説明

皮膚化粧料

【課題】「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を皮膚に与えて、温感と冷感とを繰り返すことによる血行促進効果や新陳代謝の活性化等の増強を図りながら、使用後に温感効果を実感することのできる皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)多価アルコール、(B)4−バニリルアルキルエーテル、ショウガオール、ジンゲロール及びジンゲロンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の温感剤、(C)冷感剤及び(D)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含有する皮膚化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚へ温感と冷感とを繰り返して与える皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に温感を与えることによって、血液の循環量が増して冷え性が改善されたり新陳代謝が活性化されたり、老廃物を排出して栄養分が吸収されやすくなったりする等、様々な効果がもたらされる。こうした温感を皮膚に与える化粧料として、従来より、唐辛子抽出物、ショウキョウ抽出物、カプサイシン、ノニル酸バニリルアミド、ニコチン酸ベンジル等の温感剤を配合することが知られている。例えば、特許文献1には、ワニリルアルキルエーテルを用いた温感皮膚化粧料が開示されている。また、特許文献2には、水和熱を発生するグリセリンなどの多価アルコールを用いた皮膚用ゲル状組成物が開示されている。
【0003】
さらに、温感の持続性を高めるため、例えば、特許文献3に開示されるように、グリセリン又はジグリセリンとトウガラシチンキ又はショウキョウチンキとを併用したゲル状温熱マッサージ料等も開発されている。
【0004】
一方で、「冷え性を改善するには、ただ温めるのではなく、「温める」「冷やす」を繰り返して、血管の収縮を促すことが肝心」であることが、従来より知られており(非特許文献1)、水和熱発生基剤と冷感剤とを組み合わせた化粧料(例えば、特許文献4)や、(a)水と接して発熱する発熱剤及び/又は温感剤と、(b)冷感剤を含有する化粧料(例えば、特許文献5)等も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−205007号公報
【特許文献2】特開平2−311408号公報
【特許文献3】特開平11−12126号公報
【特許文献4】特開2000−219619
【特許文献5】特開2001−72547号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】小林照子、"「温ケア&冷ケア」で肌は必ずキレイになる"、青春出版社、p132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4及び5に開示された化粧料は、いずれも、使用中には温感が高まり、使用後には清涼感が残るという「温感から冷感」への2段階に亘る感覚変化を与えるのみのものである。このような「温感から冷感」への2段階に亘る感覚変化のみでは、温感と冷感とを繰り返し与えることにより奏される上述の血管の収縮を促す等の効果を充分にもたらすことができず、また冷感を与えて作用が完了するため、例えば、シャワーのみの簡易な入浴や冬場の入浴に用いるには不向きである。
【0008】
従って、本発明の課題は、斯かる実情に鑑み、「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を皮膚に与えて、温感と冷感とを繰り返すことによる前述の血管の収縮を促す等の効果を図りながら、使用後に温感効果を実感することのできる皮膚化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく、化粧料中に温感剤と冷感剤とを含有させつつ、温感剤と冷感剤とが皮膚に作用しはじめるタイミングをずらすことで、温感と冷感とを3段階に分けて順次実感させるよう、種々検討した結果、多価アルコール、特定の温感剤、冷感剤及びアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含有させることにより、皮膚に「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を効果的に与えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)多価アルコール
(B)4−バニリルアルキルエーテル、ショウガオール、ジンゲロール及びジンゲロンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の温感剤
(C)冷感剤
(D)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
成分を含有する皮膚化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚化粧料によれば、「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を皮膚に付与することができ、温感と冷感とを繰り返し与えることによる前述の血管の収縮を促す等の効果を充分に享受しながら、使用後には満足感のある温感効果をもたらすことが可能である。したがって、特にシャワーのみの簡易な入浴や冬場の入浴に用いる化粧料として、有用性の高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の皮膚化粧料は、成分(A)として、多価アルコールを含有する。かかる多価アルコールは、水と接触して水和熱を発生するものであり、この水和熱によって皮膚に温感をもたらすことができる。したがって、本発明の皮膚化粧料を皮膚に塗布した際、まず最初に、成分(A)が皮膚上に存在する水分と反応して水和熱を発生し、「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化のうち、1段階目の温感を皮膚に付与する。また、成分(A)は、後述する成分(B)の温感剤の溶剤としても機能する。
【0012】
このような(A)多価アルコールとしては、具体的には、例えば、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(10E.O.、20E.O.、30E.O.又は40E.O.)等のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ソルビトール等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0013】
なかでも、後述する成分(B)の温感剤を良好に溶解させることで温感が皮膚へ作用するタイミングを遅延させながら、他の成分を均一に分散させる点から、室温(25℃)で液状のものが好ましく、また、気化熱が生じると温度が低下して充分な温感を付与することができない点から、不揮発性であるのが好ましい。このような観点から、(A)多価アルコールの1分子あたりの水酸基の数は、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3である。かかる好ましい(A)多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられ、なかでも、グリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコールがより好ましく、特にグリセリン、ポリエチレングリコールが好ましい。特に、上記ポリエチレングリコールとしては、温感付与効果の点から、より具体的には、GPCによる平均分子量に換算して200〜800のものが好ましく、300〜600のものが特に好ましい。
【0014】
上記成分(A)であれば、後述する成分(B)の温感剤が成分(A)中に良好に溶解して成分(B)による温感効果の発現のタイミングを適度に遅延させることができ、その間に成分(D)に包埋された成分(C)の冷感剤が速やかに皮膚に作用し冷感を付与することができ、これによって「成分(A)による温感から成分(C)による冷感へ、続いて成分(B)による温感へ」という3段階に亘る感覚変化をより確実にもたらすことができると考えられる。また、成分(A)を含有することによって、適度なクレンジング効果を発揮させることもできる。
【0015】
上記成分(A)は、「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化をより確実に付与する点から、特にグリセリンとポリエチレングリコールとを組み合わせて用いるのが好ましい。この際、グリセリンとポリエチレングリコールとの含有量の比(質量比、グリセリン:ポリエチレングリコール)は、成分(B)の温感剤をより良好に溶解させ、3段階に亘る感覚変化のうち、1段階目の温感と3段階目の温感とを有効に判別し得るようにする点から、好ましくは90:10〜30:70、より好ましくは80:20〜40:60である。
【0016】
上記成分(A)の多価アルコールの含有量は、各成分が順次作用して心地良い3段階に亘る感覚変化を具現化することができるという観点から、皮膚化粧料全量中、その合計量で、好ましくは85〜99.97質量%であり、より好ましくは88〜99.93質量%であり、更に好ましくは95〜99.90質量%である。
【0017】
本発明の皮膚化粧料は、成分(B)として、4−バニリルアルキルエーテル、ショウガオール、ジンゲロール及びジンゲロンから選ばれる温感剤を含有する。これらは、1種単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、より有効に温感作用をもたらす点から、4−バニリルアルキルエーテル、ショウガオール又はジンゲロールを含有するのが好ましい。従来、化粧料に配合され得る温感剤の中でも成分(B)の温感剤は、上記成分(A)に対する溶解性が高く、且つ、皮膚への刺激性が低いため、本発明の皮膚化粧料を皮膚に塗布した際、瞬時に温感作用を発現することなく化粧料中に残存しながら、化粧料を洗い流した後にも皮膚に残留して、「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」の3段階目の程良い温感作用を持続的にもたらすことができる。また、成分(B)は、成分(A)に比べると、緩慢に温感をもたらすので、3段階に亘る感覚変化を具現化するのを可能とする。
【0018】
上記成分(B)の温感剤の含有量は、皮膚に「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を付与することができるとともに、充分な温感の持続性が得られ、刺激性が強くなるのを回避することができ、コスト的にも有利であるという観点から、皮膚化粧料全量中、その合計量で、好ましくは0.001〜2質量%であり、より好ましくは0.005〜1質量%であり、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0019】
本発明の皮膚化粧料は、成分(C)として、冷感剤を含有する。成分(C)は、後述する成分(D)中に包埋されながら、本発明の皮膚化粧料を皮膚に塗布した際には、成分(D)中から瞬時に放出され、「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」の1段階目の温感に続き、2段階目にあたる清涼感のある冷感をもたらすことができると考えられる。かかる成分(C)としては、logPが2以上、好ましくはlogPが2〜3.5の環式モノテルペン構造を有する冷感剤であり、更に好ましくはlogPが2.3〜3.3の環式モノテルペン構造を有する冷感剤であり、具体例としては、l−メントール(logP3.2)、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール(logP2.4)等のメントール誘導体、カンファー(logP2.2)、チモール(logP3.4)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、冷感効果が好適に発現するため、皮膚に「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を付与することができる点から、l−メントール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオールが好ましい。
【0020】
なお、本明細書において、logPとは化学物質の1−オクタノール/水分配係数で、f値法(疎水性フラグメント定数法)により計算で求められた値を意味する。本発明では、CLOGP Reference Manual Daylight Software 4.34,Albert Leo,David Weininger,Version 1,March 1994logP値を用いた。
【0021】
上記成分(C)の冷感剤の含有量は、後述する成分(D)中に包埋されながら、本発明の皮膚化粧料を皮膚に塗布した際には、成分(D)中から瞬時に放出され、「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」の1段階目の温感に続き、2段階目にあたる清涼感のある冷感をもたらすことができ、充分な冷感を付与することができ、刺激性が強くなるのを回避するとともに、コスト的にも有利であるという観点から、皮膚化粧料全量中、その合計量で、好ましくは0.001〜3質量%であり、より好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜1質量%である。
【0022】
本発明の皮膚化粧料は、成分(D)として、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を含有する。成分(D)は、分子中のメタクリル酸アルキルモノマーから誘導される構成単位部分が親油基として作用し、アクリル酸モノマーから誘導される構成単位部分が親水基として作用し得る共重合体である。そのため、親油基の作用によって成分(C)の冷感剤を有効に包埋しながら、親水基の作用によって周囲にゲル相を形成して成分(C)を包埋した成分(D)と各成分とを均一に分散させることができる。なお、形成されたゲル相は、本発明の皮膚化粧料を皮膚に塗布した際、皮膚上に存在する塩分によって瞬時に凝縮するため、包埋された成分(C)の冷感剤が成分(D)内から直ちに放出され、成分(A)により皮膚にもたらされる温感に続いて、即時に冷感を与えることができる。
【0023】
成分(D)のアクリル酸モノマーから誘導される構成単位と、メタクリル酸アルキルモノマーから誘導される構成単位との比率(アクリル酸モノマーから誘導される構成単位:メタクリル酸アルキルモノマーから誘導される構成単位)は、親油基の作用と親水基との作用をバランスよく発揮させる点から、好ましくは1:99〜99:1である。また、親油基としての作用を有効に発揮させる点から、メタクリル酸アルキルモノマーのアルキル部位は、炭素数が好ましくは10〜30である。このようなアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体としては、具体的には、例えば、「ペムレンTR−1」、「ペムレンTR−2」(いずれも、Lubrizol社製)等の市販品を用いることができる。
【0024】
上記成分(D)のアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の含有量は、皮膚に「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を付与することができるという観点から、皮膚化粧料全量中、その合計量で、好ましくは0.02〜0.6質量%であり、より好ましくは0.05〜0.4質量%、更に好ましくは0.06〜0.3質量%である。
【0025】
成分(D)のアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の含有量と、成分(B)の4−バニリルアルキルエーテル、ショウガオール、ジンゲロール及びジンゲロンから選ばれる温感剤の含有量との質量比(B/D)は、皮膚に「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を付与することができるという観点から、好ましくは0.002〜100であり、より好ましくは0.005〜50であり、更に好ましくは0.008〜8である。
【0026】
成分(D)のアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の含有量と、成分(C)の冷感剤の含有量との質量比(C/D)は、皮膚に「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を付与することができるという観点から、好ましくは0.002〜150であり、より好ましくは0.005〜70であり、更に好ましくは0.01〜20である。
【0027】
なお、成分(D)のアクリル酸・メタクリル酸共重合体によって、より有効にゲル相を形成させるには、成分(D)を成分(A)に分散した後に、適当な中和剤を添加するのがよい。中和剤を添加することによって、皮膚に「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を付与することができる適度な粘度を有するゲル相を形成することができる。このような中和剤としては、具体的には、例えば、無機アルカリ化合物や有機アルカリ化合物が挙げられる。より具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ化合物のほか、(モノ、ジ、トリ)エタノールアミン、(モノ、ジ、トリ)イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等の有機アルカリ化合物が挙げられる。なかでも、より良好なゲル相を形成させる点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールが好ましい。中和剤の含有量は、皮膚化粧料全量中、好ましくは0.004〜0.8質量%、より好ましくは0.01〜0.6質量%である。
【0028】
本発明の皮膚化粧料は、上記成分(A)〜(D)のほか、皮膚に「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を付与することができる適度な粘性を付与する点から、粘度調整剤を含有するのが好ましい。かかる粘度調整剤としては、具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カラギーナン、キサンタンガム、デンプン誘導体等の有機系高分子化合物、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、合成ケイ酸ナトリウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸ナトリウムマグネシウム等の無機系化合物が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。なかでも、良好な感覚変化をもたらす点から、カラギーナン、キサンタンガムが好ましい。粘度調整剤の含有量は、皮膚化粧料全量中、好ましくは0.001〜0.5質量%であり、より好ましくは0.005〜0.1質量%である。
【0029】
なお、本発明の皮膚化粧料は、皮膚化粧料全量中、水分の含有量が、好ましくは7質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに実質的に水分を含まないのが特に好ましい。実質的に含有しないとは、意図的に水を添加しないことをいい、製造上不可避的に混入してしまうものは含まれる。ただし、水を全く含まないことがより好ましい。このようにすることで、本発明の皮膚化粧料を使用する前に、成分(A)の多価アルコールが化粧料中の水分と反応するのを有効に防止するとともに、成分(D)の共重合体の親水基及び親油基がもたらす作用を効果的に発揮させて、各成分が均一に分散した化粧料を得ることができる。また、成分(A)による温感、続いて成分(C)による冷感、最後に成分(B)による温感と、順次温感及び冷感を皮膚に実感させることが可能である。
【0030】
本発明では、その使用目的に応じて、更に上記成分以外の成分、例えば、油剤、防腐剤、顔料、色素、キレート剤、界面活性剤、消炎剤、収斂剤、細胞賦活剤、痩身剤、美白剤、皮脂分泌抑制剤、除毛成分、抗酸化剤、香料等を適宜配合してもよい。
【0031】
本発明の皮膚化粧料は、良好な塗布性を付与する点、及び3段階に亘る感覚変化を良好に付与する点から、ジェル状であるのが望ましい。ジェル状であると、特に、洗い流しのマッサージパック料として用いるのに好適である。本発明の皮膚化粧料の粘度としては、主として用いる成分(D)の種類や含有量によっても変動し得るが、適度なジェル状を実現する点から、25℃、ローターNo.4、回転数12rpm(500〜50000mPa・sの粘度範囲のとき)、ないしは1.5rpm(50000〜300000mPa・sの粘度範囲のとき)の測定条件にて好ましくは500〜300000mPa・sであり、より好ましくは1000〜20000mPa・sである。
【0032】
なお、本発明の皮膚化粧料は、上述のとおり、上記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、皮膚化粧料全量中における各成分の含有量のパターン(含有量I、含有量II及び含有量III)は、下記表1に示すとおりであり、これらを各々どのように組み合わせてもよい。
【0033】
【表1】

【0034】
さらに、粘度調整剤、中和剤及び水を含有する場合、これらの皮膚化粧料全量中における含有量のパターン(含有量IV及び含有量V)は、下記表2に示すとおりであり、これらを各々どのように組み合わせてもよく、またこれらと上記表1に示す成分(A)〜(D)の含有量のパターン(含有量I、含有量II及び含有量III)とをどのように組み合わせてもよい。
【0035】
【表2】

【0036】
例えば、上記本発明の皮膚化粧料の好適な具体的態様の一例としては、
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)グリセリン及びポリエチレングリコールを含む多価アルコール 85〜99.97質量%(グリセリン:ポリエチレングリコール=80:20〜40:60)
(B)4−バニリルアルキルエーテル、ショウガオール及びジンゲロールを含む温感剤 0.001〜2質量%
(C)l−メントール、及び3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオールを含む冷感剤 0.001〜3質量%
(D)アルキル部位の炭素数が10〜30であるアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.02〜0.6質量%
を含有し、かつ
(X)キサンタンガム及びカラギーナンを含む粘度調整剤 0.005〜0.1質量%
(Y)水酸化ナトリウムである中和剤 0.01〜0.6質量%
(Z)水 4質量%以下
を含有する皮膚化粧料が挙げられる。
【0037】
なお、本発明の皮膚化粧料によりもたらされる「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を効果的に利用するには、シャワーを浴びた後や入浴後などの濡れた肌に用いるのがよい。これによって、3段階に亘る感覚変化のうち、1段階目の温感を瞬時にしかも効果的に作用させることができるのみならず、成分(D)に包埋された成分(C)の冷感剤が速やかに皮膚に作用して冷感を付与することができ、これによって「成分(A)による温感から成分(C)による冷感へ、続いて成分(B)による温感へ」という3段階に亘る感覚変化の相違を際立たせることが可能である。また、本発明の皮膚化粧料は、最終的には持続性の高い満足感のある温感をもたらすことができるので、シャワーのみの簡易な入浴や冬場の入浴に用いる化粧料として、特に好適である。すなわち、本発明の皮膚化粧料は、濡れた肌に塗布し、10分以内に水により洗い流す、好ましくは30秒〜5分間保持した後に、水により流すという使用方法にて用いることで、3段階に亘る感覚変化を効果的に作用させることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1〜9、比較例1〜4]
表3〜表4に示す処方に従って各化粧料を調製し、下記の方法により評価を行った。なお、表3〜表4に示す各成分の含有量は、各化粧料の全量を100質量%とした値であり、得られた粘度は25℃、ローターNo.4、回転数12rpmの測定条件にて3000〜6000mPa・sであった。結果を表3〜表4に示す。
【0040】
[評価]
5名の専門パネラーが入浴直後の身体が濡れている状態で、各化粧料をうなじから肩にかけて適用し、下記に示す各官能評価を行った。それぞれの評価基準は以下の通りであり、5名の評価点の平均値を算出し、各判定基準に従って評価した。
【0041】
《塗布直後の温感》
各化粧料を所定の部位に塗布した直後に感じられる温感、すなわち「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化のうちの1段階目の温感を評価した。なお、温感が強すぎると刺激感として感じ取られることとなり、弱すぎると温感として実感することができず、いずれの場合も2段階目の冷感を有効に感じ取ることができなくなるおそれがある。良好な温感を与えたものと評価できるのは、下記判定基準で3点以上5点未満(AAないしはA)と評価される必要がある。
【0042】
〔評価基準〕
6点:刺激感(ヒリヒリ感)を感じる
5点:強い温感を感じる
4点:温感を感じる
3点:やや温感を感じる
2点:わずかに温感を感じる
1点:温感を感じない
【0043】
〔判定基準〕
D :5点以上
AA:4点以上5点未満
A :3点以上4点未満
B :2点以上3点未満
C :2点未満
【0044】
《塗布後1分経過した時点での冷感》
各化粧料を所定の部位に塗布した直後から1分経過した時点で感じられる冷感、すなわち「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化のうちの2段階目の冷感を評価した。なお、清涼感が感じ取られるような冷感であるのが望ましく、冷感が強すぎると刺激感として感じ取られたり、皮膚にほてりが生じたりする。一方、冷感が弱すぎても3段階に亘る感覚変化が明確にならず、いずれの場合も1段階目の温感と3段階目の温感との間に有効に冷感を感じ取ることができなくなるおそれがある。良好な冷感を与えたものと評価できるのは、下記判定基準で3点以上6点未満(AA、A1、A2のいずれか)と評価される必要がある。
【0045】
〔評価基準〕
7点:刺激感を感じる
6点:清涼感を感じるが、ややほてりを感じる
5点:強い清涼感を感じる
4点:清涼感を感じる
3点:やや清涼感を感じる
2点:わずかに清涼感を感じる
1点:清涼感を感じない
【0046】
〔判定基準〕
D :6点以上
A2:5点以上6点未満
AA:4点以上5点未満
A1:3点以上4点未満
B :2点以上3点未満
C :2点未満
【0047】
《洗い流した後の温感》
各化粧料を所定の部位に塗布した直後から2分経過した時点で、化粧料を40℃のシャワーで10秒間洗い流し、洗い流した直後に感じられる温感、すなわち「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化のうちの3段階目の温感を評価した。なお、温感が強すぎると刺激感として感じ取られることとなり、弱すぎると温感として実感することができず、いずれも場合も2段階目の冷感に続く温感として有効に感じ取ることができなくなるおそれがある。良好な温感を与えたものと評価できるのは、下記判定基準で3点以上5点未満(AAないしはA)と評価される必要がある。
【0048】
〔評価基準〕
6点:刺激感(ヒリヒリ感)を感じる
5点:強い温感を感じる
4点:温感を感じる
3点:やや温感を感じる
2点:わずかに温感を感じる
1点:温感を感じない
【0049】
〔判定基準〕
D :5点以上
AA:4点以上5点未満
A :3点以上4点未満
B :2点以上3点未満
C :2点未満
【0050】
《温感→冷感→温感の感覚変化の有無》
上記の塗布直後の温感、塗布後1分経過した時点での冷感、及び洗い流した後の温感で感じ取られた感覚を総合評価し、「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を非常に良好に実感できたものを「有」、実感できなかったものを「無」として評価した。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
表3〜表4の結果によれば、実施例1〜9では、「温感から冷感へ、続いて再び温感へ」という3段階に亘る感覚変化を良好に実感できたことがわかる。
これに対し、比較例1では、3段階目の温感をもたらすべき成分(B)を含有しないため、温感から冷感へと2段階の感覚変化をもたらすに終わった。
【0054】
比較例2では、2段階目の冷感をもたらすべき成分(C)を含有しないため、1段階目の温感と3段階目の温感との間に、何ら冷感を感じ取ることができなかった。
【0055】
比較例3では、成分(B)の代わりに、刺激性の強い温感剤として知られる成分(B)’のトウガラシエキスを含有しているため、3段階目としての温感が過剰に増強されて、3段階に亘る感覚変化が実感できなかった。
【0056】
また、比較例4では、成分(D)の代わりに成分(D)’を含有するため、成分(C)を有効に包埋することができなかったと考えられ、成分(A)と同時に成分(C)も作用して、1段階目の温感を増強する作用のみを及ぼす結果となり、その後に続く冷感を実感できず、3段階目の温感を全く感知することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)多価アルコール
(B)4−バニリルアルキルエーテル、ショウガオール、ジンゲロール及びジンゲロンからなる群より選ばれる1種又は2種以上の温感剤
(C)冷感剤
(D)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
を含有する皮膚化粧料。
【請求項2】
成分(A)の1分子あたりの水酸基の数が、2〜4である請求項1に記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
成分(A)が、少なくともグリセリン及びポリエチレングリコールを含み、グリセリンの含有量とポリエチレングリコールの含有量との比(質量比)が、グリセリン:ポリエチレングリコール=90:10〜30:70である請求項1又は2に記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
成分(A)の含有量が、皮膚化粧料全量中、85〜99.97質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項5】
ポリエチレングリコールのGPCによる平均分子量が、200〜800である請求項3又は4に記載の皮膚化粧料。
【請求項6】
成分(C)が、logPが2〜3.5の環式モノテルペン構造を有する冷感剤である請求項1〜5のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項7】
成分(C)が、l−メントール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、カンファー及びチモールからなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項6に記載の皮膚化粧料。
【請求項8】
成分(C)の含有量が、皮膚化粧料全量中、0.001〜3質量%である請求項1〜7のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項9】
成分(B)の含有量が、皮膚化粧料全量中、0.001〜2質量%である請求項1〜8のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項10】
成分(D)の含有量が、皮膚化粧料全量中0.02〜0.6質量%である請求項1〜9のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項11】
成分(D)の含有量と成分(B)の含有量との質量比(B/D)が、0.002〜100である請求項1〜10のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項12】
成分(D)の含有量と成分(C)の含有量との質量比(C/D)が、0.002〜150である請求項1〜11のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項13】
更に、水を7質量%以下含有する請求項1〜12のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項14】
更に、粘度調整剤を含有する請求項1〜13のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項15】
粘度調整剤が、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カラギーナン、キサンタンガム、デンプン誘導体、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、合成ケイ酸ナトリウム、合成ケイ酸アルミニウム、及び合成ケイ酸ナトリウムマグネシウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項14に記載の皮膚化粧料。
【請求項16】
粘度調整剤の含有量が、皮膚化粧料全量中、0.001〜0.5質量%である請求項14又は15に記載の皮膚化粧料。
【請求項17】
更に、中和剤を含有する請求項1〜16のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項18】
中和剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、(モノ、ジ、トリ)エタノールアミン、(モノ、ジ、トリ)イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上である請求項17に記載の皮膚化粧料。
【請求項19】
中和剤の含有量が、皮膚化粧料全量中、0.004〜0.8質量%である請求項17又は18に記載の皮膚化粧料。
【請求項20】
濡れた肌に塗付して用いる請求項1〜19のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項21】
粘度が、25℃にて500〜300000mPa・sである請求項1〜20のいずれかに記載の皮膚化粧料。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の皮膚化粧料を濡れた肌に塗布し、10分間以内に水により流すことを特徴とする皮膚化粧料の使用方法。

【公開番号】特開2012−153675(P2012−153675A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16133(P2011−16133)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】