説明

発電装置

【課題】 簡易な構成であって、あらゆる方向の振動により発電することができる発電装置を提供する。
【解決手段】 基部と、支持柱と、回転軸と、振子体と、錘と、発電機とを備え、支持柱が、第一軸受を介して基部に垂直向きに取り付けられていて、垂直軸周りに回転自在であり、回転軸が、第二軸受を介して支持柱に水平向きに取り付けられていて、水平軸周りに回転自在であり、振子体が、回転軸に固定されていて、その一端に錘が取り付けられており、発電機が、回転軸に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振子の揺動によって、振動エネルギを電気エネルギに変換する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波に起因する揺れ(振動エネルギ)を電気エネルギに変換する発電装置として、振子と、振子に接続した発電機とを備え、振子の揺動により発電機で発電を行うものが提案されている。たとえば、特許文献1に記載の発電装置は、船に搭載するものであり、ピッチング用とローリング用のそれぞれの支柱および振子を有している。波によって船がピッチング方向およびローリング方向に揺れるのに伴って振子が揺動し、発電機で発電が行われる。また、特許文献2に記載の発電装置は、それ自体が海上に浮かべられるものであり、鉛直方向に延び回転可能なセンターシャフトと、センターシャフトの上端に連結された円錐振子とを有している。波の揺動に伴って円錐振子が円運動し、それによりセンターシャフトが回転して発電機で発電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−195096号公報
【特許文献2】特開2009−121314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発明は、ピッチング用とローリング用の二つの振子を有しており構造が複雑であることが問題であった。さらに、各振子は一方向の振動のみに対応するものであるから、振子の運動方向以外の方向の振動によって破壊されることがないように、軸受の強度を高める必要があった。また、特許文献2の発明は、センターシャフトを傾けるような振動であれば、円錐振子が円運動してセンターシャフトが回転するが、軸を回転させるには軸垂直方向に力が作用しなければならないので、センターシャフトの回転軸方向(上下方向)の振動では、センターシャフトが回転せず発電できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、簡易な構成であって、あらゆる方向の振動により発電することができる発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1の発明は、基部と、支持柱と、回転軸と、振子体と、錘と、発電機とを備え、支持柱が、第一軸受を介して基部に垂直向きに取り付けられていて、垂直軸周りに回転自在であり、回転軸が、第二軸受を介して支持柱に水平向きに取り付けられていて、水平軸周りに回転自在であり、振子体が、回転軸に固定されていて、その一端に錘が取り付けられており、発電機が、回転軸に接続されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項2の発明は、錘が、振子体の長手方向に沿って位置調整可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明のうち請求項3の発明は、振子体の他端に、補助錘が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1の発明によれば、水平軸周りに回転する回転軸が、垂直軸周りに回転する支持柱に支持された構造なので、どの方向の振動に対しても、回転軸が振動方向に直交するように支持柱が回転して、常に振子を揺動させて発電することができる。またそれに伴って、軸受にかかる力を軽減できる。さらに、振子体は、加振力が小さければ往復運動し、加振力が大きければ回転運動するので、広い範囲のエネルギ量に対応できる。また、振動エネルギを電気エネルギに変換するため、設置した構造物などの振動を軽減できる。
【0010】
本発明のうち請求項2の発明によれば、錘の位置を調整して、振子体の固有振動数が加えられる振動の振動数と一致するようにすれば、より発電量を大きくすることができる。また、加振力が小さく振子体が往復運動している場合でも、振子体の揺動に合わせて錘の位置を動かすことにより、往復運動から回転運動へ移行させ、安定して発電することができる。その場合、往復運動において、振子体が最高点から最下点に至るまでは錘の位置を回転中心から遠ざけ、最下点から最高点に至るまでは錘の位置を回転中心に近づけるようにすればよい。
【0011】
本発明のうち請求項3の発明によれば、振子体の両端に錘または補助錘が取り付けられているので、錘と補助錘の質量比、および回転中心から錘または補助錘までの長さの比を変えるだけで、固有振動数を変えることができる。これにより、加えられる振動の振動数が小さい場合であっても、固有振動数を一致させるために長大な振子体を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の発電装置の側面図である。
【図2】本発明の発電装置の正面図である。
【図3】振子体の動きの説明図であり、(a)は加振力が小さい場合、(b)は加振力が大きい場合である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発電装置の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。この発電装置は、図1および図2に示すように、基部1と、支持柱2と、回転軸3と、振子体4と、錘5と、補助錘9と、発電機6とを備えている。基部1は、発電装置全体を支持するものであり、基部1が振動することで、その振動が振子体4に伝達され、発電が行われる。図面では、模式的に平板状のものとしているが、どのような形状であってもよく、この発電装置の設置面と一体になっていてもよい。支持柱2は、略円柱形状で、第一軸受7を介して基部1に垂直向きに取り付けられている。第一軸受7は、ボールベアリングからなるものであり、支持柱2は、垂直軸周りに回転自在となっている。そして、支持柱2の上端部に、第二軸受8を介して回転軸3が水平向きに取り付けられている。第二軸受8も、ボールベアリングからなるものであり、回転軸3は、水平軸周りに回転自在となっている。さらに、回転軸3の一端には、棒状の振子体4が取り付けられている。振子体4は、回転軸3に対して動かないように固定されており、回転軸3と一体になって回転する。そして、振子体4の一端には、錘5が取り付けられている。ここで錘5は、ボールネジ51によって振子体4の長手方向に沿って位置調整可能となっている。すなわち、振子体4に、ボールネジ51を回転させるモータ52と、ボールネジ51を振子体4の長手方向に沿った向きに支持する軸受53が取り付けられており、錘5がボールネジ51に螺合していて、かつボールネジ51に平行するガイド54に沿って摺動可能で、ボールネジ51を回転させることにより錘5が振子体4の長手方向に沿って移動する。さらに、振子体4の他端には、補助錘9が取り付けられている。補助錘9は、錘5とは異なって振子体4に固定されており、移動不可能である。そして、回転軸3の他端には、発電機6が増速器10を介して接続されており、回転軸3の回転を電気エネルギに変換している。なお、この発電装置は図示しない制御部を有しており、回転軸3の回転速度に基づいて、モータ52を駆動し錘5の位置を調整する。
【0014】
このように構成した発電装置において、基部1が振動すれば、その振動が振子体4に伝達されて振子体4が揺動し、回転軸3が回転して発電が行われる。その際、振動の方向が変わっても、回転軸3が振動方向に直交するように支持柱2が回転して、振子体4は振動方向に揺動するので、常に発電できる。またそれに伴って、第一軸受7および第二軸受8にかかる力を軽減できる。さらに、振動により加えられるエネルギ量によって、振子体4が往復運動(図3(a))から回転運動(図3(b))に変わるため、広い範囲のエネルギ量に対応できる。また、振動エネルギを電気エネルギに変換するため、設置した構造物などの振動を軽減できる。
【0015】
また、錘の位置を調整して、振子体の固有振動数が加えられる振動の振動数と一致するようにすれば、より発電量を大きくすることができる。さらに、加振力が小さく振子体が往復運動している場合でも、振子体の揺動に合わせて錘の位置を動かすことにより、往復運動から回転運動へ移行させることができる。これは、人がブランコを漕ぐのと同じ原理であり、往復運動において、振子体が最高点から最下点に至るまでは錘の位置を回転中心から遠ざけ、最下点から最高点に至るまでは錘の位置を回転中心に近づけるようにすればよい。なお、これらの錘の位置調整は、回転軸の回転速度をパラメータとして行われる。すなわち、振動数は回転速度から求められる。また、振子体の最高点では回転速度が0となり、最下点では回転速度が最速となる。そして、振子体が回転運動することにより、振子体自身がフライホイールの役割を果たし、安定して発電することができる。
【0016】
なお、錘の位置調整についてはボールネジにより行われる構造となっており、錘に働く力はボールネジとガイドにより受け持つので、振子体が揺動しても錘の位置を確実に保持できる。このように直線的な位置調整を行う機構としては、たとえば油圧シリンダを用いる機構や、錘に接続したワイヤをウインチで巻き取る機構なども考えられる。しかしながら、油圧シリンダを用いる機構では、振子体の位置により油圧シリンダのピストンに作用する力が変わるので、錘の位置が変わらないようにするためには、油圧を高くしなければならず、高圧の油圧ポンプが必要となる。また、振子体が回転運動する場合には、回転する配管が必要となり、構造が複雑になる。さらに、ワイヤをウインチで巻き取る機構では、ワイヤは圧縮方向の力を受け持つことができないので、振子体が回転運動する場合には、錘の位置を保持できないおそれがある。よって、本発明の発電装置のように、ボールネジにより位置調整する構造とすることが望ましい。
【0017】
さらに、この発電装置は、振子体の両端に錘または補助錘が取り付けられていることにより、加えられる振動の振動数が小さい場合であっても、小型の装置で対応することができる。以下、この点についてより詳しく説明する(ただし、以下の式は、振子体が往復運動する場合であって、その振幅が小さい場合のものである)。まず、補助錘がない場合を考える。この場合、回転中心から錘までの距離をr、錘の質量をm、重力加速度をgとして、次の式(1)の運動方程式が成り立つ。
【数1】

よって、固有振動数は次の式(2)で表される。
【数2】

したがって、回転中心から錘までの距離r、すなわち振子体の長さを変えることにより、固有振動数を変えることができる。しかし、たとえば固有振動数を0.5Hzという小さな値にするためには、1m以上の長さの振子体が必要となってしまう。
【0018】
これに対し、振子体の両端に錘または補助錘が取り付けられている場合、回転中心から錘および補助錘までの距離をそれぞれr,r、錘および補助錘の質量をそれぞれm,mとして、次の式(3)の運動方程式が成り立つ。
【数3】

よって、固有振動数は次の式(4)で表される。
【数4】

したがって、錘と補助錘の質量比、および回転中心から錘または補助錘までの長さの比を変えるだけで、固有振動数を変えることができる。これにより、たとえば固有振動数を0.5Hzという小さな値にする場合でも、質量比または長さ比を変えることで対応できるので、1mもの長さの振子体は必要ない。
【0019】
本発明の発電装置は、様々な場面での使用が考えられる。たとえば、波力により揺れる船舶や、風力により揺れる架橋に設置することで、振動エネルギを電気エネルギに変換して発電できる。発電した電力は、船舶であれば、動力やその他の船内機器などの電源として使用できるし、架橋であれば、照明などの電源として使用できる。また、振動エネルギを電気エネルギに変換しているため、振動エネルギが減少し、船舶や架橋の揺れを低減できる。その他にも、電圧や発電量を計測することにより、振動の発生時刻や振幅の大きさなどを測定するセンサとして利用することもできる。さらに、建物の床や窓などに設置し、発電機にブザーや照明を接続することで、防犯装置として利用することもできる。すなわち、床や窓の振動によって発電し、人が近付いたことを音や光で知らせるものであり、電源のないところでも設置可能である。また、この発電装置は人が歩く際の振動により発電することも可能であるから、携帯可能な電子機器に内蔵したり、電子機器の充電器に搭載したりして、電子機器の充電に使用してもよい。
【0020】
本発明は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、第一軸受および第二軸受は、ボールベアリングからなるものに限られず、ローラベアリングのようなその他のベアリングなど、一般に軸受として用いられる種々の構造を適用できる。また、錘の位置調整の機構は、上記のボールネジを用いる機構が望ましいが、振子体の長手方向に沿って錘を移動させ、その位置で保持できるものであれば、それ以外の機構でもよい。さらに、加えられる振動の振動数があらかじめわかっている場合には、錘の位置調整の機構は省略してもよい。また、あらかじめ振動の方向がわかっていて変化しない場合には、第一軸受が回転しない方が安定して振子体を揺動させられる場合もあるので、第一軸受を固定して回転不能な状態にできるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 基部
2 支持柱
3 回転軸
4 振子体
5 錘
6 発電機
7 第一軸受
8 第二軸受
9 補助錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、支持柱と、回転軸と、振子体と、錘と、発電機とを備え、
支持柱が、第一軸受を介して基部に垂直向きに取り付けられていて、垂直軸周りに回転自在であり、
回転軸が、第二軸受を介して支持柱に水平向きに取り付けられていて、水平軸周りに回転自在であり、
振子体が、回転軸に固定されていて、その一端に錘が取り付けられており、
発電機が、回転軸に接続されていることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
錘が、振子体の長手方向に沿って位置調整可能であることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
振子体の他端に、補助錘が取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の発電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−100734(P2013−100734A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243749(P2011−243749)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)