説明

皮膚外用剤

【課題】有効成分として抗老化作用を発揮する化合物を水溶化させた状態で含有し、高い保存性及び高い皮膚浸透性を示す皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有する皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プテロスチルベンを有効成分として含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化の原因は多様であり、紫外線、乾燥、外的因子、加齢などが挙げられる。近年、皮膚の老化を誘導する因子として、マトリックスメタロプロテアーゼの関与が指摘されている。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPとも称する)はタンパク質分解酵素であり、細胞外マトリックスの構成タンパク質の分解及び再構築に関与している。MMPの1種であるマトリックスメタロプロテアーゼ−2(MMP−2)(matrix metallopeptidase 2 ,gelatinase A, 72kDa gelatinase, 72kDa type IV collagenase)は、細胞外マトリックスのゼラチン、皮膚基底膜の主成分である4型コラーゲンを含む各種コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びエラスチンなどの多様な基質を切断し、皮膚の老化に関与することが知られている。従って、MMP−2活性の阻害は、皮膚の老化を防止・改善するために重要であると考えられる。
【0003】
通常MMP2はPro体で産生されるが、コラーゲン等の分解活性を持たない。しかし、UV刺激などによって産生されるTNFがNF−κB経路を活性化することで、Pro体を活性化体に変化させることが示唆されている(非特許文献1)。また、NF−κB自体の活性を押さえることが皮膚の状態を若返らせることができることが実験的に証明されており(非特許文献2)、これはMMP−2の活性化を含む老化による変化をNF−κB抑制により改善していることが示唆されている。
【0004】
一方、紫外線を照射することにより一重項酸素が発生することが知られている。一重項酸素は、生体分子と反応することで組織の損傷等の悪影響を及ぼし、その結果として皮膚の老化を促進するといわれている。
【0005】
そのため、生体内で発生した一重項酸素を除去する物質の探索が行われてきた。一重項酸素を除去する物質として、カロテノイド系の化合物が有用とされている。しかし、完全に除去しきれない一重項酸素は、生体内でフリーラジカルに変換され、更に生体物質を破壊し、皮膚老化にも大きな影響を及ぼす。このフリーラジカルを除去するにはポリフェノール系の化合物が有用であるといわれている。
【0006】
ポリフェノール系の化合物であるヒドロキシスチルベンは、抗酸化物質として知られている。例えば、特許文献1には、レスベラトロール(5−パラヒドロキシスチリルレゾルシノール)及びカゼインを含む複合体が記載されており、これを医薬品、化粧品、食品又は飼料用サプリメントなどに使用することが記載されている。さらに、特許文献2には、レスベラトロールを有効成分として含有する、MMP−2阻害剤が記載されている。特許文献2には、カゼインやゼラチンなどのタンパク質粒子に内包させたレスベラトロールをMMP−2阻害剤として使用することが記載されている。
しかし、レスベラトロール自体は、保存性が低く分解により着色するという問題や、水溶性が低いという問題、さらに皮膚浸透性が低いという問題などがあった。
【0007】
一方、プテロスチルベン[4−[(E)‐2‐(3,5−ジメトキシフェニル)ビニル]フェノール、4−[(E)‐3,5−ジメトキシスチリル]フェノール、(E)‐3,5−ジメトキ‐4’−ヒドロキシスチルベン、又は(E)−3’,5’‐ジメトキシスチルベン‐4‐オールとも称する]は、レスベラトロールと同様に抗酸化活性を有することが知られている。また、非特許文献3には、プテロスチルベンが、NF−κBの活性化を阻害し、これによりマクロファージにおける炎症性のiNOS及びCOX−2遺伝子発現が抑制されることが記載されている。
しかし、プテロスチルベンが、抗老化を目的として皮膚外用剤に配合された例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2010−500303号公報
【特許文献2】特開2011−46660号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J Cell Sci. 2001 Jan;114(Pt 1):131−139
【非特許文献2】Genes Dev. 2007 Dec 15;21(24):3244−57. Epub 2007 Nov 30
【非特許文献3】Min−Hsiung Pan, et al, J. Agric. Food Chem 2008. 56. 7502−7509
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、有効成分として抗老化作用を発揮する化合物を水溶化させた状態で含有し、高い保存性及び高い皮膚浸透性を示す皮膚外用剤を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、プテロスチルベン及びタンパク質粒子を混在させることによって、プテロスチルベンを水溶化できると同時に、得られたプテロスチルベン及びタンパク質粒子を含有する溶液が、高い保存性及び高い皮膚浸透性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明によれば、タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有する皮膚外用剤が提供される。
好ましくは、タンパク質粒子の平均粒子サイズは10〜1000nmである。
好ましくは、本発明の皮膚外用剤は、タンパク質の質量に対して0.1〜100質量%のプテロスチルベンを含有する。
好ましくは、タンパク質はコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0013】
好ましくは、本発明の皮膚外用剤は、抗老化剤である。
好ましくは、本発明の皮膚外用剤は、抗しわ剤である。
好ましくは、本発明の皮膚外用剤は、NF−κB抑制剤、又はMMP−2抑制剤である。
【0014】
更に本発明によれば、タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有する抗しわ剤が提供される。
更に本発明によれば、タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有するNF−κB抑制剤が提供される。
更に本発明によれば、タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有するMMP−2抑制剤が提供される。
【0015】
更に本発明によれば、タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有する皮膚外用剤を対象者に投与することを含む、老化を抑制する方法が提供される。
更に本発明によれば、タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有する皮膚外用剤を対象者に投与することを含む、しわを抑制する方法が提供される。
更に本発明によれば、タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有する皮膚外用剤を対象者に投与することを含む、NF−κBを抑制する方法が提供される。
更に本発明によれば、タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有する皮膚外用剤を対象者に投与することを含む、MMP−2を抑制する方法が提供される。
【0016】
更に本発明によれば、皮膚外用剤の製造のための、タンパク質粒子及びプテロスチルベンの使用が提供される。
更に本発明によれば、抗老化剤の製造のための、タンパク質粒子及びプテロスチルベンの使用が提供される。
更に本発明によれば、抗しわ剤の製造のための、タンパク質粒子及びプテロスチルベンの使用が提供される。
更に本発明によれば、NF−κB抑制剤の製造のための、タンパク質粒子及びプテロスチルベンの使用が提供される。
更に本発明によれば、MMP−2抑制剤の製造のための、タンパク質粒子に及びプテロスチルベンの使用が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の皮膚外用剤においては、プテロスチルベン及びタンパク質粒子を含むことにより、プテロスチルベンを水溶化することができる。本発明の皮膚外用剤は、長期間保存しても着色せず、熱やpHに対して高い安定性を示す。また、本発明の皮膚外用剤は、高い皮膚浸透性を示し、皮膚外用剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】レスベラトロール内包カゼイン水溶液及びプテロスチルベン内包カゼイン水溶液について皮膚浸透性を評価した結果を示す図である。
【図2】レスベラトロール内包カゼイン水溶液及びプテロスチルベン内包カゼイン水溶液についての着色試験の結果を示す図である。
【図3】レスベラトロール内包カゼイン水溶液の経時安定性を調べた結果を示す図である。
【図4】プテロスチルベン内包カゼイン水溶液の経時安定性を調べた結果を示す図である。
【図5】レスベラトロールとプテロスチルベンを用いたNF−κB阻害試験の結果を示す図である。
【図6】レスベラトロールとプテロスチルベンを用いたMMP−2阻害試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。
本発明の皮膚外用剤は、抗老化剤として使用することができる。
さらに、本発明の抗老化剤は、抗しわ剤、NF−κB抑制剤又はMMP−2抑制剤として使用することができる。以下、本明細書において「抗老化剤」と称する場合には、本発明の抗しわ剤、NF−κB抑制剤又はMMP−2抑制剤をも包含する意味で使用するものとする。
本発明の皮膚外用剤は、タンパク質粒子に内包されているプテロスチルベンを有効成分として含有する。プテロスチルベンは、下記の構造を有する。
【0020】
【化1】

【0021】
プテロスチルベンは、Sabinsa社から商業的に得ることができ、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社又はSigma−Aldrich社から粗製形で得ることができる。
【0022】
本発明で用いるプテロスチルベンは、NF−κB及びMMP−2を抑制することができ、これにより抗老化作用を発揮することができる。
【0023】
本発明の皮膚外用剤は、プテロスチルベン及びタンパク質粒子を含有する。
本発明の抗老化剤は、0.01〜50質量%のタンパク質粒子を含有することが好ましく、0.1〜10質量%のタンパク質粒子を含有することがさらに好ましい。プテロスチルベンは、タンパク質の質量に対して、0.1〜100質量%が好ましく、0.1〜50質量%がさらに好ましい。
【0024】
本発明において、プテロスチルベンは、タンパク質粒子の形成時に添加してもよいし、タンパク質粒子の作成後に添加してもよい。
【0025】
本発明で用いるタンパク質粒子の平均粒子サイズは、通常は1〜1000nmであり、好ましくは10〜1000nmであり、より好ましくは10〜500nmであり、より好ましくは10〜250nmであり、よりさらに好ましくは10〜100nmであり、特に好ましくは20〜40nmである。
【0026】
本発明で用いるタンパク質粒子の平均粒径は、市販の粒度分布計等で測定することが出来る。
粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0027】
本発明のタンパク質粒子の粒径測定では、粒径範囲及び測定の容易さから、動的光散乱法適応することが好ましい。動的光散乱法を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられる。
【0028】
本発明で用いるタンパク質の種類は特に限定されないが、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパクが好ましく、分子量1万から100万のタンパク質を用いることが好ましい。
タンパク質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。
また、タンパク質の由来は特に限定するものではなく、牛、豚、魚、植物および遺伝子組み換え体のいずれも用いることができる。
【0029】
遺伝子組み換えゼラチンとしては、例えばEP1014176A2号、米国特許6992172号に記載のものを用いることができるがこれらに限定されるものではない。
好ましくは、カゼイン、酸処理ゼラチン、コラーゲン、又はアルブミンであり、最も好ましくはカゼイン、又は酸処理ゼラチンである。
本発明でカゼインを用いる場合、カゼインの由来は特に限定されず、乳由来であっても、豆由来であってもよく、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼインおよびそれらの混合物を使用することができる。カゼインは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明に用いられるタンパク質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
本発明では、タンパク質粒子の形成中及び/又は形成後にタンパク質を架橋処理することができる。上記した架橋処理は、酵素を用いることができる。酵素としては、タンパクの架橋作用が知られているものであれば特に制限されず、その中で好ましいものはトランスグルタミナーゼである。
【0032】
トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、遺伝子組み換え体を用いることができる。具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼ、ヒト由来リコンビナントトランスグルタミナーゼなどが挙げられる。
【0033】
本発明において架橋処理のために用いられる酵素の量は、タンパク質の種類に応じて適宜設定することが出来るが、標準的には、タンパク質の質量に対して、0.1〜100質量%程度を添加することができ、好ましくは、1〜50質量%を添加することができる。
【0034】
酵素による架橋反応の時間は、タンパク質の種類、タンパク質粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、1〜72時間であればよく、好ましくは、2〜24時間であればよい。
【0035】
酵素による架橋反応の温度は、タンパク質の種類、タンパク質粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、0〜80℃であればよく、好ましくは、25〜60℃であればよい。
【0036】
本発明に用いられる酵素は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
本発明で用いるタンパク質粒子は、特許文献特開平6−79168号公報、又はC.Coester著、ジャーナル・ミクロカプスレーション、2000年、17巻、p.187−193に記載の方法に準じて作製することができるが、架橋方法としてグルタルアルデヒドの代わりに酵素を用いることが好ましい。
【0038】
また、本発明においては、酵素架橋処理を有機溶媒中で行うことが好ましい。ここで用いる有機溶媒は一般的な皮膚外用剤に添加される溶媒、例えばエタノール、イソプロパノール、ブチレングリコール、グリセロールなどの水溶性有機溶媒が好ましい。
さらに、本発明においては、架橋処理後に有機溶媒を留去し、水分散することが好ましい。有機溶媒を留去前に水を加えてもよく、留去後に水を加えても良い。
【0039】
本発明の皮膚外用剤には、脂質(リン脂質など)、アニオン性多糖、カチオン性多糖、アニオン性タンパク質、カチオンタンパク質、又はシクロデキストリンから選択される1種以上の成分を添加することもできる。脂質(リン脂質など)、アニオン性多糖、カチオン性多糖、アニオン性タンパク質、カチオンタンパク質、及びシクロデキストリンの添加量は特に限定されないが、一般的にはタンパク質の質量に対して0.1〜100質量%の量で添加することができる。本発明の皮膚外用剤においては、上記成分とタンパク質の比を変えることよって、徐放速度を調整することができる。
【0040】
本発明に用いることができるリン脂質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンなどが挙げられる。
【0041】
本発明に用いることができるアニオン性多糖とはカルボキシル基、硫酸基又はリン酸基等の酸性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、フコイダン、アガロペクチン、ポルフィラン、カラヤガム、ジェランガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸類等が挙げられる。
【0042】
本発明に用いることができるカチオン性多糖とは、アミノ基等の塩基性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。キチン、キトサンなどのグルコサミンやガラクトサミンを構成単糖として含むものなどが挙げられる。
【0043】
本発明に用いることができるアニオン性タンパク質とは等電点が生理的pHよりも塩基性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リゾチーム、チトクロムC、リボヌクレアーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、α−キモトリプシンなどが挙げられる。
【0044】
本発明に用いられるカチオンタンパク質とは等電点が生理的pHよりも酸性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリリジン、ポリアルギニン、ヒストン、プロタミン、オバルブミンなどが挙げられる。
【0045】
本発明のタンパク質粒子としては、カゼインを用いることが好ましく、プテロスチルベンをカゼイン粒子に内包させる形態が好ましい。プテロスチルベンを内包したカゼイン粒子は、生体内への吸収性が高い。
【0046】
プテロスチルベンを内包するタンパク質粒子は、例えば、特開2008−179551号等に記載の公知の方法を用いて作製することができる。
具体的には、カゼインを塩基性水性媒体に混合し、酸性水性媒体中に注入する方法と、カゼインを塩基性水性媒体に混合し、攪拌しながら、pHを下降させる方法が挙げられる。
【0047】
本発明の一例としては、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼイン粒子を用いることができる。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合する工程;
(b)工程(a)で得た溶液にプテロスチルベンを添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液をpH3.5〜7.5の酸性水性媒体に注入する工程;
【0048】
本発明の別の例としては、下記の工程(a)から(c)によって作製されるカゼイン粒子を用いることができる。
(a)カゼインをpH8以上11未満の塩基性水性媒体に混合する工程;
(b)工程(a)で得た溶液にプテロスチルベンを添加する工程;及び
(c)工程(b)で得た溶液のpHを等電点からpH1以上離れたpHまで下降させる工程;
【0049】
上記において、プテロスチルベンは水を含まない系で分散してもよく、分散後に水性媒体を添加しても分散できる。即ち、上記において、工程(b)を工程(a)の前に行ってもよい。
【0050】
本発明においては、所望のサイズのカゼイン粒子を作製できる。また、疎水性の活性成分とカゼイン疎水性部分の相互作用を利用して、カゼイン粒子内に活性成分を内包できる。さらに、これらの粒子は水溶液中で安定に存在することが見出された。
【0051】
カゼインを塩基性水性媒体に混合し、酸性水性媒体中に注入する方法としては、シリンジを用いて行うことが簡便で好ましいが、注入速度、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。一般的には、注入速度は、1〜100mL/minで注入することができる。
【0052】
カロテノイド系化合物とは、天然に存在する黄色から赤のテルペノイド類の色素で、植物類、藻類、及びバクテリアに見つけることができる。カロテノイド系化合物としては、炭化水素類(カロチン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。それらとして、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8´−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12´−アポ´−カロテナール、α−カロチン、β−カロチン、”カロチン”(α−及びβ−カロチン類の混合物)、γ−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。カロテノイド系化合物の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばラセミ混合物である。カロチン類は一般に植物素材から抽出する。
【0053】
本発明では、カロテノイド系の化合物として、アスタキサンチン及びリコピンの少なくとも1つを含有することが好ましく、アスタキサンチン及びリコピンの両方を含むことがより好ましい。含有量として、タンパク質の質量に対して0.1〜100質量%のカロテノイド系化合物を含有することが好ましい。アスタキサンチン及びリコピンの両方を含む場合、その比率は、アスタキサンチン100質量部に対して、リコピン0.1〜1000質量部を含有することが好ましい。アスタキサンチン及びリコピンを特定の量で含有することにより、アスタキサンチン及びリコピンの分解、及び、リコピン結晶の系中における析出が効果的に抑制される。その結果、本発明の組成物は優れた保存安定性を有するものとなる。
【0054】
リコピン(場合によって、「リコペン(lycopene)」と称される場合がある)は、化学式C4056(分子量536.87)のカロテノイドであり、カロテノイドの一種カロテン類に属する474nm(アセトン)に吸収極大を示す赤色色素である。
リコピンには、分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在し、例えば、全trans−、9−cis体と13−cis体などが挙げられるが、本発明においては、これらのいずれであってもよい。
【0055】
リコピンはそれを含有する天然物から分離・抽出されたリコピン含有オイルやリコピン含有ペーストとして、本発明の組成物に含まれていてもよい。
リコピンは、天然においてはトマト、柿、スイカ、ピンクグレープフルーツに含まれており、上記のリコピン含有オイルはこれらの天然物から分離・抽出されたものであってもよい。製品での形態は、オイルタイプ、乳化液タイプ、ペーストタイプ、粉末タイプの4種類が知られている。
また、本発明で用いられるリコピンは、前記抽出物、また、更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また、合成品であってもよい。
【0056】
本発明におけるリコピンの特に好ましい形態としては、トマトパルプから抽出された脂溶性抽出物である。該トマトパルプから抽出された脂溶性抽出物は、組成物中における安定性、品質、生産性の点から特に好ましい。
ここで、トマトパルプから抽出された脂溶性抽出物とは、トマトを粉砕して得られた粉砕物を遠視分離して得られたパルプ状の固形物から、油性溶剤を用いて抽出された抽出物を意味する。
脂溶性抽出物であるリコピンとしては、リコピン含有オイル又はペーストとして広く市販されているトマト抽出物を用いることができ、例えば、サンブライト(株)より販売されているLyc−O−Mato 15%、Lyc−O−Mato 6%、協和発酵工業(株)より販売されているリコピン18等が挙げられる。
【0057】
塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0〜80℃にすることができ、好ましくは、25〜70℃にすることができる。酸性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0〜80℃にすることができ、好ましくは、25〜60℃にすることができる。
攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100〜3000rpmにすることができ、好ましくは、200〜2000rpmである。
【0058】
カゼインを塩基性水性媒体に混合し、攪拌しながら、pHを下降させる方法としては、酸を滴下するのが簡便で好ましいが、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。
塩基性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0〜80℃にすることができ、好ましくは、25〜70℃にすることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100〜3000rpmにすることができ、好ましくは、200〜2000rpmにすることができる。
【0059】
カゼイン粒子を作製するために用いられる水性媒体には、有機酸または有機塩基の水溶液、無機酸または無機塩基の水溶液、又は緩衝液を挙げることができる。具体的には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、フタル酸、トリフルオロ酢酸、モルホリノエタンスルホン酸、2−〔4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル〕エタンスルホン酸のような有機酸;トリス(ヒドロキシメチル)、アミノメタン、アンモニアのような有機塩基;塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸;燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムのような無機塩基を用いた水溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
上述した水性媒体の濃度は、約10mMから約1Mが好ましい。より好ましくは、約20mMから約200mMである。
塩基性水性媒体のpHは、8以上が好ましく、8〜12が好ましい。より好ましくはpH9〜11である。pHが高すぎると加水分解の懸念や取り扱い上の危険性があるため、上述の範囲が好ましい。
【0061】
本発明において、カゼインをpH8以上の塩基性水性媒体に混合させる温度は、0〜80℃が好ましく、10〜60℃が好ましい。より好ましくは、20〜40℃である。
本発明に用いる酸性水性媒体のpHは、急激なpH変化を防ぐ点からpH3.5〜7.5であることが好ましく、pH5〜6であることがより好ましい。
【0062】
本発明の皮膚外用剤には、更にカロテノイド系の化合物を含むことができる。カロテノイド系化合物及びプテロスチルベンを総合的に併用し、補う構成をとることで皮膚中の抗酸化ネットワークを強化し、本発明の効果を助長することが期待される。
【0063】
本発明の皮膚外用剤は、皮膚などの老化を抑制することができる。本発明の皮膚外用剤は、皮膚に適用した場合の安全性・浸透性に優れているため、皮膚外用剤として有用である。また、本発明の皮膚外用剤は、抗しわ剤、NF−κB抑制剤又はMMP−2抑制剤として使用することができる。例えば、本発明の皮膚外用剤は、化粧料に配合して用いることもできる。化粧料には、本発明の皮膚外用剤のみを配合してもよいし、その他の有効成分を組み合わせて配合してもよい。
【0064】
本発明の皮膚外用剤はさらに、添加物を含むことができる。添加物としては特に限定することはないが、抗酸化成分、活性酸素除去剤、抗炎症剤、アンチエイジング剤、コラーゲン合成促進剤、抗しわ剤、ビタミン剤、ミネラル、アミノ酸類、抗菌剤、紫外線吸収剤、保湿剤、柔軟剤、経皮吸収促進剤、無痛化剤、防腐剤、酸化防止剤、色素剤、増粘剤、香料、又はpH調整剤から選択される1種以上のものを使用することができる。
【0065】
本発明の抗老化剤の剤型は特に限定されないが、例えば、液剤、湿布剤、塗布剤、ゲル剤、軟膏剤、クリーム剤、エアゾール剤、ローション剤、エッセンス、粉剤、泡剤、化粧水、ボディーソープ、石鹸、粧料などを挙げることができる。軟膏剤、クリーム剤などの剤型で使用する場合には、必要に応じて、懸濁剤又は安定剤などを添加してもよい。
【0066】
本発明の抗老化剤の投与方法としては、経皮・経粘膜投与が挙げられる。
【0067】
本発明の皮膚外用剤の投与量は、使用者の体重、疾患の状態などに応じて適宜設定することができるが、一般的には、1回の投与につき、有効成分であるプテロスチルベンの投与量として1μg〜50mg/cm程度を投与することができ、好ましくは2.5μg〜10mg/cm程度を投与することができる。
【0068】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
実施例1:プテロスチルベンを内包するカゼイン粒子の調製
プテロスチルベンを、1,3−ブチレングリコールで5%(w/w)となるように溶解し、プテロスチルベン溶液を得た。
同様に、レスベラトロールを1,3−ブチレングリコールで5%(w/w)となるように溶解し、レスベラトロール溶液を得た。
カゼインを、同量の1,3−ブチレングリコール中に分散し、pH11に調整した1%(w/w) 約50mMクエン酸Naを添加して、カゼイン分散液を得た。このカゼインナノ分散液のpHは7.2であった。
【0070】
上記で得られたカゼイン分散液に、プテロスチルベン溶液又はレスベラトロール溶液を1/10量(質量比)添加して、マグネティックスターラーでよく攪拌・分散した。得られた溶液はカゼインを0.9質量%、プテロスチルベン又はレスベラトロールを約0.03質量%含む溶液であった。その後、0.22μm程度のフィルターに供し、より透明で均一なプテロスチルベン又はレスベラトロールを内包するカゼイン粒子含有分散物を得た。得られたカゼイン粒子含有分散物の作製直後の外観は、均一透明であり、平均粒子径は27.5nmであった。なお、レスベラトロールの0.03質量%含有する水溶液では、作製直後で既に白濁(700nmにおける吸光度<O.D.700nm>が0.1以上)であった。
【0071】
なおカゼイン粒子の平均粒径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))を用いて測定した値であり、具体的には、以下のよう計測した値を採用する。即ち、粒径の測定方法は、試料に含まれるカゼインの濃度が0.1質量%になるように純水で希釈を行い、石英セルを用いて測定を行う。粒径は、分散媒屈折率として1.333(純水)、分散媒の粘度として純水の粘度を設定した時の体積平均径として求めた。作製直後のプテロスチルベンを内包するカゼイン粒子は、安定に水溶化できた。
【0072】
実施例2:内包率試験
実施例1で作成したレスベラトロール(Res)およびプテロスチルベン(PTER)内包カゼイン溶液を1g量りとり超遠心分離(HITACHI 100,000G、60分間)した。内包済みのカゼインを沈殿させた上澄みをHPLCで定量することにより水溶液中の未結合分を定量した。処方適用分との比率を計算し、漏出率(%)を表1に示す。結合率は、100−漏出率(%)で計算した。
HPLC条件
カラム:C18 5μm 4.6mm×250mm
流量:1ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:310nm
展開液:アセトニトリル/水=20/80(容量比。酢酸0.1容量(体積)%、トリエタノールアミン0.1容量(体積)%を含む)
【0073】
【表1】

【0074】
実施例3:浸透速度解析(皮膚浸透性の評価)
皮膚浸透性の評価は、皮膚透過試験によって行った。
対象の皮膚はヘアレスラット(8週齢)を購入して使用した(石川実験動物、埼玉)。27mm径のバイオプシーでヘアレスラット腹部を円形に打ち抜いたものをフランツセル(Hanson Research)に固定した。PBSで1時間還流した後、レセプター液を、7mLの30v/v%エタノール配合PBSに置換した。実施例1で作成したプテロスチルベン内包カゼイン粒子及びレスベラトロール内包カゼイン粒子0.9mLに10倍濃度のPBS(pH 7.2−7.4)0.1mlを添加した製剤1mLをそれぞれドナー液に添加した。製剤はPBSでドナーとレセプター液の塩強度を調整したものを用いた。
【0075】
レセプター液を攪拌しながら、ウォータージャケットを用いて32℃に保ち、経時的にレセプター液を回収した。このレセプター液を下記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析し透過したプテロスチルベンおよびレスベラトロールを定量した。
【0076】
試験時においてネガティブコントロールとしてPBS液、対照として一般的な可溶化剤であるPEG40硬化ひまし油(HCO−40;ニッコーケミカル)でプテロスチルベンおよびレスベラトロールを可溶化した溶液(以下、HCO−40可溶化物と称する)を用いた。HCO−40可溶化物は約0.03質量%のプテロスチルベンおよびレスベラトロールを含むように調整した。
HPLC条件
カラム:C18 5μm 4.6mm×250mm
流量:1ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:310nm
展開液:アセトニトリル/水=20/80(容量比。酢酸0.1容量(体積)%、トリエタノールアミン0.1容量(体積)%を含む)
【0077】
それぞれの製剤における皮膚透過率は、以下の皮膚透過計数(P値)によって行った。P値の計算式は以下のとおりである。なお計算式において、D=拡散係数、K=分配係数、C=薬物濃度、L=膜厚、J=フラックス、P=透過係数、をそれぞれ示す。レセプター液中のプテロスチルベンおよびレスベラトロールの経時による浸透結果を、図1に示す。
【0078】
【化2】

【0079】
図1に示されるように、プテロスチルベン内包カゼインによる水系皮膚外用剤は比較例HCO-40可溶化物に比べ著しく皮膚浸透速度が上昇した。また、同じくカゼインに内包したレスベラトロール内包カゼインと比べても、極めて高い皮膚浸透性を有することが分かる。
【0080】
実施例4:着色試験(加速経時保存→着色を吸光度で比較)
実施例1で作成したレスベラトロール(RES)及びプテロスチルベン(PTER)内包カゼイン液のpH を、皮膚外用剤として一般的に好まれるpH であるpH6、pH7又はpH8に6N塩酸および8N水酸化ナトリウムを用いることで変化させて50℃3ヶ月で着色具合を観察した。着色具合は吸収波長400nm吸光度変化を経時的に測定した。結果を図2に示す。
【0081】
皮膚外用剤として好まれるpH6−8の範囲内ではレスベラトロール内包カゼイン水溶液はpHが高くなるほどに着色が進み、商品として不適切であった。着色が肉眼でもわかるOD400nm=0.1以上への到達時間を近似曲線から計算した値を表2に示す。表2の結果からもプテロスチルベン内包カゼインは皮膚外用剤として好ましいことがわかる。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例5:安定性試験(HPLC)
実施例1で作成したレスベラトロール内包カゼイン溶液およびプテロスチルベン内包カゼイン溶液を各温度の恒温槽で36日間経時した。この時の分解を上記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析し定量した。結果を図5及び図6に示す。
図3及び図4に示す結果の通り、レスベラトロール内包カゼイン溶液と比較して、プテロスチルベン内包カゼイン溶液は高い安定性を示した。
【0084】
実施例6:NF−κB核移行試験
NF−κBは常に産生され、すぐに分解される。しかし、紫外線などの刺激がきた場合、速やかに核に移行し機能することが知られている。本実施例の核移行試験はウエスタンブロット(以下WB)により解析した。
線維芽細胞をT25(培養面積25cm)に100×10の細胞を播種して、一日FBS無しに順可した。その後、最終濃度10uMになるようにレスベラトロールおよびプテロスチルベンをDMSOで溶解して培養液に添加して3時間前培養した。PBSで2回洗浄した。その後50ng/mlのTNFで45分間刺激したのちトリプシンを作用させて細胞を回収した。トリプシンを遠心で除き、その後PBSで2回洗浄した。そのサンプルを核タンパク質抽出試薬であるNucBuster(Novagen)で分画し、核分画と細胞質分画に分けた。方法は製品の説明書に従った。分画したタンパク質をBradford法(DOJINDO)を用いて定量して、各4μg分づつ当量のSDS Buffer(BIO−RAD)で熱処理し、変性させた後SDS−PAGE(ATTO)により分画し、PVDFメンブレン(ATTO)に30分間転写した。
【0085】
転写後、30分間、5%スキムミルク(和光純薬)でブロッキングした後、0.1%Tween配合PBS(以下TPBS)で10分間3回洗浄した。すぐに、TPBSにPrimary antibody: NF− κ B p65 Rabbit Monoclonal Antibody (EPITOMICS)を1/5000希釈して、抗体反応を室温1時間実施した。その後、TPBSで10分間3回洗浄した。さらに、TPBSにSecondary antibody:Anti−Rabbit IgG (whole molecule)-Peroxidase antibody produced in goat(sigma )を1/5000倍希釈した液中で30分間室温で反応させた。TPBSで10分間3回洗浄したのち、化学発光検出試薬であるELC Plus(GEヘルスケア)中で5分間反応させて、LAS−3000(富士フイルム)で1分間露光して検出した。なお、画像解析にはMulti Gage3.0(富士フイルム)を利用して定量化した。結果を図5に示す。
【0086】
図5に示す結果から分かるように、レスベラトロールおよびプテロスチルベンはそれぞれTNF刺激におけるNF−κBの各蓄積量を減らすことができた。さらに、この効果はレスベラトロールに比べてプテロスチルベンの方が高い。
【0087】
実施例7:MMP2活性化阻害試験
本実施例のMMP2活性化試験はウエスタンブロット(以下WB)により解析した。
培養後の線維芽細胞を2.6×10の濃度に懸濁した液1.95mlに対してCellmatrix(新田ゼラチン)を2.4ml,再構成緩衝液(新田ゼラチン)を0.3ml、10×MEM(新田ゼラチン)を0.3mlの割合で低温条件下で攪拌した。これを48穴プレート(コーニング)に1.6mlずつ分注した。37℃で30分間静置することでコラーゲンラティスモデルを作成した。ゲルが固まった後、一日FBS無しに培地にて馴化した後、5ng/mlのTNFで45分間刺激した後、最終濃度10μMになるようにレスベラトロールおよびプテロスチルベンをDMSOで溶解して培養液に添加して68時間培養した。68時間後、上澄みを回収した。回収した上澄み体積に対して1/10当量のゼラチンアフィニティービーズ(GEヘルスケア)を供して、1時間攪拌した。その後、12000回転、10分間でビーズを沈殿させて、上澄みを破棄して、さらに洗浄液500ulを加えて再度攪拌した。この操作を3回繰り返し、セルマトリックス成分を除去、活性化型MMP−2を濃縮した。最後に1×SDS Buffer(BIO−Rad)を上澄みの1/10当量加えて熱変性し、遠心して上澄みをサンプルとした。分画したサンプルをBradford法(DOJINDO)を用いて定量して、各0.1μg分ずつSDS−PAGE(ATTO)により90分間分画し、PVDFメンブレン(ATTO)に30分間転写した。
【0088】
転写後、30分間、5%スキムミルク(和光純薬)でブロッキングした後、0.1%Tween配合PBS(以下TPBS)で10分間3回洗浄した。すぐに、TPBSにPrimary antibody:抗MMP−2抗体(アブカム社)を1/5000希釈して、抗体反応を室温1時間実施した。その後、TPBSで10分間3回洗浄した。さらに、TPBSにSecondary antibody: Anti−Rabbit IgG (whole molecule)-Peroxidase antibody produced in goat(sigma )を1/5000倍希釈した液中で30分間室温で反応させた。TPBSで10分間3回洗浄したのち、化学発光検出試薬であるELC Plus(GEヘルスケア)中で5分間反応させて、LAS−3000(富士フイルム)で1分間露光して検出した。なお、画像解析にはMulti Gage3.0(富士フイルム)を利用して定量化した。結果を図6に示す。
【0089】
図6に示す結果から分かるように、レスベラトロールおよびプテロスチルベンはそれぞれTNF刺激におけるMMP―2の活性化量を減らすことができた。
【0090】
【表3】

【0091】
実施例14:抗シワ乳液
(成分) (%)
プテロスチルベン内包カゼイン 1.3
スクワラン 8.0
ホホバ油 7.0
パラアミノ安息香酸グリセリル 1.0
リン酸アスコルビルマグネシウム 0.5
セチルアルコール 1.5
グリセリンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 3.0
ポリオキシエチレンソオルビタンモノオレート 2.0
1,3−ブチレングリコール 1.0
グリセリン 2.0
1,2‐ペンタンジオール 3.0
コラーゲン 1.0
クエン酸ナトリウム 1.0
香料 適量
精製水 残量
【0092】
実施例15:抗シワクリーム
(成分) (%)
プテロスチルベン内包カゼイン 1.5
セトステアリルアルコール 3.0
グリセリン脂肪酸エステル 2.0
モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 1.0
モノステアリン酸ソルビタン 1.0
N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム 0.5
ワセリン 5.0
ジメチルポリシロキサン(100mPa・s) 3.0
トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 20.0
アスタキサンチン 0.05
乳酸 1.0
ジプロピレングリコール 10.0
クエン酸ナトリウム 0.5
リン酸アスコルビルマグネシウム 0.1
酸化チタン 0.1
香料 適量
エデト酸2ナトリウム 0.03
パラオキシ安息香酸エチル 0.05
精製水 残量
【0093】
実施例16:ジェリー様抗シワ美容液
(成分) (%)
ブチレングリコール 5.0
プテロスチルベン内包カゼイン 1.1
グリセリン 7.0
(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー 1.0
アスタキサンチン(ヘマトコッカス藻抽出物) 0.05
セラミド 1.0
コラーゲン 0.5
水溶性コラーゲン 0.5
パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム 0.01
ダマスクバラ花油 適量
PEG60水添ヒマシ油 適量
ビタミンE 0.01
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 0.1
リン酸Na 0.8
水酸化ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 0.1
水 残量
【0094】
実施例17:錠剤
(成分) (%)
乳糖 48.0
結品セルロース 31.0
でんぷん分解物 9.0
ショ糖脂肪酸エステル 5.0
プテロスチルベン内包カゼイン 6.0
クエン酸ナトリウム 1.0
【0095】
実施例18:ソフトカプセル
(成分) (%)
食用大豆油 41.4
グリセリン脂肪酸エステル 12.0
ミツロウ 5.0
プテロスチルベン内包カゼイン 1.3
クエン酸ナトリウム 0.3
【0096】
実施例19:清涼飲料水
(成分) (%)
果糖ブドウ糖液糖 30.0
オレンジ果汁 20.0
プテロスチルベン内包カゼイン 2.0
クエン酸ナトリウム 0.5
乳化剤 0.5
香料 適量
精製水 残量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質粒子及びプテロスチルベンを含有する皮膚外用剤。
【請求項2】
抗老化剤として使用する、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
タンパク質粒子の平均粒子サイズが10〜1000nmである、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
タンパク質の質量に対して0.1〜100質量%のプテロスチルベンを含有する、請求項1〜3の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
タンパク質がコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜4の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
タンパク質がカゼインである、請求項1〜5の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
プテロスチルベンを内包するカゼイン粒子を含む、請求項1〜6の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
更に、カロテノイド系化合物を含有する請求項1〜7の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
抗しわ剤として使用する、請求項1〜8の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
NF−κB抑制剤、又はMMP−2抑制剤として使用する、請求項1〜9の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
タンパク質粒子及びプテロスチルベンを有効成分として含有する抗老化剤。
【請求項12】
タンパク質粒子及びプテロスチルベンを有効成分として含有する抗しわ剤。
【請求項13】
タンパク質粒子及びプテロスチルベンを有効成分として含有するNF−κB抑制剤。
【請求項14】
タンパク質粒子及びプテロスチルベンを有効成分として含有するMMP−2抑制剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−75851(P2013−75851A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216137(P2011−216137)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】