説明

発光素子及びその製造方法、並びに、発光装置

【課題】発光強度が大きく、しかも、半値幅の狭い発光波長を得ることが可能な発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子10は、基体11上に形成された発光層20を備え、発光層20は、第1材料層21、量子井戸層24、及び、第2材料層22が積層された構造を有し、第1材料層21及び第2材料層22の少なくとも一方の層には希土類原子23が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及びその製造方法、並びに、発光装置に関し、より詳しくは、本発明は、ディスプレイやバックライト等の発光デバイスに適用可能であり、発光層に、量子井戸構造若しくは量子ドットと、希土類原子(希土類原子に由来したイオンを含む)とが含まれた発光素子及びその製造方法、並びに、係る発光素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、発光ダイオードや半導体レーザ等の発光デバイスの多くは、主に、GaAs等のIII−V族やII−VI族の化合物半導体材料から作製されている。しかしながら、これらの発光デバイスの作製には、サファイヤ基板等の高価な基板が必要とされること、アルシン等のガスを使用するために作製プロセスが困難なこと、大型で高価な製造設備が必要な上に、ランニングコストも高いこと等の問題がある。
【0003】
一方、現在、トランジスタやメモリ装置を始めとする多くの半導体デバイスは、シリコンやシリコン化合物材料といったシリコン系材料から作製されている。シリコン資源は、豊富で、安価である上、環境負荷が小さい。特に、シリコン系材料を用いたLSIの高集積化は、1970年代以降、約30年の長期に亙り、個々のトランジスタの微細化を進めることで、着実に進歩している。そして、ギガビット級の集積度を有するDRAMが市場に登場している現在でも、将来の集積回路の更なる性能向上を達成するための開発が続けられている。このように、シリコン系材料は、微細化技術のノウハウが蓄積されている上、原料価格が安く、環境負荷の小さい、優秀な半導体デバイス材料であるが、バンド構造が間接遷移型であるため、発光し難く、発光デバイスとしての検討はこれまで余りなされていない。
【0004】
このような中、間接遷移型のシリコン系材料において、直接遷移型のように、キャリアを効率良く光へ変換させるための様々な検討、提案が報告されるようになってきている。その1つに、キャリアの波動関数を局所化し、量子効果を用いる方法がある。この方法によれば、2次元量子井戸構造、1次元量子井戸構造(量子細線)、0次元量子井戸構造(量子ドット)等の量子井戸構造を用いることで、キャリアである電子やホールを微小領域に閉じ込めることができる。量子ドットにおいては、特に、電子やホールを0次元的に局在化させることでキャリアの状態密度をデルタ関数状態に近づけることができ、キャリア閉じ込め領域の大きさに応じたキャリアの波動関数の量子化が起こり、エネルギーが離散的な値をとるようになる。この閉じ込めの方法や、キャリア閉じ込め領域(量子ドット)の大きさを制御することで、バンド端発光再結合効率の向上が可能となる。
【0005】
実際に、III−V族化合物半導体材料での研究が進められており、新たな物性や従来の特性を上回る特性が、数多く分かってきている(例えば、福田達哉、館林潤、西岡政雄、荒川泰彦著、「InGaAs歪緩和層を用いたInAs/GaAs量子ドットの発光波長制御」第51回(2004年春季)応用物理学関係連合講演会28a−ZB−8,2004年 参照)。
【0006】
シリコン系材料に関しては、Si、Ge、Si−Ge等の半導体材料から成る量子ドット(例えばナノクリスタル)の研究が行われている。これらの量子ドットを、SiOX等のバンドギャップの大きな絶縁体中に作り込み、レーザ等の光で励起すると、比較的強い発光が生じることが報告されている(例えば、國井洋、篠田浩一、佐藤慶介、平栗健二、岩瀬満雄、和泉富雄著、「アモルファスSiOx膜内のSi濃度とナノシリコンサイズの相関」第51回(2004年春季)応用物理学関係連合講演会28p−P6−3,2004年 参照)。また、電子デバイスとして電流注入により機能させる場合、ナノクリスタルをSiOX等のバンドギャップの大きな絶縁体中に作り込むことで、デバイスの低電圧駆動化が可能となることが報告されている。しかしながら、シリコン系材料を用いた発光デバイスの構造に関する研究や提案は、まだまだ少ない状況である。
【0007】
また、従来から、半導体材料に添加された希土類原子は、殻内遷移による鋭い赤外光あるいは可視光を発光することが知られている(例えば、田代至男、小柳諭、相曽景一、田中完ニ、並木周著「高出力光アンプの開発」古河電工時報第104号p.59,1999年7月 参照)。こうした希土類原子の発光波長や半値幅は、半導体材料や温度に殆ど依存せず、一定の値を示すことが知られている。特に、希土類元素の中でエルビウム(Er)は1.55μmの発光波長を有し、この1.55μmの発光波長は光ファイバーの最小伝達損失波長であるため、エルビウム発光の光ファイバー通信への応用が期待されている。
【0008】
上述したように、半導体材料から成る量子ドットや希土類元素等の発光材料の研究は、報告されてきてはいるものの、発光素子として有効に機能させるための素子構造に関する研究や提案は、十分にされていないのが現状である。
【0009】
また、表示装置においては、これまで主流であった陰極線管(CRT)に代わり、各種の平面型表示装置、例えば、液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)が商品化され、また、冷陰極電界電子放出表示装置(FED)や表面伝導型電子放出表示装置(Surface Conduction Electron Emitter Display,SED)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置の研究、商品化が進められている。
【0010】
このように、平面型表示装置として様々な表示装置の製造、開発が行われているが、各々、性能、消費電力、製造コスト等に様々な問題を抱えている。
【0011】
例えば、液晶表示装置(LCD)にあっては、棒状の液晶分子のねじれた並びを利用して光の向きを操作しているため、CRTに比べて視野角が狭く、明暗のムラや色ムラが生じ易いという問題がある。現在、イン・プレイン・スイッチング技術、バーチカル・アライメント技術、マルチドメイン技術や、これらの組み合わせ等により、視野角の狭さは改善されつつある。しかしながら、バックライトの光が吸収され易い構造であり、より高い発光強度のバックライトが必要とされ、消費電力が増加する傾向にあるといった問題が生じている。また、色深度(color depth)の問題がある。CRTの場合、蛍光体に衝突する電子の量をアナログ的に変化させることができるので、無限の色彩と明るさを表現することができる。一方、液晶表示装置の場合、液晶セルに印加する電圧を操作し、バックライトの光を通す量を段階的に調整しているため、微妙な色表現ができないという問題がある。更には、レスポンス速度が遅いという問題がある。CRTの場合、電子ビーム速度が速いため、レスポンスの問題は殆ど無いが、液晶表示装置の場合、液晶分子の実際の動きにより動画を表示しているため、タイムラグが生じてしまう。具体的には、パッシブマトリックス駆動の液晶表示装置の場合、レスポンスは150ミリ秒以上、動画表示に向いている標準的なアクティブマトリックス駆動の液晶表示装置の場合、レスポンスは40ミリ秒程度、現状、最もレスポンスの早いMVAの場合、25ミリ秒程度のタイムラグがある。また、消費電力については、CRTに比べて低いといったイメージがあるが、視野角やレスポンス等の改善による高機能化に伴い、光が吸収され易い構造に向かっており、現状、バックライトから発光される光の10%程度しか液晶表示装置の表面に取り出されておらず、消費電力が増加している。更には、製造工程が複雑なこと、基板に高コストのガラス基板を使用していること等により、CRTに比べて価格が高く、将来的にも安価にすることが困難であるという問題がある。
【0012】
また、将来が期待されている有機ELディスプレイだが、大型化を実現するためには、現在、多くの問題を抱えている。有機ELディスプレイの抱えている大きな問題の1つに、寿命の問題がある。発光素子を構成する発光層、正孔輸送層、電子輸送層等の有機分子や、電子を効率よく注入するための(即ち、電子注入障壁が低い)陰極材料であるマグネシウム合金やカルシウム等は、酸素や水分に弱く、酸素や水分と反応して、ディスプレイ上に暗点や滅点が生じると共に、輝度の低下が生じるという問題がある。このような問題は改善されてきてはいるものの、長寿命が求められる大型ディスプレイにとって、現状、十分な寿命ではなく、素子自身の改良や外部要因を遮断する技術の向上が求められている。
【0013】
【非特許文献1】福田達哉、館林潤、西岡政雄、荒川泰彦著、「InGaAs歪緩和層を用いたInAs/GaAs量子ドットの発光波長制御」第51回(2004年春季)応用物理学関係連合講演会28a−ZB−8,2004年
【非特許文献2】國井洋、篠田浩一、佐藤慶介、平栗健二、岩瀬満雄、和泉富雄著、「アモルファスSiOx膜内のSi濃度とナノシリコンサイズの相関」第51回(2004年春季)応用物理学関係連合講演会28p−P6−3,2004年
【非特許文献3】田代至男、小柳諭、相曽景一、田中完ニ、並木周著「高出力光アンプの開発」古河電工時報第104号p.59,1999年7月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
量子ドット(ナノクリスタル)のみから構成された発光デバイスにおける発光波長は、通常、数十nm〜数百nmの大きな半値幅を示すことが知られており、半値幅を狭くし、且つ、発光強度を高くすることは、現在のところ困難である。
【0015】
また、現状の各種の平面型表示装置は、上述したとおり、視野角が狭い、明暗のムラや色ムラが生じ易い、色深度に問題がある、レスポンス速度が遅い、製造コストが高い、小型化が困難である、長寿命化を図る必要がある、消費電力が大きいといった様々な問題点を有している。
【0016】
従って、本発明の目的は、発光強度が大きく、しかも、半値幅の狭い発光波長を得ることが可能な発光素子、及び、係る発光素子の製造方法、並びに、係る発光素子を組み込み、上述した現状の各種の平面型表示装置の有する問題点を解消し得る発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る発光素子は、基体上に形成された発光層を備えた発光素子であって、
該発光層は、第1材料層、量子井戸層、及び、第2材料層が積層された構造を有し、
第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層には、希土類原子が含まれていることを特徴とする。
【0018】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る発光装置は、基体上に形成された発光層を備えた発光素子を、複数、備えた発光装置であって、
各発光素子を構成する発光層は、第1材料層、量子井戸層、及び、第2材料層が積層された構造を有し、
第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層には、希土類原子が含まれていることを特徴とする。
【0019】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法は、基体上に、第1材料層、量子井戸層、及び、第2材料層が積層された構造を有し、第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層に希土類原子が含まれた発光層を形成する発光素子の製造方法であって、
第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層にイオン注入を施すことで希土類原子を含ませることを特徴とする。
【0020】
本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、
基体上に、シリコンを主成分とする第1材料層を形成した後、
第1材料層にイオン注入を施すことで希土類原子を含ませ、次いで、
第1材料層上に量子井戸層を形成した後、
量子井戸層上に、シリコンを主成分とする第2材料層を形成し、その後、
第2材料層にイオン注入を施すことで希土類原子を含ませる、
ことが好ましい。
【0021】
上述した好ましい形態を含む本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、該層と量子井戸層の界面から、フェルスター機構(Foerster機構)によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施す構成とすることができ、この場合、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から1×10-8mの範囲内に位置することが好ましい。あるいは又、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、該層と量子井戸層の界面から、デクスター機構(Dexter機構、交換機構とも呼ばれる)によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施す構成とすることができ、この場合、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から1×10-9mの範囲内に位置することが好ましい。あるいは又、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から、フォトンを介したエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施す構成とすることができる。
【0022】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る発光素子は、基体上に形成された発光層を備えた発光素子であって、
該発光層は、量子ドット、並びに、該量子ドットの表面に付着し、及び/又は、該量子ドットの内部に含まれた希土類原子から成ることを特徴とする。
【0023】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る発光装置は、基体上に形成された発光層を備えた発光素子を、複数、備えた発光装置であって、
各発光素子を構成する発光層は、量子ドット、並びに、該量子ドットの表面に付着し、及び/又は、該量子ドットの内部に含まれた希土類原子から成ることを特徴とする。
【0024】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法は、基体上に形成され、量子ドット、並びに、該量子ドットの表面に付着し、及び/又は、該量子ドットの内部に含まれた希土類原子から成る発光層を備えた発光素子の製造方法であって、
発光層を、
量子ドットを形成した後、
量子ドット中に希土類原子を拡散させ、及び/又は、量子ドットの表面に希土類原子を付着させ、次いで、
量子ドットとシリコンアルコキシドとを混合して得られた生成物を基体に付着させた後、生成物をアニール処理する、
ことによって形成することを特徴とする。
【0025】
本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、量子ドットとシリコンアルコキシドとを混合して生成物を得る工程は、量子ドットとシリコンアルコキシドとを混合した後、アルカリ又は酸を触媒として添加して、シリコンアルコキシドを加水分解する工程から成る構成とすることができる。ここで、限定するものではないが、触媒として、水酸化アンモニウム(NH4OH)を添加する構成を例示することができる。尚、量子ドットとシリコンアルコキシドとを混合して得られた生成物はゾル状若しくはゲル状の生成物であり、この生成物を発光素子毎に基体に付着させる構成(隣接するそれぞれの発光素子を空間的に分離した状態で基体に付着させる構成)とすることができる。
【0026】
更には、上述した各種の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法において、シリコンアルコキシドとして、テトラメトキシシラン(Si(OCH34)、あるいは又、テトラエトキシシラン(Si(OC254)を例示することができる。
【0027】
更には、上述した各種の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、アニール処理は、希ガス若しくは窒素ガスから成る不活性ガス雰囲気下、100゜C以上、1500゜C以下の温度、好ましくは、100゜C以上、1300゜C以下の温度、更に好ましくは、100゜C以上、1200゜C以下の温度で行うことが望ましい。このようなアニール処理を行うことで、水などの不純物を焼き飛ばし、希土類イオンの活性化を行うことができる。
【0028】
また、上述した各種の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、限定するものではないが、シリコン半導体基板を陽極酸化することで得られた多孔質のシリコン半導体基板を溶媒中で超音波処理することで、量子ドットを形成することが望ましい。
【0029】
更には、上述した各種の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、量子ドットへのイオン注入によって、量子ドット中に希土類原子を拡散させる構成とすることができ、あるいは又、無電解めっき法、スパッタリング法若しくは分子線エピタキシャル法(MBE法)によって、量子ドットの表面に希土類原子を付着させる構成とすることができる。また、量子ドットとシリコンアルコキシドとを混合して得られた生成物を基体に付着させる方法として、スクリーン印刷法、インクジェット方式による印刷法、浸漬法を挙げることができる。
【0030】
本発明の第1の態様に係る発光素子、本発明の第1の態様に係る発光装置、あるいは、本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法(以下、これらを総称して、本発明の第1の態様と呼ぶ場合がある)における量子井戸層とは、2次元量子井戸(所謂量子井戸)を含む層、1次元量子井戸(所謂量子細線)を含む層、及び、0次元量子井戸(所謂量子ドットあるいはナノクリスタル)を含む層を意味する。量子井戸層の厚さは、5×10-10m(原子1個分程度の厚さ)乃至1×10-8m、好ましくは、5×10-10m乃至5×10-9mであることが、発光効率を向上させるといった観点から望ましい。
【0031】
本発明の第1の態様において、発光層は、第1材料層、量子井戸層、及び、第2材料層が積層された構造を有するが、このような構造には、量子井戸層が、第1材料層及び/又は第2材料層中にランダムに分散されている構造も包含されるし、第1材料層、量子井戸層、第2材料層が幾重にも積層された構造も包含されるし、量子井戸層が、第1材料層と第2材料層の境界領域に島状に形成されている構造も包含される。第1材料層、量子井戸層、第2材料層が幾重にも積層された構造にあっては、量子井戸層近傍の第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層の領域に含まれる希土類原子は、同種であってもよいし、異種であってもよい。また、第1材料層及び第2材料層の両方に希土類原子を含む構成においては、第1材料層に含まれる希土類原子と、第2材料層に含まれる希土類原子とを、同種の希土類原子としてもよいし、異種の希土類原子としてもよい。
【0032】
一方、本発明の第2の態様に係る発光素子、本発明の第2の態様に係る発光装置、あるいは、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法(以下、これらを総称して、本発明の第2の態様と呼ぶ場合がある)にあっては、発光層は1層であってもよいし、複数層の積層構造を有していてもよく、後者の場合、異なる希土類原子を含む発光層が積層された構造とすることもできる。また、発光層は、量子ドット、並びに、量子ドットの表面に付着し、及び/又は、量子ドットの内部に含まれた希土類原子から成るが、具体的には、希土類原子は、量子ドットの表面に付着した形態であり、あるいは又、量子ドットの内部に含まれた(拡散した)形態であり、あるいは又、量子ドットの表面に付着し、且つ、量子ドットの内部に含まれた形態である。
【0033】
本発明の第1の態様にあっては、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から、フェルスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置する構成とすることができ、この場合、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から1×10-8mの範囲内に位置することが好ましい。
【0034】
あるいは又、本発明の第1の態様にあっては、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から、デクスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置する構成とすることができ、この場合、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から1×10-9mの範囲内に位置することが好ましい。
【0035】
あるいは又、本発明の第1の態様にあっては、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から、フォトンを介したエネルギー遷移が起こる範囲内に位置する構成とすることができる。
【0036】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様に係る発光素子、本発明の第1の態様に係る発光装置、本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法、本発明の第2の態様に係る発光素子、本発明の第2の態様に係る発光装置、あるいは、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法、(以下、これらを総称して、本発明と呼ぶ場合がある)にあっては、発光素子を、エレクトロルミネッセンス素子、より具体的には、電流注入型エレクトロルミネッセンス素子(電極から発光層に電荷担体が直接流入して発光するエレクトロルミネッセンス素子)あるいは真性エレクトロルミネッセンス素子(誘電体中の発光層を強い外部電場によって励起して発光させるエレクトロルミネッセンス素子)とすることができ、この場合には、本発明の発光装置は、エレクトロルミネッセンス表示装置、電流注入型エレクトロルミネッセンス表示装置、真性エレクトロルミネッセンス表示装置に相当する。あるいは又、発光素子を、光励起型発光素子とすることもできるし、電子線励起型発光素子とすることもできる。発光素子を光励起型発光素子とする場合、本発明の発光素子を、例えば、発光ダイオードと組み合わせればよいし、あるいは又、プラズマ表示装置(PDP)の発光領域(従来のプラズマ表示装置における所謂蛍光体層に相当する部分)に本発明の発光素子を組み込めばよい。発光素子を光励起型発光素子とする場合、本発明の発光装置は、発光ダイオードを備えた表示装置、あるいは又、プラズマ表示装置(PDP)に相当する。一方、発光素子を電子線励起型発光素子とする場合、冷陰極電界電子放出表示装置(FED)や表面伝導型電子放出表示装置(SED)、MIM素子とも呼ばれる金属/絶縁膜/金属型素子を備えた表示装置におけるアノードパネルを構成する発光領域(従来のこれらの表示装置における所謂蛍光体層に相当する部分)に本発明の発光素子を組み込めばよい。発光素子を電子線励起型発光素子とする場合、本発明の発光装置は、冷陰極電界電子放出表示装置(FED)や表面伝導型電子放出表示装置(SED)、MIM素子とも呼ばれる金属/絶縁膜/金属型素子を備えた表示装置に相当する。
【0037】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様にあっては、量子井戸層は、シリコン、ゲルマニウム、若しくは、シリコン−ゲルマニウムから成る構成とすることができるし、あるいは又、シリコン系酸化物(SiOX,0<X≦2)から成る構成とすることができるし、更には、SiNといったシリコン系窒化物から成る構成とすることもできるし、これらの材料の混合物から成る構成とすることもできる。量子井戸層をシリコン、ゲルマニウム、若しくは、シリコン−ゲルマニウムから成る構成とする場合、量子井戸それ自体(即ち、所謂量子井戸、所謂量子細線、所謂量子ドットあるいはナノクリスタルであり、以下の説明においても同様である)はシリコン、ゲルマニウム、若しくは、シリコン−ゲルマニウムから成り、しかも、量子井戸それ自体が、例えば、シリコン系酸化物(SiOX,0<X≦2)によって取り囲まれた構造となる。また、量子井戸層をシリコン系酸化物から成る構成とする場合、量子井戸それ自体はシリコン系酸化物から成り、しかも、量子井戸それ自体が、例えば、より酸素含有量の多いシリコン系酸化物(SiOX,0<X≦2)によって取り囲まれた構造となる。更には、量子井戸層をシリコン系窒化物から成る構成とする場合、量子井戸それ自体はシリコン系窒化物から成り、しかも、量子井戸それ自体が、例えば、シリコン系酸化物(SiOX,0<X≦2)によって取り囲まれた構造となる。
【0038】
また、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様にあっては、希土類原子が含まれている層はシリコンを主成分とする構成とすることができ、この場合、希土類原子が含まれている層はシリコン系酸化物から成ることが好ましい。
【0039】
一方、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第2の態様に係る発光素子、本発明の第2の態様に係る発光装置、あるいは、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法にあっては、量子ドットはシリコンから成ることが好ましい。
【0040】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明にあっては、希土類原子として、少なくともユーロビウム(Eu)を含み、あるいは又、希土類原子として、少なくともプラセオジウム(Pr)を含み、あるいは又、希土類原子として、少なくともエルビウム(Er)を含み、あるいは又、希土類原子として、少なくともテルビウム(Tb)を含み、あるいは又、希土類原子として、少なくともセリウム(Ce)を含み、あるいは又、希土類原子として、少なくともツリウム(Tm)を含む構成とすることができる。以下の表1に、希土類原子に由来したイオンと発光素子の発光波長の関係を示す。尚、本発明における希土類原子には、希土類原子に由来したイオンが包含される。
【0041】
[表1]
希土類原子に由来したイオン 発光素子の発光波長
Pr3+ 635nm(赤色)
Eu3+ 615nm(赤色)
Pr3+ 605nm(赤色)
Er3+ 570nm(橙色)
Tb3+ 545nm(緑色)
Ce3+ 530nm(青色)
Tm3+ 450nm(青色)
【0042】
尚、希土類元素は、原子番号21のスカンジウム(Sc)、原子番号39のイットリウム(Y)、並びに、原子番号57のランタン(La)から原子番号71のルテチウム(Lu)までの15種類の4f軌道遷移系列元素群であり、周期律表のIIIB族に属するため、一般に3価が安定である。このうち、Ce3+(セリウム:原子番号58)からYb3+(イッテルビウム:原子番号70)までの13種類の希土類原子は、1個から13個の4f電子を有し、電子配置の相違に基づく多様なエネルギー準位を形成する。異なるエネルギー準位間の電子遷移エネルギーは、紫外光、可視光、赤外光に相当するので、多くの希土類原子は、これらの波長で光の吸収、発光を起こす。即ち、希土類原子として、少なくとも、「4f電子」を有する、原子番号58のセリウム(Ce)〜原子番号70のイッテルビウム(Yb)を用いることができるし、また、原子番号21のスカンジウム(Sc)、原子番号39のイットリウム(Y)を用いることもできる。
【0043】
以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光装置にあっては、赤色に相当する第1の波長λ1の光を発光する第1の発光素子、緑色に相当する第2の波長λ2の光を発光する第2の発光素子、及び、青色に相当する第3の波長λ3の光を発光する第3の発光素子の3種類の発光素子によって、1つの発光素子ユニットが構成され、複数の発光素子ユニットを備えている構成とすることができる。あるいは又、赤色に相当する第1の波長λ1の光を発光する第1の発光素子、緑色に相当する第2の波長λ2の光を発光する第2の発光素子、青色に相当する第3の波長λ3の光を発光する第3の発光素子、及び、それ以外の色に相当する第4の波長λ4の光を発光する第4の発光素子の4種類の発光素子によって、1つの発光素子ユニットが構成され、複数の発光素子ユニットを備えている構成とすることができる。尚、1つの発光素子ユニットを5種類以上の発光素子によって構成してもよい。
【0044】
本発明において、基体として、シリコン半導体基板を例示することができるが、このような基板に限定するものではなく、その他、表面に絶縁膜が形成された半導体基板、GaAs基板、GaN基板、半絶縁性基板、表面に絶縁膜が形成された半絶縁性基板、絶縁性基板、表面に絶縁膜が形成された絶縁性基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、ガラス基板、表面に絶縁膜が形成されたガラス基板を挙げることができるし、発光素子を作り込む対象によっては、絶縁層や封止層が基体に相当する場合もある。ここで、ガラス基板として、高歪点ガラス、ソーダガラス(Na2O・CaO・SiO2)、硼珪酸ガラス(Na2O・B23・SiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、鉛ガラス(Na2O・PbO・SiO2)を例示することができる。
【0045】
本発明にあっては、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークの測定や、量子ドットの表面に付着し、及び/又は、量子ドットの内部に含まれた希土類原子の量(濃度)の測定は、ラザフォード(Ratherford)後方散乱(RBS)測定に基づき行うことができる。
【0046】
本発明の発光装置は、上述した各種表示装置だけでなく、バックライト(例えば、液晶表示装置に用いられる)を含む照明装置に適用することができる。また、本発明の発光素子を、蛍光体の代替として使用することが可能であるし、場合によっては、本発明の発光装置を、従来の蛍光体を備えた表示装置の代替として使用することも可能である。
【発明の効果】
【0047】
本発明にあっては、発光層を、量子井戸層と希土類原子、あるいは、量子ドットと希土類原子から構成するので、例えば絶縁体である酸化シリコン膜に希土類原子を分散させただけの従来の発光素子と比較して、より低電圧で、大きな電流を流すことができ、発光強度が高く、半値幅の狭い発光波長を得ることが可能となる。これは、量子井戸層や量子ドットにキャリアがトラップされ、キャリアのエネルギーが閉じ込められた状態となり、このとき、量子井戸層や量子ドットの近傍に希土類原子が存在すると、量子井戸層や量子ドットに閉じ込められたキャリアのエネルギーが希土類原子に移送され(即ち、エネルギー遷移が起こり)、次いで、希土類原子の殻内遷移により発光が生じるからであると考えられる。そして、この場合、量子井戸層や量子ドットが存在せず、ホットエレクトロンのみによって希土類原子の殻内遷移による発光が生じる場合と比較して、低消費電力で、より高い発光強度が得られる。更には、絶縁体である酸化シリコンのみから構成された発光層に比べて、量子井戸構造を有する場合、発光層の電気抵抗が低減され、発光素子の低電圧駆動化を図ることができる。しかも、発光素子は、自発光で、磁気の影響を受け難く、表示装置を大型化しても歪みが無く、鮮明で高画質な画像であって、高視野角の表示装置を得ることが可能となる。更には、従来の薄型表示装置と比較して、一層の軽量化、薄型化を実現できるし、一層の低消費電力化、低コスト化が可能となる。
【0048】
また、本発明の第1の態様においては、希土類原子が含まれている層における厚さ方向の希土類原子の濃度ピークの位置を規定することで、発光効率を向上させることができるし、本発明の第2の態様においては、発光層を、量子ドット、並びに、量子ドットの表面に付着し、及び/又は、該量子ドットの内部に含まれた希土類原子から構成するので、発光効率を向上させることができる。
【0049】
本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法においては、第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層にイオン注入を施すことで希土類原子を含ませるので、また、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法においては、希土類原子を含む(付着された態様を包含する)量子ドットとシリコンアルコキシドとを混合して得られた生成物(例えば、ゾル状生成物若しくはゲル状生成物)を基体の所定の位置に付着させるので、発光素子毎に、即ち、異なる色を発光する発光素子を所望の領域に容易に形成することができ、大型の表示装置においても、発光素子を精度良く形成することができる。特に、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法においては、従来の気相プロセスに比べてより低い消費エネルギーで発光層を形成することが可能であるし、生成物の付着工程では、安価なスクリーン印刷方式やインクジェット方式、浸漬方式を用いることが可能である。
【0050】
また、本発明において、シリコン系材料から発光素子を構成すれば、他の材料と比較して、組成が安定しているという利点がある。更には、シリコン系材料は、資源が豊富なため原料価格が安いし、環境負荷が小さく廃棄物として無害であり、しかも、融点が高いため、製造上の高温処理に十分に耐えられるという利点もある。しかも、基体としてシリコン半導体基板を用いれば、駆動用のトランジスタと発光素子とを一体的に製造することが可能であり、表示装置の更なる軽量化、薄型化が可能となる上、透明電極上にトランジスタを作製するといった低温TFT技術等の高度な製造技術が不要となり、製造プロセスの簡略化が可能となる。更には、駆動用のトランジスタを基体に相当するシリコン半導体基板に作り込めば、電子移動度が、アモルファスシリコン(1cm2-1-1)やポリシリコン(100cm2-1-1〜400cm2-1-1)と比較して、600cm2-1-1程度と高くなり、一層の応答速度の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0052】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る発光素子、及び、本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法に関する。尚、実施例1、及び、後述する実施例2〜実施例4において、発光素子はフォトルミネッセンス(PL)発光素子から成る。
【0053】
実施例1の発光素子の模式的な一部断面図を図1の(C)に示す。この実施例1の発光素子10は、シリコン半導体基板から成る基板11(基体に相当する)上に形成された発光層20を備えている。そして、発光層20は、第1材料層21、量子井戸層24、及び、第2材料層22が、この順に積層された構造を有する。第1材料層21及び第2材料層22は、シリコンを主成分とし、具体的にはシリコン系酸化物、より具体的には酸化シリコン(SiO2)から成り、厚さは約200nmである。また、量子井戸層24は、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、若しくは、シリコン−ゲルマニウム(Si−Ge)から成り、あるいは又、シリコン系酸化物から成る。
【0054】
そして、第1材料層21及び第2材料層22の少なくとも一方の層(実施例1にあっては、第1材料層21及び第2材料層22の両方)には、希土類原子23、より具体的には、希土類原子に由来したイオンが含まれている。尚、図面においては、希土類原子23あるいは希土類原子に由来したイオンを、「×」印で表示している。そして、希土類原子23が含まれている層(実施例1にあっては、第1材料層21及び第2材料層22の両方)において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、第1材料層21と量子井戸層24の界面から、フェルスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内(量子井戸層に閉じ込められたキャリアのエネルギーが希土類原子に移送され得る範囲内)に位置し、また、第2材料層22と量子井戸層24の界面から、フェルスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置する。より具体的には、希土類原子が含まれている層(実施例1にあっては、第1材料層21及び第2材料層22の両方)において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、第1材料層21と量子井戸層24の界面から1×10-8m(10nm)の範囲内に位置し、また、第2材料層22と量子井戸層24の界面から1×10-8m(10nm)の範囲内に位置する。あるいは又、希土類原子が含まれている層(実施例1にあっては、第1材料層21及び第2材料層22の両方)において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、第1材料層21と量子井戸層24の界面からフォトンを介したエネルギー遷移が起こる範囲内に位置し、第2材料層22と量子井戸層24の界面からフォトンを介したエネルギー遷移が起こる範囲内に位置する。尚、希土類原子23を、第1材料層21及び第2材料層22の両方に導入することが好ましいが、第1材料層21若しくは第2材料層22の一方の層のみに導入してもよい。
【0055】
希土類原子23はユーロビウム(Eu)であり、この場合、Eu3+を含む発光素子は赤色(波長:615nm)を発光し、あるいは又、希土類原子23はプラセオジウム(Pr)であり、この場合、Pr3+を含む発光素子は赤色(波長:605nm)を発光し、あるいは又、希土類原子23はエルビウム(Er)であり、この場合、Er3+を含む発光素子は橙色(波長:570nm)を発光し、あるいは又、希土類原子23はテルビウム(Tb)であり、この場合、Tb3+を含む発光素子は緑色(波長:545nm)を発光し、あるいは又、希土類原子23はセリウム(Ce)であり、この場合、Ce3+を含む発光素子は青色(波長:530nm)を発光し、あるいは又、希土類原子23はツリウム(Tm)であり、この場合、Tm3+を含む発光素子は青色(波長:450nm)を発光する。尚、希土類原子23を、以上に説明した、あるいは、それ以外の希土類原子の複数種から構成することもでき、この場合の発光色は、希土類原子が発光する特有の発光色の混色となる。
【0056】
以下、基体等の模式的な一部断面図である図1の(A)〜(C)を参照して、実施例1の発光素子の製造方法を説明する。
【0057】
[工程−100]
基体に相当する基板11としてシリコン基板を用意する。そして、プラズマ化学的気相成長法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition法,PE−CVD法)に基づき、基板11上に、シリコンを主成分とする第1材料層21、より具体的には、厚さ約200nmのSiO2から成る第1材料層21を形成する。
【0058】
[工程−110]
次いで、イオン注入法によって、第1材料層21の表面から希土類原子23をイオン注入する(図1の(A)参照)。即ち、希土類原子が含まれている層(第1材料層21)において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、この層(第1材料層21)と量子井戸層24の界面から、フェルスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施す。あるいは又、希土類原子が含まれている層(第1材料層21)において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、この層(第1材料層21)と量子井戸層24の界面から、フォトンを介したエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施す。具体的には、第1材料層21の表面から10nmの範囲内に、厚さ方向の希土類原子23の濃度ピークが位置するように、希土類原子23(より具体的には、希土類原子に由来したイオン)をイオン注入する。例えば、希土類原子23をテルビウム(Tb)とする場合の第1材料層21へのイオン注入条件を、以下の表2に例示する。イオン注入後、400゜C〜1200゜C程度の温度で1分〜100分程度のアニール処理を施し、イオン注入による第1材料層21におけるダメージの回復を図ることが望ましい。尚、ドーズ量の望ましい範囲として、1×1011atoms/cm2乃至1×1015atoms/cm2、好ましくは、1×1012atoms/cm2乃至1×1014atoms/cm2を挙げることができる。また、ユーロビウム(Eu)、プラセオジウム(Pr)、エルビウム(Er)、セリウム(Ce)、及び、ツリウム(Tm)をイオン注入する場合には、これらの希土類原子に由来したイオンをイオン注入するための最適な加速エネルギー及びドーズ量を各種の試験に基づき決定し、その決定に基づきイオン注入を行えばよい。
【0059】
[表2]
加速エネルギー:10keV
イオン種 :Tb3+
ドーズ量 :1×1013atoms/cm2
【0060】
[工程−120]
その後、例えばPE−CVD法に基づき、第1材料層21上に、例えばシリコン(Si)から成り、厚さ10nmの量子井戸層24を形成する(図1の(B)参照)。具体的には、例えば、基板温度420゜C、SiH4流量50sccm、Ar流量1000sccm、5.3×102Pa(4Torr)の圧力下、RFパワー250W、ギャップ14mmの条件にて、量子井戸層24を形成することができる。あるいは又、スパッタリング法にて量子井戸層24を形成することもできる。具体的には、例えば、Ar流量20sccm、1×10-4Paの圧力下、RFパワー500Wにて、Siターゲットをアルゴンプラズマにてスパッタすることで、量子井戸層24を形成することができる。
【0061】
尚、シリコン(Si)から成る量子井戸層24の形成の代わりに、ゲルマニウム(Ge)から成る量子井戸層24を形成してもよいし、シリコン−ゲルマニウム(Si−Ge)から成る量子井戸層24を形成してもよいし、シリコン系酸化物から成る量子井戸層24を形成してもよい。シリコン系酸化物から成る量子井戸層24は、具体的には、例えば、基板温度400゜C、SiH4流量100sccm、N2O流量2000sccm、3.3×102Pa(2.5Torr)の圧力下、RFパワー150〜300W、ギャップ14mmの条件のCVD法にて、形成することができる。
【0062】
[工程−130]
次に、例えばPE−CVD法によって、量子井戸層24上に、シリコンを主成分とする第2材料層22、より具体的には、厚さ約200nmのSiO2から成る第2材料層22を形成する。
【0063】
[工程−140]
その後、イオン注入法によって、第2材料層22の表面から希土類原子23をイオン注入する(図1の(C)参照)。即ち、希土類原子が含まれている層(第2材料層22)において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、この層(第2材料層22)と量子井戸層24の界面から、フェルスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施す。あるいは又、希土類原子が含まれている層(第2材料層22)において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、この層(第2材料層22)と量子井戸層24の界面から、フォトンを介したエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施す。具体的には、量子井戸層24と第2材料層22の界面から第2材料層22の内部、10nmの範囲内に厚さ方向の希土類原子23の濃度ピークが位置するように(云い換えれば、第2材料層22表面から190nmの深さの位置するように)、希土類原子23(より具体的には、希土類原子に由来したイオン)をイオン注入する。例えば、希土類原子23をテルビウム(Tb)とする場合の第2材料層22へのイオン注入条件を、以下の表3に例示する。イオン注入後、400゜C〜1300゜C程度の温度で1分〜100分程度のアニール処理を施し、イオン注入による第1材料層21におけるダメージの回復を図ることが望ましい。尚、ドーズ量の望ましい範囲として、1×1011atoms/cm2乃至1×1015atoms/cm2、好ましくは、1×1012atoms/cm2乃至1×1014atoms/cm2を挙げることができる。また、ユーロビウム(Eu)、プラセオジウム(Pr)、エルビウム(Er)、セリウム(Ce)、及び、ツリウム(Tm)をイオン注入する場合には、これらの希土類原子に由来したイオンをイオン注入するための最適な加速エネルギー及びドーズ量を各種の試験に基づき決定し、その決定に基づきイオン注入を行えばよい。
【0064】
[表3]
加速エネルギー:600keV
イオン種 :Tb3+
ドーズ量 :1×1013atoms/cm2
【0065】
尚、[工程−110]において、PE−CVD法とイオン注入法との組合せの代わりに、スパッタリング法にて、第1材料層21の形成、第1材料層21の形成と希土類原子23の導入、更には、第1材料層21の形成を行ってもよい。また、同様に、[工程−140]において、スパッタリング法にて、第2材料層22の形成、第2材料層22の形成と希土類原子23の導入、更には、第2材料層22の形成を行ってもよい。
【0066】
これによって、実施例1にあっては、基板11上に、SiO2から成る厚さ200nmの第1材料層21が形成され、第1材料層21上にシリコン(Si)から成る厚さ10nmの量子井戸層24が形成され、量子井戸層24上にSiO2から成る厚さ200nmの第2材料層22が形成され、第1材料層21及び第2材料層22中に導入されたテルビウムイオン(Tb3+)の厚さ方向の濃度ピークが、量子井戸層24から10nm程度離れた位置に位置する発光素子10を得ることができた。
【0067】
実施例1においては、特に、シリコン半導体における高度な高集積化技術を適用することにより、数μmオーダーの大きさの制御が可能である。
【0068】
また、実施例1、あるいは後述する実施例2〜実施例4において説明する発光素子を所望の配置状態に配置し、係る発光素子に例えばレーザ光を照射することで発光素子を発光させれば、フォトルミネッセンス(PL)型の表示装置として機能させることができる。
【実施例2】
【0069】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、[工程−100]、[工程−120]〜[工程−140]と同様の工程を実行した。即ち、[工程−110]を省略した。
【0070】
これによって、実施例2にあっては、基板11上に、SiO2から成る厚さ200nmの第1材料層21が形成され、第1材料層21上に厚さ10nmのシリコン(Si)から成る量子井戸層24が形成され、量子井戸層24上にSiO2から成る厚さ200nmの第2材料層22が形成され、第2材料層22中のみに導入されたテルビウムイオン(Tb3+)の厚さ方向の濃度ピークが、量子井戸層24から10nm程度離れた位置に位置する発光素子を得ることができた。
【実施例3】
【0071】
実施例3も、実施例1の変形である。実施例3においては、希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、この層と量子井戸層の界面から、デクスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内(量子井戸層に閉じ込められたキャリアのエネルギーが希土類原子に移送され得る範囲内)に位置する。具体的には、実施例3にあっては、希土類原子が含まれている層(実施例3にあっては、第1材料層21及び第2材料層22の両方)において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、第1材料層21と量子井戸層24の界面から1×10-9m(1nm)の範囲内に位置し、また、第2材料層22と量子井戸層24の界面から1×10-9m(1nm)の範囲内に位置する。尚、[工程−110]と同様の工程において、例えば、希土類原子23をテルビウム(Tb)とする場合の第1材料層21へのイオン注入条件を、以下の表4に例示し、[工程−140]において、第2材料層22へのイオン注入条件を、以下の表5に例示する。
【0072】
[表4]
加速エネルギー:0.1keV〜3keV
イオン種 :Tb3+
ドーズ量 :1×1013atoms/cm2
【0073】
[表5]
加速エネルギー:620keV
イオン種 :Tb3+
ドーズ量 :1×1013atoms/cm2
【0074】
これによって、実施例3にあっては、基板11上に、SiO2から成る厚さ200nmの第1材料層21が形成され、第1材料層21上にシリコン(Si)から成る厚さ10nmの量子井戸層24が形成され、量子井戸層24上にSiO2から成る厚さ200nmの第2材料層22が形成され、第1材料層21及び第2材料層22中に導入されたテルビウムイオン(Tb3+)の厚さ方向の濃度ピークが、量子井戸層24から1nm程度離れた位置に位置する発光素子を得ることができた。
【0075】
以下、実施例1及び実施例3の発光素子における希土類原子(実施例1及び実施例3にあっては、より具体的には、希土類原子に由来したイオン)の導入位置について説明する。ここで、希土類原子23が含まれている層における厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、この層と量子井戸層の界面から距離「d」だけ離れているとする。
【0076】
このdの値が100nmである場合、例えば、フェルスター機構によるエネルギー遷移が期待される10nm以内に量子井戸層24と希土類原子23とが接近している場合があり得るので、量子井戸層24が存在しない場合と比較して、発光素子の発光効率が若干なりとも向上することを期待することができる。
【0077】
一方、このdの値が10nmである場合、例えば、共鳴的双極子−双極子相互作用によるエネルギー移動であるフェルスター機構(Foerster機構)に基づく移動距離の上限は10nmであると云われており、エネルギーの遷移効率の大幅なる向上を期待することができる。
【0078】
更には、このdの値が1nmである場合、例えば、分子間接触による電子の交換によるエネルギー移動であるデクスター機構(Dexter機構、交換機構とも呼ばれる)に基づく移動距離の上限は1nmであると云われており、エネルギーの遷移効率の一層大幅なる向上を期待することができる。
【0079】
[比較例1]
比較例1として、[工程−100]〜[工程−140]と同様の工程を実行した。但し、[工程−110]と同様の工程においては、第1材料層21の表面から100nmの位置に、厚さ方向の希土類原子23の濃度ピークが位置するように、希土類原子23(より具体的には、希土類原子に由来したイオン)をイオン注入する(表6のイオン注入条件を参照)。また、量子井戸層24と第2材料層22の界面から第2材料層22の内部、100nmの位置に厚さ方向の希土類原子23の濃度ピークが位置するように(云い換えれば、第2材料層22表面から100nmの深さの位置するように)、希土類原子23(より具体的には、希土類原子に由来したイオン)をイオン注入する(表6のイオン注入条件を参照)。
【0080】
[表6]
加速エネルギー:300keV
イオン種 :Tb3+
ドーズ量 :1×1013atoms/cm2
【0081】
これによって、比較例1にあっては、基板11上に、SiO2から成る厚さ200nmの第1材料層21が形成され、第1材料層21上にシリコン(Si)から成る厚さ10nmの量子井戸層24が形成され、量子井戸層24上にSiO2から成る厚さ200nmの第2材料層22が形成され、第1材料層21及び第2材料層22中に導入されたテルビウムイオン(Tb3+)の厚さ方向の濃度ピークが、量子井戸層24から100nm程度離れた位置に位置する発光素子を得ることができた。
【0082】
[比較例2]
また、比較例2として、比較例1と同じ工程を実行した。但し、[工程−110]を省略した。
【0083】
これによって、比較例2にあっては、基板11上に、SiO2から成る厚さ200nmの第1材料層21が形成され、第1材料層21上にシリコン(Si)から成る厚さ10nmの量子井戸層24が形成され、量子井戸層24上にSiO2から成る厚さ200nmの第2材料層22が形成され、第2材料層22中のみに導入されたテルビウムイオン(Tb3+)の厚さ方向の濃度ピークが、量子井戸層24から100nm程度離れた位置に位置する発光素子を得ることができた。
【0084】
[比較例3]
更には、比較例3として、[工程−100]〜[工程−140]と同様の工程を実行した。但し、[工程−120]と同様の工程においては、量子井戸層を形成せずに、例えばPE−CVD法に基づき、第1材料層21上に、厚さ10nmのSiO2層を形成し、[工程−130]と同様の工程においては、このSiO2層上に第2材料層22を形成した。尚、このSiO2層は量子井戸層ではない。
【0085】
これによって、比較例3にあっては、基板11上に、SiO2から成る厚さ200nmの第1材料層21が形成され、第1材料層21上にSiO2層が形成され、SiO2層上にSiO2から成る厚さ200nmの第2材料層22が形成され、第1材料層21及び第2材料層22中に導入されたテルビウムイオン(Tb3+)の厚さ方向の濃度ピークが、SiO2層から10nm程度離れた位置に位置する比較例3の発光素子を得ることができた。
【0086】
[比較例4]
また、比較のために、比較例4として、実施例1と同じ工程を実行した。但し、[工程−110]を省略し、且つ、量子井戸層24の厚さを100nmとした。
【0087】
これによって、比較例4にあっては、基板11上に、SiO2から成る厚さ200nmの第1材料層21が形成され、第1材料層21上にシリコン(Si)から成る厚さ100nmの量子井戸層24が形成され、量子井戸層24上にSiO2から成る厚さ200nmの第2材料層22が形成され、第2材料層22中のみに導入されたテルビウムイオン(Tb3+)の厚さ方向の濃度ピークが、量子井戸層24から10nm程度離れた位置に位置する発光素子を得ることができた。
【0088】
こうして得られた実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例4の発光素子の光学特性評価を、フォトルミネッセンス測定装置(励起光:He−Cdレーザ、励起パワー:30mW、ディテクター:シリコンフォトディテクター)を用いて、室温環境下で行った。具体的には、He−Cdレーザを照射した発光素子から射出された光をシリコンフォトディテクターで受光し、波長545nm付近に発光ピークを有する光のフォトルミネッセンス発光強度(以下、単に、発光強度と呼ぶ)を読み取った。光学特性の結果を表7に示す。尚、発光強度は、実施例1の発光強度の値を「1」としたときの相対値で表している。また、表7においては、フォトルミネッセンス発光強度を、単に「発光強度」と表記している。
【0089】
[表7]

【0090】
表7から、実施例1及び実施例2の発光素子の発光強度は、量子井戸層24が存在するが故に、比較例3の発光素子の発光強度に比べて、高いことが判る。また、比較例1及び比較例2の発光素子の発光強度は、量子井戸層24が存在するが故に、比較例3の発光素子の発光強度よりも高いが、希土類原子23が含まれている層における厚さ方向の希土類原子の濃度ピークの位置の最適化が図られていないが故に、実施例1及び実施例2の発光素子の発光強度よりも低いことが判る。更には、実施例3の発光素子(d=1nm)の発光強度は、実施例1及び実施例2の発光素子(d=10nm)の発光強度よりも高いことが判る。また、比較例4から、量子井戸層の厚さが厚いと、発光強度が低下することが判る。
【0091】
以上の分析結果から、実施例1〜実施例3によれば、基体上に形成された発光層を、量子井戸層と、希土類原子としてテルビウムイオンを含んだSiO2から成る第1材料層及び/又は第2材料層とから構成することで、絶縁体であるSiO2層にテルビウムイオンを分散させただけの発光素子(比較例3)に比べて、より高い発光強度を得ることができ(即ち、より高い発光効率を得ることができ)、しかも、希土類原子23が含まれている層における厚さ方向の希土類原子の濃度ピークの位置の最適化を図ることで、一層高い発光強度を得ることができることが判る。
【実施例4】
【0092】
実施例4は、本発明の第2の態様に係る発光素子、及び、本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法に関する。
【0093】
実施例4の発光素子の模式的な一部断面図を図2の(A)に示す。この実施例4の発光素子30は、シリコン半導体基板から成る基板31(基体に相当する)上に形成された発光層40を備えている。そして、実施例4において、発光層40は、量子ドット41、並びに、量子ドット41の表面に付着した希土類原子43から成る。尚、図2の(A)にあっては、量子ドット41が規則正しく配列されているように図示しているが、実際には、量子ドット41はランダムに配列されている。ここで、量子ドット41は、シリコン(Si)から成り、酸化シリコン(SiO2)から成る材料層42中に一種の分散状態で存在する。
【0094】
希土類原子43はユーロビウム(Eu)であり、この場合、Eu3+を含む発光素子は赤色(波長:615nm)を発光し、あるいは又、希土類原子43はプラセオジウム(Pr)であり、この場合、Pr3+を含む発光素子は赤色(波長:605nm)を発光し、あるいは又、希土類原子43はエルビウム(Er)であり、この場合、Er3+を含む発光素子は橙色(波長:570nm)を発光し、あるいは又、希土類原子43はテルビウム(Tb)であり、この場合、Tb3+を含む発光素子は緑色(波長:545nm)を発光し、あるいは又、希土類原子43はセリウム(Ce)であり、この場合、Ce3+を含む発光素子は青色(波長:530nm)を発光し、あるいは又、希土類原子43はツリウム(Tm)であり、この場合、Tm3+を含む発光素子は青色(波長:450nm)を発光する。尚、希土類原子43を、以上に説明した、あるいは、それ以外の希土類原子の複数種から構成することもでき、この場合の発光色は、希土類原子が発光する特有の発光色の混色となる。
【0095】
以下、実施例4の発光素子の製造方法を説明する。
【0096】
[工程−400]
先ず、シリコン半導体基板を陽極酸化(陽極化成)することによって、多孔質のシリコン半導体基板を得た後、このシリコン半導体基板を溶媒中で超音波処理することで、シリコンから成る量子ドット41を得る。
【0097】
具体的には、図2の(B)に概念図を示すように、シリコン半導体基板(例えば、p型シリコン半導体基板:抵抗率=1Ωcm〜10Ωcm)44を、フッ酸(50重量%)とエタノール溶液とを体積比1:1の割合で混合した電解溶液45中において、電流密度100mA/cm2で陽極酸化(陽極化成)して、シリコン半導体基板44を多孔質化する。即ち、多孔質のシリコン半導体基板を得る。このとき、シリコン半導体基板44を陽極として用い、対極に白金電極46を用いる。
【0098】
その後、例えばトルエンから成る溶媒中で、陽極酸化によって得られた多孔質のシリコン半導体基板44を超音波処理する。その結果、多孔質のシリコン半導体基板44からシリコンから成る量子ドット41がふるい落とされ、溶媒中に分散される。次いで、溶媒中に分散させた量子ドット41を遠心分離機を用いてサイズ毎に選別し、粒径のほぼ揃ったシリコンから成る量子ドット41を得ることができる。尚、量子ドット41は、希ガス中のレーザアブレーション法を用いても得ることができる。
【0099】
[工程−410]
次に、無電解めっき法により、希土類原子43を、量子ドット41の表面に付着させる。無電解めっき法において使用するめっき浴は、例えば、クエン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、及び、硫酸アンモニウムから成る。ここで、クエン酸ナトリウムは、水酸化物の沈殿防止とめっき速度の調整を行うため、めっき浴中でめっき層を形成するイオンと安定な可溶性錯体を形成する錯化剤として用いられる。また、次亜リン酸ナトリウムは、めっき層を形成する材料を析出させる還元剤として用いられる。更には、硫酸アンモニウムは、めっき浴の分解を防止する安定剤とし用いられる。このめっき浴に、希土類元素の硫酸塩(例えば、ユーロビウム(Eu)の硫酸塩、プラセオジウム(Pr)の硫酸塩、エルビウム(Er)の硫酸塩、テルビウム(Tb)の硫酸塩、セリウム(Ce)の硫酸塩、ツリウム(Tm)の硫酸塩)を溶解して、水素イオン濃度(pH)が8程度になるように水酸化アンモニウム(NH4OH)溶液を加え、90゜Cに加熱する。そして、[工程−400]で得られたシリコン(Si)から成る量子ドット41をめっき浴中に投入し、所望量の希土類原子が量子ドット41の表面に付着されるまで、放置する。こうして、無電解めっき法により、希土類原子を含む量子ドット41を得ることができる。無電解めっき処理後、量子ドット41を超純水で洗浄し、めっき浴の溶液を洗い流す。
【0100】
尚、希土類原子43を、量子ドット41の表面に付着させる方法は、無電解めっき法に限定されず、例えば、スパッタリング法、CVD法、MBE法(分子線エピタキシャル法)を採用することもできる。また、希土類原子43を、量子ドット41の内部に含ませる(拡散させる)方法として、例えば、イオン注入法を挙げることができる。
【0101】
[工程−420]
次に、[工程−410]で得られた量子ドット41とシリコンアルコキシドとを混合して生成物を得る。具体的には、量子ドット41とシリコンアルコキシドとを混合した後、アルカリ又は酸を触媒として添加して、シリコンアルコキシドを加水分解する。こうして、ゾル状若しくはゲル状の生成物を得ることができる。
【0102】
より具体的には、例えばポリプロピレン製の容器に、[工程−410]で得られた所望量の量子ドット41、テトラエトキシシラン(Si(OC254)、及び、メタノールを加え、更に、モル比にしてテトラエトキシシランの2倍以上のモル数の水を加える。更には、容器の底へ乾燥制御剤としてN,N−ジメチルホルムアミドを加えて、攪拌する。この混合溶液に、触媒として0.1Nの水酸化アンモニウム(NH4OH,アンモニア水溶液)を加え、更に攪拌した後、容器に蓋をして、室温にて数日間放置する。この間、テトラエトキシシランの加水分解が進行し、ゲル化する。その後、容器の蓋を少し開け、室温にて放置し、容器内の溶媒を徐々に揮発させ、内容物を徐々に乾燥させる。更に、例えば50゜Cの恒温槽中にて乾燥させて、粘度の高いゲル状の生成物を得る。尚、シリコンアルコキシドとして、テトラエトキシシランを用いる代わりに、例えばテトラメトキシシラン(Si(OCH34)等を用いることもできる。また、触媒として0.1Nのアンモニア水溶液を用いたが、これに限定されるものではなく、塩酸等を用いることもできる。
【0103】
[工程−430]
次に、量子ドット41とシリコンアルコキシドとを混合して得られた生成物を基板31に付着させた後、生成物をアニール処理する。具体的には、例えば、スクリーン印刷法に基づき、シリコン半導体基板から成る基板31に、[工程−420]で得られたゲル状生成物を塗布する。
【0104】
次に、シリコン半導体基板から成る基板31上に塗布されたゲル状の生成物をアニール処理する。このアニール処理の条件として、例えば、アルゴン、窒素等の不活性な雰囲気中での400゜C〜1000゜C程度においての加熱処理を例示することができる。こうして、量子ドット41、並びに、量子ドット41の表面に付着し、及び/又は、量子ドットの内部に含まれた希土類原子43から成る発光層40を得ることができ、この場合、量子ドット41は、シリコン(Si)から成り、酸化シリコン(SiO2)から成る材料層42中に一種の分散状態で存在する。材料層42は、テトラエトキシシランを出発物質としており、テトラエトキシシランの加水分解の結果物である。
【0105】
[工程−430]において、スクリーン印刷法に基づきゲル状生成物を塗布すれば、即ち、発光単位毎(画素毎)に発光素子の発光層に塗り分ることで、例えば、大画面の表示装置においても、発光素子の発光層を、精度良く、しかも既存の気相プロセスに比べて、より低い消費エネルギーで形成することができる。また、希土類原子43を、量子ドット41の表面に付着させる方法として無電解めっき法を採用すれば、高真空状態とする必要がないため、表示装置の大型化に比較的容易に対応することができ、更には、プロセスに要する消費エネルギーを低減させることができる。また、真空プロセスで大画面の表示装置を作製する場合、成膜精度の劣化が生じる虞があるが、スクリーン印刷法に基づきゲル状生成物を基体に塗布すれば、大画面の表示装置を構成する発光素子あるいは発光装置の製造を高精度にて行うことができる。
【実施例5】
【0106】
実施例5は、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子及び発光装置に関し、具体的には、電流注入型エレクトロルミネッセンス素子から構成された発光素子、及び、複数の電流注入型エレクトロルミネッセンス素子から構成された発光装置に関する。図3の(A)に模式的な一部断面図を示すように、電流注入型エレクトロルミネッセンス素子である発光素子60は、基体(例えばp型シリコン半導体基板62)上に形成された発光層61を備えている。ここで、発光層61は、実施例1〜実施例3において説明した本発明の第1の態様に係る発光素子の構造、あるいは又、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の構造を有する。そして、実施例5における発光素子60は、p型シリコン半導体基板62上に形成されたSiNから成る絶縁層65によって、隣接する発光素子(図示せず)から分離されている。絶縁層65によって囲まれた発光層の大きさや平面形状は、表示装置の規格に応じて適宜選択して決定すればよく、例えば、1mm角の平面形状を例示することができる。
【0107】
実施例5の発光素子60は、以下の製造方法で製造することができる。即ち、基体に相当するp型シリコン半導体基板62の表面に、例えば、PE−CVD法、リソグラフィ技術及びエッチング技術によって、絶縁層65を形成する。次いで、絶縁層65によって囲まれ、露出したp型シリコン半導体基板62の部分に、実施例1〜実施例3において説明した本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法、あるいは又、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法に基づき、発光層61を形成する。その後、発光層61上から絶縁層65上に亙り、スパッタリング法、リソグラフィ技術及びエッチング技術によって、n型ITO層63から成る透明電極を形成し、更に、n型ITO層63上に、スパッタリング法、リソグラフィ技術及びエッチング技術によって、金属電極64を形成する。
【0108】
その後、p型シリコン半導体基板62に周知の方法で、発光素子1つ当たり1つのMOS型トランジスタ50を作製する。そして、このMOS型トランジスタ50のオン/オフ制御によって、電源51から発光素子60に電流を流すことで、発光層61を発光させることができる。場合によっては、実施例5あるいは後述する実施例6において、発光層の下方に光反射層を形成してもよく、これによって、発光層において発光した光を、効率良く、発光素子からその上方に向かって射出することができる。
【0109】
発光装置を構成する発光素子の配列を、図8〜図17の模式図を参照して説明する。尚、図8〜図17において、「R」、「G」、「B」、「O」のアルファベットは、それぞれ、赤色、緑色、青色、橙色を発光する発光素子を意味する。また、赤色を発光する発光素子を赤色発光素子Rと呼び、緑色を発光する発光素子を緑色発光素子Gと呼び、青色を発光する発光素子を青色発光素子Bと呼び、橙色を発光する発光素子を橙色発光素子Oと呼ぶ。図8〜図17の模式図を参照して説明する発光装置を構成する発光素子の配列は、実施例5〜実施例9に適用することができる。
【0110】
更には、赤色に相当する第1の波長λ1(例えば、615nm)の光を発光する第1の発光素子(赤色発光素子Rであり、希土類原子としてEu3+を含む)、緑色に相当する第2の波長λ2(例えば、545nm)の光を発光する第2の発光素子(緑色発光素子Gであり、希土類原子としてTb3+を含む)、及び、青色に相当する第3の波長λ3(例えば、450nm)の光を発光する第3の発光素子(青色発光素子Bであり、希土類原子としてTm3+を含む)の3種類の発光素子によって、1つの発光素子ユニット(1画素に相当する)が構成され、発光装置は複数の発光素子ユニットを備えている構成とすることができる。あるいは又、赤色に相当する第1の波長λ1(例えば、615nm)の光を発光する第1の発光素子(赤色発光素子Rであり、希土類原子としてEu3+を含む)、緑色に相当する第2の波長λ2(例えば、545nm)の光を発光する第2の発光素子(緑色発光素子Gであり、希土類原子としてTb3+を含む)、青色に相当する第3の波長λ3(例えば、450nm)の光を発光する第3の発光素子(青色発光素子Bであり、希土類原子としてTm3+を含む)、及び、それ以外の色である橙色に相当する第4の波長λ4(例えば、570nm)の光を発光する第4の発光素子(橙色発光素子Oであり、希土類原子としてEr3+を含む)の4種類の発光素子によって、1つの発光素子ユニット(1画素に相当する)が構成され、発光装置は複数の発光素子ユニットを備えている構成とすることができる。
【0111】
図8に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)の平面形状は長方形である。また、図9に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)の平面形状は正方形である。そして、発光素子R,G,B,Oを構成する発光層の平面形状は正方形であり、発光素子R,G,B,Oが、X方向及びY方向に配列されている。図8に示す例にあっては、1画素(1つの発光素子ユニット)において、赤色発光素子R、緑色発光素子G及び青色発光素子Bの3種類の発光素子が、Y方向に順に配列されており、複数の画素(複数の発光素子ユニット)は、X方向及びY方向に2次元マトリックス状に配列されている。そして、図8に示す例にあっては、X方向には同色の発光素子が配列されている。一方、図9に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)において、赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子B及び橙色発光素子Oの4種類の発光素子が、X方向及びY方向に順に配列されており、複数の画素(複数の発光素子ユニット)は、X方向及びY方向に2次元マトリックス状に配列されている。発光素子R,G,B,Oのそれぞれに、オン/オフ制御のためのトランジスタ(図示せず)が設けられている。
【0112】
図10及び図11に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)の平面形状は長方形である。そして、発光素子R,G,B,Oを構成する発光層の平面形状は長方形であり、発光素子R,G,B,Oが、X方向及びY方向に配列されている。図10に示す例にあっては、1画素(1つの発光素子ユニット)において、赤色発光素子R、緑色発光素子G及び青色発光素子Bの3種類の発光素子の長手方向はY方向に延び、これらの発光素子R,G,BはX方向に順に配列されており、複数の画素(複数の発光素子ユニット)は、X方向及びY方向に2次元マトリックス状に配列されている。一方、図11に示す例にあっては、1画素(1つの発光素子ユニット)において、赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子B及び橙色発光素子Oの4種類の発光素子の長手方向はY方向に延び、これらの発光素子R,G,B,OはX方向に順に配列されており、複数の画素(複数の発光素子ユニット)は、X方向及びY方向に2次元マトリックス状に配列されている。発光素子R,G,B,Oのそれぞれに、オン/オフ制御のためのトランジスタ(図示せず)が設けられている。
【0113】
図12に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)の平面形状は3つの正六角形が組み合わされた形状を有し、図13に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)の平面形状は4つの正六角形が組み合わされた形状を有する。一方、図14に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)の平面形状は正三角形であり、図15に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)の平面形状は菱形である。そして、発光素子R,G,B,Oを構成する発光層の平面形状は、正六角形、あるいは、円形であり、発光素子R,G,B,Oは、ハニカム状に、即ち、正三角形の頂点に配列されている。図12及び図14に示す例にあっては、1画素(1つの発光素子ユニット)において、赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子Bの3種類の発光素子が、互いに隣接した状態に配列されており、図12に示す例にあっては、水平方向には同色の発光素子が所定間隔を置いて配列されており、図14に示す例にあっては、水平方向に、赤色発光素子R、緑色発光素子G及び青色発光素子Bが、順に、所定間隔を置いて配列されている。一方、図13及び図15に示す例にあっては、1画素(1つの発光素子ユニット)において、赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子B及び橙色発光素子Oの4種類の発光素子が、互いに隣接した状態に配列されており、図13に示す例にあっては、水平方向には同色の発光素子が所定間隔を置いて配列されており、図15に示す例にあっては、水平方向に、赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子B及び橙色発光素子Oが、順に、所定間隔を置いて配列されている。発光素子R,G,B,Oのそれぞれに、オン/オフ制御のためのトランジスタ(図示せず)が設けられている。
【0114】
図16に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)の平面形状は正六角形である。そして、発光素子R,G,Bを構成する発光層の平面形状は、正六角形を三等分した菱形であり、発光素子R,G,Bは、正三角形の頂点に配列されている。ここで、1画素(1つの発光素子ユニット)においては、赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子Bの3種類の発光素子が、互いに隣接した状態に配列されている。そして、例えば、Y方向には3種類の発光素子R,G,Bの内、1種類の発光素子(例えば青色発光素子B)が配置され、右斜め30度の方向には例えば赤色発光素子Rが配置され、左斜め30度の方向には例えば緑色発光素子Gが配置されている。発光素子R,G,Bのそれぞれに、オン/オフ制御のためのトランジスタ(図示せず)が設けられている。
【0115】
図17に示す例にあっては、点線で囲んだ領域にて示す1画素(1つの発光素子ユニット)の平面形状は正三角形である。そして、発光素子R,G,Bを構成する発光層の平面形状は、正三角形を三等分した二等辺三角形であり、発光素子R,G,Bの3種類の発光素子は、正三角形の頂点に配列されている。その際、或る画素内の発光素子と、その発光素子に隣接する画素内の発光素子とは同色を発光する発光素子とはならないように配列されている。発光素子R,G,Bのそれぞれに、オン/オフ制御のためのトランジスタ(図示せず)が設けられている。
【0116】
実施例5あるいは後述する実施例6の表示装置にあっては、本発明の発光素子を用いたことにより、自発光、軽量、薄型の表示装置を実現することが可能である。更には、希土類原子を、イオン注入法やスクリーン印刷法等に基づき発光層中に形成する場合、青色発光素子B、緑色発光素子G、赤色発光素子R、橙色発光素子Oの製造プロセスにおいて、イオン注入処理やスクリーン印刷等以外のプロセスは、全て、全発光素子について共通であるが故に、プロセスを簡略化することができる。また、スパッタリング法等で発光層を形成する場合、発光層の形成プロセス以外のプロセスは、全て、全発光素子について同様に作製できるが故に、プロセスを簡略化することができる。尚、発光素子R,G,B,Oのそれぞれのオン/オフ制御のためのトランジスタ(例えばMOS型トランジスタや薄膜トランジスタ)は、発光素子が形成された基体の面と同じ面に形成してもよいし、発光素子が形成された面と反対の面に形成してもよい。
【実施例6】
【0117】
実施例6も、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子及び発光装置に関し、具体的には、真性エレクトロルミネッセンス素子から構成された発光素子、及び、複数の真性エレクトロルミネッセンス素子から構成された発光装置に関する。図3の(B)に模式的な一部断面図を示すように、真性エレクトロルミネッセンス素子である発光素子70は、基体(例えばシリコン半導体基板から成るアノード電極72)上に形成された発光層71を備えている。ここで、発光層71は、実施例1〜実施例3において説明した本発明の第1の態様に係る発光素子の構造、あるいは又、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の構造を有する。そして、実施例6における発光素子70は、アノード電極72上に形成されたSiNから成る絶縁層75によって、隣接する発光素子(図示せず)から分離されている。絶縁層75によって囲まれた発光層の大きさや平面形状は、表示装置の規格に応じて適宜選択して決定すればよく、例えば、1mm角の平面形状を例示することができる。
【0118】
実施例6の発光素子70は、以下の製造方法で製造することができる。即ち、基体に相当するアノード電極72の表面に、例えば、PE−CVD法、リソグラフィ技術及びエッチング技術によって、絶縁層75を形成する。次いで、絶縁層75によって囲まれ、露出したアノード電極72の部分に、SiO2から成る絶縁膜76を形成した後、この絶縁膜76上に、実施例1〜実施例3において説明した本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法、あるいは又、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法に基づき、発光層71を形成する。その後、発光層71上に、SiO2から成る絶縁膜77を形成し、次いで、絶縁膜77上から絶縁層75上に亙り、スパッタリング法、リソグラフィ技術及びエッチング技術によって、ITO層から成る透明カソード電極73を形成し、更に、透明カソード電極73上に、スパッタリング法、リソグラフィ技術及びエッチング技術によって、金属電極74を形成する。
【0119】
その後、アノード電極72(シリコン半導体基板)に周知の方法で、発光素子1つ当たり1つのMOS型トランジスタ50を作製する。そして、このMOS型トランジスタ50のオン/オフ制御によって電源51から印加された電圧に基づき電場を形成することで、発光素子70の発光層71を発光させることができる。
【実施例7】
【0120】
実施例7も、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子及び発光装置に関し、具体的には、光励起型発光素子から構成された発光素子、及び、複数の光励起型発光素子から構成された発光装置に関し、より具体的には、複数の光励起型発光素子から構成され、発光ダイオードを備えた発光装置に関する。図4に模式的な一部断面図を示すように、光励起型発光素子である発光素子80は、基体(封止層89が相当する)上に形成された発光層81を備えている。ここで、発光層81は、実施例1〜実施例3において説明した本発明の第1の態様に係る発光素子の構造、あるいは又、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の構造を有し、封止層89を基体として、実施例1〜実施例3において説明した本発明の第1の態様に係る発光素子の製造方法、あるいは又、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法で製造することができる。
【0121】
実施例7にあっては、封止層89の下に、発光ダイオードが設けられている。この発光ダイオードは、半導体性、半絶縁性あるいは絶縁性の基板82上に形成されたP型電極83、P型電極83上に、順次、形成されたP型クラッド層84、活性層85、N型クラッド層86、N型クラッド層86上に形成されたN型電極87、N型電極87上に形成された金属電極88から成り、金属電極88及びN型電極87を覆うように封止層89が形成されている。尚、発光ダイオードは、MOCVD法等の周知の方法で作製することができる。発光ダイオードの発光色は、表示装置の規格に応じて、適宜、決定すればよい。また、P型電極83からN型電極87までの積層の順序を逆にしてもよい。
【0122】
このような光励起型発光素子から成る発光素子80にあっては、発光ダイオードから射出された光によって発光素子80における発光層81を励起することで、発光素子80を発光させることができる。また、光反射層を形成してもよく、これによって、発光層において発光した光を、効率良く、発光素子から射出することができる。
【実施例8】
【0123】
実施例8も、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子及び発光装置に関し、具体的には、光励起型発光素子から構成された発光素子、及び、複数の光励起型発光素子から構成された発光装置に関し、より具体的には、プラズマ表示装置に関する。
【0124】
図5に一部分の分解斜視図を示す実施例8のプラズマ表示装置は、3電極型のプラズマ表示装置であり、第1パネル90、並びに、第2パネル94が、それらの外周部で接合されて成る。ここで、第1パネル90は、透明な第1基板91と、第1基板91上にストライプ状に設けられ、例えばITOといった透明導電材料から成る複数の一対の放電維持電極92Aと、放電維持電極92Aのインピーダンスを低下させるために放電維持電極92A上に設けられ、放電維持電極92Aよりも電気抵抗率の低い材料から成るバス電極92Bと、バス電極92B及び放電維持電極92A上を含む第1基板91上に形成された誘電体層93Aと、誘電体層93A上に形成されたMgOから成る保護膜93Bから構成されている。
【0125】
一方、第2パネル94は、第2基板95と、第2基板95上にストライプ状に設けられた複数のアドレス電極(データ電極とも呼ばれる)96と、アドレス電極96上を含む第2基板95上に形成された誘電体材料層97と、誘電体材料層97上であって隣り合うアドレス電極96の間の領域にアドレス電極96と平行に延びる絶縁性の隔壁98と、誘電体材料層97上から隔壁98の側壁面上に亙って設けられた発光領域99とから構成されている。発光領域99は、プラズマ表示装置においてカラー表示を行う場合、赤色発光素子Rから成る赤色発光領域99R、緑色発光素子Gから成る緑色発光領域99G、及び、青色発光素子Bから成る青色発光領域99Bから構成されており、これらの各色の発光領域99R,99G,99Bが所定の順序に従って設けられている。図5は一部分の分解斜視図であり、実際には第2パネル94側の隔壁98の頂部が第1パネル90側の保護膜93Bに当接している。そして、隣り合う隔壁98と発光領域99と保護膜93Bとによって囲まれた放電空間内には、例えばNe(ネオン)とXe(キセノン)の混合ガスから成る放電ガスが封入されている。
【0126】
放電維持電極92Aの射影像が延びる方向とアドレス電極96の射影像が延びる方向とは直交しており、一対の放電維持電極92Aと、3原色を発光する発光領域99R,99G,99Bの1組とが重複する領域が1画素(1ピクセル)に相当する。グロー放電が一対の放電維持電極92A間で生じることから、このタイプのプラズマ表示装置は「面放電型」と称される。そして、一対の放電維持電極92Aと、2つの隔壁98の間に位置するアドレス電極96とが重複する領域が、放電セルに相当し、且つ、サブ・ピクセルに相当する。即ち、1つの放電セル(1サブ・ピクセル)は、1つの発光領域99と、一対の放電維持電極92Aと、1つのアドレス電極96とによって構成されている。
【0127】
プラズマ表示装置の駆動においては、一対の放電維持電極92A間に電圧を印加する直前に、例えば、放電セルの放電開始電圧よりも低いパルス電圧をアドレス電極96に印加することで、誘電体層93Aに電荷を蓄積し(表示を行う放電セルの選択)、見掛け上の放電開始電圧を低下させる。そして、一対の放電維持電極92Aの間で開始された放電は、放電開始電圧よりも低い電圧にて維持され得る。放電セルにおいては、放電ガス中でのグロー放電に基づき発生した真空紫外線の照射によって励起された発光領域99が、希土類原子の種類に応じた特有の発光色を呈する。尚、封入された放電ガスの種類に応じた波長を有する真空紫外線が発生する。
【0128】
ここで、発光領域99は、従来のプラズマ表示装置を構成する所謂蛍光体層としての機能を果たす。発光領域99を構成する赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子Bは、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の構造を有し、第2基板95を基体として、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法で製造することができる。
【実施例9】
【0129】
実施例9も、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る発光素子及び発光装置に関し、具体的には、電子線励起型発光素子から構成された発光素子、及び、複数の電子線励起型発光素子から構成された発光装置に関し、より具体的には、複数の電子線励起型発光素子から構成され、複数の冷陰極電界電子放出素子を備えた発光装置(より具体的には、冷陰極電界電子放出表示装置)に関する。
【0130】
一例として、スピント型の冷陰極電界電子放出素子(以下、電界放出素子と略称する)を有する冷陰極電界電子放出表示装置の概念的な一部端面図を図6に示し、カソードパネルCP及びアノードパネルAPを分解したときのカソードパネルCPとアノードパネルAPの一部分の模式的な分解斜視図を図7に示す。
【0131】
電子放出源であるスピント型電界放出素子は、支持体110に形成されたカソード電極111と、支持体110及びカソード電極111上に形成された絶縁層112と、絶縁層112上に形成されたゲート電極113と、ゲート電極113及び絶縁層112に設けられた開口部114(ゲート電極113に設けられた第1開口部114Aと、絶縁層112に設けられた第2開口部114B)と、開口部114の底部に位置するカソード電極111上に形成された円錐形の電子放出部115から構成されている。
【0132】
冷陰極電界電子放出表示装置において、カソード電極111は、第1方向に延びる帯状であり、ゲート電極113は、第1方向とは異なる第2方向に延びる帯状である(図7参照)。一般に、カソード電極111とゲート電極113とは、これらの両電極111,113の射影像が互いに直交する方向に各々帯状に形成されている。帯状のカソード電極111と帯状のゲート電極113とが重複する重複領域が、電子放出領域EAであり、1サブ・ピクセルに相当する。そして、係る電子放出領域EAが、カソードパネルCPの有効領域(実際の表示部分として機能する領域)内に、通常、2次元マトリックス状に配列されている。
【0133】
一方、アノードパネルAPは、基体に相当する基板120上に所定のパターンを有する発光領域122(具体的には、赤色発光素子Rから成る赤色発光領域122R、緑色発光素子Gから成る緑色発光領域122G、及び、青色発光素子Bから成る青色発光領域122B)が形成され、発光素子から成る発光領域122がアノード電極124で覆われた構造を有する。尚、これらの発光領域122の間は、カーボン等の光吸収性材料から成る光吸収層(ブラックマトリックス)123で埋め込まれており、表示画像の色濁り、光学的クロストークの発生を防止している。図中、参照番号121は隔壁を表し、参照番号126はスペーサを表し、参照番号125はスペーサ保持部を表し、参照番号127は枠体を表し、参照番号116は収束電極を表す。図7においては、隔壁やスペーサ、スペーサ保持部、収束電極の図示を省略した。
【0134】
ここで、発光領域122は、従来の冷陰極電界電子放出表示装置を構成するアノードパネルにおける所謂蛍光体層としての機能を果たす。発光領域122を構成する赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子Bは、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の構造を有し、基板120を基体として、実施例4において説明した本発明の第2の態様に係る発光素子の製造方法で製造することができる。
【0135】
1サブ・ピクセルは、カソードパネル側の電子放出領域EAと、これらの電界放出素子の一群に対面したアノードパネル側の発光領域122とによって構成されている。有効領域には、係る画素が、例えば数十万〜数百万個ものオーダーにて配列されている。
【0136】
そして、アノードパネルAPとカソードパネルCPとを、電子放出領域EAと発光領域122とが対向するように配置し、周縁部において枠体127を介して接合した後、排気し、封止することによって、冷陰極電界電子放出表示装置を作製することができる。アノードパネルAPとカソードパネルCPと枠体127によって囲まれた空間は高真空(例えば、1×10-3Pa以下)となっている。
【0137】
カソード電極111には相対的に負電圧がカソード電極制御回路131から印加され、ゲート電極113には相対的に正電圧がゲート電極制御回路132から印加され、アノード電極124にはゲート電極113よりも更に高い正電圧がアノード電極制御回路133から印加される。係る冷陰極電界電子放出表示装置において表示を行う場合、例えば、カソード電極111にカソード電極制御回路131から走査信号を入力し、ゲート電極113にゲート電極制御回路132からビデオ信号を入力する。あるいは、カソード電極111にカソード電極制御回路131からビデオ信号を入力し、ゲート電極113にゲート電極制御回路132から走査信号を入力する。カソード電極111とゲート電極113との間に電圧を印加した際に生ずる電界により、量子トンネル効果に基づき電子放出部115から電子が放出され、この電子がアノード電極124に引き付けられ、アノード電極124を通過して発光領域122を構成する赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子Bに衝突する。その結果、発光領域122を構成する赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子Bが発光し、所望の画像を得ることができる。つまり、この冷陰極電界電子放出表示装置の動作は、基本的に、ゲート電極113に印加される電圧、及び、カソード電極111に印加される電圧によって制御される。
【0138】
冷陰極電界電子放出素子の代わりに、表面伝導型電子放出素子と通称される電子放出素子から電子放出源を構成することもできる。この表面伝導型電子放出素子は、支持体上に酸化錫(SnO2)、金(Au)、酸化インジウム(In23)/酸化錫(SnO2)、カーボン、酸化パラジウム(PdO)等の導電材料から成り、微小面積を有し、所定の間隔(ギャップ)を開けて配された一対の電極がマトリックス状に形成されて成る。それぞれの電極の上には炭素薄膜が形成されている。そして、一対の電極の内の一方の電極に行方向配線が接続され、一対の電極の内の他方の電極に列方向配線が接続された構成を有する。一対の電極に電圧を印加することによって、ギャップを挟んで向かい合った炭素薄膜に電界が加わり、炭素薄膜から電子が放出される。係る電子をアノードパネル上の発光領域を構成する赤色発光素子R、緑色発光素子G、青色発光素子Bに衝突させることによって、発光領域が発光し、所望の画像を得ることができる。あるいは又、代替的に、金属/絶縁膜/金属型素子から電子放出源を構成することもできる。
【0139】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0140】
実施例1〜実施例3においては、第1材料層21及び第2材料層22の膜厚を200nmとしたが、このような厚さに限定するものではないし、量子井戸層24の厚さを10nmとしたが、このような厚さに限定するものでもない。また、量子井戸層24を、半導体2次元量子井戸、半導体1次元量子井戸(例えば、量子細線)、半導体0次元量子井戸(例えば、量子ドット、ナノクリスタル)から構成することができる。更には、希土類原子が含まれている層における厚さ方向の希土類原子の濃度ピークの位置(d)は、使用する希土類原子、発光強度等に応じて、適宜、変更可能である。また、量子井戸層24を構成する材料として、シリコン層の場合について説明したが、シリコン系酸化物(SiOX(0<X≦2)、シリコンを主成分とする窒化シリコン等のシリコン系化合物、シリコン系化合物の混合物、Ge等の所謂シリコン族系材料、シリコン族系材料の混合物、その他の半導体材料やその混合物を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1の(A)〜(C)は、実施例1の発光素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。
【図2】図2の(A)は、実施例4の発光素子の模式的な一部断面図であり、図2の(B)は、実施例4の発光素子の製造方法の実行に適した陽極酸化法を行うための装置の概念図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、それぞれ、電流注入型エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置、及び、真性エレクトロルミネッセンス素子から成る発光素子を備えた発光装置の模式的な一部断面図である。
【図4】図4は、光励起型発光素子から成る発光素子を備えた発光装置の模式的な一部断面図である。
【図5】図5は、発光装置としてのプラズマ表示装置を構成する第1パネル及び第2パネルを分解したときの第1パネルと第2パネルの一部分の模式的な分解斜視図である。
【図6】図6は、電子線励起型発光素子から成る発光素子を備えた発光装置である冷陰極電界電子放出表示装置の概念的な一部端面図である。
【図7】図7は、冷陰極電界電子放出表示装置を構成するカソードパネル及びアノードパネルを分解したときのカソードパネルとアノードパネルの一部分の模式的な分解斜視図である。
【図8】図8は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【図9】図9は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【図10】図10は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【図11】図11は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【図12】図12は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【図13】図13は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【図14】図14は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【図15】図15は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【図16】図16は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【図17】図17は、発光装置を構成する発光素子の配列を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0142】
10,30・・・発光素子、11,31・・・基板、20・・・発光層、21・・・第1材料層、22・・・第2材料層、23・・・希土類原子、24・・・量子井戸層、40・・・発光層、41・・・量子ドット、42・・・材料層、43・・・希土類原子、44・・・シリコン半導体基板、45・・・電解溶液、46・・・白金電極、50・・・MOS型トランジスタ、51・・・電源、60,70,80・・・発光素子、61,71,81・・・発光層、62・・・p型シリコン半導体基板、63・・・n型ITO層、64,74・・・金属電極、72・・・アノード電極、73・・・透明カソード電極、82・・・基板、83・・・P型電極、84・・・P型クラッド層、85・・・活性層、86・・・N型クラッド層、87・・・N型電極、88・・・金属電極、89・・・封止層、CP・・・カソードパネル、AP・・・アノードパネル、110・・・支持体、111・・・カソード電極、112・・・絶縁層、113・・・ゲート電極、114,114A,114B・・・開口部、115・・・電子放出部、116・・・収束電極、120・・・基板、121・・・隔壁、122,122R,122G,122B・・・発光領域、123・・・ブラックマトリックス、124・・・アノード電極、125・・・スペーサ保持部、126・・・スペーサ、127・・・枠体、131・・・カソード電極制御回路、132・・・ゲート電極制御回路、133・・・アノード電極制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に形成された発光層を備えた発光素子であって、
該発光層は、第1材料層、量子井戸層、及び、第2材料層が積層された構造を有し、
第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層には、希土類原子が含まれていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から、フェルスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から1×10-8mの範囲内に位置することを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から、デクスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から1×10-9mの範囲内に位置することを特徴とする請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から、フォトンを介したエネルギー遷移が起こる範囲内に位置することを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
発光素子はエレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
発光素子は電流注入型エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
発光素子は真性エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項7に記載の発光素子。
【請求項10】
発光素子は光励起型発光素子であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項11】
発光素子は電子線励起型発光素子であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項12】
量子井戸層は、シリコン、ゲルマニウム、若しくは、シリコン−ゲルマニウムから成ることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項13】
量子井戸層は、シリコン系酸化物から成ることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項14】
希土類原子が含まれている層はシリコンを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項15】
希土類原子が含まれている層はシリコン系酸化物から成ることを特徴とする請求項14に記載の発光素子。
【請求項16】
希土類原子は、ユーロビウム(Eu)、プラセオジウム(Pr)、エルビウム(Er)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、及び、ツリウム(Tm)から成る群から選択された少なくとも1種類の希土類原子であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項17】
基体上に形成された発光層を備えた発光素子を、複数、備えた発光装置であって、
各発光素子を構成する発光層は、第1材料層、量子井戸層、及び、第2材料層が積層された構造を有し、
第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層には、希土類原子が含まれていることを特徴とする発光装置。
【請求項18】
発光素子はエレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
発光素子は電流注入型エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項18に記載の表示装置。
【請求項20】
発光素子は真性エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項18に記載の表示装置。
【請求項21】
発光素子は光励起型発光素子であることを特徴とする請求項17に記載の表示装置。
【請求項22】
発光素子は電子線励起型発光素子であることを特徴とする請求項17に記載の表示装置。
【請求項23】
赤色に相当する第1の波長λ1の光を発光する第1の発光素子、緑色に相当する第2の波長λ2の光を発光する第2の発光素子、及び、青色に相当する第3の波長λ3の光を発光する第3の発光素子の3種類の発光素子によって、1つの発光素子ユニットが構成され、
複数の発光素子ユニットを備えていることを特徴とする請求項17に記載の発光装置。
【請求項24】
赤色に相当する第1の波長λ1の光を発光する第1の発光素子、緑色に相当する第2の波長λ2の光を発光する第2の発光素子、青色に相当する第3の波長λ3の光を発光する第3の発光素子、及び、それ以外の色に相当する第4の波長λ4の光を発光する第4の発光素子の4種類の発光素子によって、1つの発光素子ユニットが構成され、
複数の発光素子ユニットを備えていることを特徴とする請求項17に記載の発光装置。
【請求項25】
基体上に、第1材料層、量子井戸層、及び、第2材料層が積層された構造を有し、第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層に希土類原子が含まれた発光層を形成する発光素子の製造方法であって、
第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の層にイオン注入を施すことで希土類原子を含ませることを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項26】
基体上に、シリコンを主成分とする第1材料層を形成した後、
第1材料層にイオン注入を施すことで希土類原子を含ませ、次いで、
第1材料層上に量子井戸層を形成した後、
量子井戸層上に、シリコンを主成分とする第2材料層を形成し、その後、
第2材料層にイオン注入を施すことで希土類原子を含ませる、
ことを特徴とする請求項25に記載の発光素子の製造方法。
【請求項27】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、該層と量子井戸層の界面から、フェルスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施すことを特徴とする請求項25に記載の発光素子の製造方法。
【請求項28】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から1×10-8mの範囲内に位置することを特徴とする請求項27に記載の発光素子の製造方法。
【請求項29】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークが、該層と量子井戸層の界面から、デクスター機構によるエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施すことを特徴とする請求項25に記載の発光素子の製造方法。
【請求項30】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から1×10-9mの範囲内に位置することを特徴とする請求項29に記載の発光素子の製造方法。
【請求項31】
希土類原子が含まれている層において、厚さ方向の希土類原子の濃度ピークは、該層と量子井戸層の界面から、フォトンを介したエネルギー遷移が起こる範囲内に位置するように、イオン注入を施すことを特徴とする請求項25に記載の発光素子の製造方法。
【請求項32】
基体上に形成された発光層を備えた発光素子であって、
該発光層は、量子ドット、並びに、該量子ドットの表面に付着し、及び/又は、該量子ドットの内部に含まれた希土類原子から成ることを特徴とする発光素子。
【請求項33】
発光素子はエレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項32に記載の発光素子。
【請求項34】
発光素子は電流注入型エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項33に記載の発光素子。
【請求項35】
発光素子は真性エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項33に記載の発光素子。
【請求項36】
発光素子は光励起型発光素子であることを特徴とする請求項32に記載の発光素子。
【請求項37】
発光素子は電子線励起型発光素子であることを特徴とする請求項32に記載の発光素子。
【請求項38】
量子ドットはシリコンから成ることを特徴とする請求項32に記載の発光素子。
【請求項39】
希土類原子は、ユーロビウム(Eu)、プラセオジウム(Pr)、エルビウム(Er)、テルビウム(Tb)、セリウム(Ce)、及び、ツリウム(Tm)から成る群から選択された少なくとも1種類の希土類原子であることを特徴とする請求項32に記載の発光素子。
【請求項40】
基体上に形成された発光層を備えた発光素子を、複数、備えた発光装置であって、
各発光素子を構成する発光層は、量子ドット、並びに、該量子ドットの表面に付着し、及び/又は、該量子ドットの内部に含まれた希土類原子から成ることを特徴とする発光装置。
【請求項41】
発光素子はエレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項40に記載の表示装置。
【請求項42】
発光素子は電流注入型エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項41に記載の表示装置。
【請求項43】
発光素子は真性エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項41に記載の表示装置。
【請求項44】
発光素子は光励起型発光素子であることを特徴とする請求項40に記載の表示装置。
【請求項45】
発光素子は電子線励起型発光素子であることを特徴とする請求項40に記載の表示装置。
【請求項46】
赤色に相当する第1の波長λ1の光を発光する第1の発光素子、緑色に相当する第2の波長λ2の光を発光する第2の発光素子、及び、青色に相当する第3の波長λ3の光を発光する第3の発光素子の3種類の発光素子によって、1つの発光素子ユニットが構成され、
複数の発光素子ユニットを備えていることを特徴とする請求項40に記載の発光装置。
【請求項47】
赤色に相当する第1の波長λ1の光を発光する第1の発光素子、緑色に相当する第2の波長λ2の光を発光する第2の発光素子、青色に相当する第3の波長λ3の光を発光する第3の発光素子、及び、それ以外の色に相当する第4の波長λ4の光を発光する第4の発光素子の4種類の発光素子によって、1つの発光素子ユニットが構成され、
複数の発光素子ユニットを備えていることを特徴とする請求項40に記載の発光装置。
【請求項48】
基体上に形成され、量子ドット、並びに、該量子ドットの表面に付着し、及び/又は、該量子ドットの内部に含まれた希土類原子から成る発光層を備えた発光素子の製造方法であって、
発光層を、
量子ドットを形成した後、
量子ドット中に希土類原子を拡散させ、及び/又は、量子ドットの表面に希土類原子を付着させ、次いで、
量子ドットとシリコンアルコキシドとを混合して得られた生成物を基体に付着させた後、生成物をアニール処理する、
ことによって形成することを特徴とする発光素子の製造方法。
【請求項49】
量子ドットとシリコンアルコキシドとを混合して生成物を得る工程は、量子ドットとシリコンアルコキシドとを混合した後、アルカリ又は酸を触媒として添加して、シリコンアルコキシドを加水分解する工程から成ることを特徴とする請求項48に記載の発光素子の製造方法。
【請求項50】
触媒として、水酸化アンモニウム(NH4OH)を添加することを特徴とする請求項49に記載の発光素子の製造方法。
【請求項51】
シリコンアルコキシドは、テトラメトキシシラン(Si(OCH34)又はテトラエトキシシラン(Si(OC254)であることを特徴とする請求項48に記載の発光素子の製造方法。
【請求項52】
アニール処理は、希ガス若しくは窒素ガスから成る不活性ガス雰囲気下、100゜C以上、1500゜C以下の温度で行うことを特徴とする請求項48に記載の発光素子の製造方法。
【請求項53】
シリコン半導体基板を陽極酸化することで得られた多孔質のシリコン半導体基板を溶媒中で超音波処理することで、量子ドットを形成することを特徴とする請求項48に記載の発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−164938(P2006−164938A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131055(P2005−131055)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】