説明

画像形成装置

【課題】装置全体としてローラ部材に要するコストを削減するとともに、ローラ部材の製造工程を簡略化することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】シャフトの外周に、同一配合のポリウレタンフォームよりなる弾性層を有する少なくとも2種のローラを備え、少なくとも2種のローラが、トナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラからなる群から選択される画像形成装置である。少なくとも2種のローラのうちの少なくとも1種が、熱プレス処理されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、詳しくは、トナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラのうち少なくとも2種のローラを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置における現像部には、図1に示すように、静電潜像を保持する感光体等の画像形成体10と、この画像形成体10に当接して表面に担持したトナー20を付着させることにより静電潜像を可視画像化する現像ローラ11と、この現像ローラ11にトナー20を供給するトナー供給ローラ12とが設けられている。図示する現像部においては、トナー20を、トナー収容部13から、トナー供給ローラ12および現像ローラ11を介して画像形成体10まで搬送する一連のプロセスにより、画像形成が行われる。また、図中の符号14は、画像形成体10の潜像に付着したトナーを記録媒体に転写するための転写ローラであり、転写後には、クリーニングローラ15により、画像形成体10上に残留するトナーが除去される。なお、符号16は成層ブレード、符号17は帯電ローラをそれぞれ示す。
【0003】
画像形成装置において使用されるこれらローラ部材は、一般に、金属材料等よりなるシャフトの外周に、ゴムや高分子エラストマー、高分子フォーム等よりなる弾性層を担持させた構造を有している。弾性層については、通常、各ローラ部材の機能上、必要とされる特性に応じて、材料配合が決定され、物性が調整されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、主として現像剤供給ローラの必要特性を確保するために、ローラの弾性層を圧縮するように円筒状部材に圧入し、円筒状部材の外周を加熱して、この円筒状部材からローラを取り出すことにより、発泡体からなる弾性層を有するローラを製造する方法が開示されている。また、特許文献2には、発泡体からなり、ローラの径方向に圧縮して形成されるクリーニングローラが開示されており、特許文献3には、メラミンフォームのブロックを所定角柱状に裁断し、角柱状材の断面中心部に長手方向に向かい精密孔加工による貫通孔を明け、角柱状材の貫通孔に予め準備された心材を挿入して加熱接着し素材Aとし、素材Aのメラミンフォーム角柱材の外周を所定外径に精密予備研磨し素材Bとし、素材Bを所定の円筒状金型内に圧入し、所定温度、時間加熱し、冷却後円筒状金型より抜出した素材Cの外周を、さらに精密仕上研磨しローラクリーナー製品とするローラクリーナーの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−297512号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2005−195709号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2005−241906号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、画像形成装置内に用いられる各種ローラ部材については、それぞれ要求特性が異なるために、従来、シャフトの外周に異なる材料配合からなる弾性層を形成して、各用途に用いていた。よって、ローラ種ごとにすべて異なる原料を準備する必要があり、コストも手間もかかるものとなっていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、装置全体としてローラ部材に要するコストを削減するとともに、ローラ部材の製造工程を簡略化して、生産効率を向上することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、下記構成とすることにより上記問題を解決できることを見出して、本発明を解決するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の画像形成装置は、シャフトの外周に、同一配合のポリウレタンフォームよりなる弾性層を有する少なくとも2種のローラを備え、該少なくとも2種のローラが、トナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラからなる群から選択されることを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記少なくとも2種のローラのうちの少なくとも1種が熱プレス処理されていることが好ましい。
【0011】
具体的には、前記少なくとも2種のローラがトナー供給ローラおよび転写ローラであり、該トナー供給ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が30%未満であって、かつ、該転写ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下であるものとすることができる。また、前記少なくとも2種のローラがトナー供給ローラおよびクリーニングローラであり、該トナー供給ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が30%未満であって、かつ、該クリーニングローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下であるものとすることができる。さらに、前記少なくとも2種のローラが転写ローラおよびクリーニングローラであり、該転写ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下であって、かつ、該クリーニングローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下であるものとすることができる。
【0012】
さらにまた、前記少なくとも2種のローラがトナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラであり、該トナー供給ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が30%未満であり、該転写ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下であって、かつ、該クリーニングローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下であるものとすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、装置全体としてローラ部材に要するコストを削減するとともに、ローラ部材の製造工程を簡略化して、生産効率を向上することができる画像形成装置を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の画像形成装置の一例の現像部を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の画像形成装置の一例の現像部を示す概略説明図を示す。本発明の画像形成装置は、シャフトの外周に、同一配合のポリウレタンフォームよりなる弾性層を有するローラとして、トナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラからなる群から選択される少なくとも2種を備える点に特徴を有する。
【0016】
これにより、画像形成装置に使用する少なくとも2種のローラについて同じ材料配合を適用することができるので、装置全体としてローラ部材に要する製造コストを削減するとともに、ローラ部材の製造工程を簡略化して、生産効率を向上することが可能となった。
【0017】
本発明において、同一配合のポリウレタンフォームよりなる弾性層を有する少なくとも2種のローラは、トナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラのうちから選択されるものであれば、いかなる組合せであってもよい。具体的には、トナー供給ローラおよび転写ローラの2種の組合せ、トナー供給ローラおよびクリーニングローラの2種の組合せ、転写ローラおよびクリーニングローラの2種の組合せ、並びに、トナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラの3種の組合せが挙げられる。
【0018】
本発明において、各ローラの共通の要求性能である、低硬度、低抵抗および低コスト性は、低密度であって安価な導電性ポリウレタンフォームを使用することにより達成することができる。その配合内容の詳細については、後述する。本発明においては、さらに、各ローラにおいて異なる要求性能を満足するために、ローラに対し、熱プレス処理を行うことが好ましい。熱プレス処理とは、具体的には、成形後のローラを、所定の圧縮率に対応する所定の内径を有する円筒状部材(パイプ)内に挿入し、シャフトの両端をキャップにて固定した状態で、所定の温度および時間にてオーブン内で加熱する処理をいう。この熱プレス処理における圧縮率を調整することにより、低コストを維持しつつ、ローラの表面特性を適宜調節して、ローラ種ごとに要求される性能を満足するものとすることができ、装置全体として所望の要求性能を確実に奏するものとすることができる。ここで、ローラの圧縮率(%)は、円筒状部材への挿入前のローラの弾性層の厚さをR(mm)とし、円筒状部材への挿入後のローラの圧縮された弾性層の厚さをr(mm)としたとき、下記式により定義される。
{(R−r)/R}×100 (%)
【0019】
上記熱プレス処理は、同一配合のポリウレタンフォームを用いる少なくとも2種のローラのうちの少なくとも1種について行うことが好ましく、具体的には、各ローラにつき、下記条件に従い行う。
【0020】
トナー供給ローラについては、トナーの劣化を防ぐために、低硬度であることが必要であり、トナーを安定的に帯電させるために低抵抗であることも必要である。また、現像ローラ上に均質にトナー層を形成するために、現像ローラ上の残留トナーの掻き取り性が重要であり、かつ、トナーを安定的に搬送するために、高い表面開口性を有することも必要となる。かかるトナー供給ローラについては、熱プレス処理を行わなくても上記要求性能を満足することができ、熱プレス処理を行う場合の圧縮率は、好適には30%未満、より好適には10%以下とする。圧縮率が大きすぎると、トナー搬送性が低下してしまう。
【0021】
転写ローラについては、カラープリンタにおいて後続の色ユニットで中間転写体から感光体にトナーが逆転写される、いわゆる再転写現象を防止するために、低硬度であることが必要であり、トナーの飛び散りを防ぐために、低抵抗、すなわち、低電圧で使用できることも必要である。また、ローラの表面にケバが存在すると、ケバ部分の当たりが強くなり、ケバのない部分で転写不良(白抜け)が発生するので、ケバが少なく、表面が平滑であることが重要となる。かかる転写ローラについて、熱プレス処理を行う場合の圧縮率は、好適には5%以上50%以下、より好適には10%以上30%以下とする。圧縮率が小さすぎると、所望の表面平滑性が得られないおそれがあり、大きすぎると、円筒状部材内への挿入時における負荷が高くなって作業性が低下し、さらに過剰に大きくなると、挿入時にフォームが破損するおそれが生ずる。
【0022】
クリーニングローラについては、感光体や帯電ローラ、中間転写体のキズ付きを防止するために、低硬度であることが必要であり、電気的にトナーを吸引しかつ回収するために、低抵抗であることが必要である。また、感光体や帯電ローラ、中間転写体上の残トナーや紙粉、紙の粘結剤などに対する高い掻き取り性を確保するために、表面セルを密にして、開口率を下げることが重要となる。かかるクリーニングローラについて、熱プレス処理を行う場合の圧縮率は、好適には5%以上50%以下、より好適には20%以上30%以下とする。圧縮率が小さすぎると、所望の掻き取り性が得られないおそれがあり、大きすぎると、円筒状部材内への挿入時における負荷が高くなって作業性が低下し、さらに過剰に大きくなると、挿入時にフォームが破損するおそれが生ずる。
【0023】
本発明において、熱プレス処理は、温度150〜200℃にて、10〜60分間程度で行うことができる。熱プレス処理の温度が低すぎても高すぎても、所望の要求性能が得られないおそれがある。また、熱プレス処理の時間が短すぎるか長すぎる場合も、所望の要求性能が得られないおそれがある。
【0024】
本発明の画像形成装置においては、同一配合のポリウレタンフォームよりなる弾性層を有する上記少なくとも2種のローラを備えるものであればよく、これにより本発明の所期の効果を得ることができる。本発明においては、上記ポリウレタンフォームの具体的配合や、上記少なくとも2種のローラを備える点以外の画像形成装置の具体的構成等については、特に制限されるものではなく、常法に従い適宜決定することが可能である。
【0025】
本発明において、ローラを構成するシャフトとしては、特に制限されるものではなく、例えば、硫黄快削鋼などの鋼材にニッケルや亜鉛等のめっきを施したものや、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属製の中実体からなる芯金、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフト等を用いることができる。本発明において、シャフトはローラ種ごとに異なっていてもよい。
【0026】
また、本発明において、ローラを構成するポリウレタンフォームとしては、例えば、2個以上の活性水素を有する化合物と2個以上のイソシアネート基を有する化合物を、触媒、発泡剤、整泡剤等の添加剤とともに攪拌混合して発泡・硬化させることにより製造されたものを用いることができる。
【0027】
本発明においては、具体的には例えば、ウレタンプレポリマーに、そのイソシアネート基に対して化学当量的に過剰の水量を供給する量の導電性炭素粒子の水分散液を加えて混合・発泡させて得られる導電性ポリウレタンフォームを用いることができる。この場合、ウレタンプレポリマーとして、ポリオキシエチレン連鎖含有量が全ポリオール量の30質量%以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合ポリエーテル系ポリオールを化学当量的に過剰のイソシアネート成分と反応させることにより得られたプレポリマーを用いて、混合後の発泡を、大気圧下で自由発泡した場合のフォーム体積よりも小さい内容積を有するモールド内で行う。
【0028】
上記ウレタンプレポリマーの調製に使用するポリオールは、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスルトール、ソルビトール等の多価アルコールやアミン類等、2個以上の活性水素を含有する化合物の一種または二種以上に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加して作製されるが、最終的に得られるポリオール中、エチレンオキサイドの付加により形成されるポリオキシエチレン連鎖が全ポリオール量の分子量中の30質量%以下であるポリオール単独、あるいは、ポリオキシエチレン連鎖を有するポリオールとそれを有しないポリオールとをブレンドして作製されたポリオール全量に対するポリオキシエチレン連鎖の量が30質量%以下になるよう調整したポリオールを用いる。
【0029】
上記ウレタンプレポリマーは、上記ポリオールに化学当量以上のイソシアネート成分を反応させて過剰のイソシアネート成分を含むよう調製されたものであり、ウレタンプレポリマー中のNCO基含有率が3〜30質量%であるものが望ましい。ウレタンプレポリマーのNCO基含有率が3質量%未満では、系の粘度が上昇して取扱いが困難となり、また、発生するガス量が少なくなることから発泡体の密度の制御も困難となる。一方、NCO基含有率が30質量%を超える場合、発生するガス量が多すぎて緻密なセルが得にくく、実用的ではない。
【0030】
上記ウレタンプレポリマーの調製に用いるイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、シクロヘキシル−メタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチルポリフェニルイソシアネート、粗TDI、粗MDI、変性MDI等が挙げられる。
【0031】
上記導電性炭素粒子を含む水分散液は、カーボンブラックまたはグラファイト等の導電性炭素粒子を界面活性剤等と共に水に分散したものであり、分散性や水分散液の粘度等の観点から、炭素粒子の含有量が5〜50質量%のものが好ましい。カーボンブラックの種類としては、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、カラーブラック等のいずれでもよい。
【0032】
上記導電性ポリウレタンフォームの製造に際しては、ウレタンプレポリマーと導電性炭素粒子の水分散液の他に、第3成分としてシリコン系整泡剤、アミン系、錫系の触媒に加え、必要に応じて低沸点の溶剤を補助発泡剤として用いることができるが、その種類等に関しては一般的なポリウレタン発泡体製造用のものが用いられ、特に制限はない。
【0033】
ウレタンプレポリマーと導電性炭素粒子の水分散液との混合比率としては、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対し化学当量的に過剰の水量となる量の導電性炭素の水分散液を加えるものとする。上記水分散液の比率が少ないと、最終的に得られるポリウレタンフォームに十分な導電性を付与するだけの導電性炭素を混入することが困難であり、また、発泡倍率が上昇して、緻密なセルが得られなくなる。水量の上限については特に制限されないが、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対し化学当量的に300倍以上の水量では、ウレタンプレポリマーとの相溶性の面から、均一混合が難しくなり好ましくない。
【0034】
上記製法において使用するモールドは密閉型のものが好ましく、モールド内容積は、少なくとも大気圧下での自由発泡で得られるフォーム体積よりも小さいものとする。このようなモールドを使用すれば、成形時にはモールド内は必然的に大気圧より高圧となるので、大気圧下の自由発泡ではセル荒れやクラック等が発生してしまうところ、モールド内で加圧成形されることによりセルが安定化するものと推測される。
【0035】
大気圧下での自由発泡体積に対するモールド内容積の比率については、少なくとも1より小さく、好ましくは0.5〜0.9の範囲とする。この比率が0.5以下では発泡時にモールドにかかる圧力が高くなるので型の設計が難しくなることと、製品のセルが独立気泡になってモールドの圧力を抜くのに時間がかかる等、生産性に難が生ずる。一方、この比率が0.9以上では、セルが粗になる傾向がある。
【0036】
本発明に係る発泡体としては、上記モールド内成形により得られる導電性ポリウレタンフォームの他、特許第3480028号公報に開示された手法で製造された、800〜3600の平均分子量差を有する2種類の単一ジオールを含む単一ジオールの混合物をポリオール成分に対して総量で50質量%以上含むポリエーテルポリオール、イソシアネート、水、触媒及び発泡剤を混合し、発泡させ、放置することにより製造されたポリウレタンフォームを用いることもできる。ここで、単一のジオールとは、1種のジオールまたは平均分子量の差が400以内の2種以上のジオール群を総称する意味に用いられる。また、平均分子量差とは、対象となるジオールが各々有する平均分子量の差分を表し、組み合わせが多種類ある場合には、特に、最大の差分を表す意味に用いられる。
【0037】
上記ポリウレタンフォームを製造する際に用いるポリエーテルポリオールは、(1)例えば、ジエチレングリコールにプロピレンオキサイドのみを付加させたタイプのポリエーテルポリオール、(2)例えば、ジエチレングリコールにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドをブロックまたはランダムに付加させたタイプのポリエーテルポリオール、(3)上記(1)または(2)に、例えば、アクリルニトリルやスチレンをグラフトしたタイプのポリエーテルポリオール等を含み、特に制限されないが、より効果を発揮するためには、好ましくは(1)タイプのポリエーテルポリオールを用いる。
【0038】
上記ポリエーテルポリオールを製造するために用いられる開始剤としては、多価アルコール、多価フェノール、モノ若しくはポリアミン等が挙げられるが、好適には多価アルコールおよび多価フェノールであり、特に好適には多価アルコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられ、中でもジエチレングリコールがより好ましい。
【0039】
また、上記ポリエーテルポリオール成分には、ジオール以外のポリオール成分も含み得る。このようなポリオール成分としては、通常、ポリウレタンフォームの製造に使用される3官能の、例えば、グリセリンベースにアルキレンオキサイド、例えば、プロピレンオキサイドを付加させたもの、2種のアルキレンオキサイド、例えば、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとをランダム若しくはブロックで付加させたもの、多官能のものとしては、例えば、サッカロースベースに上記と同様のものを付加させたポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0040】
上記イソシアネート成分としては、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等を、単独若しくは混合して使用することができ、中でも、トリレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0041】
上記触媒および発泡剤としては、その種類および使用量に特に制限はなく、公知のものを適宜使用することができる。例えば、触媒としては、トリエチレンジアミン、テトラメチレンヘキサジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のアミン触媒、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等の有機錫触媒が挙げられる。また、発泡剤としては、メチレンクロライド、フロン123、フロン141b等が挙げられる。
【0042】
さらに、上記自由発泡により得られるポリウレタンフォームには、上記の他に、各種の添加剤、例えば、難燃剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤、整泡剤等を適宜配合することができる。このうち整泡剤としては、具体的には例えば、各種のシロキサン、ポリアルキレンオキサイドブロック共重合体等が挙げられる。
【0043】
ここで、上記自由発泡により得られるポリウレタンフォームに導電性を付与する方法としては、上記ポリウレタンフォーム原料中にあらかじめ導電剤を配合する方法と、製造されたポリウレタンフォームに導電剤を含浸させる方法とがあるが、設計上の自由度が高いことから、後者の方法を用いることが好ましい。具体的には、ポリウレタンフォームに導電剤とバインダとを含む含浸液を含浸させて、導電性を付与する手法を用いることができる。この含浸液中の導電剤の量および含浸液の量を適宜選定することにより、ポリウレタンフォームの電気抵抗値を所定に決定することができ、トナー供給ローラとしての電気抵抗値を上記所定の範囲に調整することができる。
【0044】
上記導電剤としては、カーボンブラックやグラファイトなどの炭素質粒子、銀やニッケルなどの金属粉、酸化スズや酸化チタン、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物の単体、あるいは硫酸バリウムなどの絶縁性微粒子を芯体として上記導電性金属酸化物を湿式的に被覆したもの、導電性金属炭化物、導電性金属窒化物、導電性金属ホウ化物等から選択される1種または複数種の組み合わせを用いることができる。なお、コスト面からはカーボンブラックが好ましく、導電性制御のしやすさからは、導電性金属酸化物が好ましい。また、かかる導電剤としては、平均粒径が100nm以下、特には50nm以下の微細粒子を用いることが好ましい。
【0045】
含浸液に用いるバインダとしては、アクリル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、アクリル酸‐スチレン共重合体樹脂、アクリル酸‐酢酸ビニル共重合体樹脂等のアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、クロロプレンゴム等を例示することができる。特に好ましくは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、クロロプレンゴムである。これらバインダは、単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。導電剤を単独で含浸させてもポリウレタンフォームの気泡壁に強固に結合し得ないが、バインダを配合することにより、導電剤がポリウレタンフォームの気泡壁に強固に付着して、安定な導電性層をポリウレタンフォーム気泡内に形成することができる。
【0046】
上記導電剤とバインダとの配合比は、バインダの固形分100質量部に対して、導電剤の固形分が10〜110質量部、特には30〜50質量部であることが好ましい。導電剤の量が上記範囲を超えると、ポリウレタンフォームへの接着力が不十分になる傾向があり、上記範囲未満であると、トナー供給ローラの表面抵抗が安定しない傾向がある。
【0047】
なお、上記含浸液には、導電剤およびバインダに加えて、適量の水およびトルエン、酢酸エチル等の有機溶媒を添加することができる。これらの溶媒は、含浸液の粘度が5〜300cps(25℃)程度となるように添加することが好ましい。粘度をこの範囲内とすることにより、含浸付着作業がさらに容易となる。また、上記含浸液には、必要に応じて他の添加剤、例えば、鉱物油系消泡剤、シリコン系消泡剤、界面活性剤、荷電制御剤等を添加することができる。これらは、含浸液100質量部に対して0.001〜10質量部、特には0.001〜0.1質量部にて添加することが好ましい。
【0048】
上記含浸液を用いてポリウレタンフォームに導電性を付与する手法としては、例えば、粉末状の導電剤とバインダとを、必要に応じて他の添加剤とともに水または有機溶媒に分散・含有させて含浸液を準備し、この含浸液にブロック状のポリウレタンフォームを浸漬して、含浸液をポリウレタンフォームの気泡内に含浸させる。その後、ポリウレタンフォームを含浸液から取り出し、圧縮して余剰の含浸液を除去した後、加熱乾燥して水分等を除去することで、導電剤をバインダとともに、ポリウレタンフォームの気泡内に固着させることができる。
【0049】
なお、上記のうちモールドを用いた製法により得られた導電性ポリウレタンフォームは、比較的セル径が小さく、セルが連通する部分と独立セル部分とを含み、独立セル部分が比較的多いという特徴を有する。かかる導電性ポリウレタンフォームの、密度は、好適には0.03〜0.13g/cmであり、平均セル径は、好適には210〜270μmの範囲である。
【0050】
また、上記のうち自由発泡を用いた製法により得られた導電性ポリウレタンフォームは、比較的セル径が大きく、基本的に連通セルからなる。かかる導電性ポリウレタンフォームの、密度は、好適には0.03〜0.10g/cmであり、平均セル径は、好適には340〜520μmの範囲である。
【0051】
なお、本発明においては、シャフトと弾性層との間の接着を確保するために、これら層間に、所望に応じ接着層を設けることもできる。かかる接着層は、例えば、二液型ポリウレタン接着剤やエポキシ接着剤、ポリエステル接着剤、アクリル接着剤、アクリルエマルジョン接着剤、ウレタンエマルジョン接着剤などを用いて形成することができる。
【0052】
上述のようにして得られたポリウレタンフォームからなる弾性層を供える各ローラの製造は、例えば、以下のように行うことができる。すなわち、まず、適宜形状にて製造されたポリウレタンフォームから所望のサイズにてブロック状弾性体を切り出し、穴を開けて、所望に応じ接着層を介してシャフトを通す。その後、このブロック状発泡体の表面を研磨して円筒状のローラ形状に仕上げることで、本発明に係る各ローラを得ることができる。また、ポリウレタンフォームをシャフトと一体的に形成した後、その不要部分を研磨して円筒状のローラ形状に仕上げる方法や、ローラ形状を有する型内で、ポリウレタンフォームをシャフトと一体的に発泡成形する方法、ポリウレタンフォームをピーリング加工により円筒体として、ピーリング加工により生じたバリを溶融させる方法なども、適宜用いることが可能である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
密度0.10g/cm、平均セル径340μmにて、自由発泡にて作製されたポリウレタンフォーム((株)ブリヂストン製)を準備した。次いで、バインダー(エネックス社製,SEバインダー,ウレタン樹脂水分散体)、固形分50質量%のシリコーン粉体 (東レ・ダウコーニング(株)製)(2.6g/L)、導電剤(ライオン(株)製,ライオンペーストW311N)および自己乳化型シリコーン系消泡剤を混合して、含浸液を調製した。上記含浸液を満たした浴中に、ブロック状(16mm×1000mm×2000mm)の上記ポリウレタンフォームを浸漬し、2本のロール間で圧縮した後、開放して、含浸液をウレタンフォームに含浸させた。これを浴上に導いて、ニップロールに通して余分な含浸液を絞り、除去した後、110℃の熱風炉にて10分間加熱乾燥し、各導電性ウレタンフォームを得た。なお、含浸液の付着量は、ブロック状ウレタンフォームを含浸液から取り出した後の圧縮の際の圧力によって調節するか、または、含浸液中のカーボン、シリコーン粉体およびバインダーの濃度を変更することにより、調節することができる。
【0054】
上記により得られた各導電性ポリウレタンフォームのブロックを裁断し、20×20×230mmの角型の形状に切り出した。これに、長手方向に沿ってφ5mmのシャフト孔を穿孔した。次いで、このシャフト孔に、ウレタン系ホットメルト接着剤を約50μm厚に塗布した、Niメッキを施したφ6mmの鋼鉄材製シャフトを挿入し、加熱・冷却することにより、接着した。次いで、シャフトの両端を保持してフォームの外周を研削し、フォーム端部を切り落とすことで、直径11.5mm、長さ220mmの寸法精度の高いローラが得られた。
【0055】
得られたローラに対し、下記表中に示す圧縮率にて、150℃、60分間にて熱プレス処理を施すことにより、トナー供給ローラ(表1)、転写ローラ(表2)およびクリーニングローラ(表3)を、それぞれ作製した。各供試ローラにつき下記に従い評価を行った結果を、下記の表中に併せて示す。
【0056】
<ローラの圧縮率>
熱プレス処理時における、円筒状部材への挿入前の各供試ローラの弾性層の厚さをR(mm)とし、円筒状部材への挿入後の各供試ローラの圧縮された弾性層の厚さをr(mm)としたとき、下記式により定義される値である。
{(R−r)/R}×100 (%)
【0057】
<加工性>
熱プレス処理時における各供試ローラの圧縮率が、30%以下の場合を◎、30%を超え50%以下である場合を○、50%を超える場合を△とした。圧縮率が、30%を超えると挿入時の負荷が高くなって作業性が低下し、50%を超えると挿入時にフォームが破損するおそれがあるためである。
【0058】
<掻き取り性>
トナーを表面に均一に塗布した金属スリーブを32rpmにて回転させて、この金属スリーブに、押し込み量1mmにて各供試ローラを10秒間押し当てた。その後、金属スリーブ上の残留トナーをセロハンテープに貼り付けて回収し、透過濃度計を用いて残留トナーの量を数値化した。掻き取り性が高いほど、残留トナーは少なくなるので、透過濃度は低くなる。また、トナー搬送ローラとクリーニングローラとでは、求められる掻き取り性のレベルが異なり、クリーニングローラの方が要求性能が高い。よって、トナー搬送ローラについては、透過濃度が1.05未満の場合を◎、1.05以上1.10未満の場合を○、 1.10以上の場合を×とし、クリーニングローラについては、透過濃度が1.00未満の場合を◎、1.00以上1.05未満の場合を ○、1.05以上の場合を×とした。
【0059】
<表面平滑性>
非接触レーザー式寸法測定器を用いて、各供試ローラにつき、基準線からローラ輪郭線までの距離を測定した。ローラ長手方向に沿って移動しながら上記距離を連続的に測定することにより、ローラ長手方向の形状プロファイルを測定し、表面粗さパラメータRaを算出した。表面平滑性は、表面粗さRaが5未満の場合を◎、5以上10未満の場合を○、10以上の場合を×とした。
【0060】
<トナー搬送性>
各供試ローラの弾性層のポリウレタンフォームにトナーを満たして、1mm押し込んだ状態で転がし、幅220mm、転がし距離50mmあたりに吐き出されたトナー重量を測定した。トナー搬送性は、トナー重量が0.12g以上の場合を◎、0.10g以上0.12g未満の場合を○、0.10g未満の場合を×とした。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
上記表中に示したように、同一配合のポリウレタンフォームからなる弾性層を有するローラにおいて、熱プレス処理の条件を適宜変更することで、トナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラの各ローラ種に対応した要求性能を満足するものとなることが確かめられた。
【符号の説明】
【0065】
10 画像形成体
11 現像ローラ
12 トナー供給ローラ
13 トナー収容部
14 転写ローラ
15 クリーニングローラ
16 成層ブレード
17 帯電ローラ
20 トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周に、同一配合のポリウレタンフォームよりなる弾性層を有する少なくとも2種のローラを備え、該少なくとも2種のローラが、トナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラからなる群から選択されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記少なくとも2種のローラのうち少なくとも1種が、熱プレス処理されている請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記少なくとも2種のローラがトナー供給ローラおよび転写ローラであり、該トナー供給ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が30%未満であって、かつ、該転写ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下である請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記少なくとも2種のローラがトナー供給ローラおよびクリーニングローラであり、該トナー供給ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が30%未満であって、かつ、該クリーニングローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下である請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記少なくとも2種のローラが転写ローラおよびクリーニングローラであり、該転写ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下であって、かつ、該クリーニングローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下である請求項2記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記少なくとも2種のローラがトナー供給ローラ、転写ローラおよびクリーニングローラであり、該トナー供給ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が30%未満であり、該転写ローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下であって、かつ、該クリーニングローラの前記熱プレス処理における圧縮率が5%以上50%以下である請求項2記載の画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−37197(P2013−37197A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173328(P2011−173328)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】