホログラムもしくは回折格子状の微細凹凸を形成して前記個別情報と関係の無い固定デザインを表示する固定OVD層を、一部に設けたことを特徴とする画像形成体である。
【0028】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8に記載の画像形成体を、被転写基材に転写したことを特徴とした個人認証媒体である。
【0029】
請求項10に係る発明は、前記被転写基材の面上に、細紋パターンが印刷されてなることを特徴とする個人認証媒体である。
【0030】
請求項11に係る発明は、請求項9および10に記載の個人認証媒体を製造する製造方法であって、サーマルヘッド熱転写によって、前記微小面積のドット状セルを透明な中間箔上に設け、該ドット状セルを少なくとも部分的に重ねることで、該ドット状セルを構成要素とした画像として前記画像形成体を形成した後、これを前記被転写基材の一方の面上に熱転写して形成することを特徴とする個人認証媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0031】
請求項1の発明によれば、ホログラムで形成された個別情報を有する画像形成体が提供される。偽造により、ホログラム画像を形成することは困難であるためセキュリティ性も向上する。また、ホログラムの輝度を制御することによって、個別情報の表現力が格段に上がり、視認性や解像度も高めることができ、個人認証媒体の真偽判定が目視で行い易くなる。
【0032】
請求項2の発明によれば、個別情報を透明ホログラムで形成できるため、その他の文字情報等が隠蔽されること無く表現可能となる。
【0033】
請求項3の発明によれば、個別情報のホログラムの輝度が向上し、視認性が格段に上がる。
【0034】
請求項4、5の発明によれば、任意のホログラム部分を狙って輝度制御できるため、視認性や解像度も高めることができ、個人認証媒体の真偽判定が目視で行い易くなる。
【0035】
請求項6の発明によれば、本発明の物品を所有している人が真の所有者かどうか識別を行う審査官に対して、個別情報印刷層により表示された画像と、個別情報ホログラムによる画像が同一人物の個人認証情報から選択されるため、2つの画像を目視にて見比べることで容易に本人確認が出来るため、被疑不正品を容易に発見できる発見容易性能を備えることができる。
【0036】
請求項7の発明によれば、個別情報印刷層の画像の面積は、個別情報ホログラムの面積に対して0.1〜30倍の面積であることによって、用途に応じてそれぞれの画像の面積を変更することができるので、二つの個別情報を容易に比較して認証することができた。また、構成もさらに複雑にできるため、偽造防止効果が上がり、再現、改竄をさらに困難にすることが可能になった。一方、個別情報印刷層の画像の面積が、個別情報ホログラムの面積に対して0.1倍よりも小さいと二つの個別情報を比較して認証することが困難となり、また30倍よりも大きくなると二つの個別情報を比較して認証することが困難となった。
【0037】
請求項8の発明によれば、回折格子等により、個別情報とは関係の無い固定柄OVD層を設けることにより、よりセキュリティ性を高めることができる。
【0038】
請求項9の発明によれば、ホログラムで形成された個別情報を有し、この個別情報であるホログラム画像は、通常より高い解像度での表現が可能となるため、より視認性も向上され、真偽判定が目視で容易に行ことが可能となる。
【0039】
請求項10の発明によれば、基材の被転写面にあらかじめ偽造防止用の細紋パターンを印刷しておくことで、より偽造が困難性の向上が図れる。これは、偽造を行おうとする者が、例えば中間転写方式ではなく、基材側に直接ホログラム図柄を転写しようとした場合に、プライマーなどの易接着処理を行うことができない。例えば、基材側に直接ホログラム図柄を転写すると、基材の凹凸の影響が顕著に現れるため、転写前にこの凹凸をなくすための処理が必要となるが、この処理を行うことで、細紋パターンの外観は正規品と異なったものとなり、偽造品であることが容易に判別することが可能となる。
【0040】
請求項11の製造方法によれば、中間箔に個別情報ホログラムを転写して画像形成体を形成し、後に被転写基材へ転写させる。それにより、中間箔と支持体の間に個別情報ホログラムを設けることができ、より偽造、改竄防止効果の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成体の要部を説明するために示した断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る画像形成体の要部を説明するために示した断面図である。
【図3】図1及び図2に形成されるドット状セルの詳細を説明するために示した断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る個人認証媒体の要部を説明するために示した断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る個人認証媒体の要部を説明するために示した断面図である。
【図6】本発明に係る個人認証媒体の実施例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明に係る画像形成体は、ホログラムリボンによって、透明の中間箔上に個別情報の画像が熱転写されるものである。そして、本発明による個人認証媒体は、被転写基材上に前記画像形成体が熱転写されて形成されるものであり、必要に応じて他の媒体およびプロセスを有しても良いものである。
【0043】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して、詳細に説明する。
【0044】
図1、図2は、本発明の実施形態に係る画像形成体の要部をそれぞれ断面して示し、図4、図5は、本発明の実施形態に係る個人認証媒体の要部をそれぞれ断面して示す。
【0045】
即ち、図1に示す実施形態に係る画像形成体11は、基材50の一方の面に、剥離層51、凹凸層52、光反射被膜層53、受像接着層54が順に積層されてフィルムが形成される。そして、このフィルムの受像接着層54の面上には、詳細を後述するホログラムリボンをサーマルヘッド熱転写等によって転写して微小面積のドット状セル49を複数並べて設け、少なくともドットを重ねることによって画像が形成される。また、前記受像接着層54の面上には、例えば所有者の文字情報や顔写真などの個別情報59を印刷して設ける。
【0046】
図2に示す他の実施形態に係る画像形成体12は、図1に示す一実施形態に係る画像形成体11と異なり、固定OVD層である凹凸層52を除いて構成される。尚、図1、図2、図4、図5中において、符号10は、観察者方向を示す。
【0047】
前記ホログラムリボンによって設けられた微小面積のドット状セル49は、図3に示すように透明樹脂層55、凹凸層56、透明被膜層57、接着層58が受像接着層54上に順に積層されて構成される。
【0048】
前記基材50の材料としては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)等のプラスチックシートが挙げられる。その厚みも形成後の用途次第であるが、10〜100μm程度が好ましい。
【0049】
前記剥離層51の材料としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂にシリコーンやフッ素系の添加剤を加えたものが好ましく、もしくはフッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂等、基材50から剥離しやすいものを選出しても良い。
【0050】
前記凹凸層52としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン等の光硬化性樹脂、またはアクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂、またはプロプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いて、所望の凹凸を賦型することにより形成する。これらの樹脂の硬化物は全て光透過性であり、屈折率は一般的には1.5程度である。
【0051】
前記光反射被膜層53の材料としては、透明であり、凹凸層52と屈折率が異なる誘電体層、誘電体多層膜、もしくは高屈折率材料を使用する。例えば、屈折率が2.0以上であるZnS、TiO2、PbTiO2、ZrO、ZnTe、PbCrO4等が好ましい。これは、凹凸層52との屈折率差が小さいと、凹凸層52による回折光の視覚効果が弱まってしまうためである。具体的には、屈折率差は少なくとも0.5以上あると良い。また、膜厚は50nm〜100nmが好ましい。
【0052】
また、部分的にアルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケル等の光反射性の金属蒸着膜を設けることにより、デザイン性を重視しても良い。しかし、その場合、個人認証媒体に書き込まれる名前、生年月日等の文字情報を隠蔽しないことが条件となる。凹凸層52の凹凸面に光反射被膜層53が追従して被覆することにより、固定OVD層となる。
【0053】
前記受像接着層54としては、プロプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いる。上記した透明被膜材料や、その他樹脂との密着力、加刷性のあるものであれば、特に限定はしない。膜厚も特に限定は無いが、5.0〜10.0μm程度であると好ましい。これらの樹脂は、カラーリボンを用いて顔写真や、名前、生年月日等の文字情報等、いわゆる個人認証に係わる情報を書き込むためのものであり、同時に被転写基材を構成する被写体の支持体上へ熱転写した際に密着する接着剤としての機能を兼ね備えていると良い。
【0054】
図4に示す本発明の一実施形態に係る個人認証媒体13は、前記画像形成体11を転写媒体として用い、被転写基材60へ熱転写を行い、基材50のみを剥離して形成される。また、図5に示す他の実施形態に係る個人認証媒体14は、前記画像形成体12を転写媒体として用いて、その被転写基材60へ熱転写を行い、基材50のみを剥離して形成される。
【0055】
次に、本発明に用いられるホログラムリボンの構成について説明する。本発明に用いられるホログラムリボンの構成は、基材、剥離層51(透明樹脂層55)、凹凸層56、透明被膜層57、接着層58の順に積層したフィルムとなっている(図3参照)。ホログラムリボンは、熱転写により透明性の中間箔の受像接着層54上に接着した後、基材から剥離する機能を有する。
【0056】
剥離層は、図3に示す透明樹脂層55に当たるが、元々ホログラムリボンの剥離層として用いられるため、基本的には剥離層51に近い性能を持った材料を用いる。また、透明樹脂層55は、個人認証媒体形成のため、受像接着層54と共に、被転写基材60上に転写されるので、被転写基材60との密着性も兼ね備えていると良い。密着性が無い場合、別途接着リボン等を一層介して被転写基材60と接着させても良い。
【0057】
具体的な材料としては、一般的に他の材料と密着性の出るアクリル系樹脂が好ましい。
【0058】
凹凸層56の材料としては、凹凸層52と基本的には同様である。
【0059】
前記透明被膜層57の材料としては、上記光反射被膜層53で挙げた透明の高屈折率材料を用いる。膜厚も同様である。また、本形態では、凹凸層56の凹凸面に透明被膜層57が追従して被覆することにより、透明OVD層としているが、透明被膜層57の代わりに、アルミニウム、ニッケル、銀といった光反射性の金属被膜層を設けても良い。
【0060】
前記接着層58は、受像接着層54との密着性が良くなる材料が好ましい。例えば、エステル系樹脂とエポキシ系樹脂との混合材料等の汎用的な接着剤などが好ましい。
【0061】
また、ホログラムリボンが転写された画像形成体は、その後さらに被転写基材60上へ熱転写されるため、ホログラムに求められる機能としては、画像形成体11(12)上への転写時の熱だけでなく基材50上への転写時の熱にも十分耐えられる耐熱性が挙げられる。また、ホログラムリボンにより滑らかで高精細な画像を表現するためには、非常に微小なドットで熱転写されなければならないため、基材50から剥離する際には良好な箔キレ性が要求される。それぞれの層に用いる材料は、これらの性能を満足し、かつ上記した種類のものであれば、更に限定することは無い。また、剥離層51(透明樹脂層55)、凹凸層56、接着層58のそれぞれの膜厚は、0.5〜1.0μm程度が好ましい。0.5μm以下であると、それぞれの層としての機能を果たしづらくなり、1.0μm以上であると、箔切れ性が悪くなる。
【0062】
ここで、ホログラムリボンの熱転写によって顔画像を形成する方法を簡単に記す。例えば、パソコンのモニタ上で表示されるような、一般的な三原色RGBによるフルカラー画像のデータを、コンピューターのプログラム上にインプットし、画像データをRGBに分解する。そしてそれぞれのデータをサーマルヘッド等の熱転写装置のプログラムにアウトプットし、予め用意したRGB三種類のホログラムリボンを用いてそれぞれの色に対応したデータ通りに中間箔の受像接着層54上へ転写していくと、RGB色のホログラム回折光により、写真がそのまま発光したかのようなフルカラーの顔画像ホログラムが出来上がる。
【0063】
なお、RGBのホログラムは、回折格子パターンをそれぞれ特定の角度にRGBそれぞれの回折光が射出されるように設計したものを用いている。
【0064】
そして、本発明におけるホログラム転写媒体の転写時におけるドットサイズは、特に限定されるものではないが、個人の顔画像などを形成する場合は、ドットの一辺の長さが0.084mm(300dpi)程度であると好ましい。ドットサイズがこれよりも大きくなると、顔画像として荒くなり、実際の顔写真と比較して真偽判定が困難になる恐れがある。また、ドットサイズがこれよりも小さくなると、ホログラムリボンの箔切れ性や転写時のバラつきが大きくなり、滑らかに表現することが困難になる。
【0065】
また、転写により中間箔上に形成するホログラムリボンドットセルを一部重ねて表現すると、本来ドットの一辺の長さが0.084mm角の300dpiでの解像度になるところを、擬似的に0.084mm×0.042mmサイズや0.042mm×0.042mmサイズ、つまり600dpi相当の高解像度の画像を得ることができる。
【0066】
さらに、本発明では、更に部分的に外部刺激を与えることによってホログラムの輝度を制御し、諧調を表現することで、より滑らかな画像を得ることが出来る。例えば、熱圧をかけることによってホログラムの輝度を低下させる方法などが挙げられる。輝度の低下度合いは、熱圧の強度を変化させることで制御が可能である。
【0067】
前記画像形成体11(12)は、基材50へ転写された後は個人認証媒体13(14)の最表面に位置するため、個別情報59がパターニングされたホログラム画像や、印刷された細紋パターンの視認性を上げるために透明であることが望ましいが、本形態では、セキュリティ性を上げるために、図1のような透明の固定柄デザインのホログラム層として固定OVD層を設けた場合を中心に挙げている。また、視認可能な範囲で着色することも可能である。さらに、中間箔の一部に網点、万線、および図形のいずれかまたは組み合わせにより表現される不透明反射層を設けることも可能であるが、その下に表示される個別情報を有するホログラム図柄や印刷された細紋パターンは隠蔽されることになる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施形態に基づく実施例として図1に示す画像形成体11から図4に示す個人認証媒体13を作製した場合について具体的に説明する。
【0069】
まず、画像形成体11を作成した。基材50として厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、剥離層51、凹凸層52の順にグラビアコーターで印刷を行った。オーブンでの乾燥後、剥離層51の膜厚は0.6μm、ホログラム形成層の膜厚は0.7μmであった。
【0070】
このフィルムを、固定図柄ホログラム版を用いてロールエンボス装置にて熱プレスを行い、凹凸層に固定図柄ホログラムを成形した。この固定図柄ホログラム形成層上にZnS蒸着を行い、透明樹脂層55を設けた。ZnS蒸着の膜厚は80nmであった。また、このフィルムの蒸着層面に受像接着層54の印刷を行った。上記と同様にグラビアコーターを用いており、膜厚は0.6μmであった。
【0071】
上記のようにして中間箔を得た。
【0072】
次に、ホログラムリボンを作成した。基材50として厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、剥離層51、凹凸層52の順にグラビアコーターで印刷を行った。オーブンでの乾燥後、剥離層51の膜厚は0.6μm、凹凸層52の膜厚は0.7μmであった。
【0073】
このフィルムを、空間周波数1140mm(Rの回折光が出る設計)、空間周波数1310mm(Gの回折光が出る設計)、空間周波数1540mm(Bの回折光が出る設計)、の三種類からなる回折格子ホログラムベタ柄が50mm×50mmの正方形になって順番に並んでいる版を用いてロールエンボス装置にて熱プレスを行い、ベタ柄ホログラムを成形した。
【0074】
ホログラム形成層上にZnS蒸着を行い、透明樹脂層55を設けた。ZnS蒸着の膜厚は80nmであった。このフィルムに接着層58の印刷をグラビアコーターにより行った。接着層58の膜厚は0.6μmであった。
【0075】
上記フィルムを転写リボンサイズの幅にスリットして小分けし、R、G、B、R、G、Bと繰り返すようにそれぞれを繋ぎ合わせてホログラムリボンを作成した。そして、サーマルヘッドを用いて、中間箔の受像接着層54上の狙った位置にホログラムリボンを転写し、フルカラーホログラム顔画像を形成した。
【0076】
なお、予め被写体となる人物の顔写真を撮影し、三原色RGBのドット状セル49の構成でできた画像データに変換し、コンピューターのプログラム上にインプットし、そのデータをサーマルヘッド熱転写装置のプログラムにアウトプットし、ホログラムリボンのRGB部分をそれぞれの場所へドット状に転写していき、顔画像を形成した。この際の解像度は、300dpi(1ドットの一辺の長さが0.084mm)で行った。
【0077】
また、更にサーマルヘッドの熱転写機構を用いて、プログラム上にインプットされたデータの諧調を再現できるように、顔画像の形成された中間箔に熱圧をかけ、ホログラムのドット状セル49の輝度を制御し、データの諧調を表現した。
【0078】
これに対して、比較用として熱圧をかけないそのままのサンプルを用意した。
【0079】
次に、公知のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクリボンを用意し、同様に画像形成体の受像接着層54上に顔写真および文字情報等を印字し、画像形成体11とした。そして、情報印字側と被転写基材である紙面上を接着させて基材剥離することで画像形成体11を転写し、本発明の個人認証媒体13を得た(図6参照)。
【0080】
結果、本発明のサンプルにおいては、通常の顔画像よりも、熱圧をかけて諧調をつけた顔画像の方が全体的に滑らかであり、同一面上に載った顔写真との比較による真偽判定がより容易となった。
【0081】
以上のように、本実施例に係る画像形成体11および個人認証媒体13は、個別情報ホログラムの部分が非常に目視で見やすく滑らかで高解像度のものとなった。また、顔写真と個別情報ホログラムを見比べることにより、容易に真偽判定ができることも確認された。そのため、万が一偽造、改竄品が出回った際に、目視で容易に真偽判定が行える高いセキュリティ性を有することが確認された。
【0082】
本発明は、上記実施形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。
【0083】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0084】
10…観察者方向
11…画像形成体
12…画像形成体
13…個人認証媒体
14…個人認証媒体
49…ドット状セル
50…基材
51…剥離層
52…凹凸層
53…光反射被膜層
54…受像接着層
55…透明樹脂層
56…凹凸層
57…透明被膜層
58…接着層
59…個別情報
60…被転写基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偽造防止、及び個人認証の用途で用いられる画像形成体であって、
透明基材上の少なくとも一方の面に、該個別認証媒体を保持する正当な所有者、もしくは使用者、発行者、作成者を識別できる顔画像、指紋、サイン等の少なくとも一つ以上を有する個別情報を画像として表示されてなり、
かつ、前記個別情報が、前記透明基材上に接着層、OVD層、透明樹脂層の順に積層した微小面積のドット状セルを複数設けることにより、該ドット状セルを構成要素として画像を表示したものであり、
かつ、前記個別情報が、前記OVD層の少なくとも一部を、外部刺激によって任意に輝度を制御することにより表示されることを特徴とする画像形成体。
【請求項2】
前記透明OVD層が、ホログラムもしくは回折格子状の微細凹凸を形成する透明樹脂層と、該微細凹凸面を被覆するよう設けられた透明被膜層を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成体。
【請求項3】
前記透明OVD層が、ホログラムもしくは回折格子状の微細凹凸を形成する透明樹脂層と、該微細凹凸面を被覆するよう設けられた金属被膜層を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成体。
【請求項4】
前記OVD層の少なくとも一部を、前記外部刺激として熱圧をかけることによって白化させ、該熱圧の強さによって輝度低下を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成体。
【請求項5】
前記OVD層の少なくとも一部を、前記外部刺激として放射線を照射することによって変色させ、該放射線の強度によって輝度低下を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成体。
【請求項6】
前記個別情報を表示する側の面上に、前記個別情報と同一であってカラーインキにより有色表示(白および黒を含む)されてなる画像、及び文字情報を表示してなる個別情報印刷層を設けてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成体。
【請求項7】
前記個別情報印刷層に表示される画像の面積が、前記個別情報の面積に対して0.1〜30倍であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成体。
【請求項8】
ホログラムもしくは回折格子状の微細凹凸を形成して前記個別情報と関係の無い固定デザインを表示する固定OVD層を一部に設けたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の画像形成体を、被転写基材に転写したことを特徴とした個人認証媒体。
【請求項10】
前記被転写基材の面上に、細紋パターンが印刷されてなることを特徴とする請求項9に記載の個人認証媒体。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の個人認証媒体を製造する製造方法であって、
サーマルヘッド熱転写によって、前記微小面積のドット状セルを透明な中間箔上に設け、該ドット状セルを少なくとも部分的に重ねることで、該ドット状セルを構成要素とした画像として画像形成体を形成した後、これを前記被転写基材の一方の面上に熱転写して形成することを特徴とする個人認証媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91203(P2013−91203A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233740(P2011−233740)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】