説明

発光素子、多色表示装置及び発光素子の製造方法

【課題】本発明の課題は、色変換方式の有機EL素子における発光の色変換効率を改善し、かつ色純度の高い発光が得られる発光素子、多色表示装置及び発光素子の製造方法を提供することである。
【解決手段】基板上に、一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光部と、該有機電界発光部からの発光を吸収して異なる波長の光を放射する色変換層を備えてなる発光素子であって、前記有機電界発光部と前記色変換層が共に光反射層と半透過半反射層で挟持されたマイクロキャビティ構造内に配置されていることを特徴とする発光素子、多色表示装置及び発光素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高色純度の発光が得られる発光素子、多色表示装置及び発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を通じることによって励起され発光する薄膜材料を用いた有機電界発光素子(以後の説明で、有機EL素子と記する場合がある)が知られている。有機EL素子は、低電圧で高輝度の発光が得られるために、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い潜在用途を有し、それらの分野でデバイスの薄型化、軽量化、小型化、および省電力のなどの利点を有する。このため、将来の電子ディスプレイ市場の主役としての期待が大きい。しかしながら、実用的にこれらの分野で従来ディスプレイに代わって用いられるためには、発光輝度と色調、広い使用環境条件下での耐久性、安価で大量生産性など多くの技術改良が課題となっている。
【0003】
また、有機EL素子を用いた多色表示装置は、該素子を平面上に複数配列し、直線発光もしくは平面発光する装置である。配列する発光素子数は特に限定されないが、目的と用途によって求められる長さもしくは面積の発光を得るように決定される。一般には、小面積の場合には10個×10個以上が2次元配列され、比較的大きい面積では100個×100個以上、大きい面積では1000個×1000個以上が2次元配列される。
例えば、図1に示す模式図は発光素子(Px)を12個×12個、合計144個平面上に配列した表示装置(D)の素子配列である。破線で囲まれた100個の発光素子からなる領域が有効発光領域である。1つの発光素子のサイズが4mm×4mmとすると有効発光領域は約100mm×100mmである。
【0004】
これらの表示装置を効率よく、生産することも実用的には大きな課題であり、生産性に優れた素子構成を開発することも技術課題となっている。
【0005】
例えば、多色表現のための赤(R)発光、緑(G)発光、青(B)発光の3色の発光素子を、それぞれR、G、Bに対応した発光層を塗り分けて作製する方式の多色表示装置が知られているが、RGBを塗り分ける難易度が高く、画面サイズが大きくなるほど、マスクのたわみや伸縮に起因してアライメントがずれ、生産歩留まりの低下が顕著になる問題がある。特に、今後開発が活発化すると考えられるフレキシブル基板を用いた表示装置においては、マスクだけではなく基板も撓んだり伸縮したりするので、さらに困難となる。
【0006】
別の多色表示装置として、白色発光素子+カラーフィルター方式が知られている。この方式では、白色発光素子にそれぞれR、G、Bフィルターを組合せてR、G、Bの発光を取りだすものである。該方式では、白色光からフィルターにより3原色へ色分離するため、各々の光量は約1/3に低下することになり、本質的に輝度が低下し、発光効率が低下する問題を含んでいる。
【0007】
さらに別の多色表示装置として、CCM(色変換方式−Color Changing Mediums)方式が知られている。CCM方式とは、発光素子が発光した光を色変換媒体(CCM)が吸収し、吸収した光より長波長の別の色の光に変換して放射する方式である。例えば、青色発光素子にG変換CCMを組みあわせて、G光を取り出すことができ、また、R変換CCMを組みあわせてR光を取り出すことができる。これらの組合せにより多色表示装置を組み立てることができる。CCM方式では、色変換層の光変換をロスなく高い効率で達成できれば、理論上は青色素子と同等の外部量子収率のG発光素子、R発光素子が作製可能である。
【0008】
しかしながら、現実的には、青色光をほぼ100%吸収し、緑色光や赤色光に100%変換可能なCCMを設計するのは困難である。100%吸収されずに青色光の一部が漏れて青色+緑色、あるいは青色+赤色になってしまい、緑色や赤色の純度が低下する。また、青色光の吸収を高め、漏れを少なくするためには、色変換層を分厚くする必要があり、その結果、光散乱のために画素が滲み解像度が低下する問題があった。また、CCMから放射される発光は波長分布を有し、それがそのまま放射されるため、シャープな緑色や赤色を得ることが困難で、色純度が低下するという問題があった。
【0009】
色純度の改善方法として、マイクロキャビティ(多重干渉)を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。有機EL素子を光反射膜と半透過膜で挟むと、該素子内で発光した光は、光反射膜と半透過膜間で反射を繰り返し共振する結果、光反射膜と半透過膜間の距離(共振長)により外部に取り出される光の波長が限定されるので、もともとの発光スペクトルに比較して狭いスペクトル幅の発光を取り出される技術である。このマイクロキャビティ構造ではキャビティ内の発光と共振長の組合せにより、所望の波長を増幅して取り出すことができる。しかしながら、当然のことながら、発光素子からの発光に含まれていない波長は増幅できないため、多色表示のためには、それぞれR、G、Bに対応した発光層を塗り分けて作製する必要があった。従って、前述のように大画面、あるいはフレキシブル表示装置に用いるのは困難であった。
【特許文献1】特開2002−359076号公報
【特許文献2】特表2002−520801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高色純度の発光が得られ発光素子、多色表示装置及び発光素子の製造方法を提供することを課題とする。さらに発光素子部を共通にした多色表示装置であって、製造が簡便な多色表示装置及び発光素子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決する事を見出された。
<1> 基板上に、一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光部と、該有機電界発光部からの発光を吸収して異なる波長の光を放射する色変換層を備えてなる発光素子であって、前記有機電界発光部と前記色変換層が共に光反射層と半透過半反射層で挟持されたマイクロキャビティ構造内に配置されていることを特徴とする発光素子。
<2> 前記マイクロキャビティ構造を形成する光反射層及び半透過半反射層の少なくとも一方が前記電極の一方であることを特徴とする<1>に記載の発光素子。
<3> 前記有機電界発光部の発光ピーク波長が500nmより短波長であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の発光素子。
<4> 前記マイクロキャビティ構造により前記基板の法線方向で強められる光の波長が、前記色変換層から放射される光の波長であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の発光素子。
<5> 前記発光層の発光材料が燐光発光材料であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載の発光素子。
<6> 前記基板が可撓性基板であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載の発光素子。
<7> 前記色変換層と接する層の少なくとも一方に前記有機電界発光部からの発光を吸収しない絶縁層が配置されていることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の発光素子。
<8> 前記絶縁層の厚みが5nm以上30nm以下であることを特徴とする<7>に記載の発光素子。
<9> 複数の発光素子を配列した多色表示装置であって、該発光素子の少なくとも1つが<1>〜<8>に記載の発光素子であることを特徴とする多色表示装置。
<10> 前記複数の発光素子は、互いに有機電界発光部の発光ピーク波長は同一であり、色変換層を有する発光素子のマイクロキャビティ構造の共振距離が色変換層の厚みにより調節され、該共振距離は変換された放射光を共振する波長に調節されていることを特徴とする<9>に記載の多色表示装置。
<11> 前記マイクロキャビティ構造の外側にカラーフィルターを有することを特徴とする<9>又は<10>に記載の多色表示装置。
<12> 発光素子の発光層を作る工程とそれとは異なる発光色の色変換層を作る工程とこれらを同時に挟持する一対の反射層と半透過層を作る工程を含む発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高色純度の発光が得られ発光素子、多色表示装置及び発光素子の製造方法が提供される。さらに発光素子部が共通の材料と構成を有し、色変換層の変換材料とその厚みを変えることにより、所望の波長の光が共振されて取り出される多色表示装置が提供される。本発明に拠れば、高色純度の発光が得られ、且つ製造が簡便な発光素子、多色表示装置及び発光素子の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.発光素子の構成
本発明発光素子は、基板上に、一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光部(以後、有機EL部と記する場合がある)、該有機電界発光部からの発光を吸収して異なる波長の光を放射する色変換層を有し、前記有機電界発光部と前記色変換層が共に光反射層と半透過半反射層で挟持されたマイクロキャビティ構造内に配置されていることを特徴とする。
【0014】
即ち、本発明の発光素子は、色変換層をマイクロキャビティ内部に設置することで、上記の従来の問題を解決したものである。マイクロキャビティ構造内に色変換層を配置することにより、有機EL素子から放射された青色光がキャビティ内で反射を繰り返し、色変換層を何度も通過するため、色変換層は薄くても元の青色光を十分に吸収して高い変換効率で色変換が行われる。マイクロキャビティの共振波長は色変換層から放射される光のピーク波長に相当するように共振距離を設計することにより、有機EL素子からの青色光は正面方向に漏れ出すことができない。すなわち、元の青色光は色変換層に吸収され所望の波長に変換されるので、色純度の高い放射光が外部に取り出される。
【0015】
好ましくは、前記マイクロキャビティ構造を形成する光反射層及び半透過半反射層の少なくとも一方が前記電極の一方である。例えば、以下のような構成が好適に用いられる。
・基板/反射層/色変換層/透明電極/有機EL層/半透過半反射性電極(上方放射)
・基板/反射性電極/有機EL層/透明電極/色変換層/半透過半反射層(上方放射)
・基板/半透過半反射層/色変換層/透明電極/有機EL層/反射性電極(下方放射)
・基板/半透過半反射電極/有機EL層/透明電極/色変換層/反射層(下方放射)
【0016】
好ましくは、有機EL部の発光ピーク波長が500nmより短波長である。より好ましくは、有機EL部の発光がB光で、該B光を色変換層により変換することによりG光とR光が得られる。即ち、有機EL部は共通であり、色変換層により他の2色を形成することができる。
【0017】
本発明の多色表示装置は、上記の発光素子を複数配列した多色表示装置である。
好ましくは、前記複数の発光素子は、互いに有機電界発光部の発光ピーク波長は同一であり、色変換層を有する発光素子のマイクロキャビティ構造の共振距離が色変換層の厚みにより調節され、該共振距離は変換された放射光を共振する波長に調節されている。
【0018】
好ましくは、マイクロキャビティ構造の外側にカラーフィルターを有する。本発明におけるマイクロキャビティ構造は、好ましくは、前記基板の法線方向で強められる光の波長が、前記色変換層から放射される光の波長となるように設計される。従って、法線方向からずれた光は、共振波長が異なり、色純度を低下させることになるので、カラーフィルターの設置により、このような光を遮断するのが好ましい。また、本発明によるマイクロキャビティとカラーフィルタを組み合わせた構成では、偏光板を設ける必要がなく、構成が単純になる点で好ましい。
【0019】
以下に図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図2は本発明の発光素子の断面模式図である。透明基板1上に、順に、半透過半反射層2、色変換層3、透明下部電極4、発光層を含む有機層5、及び反射性上部電極6が形成される。電極間に電圧が印加される第1の波長の発光し、該発光は色変換層3に吸収される。吸収される光は、発光部位からの直接の入射光の他、反射性上部電極6や半透過半反射層2によって反射された光も含まれる。第1の波長の光が色変換層3によって吸収されるまで反射が繰り返されるので、色変換層3が薄層であっても、十分に第1の波長の光を吸収することができる。
色変換層3は第1の波長の光を吸収して、より長波長の第2波長の光を放射する。色変換層による色変換は、通常、蛍光発光が利用され、得られる蛍光は分子が有する多数のエネルギー準位のために、ブロードなスペクトル分布を有する。反射性上部電極6と半透過半反射層2の間の距離は、該第2の波長成分の内の所望の波長成分が共振する光学距離となるように設計されているので、該所望の波長の光のみが共振され、半透過半反射層2を透過して外部に取り出される。その結果、高輝度でかつスペクトル分布の狭い高色純度の光Aが取り出される。
【0020】
図3は従来の色変換層を有する発光素子の断面模式図である。透明基板10上に、順に、色変換層30、半透過半反射性下部電極40、発光層を含む有機層50、及び反射性上部電極60が配置される。有機層50で発光した第1の波長の光は半透過半反射性下部電極40と反射性上部電極60間で反射を繰り返し、共振された光が半透過半反射性下部電極40を透過して色変換層30に吸収される。色変換層30は第1の波長の光を吸収して、より長波長の第2波長の光Bを放射する。該構成では、半透過半反射性下部電極40と反射性上部電極60間の光学距離は、色変換層30が吸収する光が共振する距離に設計されなければならない。色変換層30から放射される第2波長の光Bは、ブロードなスペクトル分布のままである。また、第1の波長の光は、全てが色変換層30に吸収される訳ではなく、一部は吸収されずに透過してしまう(図2中に光Cで示す)。吸収率を高めるには、色変換層30を分厚くしなければならない。従って、該構成では、取り出される光は第2波長のスペクトル分布がブロードな上、且つ第1波長成分Cが混入するため、輝度が低く、かつ色純度の低いものになってしまう。
【0021】
図4は、本発明の青色発光素子、緑色発光素子、及び赤色発光素子を配置した多色表示装置の断面模式図である。透明基板100上に、順に、半透過半反射層120、絶縁層170を設け、緑色発光素子と赤色発光素子が配置される箇所には、それぞれ色変換層130G、130Rが形成される。有機電界発光部は、青色発光素子(A)、緑色発光素子(B)及び赤色発光素子(C)とも同一構成であり、透明下部電極140、発光層を含む有機層150、及び反射性上部電極160より構成され、青色発光する。青色発光素子の共振波長は有機電界発光部が発光する青色波長であり、緑色発光素子の共振波長は色変換層から放射される光の中の緑色光成分であり、及び赤色発光素子の共振波長は色変換層から放射される光の中の赤色光成分である。従って、本構成に拠れば、有機電界発光部は共通であり、所望の色に対応して組成と厚みを変えた色変換層を組み合わせて配置するだけで、高色純度で高輝度の色再現が得られる。
【0022】
<本発明の発光素子、表示装置の製造方法>
本発明の多色表示装置の製造方法は、有機EL素子部分で塗り分けを必要としないため製造工程数が減り、歩留まりが改善するとともにコスト削減が期待できる。また、さまざまな製造方法を適用可能となるため、フレキシブル基板を用いた場合にも多色表示装置を実現しやすい。有機EL素子部分の塗り分けが必要無い代わりに、色変換層を画素ごとに塗り分ける必要があるが、有機EL素子の発光層を塗り分ける場合とは異なり、塗り分け工程数を減らせるのに加えて、さまざまな塗り分け方法が適用できるようになる。
【0023】
基板/半透過半反射層or反射層/色変換層/電極1/有機EL/反射性電極若しくは半透過半反射性電極の構成では色変換層の塗り分けは素子成膜前であるために有機EL素子には全く影響を及ぼさない。また、基板/反射性電極若しくは半透過半反射電極/有機EL/透明電極/色変換層/半透過半反射層若しくは反射層の構成においても、有機EL素子の電極の外側であるため色変換層塗りわけによる素子への影響が少なく、使用できる手法の自由度は高くなる。
【0024】
以下にその例を説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
色変換層を画素毎に塗り分ける方法としては、レーザー転写法やレーザー除去法、マスク蒸着等が可能であり、いずれも発光層を同じ方法で塗り分けて多色を実現する場合よりも製造工程数が減り、発光素子への悪影響を小さくして歩留まりを改善することができる。
【0025】
例えば、素子の発光層をレーザー転写で塗り分ける場合には、RGB全ての発光層を転写で塗り分ける必要があり、転写時の他層へのレーザー照射が悪影響を及ぼしたり、発光素子の内部で塗り分けを行うために転写時の雰囲気により発光素子が悪影響を受けたりする場合が多い。それに対して色変換層の転写による塗り分けの場合には、転写する必要があるのは緑色変換層と赤色変換層で転写数が少なくて済むのに加えて、有機EL素子部へのレーザーの影響や雰囲気の影響はほとんど無い。
【0026】
レーザー除去法による発光層の塗りわけの場合には、発光層以外の層がレーザーで除去されてしまう可能性が高いため、この方法により発光層を塗り分けることは困難である。それに対して色変換層のレーザー除去による塗りわけでは、たとえば赤色変換層を基板に全面蒸着した後に緑画素と青色画素に相当する部分の色変換層をレーザー照射で除去し、続いて緑色変換層を全面蒸着して青色画素部分に相当する部分をレーザー照射で除去することで、各画素の色変換層の塗り分けが可能である。赤色画素部分は赤色変換層と緑色変換層の積層色変換膜となるが、緑色変換層からの発光がさらに赤色に変換されるので特に問題は発生しない。この色変換層を形成した後に、透明電極と有機EL部分、上部電極を形成すれば、容易に多色表示装置が実現できる。
【0027】
最も一般的なマスク蒸着を用いた塗り分けの場合にも本発明の製造方法は有効である。有機EL素子の発光層をマスク蒸着で塗り分ける場合にはRGB全てを塗り分けにより成膜する必要がある。また、マスクの接触により素子が傷ついたり、マスク移動の際に発生したごみによる上下電極間ショートが発生したりして歩留まり低下の原因になる。それに対して色変換層をマスクにより塗り分ける場合には、塗り分ける必要があるのは緑色変換層と赤色変換層で塗りわけ数が少なくて済むのに加えて、発光素子成膜前あるいは成膜後にマスク塗り分けすることになるため、マスク接触による素子への悪影響はほとんど無い。すなわち素子成膜前であればマスクは素子を傷つけることは全く無く、素子成膜後の塗り分けであっても素子の電極上にマスクが接触することになり、素子内部に接触するよりもはるかに影響が少なく、保護層により電極を保護してから塗り分けすることも可能である。マスク接触を気にしなくて良いため、マスクを電磁石により基板に強く密着させて成膜を行うことができ、基板の伸縮やマスクのたわみによるずれを解消しやすい。
【0028】
2.共振構造
本発明における共振構造は、一対の光反射層と半透過半反射層の間に有機EL部及び色変換層を矜持し、有機EL部の光学膜厚と半透過半反射層の光学膜厚を調整し、色変換層により変換された放射光が共振する光学的距離となるように設計される。共振により強められた高色純度の光が前記半透過半反射層を透過して外部に取り出される。
【0029】
有機EL部の上部電極もしくは下部電極の少なくとも一方が、該光反射層もしくは該半透過半反射層である。
【0030】
好ましくは、前記半透過半反射性層の光透過率が5%以上50%以下であり、光反射率が50%以上90%以下である。
好ましくは、前記半透過半反射層を構成する材料は、金属材料であり、白金、金、銀、クロム、タングステン、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、およびナトリウムの単体もしくは合金より好ましく選ばれる。
好ましくは、前記半透過半反射層の厚みが5nm以上50nm以下である。
【0031】
共振構造を設計する方法は公知の方法が適用できる。例えば、特開平06−283271号や、特開平07−282981号、特開平09−180883号および時任らのJ.Appl.Phys.,Vol.86,No.5,1 September 1999, p.2407−2411、中山らのAppl.Phys.Lett.63(5),2 August 1993, p.594−595,高田らのAppl.Phys.Lett.63(15),11 October 1993, p.2032−2034などに共振構造の調整方法が記載されており、本発明はそれらの何れの方法を用いてもよい。
【0032】
3.色変換層
色変換層は、有機EL部からの発光を吸収して、波長変換し、より長波長の光を放射する層である。具体的には、色変換材料として蛍光色素を用いることができる。
蛍光色素としては、有機蛍光体または無機蛍光体でもよく、変換したい波長によって使い分けることができる。
【0033】
有機蛍光体としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素などが挙げられる。
【0034】
無機蛍光体としては、粒径が3μm以下の微粒子のものが好ましく、さらにその製法が液相法を経由された合成された単分散に近い超微粒子蛍光体であることが好ましい。
無機蛍光体は、結晶母体と賦活剤によって構成される無機系蛍光体、または希土類錯体系蛍光体が挙げられる。
【0035】
無機系蛍光体の組成は特に制限はないが、結晶母体であるYS、ZnSiO、Ca(POCl等に代表される金属酸化物及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Al、Mn、In、Cu、Sb等の金属のイオンを賦活剤または共賦活剤として組み合わせたものが好ましい。
【0036】
結晶母体を更に詳しく説明すると、結晶母体としては金属酸化物が好ましく、例えば、(X)Al1627、(X)Al1425、(X)l2Si10、(X)Si、(X)Si、(X)、(X)、(X)(POCl、(X)Si、(X)Cl2〔ここで、Xはアルカリ土類金属を表す。なお、Xで表されるアルカリ土類金属は単一成分でも2種類以上の混合成分でもよく、その混合比率は任意でよい。〕のようなアルカリ土類金属で置換された酸化アルミニウム、酸化ケイ素、リン酸、ハロリン酸等が代表的な結晶母体として挙げられる。
【0037】
その他の好ましい結晶母体としては、亜鉛の酸化物および硫化物、イットリウムやガドリウム、ランタン等の希土類金属の酸化物およびその酸化物の酸素の一部を硫黄原子に換えた(硫化物)もの、および希土類金属の硫化物およびそれらの酸化物や硫化物に任意の金属元素を配合したもの等が挙げられる。
【0038】
結晶母体の好ましい例を以下に列挙する。MgGeO・5F、MgGeO、ZnS、YS、YAl12、YSiO10、ZnSiO、Y、BaMgAl1017、BaAl1219、(Ba、Sr、Mg)O・aAl、(Y、Gd)BO、(Zn、Cd)S、SrGa、SrS、GaS、SnO、Ca10(PO(F、Cl)、(Ba、Sr)(Mg、Mn)Al1017、(Sr、Ca、Ba、Mg)10(POl2、(La、Ce)PO、CeMgAl1119、GdMgB10、Sr、SrAl1425、YSO、GdS、Gd、YVO、Y(P,V)O等である。
【0039】
以上の結晶母体及び賦活剤または共賦活剤は、同族の元素と一部置き換えたものでも構わないし、とくに元素組成に制限はなく、青紫領域の光を吸収して可視光を発するものであればよい。
【0040】
本発明において、無機系蛍光体の賦活剤、共賦活剤として好ましいものは、La、Eu、Tb、Ce、Yb、Pr等に代表されるランタノイド元素のイオン、Ag、Mn、Cu、In、Al等の金属のイオンであり、そのドープ量は母体に対して0.001〜100モル%が好ましく、0.01〜50モル%がさらに好ましい。
【0041】
賦活剤、共賦活剤は結晶母体を構成するイオンの一部を上記ランタノイドのようなイオンに置き換えることでその結晶の中にドープされる。
【0042】
蛍光体結晶の実際の組成は、厳密に記載すれば以下のような組成式になるが、賦活剤の量の大小は本質的な蛍光特性に影響を及ぼさないことが多いので、以下特にことわりのない限り下記xやyの数値は記載しないこととする。例えばSr4−xAl1425:Eu2+は、本発明においてはSrAl1425:Eu2+と表記する。
【0043】
以下に代表的な無機系蛍光体(結晶母体と賦活剤によって構成される無機蛍光体)の組成式を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。(BaMg1−z3−x−yAl1627:Eu2+,Mn2+、Sr4−Al1425:Eu2+、(Sr1−zBa1−xl2Si:Eu2+、Ba2−xSiO:Eu2+、Sr2−SiO:Eu2+、Mg2−SiO:Eu2+x、(BaSr)1−xSiO:Eu2+、Y2−x−ySiO:Ce3+,Tb3+、Sr2−:Eu2+、Sr2−:Eu2+、(BaCaMg1−y−z5−(POCl:Eu2+、Sr2−Si8−SrCl2:Eu2+[x,yおよびzはそれぞれ1以下の任意の数を表す。]
【0044】
以下に本発明に好ましく使用される無機系蛍光体を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0045】
[青色発光 無機系蛍光体]
(BL−1) SrO7:Sn4+
(BL−2) SrAl1425:Eu2+
(BL−3) BaMgAl1017:Eu2+
(BL−4) SrGa:Ce3+
(BL−5) CaGa:Ce3+
(BL−6) (Ba、Sr)(Mg、Mn)Al1017:Eu2+
(BL−7) (Sr、Ca、Ba、Mg)10(POCl:Eu2+
(BL−8) BaAlSiO:Eu2+
(BL−9) Sr:Eu2+
(BL−10) Sr(POCl:Eu2+
(BL−11) (Sr,Ca,Ba)(POCl:Eu2+
(BL−12) BaMgAl1627:Eu2+
(BL−13) (Ba,Ca)(POCl:Eu2+
(BL−14) BaMgSi:Eu2+
(BL−15) SrMgSi:Eu2+
【0046】
[緑色発光 無機系蛍光体]
(GL−1) (BaMg)Al1627:Eu2+,Mn2+
(GL−2) SrAl1425:Eu2+
(GL−3) (SrBa)AlSi:Eu2+
(GL−4) (BaMg)SiO:Eu2+
(GL−5) YSiO:Ce3+,Tb3+
(GL−6) Sr−Sr:Eu2+
(GL−7) (BaCaMg)(POCl:Eu2+
(GL−8) SrSi−2SrCl:Eu2+
(GL−9) ZrSiO、MgAl1119:Ce3+,Tb3+
(GL−10) BaSiO:Eu2+
(GL−11) SrSiO:Eu2+
(GL−12) (BaSr)SiO:Eu2+
【0047】
[赤色発光 無機系蛍光体]
(RL−1) YS:Eu3+
(RL−2) YAlO:Eu3+
(RL−3) Ca(SiO:Eu3+
(RL−4) LiY(SiO:Eu3+
(RL−5) YVO:Eu3+
(RL−6) CaS:Eu3+
(RL−7) Gd:Eu3+
(RL−8) GdS:Eu3+
(RL−9) Y(P,V)O:Eu3+
(RL−10) MgGeO5.5F:Mn4+
(RL−11) MgGeO:Mn4+
(RL−12) KEu2.5(WO6.25
(RL−13) NaEu2.5(WO6.25
(RL−14) KEu2.5(MoO6.25
(RL−15) NaEu2.5(MoO6.25
【0048】
上記無機系蛍光体は、必要に応じて表面改質処理を施してもよく、その方法としてはシランカップリング剤等の化学的処理によるものや、サブミクロンオーダーの微粒子等の添加による物理的処理によるもの、さらにはそれらの併用によるもの等が挙げられる。
【0049】
希土類錯体系蛍光体としては、希土類金属としてCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等を有するものが挙げられ、錯体を形成する有機配位子としては、芳香族系、非芳香族系のどちらでも良く、好ましく下記一般式(B)で表される化合物が好ましい。
【0050】
一般式(B) Xa−(Lx)−(Ly)n−(Lz)−Ya
[式中、Lx、Ly、Lzはそれぞれ独立に2個以上の結合手を持つ原子を表わし、nは0または1を表わし、XaはLxの隣接位に配位可能な原子を有する置換基を表わし、YaはLzの隣接位に配位可能な原子を有する置換基を表わす。さらにXaの任意の部分とLxとは互いに縮合して環を形成してもよく、Yaの任意の部分とLzとは互いに縮合して環を形成してもよく、LxとLzとは互いに縮合して環を形成してもよく、さらに分子内に芳香族炭化水素環または芳香族複素環が少なくとも一つ存在する。ただし、Xa−(Lx)−(Ly)n−(Lz)−Yaがβ−ジケトン誘導体やβ−ケトエステル誘導体、β−ケトアミド誘導体又は前記ケトンの酸素原子を硫黄原子又は−N(R201)−に置き換えたもの、クラウンエーテルやアザクラウンエーテルまたはチアクラウンエーテルまたはクラウンエーテルの酸素原子を任意の数硫黄原子または−N(R201)−に置き換えたクラウンエーテルを表わす場合には芳香族炭化水素環または芳香族複素環は無くてもよい。−N(R201)−において、R201は、水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基を表す。]
一般式(B)において、XaおよびYaで表される配位可能な原子とは、具体的には酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子であり、特に酸素原子、窒素原子、硫黄原子であることが好ましい。
【0051】
一般式(B)において、Lx、Ly、Lzで表される2個以上の結合手を持つ原子としては、特に制限はないが、代表的には炭素原子、酸素原子、窒素原子、シリコン原子、チタン原子等が挙げられるが、このましいものは炭素原子である。
【0052】
以下に一般式(B)で表される希土類錯体系蛍光体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
【化1】

【0054】
【化2】

【0055】
【化3】

【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

【0060】
上記色変換層は、上記蛍光体を蒸着あるいはスパッタリング法による製膜や、適当な樹脂をバインダとしてその中に分散させた塗布膜等いずれの形態であっても構わない。膜厚は、5nm〜50μm程度が適当である。ここで、適当な樹脂をバインダとしてその中に分散させた塗布膜とする場合、蛍光体の分散濃度は、蛍光の濃度消光を起こすことがなく、かつ、有機EL部からの発光を十分に吸収できる範囲であればよい。蛍光体の種類によるが、使用する樹脂1gに対して10−7〜10−3モル程度が適当である。無機蛍光体の場合は、濃度消光がほとんど問題とならないため、樹脂1gに対して0.1〜10g程度使用できる。
【0061】
4.有機EL部
次に、本発明の有機EL部を構成する有機電界発光素子の構成について詳細に説明する。
(構成)
本発明の有機電界発光素子における有機化合物層の積層の形態としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている構成を一つの単位として、該単位が複数積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間に正孔輸送性中間層、及び/又は発光層と電子輸送層との間に、電子輸送性中間層を有する。また、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を、同様に陰極と電子輸送層との間に電子注入層を設けても良い。各単位構成の間には絶縁性電荷発生層を配することが好ましい。
【0062】
本発明における陽極および陰極の少なくとも一方は光取り出し面にあって、発光層で発光した光に対して半透過性かつ半反射性である。
本発明における半透過反射性金属の反射率および透過率は、下記の測定方法によって測定される。
【0063】
(測定機器)
一般に市販されている分光光度計(例えば、日立製作所(株)製U−4100型分光光度計)。
(測定方法)
反射率:ガラス基板上に半透過反射性金属を成膜し、基板の法線方向に対して5度の入射角で測定光を入射し、−5度の反射角の反射光を検出する。反射光量÷入射光量で反射率が求まる。
【0064】
透過率:上記と同様のサンプルに、基板の法線方向から光を入射し(入射角0度)、法線方向(出射角0度)に出射した光を検出する。出射光量÷入射光量で透過率が求まる。
上記方法で反射率を測定したとき、本願における半透過反射性金属は、発光スペクトルの極大波長において、30%以上95%以下の範囲にある。好ましくは50%以上90%以下である。
【0065】
上記方法で透過率を測定したとき、本願における半透過反射性金属は、発光スペクトルの極大波長において、5%以上70%以下の範囲にある。好ましくは10%以上50%以下である。
【0066】
本発明の有機電界発光素子における有機化合物層の好適な単位構成は、陽極側から順に、少なくとも、(1)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、正孔輸送性中間層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)を有する態様、(2)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、発光層、電子輸送性中間層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)を有する態様、(3)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、正孔輸送性中間層、発光層、電子輸送性中間層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)を有する単位である。
【0067】
上記正孔輸送性中間層は、発光層への正孔注入を促進する機能、及び電子をブロックする機能の少なくとも一方を有することが好ましい。
また、上記電子輸送性中間層は、発光層への電子注入を促進する機能、及び正孔をブロックする機能の少なくとも一方を有することが好ましい。
更に、上記正孔輸送性中間層及び上記電子輸送性中間層の少なくとも一方は、発光層で生成する励起子をブロックする機能を有することが好ましい。
上記の正孔注入促進、電子注入促進、正孔ブロック、電子ブロック、励起子ブロックといった機能を有効に発現させるためには、該正孔輸送性中間層および該電子輸送性中間層は、発光層に隣接していることが好ましい。
尚、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0068】
次に、本発明の発光素子を構成する要素について、詳細に説明する。
【0069】
(有機化合物層の形成)
本発明の有機電界発光素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、塗布法、インクジェット法、またはスプレー法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0070】
(正孔注入層、正孔輸送層)
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
【0071】
正孔注入層、あるいは正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用でき、具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、または五塩化アンチモンなどのルイス酸化合物を好適に用いることができる。
【0072】
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、またはトリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フレーレンなどを好適に用いることができる。
具体的にはヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、o−ジシアノベンゼン、p−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、p−シアノニトロベンゼン、m−シアノニトロベンゼン、o−シアノニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1−ニトロナフタレン、2−ニトロナフタレン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9−シアノアントラセン、9−ニトロアントラセン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、C60、およびC70などが挙げられる。
【0073】
このうちヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、またはC60が好ましく、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、または2,3,5,6−テトラシアノピリジンが特に好ましい。
【0074】
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。該使用量が、正孔輸送材料に対して0.01質量%未満のときには、本発明の効果が不十分であるため好ましくなく、50質量%を超えると正孔輸送能力が損なわれるため好ましくない。
【0075】
正孔注入層、正孔輸送層の材料としては、具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、またはカーボン等を含有する層であることが好ましい。
【0076】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、特に限定されるものではないが、駆動電圧低下、発光効率向上、耐久性向上の観点から、厚さが1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることが更に好ましく、10nm〜500nmであることが特に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0077】
前記発光層に隣接したキャリア輸送層が正孔輸送層であるとき、該正孔輸送層のIp(HTL)は前記発光層中に含有されるドーパントのIp(D)より小さいことが駆動耐久性の点で好ましい。
正孔輸送層におけるIp(HTL)は、後述するIpの測定方法により測定することができる。
【0078】
また、正孔輸送層におけるキャリア移動度は、一般的に、10−7cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下であり、中でも、発光効率の点から10−5cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が好ましく、10−4cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が更に好ましく、10−3cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が特に好ましい。
該キャリア移動度は、前記発光層のキャリア移動度の測定方法と同様の方法により測定した値を採用する。
また、該正孔輸送層のキャリア移動度は、前記発光層のキャリア移動度より大きいことが駆動耐久性、発光効率の観点から好ましい。
【0079】
(電子注入層、電子輸送層)
電子注入層、電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入され得た正孔を障壁する機能のいずれかを有している層である。
【0080】
電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属などが好適に用いられる。
特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。
【0081】
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。該使用量が、電子輸送層材料に対して0.1質量%未満のときには、本発明の効果が不十分であるため好ましくなく、99質量%を超えると電子輸送能力が損なわれるため好ましくない。
【0082】
電子注入層、電子輸送層の材料としては、具体的には、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
【0083】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、特に限定されるものではないが、駆動電圧低下、発光効率向上、耐久性向上の観点から、厚さが1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることが更に好ましく、10nm〜500nmであることが特に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記発光層に隣接したキャリア輸送層が電子輸送層であるとき、該電子輸送層のEa(ETL)は前記発光層中に含有されるドーパントのEa(D)より大きいことが駆動耐久性の点で好ましい。
【0084】
該Ea(ETL)は、後述するEaの測定方法と同様の方法により測定した値を用いる。
また、電子輸送層におけるキャリア移動度は、一般的に、10−7cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下であり、中でも、発光効率の点から10−5cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が好ましく、10−4cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が更に好ましく、10−3cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が特に好ましい。
また、該電子輸送層のキャリア移動度は、前記発光層のキャリア移動度より大きいことが駆動耐久性の観点から好ましい。該キャリア移動度は、前記正孔輸送層の測定方法と同様に行った。
本発明における発光素子のキャリア移動度において、正孔輸送層、電子輸送層、及び発光層におけるキャリア移動度としては、(電子輸送層≧正孔輸送層)>発光層であることが、駆動耐久性の点で好ましい。
バッファー層に含有されるホスト材料としては、後述する正孔輸送性ホストまたは電子輸送性ホストを好適に用いることができる。
【0085】
(発光層)
本発明においては発光層は複数有するが、ここではその単層について説明する。複数有する場合は、以下に説明する単層の構成の中より好ましく選択して組合わせて用いることが出来る。
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層または正孔輸送性バッファー層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、電子輸送層または電子輸送性バッファー層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、少なくとも一種の発光性ドーパントと複数のホスト化合物とを含む。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。発光層が複数の場合であっても、発光層の各層に、少なくとも一種の発光性ドーパントと複数のホスト化合物とを含有することが好ましい。
また、発光層の単層の厚さは、駆動電圧を下げるため、一般的に100nm以下であることが好ましく、5nm〜100nmであることが更に好ましい。
【0086】
本発明における発光層に含有する発光性ドーパントと複数のホスト化合物としては、一重項励起子からの発光(蛍光)が得られる蛍光発光性ドーパントと複数のホスト化合物との組み合せでも、三重項励起子からの発光(燐光)が得られる燐光発光性ドーパントと複数のホスト化合物との組み合せでもよいが、中でも、発光効率の観点から、燐光発光性ドーパントと複数のホスト化合物との組み合せであることが好ましい。
本発明における発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の発光性ドーパントを含有することができる。
【0087】
《発光性ドーパント》
本発明における発光性ドーパントとしては、燐光性発光材料、蛍光性発光材料等いずれもドーパントとして用いることができる。
本発明における発光性ドーパントは、更に前記ホスト化合物との間で、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが駆動耐久性の観点で好ましい。
【0088】
《燐光発光性ドーパント》
前記燐光性の発光性ドーパントとしては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
例えば、該遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
ランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0089】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、またはナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、またはフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0090】
これらの中でも、発光性ドーパントの具体例としては、例えば、US 6303238 B1、US6097147、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/08230、WO 01/39234 A2、WO 01/41512 A1、WO 02/02714 A2、WO 02/15645 A1、WO 02/44189 A1、特開2001−247859、特願2000−33561、特開2002−117978、特願2001−248165、特開2002−235076、特願2001−239281、特開2002−170684、EP 1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特願2005−75341等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられ、中でも、更に好ましい(2)の関係を満たす発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、Re錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体が好ましい。
【0091】
《蛍光発光性ドーパント》
前記蛍光性の発光性ドーパントとしては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、ペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、およびこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0092】
これらの中でも、発光性ドーパントの具体例としては例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
【化8】

【0094】
【化9】

【0095】
【化10】

【0096】
上記の中でも、本発明で用いる発光性ドーパントとしては、発光効率、耐久性の観点からD−2、D−3、D−4、D−5、D−6、D−7、D−8、D−9、D−10、D−11、D−12、D−13、D−14、D−15、D−16、D−21、D−22、D−23、またはD−24が好ましく、D−2、D−3、D−4、D−5、D−6、D−7、D−8、D−12、D−14、D−15、D−16、D−21、D−22、D−23、またはD−24がより好ましく、D−21、D−22、D−23、またはD−24が更に好ましい。
【0097】
発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜30質量%含有されるが、耐久性、発光効率の観点から1質量%〜15質量%含有されることが好ましく、2質量%〜12質量%含有されることがより好ましい。
【0098】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、発光効率の観点で、5nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0099】
(ホスト材料)
本発明に用いられるホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0100】
《正孔輸送性ホスト》
本発明の有機層に用いられる正孔輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.1eV以上6.3eV以下であることが好ましく、5.4eV以上6.1eV以下であることがより好ましく、5.6eV以上5.8eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが1.2eV以上3.1eV以下であることが好ましく、1.4eV以上3.0eV以下であることがより好ましく、1.8eV以上2.8eV以下であることが更に好ましい。
【0101】
このような正孔輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピロール、カルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマチオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及び、それらの誘導体等が挙げられる。
中でも、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体が好ましく、特に分子内にカルバゾール骨格および/または芳香族第三級アミン骨格を複数個有するものが好ましい。
このような正孔輸送性ホストとしての具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
【化11】

【0103】
【化12】

【0104】
【化13】

【0105】
《電子輸送性ホスト》
本発明に用いられる発光層内の電子輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.2eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.1eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが更に好ましい。
【0106】
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレン及びペリレン等の芳香環化合物のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
【0107】
電子輸送性ホストとして好ましくは、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)であり、中でも、本発明においては耐久性の点から金属錯体化合物が好ましい。金属錯体化合物は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、またはパラジウムイオンである。
【0108】
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
【0109】
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座以上6座以下の配位子である。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、
【0110】
ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、およびキノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、および2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、およびトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、およびアントラニルアニオンなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、およびベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、またはシロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
【0111】
金属錯体電子輸送性ホストの例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
【0112】
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
【化14】

【0114】
【化15】

【0115】
【化16】

【0116】
電子輸送層ホストとしては、E−1〜E−6、E−8、E−9、E−21、またはE−22が好ましく、E−3、E−4、E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、またはE−22がより好ましく、E−3、E−4、E−21、またはE−22が更に好ましい。
【0117】
本発明における発光層において、発光性ドーパントとして燐光発光性ドーパントを用いたとき、該燐光発光性ドーパントの最低三重項励起エネルギーT1(D)と前記複数のホスト化合物の最低励起三重項エネルギーのうち最小のもの前記T1(H)minとが、T1(H)min>T1(D)の関係を満たすことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0118】
また、本発明におけるホスト化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
【0119】
また、発光層におけるキャリア移動度は、一般的に、10−7cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下であり、中でも、発光効率の点から10−6cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が好ましく、10−5cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が更に好ましく、10−4cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が特に好ましい。
【0120】
該発光層のキャリア移動度は、後述の前記キャリア輸送層のキャリア移動度より小さいことが発光効率、駆動耐久性の観点から好ましい。
該キャリア移動度は、Time of Flight法により測定し、得られた値をキャリア移動度とした。
【0121】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明においては、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層は、特に限定されるものではないが、具体的には、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、ピラザボール誘導体等を含有することができる。
また、正孔ブロック層の厚さは、駆動電圧を下げるため、一般的に50nm以下であることが好ましく、1nm〜50nmであることが好ましく、5nm〜40nmであることが更に好ましい。
【0122】
(電極)
本発明における陽極電極および陰極電極は、発光を取り出す面をどちらにするかによって、反射率の高い鏡面とするか、前述の半反射性半透過性とされる。通常、ボトムエミッション型と呼ばれる素子構成では、陽極面が発光取り出し面であって、トップエミッション型と呼ばれる素子構成では、陰極面が発光取り出し面である。
【0123】
1)陽極
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有する。
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0124】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0125】
本発明の有機電界発光素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0126】
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0127】
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。
【0128】
2)陰極
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有する。
【0129】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、またはCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、およびイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0130】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0131】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0132】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0133】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0134】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0135】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
【0136】
(基板)
本発明においては基板を用いることができる。用いられる基板としては、有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0137】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0138】
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0139】
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0140】
(保護層)
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、またはNi等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、またはTiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、またはCaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0141】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、または転写法を適用できる。
【0142】
(封止)
さらに、本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、および酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0143】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜40ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0144】
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0145】
(本発明の発光装置の用途)
本発明の発光装置は、表示素子、ディスプレイ、標識、看板、又はインテリア等に好適に利用できる。
【実施例】
【0146】
以下に、本発明の発光装置の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。また、以下の実施例では、最も好適な製造方法として有機EL素子部分や色変換層に隣接する絶縁層の厚み及び透明電極の厚み等は一定とした。これらの層の厚みを変えて作製した場合には、製造工程数の増加は避けられないものの、色変換方式で高色純度を得るという目的を達しており、本発明の範疇である。
【0147】
実施例
(共振距離)
光反射層を厚み100nmのAl膜、半透過半反射層を厚み25nmの銀薄膜とした場合、共振する光学的距離は、各色に対して下記のように見積もられる。
波長λの光を強めたいとき、以下の式のmが整数になるように光学距離dを調節すればよい。ただし、nは光が通過する層の屈折率であり、φは反射層で光の位相がずれる量である。屈折率の異なる複数の層が積層されている場合、各層の屈折率と厚みを(n1、d1)、(n2、d2)、・・・としたとき、2ndの部分を2(n1*d1+n2*d2+・・・)とすればよい。
2nd/λ+φ/2π=m 式(1)
【0148】
実験により上記式のφを求めて、460nm,520nm,620nmを強める光学距離(半透過半反射層−反射層間距離、有機膜換算)を求めると、以下のようになる。青色EL素子と緑色変換層を組み合わせて色純度の高い緑素子を作成する場合には、緑色を強める光学距離であって、かつ、青色は強めない光学距離を選べばよい。同様に青色素子と赤色変換層を用いた色純度の高い赤素子を作成する場合には、赤色を強める光学距離であって、かつ、青色は強めない光学距離を選べばよい。
【0149】
青(460nm)を共振させる光学距離:203nm±135nm(203nm、338nm、473nm、−−−−)
緑(520nm)を共振させる光学距離:242nm±153nm(242nm、395nm、548nm、−−−−)
赤(620nm)を共振させる光学距離:308nm±182nm(126nm、308nm、490nm、−−−−)
【0150】
(半透過半反射層を有する基板の作製)
厚さ0.7mmのポリカーボネート基板を2−プロパノール中で超音波洗浄後、20分間UV−オゾン処理を行った。処理した面上に、真空蒸着によって下記の半透過半反射層を設けた。
・半透過半反射層:銀を厚み25nmに蒸着した。
【0151】
(青色発光素子の作製)
青色発光素子を作製した。
上記の半透過半反射層の上に、順次、下記電極および有機層を蒸着して、下記構成の青色発光有機EL部を作成した。
【0152】
<素子構成>
ITO(50nm)/有機層(144nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)
青色発光有機層の構成:(2−TNATA+0.1質量%F4−TCNQ(64nm))/(NPD(10nm)/mCP+15質量%Pt−1(30nm))/BAlq(40nm)
上記素子の共振距離は、ITO(50*2.0/1.7)+OLED(144nm)で203nmである。この値は前述の通り、460nmが強められる光学距離に一致している。
【0153】
得られた素子の発光ピーク波長は460nmであった。
【0154】
実施例1
緑色発光素子を作製した。
前記の半透過半反射層の上に、順次、下記電極および有機層を蒸着して、下記構成の緑色発光有機EL部を作成した。有機層は青色発光素子における構成と同一である。なお、色変換層を挟むように配置したmCP層は、青色光を吸収した色変換材料が金属層(ここでは半透過半反射層とITO電極)によりクエンチされるのを防ぐ目的で配置している。
【0155】
<素子構成>
mCP(10nm)/緑色変換層(19nm)/mCP(10nm)/ITO(50nm)/有機層(144nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)
緑色変換層は下記組成を有し、波長520nmの緑色光を放射する。
緑色変換層組成:t(npa)pyとt(dta)pyをt(npa)pyに対してt(dta)pyが1質量%となるように共蒸着した。厚みは19nmであった。
【0156】
上記構成の光学的距離は、mCP(10nm)+緑変換層(19nm)+mCP(10nm)+ITO(50*2.0/1.7)+OLED(144nm)で242nmである。この値は前述の通り、520nmが強められる光学距離に一致しており、かつ、青色を強める光学距離には一致していない。
【0157】
実施例2
赤色発光素子を作製した。
上記の半透過半反射層の上に、順次、下記電極および有機層を蒸着して、下記構成の赤色発光有機EL部を作成した。有機層は青色発光素子におけると同一である。なお、色変換層を挟むように配置したmCP層は、青色光を吸収した色変換材料が金属層(ここでは半透過半反射層とITO電極)によりクエンチされるのを防ぐ目的で配置している。
【0158】
<素子構成>
mCP(10nm)/赤色変換層(85nm)/mCP(10nm)/ITO(50nm)/有機層(144nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)
赤色変換層は下記組成を有し、波長640nmの赤色光を放射する。
赤色変換層組成:t(dta)pyとDCJTBをt(dta)pyに対してDCJTBが1質量%となるように共蒸着した。厚みは85nmであった。
【0159】
上記構成の光学的距離は、mCP(10nm)+赤変換層(85nm)+mCP(10nm)+ITO(50*2.0/1.7)+OLED(144nm)で308nmである。この値は前述の通り、620nmが強められる光学距離に一致しており、かつ、青色を強める光学距離には一致していない。
【0160】
比較例
実施例1,2の緑色発光素子、赤色発光素子において、色変換層と半透過半反射層の配置を下記に変更した比較の緑色発光素子A、及び比較の赤色発光素子Aを作製した。
【0161】
<素子構成>
比較の緑色発光素子A:基板/緑色変換層(19nm)/mCP(10nm)/半透過半反射層(25nm)/ITO(50nm)/有機層(144nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)
有機層の構成、緑色変換層の構成は実施例1と同じものとした。
【0162】
比較の赤色発光素子B:基板/赤色変換層(85nm)/mCP(10nm)/半透過半反射層(25nm)/ITO(50nm)/有機層(144nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
有機層の構成、赤色変換層の構成は実施例2と同じものとした。
【0163】
上記で得られた本発明および比較例の素子のITOを陽極、Alを陰極として0.4mA(10mA/cm)の駆動電流で駆動させ、コニカミノルタ製輝度計CS−1000型にて取り出された光の発光輝度および分光スペクトルを測定した。発光のシャープさは、極大発光波長のピーク強度の1/2強度におけるスペクトル幅(半波長幅)を評価基準とした。半波長幅が小さいほどシャープなスペクトルとなる。表1に極大発光波長、ピーク強度と半波長幅を示した。
【0164】
その結果、本発明の実施例1、2の素子は、比較例AとBの素子に比べて極大発光スペクトルにおけるピーク強度が高く、かつ半波長幅が極めて小さい高色純度の発光色であった。また、比較の素子では、色変換層に吸収されなかった460nmの青色光の漏れが観測されたのに対し、本発明の実施例1,2の素子では、同じ色変換層の厚みにもかかわらず青色光の漏れは観測されず、色純度の高い発光が観測された。
【0165】
【表1】

【0166】
前記の発光素子に用いた化合物の構造を下記に示す。
【0167】
【化17】

【0168】
【化18】

【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】多色表示装置の画素平面配置を示す概念図である。
【図2】本発明の発光素子の断面模式図である。Aは色変換されて外部に取り出される光を表す。
【図3】従来の色変換型発光素子の断面模式図である。Bは色変換された波長分布の広い光、Cは漏れ光を表す。
【図4】本発明の多色表示装置の断面模式図である。
【符号の説明】
【0170】
Px:発光素子
D:表示装置
1,10,110:基板
2:半透過半反射層
3,30:色変換層
130G:緑色変換層、130R:赤色変換層
4,140:透明下部電極
40:半透過半反射電極
5,50,150:有機層
6,60,160:反射性上部電極(反射電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光部と、該有機電界発光部からの発光を吸収して異なる波長の光を放射する色変換層を備えてなる発光素子であって、前記有機電界発光部と前記色変換層が共に光反射層と半透過半反射層で挟持されたマイクロキャビティ構造内に配置されていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記マイクロキャビティ構造を形成する光反射層及び半透過半反射層の少なくとも一方が前記電極の一方であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記有機電界発光部の発光ピーク波長が500nmより短波長であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記マイクロキャビティ構造により前記基板の法線方向で強められる光の波長が、前記色変換層から放射される光の波長であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記発光層の発光材料が燐光発光材料であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記基板が可撓性基板であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記色変換層と接する層の少なくとも一方に前記有機電界発光部からの発光を吸収しない絶縁層が配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項8】
前記絶縁層の厚みが5nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
複数の発光素子を配列した多色表示装置であって、該発光素子の少なくとも1つが請求項1〜請求項8に記載の発光素子であることを特徴とする多色表示装置。
【請求項10】
前記複数の発光素子は、互いに有機電界発光部の発光ピーク波長は同一であり、色変換層を有する発光素子のマイクロキャビティ構造の共振距離が色変換層の厚みにより調節され、該共振距離は変換された放射光を共振する波長に調節されていることを特徴とする請求項9に記載の多色表示装置。
【請求項11】
前記マイクロキャビティ構造の外側にカラーフィルターを有することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の多色表示装置。
【請求項12】
発光素子の発光層を作る工程とそれとは異なる発光色の色変換層を作る工程とこれらを同時に挟持する一対の反射層と半透過層を作る工程を含む発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−15785(P2010−15785A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173863(P2008−173863)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】