説明

画像記録装置

【課題】 電磁誘導加熱方式の特徴を生かすことで、例えば個々的な転写デバイスを省略する等、像転写のための装置構成を簡略化する。
【解決手段】 像担持体2上に未定着像Tを形成担持する作像手段1と、この作像手段1の像担持体2に対向配置され、電磁誘導発熱層3bを有し且つ未定着像Tを担持搬送する像担持搬送体3と、この像担持搬送体3の電磁誘導発熱層3bを転写バイアス印加用電極4aとし、少なくとも作像手段1の像担持体2と電磁誘導発熱層3bとの間に転写電界を形成した状態で、像担持体2上に形成された未定着像Tを像担持搬送体3側に転写する像転写手段4と、像担持搬送体3の電磁誘導発熱層3bを電磁誘導加熱して像担持搬送体3上の未定着像Tを溶融する電磁誘導加熱手段5と、この電磁誘導加熱手段5にて像担持搬送体3上で溶融した未定着像Tを記録材7上に転写、定着する定着手段6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁誘導加熱方式を用いた画像記録装置に係り、特に、作像手段の像担持体上の未定着像を像担持搬送体側に一次転写した後に記録材上に転写定着する態様の画像記録装置の改良に関する。
【従来の技術】
【0002】従来における中間転写型の画像記録装置として、例えばタンデム型を例に挙げると、各色成分画像形成用の複数の作像ユニット(例えば電子写真方式を採用)を配設し、各作像ユニットの感光体ドラムなどの像担持体に対向する部位に中間転写ベルトを循環移動可能に設け、各作像ユニットに対応した中間転写ベルトの裏面には夫々コロトロンやバイアスロールなどの転写デバイスを配設し、像担持体上のトナー像を中間転写ベルト上に一次転写した後に記録材としての用紙に転写、定着するようにしたものが既に提供されている(例えば特開平6−161286号公報参照)。一方、電磁誘導発熱層(例えば導電層)を有する被加熱体を電磁誘導加熱する電磁誘導加熱装置も例えば定着装置などに利用される形で既に知られている(例えば特開平10−301415号公報参照)。
【0003】本件出願人は、中間転写ベルトなどの像担持搬送体に電磁誘導発熱層を設けることで、電磁誘導加熱装置を画像記録装置に適用したものを提案した。すなわち、本件出願人は、電磁誘導発熱層を有し且つ未定着像が担持搬送される中間転写ベルトなどの像担持搬送体と、この像担持搬送体に担持されるトナー像を形成する作像ユニットと、像担持搬送体の移動方向と直交する方向に沿って当該像担持搬送体に対向配置され且つ像担持搬送体の電磁誘導加熱装置に対向する部位の下流位置に配設され且つ像担持搬送体上で溶融した未定着像を記録材としての用紙上に転写、定着する転写デバイスとを備えた画像記録装置を提案した(例えば特願平10−172242号参照)。
【0004】しかしながら、この種の電磁誘導加熱方式を採用した画像記録装置にあっては、中間転写ベルトの電磁誘導発熱層はあくまで電磁誘導によって発熱するものであり、中間転写ベルト上のトナー像を溶融するための加熱用として用いられているに過ぎない。従って、この種の画像記録装置にあっては、加熱用としての一つの用途のみのために、中間転写ベルトに電磁誘導発熱層を設けることが行われていたことになり、それ以外の用途においては、前記電磁誘導発熱層を何かに利用しようという着想は全く見られなかった。例えば各作像ユニットの像担持体上の未定着像を像担持搬送体側に転写するための像転写手段としては、各作像ユニット毎にコロトロンやバイアスロールなどの転写バイアスを配設する構成が必要不可欠であり、各転写デバイスにて像担持体上のトナー像の転写性を良好に保つ工夫をせざるを得なかった。尚、このような技術的課題は、特にタンデム型の画像記録装置で顕著であるが、例えば一つの作像ユニットの像担持体を複数回回転させる作像サイクルの所謂複数サイクル型の画像記録装置についても同様に生ずるものである。
【0005】本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、電磁誘導加熱方式の特徴を生かすことで、例えば個々的な転写デバイスを省略する等、像転写のための装置構成を簡略化することを可能とした画像記録装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、図1(a)〜(c)に示すように、像担持体2上に未定着像Tを形成担持する作像手段1と、この作像手段1の像担持体2に対向配置され、電磁誘導発熱層3bを有し且つ未定着像Tを担持搬送する像担持搬送体3と、この像担持搬送体3の電磁誘導発熱層3bを転写バイアス印加用電極4aとし、少なくとも作像手段1の像担持体2と電磁誘導発熱層3bとの間に転写電界を形成した状態で、像担持体2上に形成された未定着像Tを像担持搬送体3側に転写する像転写手段4と、像担持搬送体3の移動方向に直交する方向に沿って当該像担持搬送体3に対向配置され且つ像担持搬送体3の電磁誘導発熱層3bを電磁誘導加熱して像担持搬送体3上の未定着像Tを溶融する電磁誘導加熱手段5と、この電磁誘導加熱手段5にて像担持搬送体3上で溶融した未定着像Tを記録材7上に転写、定着する定着手段6とを備えたことを特徴とする画像記録装置である。
【0007】このような技術的手段において、本願の適用対象は、作像手段1の像担持体2に対向する像担持搬送体3を具備するものであれば、例えば図1(a)に示すように、複数の作像手段1の各像担持体2(具体的には2a〜2d)を並列配置した所謂タンデム型の画像記録装置であってもよいし、あるいは、単一の作像手段1の像担持体2を複数回回転させる所謂複数サイクル型の画像記録装置であってもよいし、あるいは、タンデム型と複数サイクル型とを混合した例えば2連タンデム型の画像記録装置など適宜選定して差し支えない。また、作像手段1については未定着像Tを像担持体2上に形成担持するものであれば、電子写真方式、静電記録方式など適宜選定して差し支えなく、像担持体2の形態についてもドラム状、ベルト状を問わない。更に、像担持搬送体3については、少なくとも電磁誘導発熱層3bを具備していればよく、その形態についてもドラム状、ベルト状を問わない。ここで、電磁誘導発熱層3bとは、電磁誘導加熱手段5から生成される変動磁界Hによって渦電流Icを発生させ、この渦電流Icによって発熱(ジュール熱)するものであれば、導電性金属を始め適宜選定して差し支えない。
【0008】また、像担持搬送体3としては、像担持搬送体3の剛性や記録材7への転写性などを考慮すると、ある程度の剛性を確保する基層3aと、この基層3aの上に積層された電磁誘導発熱層3bと、この電磁誘導発熱層3bの上に積層されて記録材7への転写性を良好に保つ離型層3cとを備えたものが好ましい。この場合において、離型層3cとしては特に弾性を具備しなくても差し支えないが、未定着像Tの記録材7への転写性をより良好に保つという観点からすれば、弾性離型層を用いることが好ましい。ここで、弾性離型層としては、弾性層の表面に離型層を積層した態様であってもよいし、離型層そのものが弾性を具備した態様であってもよい。更に、未定着像Tの転写性をより良好に保つという観点からすれば、基層3a及び離型層3cの少なくともいずれか一方が半導電性であることが好ましく、両者が共に絶縁性である場合には転写バイアスを非常に大きく設定しなければならない点で好ましくない。
【0009】更にまた、像担持搬送体3の電磁誘導発熱層3bの裏面側に図示外の放熱部材(例えば導電性張架ロールや導電性ドラムなど)を具備した態様にあっては、不必要な放熱を防ぎ、電磁誘導発熱層3bによる加熱効率を良好に保つという観点からすれば、電磁誘導発熱層3bと放熱部材との間に断熱層を介在させる態様が好ましい。この場合において、断熱層は像担持搬送体3側若しくは放熱部材側のいずれに設けても差し支えない。
【0010】また、本発明の像転写手段4は、作像手段1の像担持体2と像担持搬送体3の電磁誘導発熱層3bとの間にのみ転写電界を形成する態様に限られるものではなく、これに加えて、既存の転写デバイスを付加する態様をも含む。但し、像転写手段4の構成を簡略化するという観点からすれば、既存の転写デバイスを省略し、作像手段1の像担持体2と電磁誘導発熱層3bとの間にのみ転写電界を形成する態様が好ましい。ここで、像担持搬送体3の電磁誘導発熱層3bへの通電構造としては適宜選定して差し支えないが、代表的構造としては、像担持搬送体3の電磁誘導発熱層3bの少なくとも一部を像担持搬送体3の表面若しくは裏面に露出配置し、この露出部を転写バイアスが印加される給電部としたものが挙げられる。
【0011】更に、像転写手段4の可能な転写条件としては、例えば電磁誘導発熱層3bに対し未定着像Tと逆極性で且つ0.2〜5kVの定電圧、好ましくは0.2〜3kVの定電圧からなる転写バイアスを印加したものや、電磁誘導発熱層3bから作像手段1の像担持体2に流れる電流が定電流で1〜200μA、好ましくは1〜30μAとなるような転写バイアスを印加するものが挙げられる。
【0012】また、電磁誘導加熱手段5としては、電磁誘導発熱層3bを貫く変動磁界Hを生成するものであれば適宜選定して差し支えなく、通常磁性コア5aの周囲に励磁コイル5bを巻回させる態様のものが多く用いられる。ここで、磁性コア5aについては磁性を有するものであればフェライトを始め適宜選定して差し支えなく、その構成についても、単一のブロック構成でもよいが、電磁誘導加熱手段5が長尺な態様である場合には、製造のし易さを考慮し、磁性コア5aを複数のコアブロックに分割形成し、これを並列配置して長尺な態様にするのが好ましい。そしてまた、磁性コア5aの形状については適宜選定して差し支えないが、生成される変動磁界Hを電磁誘導発熱層3b側へ集中して導き、それ以外の箇所への変動磁界Hの放出を極力回避するという構成、例えば磁性コア5a及び励磁コイル5bを支持する台座の裏面側に磁路形成部材を設けるようにしたり、磁性コア5aの形状を電磁誘導発熱層3bに対向して開口する断面E型形状とし、中央コア部に励磁コイル5bを巻回すると共に、周辺コア部をシールド壁として機能させるなどの構成を採用することが好ましい。また、励磁コイル5bの巻回方法については適宜選定して差し支えなく、例えば複数のコアブロックにて磁性コア5aを構成した態様では、各ブロック毎に励磁コイル5bを巻回しても差し支えないが、励磁コイル5bへの通電を制御する励磁回路の構成をより簡略化するという観点からすれば、各コアブロックの少なくとも二以上に跨って巻回する態様が好ましい。
【0013】また、先行技術として、像担持体とローラーとの間の転写部位に導電性基体上に導電性離型層が形成された中間転写体を圧接配置し、中間転写体の導電性基体上に転写電圧を印加することによって、像担持体から中間転写体上に画像を転写するようにした技術が提供されている(例えば特開平5−303293号公報参照)。しかしながら、この先行技術は、電磁誘導加熱方式を採用した画像記録装置と全く無関係であり、しかも、導電性基体及び導電性離型層を有する中間転写体が前提となっている。このため、この先行技術からは、像担持搬送体の電磁誘導発熱層を転写バイアス印加用電極として利用しようという着想は全く想定されず、仮に、電磁誘導加熱方式を利用した画像記録装置が公知であるとしても、両者を組み合わせるべき動機付けは何ら見い出せない。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に示す実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1図2は実施の形態1に係る画像記録装置を示す概略構成図である。同図において、この画像記録装置は、周面が周回移動する中間転写ベルト55を備えており、この中間転写ベルト55と対向する位置に、それぞれ、イエロ、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像を形成する4台の作像ユニット57(具体的には57Y,57M,57C,57K)が配設されている。各作像ユニット57(57Y〜57K)は、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム51と、感光体ドラム51表面を略一様に帯電する帯電装置52と、感光体ドラム51にレーザ光を照射して潜像を形成する露光装置53と、感光体ドラム51上の潜像にトナーを選択的に転移させてトナー像を形成する現像装置54とを備えている。尚、符号56は中間転写ベルト55を挟んで感光体ドラム51と対向するように配置され、感光体ドラム51と中間転写ベルト55との間に所定のニップ域を形成する押圧ロールである。
【0015】また、本実施の形態において、中間転写ベルト55は3つの張架ロール61〜63によって周回可能に張架されている。ここで、張架ロール61〜63のうち、61は中間転写ベルト55を駆動する駆動ロール、62は中間転写ベルト55に張力を付与するテンションロール、63は各作像ユニット57の下流側に配設され、中間転写ベルト55上のトナー像を記録材としての用紙に二次転写、定着するための定着装置65の一要素であるバックアップロールである。そして、本実施の形態では、定着装置65は、バックアップロール63と、中間転写ベルト55をバックアップロール63側に加圧する加圧ロール64とを備えており、中間転写ベルト55と加圧ロール64とが圧接される二次転写部Yに、図示しない搬送デバイスにより送り込まれた記録材としての用紙Pに中間転写ベルト55上のトナー像を転写、定着するようになっている。
【0016】更に、本実施の形態では、中間転写ベルト55の定着装置65よりも上流側には電磁誘導加熱装置70が設けられている。この電磁誘導加熱装置70は、図3に示すように、中間転写ベルト55を被加熱体とし、この中間転写ベルト55の裏側に変動磁界生成ユニット71を配設したものである。本実施の形態において、電磁誘導加熱装置70の変動磁界生成ユニット71としては、中間転写ベルト55の搬送方向に直交する幅方向に亘って配設される非磁性の長尺な板状の台座72と、この台座72上に配設されるフェライトなどの磁性コア73と、この磁性コア73に巻回されて中間転写ベルト55の厚さ方向に向かって貫く変動磁界を生成する励磁コイル74とを備え、励磁回路75にて励磁コイル74に給電することにより変動磁界を生成するようにしたものである。ここで、本実施の形態では、例えば台座72としては、耐熱ガラスやポリカーボネイト等の耐熱性樹脂が用いられる。また、磁性コア73としては、単一ブロック体で構成しても差し支えないが、焼結などの製造性を考慮し、複数のコアブロックを一列に並設する態様が採用されている。更に、励磁コイル74は磁性コア73全体に跨るように巻回されている。そして、励磁コイル74(電磁誘導加熱のための交番磁場発生源)に印加する交流電流の周波数は20〜200kHzが好ましい。20kHz以下である可聴域に入ってノイズ発生の原因になる。また、200kHz以上であると電磁波の放射ノイズが無視できなくなるといった問題が生じる。
【0017】また、本実施の形態において、中間転写ベルト55は、例えば図4(a)に示すように、耐熱性の高いシート状部材からなる基層55aと、その上に積層された電磁誘導発熱層(導電層)55bと、最も上層となる表面離型層55cとの3層を基本的に備えていることが好ましい。ここで、基層55aはポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等に代表される耐熱性の高い樹脂を用いているが、厚さが20〜50μm程度の薄膜の場合、強度補強や抵抗調整のためのフィラーや導電性材料などを混入してもよい。また、電磁誘導発熱層55bは、例えば鉄やコバルトの層、またはメッキ処理によってニッケル、クロム等の強磁性金属層であってもよいが、20μm以下の金属層であれば、銅、銀やアルミなどの金属などが好適である。電磁誘導発熱層55bは20μmの厚さを越えると、中間転写ベルト55の熱容量が大きくなるので2〜20μm程度が好ましい。更に、表面離型層55cとしては、離型性の高いシート又はコート層であることが好ましく、例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、PTFE、FEPなどが用いられる。特に、表面離型層55cの材料を弾性材料で構成する場合には、トナーを包み込むような状態で密着するため、画像の劣化が少なく画像光沢が均一になる点で好ましい。更にまた、図4(b)に示すように、表面離型層55cと電磁誘導発熱層55bとの間に弾性層や抵抗調整層などの中間層55dを介在させるようにしてもよい。尚、表面離型層55c自体が弾性や抵抗調整の機能を具備していればこのような中間層55dを具備しなくてよいことは勿論である。
【0018】また、中間転写ベルト55の電磁誘導発熱層55bの上層は、体積固有抵抗値が106Ωcm以下であると電荷のリークが起こり、1012Ωcm以上であると転写電流が流れにくくなって転写不良が起こるので、上層の抵抗値は106〜1012Ωcmとすることが好ましい。このために抵抗調整が必要になる場合があるが、抵抗調整は弾性層や抵抗調整層などの中間層55dや表面離型層55cに所定の抵抗値となるように抵抗調整材料を混入することで実現すればよい。ここで、中間転写ベルト55の具体例を示すと、最上層に10μmのフッ素樹脂系の表面離型層55cがあり、順に50μmの半導電性の弾性層からなる中間層55d、5μmの銅からなる電磁誘導発熱層55b、30μmのポリイミドからなる基層55aの積層構成をなしている。この基層はポリイミドに抵抗調整材料が混入されており、半導電性である。
【0019】特に、本実施の形態では、電磁誘導発熱層55bは交番磁場発生源からの作用を受けて誘導電流を発生させてジュール発熱させるための発熱層であることに加えて、トナー像を保持している像担持体(本例では感光体ドラム51)からトナー像を中間転写ベルト55に転写させるための転写バイアス付与層の役割を果たす。ここで、電磁誘導発熱層55bへの通電構造例を図2R>2及び図5(a)(b)に示す。本実施の形態において、電磁誘導発熱層55bは、中間転写ベルト55の幅方向一側近傍にて中間転写ベルト55の裏面側周方向全域に亘って露出する線状の給電部551を有し、この給電部551には転写バイアス81が印加される導電性の給電ロール80が接触配置されるようになっている。そして、本実施の形態では、転写バイアス81は、少なくとも各作像ユニット57(57Y〜57K)にて一次転写が行われる間印加され続けるようになっている。
【0020】次に、本実施の形態に係る画像記録装置の作動について説明する。図2に示すように、画像情報はイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の像に分解され、各作像ユニット57(57Y、57M、57C、57K)により、感光体ドラム51上にそれぞれ異なる色のトナー像Tが形成される。一方、中間転写ベルト55は一定方向に循環移動しており、転写バイアス81が給電ロール80、給電部551を介して電磁誘導発熱層55bに印加されるため、各作像ユニット57の一次転写部Xでは、図6に示すように、感光体ドラム51と電磁誘導発熱層55bとの間に転写バイアス81による転写電界Eが形成され、一次転写部Xにおいて感光体ドラム51からトナー像Tが転写される。
【0021】ここで、一次転写条件について検討してみるに、例えば正極に帯電しているトナー像Tに対し、電磁誘導発熱層55bの給電部551に200V〜3kVの転写バイアス電位を負極で与えた場合、感光体ドラム51に保持されているトナー像は中間転写ベルト55に転写効率90%で転写することが可能であり、乱れのない転写トナー像が得られることが確認された。このとき、転写バイアス電位は、200V未満であるとトナー像の転写量が十分でないので200V以上が望ましい。また、3kVを超えると放電マークが出易くなるなどの弊害が生じる。これに対し、電磁誘導発熱層55bを有する中間転写ベルト55の裏面からバイアスロールで電位を与えたところ、効率が80%以上となることはなく、転写後のトナー像に飛翔などの像の乱れが生じていた。
【0022】そして、4つの作像ユニット57Y〜57Kからトナー像Tが順次転写された後、重ね合わされた4色のトナー像Tは中間転写ベルト55の移動により電磁誘導加熱装置70と対向する加熱領域Zに搬送される。この加熱領域Zでは、中間転写ベルト55上の4色のトナー像が、電磁誘導加熱による電磁誘導発熱層55bの発熱により溶融される。この後、溶融したトナー像Tは二次転写部Yで定着装置65により室温の記録材としての用紙Pと圧接され、トナー像Tが用紙Pに瞬時に浸透して転写定着されると共に、トナー像Tは定着装置65のニップ域の出口に向かって搬送される間に冷却される。ニップ域の出口では、トナーの温度は十分に低くなっており、トナーの凝集力が大きいため、オフセットを生じることなくトナー像はそのまま略完全に用紙P上に転写定着される。
【0023】上記のような4つの作像ユニット57(57Y〜57K)を配列したタンデム方式の装置では、1つの感光体ドラムを4サイクルする方式に比べて約4倍の生産性を有しており、高速でカラー画像を得ることが可能である。しかし、4サイクル方式の場合は用紙への転写定着は4サイクルに1度であるが、タンデム方式では連続して用紙が送られてくるため、中間転写ベルト55への熱負荷が大きくなり、感光体ドラム51を昇温させるという問題を発生し易くなる。このため、従来のタンデム方式の装置では、なかなかこの問題を解決することができなかった。しかし、本実施の形態の画像記録装置では、電磁誘導加熱装置70により中間転写ベルト55を局所的且つ選択的に加熱できるため、高速で画像を形成しても熱の蓄積が生じにくいといった利点がある。また、中間転写ベルト55上のトナー像を迅速に加熱することができるため、消費エネルギーを低く抑えることができる。
【0024】◎実施の形態2図7は本発明が適用された画像記録装置の実施の形態2を示す。同図において、本実施の形態に係る画像記録装置の基本的構成は、実施の形態1と略同様であるが、実施の形態1と異なり、電磁誘導加熱装置70が中間転写ベルト55の表面側で且つ定着装置65のバックアップロール63に対向した部位に配設されている。この態様にあっては、電磁誘導加熱装置70によって中間転写ベルト55の電磁誘導発熱層55bを電磁誘導加熱したとしても、電磁誘導発熱層55bからの発熱がバックアップロール63側から放出されてしまう懸念がある。そこで、本実施の形態では、例えば図7に示すように、中間転写ベルト55の基層55aの裏面に更に断熱層55eを設け、バックアップロール63側への放熱を抑制する構造が採られている。
【0025】◎実施の形態3図8は本発明が適用された画像記録装置の実施の形態3を示す。同図において、画像記録装置は、誘電体からなる記録ドラム101を有し、この記録ドラム101の周囲には、記録ドラム101の表面を略一様に帯電する帯電装置102と、この記録ドラム101にコロナイオン流を作用させて潜像を形成する記録ヘッド103と、記録ドラム101に形成された各色成分潜像を対応するトナーの付着により現像するロータリー現像装置104と、記録ドラム101上の残留トナーを清掃するクリーナ105とを配設したものである。更に、記録ドラム101には中間転写ドラム110が一次転写部Xにて接触転動可能に配設されており、この中間転写ドラム110に記録ドラム101上のトナー像Tが一次転写される一方、中間転写ドラム110には二次転写部Yにて転写定着用の加圧ロール120が圧接配置されており、更に、中間転写ドラム110のトナー像搬送方向における二次転写部Yの上流側には、中間転写ドラム110の外周面に近接対向するように電磁誘導加熱装置70が配設されている。
【0026】特に、本実施の形態では、中間転写ドラム110は、例えば多孔質セラミックスからなる断熱性の基材ロール110m上に、例えば20μmの半導電性の基層110aを形成し、この上には例えば5μmの電磁誘導発熱層(導電層)110bを積層し、更にその上に60μmの弾性層110d及び10μmの離型層110cを順次積層したものであり、電磁誘導発熱層110bは電磁誘導加熱装置70により電磁誘導加熱されると共に、一次転写用の転写バイアス81が印加されるようになっている。
【0027】従って、本実施の形態では、記録ドラム101が4回転する間に各色成分トナー像が順次記録ドラム101上に形成される。一方、中間転写ドラム110は記録ドラム101と共に回動するが、中間転写ドラム110の電磁誘導発熱層110bに転写バイアス81が印加されるため、電磁誘導発熱層110bと記録ドラム101との間に転写電界が形成され、これによって、記録ドラム101上に形成された各色成分トナー像Tが中間転写ドラム110側に順次一次転写される。このとき、転写バイアス電位は、記録ドラム101と電磁誘導発熱層110bとの間を流れる電流値が定電流で1〜30μAとなるように付与した場合、転写効率90%の良好な転写が実現できることが確認できた。尚、電流値は1μA未満であるとトナー像を十分に転写できないなどの転写不良が起こり、30μAを超えると強抜けなどの放電マークが生じ易くなった。
【0028】この後、中間転写ドラム110上のトナー像Tが電磁誘導加熱装置70による加熱領域Zを通過すると、中間転写ドラム110上のトナー像は略瞬時に加熱され溶融される。そして、溶融したトナー像Tは二次転写部Yで室温の用紙Pに接触すると急激に冷却される。すなわち、溶融したトナーは、二次転写部Yのニップ域で用紙に圧接されることにより瞬時に転写定着され、その後ニップ域の出口に向かって搬送される間に冷却される。このため、二次転写部Yのニップ域の出口では、トナーの温度は十分に低くなっており、トナーの凝集力が大きいため、オフセットを生ずることなくトナー像Tはそのまま略完全に用紙P上に転写定着される。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、電磁誘導加熱方式の画像記録装置において、像担持搬送体の電磁誘導発熱層を電磁誘導加熱用被加熱体として用いることに限らずに、転写バイアス印加用電極としても利用するようにしたので、像転写手段の構成を簡略化することができる。例えば像転写手段として、電磁誘導発熱層を転写バイアス印加用電極として利用し、作像手段の像担持体と電磁誘導発熱層との間に転写電界を形成することが可能になるため、従来のコロトロンやバイアスロール等の転写デバイスを省略することが可能になり、その分、低コスト化、小型化に貢献することができるばかりか、転写バイアスを印加する部位が像担持体の近傍でなくてもよいことに伴って、転写バイアス付与手段の設定位置のレイアウトを自由に選定することができる。また、コロトロンやバイアスロール等の転写デバイスと共用する態様にしても、各転写デバイスと電磁誘導発熱層を転写バイアス印加用電極とした転写システムとで各転写電界を決定することが可能であるため、従前のように、各転写デバイスでのみ各転写電界を決定していた場合に比べて、例えば像担持搬送体の劣化や記録材の種類などに伴ってシステム全体の転写電界を制御する際にき電磁誘導発熱層を利用した転写システムによる転写電界を調整する等、転写電界の決定に対する自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明が適用された画像記録装置の概要を示す説明図、(b)は(a)中B部詳細説明図、(c)は(a)中C部詳細説明図である。
【図2】 本発明が適用された画像記録装置の実施の形態1を示す説明図である。
【図3】 本実施の形態で用いられる電磁誘導加熱装置の具体例を示す説明図である。
【図4】 (a)(b)は中間転写ベルトの夫々異なる層構成を示す説明図である。
【図5】 (a)は本実施の形態で用いられる電磁誘導発熱層への通電構造例を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
【図6】 本実施の形態に係る一次転写部の原理を示す説明図である。
【図7】 本発明が適用された画像記録装置の実施の形態2を示す説明図である。
【図8】 本発明が適用された画像記録装置の実施の形態3を示す説明図である。
【符号の説明】
1…作像手段,2(2a〜2d)…像担持体,3…像担持搬送体,3a…基層,3b…電磁誘導発熱層,3c…離型層,4…像転写手段,4a…転写バイアス印加用電極,5…電磁誘導加熱手段,5a…磁性コア,5b…励磁コイル,6…定着手段,7…記録材,H…変動磁界,Ic…渦電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】 像担持体上に未定着像を形成担持する作像手段と、この作像手段の像担持体に対向配置され、電磁誘導発熱層を有し且つ未定着像を担持搬送する像担持搬送体と、この像担持搬送体の電磁誘導発熱層を転写バイアス印加用電極とし、少なくとも作像手段の像担持体と電磁誘導発熱層との間に転写電界を形成した状態で、像担持体上に形成された未定着像を像担持搬送体側に転写する像転写手段と、像担持搬送体の移動方向に直交する方向に沿って当該像担持搬送体に対向配置され且つ像担持搬送体の電磁誘導発熱層を電磁誘導加熱して像担持搬送体上の未定着像を溶融する電磁誘導加熱手段と、この電磁誘導加熱手段にて像担持搬送体上で溶融した未定着像を記録材上に転写、定着する定着手段とを備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】 請求項1記載の画像記録装置において、定着手段は、電磁誘導加熱手段による加熱部位よりも下流側に配設されていることを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】 請求項1記載の画像記録装置において、像担持搬送体は、基層と、この基層の上に積層された電磁誘導発熱層と、この電磁誘導発熱層上に積層されて未定着像が担持される離型層とを備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】 請求項3記載の画像記録装置において、基層及び離型層の少なくともいずれか一方が半導電層であることを特徴とする画像記録装置。
【請求項5】 請求項3記載の画像記録装置において、離型層の少なくとも一部に弾性層を具備していることを特徴とする画像記録装置。
【請求項6】 請求項1記載の画像記録装置のうち、像担持搬送体の電磁誘導発熱層の裏面側に放熱部材を具備した態様において、電磁誘導発熱層と放熱部材との間に断熱層を介在させたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項7】 請求項1記載の画像記録装置において、像転写手段は、像担持搬送体の電磁誘導発熱層の少なくとも一部を像担持搬送体の表面若しくは裏面に露出配置し、この露出部を転写バイアスが印加される給電部としたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項8】 請求項1記載の画像記録装置において、像転写手段は、電磁誘導発熱層に対し未定着像と逆極性で且つ0.2〜5kVの定電圧からなる転写バイアスを印加したものであることを特徴とする画像記録装置。
【請求項9】 請求項1記載の画像記録装置において、像転写手段は、電磁誘導発熱層から作像手段の像担持体に流れる電流が定電流で1〜200μAとなるような転写バイアスを印加するものであることを特徴とする画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2001−147602(P2001−147602A)
【公開日】平成13年5月29日(2001.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−329661
【出願日】平成11年11月19日(1999.11.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】