説明

発泡剤として水を用いる熱硬化性エポキシ樹脂組成物

【課題】第1に室温での良好な貯蔵安定性ならびに良好な機械的性質、熱的性質および接着性を有し、第2に構造発泡体の製造に関する任意の輸送および貯蔵規制を受けない無毒性の発泡剤を提供する熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の分野、より具体的には自動車の組立およびサンドイッチパネルの組立におけるそれらの使用に関する。本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分A1に加えて、場合によりA2、硬化剤成分B、カルボン酸Cおよびヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素H、成分A1、A2およびBの転移の活性化のための促進剤Eを含む。該組成物およびそれから製造される構造発泡体は、高い機械的強度、高いガラス強度ならびに金属および非金属基板上での良好な接着力が顕著であり、同時に毒性または可燃性発泡剤の使用を省くことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の分野、特に自動車の組立およびサンドイッチパネルの組立におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、長い間、ボディシェルの組立においておよび補強要素または構造発泡体において接着剤として使用されてきた。
【0003】
したがって、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の重要な使用分野は、自動車の組立、より具体的にはボディシェルの組立における接着または空洞の発泡体充填である。いずれの場合も、エポキシ樹脂組成物の適用後、ボディは陰極電着炉(cathodic electrocoating furnace)において加熱され、それによりまた、熱硬化性エポキシ樹脂組成物が硬化し、適切な場合、発泡する。
【0004】
熱による反応下で構造発泡体を形成する熱硬化性エポキシ樹脂組成物を含む補強要素が、例えば、SikaReinforcer(登録商標)という商品名で知られている。US 6, 387,470 B1には、例えば、ポリスチレンなどの熱可塑性樹脂5〜20重量%およびSBSブロックコポリマーなどの熱可塑性エラストマー30〜45重量%の存在下で液体エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂の混合物を含む熱硬化性および発泡性のシーリング材が開示されている。しかし、そのような組成物の機械的性質、特にガラス転移温度、および接着性は、SBSブロックコポリマーの割合が高いため、ひどく悪化している。
【0005】
急速な硬化が可能であるため、エポキシ樹脂用の熱活性化可能な硬化剤だけではなく、一般に促進剤も使用される。促進剤の種類で重要なものは尿素である。促進剤として尿素を含み得る熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、例えば、W02004/106402 A2およびW02004/055092 A1から知られている。
【0006】
エポキシ樹脂組成物は、通常、加熱されると分解する化学発泡剤、一般に有機アゾ化合物により、または、低沸点の有機化合物が充填された膨張性の中空ポリマー球により発泡する。前者は、分解反応を通して主に窒素を生じ、条件に応じて副生成物として毒性のアンモニアを形成する。膨張性の中空ポリマー球は、また、可燃性炭化水素で充填され、したがって貯蔵および輸送が特定の規制を受ける。そのような化学発泡剤は、Akzo NobelからのExpancel(登録商標)という商品名またはChemturaからのCelogen(登録商標)という商品名またはLehmann & Voss、GermanyからのLuvopor(登録商標)という商品名により知られている。
【0007】
該文献は、さらに、白亜(CaCO3)とリン酸との反応によりポリマーマトリックスにおいて生成する二酸化炭素についても記載している。しかし、そのようなプロセスは、二成分エポキシ樹脂組成物を用いた場合のみ可能であり、その点において、(一成分)熱硬化性エポキシ樹脂組成物の選択肢とはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 6, 387,470 B1
【特許文献2】W02004/106402 A2
【特許文献3】W02004/055092 A1
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Rompp、CD Rompp Chemie Lexikon、Version 1、Stuttgart/New York、Georg Thieme Verlag 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、第1に室温での良好な貯蔵安定性ならびに良好な機械的性質、熱的性質および接着性を有し、第2に構造発泡体の製造に関する任意の輸送および貯蔵規制を受けない無毒性の発泡剤を提供する熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、驚くべきことに、請求項1に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物により達成された。このエポキシ樹脂組成物は、室温で固体である一成分熱硬化性接着剤として、特に自動車の組立における熱硬化性の一成分ボディシェル接着剤として、特に金属構造物の空洞の補強用の構造発泡体の製造のために特に効率的に使用することができる。
【0012】
全く驚くべきことに、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物により、熱硬化に使用される通例の温度条件下で高い機械的強度、高いガラス強度ならびに金属および非金属基板上での良好な接着力を有する発泡体が形成され、同時に知られている毒性または可燃性発泡剤の使用を完全に省くことが可能であることをさらに見出した。
【0013】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、
- 1分子あたり平均2個以上のエポキシド基を有する少なくとも1種の固形エポキシ樹脂A1、
- 場合により、1分子あたり平均2個以上のエポキシド基を有する少なくとも1種の液体エポキシ樹脂A2、
- 温度の上昇により活性化するエポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤B、
- 少なくとも1種のカルボン酸C、
- 少なくとも1種のヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素H、ならびに
- 成分A1、および場合によりA2、ならびにBの転移の活性化のための尿素誘導体をベースにした少なくとも1種の促進剤E
を含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、構成物質A1、Bおよび場合によりA2を含み、それらにより、温度が増大すると架橋結合反応を介してエポキシ樹脂マトリックスが形成される。本発明のエポキシ樹脂組成物は、カルボン酸Cおよびヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hをさらに含み、それらは、温度が増大すると縮合反応を通して互いに反応し、水を生じ、その水は、規定の温度条件下(蒸気の形態)で発泡剤として著しく適している。
【0016】
しかし、これらの構成物質の反応単独では、所望の性質を有する構造発泡体は形成されない。一般に使用される温度(100℃〜220℃)では、エポキシ樹脂マトリックスの粘度は低いだけであり、その結果、縮合反応により生じる蒸気は適切な程度外へ拡散し、したがって、もはや発泡剤として利用することはできない。このことは、発泡体の形成および品質に悪影響を及ぼし、最終的に水を発泡剤として使用するという概念を無効にするであろう。
【0017】
本発明はこの問題を克服した。尿素誘導体をベースにした促進剤Eの添加により、成分A1、A2およびBの転移が活性化され、その結果、エポキシ樹脂マトリックスを形成するための反応が促進される。促進剤Eの添加により、転移反応の開始温度の低下および付随するエポキシ樹脂マトリックスの粘度の増大が生じ、それにより、縮合反応により形成した水が外に拡散することがより困難となるまたは防止されさえする。
【0018】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、1分子あたり平均2個以上のエポキシド基を有するエポキシ樹脂を含む。エポキシド基は、グリシジルエーテル基として存在することが好ましい。これらのエポキシ樹脂は、それぞれが1分子あたり平均2個以上のエポキシド基を有する少なくとも1種の固形エポキシ樹脂A1と場合により少なくとも1種の液体エポキシ樹脂A2の混合物である。
【0019】
固形樹脂のガラス転移温度は室温を上回っており、すなわち、それらを室温で粉砕して注入可能な粒子を得ることができる。
【0020】
好ましい固形エポキシ樹脂は、式(A-I)
【0021】
【化1】

【0022】
を有する。
【0023】
この式において、置換基R'およびR''は、それぞれ独立してHまたはCH3である。
【0024】
さらに、指数sは>1.5、特に2〜12という値である。
【0025】
そのような固形エポキシ樹脂は、例えばDowまたはHuntsmanまたはHexionから市販されている。
【0026】
1〜1.5の指数sを有する式(A-I)の化合物は、当業者により半固形エポキシ樹脂と呼ばれている。本発明に関して、それらは同様に固形樹脂であると見なす。しかし、狭義でのエポキシ樹脂、すなわち、指数sが>1.5という値を有するエポキシ樹脂を優先する。
【0027】
好ましい液体エポキシ樹脂A2は、式(A-II)
【0028】
【化2】

【0029】
を有する。
【0030】
この式において、置換基R'''およびR''''は、それぞれ独立してHまたはCH3である。さらに、指数rは0〜1という値である。rは、0.2未満の値であることが好ましい。
【0031】
したがって、この物質は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルおよびビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルを含むことが好ましい(呼称「A/F」は、ここでは、それらの調製において反応物として使用されるアセトンとホルムアルデヒドとの混合物を指す)。そのような液体樹脂は、例えば、Araldite(登録商標)GY 250、Araldite(登録商標)PY 304、Araldite(登録商標)GY 282(Huntsman)またはD.E.R.(商標) 331またはD.E.R.(商標) 330(Dow)またはEpikote 828(Hexion)の形態で入手可能である。
【0032】
さらに好適なのは、ノボラックと呼ばれるものである。これらは、特に以下の式:
【0033】
【化3】

【0034】
を有し、
式中、R2=
【0035】
【化4】

【0036】
またはCH2、R1=Hまたはメチルおよびz=0〜7である。
【0037】
これらは、特にフェノールノボラックまたはクレゾールノボラック(R2=CH2)である。
【0038】
そのようなエポキシ樹脂は、HuntsmanからEPNもしくはECNおよびTactix(登録商標)556という商品名で、またはDow ChemicalからD.E.N.(商標)という製品シリーズで市販されている。
【0039】
本発明において、熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の固形エポキシ樹脂A1、また場合により少なくとも1種の液体エポキシ樹脂A2を含む。
【0040】
ここでのエポキシ樹脂混合物A1およびA2の割合は、本発明のエポキシ樹脂組成物の総重量の好ましくは10〜85重量%、特に15〜70重量%、好ましくは15〜60重量%である。
【0041】
一実施形態において、硬化剤Bは、ジシアンジアミド、グアニミン、グアニジン、アミノグアニジンおよびそれらの誘導体、ならびに芳香族または脂肪族カルボン酸ヒドラジドからなる群から選択される潜伏性硬化剤である。「潜伏性硬化剤」とは、低温、例えば室温で反応しない系を指し、より高い温度では、それらはエポキシ樹脂構成物質と反応してポリマーを生じる。
【0042】
潜伏性硬化剤Bは、特に、100〜220℃、特に120〜200℃、好ましくは160と190℃の間の温度で活性化可能である。
【0043】
特に好ましい硬化剤Bはジシアンジアミドである。
【0044】
硬化剤Bの総割合は、該組成物全体の重量に対して1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%であることが有利である。
【0045】
一実施形態において、促進剤Eは、置換尿素、特に3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素(クロロトルロン)、もしくはフェニルジメチル尿素、特にp-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モヌロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェヌロン)、3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)、N,N-ジメチル尿素、N-イソブチル-N',N'-ジメチル尿素、1,1'-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(3,3'-ジメチル尿素)の群から選択される。
【0046】
一般に、促進剤Eは、式(I)
【0047】
【化5】

【0048】
を有し得る。
【0049】
式(I)において、促進剤Eに関して、R1はHまたはn価の脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族ラジカルである。
【0050】
さらに、R2およびR3は、それぞれ独立してアルキル基もしくはアラルキル基、特に19個未満の炭素原子を有するアルキル基もしくはアラルキル基である、
または
一緒になって、3〜20個の炭素原子を有し、5〜8、好ましくは6個の環原子を有する場合により置換された複素環式環の一部である二価脂肪族ラジカルである。
【0051】
最後に、nは1〜4、特に1または2である。
【0052】
基およびラジカルの定義における「それぞれ独立して」という表現は、生じる複数の基が各式において同じ呼称を有するがそれぞれ異なる定義を有し得ることを意味する。
【0053】
本文書における「芳香族脂肪族ラジカル」とは、アラルキル基、すなわち、アリール基により置換されたアルキル基を意味すると理解される(Rompp、CD Rompp Chemie Lexikon、Version 1、Stuttgart/New York、Georg Thieme Verlag 1995を参照)。
【0054】
R1がHではないならば、上記のR1は、n価の脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族ラジカルとすることができる。換言すると、促進剤Eは、例えば、式(I')
【0055】
【化6】

【0056】
を有し、
式中、Z1およびZ2はそれぞれH、ハロゲン原子または任意の有機ラジカル、特に1〜8、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアリール基またはアルキル基である。
【0057】
促進剤Eは、特に、芳香族モノマーのジイソシアネートと脂肪族アミン化合物との、特にジフェニルメチレン4,4'-ジイソシアネートとジメチルアミンとの反応の生成物である。
【0058】
R1が芳香族ラジカルである促進剤Eの特に好ましい例としては、
【0059】
【化7】

【0060】
が挙げられる。
【0061】
R1は、特に、nイソシアネート基の除去後の式(II)の脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族モノ-、ジ-、トリ-またはテトライソシアネートのラジカルとすることもできる。
R1[NCO]n (II)
【0062】
式(II)のこのモノ-、ジ-、トリ-またはテトライソシアネートは、モノマーのモノ-、ジ-、トリ-もしくはテトライソシアネートまたは1種もしくは複数のモノマーのジ-もしくはトリイソシアネートのダイマーもしくはオリゴマーであり、ダイマーまたはオリゴマーは、特にビウレット、イソシアヌレートおよびウレトジオンである。
【0063】
好適なモノマーのモノイソシアネートは、アルキルイソシアネート、例えばブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネートおよびドデシルイソシアネート、またシクロヘキシルイソシアネート、メチルシクロヘキシルイソシアネートおよびベンジルイソシアネートである。
【0064】
特に好適なモノマーのジイソシアネートは、ブタン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2,5-または2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネート(H12MDI)、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)およびm-キシリレンジイソシアネート(XDI)および水添m-キシリレンジイソシアネート(H8XDI)である。
【0065】
特に好適なダイマーまたはオリゴマーは、HDIビウレット、HDIイソシアヌレート、IPDIビウレット、IPDIイソシアヌレート、HDIジウレトジオン、IPDIイソシアヌレートである。
【0066】
そのようなダイマーまたはオリゴマーは、例えば、Desmodur N-100(Bayer)、Luxate HDB 9000(Lyondell)、Desmodur N-3300(Bayer)、Desmodur N-3600(Bayer)、Luxate HT 2000(Lyondell)、Desmodur N-3400(Bayer)、Luxate HD 100(Lyondell)、Desmodur Z 4470(Bayer)、Vestanat T 1890/100(Huls)またはLuxate IT 1070(Lyondell)の形態で市販されている。
【0067】
述べたジ-またはトリイソシアネートの好適な混合物を使用することも可能であることが理解されよう。
【0068】
R2およびR3は、一緒になって、ブチレン、ペンタメチレンまたはヘキサメチレン基、好ましくはペンタメチレン基を形成することが特に適切である。
【0069】
R2およびR3は、それぞれ独立して1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、特にそれぞれ独立してメチル、エチルまたはプロピル基、好ましくはそれぞれメチル基であることが好ましい。
【0070】
R1は一実施形態においてHである。これは、R2およびR3がそれぞれ独立してメチル、エチルまたはプロピル基、好ましくはそれぞれメチル基である場合であることが好ましい。
【0071】
式(I)の促進剤Eは、式(II)の脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族モノ-、ジ-、トリ-またはテトライソシアネートと式(III)の第2級アミンとの反応から容易に合成的に得ることができる。
【0072】
【化8】

【0073】
この合成の第2の変法において、式(I)の促進剤Eは、式(IV)の第1級脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族アミンと式(V)の化合物の反応から調製する。
【0074】
【化9】

【0075】
後者の変法は、特に、式(II)のポリイソシアネートが市販されていたとしても入手が困難である場合に有利である。
【0076】
促進剤Eは、特に、1000g/mol未満、特に80と800g/molの間の分子量を有する。分子量が大きいならば、促進作用は低減し、必要となる使用量は著しく高くなり、それにより、機械的性質が悪化する。
【0077】
促進剤Eの量は、該組成物の総重量の0.3〜5.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%であることが有利である。
【0078】
一般に、促進剤Eの割合は、DSCにより測定する固形エポキシ樹脂A1、任意の液体エポキシ樹脂A2および硬化剤Bの間の反応の開始温度が35〜60℃低下するように選択すべきである。より具体的には、適切な量の促進剤Eを添加した後の該反応の開始温度は、促進剤Eを添加していない混合物の開始温度より35〜60℃低い。本文書に関する開始温度の測定について、特定の試料は、常にDSC系において10K/minの加熱速度で分析する。ここでは、開始温度は、いずれの場合にも、ベースラインの接線と反応ピークの立ち上がりの接線の交点から測定する。
【0079】
このことにより、これらの構成物質の反応が十分に急速に進行することが確実となり、その結果として、発泡剤として水を放出するヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hとカルボン酸Cとの反応の前に、混合物の粘度が確実に十分に高くなる。このことにより、発泡剤の外部への拡散が防止される程度が大きくなる。
【0080】
一実施形態において、カルボン酸Cは、ジ-もしくはトリカルボン酸、またはカルボキシル末端基および約1600g/molと約5000g/molの間の分子量を有する非晶質の少なくとも二官能性のポリマー、例えばポリエステルから選択される。そのような非晶質ポリエステルは、例えば、最初にアジピン酸またはセバシン酸などのベンゼンジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸をブタンジオールまたはエチレングリコールなどのジオールで縮合してヒドロキシル末端基を有する二官能性ポリエステルを得て、次いで、それらを無水フタル酸または無水トリメリット酸と反応させて酸性ポリエステルと呼ばれるものを得ることにより調製される。それらは、例えばCytecからCrylcoat(登録商標)1540(Tg 58℃、酸価71、1600ダルトンの分子量に相当する)もしくはCrylcoat(登録商標)1660(Tg 50℃、酸価48、2330ダルトンの分子量に相当する)またはDSMからUralac(登録商標)P 2200(Tg 50℃、酸価51、2200ダルトンの分子量に相当する)の形態で市販されている。
【0081】
ジカルボン酸の好ましい例は、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびベンゼンジカルボン酸である。
【0082】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種のヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hを含む。ヒドロキシアルキルアミドは、式(VI)の化学的部分を含む。ヒドロキシアルキル尿素は、式(VII)の化学的部分を含む。
【0083】
【化10】

【0084】
これらの式において、mは2〜6、特に2という値であり、R4はHまたは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基または式CmH2mOHのヒドロキシアルキル基である。
【0085】
それらの類似度が高いため、式(VI)および(VII)の部分は本発明のために同様に使用可能であるが、それらは化学的観点で異なるクラスに属する。
【0086】
好ましい実施形態において、ヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hは式(VIII)のヒドロキシアルキルアミドHである。
【0087】
【化11】

【0088】
この式において、Xはフェニレン基または-(CH2)n-(式中、n=1〜7)であり、R5およびR6は、それぞれ独立してHまたは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基または-CH2CH2-OHである。
【0089】
R5およびR6がアルキル基であるならば、それらはそれぞれ1〜5個の炭素原子を有し、より具体的には、その場合、R5およびR6は、それぞれ独立してメチル、エチルまたはプロピル基、好ましくはメチル基である。
【0090】
ヒドロキシアルキルアミドHの好ましい例は、EMS-ChemieからPrimid(登録商標)というブランドで入手可能なN,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミドである。上記式(VIII)において、R5およびR6はそれぞれ-CH2CH2-OHであり、Xはブチレン基である。
【0091】
さらなる実施形態において、ヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hは式(IX)のヒドロキシアルキル尿素Hである。
【0092】
【化12】

【0093】
この式において、pは2または3であり、Yは4〜12個の炭素原子を有するn価ラジカルであり、R7はHまたは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基または-CH2CH2-OHである。
【0094】
Yは、特に、式(I)の促進剤Eに関して既に定義したR1ラジカルである。Yは、2つのNCO基の除去後のイソホロンジイソシアネートのラジカルであることがより好ましい。
【0095】
そのようなヒドロキシアルキル尿素Hは、イソシアネートおよびアミンから得ることができる。このことは、ヒドロキシアルキル尿素Hの特に好ましい実施形態を使用して以下のように例示する。
【0096】
【化13】

【0097】
ヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hは、ヒドロキシアルキルアミドであることが最も好ましい。
【0098】
ヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hおよびカルボン酸Cが、エポキシ樹脂と、カルボキシル基を介してエポキシ樹脂マトリックスに部分的に結合し得る相互侵入網目を形成すると考えられる。したがって、カルボキシル末端基を有するポリマー、例えばポリエステルの濃度またはカルボン酸の濃度は、該組成物のガラス転移温度を大幅に低下させないように、常にエポキシド成分の濃度未満でなければならない。
【0099】
既に上で詳述したように、促進剤Eの割合は、DSCにより測定する固形エポキシ樹脂A1、液体エポキシ樹脂A2および硬化剤Bの間の反応の開始温度が著しく低下するように選択すべきである。このことにより、これらの構成物質の反応が十分に急速に進行することが確実となり、結果的に、混合物の粘度が確実に十分に高くなる。
【0100】
このことを確実なものとするために、促進剤Eの割合は、DSCにより測定するヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hとカルボン酸Cとの反応の開始温度が、固形エポキシ樹脂A1、液体エポキシ樹脂A2、および硬化剤Bの間の反応の開始温度より好ましくは少なくとも20℃高くなるように選択する。
【0101】
該組成物は、高温ではあるが硬化剤の活性化温度未満の温度で簡単な方法で溶融および形成することができる。熱硬化性エポキシ樹脂組成物が一般に室温で固体であり不粘着性の表面を有するという特性が理由で、それらは補強要素の製造に非常に適している。そのような補強要素は室温で寸法安定であり、簡単な方法で貯蔵することができる。
【0102】
さらなる実施形態において、該組成物は、さらに少なくとも1種のフィラーFを含む。フィラーは、カーボンブラック、マイカ、タルク、カオリン、ウォラストナイト、長石、閃長岩、緑泥石、ベントナイト、モンモリロナイト、(沈降または粉砕)炭酸カルシウム、ドロマイト、石英、(ヒュームドまたは沈降)シリカ、クリストバライト、酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、中空セラミック球、中空ガラス球、有機中空球、ガラス球、着色顔料であることが好ましい。フィラーFは、当業者に知られている有機被覆された市販の形態および被覆されていない市販の形態の両方を意味する。
【0103】
フィラーF全体の総割合は、該組成物全体の重量に対して2〜50重量%、好ましくは3〜35重量%、特に5〜25重量%であることが有利である。
【0104】
さらなる実施形態において、例えば、より高い膨張率が望ましいならば、該組成物は、さらに、例えば、Akzo NobelからExpancel(登録商標)という商品名またはChemturaからCelogen(登録商標)という商品名またはLehmann & Voss、GermanyからLuvopor(登録商標)という商品名で得ることができる化学発泡剤Tを含み得る。発泡剤Tの割合は、該組成物の重量に対して0.1〜1.0重量%であることが有利である。
【0105】
しかし、本発明の組成物は、発泡剤として水のみを含み、さらなる化学発泡剤を含まないことが好ましい。
【0106】
該組成物は、さらなる構成物質、特に触媒、熱および/または光安定剤、チキソトロープ剤、可塑剤、溶媒、無機または有機フィラー、発泡剤、染料および顔料を含み得る。
【0107】
記載した熱硬化性エポキシ樹脂組成物が一成分固形接着剤として特に適していることを見出した。そのような一成分接着剤は、多種多様な用途が可能である。したがって、より具体的には、コアシェル粒子などの従来の耐衝撃性改良剤を用いて耐衝撃性を改良することもできる熱硬化性の一成分接着剤を実現することが可能である。そのようなコアシェル粒子は、例えば、Rohm and HaasからParaloid(登録商標)という名称でまたはKanekaからMX120(登録商標)として得ることができる。
【0108】
そのような接着剤は、熱安定性材料の接着に必要である。熱安定性材料は、少なくとも、100〜220℃、好ましくは120〜200℃の硬化温度での硬化時間の間に寸法安定である材料を意味すると理解される。これらは、特に、金属およびABS、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルなどのポリマー、SMC、不飽和ポリエステルGRP、エポキシドまたはアクリレート複合材料などの複合材料である。具体的に、熱安定性プラスチックは、さらにポリスルホンまたはポリエーテルスルホンである。
【0109】
少なくとも1種の材料が金属である適用例を優先する。より具体的には、その金属は、陰極電着により被覆された金属である。
【0110】
特に好ましい用途は、特に自動車産業におけるボディシェルの組立における同一または異なる金属の接着である。好ましい金属は、具体的には鋼、特に電気亜鉛めっき(electrolytically galvanized)鋼、溶融亜鉛めっきおよび油脂加工(oiled)鋼、Bonazinc被覆鋼、ならびに遡及的にリン酸処理鋼(phosphated steel)、また、アルミニウム、特に、一般に自動車の製造において発生する態様のアルミニウムである。
【0111】
そのような接着剤は、特に、最初に、10℃と80℃の間、特に10℃と60℃の間の温度で接着させる材料と接触させ、その後、一般に100〜220℃、好ましくは120〜200℃の温度で硬化する。
【0112】
したがって、本発明のさらなる態様は、
i)上で詳述した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を特に金属の熱安定性基板S1の表面に適用する工程と、
ii)適用した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を特に金属のさらなる熱安定性基板S2の表面と接触させる工程と、
iii)熱硬化性エポキシ樹脂組成物を100〜220℃、特に120〜200℃、好ましくは160と190℃の間の温度まで加熱する工程と
を含み、
前記基板S2は、基板S1と同じ材料、または異なる材料からなる
熱安定性基板の接着方法に関する。
【0113】
熱安定性基板S1およびS2は特に既に上述した熱安定性材料である。
【0114】
そのような熱安定性材料の接着プロセスにより、接着物品が生じる。そのような物品は、自動車または自動車の取り付け可能な構成部品であることが好ましい。
【0115】
熱硬化性接着剤の他に本発明の組成物も使用して、シーリング部品または被覆を実現できることが理解されよう。さらに、本発明の組成物は、自動車の組立に適しているだけではなく他の使用分野にも適している。船舶、トラック、バスまたは鉄道車両などの輸送手段の組立、または消費者財、例えば洗濯機の組立に関連する適用例を特に挙げるべきである。
【0116】
本発明の組成物により接着する材料は、一般に、120℃と-40℃の間の好ましくは100℃と-40℃の間、特に80℃と-40℃の間の温度で使用する。
【0117】
特に好ましい本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の使用は、自動車の組立における熱硬化ボディシェル接着剤としてのその使用である。
【0118】
さらに特に好ましい本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物の使用は、自動車の組立またはサンドイッチパネルの組立において金属構造物を接着もしくは補強するまたは空洞の充填を補強するためのその使用である。
【0119】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、特に、支持体に適用することができる。そのような支持体は、特に、既に上で熱安定性基板S1として記述した熱安定性材料でできている。ここでは、熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、溶融状態で支持体に適用する。
【0120】
したがって、簡単な方法で、記載した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を適用した支持体を含む、金属構造物の補強のための補強要素を実現することが可能である。
【0121】
これらの補強要素を金属構造物上に固定して、補強する金属構造物の空洞中に補強または固定する。ここでは、固定は、クリップ、ねじ、フック、リベット、溝などの固定手段または接着剤により実施することができるか、または固定挿入(clamped insertion)を可能にする該構造物の好適なジオメトリーにより実施することができる。したがって、支持体がそのような固定手段を有することが好ましい。より具体的には、補強する構造物が固定手段に相当する相手方部品、例えば突出端部/フックまたはボルト/ねじ山を有する場合が好ましい。
【0122】
したがって、本発明のさらなる態様は、上で詳述した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を100〜220℃、好ましくは120〜200℃の温度まで加熱することにより得られる硬化したエポキシ樹脂組成物に関する。
【0123】
より具体的には、本発明のさらなる態様は、既に記載した熱硬化性エポキシ樹脂組成物から加熱により得られる構造発泡体に関する。
【0124】
構造発泡体は、第1に、加熱されると発泡し、第2に、該組成物の化学的硬化を通して大きな力を伝えることができ、それ故、構造物、一般に金属構造物を補強することができるという本質的性質を有する。そのような構造発泡体は、一般に、金属構造物の空洞において使用される。より具体的には、それらは、上記補強要素において構成部品として使用することもできる。
【0125】
例えば、それらは、輸送手段のボディの支持柱の空洞において利用することができる。支持体により、この補強要素は所望の位置に維持される。補強要素は、一般に、ボディシェルの組立の過程で、すなわち、ボディの組立において導入される。陰極電着浴の通過後、ボディは陰極電着炉に入り、そこで、陰極電着塗装が一般に160〜190℃の温度で焼き付けられる。これらの温度で形成する水蒸気は、発泡剤として、発泡体の形成をもたらし、その過程で熱硬化性組成物が架橋と化学的に反応し、それにより、接着剤の硬化が生じる。
【0126】
したがって、これらの補強要素は、アセンブリ後に、そのような空洞の形状および/または寸法の小ささが理由で、それらを効率的に補強もしくはシールする、または騒音の伝達を防止することが困難な場合が多い場所で頻繁に使用される。
【0127】
これらの構造発泡体により、比較的重量が低いにもかかわらず高強度および高密度の構造物を得ることが可能である。さらに、また、構造発泡体の充填およびシーリング機能により、空洞の内部を隔離し、したがって駆動音および振動を著しく低減することが可能である。
【0128】
しかし、より具体的には、本発明は、水の形態の無毒性および難燃性の発泡剤を使用することにより得られる優れた性質を有する構造発泡体を提供することに成功した。
【0129】
(実施例)
実施例1〜8の調製
【0130】
【表1】

【0131】
各成分は、Table 2(表2)において指定している組成に従っており、最初にミキサー中でプレミックスし、次いで、95℃で二軸スクリュー押出機(L/D 24)を用いて押し出した。実施例1および2は比較実施例であり、実施例3〜8は、本発明の組成物を用いた試験を表している。
【0132】
固形押出品をプレスして厚さ2mmのシートを得た。これらのシートから試験片を製造し、特徴付けた。結果は、Table 2(表2)に示している。
【0133】
試験方法:
ガラス転移温度(Tg)
DSCによりガラス転移温度を求めた。この目的のためにMettler DSC822e計測器を使用した。いずれの場合にも各組成物10〜20mgを秤量してアルミニウムるつぼに入れた。175℃のDSCにおいて30minの間に試料が硬化すると、試料を0℃まで冷却し、次いで、10℃/minの加熱速度で180℃まで加熱した。DSCソフトウェアを用いながら測定したDSC曲線からガラス転移温度を求めた。
【0134】
弾性率(DIN EN ISO 527)
試料を2枚のTeflon紙の間でプレスして2mmの層厚さとした。その後、180℃で30分間にわたって試料を硬化した。Teflon紙を取り除き、DIN規格に従った試験片を高温状態で打ち出した。各試験片を、標準的気候条件(23℃/相対空気湿度50%)で一日貯蔵した後に2mm/minの引張速度で試験した。引張強度および弾性率をDIN EN ISO 527に従って求めた。弾性率の場合、0.05〜0.25%伸びから測定を実施し、Table 2(表2)において弾性率0.05〜0.25%(ME0.05〜0.25%)として報告した。
【0135】
引張剪断強度(TSS)(DIN EN 1465)
寸法100×25×1.5mmの電気亜鉛めっきDC04鋼(eloZn)を用いて記載した実施例組成物から試験片を製造し、その接着面は25×10mmであり、層厚さは2mmであった。180℃で30min硬化を実施した。引張速度は10mm/minであった。
【0136】
これらの試験の結果はTable 2(表2)においてまとめている。180℃で30分発泡した試料について弾性率、引張剪断強度およびガラス転移温度を求めた。
【0137】
膨張
膨張(Exp)を、未発泡材料(d0)の密度と発泡材料の密度(d1)の間の差異から、式:
Exp=(d0-d1)/d1
により測定した。
【0138】
160℃または180℃の温度で発泡を実施した。
【0139】
【表2】

【0140】
これらの実施例は、促進剤を添加しないと中程度の膨張率しか得られなかったことを示している。15.5%Crylcoat(登録商標)1680による理論上の膨張率は、形成した反応水に対して約300%であろう。この値は、以下のように導くことができる。
【0141】
15.5gのCrylcoat(登録商標)1680は配合物100gあたり0.0133molのカルボキシル基に相当する。ヒドロキシアルキルアミドとの反応においてカルボキシル基1個あたり1molの水が形成するため、形成した0.0133molの水蒸気はモル気体容積が22.4l/molであると考えると、それは約297.5mlの気体容積に相当する。約100g/100mlの未発泡の配合物の密度から開始して、完全な発泡後の理論上の密度を算出すると100g/(100ml+297.5ml)である。したがって、上記式を使用すると、297%という膨張率を算出することができる。
【0142】
比較実施例1および2において、他の点では類似している組成物に尿素誘導体をベースにした促進剤を添加していない。35%という膨張率の値は、本発明の実施例3〜8において促進剤を添加して達成された値(最大で110%の膨張率)より明らかにずっと劣っている。
【0143】
既に上で詳述したように、促進剤の濃度の増大により、エポキシド架橋が増大し、それ故膨張が増大する。このことは、エポキシ樹脂マトリックスの粘度が低いため、縮合反応により生じる水蒸気が、もはや関連する程度外に拡散することができず、その点において、発泡体の膨張に完全に寄与することが理由である。
【0144】
完全に驚くべきことに、本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物により、熱硬化に使用される通例の温度条件下で、高い機械的強度、良好なガラス強度ならびに金属および非金属基板上での良好な接着力を有する発泡体が形成され、同時に知られている毒性または可燃性発泡剤の使用を完全に省くことが可能であることをさらに見出した。
【0145】
Table 2(表2)の結果により、このことが明確に証明されている。弾性率、引張剪断強度およびガラス転移温度に関して達成された値は、本発明の組成物(実施例3〜8)の膨張の増大と共に減少するが、このことは、膨張そのものおよび結果として生じた発泡体の性質の変化のみに起因し得る。しかし、達成された値は、毒性または可燃性発泡剤を使用する従来の発泡体の値に完全に匹敵する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 1分子あたり平均2個以上のエポキシド基を有する少なくとも1種の固形エポキシ樹脂A1、
- 場合により、1分子あたり平均2個以上のエポキシド基を有する少なくとも1種の液体エポキシ樹脂A2、
- 温度の上昇により活性化するエポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤B、
- 少なくとも1種のカルボン酸C、
- 少なくとも1種のヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素H、ならびに
- 成分A1、および場合によりA2、ならびにBの転移の活性化のための尿素誘導体をベースにした少なくとも1種の促進剤E
を含む熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
液体エポキシ樹脂A2が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
カルボン酸Cが、ジ-もしくはトリカルボン酸、またはカルボキシル末端基および約1600g/molと約5000g/molの間の分子量を有する非晶質の少なくとも二官能性のポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
ジカルボン酸が、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびベンゼンジカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
硬化剤Bが、ジシアンジアミド、グアニミン、グアニジン、アミノグアニジンおよびそれらの誘導体、ならびに芳香族または脂肪族カルボン酸ヒドラジドからなる群から選択される潜伏性硬化剤であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
促進剤Eが、置換尿素、特に3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素(クロロトルロン)、もしくはフェニルジメチル尿素、特にp-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モヌロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェヌロン)、3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)、N,N-ジメチル尿素、N-イソブチル-N',N'-ジメチル尿素、1,1'-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(3,3'-ジメチル尿素)、または芳香族モノマーのジイソシアネート、特にジフェニルメチレン4,4'-ジイソシアネートと脂肪族アミン化合物、特にジメチルアミンとの反応の生成物の群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
DSCにより測定する固形エポキシ樹脂A1、液体エポキシ樹脂A2および硬化剤Bの間の反応の開始温度が、35〜60℃低下するように促進剤Eの割合が選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
促進剤Eの割合が、前記組成物の総重量の0.3〜5.0重量%、好ましくは1.0〜3.0重量%であることを特徴とする、請求項7に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
ヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hが、式(VIII)
【化1】

のヒドロキシアルキルアミドであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物
[式中、Xはフェニレン基または-(CH2)n-(式中、n=1〜7)であり、R5およびR6は、それぞれ独立してHまたは1から5個の炭素原子を有するアルキル基または-CH2CH2-OHである]。
【請求項10】
DSCにより測定するヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hとカルボン酸Cとの反応の開始温度が、固形エポキシ樹脂A1、任意の液体エポキシ樹脂A2、および硬化剤Bの間の反応の開始温度より少なくとも20℃高いことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
ヒドロキシアルキルアミドまたはヒドロキシアルキル尿素Hとカルボン酸Cとの間の反応が、発泡プロセスにおいて発泡剤として作用する水を放出することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物が適用された支持体を備える、金属構造物の補強用の補強要素。
【請求項13】
i)請求項1から11のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を特に金属の熱安定性基板S1の表面に適用する工程と、
ii)適用した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を特に金属のさらなる熱安定性基板S2の表面と接触させる工程と、
iii)熱硬化性エポキシ樹脂組成物を100〜220℃、特に120〜200℃、好ましくは160と190℃の間の温度まで加熱する工程と
を含み、前記基板S2は、基板S1と同じ材料、または異なる材料からなる
熱安定性基板の接着方法。
【請求項14】
自動車の組立またはサンドイッチパネルの組立において金属構造物を接着もしくは補強するまたは空洞の充填を補強するための請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を加熱することにより得られる構造発泡体。

【公開番号】特開2012−57157(P2012−57157A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−191539(P2011−191539)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】