説明

発泡樹脂成形品の製造方法

【課題】非充填部を有する発泡樹脂成形品を製造する際の発泡樹脂の充填不良を防止する。
【解決手段】表皮13を第1型の成形面にセットするとともに、外周に発泡樹脂の案内面19aを有する環状シール部19が突設された基材9を、上流側案内面部19bが発泡樹脂の流入方向Iに向かって互いに離れるように傾斜し、かつ下流側案内面部19cが流入方向に向かって互いに接近するように傾斜する状態で第2型の成形面にセットして型閉めすることにより、基材9の環状シール部19先端を表皮13の裏面に圧接させて、基材9の環状シール部19の外側で基材9と表皮13との間にキャビティを形成し、キャビティに連通したゲートから溶融状態の発泡樹脂をキャビティ内に射出して、環状シール部19で分岐させて上流側案内面部19bに沿って互いに離れる方向に案内した後に下流側案内面部19cに沿って合流するように案内することでキャビティ内に充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材、表皮、及び該基材と表皮との間に発泡樹脂が充填されてなる発泡樹脂層で構成される発泡樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表皮を第1型の成形面にセットするとともに、基材を第2型の成形面にセットして型閉めし、上記基材と表皮との間に形成されたキャビティ内に発泡樹脂を射出充填することにより、上記基材と表皮との間に発泡樹脂層が形成された発泡樹脂成形品を得る発泡樹脂成形品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−211625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のような発泡樹脂成形品として、基材と表皮との間に発泡樹脂が充填されていない非充填部を形成し、この非充填部に取付部品を表皮側から挿入して基材に固定するようにしたものがある。このような発泡樹脂成形品を製造する方法として、外周に発泡樹脂の案内面を有する平面視矩形状の環状シール部を基材に突設し、当該環状シール部を表皮の裏面に圧接し、かつ上記案内面を構成する4つの案内面部のうちの互いに平行な2つの案内面部が流入方向に沿う状態で第1型と第2型とを型閉めし、上記基材の環状シール部の外側で基材と表皮との間に形成されたキャビティに発泡樹脂を射出充填することにより、上記環状シール部の内側で上記非充填部が形成された発泡樹脂成形品を得る方法が考えられる。図9はその一例を示し、図中、aは発泡樹脂成形品、bは基材、cは表皮、dは環状シール部、eは案内面、fは上流側に位置する案内面部、gは下流側に位置する案内面部、hは発泡樹脂の流入方向を示す。
【0005】
しかし、このような製造方法では、発泡樹脂の射出充填時に、上流側に位置する案内面部fに垂直な方向から発泡樹脂がぶつかって発泡樹脂の流れが乱れて渦流が発生し、発泡樹脂がエアを巻き込む。一方、下流側に位置する案内面部gの近傍でも、サイドから流れ込む発泡樹脂により渦流が発生してエアを巻き込んでしまう。そして、このようなエアの巻き込みによりボイドが形成されて発泡樹脂の充填不良を引き起こすおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、非充填部を有する発泡樹脂成形品を製造する際の発泡樹脂の充填不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、発泡樹脂の射出充填時に環状シール部の上流側案内面部を互いに離れるように傾斜させ、かつ下流側案内面部を互いに接近するように傾斜させることを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明は、基材、表皮、及び該基材と表皮との間に発泡樹脂が充填されてなる発泡樹脂層で構成される発泡樹脂成形品の製造方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、表皮を第1型の成形面にセットするとともに、外周に発泡樹脂の案内面を有する環状シール部が突設された基材を、上流側案内面部が発泡樹脂の流入方向に向かって互いに離れるように傾斜し、かつ下流側案内面部が上記流入方向に向かって互いに接近するように傾斜する状態で第2型の成形面にセットして型閉めすることにより、上記基材の環状シール部先端を上記表皮の裏面に圧接させて、上記基材の環状シール部の外側で基材と表皮との間にキャビティを形成し、次いで、当該キャビティに連通したゲートから溶融状態の発泡樹脂を上記キャビティ内に射出して、上記環状シール部で分岐させて上記上流側案内面部に沿って互いに離れる方向に案内した後に上記下流側案内面部に沿って合流するように案内することでキャビティ内に充填し、上記環状シール部の外側で基材と表皮との間に上記発泡樹脂層が形成されるとともに、上記環状シール部の内側で基材と表皮との間に上記発泡樹脂が充填されていない非充填部が形成された発泡樹脂成形品を得ることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡樹脂成形品の製造方法において、上記環状シール部の案内面は、当該環状シール部の周方向に曲がる湾曲面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、ゲートからキャビティ内に射出された発泡樹脂は、互いに離れるように傾斜する上流側案内面部に沿ってスムーズに下流側に案内されて上流側案内面部に垂直な方向からぶつからない。したがって、上流側案内面部の近傍では発泡樹脂の流れが乱れず、渦流の発生が抑制されてエアが巻き込まれない。また、下流側案内面部に達した発泡樹脂は、下流側案内面部に沿ってスムーズに下流側に案内されて合流するので、下流側案内面部の近傍では発泡樹脂がサイドから流れ込まない。したがって、下流側案内面部の近傍でも渦流の発生が抑制されてエアが巻き込まれない。これにより、ボイドの形成による発泡樹脂の充填不良を防止できる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、案内面が湾曲して発泡樹脂の案内方向を徐々に変えるので、案内面近傍で案内方向の急な変化による発泡樹脂の流れの乱れが確実になくなる。したがって、渦流の発生によるエアの巻き込みをより効果的に抑制し、ボイドの形成による発泡樹脂の充填不良をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係るインストルメントパネルの左側半分を示す斜視図である。
【図2】図1のA部を拡大して示す正面図である。
【図3】図2のB−B線における断面図である。
【図4】インストルメントパネル本体に加飾パネルを取り付けた状態の図3対応拡大図である。
【図5】加飾パネルの凸部の斜視図である。
【図6】加飾パネルの凸部の正面図である。
【図7】発泡樹脂充填時における図3対応図である。
【図8】実施形態2の図2相当図である。
【図9】従来例の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、右ハンドルの自動車のインストルメントパネル1の左側半分を示す。
【0016】
上記インストルメントパネル1は、本発明の実施形態1に係る製造方法により製造された発泡樹脂成形品としてのインストルメントパネル本体3を備え、このインストルメントパネル本体3の車室内側の面には、車幅方向に延びる矩形状のパネル挿着領域5が車体前方に凹むように形成され、当該パネル挿着領域5は、加飾パネル7によって車室内側から覆われている。このインストルメントパネル本体3のパネル挿着領域5には、加飾パネル7を取り付ける取付箇所が車幅方向に間隔をあけて3箇所に設けられている。
【0017】
上記インストルメントパネル本体3は、図3及び図4に示すように、基材9、表皮13、及び該基材9と表皮13との間にウレタン等からなる発泡樹脂R(後述する)が充填されてなる発泡樹脂層11で構成され、上記パネル挿着領域5を除く領域では、上記基材9と表皮13とが断面略平行に配置されている。上記基材9は、例えば繊維入りポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ノリル(登録商標)等の樹脂材で射出成形されたものである。上記発泡樹脂層11はウレタン発泡体等であり、例えば独立発泡と連通発泡とが約半分ずつ分布する半硬質構造である。上記表皮13は、サーモプラスチックウレタン(TPU)等のエラストマー樹脂材やポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂材でスラッシュ成形や真空成形により成形されたものである。
【0018】
上記基材9には、図2にも示すように、上記各取付箇所に対応して、断面三角形状で平面視で長手方向を上下方向に沿わせた楕円状の環状シール部19が上記表皮13側に向かって突設されている。該環状シール部19の外周には、周方向に曲がる湾曲面で構成された案内面19aが形成されている。各案内面19aは、上流側案内面部19bと下流側案内面部19cとから構成されている。各環状シール部19の先端は上記表皮13に圧接し、各環状シール部19の内側には、上記基材9と表皮13の間に発泡樹脂Rが充填されていない非充填部21が形成されている。また、各非充填部21に対応する基材9には、反表皮13側に凹み内部に凹部17を有する取付部20が、平面視で上記環状シール部19に囲まれる矩形状に反表皮13側に突設されている。各取付部20の凹部17の底面には、係合孔18が形成されている。また、上記基材9の車幅方向中央近傍の車体前方寄りの位置には、製造時に後述する発泡樹脂Rを注入する円形のゲート10が形成されている。
【0019】
上記表皮13には、上記パネル挿着領域5に対応する凹部15が形成されている。また、上記非充填部21に対応する表皮13には、断面三角形状で裏面側(基材9側)に凹む溝部23(図1には図示せず)が平面視で上記取付部20の対角線に沿うX字状に形成され、この溝部23に対応する表皮13の薄肉部分が、貫通しないように成形された線状の脆弱部25となっている。
【0020】
ここで、本発明の実施形態1に係る発泡樹脂成形品の製造方法として、上記インストルメントパネル本体3の製造方法について説明する。
【0021】
まず、図7に示すように、第1型101及び第2型103を準備する。上記第2型103には挿着孔(図示せず)が形成され、該挿着孔には注入ヘッド(図示せず)が挿着されている。そして、表皮13を第1型101の成形面にセットするとともに、基材9を第2型103の成形面にセットして型閉めする。このとき、基材9は、上流側案内面部19bが発泡樹脂Rの流入方向Iに向かって互いに離れるように傾斜し、かつ下流側案内面部19cが上記流入方向Iに向かって互いに接近するように傾斜する状態にセットされる。これにより、上記基材9の環状シール部19先端が上記表皮13の裏面に圧接し、上記基材9の環状シール部19の外側で基材9と表皮13の間にキャビティCが形成される。この状態で、基材9のゲート10が注入ヘッド及びキャビティCに連通している。
【0022】
次いで、溶融状態の発泡樹脂Rを注入ヘッドからゲート10を経て上記キャビティC内に射出すると、発泡樹脂Rは環状シール部19で分岐して上流側案内面部19bに沿って互いに離れる方向に案内され、その後下流側案内面部19cに沿って合流するように案内されてキャビティC内に充填されて発泡する。これにより、環状シール部19の外側で基材9と表皮13との間に発泡樹脂層11が形成されるとともに、環状シール部19の内側で基材9と表皮13との間に非充填部21が形成されたインストルメントパネル本体3が製造される。このように、ゲート10からキャビティC内に射出された発泡樹脂Rは、互いに離れるように傾斜する上流側案内面部19bに沿ってスムーズに下流側に案内されて上流側案内面部19bに垂直な方向からぶつからない。したがって、上流側案内面部19bの近傍では発泡樹脂Rの流れが乱れず、渦流の発生が抑制されてエアが巻き込まれない。また、下流側案内面部19cに達した発泡樹脂Rは、下流側案内面部19cに沿ってスムーズに下流側に案内されて合流するので、下流側案内面部19cの近傍では、発泡樹脂Rがサイドから流れ込まない。したがって、下流側案内面部19cの近傍でも渦流の発生が抑制されてエアが巻き込まれない。さらに、案内面19aが湾曲して発泡樹脂Rの案内方向を徐々に変えるので、案内面19a近傍で案内方向の急な変化による発泡樹脂Rの流れの乱れが確実になくなる。したがって、渦流の発生によるエアの巻き込みを効果的に抑制できる。このようにエアの巻き込みを抑制することで、ボイドの形成による発泡樹脂Rの充填不良を確実に防止できる。また、基材9の環状シール部19が上記表皮13の裏面にくい込んでいるので、基材9と表皮13とが確実にシールされ、発泡樹脂Rの漏出が防止される。また、仮に、基材9の環状シール部19と表皮13との間から発泡樹脂Rが漏出して非充填部21に侵入しても、脆弱部25に貫通孔が形成されていないので、侵入した発泡樹脂Rが脆弱部25から外側に流れ出ず、表皮13の外面が汚れない。なお、上記発泡樹脂Rは、例えば、化学反応によりガスを発生させる化学的発泡材や、Mucell(ミューセル:登録商標)Processのように、二酸化炭素ガス及び窒素ガス等の不活性ガス(物理的発泡材)等が超臨界状態で混入された熱可塑性樹脂であるが、必ずしもこれらを混入していなくてもよい。
【0023】
このようにして製造されたインストルメントパネル本体3に取り付けられる加飾パネル7は、車幅方向に延びる矩形板状のパネル本体27を備え、当該パネル本体27の裏面には、3つの凸部29がそれぞれ上記インストルメントパネル本体3の各取付部20に対応して突設されている。各凸部29は、図5及び図6にも示すように、上記パネル本体27に一体に突設された横断面略コ字状の側壁部31、及び当該側壁部31の突出端から上記パネル本体27と略平行に一体に形成された座面部33からなる取付座32と、当該取付座32の座面部33の反パネル本体27側に一体に突設された係合片部34とから構成されている。上記係合片部34は、板面を上記側壁部31の開放側に向けて上記座面部33に突設された突出板部35と、当該突出板部35と垂直に交差して当該突出板部35の両側近傍を補強するように上記座面部33に突設された2枚の補強板部41とを有している。上記突出板部35の基端側両側には、座面部33と連続する板状第1リブ36が張り出し形成され、上記両補強板部41の基端側両側には、座面部33と連続する板状第2リブ42が張り出し形成されている。上記第1リブ36と第2リブ42の突出高さは、互いに等しくなっている。上記突出板部35の補強板部41に挟まれた領域には、当該突出板部35の突出方向に開放する略コ字状のスリット37が形成され、当該スリット37により囲まれる領域で可撓性爪部39が上記突出板部35の板面に対して垂直な方向に出退可能に形成されている。
【0024】
上記のように構成された加飾パネル7をインストルメントパネル本体3に取り付ける手順は以下のとおりである。
【0025】
まず、加飾パネル7をインストルメントパネル本体3のパネル挿着領域5に対応させて、加飾パネル7の凸部29(突出板部35)の先端を上記非充填部21に対応する表皮13に押し付けることにより上記脆弱部25を破断する。そして、当該表皮13の破断箇所から凸部29を基材9の凹部17内に挿入し、上記非充填部21に対応し、上記押し込み動作により破断された表皮13を凸部29により上記基材9の取付部20の凹部17内に押し込む。次いで、突出板部35を上記基材9の係合孔18に押し込むと、上記突出板部35の爪部39が上記係合孔18の周縁に当接して弾性変形し、爪部39が元に復帰することにより上記基材9の係合孔18の周縁に係合し、突出板部35全体が係合孔18から抜けなくなる。つまり、加飾パネル7が、爪部39の係合孔18への係合により取付部20に固定されてインストルメントパネル本体3に取り付けられた状態となる。この取付け状態では、上記凸部29の第1リブ36と第2リブ42とが上記凹部17の係合孔18周りの底面に当接し、加飾パネル7の表面とインストルメントパネル本体3の表面とが面一になっている。また、上記非充填部21に対応する表皮13が凹部17に押し込まれて、表皮13の先端(脆弱部25)が基材9の凹部17の深さ方向中程に位置し、凹部17の底面に到達していない。つまり、上記非充填部21に対応する表皮13の押し込み寸法d1が、上記凹部17の深さd2よりも小さく設定されている。したがって、加飾パネル7の凸部29の第1リブ36及び第2リブ42と基材9の凹部17の底面との当接が表皮13によって妨げられず、加飾パネル7の凸部29と基材9との間に表皮13が挟まることによって生じる見栄えの悪化及び加飾パネル7のがたつきが防止される。
【0026】
したがって、本実施形態1によると、非充填部21に対応する表皮13を凹部17内に押し込むので、凸部29を非充填部21及び基材9の凹部17内に挿入するための挿入孔を表皮に形成する必要がなく、インストルメントパネル本体3の成形後に表皮13の挿入孔対応箇所を切り取る必要がない。また、凸部29を押し付けることにより表皮13を破断するので、予め表皮13をカットする必要がない。したがって、作業効率を改善できる。
【0027】
また、基材9の係合孔18に加飾パネル7の爪部39を係合させるだけで加飾パネル7をインストルメントパネル本体3の取付部20に固定できるので、取付け作業が容易である。
【0028】
また、表皮13の脆弱部25は表皮13の成形によって形成されるので、成形後に熱刃を用いて脆弱部25を形成する工程が必要がなく、作業効率が良い。
【0029】
(実施形態2)
図8は、実施形態2の図2相当図である。
【0030】
この実施形態2では、環状シール部19の上下端部が、互いに開放側を対向させた1対のV字部分19dにより構成されている。各V字部分19dは、平面視で環状シール部19内側に向かって若干凸状に湾曲する略V字形状をなし、これら両V字部分19dの開放側端部は、上下方向に延びる1対の直線部分19eにより連結されている。
【0031】
そして、上記型閉めが、上側のV字部分19dの外面が上記上流側案内面部19bとなり、下側のV字部分19dの外面が下流側案内面部19cとなるように行われる。
【0032】
その他のインストルメントパネル1の構成、及びインストルメントパネル本体3の製造方法は、上記実施形態1と同じであるので同一の構成には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0033】
したがって、本実施形態2によると、上記実施形態1と同様に、発泡樹脂Rの充填不良を防止できる効果が得られる。
【0034】
なお、上記実施形態1,2では表皮13に凹部15を設けたが、表皮13に凹部15を設けず、表皮13を平坦にしてもよい。
【0035】
また、環状シール部19の形状は、上記実施形態1,2の例に限らず、例えば、平面視菱形形状等にしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態1,2では脆弱部25をX字状に形成したが、コ字状、十字状、日の字状等、他の形状にしてもよい。また、表皮13に溝部23を形成して溝部23に対応する表皮13を脆弱部25としたが、表皮13に細かい複数の貫通孔を線状に形成し、貫通孔周辺の表皮13を脆弱部25としてもよい。
【0037】
また、上記実施形態1,2では、凸部29を表皮13に押し付けることにより表皮13の脆弱部25を破断し、この破断箇所から凸部29を挿入したが、予め表皮13をカット(切断)しておき、この切断箇所から凸部29を挿入し、カットされた表皮13を凸部29により凹部17内に押し込むようにしてもよい。
【0038】
また、上記実施形態1,2ではインストルメントパネル本体3に本発明の発泡樹脂成形品の製造方法を適用したが、本発明は、ドアトリム等の他の自動車用樹脂成形品、さらには自動車用以外の樹脂成形品にも適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、基材、表皮、及び該基材と表皮との間に発泡樹脂が充填されてなる発泡樹脂層で構成される発泡樹脂成形品の製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0040】
3 インストルメントパネル本体(発泡樹脂成形品)
9 基材
10 ゲート
11 発泡樹脂層
13 表皮
19 環状シール部
19a 案内面
19b 上流側案内面部
19c 下流側案内面部
21 非充填部
101 第1型
103 第2型
C キャビティ
I 流入方向
R 発泡樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(9)、表皮(13)、及び該基材(9)と表皮(13)との間に発泡樹脂(R)が充填されてなる発泡樹脂層(11)で構成される発泡樹脂成形品の製造方法であって、
表皮(13)を第1型(101)の成形面にセットするとともに、外周に発泡樹脂(R)の案内面(19a)を有する環状シール部(19)が突設された基材(9)を、上流側案内面部(19b)が発泡樹脂(R)の流入方向(I)に向かって互いに離れるように傾斜し、かつ下流側案内面部(19c)が上記流入方向(I)に向かって互いに接近するように傾斜する状態で第2型(103)の成形面にセットして型閉めすることにより、上記基材(9)の環状シール部(19)先端を上記表皮(13)の裏面に圧接させて、上記基材(9)の環状シール部(19)の外側で基材(9)と表皮(13)との間にキャビティ(C)を形成し、
次いで、当該キャビティ(C)に連通したゲート(10)から溶融状態の発泡樹脂(R)を上記キャビティ(C)内に射出して、上記環状シール部(19)で分岐させて上記上流側案内面部(19b)に沿って互いに離れる方向に案内した後に上記下流側案内面部(19c)に沿って合流するように案内することでキャビティ(C)内に充填し、上記環状シール部(19)の外側で基材(9)と表皮(13)との間に上記発泡樹脂層(11)が形成されるとともに、上記環状シール部(19)の内側で基材(9)と表皮(13)との間に上記発泡樹脂(R)が充填されていない非充填部(21)が形成された発泡樹脂成形品(3)を得ることを特徴とする発泡樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡樹脂成形品の製造方法において、
上記環状シール部(19)の案内面(19a)は、当該環状シール部(19)の周方向に曲がる湾曲面であることを特徴とする発泡樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−153103(P2012−153103A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16535(P2011−16535)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】