説明

異方性導電材料及び接続構造体

【課題】接続構造体における電極間の接続に用いた場合に、導通信頼性を高めることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供する。
【解決手段】本発明に係る異方性導電材料は、光の照射又は熱の付与により硬化可能な硬化性化合物と、光重合開始剤及び熱硬化剤の内の少なくとも1種と、導電性粒子と、粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーとを含む。上記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーの全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラーの含有量が10重量%以上、65重量%以下であり、かつ粒子径が300nm以上、1000nm以下であるフィラーの含有量が35重量%以上、90重量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性粒子を含む異方性導電材料に関し、例えば、フレキシブルプリント基板、ガラス基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間の電気的な接続に用いることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂などに複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、具体的には、ICチップとフレキシブルプリント回路基板との接続、ICチップとITO電極を有する回路基板との接続、並びにITO電極を有する回路基板とフレキシブルプリント回路基板との接続等に使用されている。例えば、ICチップの電極と回路基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧することにより、これらの電極同士を接続できる。
【0004】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、一分子中にエポキシ基を平均1.2個以上有するエポキシ樹脂と、ゴム状ポリマー微粒子と、熱潜在性エポキシ硬化剤と、高軟化点ポリマー微粒子と、導電性粒子とを含む異方導電性ペーストが開示されている。上記ゴム状ポリマー微粒子の軟化点は0℃以下、一次粒子径は5μm以下である。上記高軟化点ポリマー微粒子の軟化点は50℃以上、一次粒子径は2μm以下である。上記導電性粒子の平均粒子径は5〜15μm、最大粒子径は20μm以下、最小粒子径は0.1μm以上である。また、特許文献1では、無機質充填剤を用いてもよいことが記載されており、実施例では、無機質充填剤としてシリカとアルミナとが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3904798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような従来の異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、かつ導電性粒子を介して電極間を電気的に接続し、接続構造体を得る。
【0007】
特許文献1に記載の異方性導電材料では、導電性粒子と電極との間に、上記ゴム状ポリマー微粒子、上記高軟化点ポリマー微粒子が挟み込まれやすいという問題がある。導電性粒子と電極との間に、これらの微粒子が挟み込まれると、導通不良が生じたり、接続抵抗が高くなったりする。従って、得られる接続構造体における導通信頼性が低くなるという問題がある。
【0008】
さらに、従来の異方性導電材料では、該異方性導電材料を電極間の接続に用いた接続構造体において、冷熱サイクルなどの熱衝撃が与えられると、異方性導電材料が硬化した硬化物層にクラックが発生することがある。すなわち、従来の異方性導電材料を用いた接続構造体では、耐熱衝撃特性が低いことがある。
【0009】
本発明の目的は、接続構造体における電極間の接続に用いた場合に、導通信頼性を高めることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供することである。
【0010】
本発明の限定的な目的は、冷熱サイクルなどの熱衝撃に対する接続構造体の耐熱衝撃特性を高めることができる異方性導電材料、並びに該異方性導電材料を用いた接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、光の照射又は熱の付与により硬化可能な硬化性化合物と、光重合開始剤及び熱硬化剤の内の少なくとも1種と、導電性粒子と、粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)とを含み、該粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量が10重量%以上、65重量%以下であり、かつ粒子径が300nm以上、1000nm以下であるフィラー(B)の含有量が35重量%以上、90重量%以下である、異方性導電材料が提供される。
【0012】
上記導電性粒子の平均粒子径は1μm以上、100μm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る異方性導電材料のある特定の局面では、上記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体100重量%中、粒子径が300nm以上、600nm未満であるフィラー(B1)の含有量は10重量%以下である。
【0014】
本発明に係る異方性導電材料の他の特定の局面では、上記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体100重量%中、粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)の含有量は30重量%以上である。
【0015】
本発明に係る異方性導電材料のさらに他の特定の局面では、上記粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)は、コアシェル粒子を含む。
【0016】
本発明に係る異方性導電材料の別の特定の局面では、上記粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)は、無機粒子を含む。
【0017】
本発明に係る異方性導電材料のさらに別の特定の局面では、上記粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)は、コアシェル粒子と無機粒子との双方を含む。
【0018】
本発明に係る異方性導電材料の他の特定の局面では、上記粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)は、疎水化処理されたフィラーである。
【0019】
上記硬化性化合物100重量部に対して、上記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体の含有量は、15重量部以上、75重量部以下であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備えており、該接続部が、本発明に従って構成された異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る異方性導電材料は、光の照射又は熱の付与により硬化可能な硬化性化合物
と、光重合開始剤及び熱硬化剤の内の少なくとも1種と、導電性粒子と、粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)とを含み、更に該粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量が10重量%以上、65重量%以下であり、かつ粒子径が300nm以上、1000nm以下であるフィラー(B)の含有量が35重量%以上、90重量%以下であるので、本発明に係る異方性導電材料を接続構造体における電極間の接続に用いた場合に、導通信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体を模式的に示す正面断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いて接続構造体を得る各工程を説明するための正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明に係る異方性導電材料は、光の照射又は熱の付与により硬化可能な硬化性化合物と、光重合開始剤及び熱硬化剤の内の少なくとも1種と、導電性粒子と、粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)とを含む。上記硬化性化合物が光の照射により硬化可能である場合には、光重合開始剤を含むことが好ましい。上記硬化性化合物が熱の付与により硬化可能である場合には、熱硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化性化合物が光の照射と熱の付与との双方により硬化可能である場合には、光重合開始剤と熱硬化剤との双方を含むことが好ましい。
【0025】
本発明に係る異方性導電材料では、上記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量は10重量%以上、65重量%以下であり、かつ粒子径が300nm以上、1000nm以下であるフィラー(B)の含有量は35重量%以上、90重量%以下である。
【0026】
上記のような特定のフィラー(X)を含む上記構成の採用によって、本発明に係る異方性導電材料を接続構造体における電極間の接続に用いた場合に、電極と導電性粒子との間にフィラー(X)が挟み込まれ難くなる。このため、得られる接続構造体における導通信頼性を高めることができる。さらに、上記構成の採用によって、異方性導電材料中でのフィラーの分散性が良好になる。この結果、得られる接続構造体の冷熱サイクルなどの熱衝撃に対する耐熱衝撃特性を高めることができる。例えば、異方性導電材料の硬化物にクラックが生じ難くなる。
【0027】
本発明に係る異方性導電材料は、ペースト状である異方性導電ペーストであってもよく、フィルム状である異方性導電フィルムであってもよい。本発明に係る異方性導電材料は、異方性導電ペーストであることが好ましい。この場合には、電極と導電性粒子との間にフィラーがより一層挟み込まれ難くなる。従って、得られる接続構造体における導通信頼性を高めることができる。
【0028】
以下、先ず、本発明に係る異方性導電材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0029】
(硬化性化合物)
本発明に係る異方性導電材料に含まれている上記硬化性化合物は光の照射又は熱の付与により硬化可能である。該硬化性化合物は、特に限定されない。上記硬化性化合物として
、従来公知の硬化性化合物を使用可能である。上記硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
上記硬化性化合物としては、光及び熱硬化性化合物、光硬化性化合物、並びに熱硬化性化合物が挙げられる。上記光及び熱硬化性化合物は、光硬化性と熱硬化性とを有する。上記光硬化性化合物は、例えば光硬化性を有し、かつ熱硬化性を有さない。上記熱硬化性化合物は、例えば光硬化性を有さず、かつ熱硬化性を有する。
【0031】
上記硬化性化合物は、光及び熱硬化性化合物を含むか、又は光硬化性化合物と熱硬化性化合物との双方を含むことが好ましい。
【0032】
[熱硬化性化合物]
上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】
上記異方性導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する化合物は、エピスルフィド化合物である。熱硬化をより一層速やかに進行させる観点からは、上記熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物であることが好ましい。
【0034】
エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0035】
上記エポキシ化合物及び上記エピスルフィド化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。
【0036】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、エピスルフィド化合物は、下記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましく、下記式(1−1)、(2−1)又は(3)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることがより好ましい。下記式(1−1)において、ベンゼン環に結合している6つの基の結合部位は特に限定されない。下記式(2−1)において、ナフタレン環に結合している8つの基の結合部位は特に限定されない。
【0037】
【化1】

【0038】
上記式(1−1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表す。R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(4)で表される基を表す。R3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0039】
【化2】

【0040】
上記式(4)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0041】
【化3】

【0042】
上記式(2−1)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(5)で表される基を表す。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(5)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(5)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0043】
【化4】

【0044】
上記式(5)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0045】
【化5】

【0046】
上記式(3)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0047】
【化6】

【0048】
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0049】
【化7】

【0050】
上記式(7)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0051】
【化8】

【0052】
上記式(8)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0053】
上記式(1−1),(2−1)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、下記式(1),(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物であることが好ましい。
【0054】
【化9】

【0055】
上記式(1)中、R1〜R6は、上記式(1−1)中のR1〜R6と同様の基である。
【0056】
【化10】

【0057】
上記式(2)中、R51〜R58は、上記式(2−1)中のR51〜R58と同様の基である。
【0058】
上記異方性導電材料は、エピスルフィド化合物として、フェノキシ樹脂のエポキシ基がチイラン基に変換されたチイラン基を有する変性フェノキシ樹脂を含んでいてもよい。硫化剤を用いて、従来公知の方法により、フェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換できる。
【0059】
「フェノキシ樹脂」は、一般的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0060】
フェノキシ樹脂を得る上記反応において、フェノキシ樹脂の原料となるエポキシ基を有する化合物にかえて該エポキシ基を有する化合物のエポキシ基をチイラン基に変換したチイラン基を有する化合物を用いることにより、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。さらに、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂を用意し、該エポキシ基を有
するフェノキシ樹脂のエポキシ基をチイラン基に変換することによっても、チイラン基を有するフェノキシ樹脂を得ることができる。
【0061】
上記エポキシ化合物は特に限定されない。エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用できる。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記エポキシ化合物としては、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0063】
上記エポキシ化合物の具体例としては、例えばエピクロルヒドリンと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールD型エポキシ樹脂等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、並びにエピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂が挙げられる。グリシジルアミン、グリシジルエステル、並びに脂環式又は複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物を用いてもよい。
【0064】
さらに、上記エポキシ化合物として、例えば、上記式(1−1)、(2−1)、(3)、(7)又は(8)で表される構造におけるチイラン基をエポキシ基に置き換えた構造を有するエポキシ化合物を用いてもよい。
【0065】
さらに、上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、下記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0066】
【化11】

【0067】
上記式(21)中、R1は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(22)で表される構造を表し、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(23)で表される構造を表す。
【0068】
【化12】

【0069】
上記式(22)中、R5は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0070】
【化13】

【0071】
上記式(23)中、R6は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0072】
上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物は、不飽和二重結合と、少なくとも2個のエポキシ基とを有することを特徴とする。上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の使用により、異方性導電材料をより一層低温で速やかに硬化させることができる。
【0073】
上記異方性導電材料は、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物として、下記式(31)で表される構造を有する化合物の単量体、該化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0074】
【化14】

【0075】
上記式(31)中、R1は水素原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(32)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X1は酸素原子又は硫黄原子を表し、X2は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0076】
【化15】

【0077】
上記式(32)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0078】
上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、下記式(41)で表されるエポキシ化合物、又は下記式(42)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。このような化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くし、硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0079】
【化16】

【0080】
上記式(41)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Zはエポキシ基又はヒドロキシメチル基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0081】
【化17】

【0082】
上記式(42)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p、q及びrはそれぞれ1〜5の整数を表し、R4〜R6はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。p、q及びrは同一であってもよく、異なっていてもよい。R4〜6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0083】
上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテルであることが好ましい。これらの化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をさらに一層速くすることができる。
【0084】
上記異方性導電材料は、エポキシ化合物として、芳香族環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族環を有するエポキシ化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くし、異方性導電ペーストを塗布しやすくすることができる。異方性導電ペーストの塗布性をより一層高める観点からは、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。上記芳香族環を有するエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル又は1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルが挙げられる。なかでも、レゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。レゾルシノールジグリシジルエーテルの使用により、異方性導電材料の硬化速度を速くし、ペースト状の異方性導電ペーストを塗布しやすくすることができる。
【0085】
[光硬化性化合物]
本発明に係る異方性導電材料は、光の照射によって硬化するように、光硬化性化合物を含有していてもよい。光の照射により光硬化性化合物を半硬化させ、硬化性化合物の流動性を低下させることができる。
【0086】
上記光硬化性化合物としては特に限定されず、(メタ)アクリル樹脂及び環状エーテル基含有樹脂等が挙げられる。
【0087】
上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物が挙げられる。
【0088】
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0089】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
【0090】
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
【0091】
光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
【0092】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0093】
光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
【0094】
また、上記光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0095】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0096】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0097】
光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを併用する場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを併用する場合には、本発明に係る異方性導電材料は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜60:40で含むことがより好ましく、10:90〜40:60で含むことが更に好ましい。
【0098】
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤、酸無水物及びカチオン硬化剤等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
異方性導電材料を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、異方性導電材料の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0100】
導電性粒子の導電性の表面が低融点金属層である場合、カチオン硬化剤を用いることが好ましい。硬化時にカチオン硬化剤から発生した酸により、低融点金属層の表面に存在する酸化膜を除去し、電極間を接続することができ、高い信頼性を得ることができる。
【0101】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0102】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0103】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0104】
上記カチオン硬化剤としては、ヨードニウム塩又はスルフォニウム塩が好適に用いられる。上記カチオン系硬化剤としては、例えば、三新化学工業社製のサンエイドSI−45L、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−110L及びSI−150Lや、ADEKA社製のアデカオプトマーSP−150及びSP−170等が挙げられる。
【0105】
好ましいカチオン硬化剤のアニオン部分としては、PF、BF、及びB(Cが挙げられる。
【0106】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、好ましくは上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を充分に熱硬化させることができる。
【0107】
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤(光重合開始剤)は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤、ベンゾフェノン光硬化開始剤、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0109】
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0110】
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、好ましくは上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を適度に光硬化させることができる。異方性導電材料に光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電材料の流動を抑制できる。また、異方性導電材料に光を照射し、半硬化させることにより、異方性導電材料の流動を抑制できる。
【0111】
(フィラー)
本発明に係る異方性導電材料は、粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)を含む。粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量は10重量%以上、65重量%以下であり、かつ粒子径が300nm以上、1000nm以下であるフィラー(B)の含有量は35重量%以上、90重量%以下である。このような含有量の関係を満足するフィラー(X)の使用により、接続構造体における導通信頼性を高めることができる。フィラー(X)の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量は好ましくは11重量%以上、好ましくは64重量%以下である。
【0112】
上記フィラー(A)は、応力緩和作用によって、耐クラック性を高める。従って、フィラー(A)の使用により、耐クラック性が良好になるので、接続構造体における導通信頼性をより一層高めることができる。
【0113】
接続構造体における導通信頼性をより一層高める観点からは、上記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体100重量%中、粒子径が300nm以上、600nm未満であるフィラー(B1)の含有量は0重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。フィラー(B1)は含まれていなくてもよく、含まれていてもよい。フィラー(B1)が含まれていても、接続構造体における導通信頼性を高めることができる。
【0114】
上記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体100重量%中、粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)の含有量は30重量%以上であることが好ましい。このようなフィラー(B2)は、高い電気絶縁性を有しており、フィラー(B2)の使用により、短絡不良が抑えられるので、接続構造体における導通信頼性をより一層高めることができる。電気絶縁性をより一層良好にする観点からは、上記フィラー(X)の全体100重量%中のフィラー(B2)の含有量は、より好ましくは35重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。耐クラック性をより一層良好にし、接続構造体における導通信頼性をより一層高める観点からは、上記粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)は、コアシェル粒子を含むことが好ましい。該コアシェル粒子は、コア層と該コア層の表面を被覆しているシェル層とを有する。導電性粒子と電極との間にコアシェル粒子が挟み込まれるのをより一層抑制する観点からは、上記コア層は、シリコーン樹脂により形成されていることが好ましく、上記シェル層は(メタ)アクリル樹脂により形成されていることが好ましい。導電性粒子と電極との間にコアシェル粒子が挟み込まれるのをさらに一層抑制する観点からは、上記コアシェル粒子は、シリコーン樹脂により形成されたコア層が(メタ)アクリル樹脂により形成されたシェル層で被覆されていることが好ましい。
【0115】
さらに、塗布性をより一層良好にし、接続構造体における導通信頼性をより一層高める観点からは、上記粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)は、無機粒子を含むことが好ましい。上記無機粒子の材質としては、アルミナ、合成マグネサイト、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、タルク、マイカ及びハイドロタルサイト等が挙げられる。なかでも、塗布性がより一層良好になるので、シリカが好ましい。
【0116】
上記粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)は、疎水化処理されたフィラーであることが好ましい。疎水基を有するシランカップリング剤で表面処理することにより、フィラーの表面が疎水化される。フィラーが疎水化されていると、バインダー樹脂とのなじみがよくなり、特にバインダー樹脂であるエポキシ樹脂とのなじみがよくなり、分散性がより一層良好になる。上記疎水化処理に用いられる化合物としては、ビニルトリエトキシシラン、γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシラン、γ−グリリドキシプロピルートリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0117】
本明細書において、フィラーの上記「粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積分布から求めた体積平均粒子径から得られた粒子径である。
【0118】
上記硬化性化合物100重量部に対して、上記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)の全体の含有量は、好ましくは15重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは75重量部以下、より好ましくは65重量部以下である。フ
ィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、得られる接続構造体における導通信頼性をより一層高めることができる。
【0119】
上記硬化性化合物100重量部に対するフィラーの添加重量部は、硬化性化合物の比重とフィラーの比重から算出することができる。
【0120】
(導電性粒子)
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、又は実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0121】
電極と導電性粒子との接触面積を大きくし、電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、少なくとも外側の導電性の表面が低融点金属層である導電性粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の少なくとも外側の表面が、低融点金属層であることがより好ましい。
【0122】
上記低融点金属層は、低融点金属を含む層である。該低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。低融点金属の融点は好ましくは300℃以下、より好ましくは160℃以下である。また、上記低融点金属層は錫を含むことが好ましい。低融点金属層に含まれる金属100重量%中、錫の含有量は好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記低融点金属層における錫の含有量が上記下限以上であると、低融点金属層と電極との接続信頼性がより一層高くなる。なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP−AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX−800HS」)等を用いて測定可能である。
【0123】
導電層の外側の表面が低融点金属層である場合には、低融点金属層が溶融して電極に接合し、低融点金属層が電極間を導通させる。例えば、低融点金属層と電極とが点接触ではなく面接触しやすいため、接続抵抗が低くなる。また、少なくとも外側の表面が低融点金属層である導電性粒子の使用により、低融点金属層と電極との接合強度が高くなる結果、低融点金属層と電極との剥離がより一層生じ難くなり、導通信頼性が効果的に高くなる。
【0124】
上記低融点金属層を構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金は、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−亜鉛合金、錫−インジウム合金等が挙げられる。なかでも、電極に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫−銀合金、錫−銀−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることが好ましい。錫−ビスマス合金、錫−インジウム合金であることがより好ましい。
【0125】
また、上記低融点金属層は、はんだ層であることが好ましい。上記はんだ層を構成する材料は特に限定されないが、JIS Z3001:溶剤用語に基づき、液相線が450℃以下である溶可材であることが好ましい。上記はんだ層の組成としては、例えば亜鉛、金、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウムなどを含む金属組成が挙げられる。なかでも低融点
で鉛フリーである錫−インジウム系(117℃共晶)、又は錫−ビスマス系(139℃共晶)が好ましい。すなわち、はんだ層は、鉛を含まないことが好ましく、錫とインジウムとを含むはんだ層、又は錫とビスマスとを含むはんだ層であることが好ましい。
【0126】
上記低融点金属層と電極との接合強度をより一層高めるために、上記低融点金属層は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。低融点金属と電極との接合強度をさらに一層高める観点からは、上記低融点金属は、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム又は亜鉛を含むことが好ましい。低融点金属層と電極との接合強度をより一層高める観点からは、接合強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、低融点金属層100重量%中、好ましくは0.0001重量%以上、好ましくは1重量%以下である。
【0127】
上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有し、該導電層の外側の表面が低融点金属層(はんだ層など)であり、上記樹脂粒子と上記低融点金属層との間に、上記低融点金属層とは別に第2の導電層を有することが好ましい。この場合に、上記低融点金属層は上記導電層全体の一部であり、上記第2の導電層は上記導電層全体の一部である。
【0128】
上記低融点金属層とは別の上記第2の導電層は、金属を含むことが好ましい。該第2の導電層を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0129】
上記第2の導電層は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層又は金層であることがより好ましく、銅層であることが更に好ましい。導電性粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層又は金層を有することがより好ましく、銅層を有することが更に好ましい。これらの好ましい導電層を有する導電性粒子を電極間の接続に用いることにより、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、これらの好ましい導電層の表面には、低融点金属層をより一層容易に形成できる。なお、上記第2の導電層は、はんだ層などの低融点金属層であってもよい。導電性粒子は、複数層の低融点金属層を有していてもよい。
【0130】
上記低融点金属層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。上記低融点金属層の厚みが上記下限以上であると、導電性が十分に高くなる。上記低融点金属層の厚みが上記上限以下であると、樹脂粒子と低融点金属層との熱膨張率の差が小さくなり、低融点金属層の剥離が生じ難くなる。
【0131】
導電層が低融点金属層以外の導電層である場合、又は導電層が多層構造を有する場合には、導電層の全体厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
【0132】
導電性粒子の粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm未満、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。
【0133】
異方性導電材料における導電性粒子に適した大きさであり、かつ電極間の間隔をより一層小さくすることができるので、導電性粒子の平均粒子径は、1μm〜100μmの範囲内であることが特に好ましい。
【0134】
上記樹脂粒子は、実装する基板の電極サイズ又はランド径によって使い分けることができる。
【0135】
上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制する観点からは、導電性粒子の平均粒子径Cの樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(C/A)は、1.0を超え、好ましくは3.0以下である。また、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第2の導電層がある場合に、はんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する樹脂粒子の平均粒子径Aに対する比(B/A)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。さらに、上記樹脂粒子と上記はんだ層との間に上記第2の導電層がある場合に、はんだ層を含む導電性粒子の平均粒子径Cのはんだ層を除く導電性粒子部分の平均粒子径Bに対する比(C/B)は、1.0を超え、好ましくは2.0以下である。上記比(B/A)が上記範囲内であったり、上記比(C/B)が上記範囲内であったりすると、上下の電極間をより一層確実に接続し、かつ横方向に隣接する電極間の短絡をより一層抑制できる。
【0136】
FOB及びFOF用途向け異方性導電材料:
上記異方性導電材料は、フレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))との接続、又はフレキシブルプリント基板とフレキシブルプリント基板との接続(FOF(Film on Film))に好適に用いられる。
【0137】
FOB及びFOF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に100〜500μmである。FOB及びFOF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は10〜100μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以上であると、電極間に配置される異方性導電材料及び接続部の厚みが十分に厚くなり、接着力がより一層高くなる。樹脂粒子の平均粒子径が100μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
【0138】
フリップチップ用途向け異方性導電材料:
上記異方性導電材料は、フリップチップ用途に好適に用いられる。
【0139】
フリップチップ用途では、一般にランド径が15〜80μmである。フリップチップ用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜15μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をより一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
【0140】
COF向け異方性導電材料:
上記異方性導電材料は、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))に好適に用いられる。
【0141】
COF用途では、電極がある部分(ライン)と電極がない部分(スペース)との寸法であるL&Sは、一般に10〜50μmである。COF用途で用いる樹脂粒子の平均粒子径は1〜10μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、該樹脂粒子の表面上に配置されるはんだ層の厚みを十分に厚くすることができ、電極間をよ
り一層確実に電気的に接続することができる。樹脂粒子の平均粒子径が10μm以下であると、隣接する電極間で短絡がより一層生じ難くなる。
【0142】
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0143】
導電性粒子の表面は、絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等により絶縁処理されていてもよい。絶縁性材料、絶縁性粒子、フラックス等は、接続時の熱により軟化、流動することで接続部から排除されることが好ましい。これにより、電極間での短絡を抑制することができる。
【0144】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0145】
導電性粒子における導電層が低融点金属層を有し、低融点金属層が導電性粒子の外側の導電性の表面に位置する場合、低融点金属層の外側の表面に形成されている酸化膜の厚みは10nm以下であることが好ましい。10nm以下であれば、接続構造体の接続時にかかる圧力で酸化膜が破壊され、良好な接続が可能となる。酸化膜の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。
【0146】
(他の成分)
上記異方性導電材料は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0147】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0148】
上記イミダゾール硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0149】
上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、好ましくは上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは6重量部以下、より好ましくは4重量部以下である。硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、異方性導電材料を充分に硬化させることが容易である。硬化促進剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の硬化促進剤が残存し難くなる。
【0150】
上記異方性導電材料は、エピスルフィド化合物とともに、フェノール性化合物をさらに
含むことが好ましい。上記エピスルフィド化合物と熱硬化剤とフェノール性化合物との併用により、異方性導電材料の保管時にチイラン基がより一層開環し難くなる。また、電極間に異方性導電材料を配置して導電性粒子を適度に圧縮したときに、電極に適度な圧痕を形成できる。従って、電極間の接続抵抗を低くすることができる。
【0151】
上記フェノール性化合物は、ベンゼン環に水酸基が結合したフェノール性水酸基を有する。上記フェノール性化合物としては、ポリフェノール、トリオール、ハイドロキノン、及びトコフェロール(ビタミンE)等が挙げられる。上記フェノール性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0152】
上記異方性導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0153】
上記異方性導電材料は、貯蔵安定剤を含むことが好ましい。上記異方性導電材料は、上記貯蔵安定剤として、リン酸エステル、亜リン酸エステル及びホウ酸エステルからなる群から選択された少なくとも一種を含むことが好ましく、リン酸エステル及び亜リン酸エステルの内の少なくとも一種を含むことがより好ましく、亜リン酸エステルを含むことが更に好ましい。これらの貯蔵安定剤の使用により、特に亜リン酸エステルの使用により、上記エピスルフィド化合物の保存安定性をより一層高めることができる。上記貯蔵安定剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0154】
上記異方性導電材料は、アスコルビン酸、アスコルビン酸の誘導体、アスコルビン酸の塩、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸の誘導体及びイソアスコルビン酸の塩からなる群から選択された少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。これらの成分の配合により、異方性導電材料の保存安定性が高くなる。
【0155】
上記異方性導電材料は、必要に応じて、イオン捕捉剤又はシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0156】
また、光の照射によっても硬化可能であるように、上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と光重合開始剤とを含んでいてもよい。光の照射によって半硬化した後、熱によって本硬化する2段階反応である場合に、上記異方性導電材料は本硬化時の反応時間を短縮させることができる。
【0157】
(異方性導電材料の詳細及び用途)
本発明に係る異方性導電材料は、ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料であり、ペースト状の異方性導電材料であることが好ましい。ペースト状の異方性導電材料は、異方性導電ペーストである。フィルム状の異方性導電材料は、異方性導電フィルムである。異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合、該導電性粒子を含む異方性導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されてもよい。
【0158】
上記異方性導電ペーストの25℃での粘度は、好ましくは20Pa・s以上、好ましくは300Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上であると、異方性導電ペースト中での導電性粒子の沈降を抑制できる。上記粘度が上記上限以下であると、導電性粒子の分散性がより一層高くなる。塗布前の上記異方性導電ペーストの上記粘度が上記範囲内であれば、第1の接続対象部材上に異方性導電ペーストを塗布した後に、硬化前の異方性導電ペーストの流動をより一層抑制できる。
【0159】
本発明に係る異方性導電材料は、様々な接続対象部材を接着するために使用できる。上記異方性導電材料は、第1,第2の接続対象部材が電気的に接続されている接続構造体を得るために好適に用いられる。
【0160】
図1に、本発明の一実施形態に係る異方性導電材料を用いた接続構造体の一例を模式的に断面図で示す。
【0161】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している接続部3とを備える。接続部3は、硬化物層であり、導電性粒子5を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0162】
第1の接続対象部材2の上面2a(表面)には、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4a(表面)には、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材2,4が導電性粒子5により電気的に接続されている。なお、図1では、フィラー(X)は小さいので、フィラー(X)の図示は省略している。
【0163】
電極2b,4b間の接続は、通常、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とを異方性導電材料を介して電極2b,4b同士が対向するように重ね合わせた後に、異方性導電材料を硬化させる際に、加圧することにより行われる。加圧により、一般に導電性粒子5は圧縮される。本発明に係る異方性導電材料の使用により、導電性粒子5と電極2b,4bとの間にフィラーが挟み込まれ難くなる。このため、得られる接続構造体1の接続信頼性を高めることができる。
【0164】
上記接続構造体としては、具体的には、回路基板上に、半導体チップ、コンデンサチップ又はダイオードチップ等の電子部品チップが搭載されており、該電子部品チップの電極が、回路基板上の電極と電気的に接続されている接続構造体等が挙げられる。回路基板としては、フレキシブルプリント基板等の様々なプリント基板、ガラス基板、又は金属箔が積層された基板等の様々な回路基板が挙げられる。第1,第2の接続対象部材は、電子部品又は回路基板であることが好ましい。
【0165】
図1に示す接続構造体1は、例えば、図2(a)及び(b)に示す状態を経て、以下のようにして得ることができる。
【0166】
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を配置し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
【0167】
次に、異方性導電材料層3Aに光を照射又は熱を付与することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させる。図2では、異方性導電材料層3Aに光を照射して、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化している。すなわち、図2(b)に示すように、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化されたBステージ状硬化物層3Bを形成している。Bステージ化により、第1の接続対象部材2とBステージ状硬化物層3Bとが仮接着される。Bステージ状硬化物層3Bは、半硬化状態にある半硬化物である。Bステージ状硬化物層3Bは、完全に硬化しておらず、熱硬化がさらに進行され得る。但し、異方性導電材料層3Aに光を照射せずに、すなわち異方性導電材料層3AをBステージ化せずに、異方性導電材料層3Aに熱を付与し、異方性導電材料層3Aを一度に硬化させてもよい。
【0168】
異方性導電材料層3Aの硬化を適度に進行させるために、光を照射する際の光の照射エネルギーは50〜200mJ/cmの範囲内であることが好ましい。光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。
【0169】
次に、図2(c)に示すように、Bステージ状硬化物層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
【0170】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、Bステージ状硬化物層3Bに熱を付与(加熱)することにより、Bステージ状硬化物層3Bをさらに硬化させ、硬化物層である接続部3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、Bステージ状硬化物層3Bに熱を付与してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後にBステージ状硬化物層3Bに熱を付与してもよい。
【0171】
熱の付与により異方性導電材料層3A又はBステージ状硬化物層3Bを硬化させる際の加熱温度は、好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0172】
Bステージ状硬化物層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
【0173】
Bステージ状硬化物層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、接続部3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、異方性導電ペーストを用いた図1に示す接続構造体1を得ることができる。ここでは、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電ペーストを短時間で硬化させることができる。
【0174】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0175】
(実施例1)
(1)異方性導電ペーストの作製
下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を用意した。
【0176】
【化18】

【0177】
また、粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X)として、メチル基が導入されたシリカ(平均粒子径700nm、疎水化処理されたフィラー、トクヤマ社製(試作品)、比重:2.2)45重量部と、コアシェル粒子(平均粒子径200nm、
コア層:シリコーン樹脂、シェル層:(メタ)アクリル樹脂、三菱レイヨン社製「W−450」、比重:1)10重量部と、シリカ(平均粒子径100nm、トクヤマ社製「NSS−4N」、比重:2.2)2重量部とを用意した。これらの3種のフィラーを混合した混合物A(粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X))の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量は22重量%、粒子径が300nm以上、600nm未満であるフィラー(B1)の含有量は8重量%、粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)の含有量は69重量%であった。なお、実施例1及び後述の実施例及び比較例におけるフィラー(X)の粒子径はいずれも、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「LA−920」)により測定した体積分布から求めた体積平均粒子径から得た。
【0178】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物100重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、上記疎水化処理されたフィラー45重量部と、上記コアシェル粒子10重量部と、上記シリカ2重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子Aを配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0179】
得られた配合物1gを酢酸エチル20gで希釈し、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「LA−920」)を用いて、粒度分布を測定しところ、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量は22重量%、粒子径が300nm以上、600nm未満であるフィラー(B1)の含有量は8重量%、粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)の含有量は69重量%であり、粒子の凝集はなかった。重量部は、体積粒度分布と比重とから算出した。
【0180】
なお、用いた上記導電性粒子Aは、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0181】
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、導電性粒子の含有量が10重量%である異方性導電ペーストを得た。
【0182】
(2)接続構造体の作製
L/Sが20μm/20μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが20μm/20μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0183】
上記透明ガラス基板上に、得られた硬化性組成物である異方性導電ペーストを厚さ20μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が互いに対向し、接続するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるように加熱ヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて硬化させ、接続構造体を得た。実施例1で得られた接続構造体において、導電性粒子の粒子径の変形量は、1000nmであった。
【0184】
(実施例2)
下記式(2B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を用意した。
【0185】
【化19】

【0186】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を、上記式(2B)で表されるエピスルフィド化合物に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0187】
(実施例3)
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を、エピスルフィド化合物(三菱化学社製「YL7007」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0188】
(実施例4)
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物を、レゾルシノールグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「EX−201」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0189】
(実施例5)
粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーとして、メチル基が導入されたシリカ(平均粒子径700nm、疎水化処理されたフィラー、トクヤマ社製(試作品)、比重:2.2)53重量部と、コアシェル粒子(平均粒子径200nmコア層:シリコーン樹脂、シェル層:(メタ)アクリル樹脂、三菱レイヨン社製「W−450」、比重:1)6.4重量部と、シリカ(平均粒子径100nm、トクヤマ社製「NSS−4N」、比重:2.2)0.2重量部とを用意した。これらの3種のフィラーを混合した混合物B(粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X))の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量は11重量%、粒子径が300nm以上、600nm未満であるフィラー(B1)の含有量は9重量%、粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)の含有量は80重量%であった。
【0190】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物100重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、上記疎水化処理されたフィラー53重量部と、上記コアシェル粒子6.4重量部と、上記シリカ0.2重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0191】
得られた配合物である異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0192】
(実施例6)
粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーとして、メチル基が導入され
たシリカ(平均粒子径700nm、疎水化処理されたフィラー、トクヤマ社製(試作品)、比重:2.2)11重量部と、コアシェル粒子(平均粒子径200nmコア層:シリコーン樹脂、シェル層:(メタ)アクリル樹脂、三菱レイヨン社製「W−450」、比重:1)15重量部と、シリカ(平均粒子径100nm、トクヤマ社製「NSS−4N」、比重:2.2)4.2重量部とを用意した。これらの3種のフィラーを混合した混合物C(粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X))の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量は64重量%、粒子径が300nm以上、600nm未満であるフィラー(B1)の含有量は4重量%、粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)の含有量は32重量%であった。
【0193】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物100重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、上記疎水化処理されたフィラー11重量部と、上記コアシェル粒子15重量部と、上記シリカ4.2重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0194】
得られた配合物である異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0195】
(実施例7)
平均粒子径が7μmである導電性粒子A2を用意した。この導電性粒子A2は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する。
【0196】
平均粒子径が3μmである導電性粒子Aを平均粒子径が7μmである導電性粒子A2に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0197】
(比較例1)
粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーとして、メチル基が導入されたシリカ(平均粒子径700nm、疎水化処理されたフィラー、トクヤマ社製(試作品)、比重:2.2)74重量部と、コアシェル粒子(平均粒子径200nmコア層:シリコーン樹脂、シェル層:(メタ)アクリル樹脂、三菱レイヨン社製「W−450」、比重:1)6.4重量部と、シリカ(平均粒子径100nm、トクヤマ社製「NSS−4N」、比重:2.2)0.2重量部とを用意した。これらの3種のフィラーを混合した混合物D(粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X))の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量は8重量%、粒子径が300nm以上、600nm未満であるフィラー(B1)の含有量11重量%、粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)の含有量は81重量%であった。
【0198】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物100重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、上記疎水化処理されたフィラー74重量部と、上記コアシェル粒子6.4重量部と、上記シリカ0.2重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0199】
得られた配合物である異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0200】
(比較例2)
粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーとして、メチル基が導入されたシリカ(平均粒子径700nm、疎水化処理されたフィラー、トクヤマ社製(試作品)、比重:2.2)11重量部と、コアシェル粒子(平均粒子径200nmコア層:シリコーン樹脂、シェル層:(メタ)アクリル樹脂、三菱レイヨン社製「W−450」、比重:1)19重量部と、シリカ(平均粒子径100nm、トクヤマ社製「NSS−4N」、比重:2.2)6.4重量部とを用意した。これらの3種のフィラーを混合した混合物E(粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラー(X))の全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラー(A)の含有量は71重量%、粒子径が300nm以上、600nm未満であるフィラー(B1)の含有量は3重量%、粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラー(B2)の含有量は26重量%であった。
【0201】
上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物100重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、上記疎水化処理されたフィラー11重量部と、上記コアシェル粒子19重量部と、上記シリカ6.4重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0202】
得られた配合物である異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0203】
(実施例1〜7及び比較例1〜2の評価)
(1)導通信頼性(上下の電極間の導通試験)
後述する(2)の評価の冷熱サイクル試験(500サイクル及び1000サイクル)を行った後に硬化物層にクラックが生じていない100個の接続構造体の上下の電極間の接続抵抗を、4端子法により測定した。2つの接続抵抗の平均値を算出した。接続抵抗の平均値が5.0Ω以下である場合を「良好」、接続抵抗の平均値が5Ωを超える場合を「不良」と判定した。
【0204】
100個の接続構造体の中で、良好と判定された接続構造体の割合から、導通信頼性を下記の評価基準で評価した。
【0205】
[導通信頼性の判定基準]
○○:100個の接続構造体中、良好と判定された接続構造体の割合が95%以上
○:100個の接続構造体中、良好と判定された接続構造体の割合が90%以上、95%未満
×:100個の接続構造体中、良好と判定された接続構造体の割合が90%未満
【0206】
(2)耐熱衝撃特性
得られた接続構造体200個を、−30℃で30分間保持し、次に80℃まで昇温し、80℃で30分保持した後、−30℃まで降温する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を実施した。500サイクル及び1000サイクル後に、それぞれ100個の接続構造体を取り出した。
【0207】
500サイクルの冷熱サイクル試験後の100個の接続構造体、並びに1000サイク
ルの冷熱サイクル試験後の100個の接続構造体について、硬化物層にクラックが生じているか否かを評価した。
【0208】
[耐熱衝撃特性の判定基準]
○○:硬化物層にクラックが生じていない個数が95個以上
○:硬化物層にクラックが生じてない個数が85個以上、95個未満
×:硬化物層にクラックが生じていない個数が85個未満
【0209】
(実施例8)
(1)異方性導電ペーストの作製
光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部とをさらに配合したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0210】
(2)接続構造体の作製
L/Sが20μm/20μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが20μm/20μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0211】
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ20μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層に紫外線照射ランプを用いて紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて硬化させ、接続構造体を得た。
【0212】
(実施例9)
エポキシアクリレートをウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0213】
(実施例8〜9の評価)
【0214】
(2)導通信頼性(上下の電極間の導通試験)
実施例1〜7及び比較例1〜2と同様にして、実施例8〜9の接続構造体の導通信頼性を評価した。
【0215】
(3)耐熱衝撃特性
実施例1〜7及び比較例1〜2と同様にして、実施例8〜9の接続構造体の耐熱衝撃特性を評価した。
【0216】
(実施例10〜18)
平均粒子径10μmのジビニルベンゼン樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−210」)を無電解ニッケルめっきし、樹脂粒子の表面上に厚さ0.1μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された樹脂粒子を電解銅めっきし、厚さ1μmの銅層を形成した。更に、錫及びビスマスを含有する電解めっき液を用いて、電解めっきし、厚さ3μmのはんだ層を形成した。このようにして、樹脂粒子の表面上に厚み1μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み3μmのはん
だ層(錫:ビスマス=43重量%:57重量%)が形成されている導電性粒子Bを作製した。
【0217】
実施例10では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、ろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと、並びに異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0218】
実施例11では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、ろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと、並びに異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成したこと以外は実施例2と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0219】
実施例12では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、ろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと、並びに異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成したこと以外は実施例3と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0220】
実施例13では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、ろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと、並びに異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成したこと以外は実施例4と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0221】
実施例14では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、ろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと、並びに異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成したこと以外は実施例5と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0222】
実施例15では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、ろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと、並びに異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成したこと以外は実施例6と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0223】
実施例16では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、ろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと、並びに異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成したこと以外は実施例8と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0224】
実施例17では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、ろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと、並びに異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成したこと以外は実施例9と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0225】
実施例18では、導電性粒子Aを導電性粒子Bに変更したこと、ろ過に用いたろ紙をナイロン製ろ紙(孔径30μm)に変更したこと、硬化剤をカチオン硬化剤(三新化学工業社製「SI−80」)に変更したこと、並びに異方性導電ペーストを厚さ40μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成したこと以外は実施例4と同様にして、異方性導電ペースト及び接続構造体を得た。
【0226】
(実施例10〜18の評価)
【0227】
(1)導通信頼性(上下の電極間の導通試験)
実施例1〜7及び比較例1〜2と同様にして、実施例10〜18の接続構造体の導通信頼性を評価した。
【0228】
(2)耐熱衝撃特性
実施例1〜7及び比較例1〜2と同様にして、実施例10〜18の接続構造体の耐熱衝撃特性を評価した。
【0229】
結果を下記の表1に示す。
【0230】
【表1】

【0231】
実施例10〜18では、導通信頼性の評価結果はいずれも「○○」であるが、実施例10〜14,16〜18の導通信頼性の評価結果は、実施例15の導通信頼性の評価結果よりもよかった。さらに、実施例10〜18では、耐熱衝撃性の評価結果はいずれも「○○」であるが、実施例10〜13,15〜18の導通信頼性の評価結果は、実施例14の耐熱衝撃特性の評価結果よりもよかった。
【符号の説明】
【0232】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…接続部
3a…上面
3A…異方性導電材料層
3B…Bステージ状硬化物層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射又は熱の付与により硬化可能な硬化性化合物と、光重合開始剤及び熱硬化剤の内の少なくとも1種と、導電性粒子と、粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーとを含み、
前記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーの全体100重量%中、粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラーの含有量が10重量%以上、65重量%以下であり、かつ粒子径が300nm以上、1000nm以下であるフィラーの含有量が35重量%以上、90重量%以下である、異方性導電材料。
【請求項2】
前記導電性粒子の平均粒子径が1μm以上、100μm以下である、請求項1に記載の異方性導電材料。
【請求項3】
前記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーの全体100重量%中、粒子径が300nm以上、600nm未満であるフィラーの含有量が10重量%以下である、請求項1又は2に記載の異方性導電材料。
【請求項4】
前記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーの全体100重量%中、粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラーの含有量が30重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項5】
前記粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラーが、コアシェル粒子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項6】
前記粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラーが、無機粒子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項7】
前記粒子径が10nm以上、300nm未満であるフィラーが、コアシェル粒子と無機粒子との双方を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項8】
前記粒子径が600nm以上、1000nm以下であるフィラーが、疎水化処理されたフィラーである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項9】
前記硬化性化合物100重量部に対して、前記粒子径が10nm以上、1000nm以下であるフィラーの全体の含有量が、15重量部以上、75重量部以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の異方性導電材料。
【請求項10】
第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、前記第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1〜9のいずれか1項に記載の異方性導電材料を硬化させることにより形成されている、接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−178342(P2012−178342A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19704(P2012−19704)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】