説明

画像検出装置

【課題】染色された試料に含まれる細胞の所定の情報をより明確に検出することができる。
【解決手段】第1の光学系106は、第1のスペクトルと第2のスペクトルを重ね合わせたスペクトルを有する光を照射する。第3の光学系109は、第2の光学系108からの光が入射され、第1の波長領域の光と第2の波長領域の光とを分けて出射する。第1の撮像部111は、第3の光学系109からの第1の波長領域の光が入射され、第1の波長領域の光による標本スライド101の画像を撮像する。第2の撮像部113は、第3の光学系109からの第2の波長領域の光が入射され、第2の波長領域の光による標本スライド101の画像を撮像する。画像処理部114は、第2の撮像部113が撮像した標本スライド101の画像を用いて第1の撮像部111が撮像した標本スライド101の画像に含まれる細胞の所定の情報の強調処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病理診断では、臓器摘出によって得たブロック標本や、針生検によって得た病理標本を厚さ数ミクロン程度に薄切した後、様々な所見を得るために顕微鏡を用いて拡大観察することが広く行われている。中でも光学顕微鏡を用いた透過観察は最も普及している観察方法の一つである。この場合、薄切された標本は光をほとんど吸収および散乱せず無色透明に近いため、観察に先立って色素による染色を施すのが一般的である。
【0003】
染色手法としては種々のものが提案されており、特に病理標本に関しては、色素として青紫色のヘマトキシリンと赤色のエオシンの2つを用いるヘマトキシリン−エオシン染色(以下、HE染色)が標準的に用いられている。ヘマトキシン色素によって細胞核や骨組織等が青紫色に、エオシン色素によって細胞質や結合組織、赤血球等が赤色に染色され、容易に視認できるようになる。この結果、観察者は、細胞核等の組織を構成する要素の大きさや位置関係等を把握でき、標本の状態を形態学的に判断することが可能となる。
【0004】
図8は、従来知られている標準的なヘマトキシリン色素とエオシン色素の光吸収特性を示したグラフである。図示するグラフの横軸は波長を示している。また、図示するグラフの縦軸は、ヘマトキシリン色素とエオシン色素との光吸収度を示している。また、曲線801は、ヘマトキシリン色素で吸収される光の各波長成分の光吸収度を示している。また、曲線802は、エオシン色素で吸収される光の各波長成分の光吸収度を示している。
【0005】
図示するように、ヘマトキシン色素は520〜530nm付近をピークとしたナローな波長特性を有しており、700nm以降の近赤外領域にはほとんど感度を持たない。一方、エオシン色素は、ヘマトキシン色素よりもブロードな波長特性を有している。また、エオシン色素は600nm付近をピークとしたブロードな波長特性を有しており、700nm以降の近赤外領域にも感度を持つ。
【0006】
また、スライドガラス上に病理標本や生物組織など(標本サンプル)を載置し、スライドガラスの透過光、つまり標本サンプルの光像を電子カメラなどの撮像装置で撮像することで画像を取得し、取得した画像をモニタ上で観察するデジタル顕微鏡装置がある。近年、低消費電力であり、低発熱であり、寿命が長くメインテナンスが容易などの理由で白色LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)が顕微鏡の照明光源として普及し始めており、光学顕微鏡にも適用されつつある(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
【0007】
また、近年では、染色された病理標本をデジタル顕微鏡で撮影し、撮影したデジタル画像(病理画像)から病理医が病理診断を行う際に必要な情報を抽出、計測して表示する病理診断支援装置とその診断支援方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、病理診断支援装置は、染色された病理標本のデジタル画像の色情報、細胞質、細胞核の形状、細胞核の密度や重なり具合などの分布状態を基に、その部位が異常であるか否かを判断している(例えば、特許文献3参照)。特に細胞核の形態特徴情報は診断支援のための分類判定を行う際には重要であり、精度高く異常と思われる細胞の抽出及び悪性度の解析、すなわちスクリーニングを行うためには、病理標本の細胞質と細胞核との境界を明確に抽出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−148296号公報
【特許文献2】特開2004−286666号公報
【特許文献3】特開2001−59842号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“研究・検査用生物顕微鏡株式会社ニコンホームページ”、[online]、[平成23年11月15日検索]、インターネット<URL : http://www.nikon-instruments.jp/jpn/page/products/50i55i.aspx>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
HE染色の工程は、先ずヘマトキシリン染色液でヘマトキシリン染色を行う。そして、色出しのための水洗処理の後、エオシン染色液でエオシン染色を行う。このように各染色は独立して行なわれる。そのため、染色具合は、ヘマトキシリン染色液による反応時間やその染色液の生成条件、エオシン染色液による反応時間やその染色液の生成条件等によって大きく異なる。よって、各染色の光吸収のピークの相対量がずれて、ヘマトキシン染色が薄いもの、若しくはエオシン染色が過剰であるなど、色味がずれた病理標本が生成されるおそれがあった。このような病理標本を従来知られているデジタル顕微鏡で撮影した場合、取得した病理画像の細胞質と細胞核との境界が不鮮明になり、染色された試料に含まれる細胞の所定の情報を明確に検出することができない可能性があった。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、染色された試料に含まれる細胞の所定の情報をより明確に検出することができる画像検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の波長領域に強度分布を有する第1のスペクトルを持つ光を照射する第1の光源と、前記第1の波長領域とは異なる波長領域であり、前記第1の波長領域よりも波長が長い側の波長領域である第2の波長領域に強度分布を有する第2のスペクトルを持つ光を照射する第2の光源と、前記第1の光源及び前記第2の光源からの光が照射され、前記第1のスペクトルと前記第2のスペクトルを重ね合わせたスペクトルを有する光を照射する第1の光学系と、第1の染色と、当該第1の染色よりも波長が長い側に光の吸収のピークを有する第2の染色とを施された細胞を含む試料を、前記第1の光学系からの光が当該試料に入射されるように保持するステージと、前記第1の光学系からの光による前記試料の像を拡大する第2の光学系と、前記第2の光学系からの光が入射され、前記第1の波長領域の光と前記第2の波長領域の光とを分けて出射する第3の光学系と、前記第3の光学系からの前記第1の波長領域の光が入射され、当該第1の波長領域の光による前記試料の画像を撮像する第1の撮像部と、前記第3の光学系からの前記第2の波長領域の光が入射され、当該第2の波長領域の光による前記試料の画像を撮像する第2の撮像部と、前記第2の撮像部が撮像した前記試料の画像を用いて前記第1の撮像部が撮像した前記試料の画像に含まれる前記細胞の所定の情報の強調処理を行う処理部と、を有することを特徴とする画像検出装置である。
【0013】
また、本発明の画像検出装置において、前記第1の染色はヘマトキシン染色であり、前記第2の染色はイオシン染色であり、前記第1の波長帯は可視領域であり、前記第2の波長帯は赤外領域であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の画像検出装置において、前記細胞の所定の情報は、細胞質と細胞核との境界であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の画像検出装置において、前記第2の光源の強度は可変であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記処理部が強調処理を行った前記所定の情報が所定の基準値に近づくように前記第2の光源の強度を変更する光源制御部を有することを特徴とする画像検出装置である。
【0017】
また、本発明は、前記ステージと前記第2の光学系との相対位置を移動させる駆動部と、前記第1の撮像部が撮像した他の画像と重なる部分であるのりしろ部が存在するように、前記ステージと前記第2の光学系との相対位置を移動させつつ前記画像を撮像するよう前記第1の撮像部と前記駆動部とを制御する撮像制御部と、を有し、前記処理部は、前記第1の撮像部が撮像した複数の前記画像を合成して1枚の画像を生成することを特徴とする画像処理装置である。
【0018】
また、本発明の画像検出装置において、前記第1の光学系は、第1のダイクロイックミラーを有し、前記第3の光学系は、第2のダイクロイックミラーを有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の画像検出装置において、前記第1の光源は白色LEDで、前記第1の波長領域は可視領域であり、前記第2の光源は近赤外LEDで、前記第2の波長領域は赤外領域であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1の光源は、第1の波長領域に強度分布を有する第1のスペクトルを持つ光を照射する。また、第2の光源は、第1の波長領域とは異なる波長領域であり、第1の波長領域よりも波長が長い側の波長領域である第2の波長領域に強度分布を有する第2のスペクトルを持つ光を照射する。また、第1の光学系は、第1の光源及び第2の光源からの光が照射され、第1のスペクトルと第2のスペクトルを重ね合わせたスペクトルを有する光を照射する。また、ステージは、第1の染色と、当該第1の染色よりも波長が長い側に光の吸収のピークを有する第2の染色とを施された細胞を含む試料を、第1の光学系からの光が試料に入射されるように保持する。また、第2の光学系は、第1の光学系からの光による試料の像を拡大する。また、第3の光学系は、第2の光学系からの光が入射され、第1の波長領域の光と第2の波長領域の光とを分けて出射する。また、第2の撮像部は、第3の光学系からの第1の波長領域の光が入射され、当該第1の波長領域の光による試料の画像を撮像する第1の撮像部と、第3の光学系からの第2の波長領域の光が入射され、当該第2の波長領域の光による試料の画像を撮像する。また、処理部は、第2の撮像部が撮像した試料の画像を用いて第1の撮像部が撮像した試料の画像に含まれる細胞の所定の情報の強調処理を行う。これにより、画像検出装置は、染色された試料に含まれる細胞の所定の情報をより明確に検出することができる
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像検出装置の構成を示した概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における第1の光源および第2の光源の波長特性と、第1の光学系および第3の光学系の波長特性との関係を示したグラフである。
【図3】本発明の第1の実施形態における第1の撮像部が撮像した画像データの例を示した概略図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における画像処理部が強調処理を行った画像データの例を示した概略図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における画像検出装置の構成を示した概略図である。
【図6】本発明の第2の実施形態における光源ユニットが備える第1の光源と第2の光源との配置を示した概略図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における画像検出装置の構成を示した概略図である。
【図8】従来知られている標準的なヘマトキシリン色素とエオシン色素の光吸収特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態における画像検出装置1の構成を示した概略図である。図示する例では、画像検出装置1は、ステージ102と、ステージ駆動部103と、第1の光源104と、第2の光源105と、第1の光学系106と、コンデンサレンズ107と、第2の光学系108と、第3の光学系109と、第1の結像レンズ110と、第1の撮像部111と、第2の結像レンズ112と、第2の撮像部113と、画像処理部114(処理部)と、撮像制御部115とを備える。
【0023】
ステージ102は、スライドガラス上に、細胞が含まれた病理標本や生物組織などを載置した標本スライド101(試料)を載置するための台である。また、本実施形態では、標本スライド101に載置された病理標本や生物組織などは、ヘマトキシリンとエオシンの2つを用いるヘマトキシリン−エオシン染色によって染色されている。ステージ102は、第1の光学系106と第2の光学系108との間に配置されている。ステージ駆動部103は、撮像制御部115の制御に基づいてステージ102を水平及び垂直方向に駆動する。
【0024】
第1の光源104は、例えば白色LEDなどであり、第1の撮像部111が標本スライド101の画像(可視光に基づいた画像)を撮像するために用いる可視光(第1の波長領域に強度分布を有する第1のスペクトルを持つ光)を発生する光源である。第2の光源105は、例えば赤外LEDなどであり、第2の撮像部113が標本スライド101の赤外画像を撮像するために用いる近赤外光(第1の波長領域とは異なる波長領域であり、第1の波長領域よりも波長が長い側の波長領域である第2の波長領域に強度分布を有する第2のスペクトルを持つ光)を発生する光源である。
【0025】
第1の光学系106は、例えばダイクロイックミラーであり、第1の光源104からの可視光と第2の光源105からの近赤外光とを合わせた光(混合光、第1のスペクトルと第2のスペクトルを重ね合わせたスペクトルを有する光)をコンデンサレンズ107に対して照射する。図示する例では、第1の光学系106は、第1の光源104からの可視光を透過し、第2の光源105からの近赤外光をコンデンサレンズ107の方向に反射することで、第1の光源104からの可視光と第2の光源105からの近赤外光とを合わせた光をコンデンサレンズ107に対して照射する。
【0026】
コンデンサレンズ107は、第1の光学系106が照射した混合光を集光して標本スライド101に対して照射する。第2の光学系108は、複数のレンズで構成された対物レンズであり、標本スライド101に対向するように配置されている。また、第2の光学系108は、標本スライド101からの光束を集光させ、集光させた混合光を第3の光学系109に対して照射する。このように、第2の光学系108は、標本スライド101の透過像を拡大する。
【0027】
第3の光学系109は、例えばダイクロイックミラーであり、第2の光学系108からの混合光に含まれる可視光を第1の結像レンズ110に対して照射し、第2の光学系108からの混合光に含まれる近赤外光を第2の結像レンズ112に対して照射する。図示する例では、第3の光学系109は、第2の光学系108からの混合光に含まれる可視光を透過し、第2の光学系108からの混合光に含まれる近赤外光を第2の結像レンズ112の方向に反射することで、第2の光学系108からの混合光に含まれる可視光を第1の結像レンズ110に対して照射し、第2の光学系108からの混合光に含まれる近赤外光を第2の結像レンズ112に対して照射する。なお、第3の光学系109が透過し、第1の結像レンズ110に入射される可視光の光路を光路Aとする。また、第3の光学系109が反射し、第2の結像レンズ112に入射される近赤外光の光路を光路Bとする。
【0028】
第1の結像レンズ110は、第2の光学系108の光軸に沿って配置されている。また、第1の結像レンズ110は、第2の光学系108が集光した混合光のうち、第3の光学系109が透過した可視光を第1の撮像部111が備える撮像素子の撮像面上に結像させる。これにより、標本スライド101からの混合光に含まれる可視光は、第1の撮像部111に導かれる。第1の撮像部111が備える撮像素子は、標本スライド101からの可視光を受光し、受光した可視光を、受光した可視光の強度に応じた電気信号に光電変換する。第1の撮像部111は、撮像素子が光電変換した電気信号に基づいて標本スライド101の画像データを生成する。
【0029】
第2の結像レンズ112は、第2の光学系108が集光した混合光のうち、第3の光学系109が反射した近赤外光を第2の撮像部113が備える撮像素子の撮像面上に結像させる。これにより、標本スライド101からの混合光に含まれる近赤外光は、第2の撮像部113に導かれる。第2の撮像部113が備える撮像素子は、標本スライド101からの近赤外光を受光し、受光した近赤外光を、受光した近赤外光の強度に応じた電気信号に光電変換する。第2の撮像部113は、撮像素子が光電変換した電気信号に基づいて標本スライド101の赤外画像データを生成する。
【0030】
画像処理部114は、第2の撮像部113が撮像した赤外画像データを用いて第1の撮像部111が撮像した画像データに含まれる細胞の所定の情報(例えば、細胞質と細胞核との境界)の強調処理を行う。強調処理の詳細については後述する。また、画像処理部114は、細胞の所定の情報の強調処理を行った複数枚の画像データを貼り合わせ、標本スライド101の所定の領域の画像データである1枚の画像データを生成する。なお、画像処理部114は、第1の撮像部111が撮像した画像データに含まれる細胞の所定の情報の強調処理を行った後に、強調処理後の画像データを貼り合わせて一枚の画像データを生成するのではなく、第1の撮像部111が生成した画像データを貼り合わせて1枚の画像データを生成した後に、第2の撮像部113が撮像した赤外画像データを用いて細胞の所定の情報の強調処理を行ってもよい。
【0031】
撮像制御部115は、例えば、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)と、ROM(Read Only Memory、読み出し専用記憶装置)と、RAM(Random Access Memory、ランダムアクセスメモリ)と、外部記憶装置等とを含む、図示せぬコンピュータシステムである。撮像制御部115は、標本スライド101の所定の領域(例えば病理標本や生物組織が載置されている領域)の画像と赤外画像とを分割して撮像するように、ステージ駆動部103と、第1の撮像部111と、第2の撮像部113とを制御する。具体的には、撮像制御部115は、第1の撮像部111が撮像した他の画像データと重なる部分であるのりしろ部が存在するように、ステージ102と第2の光学系108との相対位置を移動させつつ画像データと赤外画像データとを撮像するよう第1の撮像部111とステージ駆動部103とを制御する。なお、標本スライド101の領域のうち、第1の撮像部111が撮像する画像データの領域と第2の撮像部113が撮像する赤外画像データとの領域は同一の領域である。
【0032】
次に、第1の光源104および第2の光源105の波長特性と、第1の光学系106および第3の光学系109の波長特性とについて説明する。図2は、本実施形態における第1の光源104および第2の光源105の波長特性と、第1の光学系106および第3の光学系109の波長特性との関係を示したグラフである。なお、図示するグラフは、第1の光源104が白色LEDであり、第2の光源105が赤外LEDであり、第1の光学系106および第3の光学系109がダイクロイックミラーである場合の特性を示している。
【0033】
図示するグラフの横軸は波長を示している。また、図示するグラフの縦軸は、第1の光源104および第2の光源105の光の放射強度と、第1の光学系106と第3の光学系109の透過率(光を透過するか反射するか)を示している。また、曲線201は、第1の光源104が発生する可視光の各波長成分の強度を示している。また、曲線202は、第2の光源105が発生する近赤外光の各波長成分の強度を示している。また、破線203は、第1の光学系106および第3の光学系109が光を透過するか反射するかを示している。
【0034】
図示するように、第1の光源104が発生する光は、可視光成分(可視光である波長)の光の強度が強い。また、第2の光源105が発生する光は、近赤外光成分(近赤外光である波長)の光の強度が強い。また、第1の光学系106および第3の光学系109は、可視光成分の波長の光を透過し、近赤外光成分の波長の光を反射する。すなわち、第1の光学系106および第3の光学系109は、可視光を透過し、近赤外光を反射する。
【0035】
また、上述した通り、第1の光源104が発生する可視光は、第1の撮像部111が備える撮像素子の撮像面に入射する。また、第2の光源105が発生する近赤外光は、第2の撮像部113が備える撮像素子の撮像面に入射する。また、図8に示したように、ヘマトキシン色素は520〜530nm付近をピークとしたナローな波長特性を有しており、700nm以降の近赤外領域にはほとんど感度を持たない。一方、エオシン色素は600nm付近をピークとしたブロードな波長特性を有しており、700nmの以降の近赤外領域にも感度を持つ。そのため、第2の撮像部113が撮像する赤外画像データは、エオシン色素によって染色された細胞質の情報が強調された赤外画像データである。
【0036】
次に、画像処理部114が行う、第2の撮像部113が撮像した赤外画像を用いて第1の撮像部111が撮像した画像に含まれる細胞の所定の情報の強調処理について説明する。画像処理部114は、強調処理として、第1の撮像部111が生成した標本スライド101の画像データに、第2の撮像部113が生成した標本スライド101の赤外画像データを積算し、次に、隣接する画素の差分を取る。第2の撮像部113が撮像する赤外画像データは、エオシン色素によって染色された細胞質の情報が強調された赤外画像データである。そのため、画像処理部114は、強調処理を行うことで、細胞質と細胞核との境界が強調された画像データ、すなわち、細胞核の輪郭を強調した画像データを生成することができる。なお、第1の撮像部111が撮像した画像に含まれる細胞の所定の情報の強調処理は、この方法に限らない。第2の撮像部113が撮像した赤外画像を用いて、第1の撮像部111が撮像した画像に含まれる細胞の所定の情報を強調する処理であればどのような処理でもよい。
【0037】
図3は、本実施形態における第1の撮像部111が撮像した画像データの例を示した概略図である。図示する例では、画像データに細胞質と細胞核とが含まれており、細胞質と細胞核との境界301が写っている。図4は、本実施形態における画像処理部114が強調処理を行った画像データの例を示した概略図である。図示する例では、画像データに細胞質と細胞核とが含まれており、細胞質と細胞核との境界301が、図3に示した例よりも強調されている。
【0038】
次に、本実施形態における画像検出装置1の動作について説明する。初めに、撮像制御部115は、ステージ駆動部103にステージ102を水平方向に駆動させ、第2の光学系108の光軸上に標本スライド101の撮影すべき所定の領域を移動させる。次に、第1の光源104は標本スライド101を照射する可視光を発生し、第2の光源105は、標本スライド101を照射する近赤外光を発生する。第1の光学系106は、第1の光源104が発生した可視光と第2の光源105が発生した近赤外光とを合わせた光(混合光)をコンデンサレンズ107に対して照射する。
【0039】
コンデンサレンズ107は、第1の光学系106が照射した混合光を集光して標本スライド101に対して照射する。標本スライド101を透過した混合光は、第2の光学系108で集光され、第3の光学系109により、可視光は第1の結像レンズ110の方向に分割され、近赤外光は第2の結像レンズ112の方向に分割される。
【0040】
第1の結像レンズ110の方向に分割された可視光は、第1の結像レンズ110を介して、第1の撮像部111が備える撮像素子の撮像面に照射される。一方、第2の結像レンズ112を介して、第2の撮像部113が備える撮像素子の撮像面に照射される。撮像制御部115は、第1の撮像部111に標本スライド101の画像データを生成させる。また、撮像制御部115は、第2の撮像部113に標本スライド101の赤外画像データを生成させる。第1の撮像部111は、撮像制御部115の制御に基づいて、標本スライド101の画像データを生成する。また、第2の撮像部113は、撮像制御部115の制御に基づいて、標本スライド101の赤外画像データを生成する。
【0041】
その後、撮像制御部115は、ステージ駆動部103にステージ102を水平方向に駆動させ、第2の光学系108の光軸上に標本スライド101の撮影すべき所定の領域を移動させる。画像検出装置1は、これらの処理を繰り返し行い、標本スライド101の所定の領域の画像データと赤外画像データとを分割して生成する。
【0042】
次に、画像処理部114は、第2の撮像部113が撮像した赤外画像データを用いて第1の撮像部111が撮像した各画像データに含まれる細胞の所定の情報の強調処理を行う。また、画像処理部114は、細胞の所定の情報の強調処理を行った複数枚の画像データを貼り合わせ、標本スライド101の所定の領域の画像データである1枚の画像データを生成する。なお、画像処理部114は、第1の撮像部111が撮像した画像データに含まれる細胞の所定の情報の強調処理を行った後に、強調処理後の画像データを貼り合わせて一枚の画像データを生成するのではなく、第1の撮像部111が生成した画像データを貼り合わせて1枚の画像データを生成した後に、第2の撮像部113が撮像した赤外画像データを用いて細胞の所定の情報の強調処理を行ってもよい。
【0043】
上述したとおり、本実施形態によれば、第1の光源104は可視光を発生し、第2の光源105は近赤外光を発生する。そして、第1の光学系106は、可視光と近赤外光とを合わせた混合光を標本スライド101に対して照射する。また、第3の光学系109は、標本スライド101を透過した混合光を可視光と近赤外光とに分割する。そして、第1の撮像部111は可視光を用いて標本スライド101の画像データを生成し、第2の撮像部113は、近赤外光を用いて標本スライド101の赤外画像データを生成する。その後、画像処理部114は、第2の撮像部113が撮像した赤外画像データを用いて第1の撮像部111が撮像した各画像データに含まれる細胞の所定の情報の強調処理を行う。また、画像処理部114は、細胞の所定の情報の強調処理を行った複数枚の画像データを貼り合わせ、標本スライド101の所定の領域の画像データである1枚の画像データを生成する。
【0044】
これにより、画像検出装置1は、第2の撮像部113が生成した赤外画像データを用いて、第1の撮像部111が撮像した画像データに含まれる細胞の所定の情報(例えば、細胞質と細胞核との境界)を明確に検出することができる。すなわち、画像検出装置1は、病理標本や生物組織などの細胞質と細胞核との境界をさらに明確に検出でき、スクリーニング精度を向上させることが可能な画像データを生成することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態における画像検出装置2の構成と、第1の実施形態における画像検出装置1の構成とで異なる点は、標本スライド101を照射する光源の構成と、可視光と近赤外光とを合わせた光(混合光)を照射する第1の光学部の構成である。
【0046】
図5は、本実施形態における画像検出装置2の構成を示した概略図である。図示する例では、画像検出装置2は、ステージ102と、ステージ駆動部103と、光源ユニット701と、第1の光学系702と、コンデンサレンズ107と、第2の光学系108と、第3の光学系109と、第1の結像レンズ110と、第1の撮像部111と、第2の結像レンズ112と、第2の撮像部113と、画像処理部114と、撮像制御部115とを備える。
【0047】
ステージ102と、ステージ駆動部103と、コンデンサレンズ107と、第2の光学系108と、第3の光学系109と、第1の結像レンズ110と、第1の撮像部111と、第2の結像レンズ112と、第2の撮像部113と、画像処理部114と、撮像制御部115との構成は、第1の実施形態における各部の構成と同様の構成である。
【0048】
光源ユニット701は、可視光を発生する複数の第1の光源と、近赤外光を発生する複数の第2の光源とを備える。図6は、本実施形態における光源ユニット701が備える第1の光源と第2の光源との配置を示した概略図である。図示する例では、光源ユニット701には、複数の第1の光源7011と、複数の第2の光源7012とが交互に配置されている。第1の光源7011は可視光を発生する。また、第2の光源7012は近赤外光を発生する。これにより、光源ユニット701は、可視光と近赤外光とを発生することができる。
【0049】
第1の光学系702は、例えば拡散板や、光ファイバや、フライアイレンズであり、光源ユニット701が備える複数の第1の光源7011が発生した可視光と、複数の第2の光源7012とが発生した近赤外光とを均一に拡散混合し、拡散混合した光(混合光)をコンデンサレンズ107に対して照射する。
【0050】
コンデンサレンズ107に照射された混合光は、第1の実施形態と同様に、標本スライド101を透過し、第2の光学系108で集光され、第3の光学系109により、可視光は第1の結像レンズ110の方向に分割され、近赤外光は第2の結像レンズ112の方向に分割される。そして、第1の結像レンズ110の方向に分割された可視光は、第1の結像レンズ110を介して、第1の撮像部111が備える撮像素子の撮像面に照射される。一方、第2の結像レンズ112の方向に分割された近赤外光は、第2の結像レンズ112を介して、第2の撮像部113が備える撮像素子の撮像面に照射される。第1の撮像部111は可視光を用いて標本スライド101の画像データを生成する。また、第2の撮像部113は近赤外光を用いて標本スライド101の赤外画像データを生成する。
【0051】
この構成により、画像検出装置2は、第1の実施形態における画像検出装置1と同様に、第2の撮像部113が生成した赤外画像データを用いて、第1の撮像部111が撮像した画像データに含まれる細胞の所定の情報(例えば、細胞質と細胞核との境界)を明確に検出することができる。すなわち、画像検出装置1は、病理標本や生物組織などの細胞質と細胞核との境界をさらに明確に検出でき、スクリーニング精度を向上させることが可能な画像データを生成することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態における画像検出装置の構成と、第1の実施形態における画像検出装置1の構成とで異なる点は、本実施形態における画像検出装置は、画像処理部114による細胞の所定の情報の強調処理が最適となるように、第2の光源105が発生する近赤外光の光量を調節する光量調整部を備えている点である。
【0053】
図7は、本実施形態における画像検出装置3の構成を示した概略図である。図示する例では、画像検出装置3は、ステージ102と、ステージ駆動部103と、第1の光源104と、第2の光源105と、第1の光学系106と、コンデンサレンズ107と、第2の光学系108と、第3の光学系109と、第1の結像レンズ110と、第1の撮像部111と、第2の結像レンズ112と、第2の撮像部113と、画像処理部114と、撮像制御部115と、光量調整部901とを備える。
【0054】
ステージ102と、ステージ駆動部103と、第1の光源104と、第2の光源105と、第1の光学系106と、コンデンサレンズ107と、第2の光学系108と、第3の光学系109と、第1の結像レンズ110と、第1の撮像部111と、第2の結像レンズ112と、第2の撮像部113と、画像処理部114と、撮像制御部115との構成は、第1の実施形態における各部の構成と同様の構成である。
【0055】
光量調整部901は、画像処理部114が強調処理を行った画像データを取得し、取得した画像データに含まれる細胞質と細胞核との境界が最適であるか否かを判定する。そして、光量調整部901は、画像データに含まれる細胞質と細胞核との境界が最適ではないと判定した場合、第2の光源105が発生する近赤外光の光量を調整する。具体的には、光量調整部901は、細胞質と細胞核との境界があまり明確ではないと判定した場合、第2の光源105が発生する近赤外光の光量が大きくなるように第2の光源105を制御する。また、光量調整部901は、細胞質と細胞核との境界が強調されすぎていると判定した場合、第2の光源105が発生する近赤外光の光量が小さくなるように第2の光源105を制御する。
【0056】
例えば、標本スライド101が光を透過しにくい場合、第2の撮像部113に入射する近赤外光の光量は少なくなり、第2の撮像部113が出力する赤外画像データの出力値が小さくなる。そのため、画像処理部114による強調処理の効果も弱くなる。しかしながら、本実施形態では、第2の撮像部113が出力する赤外画像データの出力値が小さく、強調処理を行っても細胞質と細胞核との境界があまり明確ではない場合、光量調整部901は、第2の光源105が発生する近赤外光の光量が大きくなるように第2の光源105を制御する。これにより、画像処理部114は最適な強調処理を行うことができる。
【0057】
また、標本スライド101が光を透過しやすい場合、第2の撮像部113に入射する近赤外光の光量は大きくなり、第2の撮像部113が出力する赤外画像データの出力値が大きくなる。そのため、画像処理部114による強調処理の効果も強くなる。しかしながら、本実施形態では、第2の撮像部113が出力する赤外画像データの出力が大きく、強調処理を行うと細胞質と細胞核との境界が強調されすぎる場合、光量調整部901は、第2の光源105が発生する近赤外光の光量が小さくなるように第2の光源105を制御する。これにより、画像処理部114は最適な強調処理を行うことができる。
【0058】
従って、画像検出装置3は、第2の撮像部113が生成した赤外画像データを用いて、第1の撮像部111が撮像した画像データに含まれる細胞の所定の情報(例えば、細胞質と細胞核との境界)を明確に検出することができる。さらに、強調処理後の画像データに含まれる細胞質と細胞核との境界の強調度合いに応じて、光量調整部901が第2の光源105が発生する光量を調整するため、より最適に細胞質と細胞核との境界を強調した画像データを生成することができる。すなわち、画像検出装置3は、病理標本や生物組織などの細胞質と細胞核との境界をさらに明確に検出でき、スクリーニング精度を向上させることが可能な画像データを生成することができる。
【0059】
以上、この発明の第1の実施形態から第3の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0060】
例えば、第2の実施形態における画像検出装置2が、第3の実施形態における画像検出装置3のように光量調整部901を備え、強調処理後の画像データに含まれる細胞質と細胞核との境界の強調度合いに応じて光源ユニット701が備える複数の第2の光源7012の発光量を調整するようにしてもよい。
【0061】
また、例えば、第1の実施形態から第3の実施形態では、ステージ102と第2の光学系108との相対位置を移動させる際にはステージ102を移動させたが、これに限らない。例えば、ステージ102と第2の光学系108との相対位置を移動させる際に、第2の光学系108を移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1,2,3・・・画像検出装置、101・・・標本スライド、102・・・ステージ、103・・・ステージ駆動部、104,7011・・・第1の光源、105,7012・・・第2の光源、106,702・・・第1の光学系、107・・・コンデンサレンズ、108・・・第2の光学系、109・・・第3の光学系、110・・・第1の結像レンズ、111・・・第1の撮像部、112・・・第2の結像レンズ、113・・・第2の撮像部、114・・・画像処理部、115・・・撮像制御部、701・・・光源ユニット、901・・・光量調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長領域に強度分布を有する第1のスペクトルを持つ光を照射する第1の光源と、
前記第1の波長領域とは異なる波長領域であり、前記第1の波長領域よりも波長が長い側の波長領域である第2の波長領域に強度分布を有する第2のスペクトルを持つ光を照射する第2の光源と、
前記第1の光源及び前記第2の光源からの光が照射され、前記第1のスペクトルと前記第2のスペクトルを重ね合わせたスペクトルを有する光を照射する第1の光学系と、
第1の染色と、当該第1の染色よりも波長が長い側に光の吸収のピークを有する第2の染色とを施された細胞を含む試料を、前記第1の光学系からの光が当該試料に入射されるように保持するステージと、
前記第1の光学系からの光による前記試料の像を拡大する第2の光学系と、
前記第2の光学系からの光が入射され、前記第1の波長領域の光と前記第2の波長領域の光とを分けて出射する第3の光学系と、
前記第3の光学系からの前記第1の波長領域の光が入射され、当該第1の波長領域の光による前記試料の画像を撮像する第1の撮像部と、
前記第3の光学系からの前記第2の波長領域の光が入射され、当該第2の波長領域の光による前記試料の画像を撮像する第2の撮像部と、
前記第2の撮像部が撮像した前記試料の画像を用いて前記第1の撮像部が撮像した前記試料の画像に含まれる前記細胞の所定の情報の強調処理を行う処理部と、
を有することを特徴とする画像検出装置。
【請求項2】
前記第1の染色はヘマトキシン染色であり、
前記第2の染色はイオシン染色であり、
前記第1の波長帯は可視領域であり、
前記第2の波長帯は赤外領域である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像検出装置。
【請求項3】
前記細胞の所定の情報は、細胞質と細胞核との境界である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像検出装置。
【請求項4】
前記第2の光源の強度は可変である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像検出装置。
【請求項5】
前記処理部が強調処理を行った前記所定の情報が所定の基準値に近づくように前記第2の光源の強度を変更する光源制御部
を有することを特徴とする請求項4に記載の画像検出装置。
【請求項6】
前記ステージと前記第2の光学系との相対位置を移動させる駆動部と、
前記第1の撮像部が撮像した他の画像と重なる部分であるのりしろ部が存在するように、前記ステージと前記第2の光学系との相対位置を移動させつつ前記画像を撮像するよう前記第1の撮像部と前記駆動部とを制御する撮像制御部と、
を有し、
前記処理部は、前記第1の撮像部が撮像した複数の前記画像を合成して1枚の画像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の光学系は、第1のダイクロイックミラーを有し、
前記第3の光学系は、第2のダイクロイックミラーを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の光源は白色LEDで、前記第1の波長領域は可視領域であり、
前記第2の光源は近赤外LEDで、前記第2の波長領域は赤外領域である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−109205(P2013−109205A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254940(P2011−254940)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】