説明

疎水性シリカ粒子の製造方法

【課題】粗粉が少なく、高疎水化度の疎水性シリカ粒子が得られる疎水性シリカ粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】親水性シリカ粒子とアルコール及び水を含む溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する分散液準備工程と、超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液の溶媒を除去する溶媒除去工程と、溶媒除去工程と連続して、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により親水性シリカ粒子の表面を疎水化処理する疎水化処理工程と、を有する疎水性シリカ粒子の製造方法
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性シリカ粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ粒子の表面を疎水化する方法としては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3において、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等でシリカ表面を疎水化処理する方法が知られている。
更に、特許文献4、特許文献5において、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチルシリル化剤とシリコーンオイルで疎水化処理する方法などが提案されている。
【0003】
湿式シリカゾルを疎水化処理・乾燥して疎水性シリカ粒子を得る方法としては、例えば、特許文献6において、シリカ微粒子分散液にトリメチルシリル化剤を加えてシリカ表面をトリメチルシリル化し余剰の処理剤を除去した後、乾燥する方法が提案されている。
また、特許文献7において、親水性シリカ微粒子分散液に、シラザン化合物あるいは1官能シラン化合物を加えてシリカ微粒子表面をトリオルガノシリル化して疎水性シリカ微粒子を得る方法が提案されている。
また、特許文献8において、4官能シラン化合物を加水分解、縮合して親水性シリカ微粒子分散液を得た後、親水性有機溶媒を水に置換して、次いで3官能シラン化合物で疎水化した後、更に分散媒をケトン系溶媒に置換し、シラザン化合物あるいは1官能シラン化合物でシリカ微粒子表面に残存する反応性基をトリオルガノシリル化して疎水化処理する方法が提案されている。
また、特許文献9において、親水性シリカ粒子を含む水性コロイドシリカ分散液に、シリルアミン処理剤を混合し分散液を乾燥する疎水性シリカの製造方法が提案されている。
また、特許文献10において、親水性シリカゾルにジシラザン化合物を添加し、50〜100℃の範囲で加温して疎水化処理シリカ微粒子を得る方法が提案されている。
また、特許文献11において、水性シリカゾルに親水性有機溶媒を混合して得られる混合溶媒シリカゾルに、ジシラザン化合物を添加して疎水化処理シリカ微粒子を得る方法が提案されている。
また、特許文献12において、親水性シリカ微粒子分散液に3官能シラン化合物を加えて疎水化した後、1官能シラン化合物を加えて疎水性シリカ微粒子を得る方法が提案されている。
【0004】
コロイダルシリカを乾燥して粒子を得る方法は、例えば、特許文献13において、コロイダルシリカにメタノールを加えてメタノールで置換した後に、超臨界二酸化炭素を流通し、溶媒を除去する方法、超臨界二酸化炭素での溶媒除去前にオクチルトリメトキシシランを添加し疎水化処理する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭46−5782号公報
【特許文献2】特開昭48−47345号公報
【特許文献3】特開昭48−47346号公報
【特許文献4】特開昭63−139367号公報
【特許文献5】特開2002−256170号公報
【特許文献6】特開平3−187913号公報
【特許文献7】特開2001−194824号公報
【特許文献8】特開2000−044226号公報
【特許文献9】特表2008−516889号公報
【特許文献10】特開2006−169096号公報
【特許文献11】特開2007−39323号公報
【特許文献12】特開2008−174430号公報
【特許文献13】特開2009−160518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、粗粉が少なく、高疎水化度の疎水性シリカ粒子が得られる疎水性シリカ粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
親水性シリカ粒子とアルコール及び水を含む溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する分散液準備工程と、
超臨界二酸化炭素を流通させ、前記シリカ粒子分散液の前記溶媒を除去する溶媒除去工程と、
前記溶媒除去工程と連続して、前記超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により前記親水性シリカ粒子の表面を疎水化処理する疎水化処理工程と、
を有する疎水性シリカ粒子の製造方法。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記分散液準備工程において、前記アルコールに対する前記水の質量比が01以上1.0以下の前記シリカ粒子分散液を準備する請求項1に記載の疎水性シリカ粒子の製造方法。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記超臨界二酸化炭素の温度をT[℃]とし、標準状態における二酸化炭素の流通量をX[L]とし、前記シリカ粒子分散液の固形分濃度をS[%]とし、前記シリカ粒子分散液の液量をA[g]とした場合、溶媒除去工程において、下記式(1)を満たす範囲内に達したときに、前記疎水化処理工程を開始する請求項1又は2に記載の疎水性シリカ粒子の製造方法。
・式(1):10≦X/(A×1.977)×T/(1−S/100)≦500
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、溶媒除去工程と疎水化処理工程とを連続して行わない場合に比べ、粗粉の発生が少なく、高疎水化度の疎水性シリカ粒子が得られる疎水性シリカ粒子の製造方法を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、準備するシリカ粒子分散液におけるアルコールに対する水の質量比が上記範囲外の場合に比べ、粗粉の発生が少なく、高疎水化度で良好な電気抵抗の疎水性シリカ粒子が得られる疎水性シリカ粒子の製造方法を提供できる。
請求項3に係る発明によれば、溶媒除去工程において、超臨界二酸化炭素の流通量が上記式(1)を満たす範囲内に達する前又は後に、疎水化処理工程を開始する場合に比べ、粗粉の発生が少なく、高疎水化度で良好な電気抵抗の疎水性シリカ粒子の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る疎水性シリカ粒子の製造方法は、親水性シリカ粒子とアルコール及び水を含む溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する分散液準備工程と、超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液の溶媒を除去する溶媒除去工程と、溶媒除去工程と連続して、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により親水性シリカ粒子の表面を疎水化処理する疎水化処理工程と、を有するものである。
【0012】
本実施形態に係る疎水性シリカ粒子の製造方法では、上記手法により、粗粉が少なく、且つ高疎水化度の疎水性シリカ粒子が得られる。この理由は、定かではないが以下に示す理由によるものと考えられる。
【0013】
まず、シリカ粒子分散液の溶媒を除去する一般的な方法としては、濾過、遠心分離、蒸留などにより溶媒を除去した後、真空乾燥機、棚段乾燥機などにより乾燥する方法、流動層乾燥機、スプレードライヤーなどによりスラリーを直接乾燥する方法などが挙げられるが、溶媒を除去する際の液架橋力により粒子同士が凝集し易く、また比較的高温(例えば250℃を超える温度)にする必要がある為、温度が高くなると、シリカ粒子の表面に存在するシラノール基の縮合により2次凝集体等の粗粉が生じることが多い。特に、ゾルゲル法等の湿式法により得られるシリカ粒子(その分散液)は、気相法により得られるフェームドシリカ粒子や、溶融シリカ粒子に比べ、その表面や孔内部にシラノール基を多く有するため、この現象が顕著に生じる。そのため、シリカ粒子に表面処理を施していないシリカ粒子分散液は溶媒除去し難いと言える。
【0014】
一方、超臨界二酸化炭素を流通させ、超臨界二酸化炭素により、シリカ粒子分散液の溶媒を除去する場合、超臨界二酸化炭素が「界面張力が働かない」という性質から、溶媒を除去する際の液架橋力による粒子同士の凝集もなく溶媒を除去できるものと考えられる。また超臨界二酸化炭素の「臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つ」といった性質により、比較的低温(例えば250℃以下)で、超臨界二酸化炭素に効率良く接触し、溶媒を溶解することから、この溶媒を溶解した超臨界二酸化炭素を除去することで、シラノール基の縮合による2次凝集体等の粗粉を生じることなくシリカ粒子分散液中の溶媒を除去できるものと考えられる。
このため、本実施形態に係るシリカ粒子の製造方法では、粗粉の発生が少ないシリカ粒子が得られると考えられる。
【0015】
次に、疎水化処理剤により親水性シリカ粒子の表面を疎水化処理する際、超臨界二酸化炭素中で行うと、超臨界二酸化炭素中に疎水性処理剤が溶解した状態となると考えられる。超臨界二酸化炭素は界面張力が極めて低いという特性を持つことから、超臨界二酸化炭素中に溶解した状態の疎水性処理剤は、超臨界二酸化炭素と共に、親水性シリカ粒子の表面の孔部の深くまで拡散して到達し易くなるものと考えられる。そして、これにより、親水性シリカ粒子の表面のみならず、孔部の奥深くまで、疎水化処理がなされるためと考えられる。
【0016】
ここで、超臨界二酸化炭素により、親水性シリカ粒子分散液の溶媒を除去する場合、溶媒を除去する前に、親水性シリカ粒子分散液中に含まれている溶媒としての水の一部を、超臨界二酸化炭素と親和性の高い溶剤(アルコール)で置換する。この理由は、水が超臨界二酸化炭素と親和性がなく、超臨界二酸化炭素へ溶解しにくいことから、溶媒除去終点(乾燥終点)まで水が過剰に存在すると、界面張力が作用し、凝集粉を発生させてしまうことがあるからである。
【0017】
このため、超臨界二酸化炭素により、親水性シリカ粒子分散液の溶媒を除去して得られた親水性シリカ粒子は、水分が少ない状態となっており、室温で放置しておくだけでも、水分を過剰に吸着して行くことなると考えられる。この現象は、特に、ゾルゲル法などの湿式法で作製された親水性シリカ粒子の場合に顕著に生じ易い傾向にある。
【0018】
水分が過剰に吸着した状態で、親水性シリカ粒子の疎水化処理を行っても、吸着した水分が疎水化反応を阻害し進行し難くなる。この疎水化反応を進行させるためには、大量の疎水化処理剤を使用すること、又は過剰な加熱を行い高温で疎水化反応を促進させることが必要となると考えられる。
疎水化処理剤を多量に使用した場合、疎水化処理剤(例えばシラン化合物)同士の重縮合による凝集粉の発生し易くなる。一方で、過剰な加熱を行い高温で疎水化反応を促進させると、親水性シリカ粒子の表面のシラノール基同士の重縮合により凝集粉が発生し易くなると考えられる。
【0019】
そこで、溶媒除去工程と連続して疎水化処理工程を行うことで、溶媒除去後において、親水性シリカ粒子が水分を吸着する機会を無くし、親水性シリカ粒子への過剰な水分の吸着が抑えられた状態で、疎水化処理工程を行う。これにより、大量の疎水化処理剤を使用したり、過剰な加熱を行い高温で疎水化反応を促進させて、疎水化処理工程を行う必要がなくなる。
【0020】
以上から、本実施形態に係る疎水性シリカ粒子の製造方法では、上記手法により、粗粉が少なく、且つ高疎水化度の疎水性シリカ粒子が得られると考えられる。
【0021】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0022】
−分散液準備工程−
本工程では、親水性シリカ粒子とアルコール及び水を含む溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する。
具体的には、本工程は、例えば、湿式(例えば、ゾルゲル法等)によりシリカ粒子分散液を作製して、これを準備する。特に、シリカ粒子分散液は、湿式としてゾルゲル法、具体的には、テトラアルコキシランを、アルコール及び水の溶媒にアルカリ溶媒を添加したアルカリ溶媒存在下で、反応(加水分解反応、縮合反応)を生じさせて親水性シリカ粒子を生成し、シリカ粒子分散液を作製することがよい。
なお、親水性シリカ粒子の形成は、球形状、異型状のいずれであってもよい。
【0023】
ゾルゲル法による親水性シリカ粒子の生成は、周知の方法により行えばよいが、例えば、以下に示す方法(以下、本親水性シリカ粒子の製造方法と称して説明する)が挙げられる。
【0024】
本親水性シリカ粒子の製造方法は、アルコールを含む溶媒中に、0.6mol/L以上0.85mol/L以下の濃度でアルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備する工程(以下、「アルカリ触媒溶液準備工程」と称することがある)と、前記アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランを供給すると共に、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して0.1mol以上0.4mol以下でアルカリ触媒を供給する工程(以下、「粒子生成工程」と称することがある)と、を有する。
【0025】
つまり、本親水性シリカ粒子の製造方法では、上記濃度のアルカリ触媒が含まれるアルコールの存在下に、原料であるテトラアルコキシシランと、別途、触媒であるアルカリ触媒と、をそれぞれ上記関係で供給しつつ、テトラアルコキシシランを反応させて、シラン粒子を生成する方法である。
本親水性シリカ粒子の製造方法では、上記手法により、粗大凝集物の発生が少なく、異型状のシリカ粒子が得られる。この理由は、定かではないが以下の理由によるものと考えられる。
【0026】
まず、アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備し、この溶液中にテトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給すると、アルカリ触媒溶液中に供給されたテトラアルコキシシランが反応して、核粒子が生成される。このとき、アルカリ触媒溶液中のアルカリ触媒濃度が上記範囲にあると、2次凝集物等の粗大凝集物の生成を抑制しつつ、異型状の核粒子が生成すると考えられる。これは、アルカリ触媒は、触媒作用の他に、生成される核粒子の表面に配位し、核粒子の形状、分散安定性に寄与するが、その量が上記範囲内であると、アルカリ触媒が核粒子の表面を均一に覆わないため(つまりアルカリ触媒が核粒子の表面に偏在して付着するため)、核粒子の分散安定性は保持するものの、核粒子の表面張力及び化学的親和性に部分的な偏りが生じ、異型状の核粒子が生成されると考えられるためである。
そして、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給をそれぞれ続けていくと、テトラアルコキシシランの反応により、生成した核粒子が成長し、シラン粒子が得られる。
ここで、このテトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給を、その供給量を上記関係で維持しつつ行うことで、2次凝集物等の粗大凝集物の生成を抑制しつつ、異型状の核粒子がその異型状を保ったまま粒子成長し、結果、異型状のシリカ粒子が生成されると考えられる。これは、このテトラアルコキシシランとアルカリ触媒との供給量を上記関係とすることで、核粒子の分散を保持しつつも、核粒子表面における張力と化学的親和性の部分的な偏りが保持されることから、異型状を保ちながらの核粒子の粒子成長が生じると考えられるためである。
【0027】
以上から、本親水性シリカ粒子の製造方法では、粗大凝集物の発生が少なく、異型状のシリカ粒子が得られると考えられる。
なお、異型状のシリカ粒子とは、例えば、平均円形度が0.5以上0.85以下のシリカ粒子である。
【0028】
また、本親水性シリカ粒子の製造方法では、異型状の核粒子を生成させ、この異型状を保ったまま核粒子を成長させてシリカ粒子が生成されると考えられることから、機械的負荷に対する形状安定性が高く、また形状分布にバラツキが少ない異型状のシリカ粒子が得られると考えられる。
また、本親水性シリカ粒子の製造方法では、生成した異型状の核粒子が異型状を保ったまま粒子成長され、シリカ粒子が得られると考えられることから、機械的負荷に強く、壊れ難いシリカ粒子が得られると考えられる。
また、本親水性シリカ粒子の製造方法では、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランとアルカリ触媒とをそれぞれ供給することで、テトラアルコキシシランの反応を生じさせることで、粒子生成を行っていることから、従来のゾルゲル法により異型状のシリカ粒子を製造する場合に比べ、総使用アルカリ触媒量が少なくなり、その結果、アルカリ触媒の除去工程の省略も実現される。これは、特に、高純度が求められる製品にシリカ粒子を適用する場合に有利である。
【0029】
アルカリ触媒溶液準備工程について説明する。
アルカリ触媒溶液準備工程は、アルコールを含む溶媒を準備し、これにアルカリ触媒を添加して、アルカリ触媒溶液を準備する。
【0030】
アルコールを含む溶媒は、アルコール単独の溶媒であってもよいし、必要に応じて水、ケトン、エステル、ハロゲン化炭化水素、エーテル等の他の溶媒との混合溶媒であってもよい。混合溶媒の場合、アルコールの他の溶媒に対する量は80質量%以上(望ましくは90質量%以上)であることがよい。
なお、アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。
【0031】
一方、アルカリ触媒としては、テトラアルコキシシランの反応(加水分解反応、縮合反応)を促進させるための触媒であり、例えば、アンモニア、尿素、モノアミン、四級アンモニウム塩等の塩基性触媒が挙げられ、特にアンモニアが望ましい。
【0032】
アルカリ触媒の濃度(含有量)は、0.6mol/L以上0.85mol/Lであり、望ましくは0.65mol/L以上0.78mol/Lである。
アルカリ触媒の濃度が、0.6mol/Lより少ないと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗大凝集物が生成されたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の濃度が、0.85mol/Lより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、真球状の核粒子が生成され、異型状の核粒子が得られず、その結果、異型状のシリカ粒子が得られない。
なお、アルカリ触媒の濃度は、アルコール触媒溶液(アルカリ触媒+アルコールを含む溶媒)に対する濃度である。
【0033】
粒子生成工程について説明する。
粒子生成工程は、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給し、当該アルカリ触媒溶液中で、テトラアルコキシシランを反応(加水分解反応、縮合反応)させて、シリカ粒子を生成する工程である。
この粒子生成工程では、テトラアルコキシシランの供給初期に、テトラアルコキシシランを反応により、核粒子が生成した後(核粒子生成段階)、この核粒子の成長を経て(核粒子成長段階)、シリカ粒子が生成する。
【0034】
アルカリ触媒溶液中に供給するテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられるが、反応速度の制御性や得られるシリカ粒子の形状、粒径、粒度分布等の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランがよい。
【0035】
テトラアルコキシシランの供給量は、例えば、アルカリ触媒溶液におけるアルコールのモル数に対して、0.001mol/mol・min以上0.01mol/mol・min以下がよい。
このテトラアルコキシシランの供給量を上記範囲とすることで、粗大凝集物の発生が少なく、異型状のシリカ粒子が生成され易くなる。
なお、このテトラアルコキシシランの供給量は、アルカリ触媒溶液におけるアルコール1mol当たりに対する、1分間当たりにテトラアルコキシシランが供給するmol数を示している。
【0036】
一方、アルカリ触媒溶液中に供給するアルカリ触媒は、上記例示したものが挙げられる。この供給するアルカリ触媒は、アルカリ触媒溶液中に予め含まれるアルカリ触媒と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよいが、同じ種類のものであることがよい。
【0037】
アルカリ触媒の供給量は、テトラアルコキシシランの1分間当たりに供給される総供給量の1mol当たりに対して0.1mol以上0.4mol以下とし、望ましくは0.14mol以上0.35mol以下である。
アルカリ触媒の供給量が、0.1molより少ないと、生成した核粒子の成長過程の核粒子の分散性が不安定となり、2次凝集物等の粗大凝集物が生成さたり、ゲル化状となったりして、粒度分布が悪化することがある。
一方、アルカリ触媒の供給量が、0.4molより多いと、生成した核粒子の安定性が過大となり、核粒子生成段階で異型状の核粒子が生成されても、その核粒子成長段階で核粒子が球状に成長し、異型状のシリカ粒子が得られない場合がある。
【0038】
ここで、粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランと、アルカリ触媒と、をそれぞれ供給するが、この供給方法は、連続的に供給する方式であってもよいし、間欠的に供給する方式であってもよい。
【0039】
また、粒子生成工程において、アルカリ触媒溶液中の温度(供給時の温度)は、例えば、5℃以上50℃以下であることがよく、望ましくは15℃以上40℃以下の範囲である。
【0040】
上記工程を経て、本親水性シリカ粒子の製造方法では、親水性シリカ粒子が得られる。
【0041】
以上説明した分散液準備工程において、例えば、親水性シリカ粒子を湿式により得る場合、親水性シリカ粒子が溶媒に分散された分散液(親水性シリカ粒子分散液)の状態で得られる。
【0042】
ここで、溶媒除去工程に移行する際、準備する親水性シリカ粒子分散液は、そのアルコールに対する水の質量比が例えば0.1以上1.0以下であることがよく、望ましくは0.15以上0.5以下、より望ましくは0.2以上0.3以下である。
親水性シリカ粒子分散液において、そのアルコールに対する水の質量比を上記範囲とすると、疎水化処理後に疎水性シリカ粒子の粗粉の発生が少なく、高疎水化度で良好な電気抵抗を有する疎水性シリカ粒子が得られ易くなる。
アルコールに対する水の質量比が0.1を下回ると、溶媒除去工程において、溶媒を除去する際の親水性シリカ粒子表面のシラノール基の縮合が極端に少なくなることから、溶媒除去後の親水性シリカ粒子表面への吸着水分が多くなることで、疎水化処理後の疎水性シリカ粒子の電気抵抗が低くなり過ぎることがある。また、水の質量比が1.0を超えると、溶媒除去工程において、親水性シリカ粒子分散液中の溶媒除去の終点付近で水が多く残留し、液架橋力による親水性シリカ粒子同士の凝集が生じ易く、疎水化処理後に粗粉として存在することがある。
【0043】
また、溶媒除去工程に移行する際、準備する親水性シリカ粒子分散液は、その親水性シリカ粒子に対する水の質量比が例えば0.02以上3以下であることがよく、望ましくは0.05以上1以下、より望ましくは0.1以上0.5以下である。
親水性シリカ粒子分散液において、その親水性シリカ粒子に対する水の質量比を上記範囲とすると、親水性シリカ粒子の粗粉の発生が少なく、高疎水化度で良好な電気抵抗を有する親水性シリカ粒子が得られ易くなる。
親水性シリカ粒子に対する水の質量比が0.02を下回ると、溶媒除去工程において、溶媒を除去する際の親水性シリカ粒子表面のシラノール基の縮合が極端に少なくなることから、溶媒除去後の親水性シリカ粒子表面への吸着水分が多くなることで、親水性シリカ粒子の電気抵抗が低くなり過ぎることがある。
また、水の質量比が3を超えると、溶媒除去工程において、親水性シリカ粒子分散液中の溶媒除去の終点付近で水が多く残留し、液架橋力による親水性シリカ粒子同士の凝集が生じ易くなることがある。
【0044】
また、溶媒除去工程に移行する際、準備する親水性シリカ粒子分散液は、当該親水性シリカ粒子分散液に対する親水性シリカ粒子の質量比が例えば0.05以上0.7以下がよく、望ましくは0.2以上0.65以下、より望ましくは0.3以上0.6以下である。
親水性シリカ粒子分散液に対する親水性シリカ粒子の質量比が0.05を下回ると、溶媒除去工程において、使用する超臨界二酸化炭素の量が多くなり、生産性が悪くなってしまうことがある。
また、親水性シリカ粒子分散液に対する親水性シリカ粒子の質量比が0.7を超えると、親水性シリカ粒子分散液中において親水性シリカ粒子間距離が近くなり、親水性シリカ粒子の凝集やゲル化による粗粉が発生し易くなることがある。
【0045】
−溶媒除去工程−
溶媒除去工程は、超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液の溶媒を除去する工程である。
つまり、本工程では、超臨界二酸化炭素を流通させることにより、超臨界二酸化炭素をシリカ粒子分散液に接触させて、溶媒を除去する工程である。
具合的には、本工程では、例えば、密閉反応器内に、親水性シリカ粒子分散液を投入する。その後、密閉反応器内に、液化二酸化炭素を加えて加熱し、高圧ポンプにより反応器内を昇圧させ、二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、密閉反応器内に超臨界二酸化炭素を導入すると共に、排出し、密閉反応器内、つまり親水性シリカ粒子分散液に流通させる。
これにより、超臨界二酸化炭素が溶媒(アルコール及び水)を溶解しつつ、これを同伴してシリカ粒子分散液の外部(密閉反応器内の外部)へと排出され、溶媒が除去される。
【0046】
ここで、超臨界二酸化炭素とは、臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つものである。
【0047】
溶媒除去の温度条件、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、31℃以上350℃以下がよく、望ましくは60℃以上300℃以下、より望ましくは、80℃以上250℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し難くなるため、溶媒の除去がし難くなることがある。また溶媒や超臨界二酸化炭素の液架橋力により粗粉が生じ易くなることがあると考える。一方、この温度が上記範囲を超えると、親水性シリカ粒子表面のシラノール基の縮合により2次凝集体等の粗粉が生じやすくなることがあると考える。
【0048】
また、溶媒除去の温度条件は、親水性シリカ粒子分散液中のアルコールに対する水の質量比により適温が異なる。水はアルコールに比べて超臨界二酸化炭素に溶け込み難い傾向があるが、超臨界二酸化炭素の温度を高くする事で溶解度は高くなる傾向がある。
このため、下記式(11)で表されるyが下記式(12)の範囲内(望ましくは下記式(12−1)の範囲内、より望ましくは式(12−2)の範囲内)で、超臨界二酸化炭素を親水性シリカ粒子分散液に接触させて、溶媒を除去することがよい。
・式(11):y=((親水性シリカ粒子分散液の水質量比/親水性シリカ粒子分散液のアルコール質量比)/温度(℃))「なお、本温度とは、溶媒除去における温度である」
・式(12):0.0001≦y≦0.0016
・式(12−1):0.0003≦y≦0.0012
・式(12−2):0.0005≦y≦0.001
【0049】
上記式(11)で表されるyが、上記範囲未満であると、溶媒を除去する際の親水性シリカ粒子表面のシラノール基の縮合が極端に少なくなることから、溶媒除去後の親水性シリカ粒子表面への吸着水分が多くなることで、疎水化処理後の疎水性シリカ粒子の電気抵抗が低くなり過ぎることがある。一方、上記式(11)で表されるyが上記範囲を超えると、溶媒除去の終点付近で水が多く残留し、液架橋力による親水性シリカ粒子同士の凝集が生じ易くなることがある。
【0050】
一方、溶媒除去の圧力条件、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、例えば、7.38MPa以上40MPa以下がよく、望ましくは10MPa以上35MPa以下、より望ましく15MPa以上25MPa以下である。
この圧力が上記範囲未満であると、超臨界二酸化炭素に溶媒が溶解し難くなる傾向にあり、一方、圧力が上記範囲を超えると、設備が高額となる傾向となる。
【0051】
また、密閉反応器内への超臨界二酸化炭素の導入・排出量は、例えば、15.4L/分/m以上1540L/分/m以下であることがよく、望ましくは77L/分/m以上770L/分/m以下である。
導入・排出量が15.4L/分/m未満であると、溶媒除去に時間がかかるため生産性が悪くなる傾向となる。
一方、導入・排出量が1540L/分/m以上であると、超臨界二酸化炭素がショートパスし、シリカ粒子分散液の接触時間が短くなってしまい、効率的に溶媒除去する事ができない傾向となる。
【0052】
−疎水化処理工程−
疎水化処理工程は、溶媒除去工程と連続して、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により親水性シリカ粒子の表面を疎水化処理する工程である。
つまり、本工程では、例えば、溶媒除去工程から移行する前に、大気開放を行わず、超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により親水性シリカ粒子の表面を疎水化処理する。
具体的には、本工程では、例えば、溶媒除去工程における密閉反応器内への超臨界二酸化炭素を導入・排出を停止した後、密閉反応器内の温度、圧力を調整し、密閉反応器内に、超臨界二酸化炭素が存在する状態で、親水性シリカ粒子に対して一定の割合の疎水化処理剤を投入する。そして、この状態を維持した状態、つまり超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤を反応させて、親水性シリカ粒子の疎水化処理を行う。なお、反応終了後は、密閉反応器内を減圧、冷却させる。
ここで、本工程は、超臨界二酸化炭素中で(つまり超臨界二酸化炭素の雰囲気下で)、疎水化処理を行えばよく、超臨界二酸化炭素を流通(つまり密閉反応器内への超臨界二酸化炭素を導入・排出)させながら疎水化処理を行ってよいし、非流通で疎水化処理を行ってもよい。
【0053】
疎水化処理工程の開始は、溶媒除去工程において、下記式(1)(望ましくは下記式(1−1)、より望ましくは下記式(1−2))を満たす範囲内に達したときに行うことがよい。疎水化処理工程の開始を当該時期とすることにより、親水性シリカ粒子が適度な水分が吸着された状態で、疎水化処理が行われ、親水性シリカ粒子の粗粉の発生が少なく、高疎水化度で良好な電気抵抗を有する親水性シリカ粒子が得られ易くなる。
なお、式(1)中、Tは超臨界二酸化炭素の温度[℃]を示す。Sは、シリカ粒子分散液の固形分濃度[%]、Aは、シリカ粒子分散液の液量[g]を示す。Xは、標準状態における二酸化炭素の流通量[L]を示す。
・式(1)10≦X/(A×1.977)×T/(1−S/100)≦500
・式(1−1)15≦X/(A×1.977)×T/(1−S/100)≦300
・式(1−2)20≦X/(A×1.977) ×T/(1−S/100)≦100
ここで、超臨界二酸化炭素の温度T[℃]とは、溶媒除去工程における超臨界二酸化炭素の温度である。標準状態における二酸化炭素の流通量X[L]とは、溶媒除去工程において密閉反応器内へ導入・排出する超臨界二酸化炭素を標準状態とした二酸化炭素の流通量(積算量)である。シリカ粒子分散液の固形分濃度S[%]とは、溶媒除去処理の対象となる、つまり準備するシリカ粒子分散液に対する親水性シリカ粒子の質量比である。シリカ粒子分散液の液量A[g]とは、溶媒除去処理の対象となる、つまり準備するシリカ粒子分散液の質量である。
【0054】
疎水化処理工程において、反応器の容積に対する親水性シリカ粒子の量(つまり仕込み量)は、例えば、50g/L以上600g/L以下がよく、望ましくは100g/L以上500g/L以下、より望ましくは150g/L以上400g/L以下である。
この量が上記範囲より少ないと疎水処理剤の超臨界二酸化炭素に対する濃度が低くなりシリカ表面との接触確率が低下し、疎水化反応が進み難くなる。一方で、この量が上記範囲よりも多いと、疎水処理剤の超臨界二酸化炭素に対する濃度が高くなり、疎水処理剤が超臨界二酸化炭素へ溶解しきれず分散不良となり、粗大凝集物を発生させやすくなる。
【0055】
超臨界二酸化炭素の密度は、例えば、0.10g/ml以上0.60g/ml以下がよく、望ましくは0.10g/ml以上0.50g/ml以下、より望ましくは0.2g/ml以上0.30g/ml以下)である。
この密度が上記範囲より低いと、超臨界二酸化炭素に対する疎水処理剤の溶解度が低下し、凝集物を発生させる傾向がある。一方で、密度が上記範囲よりも高いと、シリカ細孔への拡散性が低下するため、疎水化処理が不十分となる場合がある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカに対しては上記密度範囲での疎水化処理が必要である。
なお、超臨界二酸化炭素の密度は、温度及び圧力等により調整される。
【0056】
疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を持つ公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシランなどのシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
これら疎水化処理剤の中も、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチル基を有する有機珪素化合物が好適である。
【0057】
疎水化処理剤の使用量は、特に限定はされないが、疎水化の効果を得るためには、例えば、親水性シリカ粒子に対し、例えば、1質量%以上60質量%以下がよく、望ましくは5質量%以上40質量%以下、より望ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0058】
ここで、疎水化処理の温度条件(反応下の温度条件)、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、80℃以上300℃以下がよく、望ましくは100℃以上300℃以下、より望ましくは150℃以上250℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、疎水化処理剤と親水性シリカ粒子表面との反応性低下する。一方で、温度が上記範囲を超えると、親水性シリカ粒子のシラノール基間による縮合反応が進み、結果として反応サイトの減少となり疎水化度が向上し難くなる場合がある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカに対しては上記温度範囲での疎水化処理が必要である。
【0059】
一方、疎水化処理の圧力条件(反応下の温度条件)、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、上記密度を満足する条件であればよいが、例えば、8MPa以上30MPa以下がよく、望ましくは10MPa以上25MPa以下、より望ましく15MPa以上20MPa以下である。
【0060】
以上説明した疎水化処理する工程を経て、疎水性シリカ粒子が得られる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。また、「部」は特に断りがない限り「質量部」を示す。
【0062】
[親水性シリカ粒子分散液の作製]
(シリカ粒子分散液1)
攪拌機、滴下ノズル、温度計を具備した1.5Lのガラス製反応容器にメタノール255部、10%アンモニア水33部を添加して混合した。この混合液を25℃に調整した後、攪拌しながらテトラメトキシシラン53部と3.8%アンモニア水79部を同時に添加を開始し、60分かけて滴下を行い親水性シリカ粒子分散液420部を得た。その後、親水性シリカ粒子分散液にメタノールを420部加え60℃で撹拌しながら加熱し分散液重量が420部になるまで濃縮した。この操作を更に2回繰り返し行い、シリカ重量比が50質量%、分散液中のアルコールに対する水の重量比が0となるように調整した。
このようにして、親水性シリカ粒子が分散されたシリカ粒子分散液1を得た。
【0063】
(シリカ粒子分散液2〜15)
シリカ粒子分散液1に対し水及びメタノールを加えシリカ質量比、分散液中のアルコールに対する水の質量比が異なる分散液を得た。得られたシリカ粒子分散液のシリカ重量比、分散液中のアルコールに対する水の質量比を表1へ示す。
【0064】
[実施例1]
以下に示すようにして、シリカ粒子分散液の溶媒除去処理と共に、親水性シリカ粒子の疎水化処理を行った。なお、溶媒除去処理及び疎水化処理には、二酸化炭素ボンベ、二酸化炭素ポンプ、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)、背圧弁を具備した装置を用いた。背圧弁後方には除去した溶媒をトラップするためのトラップ装置及び、二酸化炭素流量を計測するためのガス流量計(株式会社シナガワ製 DC−5)を設置した。
【0065】
まず、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)、背圧弁を具備した装置を用意し、オートクレーブへシリカ粒子分散液1を400部投入する。その後、オートクレーブ内を液化二酸化炭素で満たす。
次に、撹拌機を200rpmで運転させ、ヒーターにより150℃まで昇温後、二酸化炭素ポンプにより20MPaまで昇圧する。これにより、オートクレーブ内に、超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液の溶媒除去を行う。トラップ装置は冷媒により0℃に保たれており除去された溶媒を二酸化炭素から分離することができる。その後、二酸化炭素はガス流量計を通り流量が計測される。
次に、流通した超臨界二酸化炭素の流通量(積算量:標準状態の二酸化炭素の流通量として測定)が20Lとなった時点で、超臨界二酸化炭素の流通を停止した後、疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン(和光純薬、以下HMDS)を親水性シリカ粒子量に対し30質量%を投入する。
その後、ヒーターにより温度150℃、二酸化炭素ポンプにより圧力20MPaを維持し、オートクレーブ内で二酸化炭素の超臨界状態を維持させつつ、撹拌機を200rpmで運転させ、疎水化処理時間として30分間保持した。30分間保持した後、再び超臨界二酸化炭素を流通させ背圧弁より圧力を大気圧まで開放し室温まで冷却させた。その後、撹拌機を停止しオートクレーブより疎水化処理された疎水性シリカ粒子の粉体を取り出した。
【0066】
[実施例2〜90]
表2〜表6に従って、シリカ粒子分散液の種類及び撹拌機付きオートクレーブへの投入量、溶媒除去処理条件として超臨界二酸化炭素の温度及び流通量(積算量:標準状態の二酸化炭素の流通量として測定)、疎水化処理開始時期(溶媒除去処理終了時期)を変更した以外は、実施例1と同様にして、疎水性シリカ粒子を得た。
ここで、表2〜表6中、疎水化処理開始時期(溶媒除去処理終了時期)として示す「式(1)=」の欄とは、「式:X/(A×1.977)×T/(1−S/100)」の値を示す欄である。そして、Tが超臨界二酸化炭素の温度[℃]であり、Xが標準状態における二酸化炭素の流通量[L](表中、溶媒除去処理における超臨界二酸化炭素の流通量に相当)であり。Sがシリカ粒子分散液の固形分濃度S[%](表中、シリカ粒子分散液のシリカ質量比に相当)であり、Aがシリカ粒子分散液の液量(表中、シリカ粒子分散液の投入量に相当)である。
【0067】
[比較例1]
以下に示すようにして、シリカ粒子分散液の溶媒除去処理と共に、親水性シリカ粒子の疎水化処理を行った。なお、溶媒除去処理及び疎水化処理には、二酸化炭素ボンベ、二酸化炭素ポンプ、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)、背圧弁を具備した装置を用いた。背圧弁後方には除去した溶媒をトラップするためのトラップ装置及び、二酸化炭素流量を計測するためのガス流量計(株式会社シナガワ製 DC−5)を設置した。
【0068】
まず、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)、背圧弁を具備した装置を用意し、オートクレーブへシリカ粒子分散液1を400部投入する。その後、オートクレーブ内を液化二酸化炭素で満たす。
次に、撹拌機を200rpmで運転させ、ヒーターにより150℃まで昇温後、二酸化炭素ポンプにより20MPaまで昇圧する。これにより、オートクレーブ内に、超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液の溶媒除去を行う。トラップ装置は冷媒により0℃に保たれており除去された溶媒を二酸化炭素から分離することができる。その後、二酸化炭素はガス流量計を通り流量が計測される。
次に、流通した超臨界二酸化炭素の流通量(積算量)が20Lとなった時点で、超臨界二酸化炭素の流通を停止した。その後、背圧弁より圧力を大気圧まで開放し室温まで冷却させ撹拌機を停止しオートクレーブより親水性シリカ粒子を取り出した。取り出した後、オートクレーブへ親水性シリカ粒子と親水性シリカ粒子に対し30質量%のHMDSを投入する。
その後、ヒーターにより温度150℃まで昇温し、二酸化炭素ポンプにより圧力20MPaまで昇圧した。温度、圧力を維持したまま撹拌機を200rpmで運転させ、疎水化処理時間として30分間保持した。30分間保持した後、再び超臨界二酸化炭素を流通させ背圧弁より圧力を大気圧まで開放し室温まで冷却させた。その後、撹拌機を停止しオートクレーブより疎水化処理された疎水性シリカ粒子の粉体を取り出した。
【0069】
[比較例2〜12]
表7に従って、シリカ粒子分散液の種類及び撹拌機付きオートクレーブへの投入量、溶媒除去処理条件として超臨界二酸化炭素の温度及び流通量(積算量:標準状態の二酸化炭素の流通量として測定)、疎水化処理開始時期(溶媒除去処理終了時期)を変更した以外は、比較例1と同様にして、疎水性シリカ粒子を得た。
ここで、表7中、疎水化処理開始時期(溶媒除去処理終了時期)として示す「式(1)=」の欄とは、「式:X/(A×1.977)×T/(1−S/100)」の値を示す欄である。そして、Tが超臨界二酸化炭素の温度[℃]であり、Xが標準状態における二酸化炭素の流通量[L](表中、溶媒除去処理における超臨界二酸化炭素の流通量に相当)であり。Sがシリカ粒子分散液の固形分濃度S[%](表中、シリカ粒子分散液のシリカ質量比に相当)であり、Aがシリカ粒子分散液の液量(表中、シリカ粒子分散液の投入量に相当)である。
【0070】
[評価]
各例で得られた疎水性シリカ粒子の特性を評価した。各特性は以下の通りである。結果を表2〜表7に示す。
【0071】
−疎水化度−
イオン交換水50ml、試料となる疎水性リシリカ粒子0.2部をビーカーに入れ、マグネティックスターラーで攪拌しながらビュレットからメタノールを滴下し、試料全量が沈んだ終点におけるメタノール水混合溶液中のメタノール質量分率を疎水化度とした。60%以上を良しとした。
【0072】
−体積抵抗−
体積抵抗率(Ω・cm)は以下のように測定した。なお、測定環境は、温度20℃、湿度50%RHとする。そして、求めた体積抵抗率(Ω・cm)のlog値を「体積抵抗値」とする。20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となる疎水性シリカ粒子を1〜3mm程度の厚さになるように載せ、疎水性シリカ粒子層を形成する。この上に前記同様の20cm2の電極板を載せシリカ粉末層を挟み込む。疎水性シリカ粒子間の空隙をなくすため、疎水性シリカ粒子層上に載置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから疎水性シリカ粒子層の厚み(cm)を測定する。疎水性シリカ粒子層上下の両電極には、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が所定の値となるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、疎水性シリカ粒子の体積抵抗率(Ω・cm)を計算する。疎水性シリカ粒子の体積抵抗率(Ω・cm)の計算式は、下式に示す通りである。
なお、式中、ρは疎水性シリカ粒子の体積抵抗率(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、I0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは疎水性シリカ粒子層の厚み(cm)をそれぞれ表す。本評価では印加電圧が1000Vの時の体積抵抗率を用いた。
・式:ρ=E×20/(I−I0)/L
【0073】
−粗粉割合−
粗粉割合は、LSコールターより測定し、1μm以上の粒子の割合として求めた。粗大粒子は少ないほど良いが、1μm以上の粗大粒子の割合が、20体積%以下、好ましくは5体積%以下、より好ましくは1体積%以下であることが良い。0.1体積%以下を<0.1と表記した。
【0074】
−総合評価−
上記各評価に基づき、下記基準により評価した。
◎:疎水化度、体積抵抗値、粗大粒子割合のいずれも良好な評価結果である。
○:◎より劣る評価項目があるが、概ね良好な評価結果である。
△:疎水化度、体積抵抗値、粗大粒子割合の評価結果の中で不十分な評価結果が存在する。
×:疎水性シリカとして使用に耐えない。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、疎水化度、体積抵抗、粗粉割合が共に良好な疎水性シリカ粒子が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性シリカ粒子とアルコール及び水を含む溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する分散液準備工程と、
超臨界二酸化炭素を流通させ、前記シリカ粒子分散液の前記溶媒を除去する溶媒除去工程と、
前記溶媒除去工程と連続して、前記超臨界二酸化炭素中で、疎水化処理剤により前記親水性シリカ粒子の表面を疎水化処理する疎水化処理工程と、
を有する疎水性シリカ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記分散液準備工程において、前記アルコールに対する前記水の質量比が0.1以上1.0以下の前記シリカ粒子分散液を準備する請求項1に記載の疎水性シリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記超臨界二酸化炭素の温度をT[℃]とし、標準状態における二酸化炭素の流通量をX[L]とし、前記シリカ粒子分散液の固形分濃度をS[%]とし、前記シリカ粒子分散液の液量をA[g]とした場合、溶媒除去工程において、下記式(1)を満たす範囲内に達したときに、前記疎水化処理工程を開始する請求項1又は2に記載の疎水性シリカ粒子の製造方法。
・式(1):10≦X/(A×1.977)×T/(1−S/100)≦500

【公開番号】特開2013−60338(P2013−60338A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201073(P2011−201073)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】