説明

発光効率に優れた有機発光素子およびその製造方法

【課題】本発明者らは、前面に発光できる有機発光素子において、素子の発光層から出る光に対して透過度(transmittance)が80%以上である上部電極を使う場合であっても、上部電極と空気層との間の屈折率の差によってmicrocavity effectを示すことができ、この場合、上部電極上にさらに層を形成して光路長を調節することができるという事実を明らかにした。このような方法により、従来技術に比べて遥かに容易に光路長を調節して、発光効率に優れた有機発光素子を提供することができる。
【解決手段】前記目的を達成するために、本発明は、下部電極、発光層をはじめとする1層以上の有機物層、および上部電極を含む有機発光素子であって、赤色、緑色および青色が各々透過する領域のうちの少なくとも一つの領域の前記上部電極上に屈折率が1.3〜3である層がさらに備えられることを特徴とする有機発光素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機発光素子およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、microcavity effectと関連した光路長が容易に調節された有機発光素子およびその製造方法に関する。本出願は2007年2月5日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2007−0011512号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
当技術分野には様々な種類の有機発光素子が公知されており、それらは相異なる用途のために使われ得る。有機発光素子には前面発光型有機発光素子、背面発光型有機発光素子および両面発光型有機発光素子がある。前記背面発光型有機発光素子がアクティブマトリックスディスプレイに用いられると、薄膜トランジスタ(TFT)が発光源の前面に配置されることにより、有効ディスプレイ領域の比(開口率)が減少する。
【0003】
このような問題はさらに多い数のTFTの利用を必要とするさらに精巧なディスプレイを製作する場合により著しく現れる。後面発光有機発光素子の場合には一般的に40%未満の開口率を有し、例えば、14”級のためのTFTを使うWXGA型ディスプレイから予測される開口率は20%未満である。このような小さい開口率はOLEDの駆動電力消費および寿命に悪影響を及ぼす。
【0004】
前面発光型有機発光素子は前記のような問題を解決することができる。従来の有機発光素子は基板上に正極、有機物層および負極を順次積層して製造し、前記負極材料としては仕事関数の小さい材料である金属が用いられた。前面発光型有機発光素子においては、上部電極が透明でなければならないため、前記負極を金属が可視光線を透過できるほど非常に薄い厚さで形成した。また、前面発光型有機発光素子においては、前面への発光量を最大化するために、下部電極である正極の下部に反射層を備えた。このように負極を上部電極にし、下部電極の下部に反射層を備えた従来の前面発光型有機発光素子を図1に例示する。
【0005】
前記のような前面発光型有機発光素子においては、上部電極と下部電極の下部に備えられた反射層がミラー(mirror)として作用することにより、有機発光素子の発光層から出た光が前記ミラーに反射するようになる。これにより、光の相殺干渉と補強干渉が生じて一定な波長の光だけが維持され、残りの波長の光は強度が弱くなる現象が生じる。このような現象をmicrocavity effectという。前面発光型有機発光素子においては、前記のような現象により、発光スペクトルが移動(shift)するか色座標が変わる。ここで、前記ミラーの間の距離を光路長(optical length)という。
【0006】
前記光路長を調節して各発光色相別の光の光干渉強度がピークになるようにする試みがなされている。例えば、韓国特許公開10−2005−0048412号には、有機発光素子の下部電極である正極の厚さを調節する方法が記載されている(図2)。しかし、このように下部電極を形成するために一般的に用いられるスパッタリング工程において、各発光色相別に別途のマスク(mask)を使用して下部電極の厚さを各発光色相別に調節することは、マスクの寿命短縮、工程中の異物生成などの問題がある。また、色相別発光層下部の厚さの差による平坦ではない構造も全体素子製作の安定性を阻害し得る。また、光路長を調節するために有機発光素子の有機物層の厚さを調節することもできるが(図3)、この場合も工程上の困難があるだけでなく、駆動電圧が上昇する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許公開10−2005−0048412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、前面に発光できる有機発光素子において、素子の発光層から出る光に対して透過度(transmittance)が80%以上である上部電極を使う場合であっても、上部電極と空気層との間の屈折率の差によってmicrocavity effectを示すことができ、この場合、上部電極上にさらに層を形成して光路長を調節することができるという事実を明らかにした。このような方法により、従来技術に比べて遥かに容易に光路長を調節して、発光効率に優れた有機発光素子を提供することができる。
【0009】
そこで、本発明は、発光色相別に最適なmicrocavity effectを示すことができるように光路長が容易に調節された有機発光素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、下部電極、発光層をはじめとする1層以上の有機物層、および上部電極を含む有機発光素子であって、赤色、緑色および青色が各々透過する領域のうちの少なくとも一つの領域の前記上部電極上に屈折率が1.3〜3である層がさらに備えられることを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0011】
本発明に係る有機発光素子において、前記上部電極は前記発光層から出る光に対して透過度(transmittance)が80%以上であることが好ましい。また、前記上部電極は厚さが500Å以上であることが好ましい。また、前記上部電極の屈折率と前記上部電極に接する有機物層の屈折率の差が0.5未満であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る有機発光素子において、前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和が前記層を透過する発光色に応じて相異なるように調節されることが好ましい。
【0013】
前記層を透過する発光色が赤色である領域においては、前記上部電極の厚さと前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和は10〜400nmであることが好ましい。また、前記層を透過する発光色が緑色である領域においては、前記上部電極の厚さと前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和は10〜300nmであることが好ましい。また、前記層を透過する発光色が青色である領域においては、前記上部電極の厚さと前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和は10〜200nmであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は前述した有機発光素子を含む電子素子または照明機器を提供する。
【0015】
また、本発明は、基材上に下部電極、発光層をはじめとする1層以上の有機物層および上部電極を順次形成するステップを含む有機発光素子の製造方法であって、赤色、緑色および青色が各々透過する領域のうちの少なくとも一つの領域の前記上部電極上に屈折率が1.3〜3である層をさらに形成することを特徴とする有機発光素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有機発光素子において、赤色、緑色および青色が各々透過する領域のうちの少なくとも一つの領域の前記上部電極上に屈折率が1.3〜3である層をさらに備えることにより、microcavity effectと関連した光路長を容易に調節することができ、それにより、有機発光素子の発光効率も容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】前面有機発光素子におけるmicrocavity effectを図式化した図である。
【図2】従来技術に係る光路長の調節方法の例示図である。
【図3】従来技術に係る光路長の調節方法の例示図である。
【図4】本発明に係る有機発光素子の一例の断面図である。
【図5】本発明に係る有機発光素子の一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る有機発光素子において、素子の発光層から出る光に対して透過度(transmittance)が80%以上である上部電極を使う場合、上部電極と空気層との間の屈折率の差によってmicrocavity effectを示すことができ、この場合、microcavity effectと関連した光路長の上部境界線が上部電極と空気の境界面となる。これとは異なり、従来技術においては上部電極として反射層の役割をすることができる光透過度の低い上部電極を使っており、これにより、microcavity effectと関連した光路長の上部境界線は上部電極と有機物層の境界面となる。
【0020】
前述した従来技術との違いにより、本発明においては、従来技術とは異なり、上部電極上にさらに層を形成して光路長を調節することができる。このような方法を利用することにより、従来技術に比べて遥かに容易に光路長を調節して、発光効率に優れた有機発光素子を提供することができる。本発明においては、前記光路長を調節するために、上部電極上に屈折率が1.3〜3である層を形成する。
【0021】
屈折率が1.3〜3の範囲内である場合、空気層との境界面において光が反射することができ、これにより、microcavity effectを示すことができる。
【0022】
本発明においては、発光色の波長に応じてmicrocavity effectを極大化できるように光路長を調節するために、前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和が、前記層を透過する発光色の波長に応じて適切な範囲に調節されることが好ましい。前記層を透過する発光色が赤色である領域においては、前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である追加層の厚さの和は10〜400nmであることが好ましい。また、前記層を透過する発光色が緑色である領域においては、前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和は10〜300nmであることが好ましい。また、前記層を透過する発光色が青色である領域においては、前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和は10〜200nmであることが好ましい。
【0023】
前記層の厚さの和が10nm未満である場合には、電極として作用するための導電性と前面発光のための透過度に影響を及ぼし、前記層の厚さの和が赤色、緑色および青色の透過領域において各々400nm、300nmおよび200nmを超過する場合には、前面発光のための透過度に影響を及ぼす。
【0024】
本発明に係る有機発光素子は前面発光型または両面発光型有機発光素子であってもよいが、本発明では前面発光型の場合が好ましい。また、本発明に係る有機発光素子は、下部電極が正極であり、上部電極が負極である正構造であってもよく、あるいは下部電極が負極であり、上部電極が正極である逆構造であってもよい。
【0025】
以下では本発明に係る有機発光素子の各構成要素別に説明する。
【0026】
本発明において、前記屈折率が1.3〜3である層は屈折率が1.3〜3以内であればその種類に特に限定されず、好ましい例としては有機物、無機物、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化窒化物、金属ハロゲン化物などが挙げられる。具体的には、ITO(インジウムスズ酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)のようなTCO(Transparent Conducting Oxide)と、チタニウム酸化物(Titanium Oxide)、シリコン窒化物(Silicon Nitride)、シリコン酸化窒化物(Silicon Oxynitride)、フッ化リチウム(Lithium Fluoride)、下記化学式1の化合物、イミダゾール基、オキサゾール基およびチアゾール基から選択された官能基を有する化合物、NPB(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)などを用いることができる。前記屈折率が1.3〜3である層の材料は上部電極材料と同一であってもよい。
【化1】

【0027】
前記化学式1において、R〜Rは各々水素、ハロゲン原子、ニトリル(−CN)、ニトロ(−NO)、スルホニル(−SO11)、スルホキシド(−SOR11)、スルホンアミド(−SONR1112)、スルホネート(−SO11)、トリフルオロメチル(−CF)、エステル(−COOR11)、アミド(−CONHR11または−CONR1112)、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分枝鎖のC−C12アルコキシ、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分枝鎖のC−C12のアルキル、置換もしくは非置換の芳香族もしくは非芳香族の複素環、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のモノ−またはジ−アリールアミン、および置換もしくは非置換のアラルキルアミンからなる群から選択され、前記R11およびR12は各々置換もしくは非置換のC−C60のアルキル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換の5−7員複素環からなる群から選択される。
【0028】
前記化学式1の化合物の具体的な例としては下記化学式11〜16で示される化合物が挙げられるが、これらだけに限定されるものではない:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0029】
前記イミダゾール基、オキサゾール基およびチアゾール基から選択された官能基を有する化合物としては下記化学式2の化合物が挙げられる:
【化8】

【0030】
前記化学式2において、RおよびRは互いに同じであるか異なり、各々独立に、水素、C−C20の脂肪族炭化水素、芳香族環または芳香族複素環であり;Arは芳香族環または芳香族複素環であり;Rは水素、C−Cの脂肪族炭化水素、芳香族環または芳香族複素環であり;XはO、SまたはNR13であり;R13は水素、C−Cの脂肪族炭化水素、芳香族環または芳香族複素環であり;但し、RおよびRが同時に水素である場合は除く。
【0031】
前記化学式2の化合物としては下記化学式21の化合物が挙げられるが、これだけに限定されるものではない:
【化9】

【0032】
前記屈折率が1.3〜3である層は、熱(thermal)蒸着、湿式蒸着、スパッタリング、CVD(Chemical Vapour Deposition)、LITI(Lazer Induced Thermal Imaging)、プリンティング(Printing)方法などにより形成することができる。前記屈折率が1.3〜3である層は図4のように各発光色の領域別に形成することもでき、図5のように各発光色の領域に対して共通する場合に一括に形成することもできる。
【0033】
本発明に係る有機発光素子は、前記屈折率が1.3〜3である層をさらに備えることを除いては、当技術分野に知られている材料と方法により製造することができる。
【0034】
本発明において、前記下部電極は正極または負極であり得る。下部電極が正極である場合、通常、有機物層への正孔注入が円滑になるように仕事関数の大きい材料からなる。具体的な例としてはバナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。下部電極が負極である場合。通常、有機物層への電子注入が容易になるように仕事関数の小さい材料からなる。具体的な例としてはマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造物質などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0035】
本発明において、前記上部電極は負極または正極であり得る。上部透明電極が負極である場合、通常、有機物層への電子注入が容易になるように仕事関数の小さい材料からなる。具体的な例としてはマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造物質などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。上部電極が正極である場合、通常、有機物層への正孔注入が円滑になるように仕事関数の大きい材料からなる。具体的な例としてはバナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。但し、上部電極が金属のような不透明材料である場合には透明になるように薄い厚さに形成しなければならない。
【0036】
前記上部電極は前記発光層から出る光に対して透過度(transmittance)が80%以上であることが好ましく、上部電極は厚さが500Å以上であることが好ましい。前記上部電極の厚さは5,000Å以下に設定することができるが、これは、当技術分野に知られた技術により調節することができる。
【0037】
また、前記上部電極の屈折率と前記上部電極に接する有機物層の屈折率の差が0.5未満であることが好ましい。このように上部電極とそれに接する有機物層の屈折率の差が0.5未満であることが上部電極と有機物層との間において全反射が起こることを防止するのに有利である。
【0038】
本発明において、前記有機物層は正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層などを含む多層構造であってもよいが、これに限定されず、単層構造であってもよい。また、前記有機物層は、様々な高分子素材を用い、蒸着法ではなく、溶媒処理(solvent process)、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、スクリーン印刷、インクジェット印刷または熱転写法などの方法により、さらに少ない数の層に製造することができる。
【0039】
正孔注入物質としては低電圧において正極から正孔の注入を円滑に受ける物質であって、正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては金属ポルフィリン(porphyrine)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0040】
正孔輸送物質としては正極や正孔注入層から正孔の輸送を受けて発光層に移せる物質であって、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としてはアリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0041】
発光物質としては正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子の輸送を各々受けて結合させることによって可視光線領域の光を出せる物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体的な例としては8−ヒドロキシ−キノリンアルミニウム錯体(Alq);カルバゾール系化合物;二量化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10−ヒドロキシベンゾキノリン−金属化合物;ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0042】
電子輸送物質としては負極から電子の注入を円滑に受けて発光層に移せる物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては8−ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alqを含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン−金属錯体などが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
【0043】
また、本発明は前述した有機発光素子を含む電子素子または照明器期を含む。前記電子素子としてはディスプレイと表示素子などが挙げられるが、これらの種類だけに限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極、発光層を含む1層以上の有機物層、および上部電極を含む有機発光素子であって、赤色、緑色および青色が各々透過する領域のうちの少なくとも一つの領域の前記上部電極上に屈折率が1.3〜3である層がさらに備えられることを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
前記上部電極は、透過度が80%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記上部電極は、厚さが500Å以上であることを特徴とする、請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記上部電極の屈折率と前記上部電極に接する有機物層の屈折率の差が0.5未満であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和を前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層を透過する発光色に応じて相異なるように調節することを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層を透過する発光色が赤色である領域においては、前記上部電極の厚さと前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和が10〜400nmであることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層を透過する発光色が緑色である領域においては、前記上部電極の厚さと前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和が10〜300nmであることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層を透過する発光色が青色である領域においては、前記上部電極の厚さと前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和が10〜200nmであることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記屈折率が1.3〜3である層は、有機物、無機物、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化窒化物および金属ハロゲン化物からなる群から選択された材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記屈折率が1.3〜3である層は、TCO(Transparent Conducting Oxide)、チタニウム酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、フッ化リチウム、下記化学式1の化合物、イミダゾール基、オキサゾール基およびチアゾール基から選択された官能基を有する化合物、およびNPB(4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)からなる群から選択された材料からなることを特徴とする、請求項9に記載の有機発光素子。
【化1】

[式中、R〜Rは各々水素、ハロゲン原子、ニトリル(−CN)、ニトロ(−NO)、スルホニル(−SO11)、スルホキシド(−SOR11)、スルホンアミド(−SONR1112)、スルホネート(−SO11)、トリフルオロメチル(−CF)、エステル(−COOR11)、アミド(−CONHR11または−CONR1112)、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分枝鎖のC−C12アルコキシ、置換もしくは非置換の直鎖もしくは分枝鎖のC−C12のアルキル、置換もしくは非置換の芳香族もしくは非芳香族の複素環、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のモノ−またはジ−アリールアミン、および置換もしくは非置換のアラルキルアミンからなる群から選択され、前記R11およびR12は各々置換もしくは非置換のC−C60のアルキル、置換もしくは非置換のアリールおよび置換もしくは非置換の5−7員複素環からなる群から選択される]
【請求項11】
前記屈折率が1.3〜3である層は前記上部電極と同一材料からなることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前面発光型である、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項13】
前記上部電極が正極であり、前記下部電極が負極であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記上部電極が負極であり、前記下部電極が正極であることを特徴とする、請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項15】
請求項1〜14のうちのいずれか一項による有機発光素子を含む電子素子。
【請求項16】
請求項1〜14のうちのいずれか一項による有機発光素子を含む照明機器。
【請求項17】
基材上に下部電極、発光層を含む1層以上の有機物層および上部電極を順次形成するステップを含む有機発光素子の製造方法であって、赤色、緑色および青色が各々透過する領域のうちの少なくとも一つの領域の前記上部電極上に屈折率が1.3〜3である層をさらに形成することを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【請求項18】
前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和を前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層を透過する発光色に応じて相異なるように調節することを特徴とする、請求項17に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項19】
前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層を透過する発光色が赤色である領域においては、前記上部電極の厚さと前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和を10〜400nmに調節することを特徴とする、請求項17に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項20】
前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層を透過する発光色が緑色である領域においては、前記上部電極の厚さと前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和を10〜300nmに調節することを特徴とする、請求項17に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項21】
前記上部電極と前記屈折率が1.3〜3である層を透過する発光色が青色である領域においては、前記上部電極の厚さと前記屈折率が1.3〜3である層の厚さの和を10〜200nmに調節することを特徴とする、請求項17に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項22】
前記屈折率が1.3〜3である層の形成時、熱蒸着、湿式蒸着、スパッタリング、CVD(Chemical Vapour Deposition)、LITI(Lazer Induced Thermal Imaging)およびプリンティング方法からなる群から選択された方法を利用することを特徴とする、請求項17に記載の有機発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110120(P2013−110120A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−19647(P2013−19647)
【出願日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【分割の表示】特願2009−548169(P2009−548169)の分割
【原出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】