説明

画像表示システム及びその制御方法

【課題】ユーザの負担を招くことなく、所望の照明下での被写体の色が忠実に再現された画像を表示することのできる技術を提供する。
【解決手段】本発明の画像表示システムは、サーバとクライアント装置からなる画像表示システムであって、サーバは、複数の照明スペクトルデータを、調整パラメータの値と対応付けて記憶する記憶手段と、クライアント装置の現在の調整パラメータの設定値を取得する取得手段と、記憶手段に記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と取得手段で取得された調整パラメータの値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択手段と、選択手段で選択された照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成手段と、生成手段で生成された画像データをクライアント装置に配信する配信手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芸術作品、貴重品、ネットショッピングで参照される商品などの画像を表示する際に、被写体の色を忠実に再現することが求められている。
上記課題を解決する方法は、例えば特許文献1に開示されている。具体的には、特許文献1には、マルチバンドカメラで得られる画像データから、撮影条件に基づいて被写体の分光反射率を推定し、これに任意の照明光のスペクトルデータを乗じることにより、任意の照明下での被写体の色を正確に再現する方法が開示されている。
マルチバンドカメラは、被写体を撮像し、一般的なRGB三原色よりも多くの原色についての情報を取得するカメラである。
【0003】
また、芸術作品や貴重品などの画像のように被写体の色を忠実に再現したい画像を鑑賞する場合、一般的なRGB三原色よりも多くの原色を用いたマルチバンドディスプレイを用いることが考えられる。しかしながら、上記画像を美術館や個人宅で鑑賞するケースを考えると、マルチバンドディスプレイのような特殊な装置ではなく、一般的なパーソナルコンピュータとモニタを用いて、被写体の色を忠実に再現することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−288859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、ユーザ(鑑賞者)は、モニタを用いて画像を観賞する場合、観賞を快適に行えるようにモニタの表示特性(表示輝度や表示色)をユーザ自身の好みに調整する。このため、画像の鑑賞に使用するモニタやPCは、モニタの表示特性を調整する機能を有する。
一方、被写体の色を忠実に再現するには(モニタ上に被写体の色が忠実に再現された画像を表示するには)、モニタの表示特性が画像データ配信者が画像データ作成時に想定した表示特性と一致している必要がある。モニタの表示特性をユーザが変更した場合、モニタの表示特性が画像データ配信者が想定した表示特性と一致しなくなるため、被写体の色を忠実に再現することができなくなってしまう。
また、上述したように、被写体の分光反射率に任意の照明光のスペクトルデータを乗じることにより、任意の照明下での被写体の色が正確に再現可能な画像データを得ることができる。しかし、多種多様な照明の中から所望の照明を選択することは、ユーザの負担を招いてしまう。
【0006】
そこで本発明は、ユーザの負担を招くことなく、所望の照明下での被写体の色が忠実に再現された画像を表示することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
画像データを配信するサーバと、配信された画像データに基づく画像を表示するクライアント装置とからなる画像表示システムであって、
前記クライアント装置は、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する機能を有するものであり、
前記サーバは、
複数の照明スペクトルデータを、前記クライアント装置に設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶する記憶手段と、
前記クライアント装置の現在の調整パラメータの設定値を取得する取得手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と前記取得手段で取得された調整パラメータの値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された画像データを前記クライアント装置に配信する配信手段と、を有する
ことを特徴とする画像表示システムである。
【0008】
本発明の第2の態様は、
画素毎の分光反射率のデータを配信するサーバと、配信された画素毎の分光反射率のデータから画像データを生成し、生成した画像データに基づく画像を表示するクライアント装置とからなる画像表示システムであって、
前記クライアント装置は、
設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する調整手段と、
複数の照明スペクトルデータを、設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と現在の調整パラメータの設定値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、配信された画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
を有する
ことを特徴とする画像表示システムである。
【0009】
本発明の第3の態様は、
配信された画像データに基づく画像を表示するクライアント装置に画像データを配信するサーバであって、
前記クライアント装置は、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する機能を有するものであり、
前記サーバは、
複数の照明スペクトルデータを、前記クライアント装置に設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶する記憶手段と、
前記クライアント装置の現在の調整パラメータの設定値を取得する取得手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と前記取得手段で取得された調整パラメータの値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された画像データを前記クライアント装置に配信する配信手段と、を有する
ことを特徴とするサーバである。
【0010】
本発明の第4の態様は、
配信された画素毎の分光反射率のデータから画像データを生成し、生成した画像データに基づく画像を表示するクライアント装置であって、
設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する調整手段と、
複数の照明スペクトルデータを、設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と現在の調整パラメータの設定値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、配信された画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
を有する
ことを特徴とするクライアント装置である。
【0011】
本発明の第5の態様は、
画像データを配信するサーバと、配信された画像データに基づく画像を表示するクライアント装置とからなる画像表示システムの制御方法であって、
前記クライアント装置は、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する機能を有するものであり、
前記サーバが、前記クライアント装置の現在の調整パラメータの設定値を取得する取得ステップと、
前記サーバが、記憶部に記憶された複数の照明スペクトルデータであって、前記クライアント装置に設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と前記取得ステップで取得された調整パラメータの値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択ステップと、
前記サーバが、前記選択ステップで選択された照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成ステップと、
前記サーバが、前記生成ステップで生成された画像データを前記クライアント装置に配信する配信ステップと、
を有する
ことを特徴とする画像表示システムの制御方法である。
【0012】
本発明の第6の態様は、
画素毎の分光反射率のデータを配信するサーバと、配信された画素毎の分光反射率のデータから画像データを生成し、生成した画像データに基づく画像を表示するクライアント装置とからなる画像表示システムの制御方法であって、
前記クライアント装置が、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する調整ステップと、
前記クライアント装置が、記憶部に記憶された複数の照明スペクトルデータであって、設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と現在の調整パラメータの設定値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択ステップと、
前記クライアント装置が、前記選択ステップで選択された照明スペクトルデータと、配信された画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成ステップと、
前記クライアント装置が、前記生成ステップで生成された画像データに基づく画像を表
示する表示ステップと、
を有する
ことを特徴とする画像表示システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザの負担を招くことなく、所望の照明下での被写体の色が忠実に再現された画像をモニタに表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1に係る画像表示システムの構成の一例を示すブロック図。
【図2】実施例1に係るサーバの動作の流れの一例を示すフローチャート。
【図3】実施例1に係るクライアント装置の動作の流れの一例を示すフローチャート。
【図4】実施例1に係る調整パラメータの初期化を行う領域の一例示す図。
【図5】実施例2に係る画像表示システムの構成の一例を示すブロック図。
【図6】実施例2に係るサーバの動作の流れの一例を示すフローチャート。
【図7】実施例2に係るPCの動作の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施例1>
以下、本発明の実施例1に係る画像表示システム及びその制御方法について説明する。本実施例に係る画像表示システムは、画像データを配信するサーバと、配信された画像データに基づく画像を表示するクライアント装置とからなる。本実施例に係るクライアント装置は、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性(表示輝度や表示色(表示色バランスや色温度))を調整する機能を有する。
【0016】
図1を用いて実施例1に係る画像表示システムの構成を説明する。
マルチバンドカメラ1000は、被写体を撮像しマルチバンド画像データを生成するカメラであり、撮像素子とマルチバンドフィルタを用いて構成される。
マルチバンド画像データは、画素毎の反射スペクトルデータである。具体的には、マルチバンド画像データは、RGB三原色よりも多くの原色について被写体の反射光を測定することで取得される被写体の分光スペクトルデータ(反射スペクトルデータ)を、画素毎に表現したデータである。
また、マルチバンドカメラ1000は、撮影条件情報として、被写体に照射されている照明のスペクトルデータ(分光照射率のデータ;照明スペクトルデータ)、被写体と照明とマルチバンドカメラ1000との位置関係の情報などを取得する。
マルチバンドカメラ1000は、マルチバンド画像データ及びそれに対応する撮影条件情報を記憶し、出力する。
【0017】
サーバ1001は、例えば芸術作品などのマルチバンド画像データを多数記録し、クライアント装置1002からの要求に応じて所望の画像データを配信する。具体的には、サーバ1001は、マルチバンドカメラ1000から取得したデータ(マルチバンド画像データ及びそれに対応する撮影条件情報)を記憶する。そして、記憶したデータをもとにクライアント装置1002で表示するための画像データ(クライアント装置1002で表示可能な画像データ;本実施例ではRGB画像データ)を生成し、クライアント装置1002に対して、生成したRGB画像データを配信する。
【0018】
クライアント装置1002は、画像データに基づく画像を閲覧(観賞)するための装置である。クライアント装置1002は、サーバ1001に対して画像データの配信を要求し、サーバから受信した画像データに基づく画像をモニタに表示する。
【0019】
ネットワーク回線1003は、サーバ1001とクライアント装置1002を有線または無線で接続し、両者の間での通信を可能とする。
【0020】
サーバ1001の構成を説明する。
コントローラ1010は、以下に述べる構成要素を制御することでサーバ1001の一連の機能を達成する。
【0021】
ストレージ1011は、マルチバンドカメラ1000から取得したマルチバンド画像データおよび撮影条件情報を記憶する。具体的には、撮影条件情報として、撮影時の照明スペクトルデータが取得され記憶される。
分光反射率データ生成部1012は、マルチバンド画像データと照明スペクトルデータをストレージ1011から読み出し、照明スペクトルデータを用いてマルチバンド画像データから照明成分をキャンセルする演算を行う。具体的には、分光反射率データ生成部1012は、画素毎の反射スペクトルデータを照明スペクトルデータで除算することにより、画素毎の分光反射率のデータ(分光反射率データ)を生成する。
なお、本実施例では、サーバ1001がマルチバンド画像データを記憶する構成としたが、画素毎の分光反射率のデータを記憶する構成であってもよい。
また、本実施例では、サーバ1001がマルチバンド画像データを取得する構成としたが、画素毎の分光反射率のデータを取得する構成であってもよい。
【0022】
パラメータ値取得部1018は、クライアント装置1002の現在の調整パラメータの設定値を取得する。そして、パラメータ値取得部1018は、取得した値をレンダリング照明データベース1019に送信する。
【0023】
レンダリング照明データベース1019は、複数の照明スペクトルデータを、クライアント装置1002に設定可能な調整パラメータの値(ユーザ調整値)と対応付けて記憶する記憶部である。具体的には、調整パラメータの値がインデックスとして付加された照明スペクトルデータが、レンダリング照明データベース1019に記憶されている。複数の照明スペクトルデータは、輝度値、色温度、スペクトル特性などが異なる複数の照明スペクトルである。
また、レンダリング照明データベース1019は、パラメータ値取得部1018から受信した調整パラメータの値を用いて、記憶する複数の照明スペクトルデータのうち1つを選択し、出力する。具体的には、レンダリング照明データベース1019は、パラメータ値取得部1018から受信した調整パラメータの値と、インデックスとして付加された調整パラメータの値とを比較する。そして、レンダリング照明データベース1019は、記憶する複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値とパラメータ値取得部1018から受信した調整パラメータの値との差が最も小さい照明スペクトルデータを選択し、出力する。以後、レンダリング照明データベース1019で選択された照明スペクトルデータをレンダリング照明スペクトルデータ、レンダリング照明スペクトルデータの照明をレンダリング照明と呼ぶ。
【0024】
レンダリング照明演算部1013、バンド変換部1014、及び、テーブル値生成部1017により、レンダリング照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率データとを用いて、レンダリング照明下での被写体の見え方を表す画像データが生成される。
【0025】
レンダリング照明演算部1013は、レンダリング照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率データとを用いて、画素毎の反射スペクトルデータを生成する。具体的には、レンダリング照明演算部1013は、画素毎の分光反射率データにレンダリング照明スペクトルデータを乗算することで、レンダリング照明下での被写体の見え方を表すマルチバ
ンド画像データを生成する。
ユーザの希望に応じた照明スペクトルデータを用いることにより、所望の照明下におけるマルチバンド画像データを生成することができる。
ユーザが自室の照明下における被写体の見え方を再現したい場合には、レンダリング照明スペクトルデータとして自室の照明の照明スペクトルデータと同じものを選択すればよい。ユーザは、例えば、明るい照明、暗い照明、太陽光、人工光などの照明スペクトルデータの中から所望の照明スペクトルデータを選択すればよい。しかし、多種多様な照明スペクトルデータから所望の照明スペクトルデータを選択することはユーザにとって困難である。また、ユーザが所望するレンダリング照明スペクトルデータは、記憶する複数の照明スペクトルデータのうち、画像データの輝度がモニタの表示輝度と近くなるような(即ち、表示輝度の変化が最小限となるような)照明スペクトルデータである可能性が高い。そこで、本実施例では、上述したように、モニタの現在の調整パラメータの設定値を用いて、レンダリング照明スペクトルデータが決定(選択)される。それにより、ユーザの負担を招くことなく所望の照明下での被写体の見え方を表すマルチバンド画像データを得ることができる。なお、その後ユーザがレンダリング照明スペクトルデータの変更を望む場合には、ユーザの要求に従ってレンダリング照明スペクトルデータの変更が行われる。
【0026】
バンド変換部1014とテーブル値生成部1017により、レンダリング照明演算部1013で生成されたマルチバンド画像データから、クライアント装置1002(モニタ1021)で表示するための画像データ(RGB画像データ)が生成される。具体的には、クライアント装置1002(モニタ1021)の色再現特性を表すプロファイルデータを用いて、レンダリング照明演算部1013で生成されたマルチバンド画像データから、モニタ1021で表示するためのRGB画像データが生成される。色再現特性は、画像データの値(R値、G値、B値)に対して実際にどのような色が表示されるかを表す。
【0027】
バンド変換部1014は、ルックアップテーブル(変換テーブル)を用いて、レンダリング照明演算部1013で生成されたマルチバンド画像データから、モニタ1021で表示するためのRGB画像データ(忠実再現画像データ)を生成する。変換テーブルの値(テーブル値)は、テーブル値生成部1017から取得される。バンド変換部1014で生成された忠実再現画像データは、後述する通信インターフェース1015から配信される。具体的には、バンド変換部1014で生成された忠実再現画像データは、所定のフラグが付加されて配信される。
【0028】
テーブル値生成部1017は、後述するプロファイル処理部1016が記憶するモニタ1021のプロファイルデータを参照し、バンド変換部1014が有する変換テーブルにセットするテーブル値を生成する。
テーブル値は二つの変換を達成する値である。変換の一つはマルチバンド画像データからRGB画像データへの変換である。もうひとつはRGB画像データに基づく画像をモニタ1021で表示した際に、被写体の色が忠実に再現されるように、RGB画像データのRGB値をモニタ1021のプロファイルデータを用いて補正する変換である。
プロファイルデータを用いてバンド変換(マルチバンド画像データからRGB画像データへの変換)を行うことで、期待される表示色とモニタの実際の表示色との差異を打ち消すことができる。それにより、モニタ1021に被写体の色が忠実に再現された画像を表示することができる。
【0029】
プロファイル処理部1016は、通信インターフェース1015を経由してモニタ1021のプロファイルデータを取得し、記憶する。本実施例では、調整パラメータの設定値が初期値であるときのクライアント装置の色再現特性を表すプロファイルデータが取得されるものとする。
通信インターフェース1015は、サーバ1001とネットワーク回線1003とを有
線または無線で接続するインターフェースである。
【0030】
クライアント装置1002の構成を説明する。
PC1020は、サーバ1001に対してユーザが閲覧を希望する画像データを要求し、サーバ1001が送信するRGB画像データを受信し、受信したRGB画像データに基づく画像をモニタ1021に表示する。
例えば、PC1020は、閲覧ソフトを備える。ユーザは、閲覧ソフトを使用して一般のWEBサイトやマルチバンドカメラで撮影した画像が掲載されたサイト、及び、これらに含まれる動画などを閲覧することができる。
モニタ1021は、液晶ディスプレイ等を用いて画像を表示する装置であり、表示輝度や表示色を調整可能に構成されている。
なお、PC1020とモニタ1021は一体の装置であってもよいし、別体の装置であってもよい。
【0031】
モニタ1021の構成を説明する。
コントローラ1031は、モニタ1021の動作を制御する。
輝度調整部1032、色調整部1033、及び、バックライト制御部1035は、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する。調整パラメータは、PC1020で設定されてもよいし、モニタ1021に設けられた調整部で設定されてもよい。
輝度調整部1032は、PCから入力されたRGB画像データに対し、ゲイン値の乗算やオフセットの加算を行うことで、表示画像の輝度(表示輝度)を調整する。
色調整部1033は、PCから入力されたRGB画像データに対し、RGB個別にゲイン値の乗算やオフセットの加算を行うことで、表示画像のRGBのバランス(表示色)を調整する。色バランスを調整することにより、白色の色温度も調整される。
バックライト制御部1035は、表示部1034が備えるバックライトの光量を調整する。
【0032】
表示部1034は、RGB画像データに基づく画像を表示する表示デバイスである。本実施例では、表示部1034として液晶ディスプレイを用いる。
UI部1030は、ユーザの操作を受け付ける。UI部1030は、スイッチとスイッチの状態を伝達する回路によって構成される。
通信インターフェース1037は、モニタ1021とPC1020とを有線または無線で接続するインターフェースである。
コントローラ1031は、UI部1030の状態や通信インターフェース1037からの情報を取得し、モニタの動作を制御する。
【0033】
調整値制御部1038は、配信された忠実再現画像データに基づく画像を表示する際に、調整パラメータの設定値を初期値に変更する(調整パラメータの設定値の、初期値からの変更(表示特性の、初期特性からの変更)を無効とする)制御を行う。具体的には、調整値制御部1038は、配信された画像データに上述した所定のフラグが付加されていた場合に、調整パラメータの設定値を初期値に変更する。また、調整値制御部1038は、画面上の座標位置に応じて上記制御を行う。具体的には、調整値制御部1038は、PC1020から入力されるRGB画像データの同期信号をカウントし、処理対象の座標位置とコントローラ1031から入力される非初期化領域の座標位置と比較する。そして、調整値制御部1038は、比較結果を用いて出力する(設定する)調整パラメータの値を制御する。具体的には、非初期化領域では、調整パラメータの設定値がそのままとされ、それ以外の領域(初期化領域)では調整パラメータの設定値は初期値に変更される。
【0034】
このような構成のモニタによれば、ユーザは、モニタの表示特性を自分の希望に合わせて調整することが可能となる。例えば、画面が眩しく感じる場合に表示輝度を低くし、画
面が暗いと感じる場合に表示輝度を高くすることができる。表示画像の色がユーザが意図した色と異なる場合に、表示画像の色がユーザの意図した色と近くなるように、RGB各色の表示輝度を調整することができる。表示画像の色をプリンタの印刷結果(プリンタで印刷された画像の色)に近づけたい場合も、表示画像とプリンタの印刷結果とを比較しながら、それらの差異が小さくなるように、表示輝度と色バランスを調整することができる。
【0035】
ただし、本実施例では、忠実再現画像データは、調整パラメータの設定値が初期値であるときの色再現特性を表すプロファイルデータを用いて作成されている。そのため、調整パラメータの設定値が初期値から変更されている場合には、プロファイルデータで表される色再現特性が、モニタの現在の色再現特性と異なることとなる。その結果、忠実再現画像データに基づいて表示された画像の色は、期待されている色と異なることとなる。即ち、被写体の色が忠実に再現された画像を表示することができない。
そこで、本実施例では、配信された忠実再現画像データに基づく画像を表示する際に、調整パラメータの設定値を初期値に変更する。それにより、被写体の色が忠実に再現された画像を表示することができる(期待されている色をモニタが表示する色を一致させることができる)。
【0036】
次に、本実施例に係る画像表示システムの動作を説明する。
PC1002は、ユーザ操作に応じて、サーバ1001から所望の画像データを取得する。そして、PC1002は、取得した画像データに基づく画像をモニタ1021に表示する。
このとき、PC1002は、モニタ1021のプロファイルデータと現在の調整パラメータの設定値をサーバ1001に転送する。サーバ1001は、これらの値を用いて、クライアント装置1002に対して送信する画像データを生成する。
【0037】
次に、サーバ1001の動作を詳細に説明する。図2はサーバ1001の動作の流れを示す。サーバ1001は、クライアント装置1002からの画像データの取得要求に応じて、図2の処理を開始する。
まず、コントローラ1010は、クライアント装置1002に対してモニタのプロファイルデータを要求する(S1101)。PC1020は、当該要求に応じて、モニタ1021のプロファイルデータをサーバ1001に対して送信する。送信されたプロファイルデータは、プロファイル処理部1016に記憶される。そして、コントローラ1010がテーブル値生成部1017を制御することにより、プロファイル処理部1016に記憶されたプロファイルデータを用いたテーブル値の生成が行われる。
【0038】
次に、コントローラ1010は、クライアント装置1002に対して現在の調整パラメータの設定値の送信を要求する(S1102)。PC1020は、当該要求に応じて、現在の調整パラメータの設定値をモニタ1021から取得し、これをサーバ1001に対して送信する。PC1020内にモニタ1021の調整パラメータが記憶されている場合は、PC1002は、該調整パラメータをサーバ1001に対して送信する。送信された調整パラメータの値は、パラメータ値取得部1018に記憶される。本実施例では、調整パラメータの値として、輝度調整値と色温度調整値が取得される。輝度調整値は、RGB画像データのR値、G値、B値それぞれが最大値のときの表示輝度を表す値である。色温度調整値は白色を示すR値、G値、B値から得られる色温度である。なお、色温度調整値は、白色を示すR値、G値、B値であってもよい。
【0039】
そして、コントローラ1010がレンダリング照明データベースを制御することにより、レンダリング照明データベース1019に記憶されている照明スペクトルデータの1つがレンダリング照明スペクトルデータとして選択される(S1103)。
具体的には、パラメータ値取得部1018に記憶された調整パラメータの値に最も近い調整パラメータの値が対応付けられた照明スペクトルデータがレンダリング照明スペクトルデータとして選択される。
それにより、例えば、輝度調整値が高い場合はレンダリング照明スペクトルデータとして明るい照明の照明スペクトルデータが選択される。輝度調整値が低い場合は暗い照明の照明スペクトルデータが選択される。色温度調整値が高い場合は青みが強い照明の照明スペクトルデータが選択される。色温度調整値が低い場合は赤みが強い照明の照明スペクトルデータが選択される。
【0040】
選択されたレンダリング照明スペクトルデータは、レンダリング照明データベース1019からレンダリング照明演算部1013に供給される。コントローラ1010がレンダリング照明演算部1013を制御することにより、分光反射率データにレンダリング照明スペクトルデータが乗算される。それにより、レンダリング照明下における被写体の見え方を正確に再現したマルチバンド画像データが生成される。ここで、分光反射率データは、分光反射率データ生成部1012がクライアント装置1002への送信対象のマルチバンド画像データを撮影時の照明スペクトルデータで除算することにより生成したデータである。
【0041】
次に、コントローラ1010がバンド変換部1014を制御することにより、S1101で生成されたテーブル値を用いた、S1103で生成されたマルチバンド画像データからRGB画像データ(忠実再現画像データ)への変換が行われる(S1104)。
そして、コントローラ1010は、忠実再現フラグに「true」をセットし、忠実再現フラグ「true」をS1104で生成されたRGB画像データ(忠実再現画像データ)に付加する(S1105)。忠実再現フラグは、画像データが忠実再現画像データか否かを示すフラグである。なお、送信対象の画像データが被写体の色を忠実に再現する必要のない画像データである場合には、忠実再現フラグに「false」がセットされ、画像データに付加される。
次に、コントローラ1010が通信インターフェース1015を制御することにより、クライアント装置に対して、S1105で忠実再現フラグが付加されたRGB画像データが送信される(S1106)。
【0042】
次に、図3を用いてクライアント装置1002の動作を詳細に説明する。図3はクライアント装置1002の動作の流れを示す。クライアント装置1002は、ユーザからの画像の表示要求に応じて、図3の処理を行う。例えば、ユーザが閲覧ソフトを用いて画像の閲覧を指示した場合、PCが図3の画像表示処理を開始し、モニタに画像を表示する。そして、PCは、ユーザからの次の指示を待つ。
【0043】
まず、PC1020は、サーバ1001に対して画像データを要求する(S1201)。
先に説明したように、サーバ1001はクライアント装置から画像データの要求を受けた場合、モニタのプロファイルデータとモニタの現在の調整パラメータの設定値を送信することをクライアント装置に対して要求する。
PC1020はS1202においてサーバからの要求を待つ。
サーバからプロファイルデータの送信要求があった場合は、PCはプロファイルデータをサーバ1001に対して送信する(S1204)。
サーバから現在の調整パラメータの設定値の送信要求があった場合は、PC1020は現在の調整パラメータの設定値をサーバ1001に対して送信する(S1205)。
サーバから画像データの受信要求があった場合は、PCはサーバ1001からの画像データを受信する(S1203)。
【0044】
S1203の次に、PCは、受信した画像データに付加されている忠実再現フラグを参照して、表示する画像データ(受信した画像データ)が忠実再現画像データであるか否かを判断する(S1206)。
【0045】
忠実再現フラグ「true」が付加されていた場合、PC1020は、モニタ1021に対してユーザ調整の無効化(調整パラメータの設定値の初期化)を指示する(S1207)。この指示は通信インターフェース1037を経由してモニタ1021のコントローラ1031に伝達される。コントローラ1031が調整値制御部1038を制御することにより、輝度調整部1032と色調整部1033とバックライト制御部1035に対して調整パラメータの設定値が初期値に変更される。これにより、モニタ1021の色再現特性と、先に送ったプロファイルデータで表される色再現特性とが一致する。
しかしながら、画像全体に対して調整パラメータの設定値の初期化を行うと、サーバから受信した画像データに基づく画像の表示領域以外の領域の表示特性が突然変化してしまうため、ユーザに不快感を与えてしまう虞がある。
そこで、本実施例では、コントローラ1031が忠実再現画像データの表示領域(またはそれ以外の領域)を判断する。そして、調整値制御部1038が、忠実再現画像データの表示領域に対してのみ、調整パラメータの設定値の初期化を行う。図4の符号1501は忠実再現画像データに基づく画像の表示領域で、調整パラメータの設定値の初期化が行われる領域(初期化領域)である。図4の符号1502はGUIの表示領域で、調整パラメータの設定値の初期化が行われない領域(非初期化領域)である。
忠実再現フラグ「false」が付加されていた場合は、PC1020は、モニタ1021に対してユーザ調整の有効化を指示する(S1208)。ユーザ調整の有効化が指示された場合には、調整パラメータの設定値はそのままとされる。
【0046】
S1207またはS1208の次に、PCは、サーバ1001から受信した画像データに基づく画像をモニタ1021(表示部1034)に表示する(S1209)。
そして、PC1020は、ユーザによる表示輝度や表示色の再調整を受け付ける(S1210)。例えば、ユーザは、表示された画像の輝度や色が期待通りとなるように、表示された画像を確認しながら調整パラメータの設定値を変更する。
【0047】
調整パラメータの設定値の変更があった場合、PC1020は、変更後の値をサーバ1001に対して送信し(S1211)、S1202へ処理が戻される。S1210からS1211を経由してS1209に至る処理ループにより、更新された調整パラメータの設定値に応じた画像(期待通りの画像)を表示することができる。例えば、忠実再現画像データを表示しているときに、調整パラメータの設定値が変更された場合には、サーバで、変更後の調整パラメータの設定値を用いてレンダリング照明スペクトルデータが再選択される。そして、再選択されたレンダリング照明スペクトルデータを用いて忠実再現画像データが生成され、配信される。その後、クライアント装置で、調整パラメータの設定値が初期値に変更され、配信された忠実再現画像データに基づく画像が表示される。また、忠実再現画像データではない一般の画像データを表示しているときに、調整パラメータの設定値が変更された場合には、調整パラメータの設定値はそのまま(変更後の値)とされ、一般の画像データに基づく画像が表示される。
調整パラメータの設定値の変更が無かった場合、PC1020は、S1212でユーザから画像の表示の終了が指示されるまで、画像の表示を行う。画像の表示の終了が指示された場合には、PCは、本フローを終了する。
【0048】
以上述べたように、本実施例によれば、レンダリング照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率のデータとを用いて、レンダリング照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データが生成される。即ち、被写体の光学特性が正確に再現された画像データが生成される。それにより、被写体の色が忠実に再現可能な画像データを生成
することができる。具体的には、本実施例では、クライアント装置の色再現特性を表すプロファイルデータを用いて、画素毎の反射スペクトルデータから、クライアント装置で表示するための画像データが生成され、該生成された画像データに基づく画像が表示される。それにより、被写体の色が忠実に再現された画像を表示することができる。
また、本実施例によれば、記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値とモニタの現在の調整パラメータの値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータが、レンダリング照明スペクトルデータとして選択される。それにより、ユーザが所望のレンダリング照明スペクトルデータを選択する手間を省略することができ、ユーザの負担を招くことなく、所望の照明下での被写体の色が忠実に再現された画像をモニタに表示することができる。
【0049】
なお、モニタの表示特性を画像データ配信者が画像データ作成時に想定した表示特性と同じ表示特性とすれば、被写体の色が忠実に再現された画像を表示することができる。しかしながら、モニタの表示特性のみを変更する構成では、表示輝度の急激な変化などを招くことがある。例えば、ユーザが一般的なコンテンツ(webやtext等)を暗めの設定で見ている状態から、高輝度画像(高輝度な照明の下で撮影された被写体の画像など)の表示を開始すると、モニタの表示輝度が低い値から高い値に急激に遷移してしまう。このようにモニタの表示輝度が急激に変化すると、ユーザは強い刺激を受け、不快に感じる。
本実施例によれば、クライアント装置の現在の調整パラメータの設定値をもとに、レンダリング照明スペクトルデータが決定される。そして、レンダリング照明下での被写体の見え方を表す画像データが生成され、表示される。具体的には、調整パラメータの設定値が暗めの値であった場合には、暗い照明下での被写体の見え方を表す画像データが生成され表示される。調整パラメータの設定値が表示色の赤のレベルを相対的に高くするような値であった場合には、赤色が強い照明下での被写体の見え方を表す画像データが生成され表示される。それにより、モニタの表示特性の急激な変化を抑制することができる。例えば、表示対象として、明るい照明の下で撮影することにより得られたマルチバンド画像データが選択された場合に、高輝度の画像が突然表示されることを抑制することができる。ひいては、ユーザに不快感を与えることを抑制することができる。
【0050】
なお、本実施例では、クライアント装置からプロファイルデータを取得する構成としたが、プロファイルデータはサーバに予め記憶されていてもよい。
なお、本実施例では、調整パラメータの設定値が初期値であるときのクライアント装置の色再現特性を表すプロファイルデータを用いる構成としたが、プロファイルデータはこれに限らない。例えば、現在の調整パラメータの設定値のときのクライアント装置の色再現特性を表すプロファイルデータを用いる構成であってもよい。そのような構成の場合には、忠実再現画像データを表示する際に調整パラメータの設定値を初期値に変更する処理は行わない。
なお、本実施例では、色バランスを調整することによりモニタの表示色が調整される場合について説明したが、白色の色温度を調整することによりモニタの表示色が調整される構成であってもよい。
【0051】
<実施例2>
以下、本発明の実施例2に係る画像表示システム及びその制御方法について説明する。実施例1では、サーバが忠実再現画像データの補正(照明成分の変更)を行うものとしたが、本実施例では、クライアント装置が忠実再現画像データの補正を行う。
【0052】
図5を用いて実施例2に係る画像表示システムの構成を説明する。
マルチバンドカメラ1000、ネットワーク回線1003、モニタ1021は実施例1と同様であるため説明を省略する。
サーバ2001は、画素毎の分光反射率データを配信する。
PC2002は、配信された画素毎の分光反射率のデータから画像データを生成し、生成した画像データに基づく画像をモニタ1021に表示する。具体的には、PC2002は、ユーザ操作に応じてサーバに対して分光反射率データを要求する。そして、サーバから受信した分光反射率データからRGB画像データを生成し、生成したRGB画像データに基づく画像をモニタ1021に表示する。
【0053】
サーバ2001の構成を説明する。
分光反射率データ生成部2011は、分光反射率データ生成部1012と同様に、マルチバンドカメラから取得したマルチバンド画像データと撮影条件データ(照明スペクトルデータ)とから、画素毎の分光反射率データを生成する。
ストレージ2012は、分光反射率データ生成部2011で生成された分光反射率データを記憶する。ストレージ2012は、クライアント装置から要求を受けた場合に、記憶した分光反射率データを出力する。ストレージ2012から出力された分光反射率データは、通信インターフェース2013からクライアント装置へ配信される。
通信インターフェース2013は、サーバとネットワーク回線とを有線または無線で接続するインターフェースであり、クライアント装置からの要求を受信し、クライアント装置に対して分光反射率データを配信する。具体的には、画素毎の分光反射率データは、所定のフラグが付加されて配信される。
コントローラ2010はサーバの各機能部(構成要素)を制御する。
【0054】
PC2002の構成を説明する。
通信インターフェース2021は、PCとネットワーク回線とを有線または無線で接続するインターフェースである。通信インターフェース2021は、サーバ2001に対して分光反射率データの送信を要求し、サーバ2001が送信する分光反射率データを受信する。
通信インターフェース2024は、PCとモニタを有線または無線で接続するインターフェースである。
【0055】
パラメータ値取得部2027は、通信インターフェース2024を経由して、モニタの現在の調整パラメータの値を取得する。そして、パラメータ値取得部2027は、取得した値をレンダリング照明データベース2028に送信する。
【0056】
レンダリング照明データベース2028は、複数の照明スペクトルデータを、モニタに設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶する記憶部である。具体的には、調整パラメータの値がインデックスとして付加された照明スペクトルデータが、レンダリング照明データベース2028に記憶されている。複数の照明スペクトルデータは、輝度値、色温度、スペクトル特性などが異なる複数の照明スペクトルである。
また、レンダリング照明データベース2028は、パラメータ値取得部2027から受信した調整パラメータの値を用いて、記憶する複数の照明スペクトルデータのうち1つを選択し、出力する。具体的には、レンダリング照明データベース2028は、パラメータ値取得部2027から受信した調整パラメータの値と、インデックスとして付加された調整パラメータの値とを比較する。そして、レンダリング照明データベース2028は、記憶する複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値とパラメータ値取得部2027から受信した調整パラメータの値との差が最も小さい照明スペクトルデータを選択し、出力する。
【0057】
レンダリング照明演算部2022、バンド変換部2023、及び、テーブル値生成部2026により、レンダリング照明スペクトルデータと、配信された画素毎の分光反射率データとを用いて、レンダリング照明下での被写体の見え方を表す画像データが生成される
。生成された画像データはモニタへ出力される。それにより、モニタにおいて、上記生成された画像データに基づく画像が表示される。
【0058】
レンダリング照明演算部2022は、レンダリング照明スペクトルデータと、配信された画素毎の分光反射率データとを用いて、画素毎の反射スペクトルデータ(マルチバンド画像データ)を生成する。
【0059】
バンド変換部2023とテーブル値生成部2026により、レンダリング照明演算部2022で生成されたマルチバンド画像データから、モニタ1021で表示するための画像データ(RGB画像データ)が生成される。具体的には、モニタ1021の色再現特性を表すプロファイルデータを用いて、レンダリング照明演算部2022で生成されたマルチバンド画像データから、モニタ1021で表示するためのRGB画像データが生成される。
【0060】
バンド変換部2023は、ルックアップテーブル(変換テーブル)を用いて、レンダリング照明演算部2022で生成されたマルチバンド画像データから、モニタ1021で表示するためのRGB画像データ(忠実再現画像データ)を生成する。変換テーブルの値(テーブル値)は、テーブル値生成部2026から取得される。バンド変換部2023で生成された忠実再現画像データは、通信インターフェース2024からモニタ1021へ出力される。
テーブル値生成部2026は、後述するプロファイル処理部2025が記憶するモニタ1021のプロファイルデータを参照し、バンド変換部2023が有する変換テーブルにセットするテーブル値を生成する。
【0061】
プロファイル処理部2025は、通信インターフェース2024を経由してモニタ1021のプロファイルデータを取得し、記憶する。本実施例では、調整パラメータの設定値が初期値であるときのクライアント装置の色再現特性を表すプロファイルデータが取得されるものとする。
【0062】
次に、本実施例に係る画像表示システムの動作を説明する。
PC2002は、ユーザ操作に応じて、サーバ2001から所望の分光反射率データを取得する。そして、PC2002は、取得した分光反射率データからRGB画像データを生成し、生成した画像データに基づく画像をモニタ1021に表示する。
【0063】
次に、サーバ2001の動作を詳細に説明する。図6はサーバ2001の動作の流れを示す。サーバ2001は、クライアント装置からの分光反射率データの取得要求に応じて、図6の処理を開始する。
コントローラ2010は、忠実再現フラグに「true」をセットし、画素毎の分光反射率データ(クライアント装置から要求されたデータ)に付加する(S2101)。
そして、コントローラ2010は、忠実再生フラグ「true」が付加された画素毎の分光反射率データをクライアント装置へ送信する(S2102)。データの送信が完了すると、コントローラ2010は本フロー(画像配信処理)を終了する。
【0064】
次に、PC2002の動作を詳細に説明する。図7はPC2002の動作の流れを示す。
まず、コントローラ2020は、モニタ1021に対してモニタのプロファイルデータを要求する(S2201)。モニタ1021は、当該要求に応じて、モニタ1021のプロファイルデータをPC2002に対して送信する。送信されたプロファイルデータは、プロファイル処理部2025に記憶される。
【0065】
そして、コントローラ2020がテーブル値生成部2026を制御することにより、プロファイル処理部2025に記憶されたプロファイルデータを用いたテーブル値の生成が行われる(S2202)。
次に、コントローラ2020は、モニタ1021に対して現在の調整パラメータの設定値の送信を要求する(S2203)。モニタ1021は、当該要求に応じて、現在の調整パラメータの設定値を、PC2002に対して送信する。送信された値は、パラメータ値取得部2027に記憶される。
【0066】
そして、コントローラ2020がレンダリング照明データベース2028を制御することにより、レンダリング照明データベースに記憶されている照明スペクトルデータの1つがレンダリング照明スペクトルデータとして選択される(S2204)。
次に、コントローラ2020は、サーバ2001に対して分光反射率データの送信を要求し(S2205)、サーバ2001が分光反射率データの送信準備を完了することを待つ(S2206)。
サーバ2001の分光反射率データの送信準備が完了すると、PC2002には、画素毎の分光反射率データが入力される(S2207)。
【0067】
次に、コントローラ2020は、受信した分光反射率データに付加されている忠実再現フラグを参照して、受信した分光反射率データが、色を忠実に再現して表示すべきデータか否かを判断する(S2208)。
【0068】
忠実再現フラグ「true」が付加されていた場合、コントローラ2020は、モニタ1021に対してユーザ調整の無効化を指示する(S2209)。この指示は通信インターフェース2024を経由してモニタ1021のコントローラ1031に伝達される。コントローラ1031が調整値制御部1038を制御することにより、輝度調整部1032と色調整部1033とバックライト制御部1035に対して調整パラメータの設定値が初期値に変更される。これにより、モニタ1021の色再現特性と、先に送ったプロファイルデータで表される色再現特性とが一致する。
忠実再現フラグ「false」が付加されていた場合は、コントローラ2020は、モニタ1021に対してユーザ調整の有効化を指示する(S2210)。
【0069】
S2209またはS2210の次に、コントローラ2020がレンダリング照明演算部2022及びバンド変換部2023制御することにより、RGB画像データが生成され、モニタ1021に該RGB画像データに基づく画像が表示される(S2211)。具体的には、S2207で取得された画素毎の分光反射率データからRGB画像データが生成される。
【0070】
そして、コントローラ2020は、ユーザによる表示輝度や表示色の再調整を受け付ける(S2212)。
調整パラメータの設定値の変更があった場合、コントローラ2020は、変更後の値をパラメータ値取得部2027に記憶し、処理を2204に進める。それにより、新たに設定された調整パラメータの値を用いてレンダリング照明スペクトルデータが選択され、該デーの照明下での被写体の見え方を表す画像データが生成される。
S2212からS2214を経由してS2211に至る処理ループにより、更新された調整パラメータの設定値に応じた画像(期待通りの画像)を表示することができる。
調整パラメータの設定値の変更が無かった場合、コントローラ2020は、S2213でユーザから画像の表示の終了が指示されるまで、画像の表示を行う。画像の表示の終了が指示された場合には、コントローラ2020は、本フローを終了する。
【0071】
以上述べたように、本実施例によれば、実施例1と同様に、ユーザの負担を招くことな
く、所望の照明下での被写体の色が忠実に再現された画像をモニタに表示することができる。また、モニタの表示特性の急激な変化を抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1001,2001 サーバ
1002 クライアント装置
1013,2022 レンダリング照明演算部
1014,2023 バンド変換部
1015 通信インターフェース
1017,2026 テーブル値生成部
1018 パラメータ値取得部
1019,2028 レンダリング照明データベース
1032 輝度調整部
1033 色調整部
1034 表示部
1035 バックライト制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを配信するサーバと、配信された画像データに基づく画像を表示するクライアント装置とからなる画像表示システムであって、
前記クライアント装置は、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する機能を有するものであり、
前記サーバは、
複数の照明スペクトルデータを、前記クライアント装置に設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶する記憶手段と、
前記クライアント装置の現在の調整パラメータの設定値を取得する取得手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と前記取得手段で取得された調整パラメータの値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された画像データを前記クライアント装置に配信する配信手段と、を有する
ことを特徴とする画像表示システム。
【請求項2】
前記生成手段は、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率のデータとを用いて、画素毎の反射スペクトルデータを生成し、
前記クライアント装置の色再現特性を表すプロファイルデータを用いて、前記画素毎の反射スペクトルデータから、前記クライアント装置で表示するための画像データを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示システム。
【請求項3】
前記プロファイルデータは、調整パラメータの設定値が初期値であるときのクライアント装置の色再現特性を表すプロファイルデータであり、
前記クライアント装置は、
前記配信手段で配信された画像データに基づく画像を表示する際に、調整パラメータの設定値を初期値に変更する変更手段
を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示システム。
【請求項4】
前記配信手段は、前記生成手段で生成された画像データを、フラグを付加して配信し、前記変更手段は、配信された画像データに前記フラグが付加されていた場合に、調整パラメータの設定値を初期値に変更する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像表示システム。
【請求項5】
画素毎の分光反射率のデータを配信するサーバと、配信された画素毎の分光反射率のデータから画像データを生成し、生成した画像データに基づく画像を表示するクライアント装置とからなる画像表示システムであって、
前記クライアント装置は、
設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する調整手段と、
複数の照明スペクトルデータを、設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と現在の調整パラメータの設定値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを
選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、配信された画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
を有する
ことを特徴とする画像表示システム。
【請求項6】
前記生成手段は、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、配信された画素毎の分光反射率のデータとを用いて、画素毎の反射スペクトルデータを生成し、
色再現特性を表すプロファイルデータを用いて、前記画素毎の反射スペクトルデータから、前記表示手段で表示するための画像データを生成する
ことを特徴とする請求項5に記載の画像表示システム。
【請求項7】
前記プロファイルデータは、調整パラメータの設定値が初期値であるときの色再現特性を表すプロファイルデータであり、
前記クライアント装置は、
前記表示手段が前記生成手段で生成された画像データに基づく画像を表示する際に、調整パラメータの設定値を初期値に変更する変更手段
を更に有する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像表示システム。
【請求項8】
前記サーバは、画素毎の分光反射率のデータを、フラグを付加して配信し、
前記変更手段は、配信された画素毎の分光反射率のデータに前記フラグが付加されていた場合に、調整パラメータの設定値を初期値に変更する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像表示システム。
【請求項9】
配信された画像データに基づく画像を表示するクライアント装置に画像データを配信するサーバであって、
前記クライアント装置は、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する機能を有するものであり、
前記サーバは、
複数の照明スペクトルデータを、前記クライアント装置に設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶する記憶手段と、
前記クライアント装置の現在の調整パラメータの設定値を取得する取得手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と前記取得手段で取得された調整パラメータの値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された画像データを前記クライアント装置に配信する配信手段と、を有する
ことを特徴とするサーバ。
【請求項10】
配信された画素毎の分光反射率のデータから画像データを生成し、生成した画像データに基づく画像を表示するクライアント装置であって、
設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する調整手段と、
複数の照明スペクトルデータを、設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶する
記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と現在の調整パラメータの設定値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された照明スペクトルデータと、配信された画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成手段と、
前記生成手段で生成された画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
を有する
ことを特徴とするクライアント装置。
【請求項11】
画像データを配信するサーバと、配信された画像データに基づく画像を表示するクライアント装置とからなる画像表示システムの制御方法であって、
前記クライアント装置は、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する機能を有するものであり、
前記サーバが、前記クライアント装置の現在の調整パラメータの設定値を取得する取得ステップと、
前記サーバが、記憶部に記憶された複数の照明スペクトルデータであって、前記クライアント装置に設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と前記取得ステップで取得された調整パラメータの値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択ステップと、
前記サーバが、前記選択ステップで選択された照明スペクトルデータと、画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成ステップと、
前記サーバが、前記生成ステップで生成された画像データを前記クライアント装置に配信する配信ステップと、
を有する
ことを特徴とする画像表示システムの制御方法。
【請求項12】
画素毎の分光反射率のデータを配信するサーバと、配信された画素毎の分光反射率のデータから画像データを生成し、生成した画像データに基づく画像を表示するクライアント装置とからなる画像表示システムの制御方法であって、
前記クライアント装置が、設定された調整パラメータの値を用いて表示特性を調整する調整ステップと、
前記クライアント装置が、記憶部に記憶された複数の照明スペクトルデータであって、設定可能な調整パラメータの値と対応付けて記憶された複数の照明スペクトルデータのうち、対応する調整パラメータの値と現在の調整パラメータの設定値との差がもっとも小さい照明スペクトルデータを選択する選択ステップと、
前記クライアント装置が、前記選択ステップで選択された照明スペクトルデータと、配信された画素毎の分光反射率のデータとを用いて、該照明スペクトルデータの照明下での被写体の見え方を表す画像データを生成する生成ステップと、
前記クライアント装置が、前記生成ステップで生成された画像データに基づく画像を表示する表示ステップと、
を有する
ことを特徴とする画像表示システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−253745(P2012−253745A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−81127(P2012−81127)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】