説明

皮膚色相測定システム及び方法

皮膚色相測定システムは、皮膚を撮影したイメージの色相を、原色に対応する座標軸を持つログ座標系上の色相データに変換する変換モジュール;あらかじめ設定された照明ベクトル及び複数個の色素ベクトルを、前記色相データを囲む多角錐形状に配置し、前記多角錐の頂点位置を利用して黄みを測定する第1測定モジュール;及び、前記色相データを、前記照明ベクトル方向の成分及び前記各色素ベクトル方向の成分に分離して複数個の色素分布を測定する第2測定モジュールを含んでよい。皮膚色相測定システムを利用すれば、皮膚の黄み、黒み及び/又は赤み等を測定することができ、また、測定結果をイメージとして出力することができて、特定の化粧品製品使用前後の皮膚トーンの変化を分かりやすく可視的に表示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施例は、皮膚色相測定システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の質感(texture)又は色相を測定したり、これをコンピュータ上のイメージで再現したりする技術は、多様なイメージングシステム(imaging system)において重要な機能として考えられてきた。特に最近では、電荷結合素子(Charge Coupled Device;CCD)が具備された移動装置、美容診断システム及び遠隔医療等の発達とともに、皮膚の質感又は色相を正確に測定する技術は、画像通信、皮膚に適した化粧品の選択又は医療診断等に対する活用度が増加している。
皮膚の質感又は色相を測定するために使用される従来の方法としては、デジタルカメラにより皮膚を撮影したイメージから皮膚に存在するメラニン(melanin)及びヘモグロビン(hemoglobin)の分布を抽出する方法がある。たとえば、イメージからメラニン及びヘモグロビンの分布を抽出するための方法は、1999年に米国光学会ジャーナル(Journal of Optical Society of America)に掲載された、「皮膚カラーイメージの独立成分分析(Independent component analysis of skin color image)」のタイトルを持つ津村等の論文に記載された方法等がある。
しかし、こうした従来の方法を利用する場合には、色素の量と別個に、人によって異なる皮膚の基本色を測定することが不可能であり、したがって、美容診断等に活用する場合、化粧品製品等の効果が正確に反映されにくいという問題点がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一側面によれば、皮膚を撮影したイメージから基本皮膚トーンを表す黄み及び皮膚の色素による黒みと赤み等を測定することができ、化粧品製品使用前後の皮膚の黄み、黒み及び/又は赤みの変化をイメージとして表示して容易に観察できる皮膚色相測定システム及び方法を提供することができる。
【0004】
一実施例に係る皮膚色相測定システムは、皮膚を撮影したイメージの色相を、原色に対応する座標軸を持つログ座標系上の色相データに変換する変換モジュール;あらかじめ設定された照明ベクトル及び複数個の色素ベクトルを、前記色相データを囲む多角錐形状に配置し、前記多角錐の頂点の位置を利用して黄みを測定する第1測定モジュール;及び、前記色相データを前記照明ベクトル方向の成分及び前記各色素ベクトル方向の成分に分離して複数個の色素分布を測定する第2測定モジュールを含んでいてよい。
一実施例に係る皮膚色相測定方法は、皮膚を撮影したイメージの色相を、原色に対応する座標軸を持つログ座標系上の色相データに変換するステップ;あらかじめ設定された照明ベクトル及び複数個の色素ベクトルを、前記色相データを囲む多角錐形状に配置するステップ;前記多角錐の頂点の位置を利用して黄みを測定するステップ;及び、前記色相データを、前記照明ベクトル方向の成分及び前記各色素ベクトル方向の成分に分離して複数個の色素分布を測定するステップを含んでいてよい。
【0005】
本発明の一側面に係る皮膚色相測定システム及び方法を利用すれば、皮膚を撮影したイメージから各ピクセルの色相をRGBログ(log)座標系に投影して生成された色相データを、照明ベクトル及び各色素(pigment)ベクトル方向の成分に分離して、皮膚の黄み、黒み及び/又は赤み等を測定することができる。また、測定結果をイメージとして出力することができ、特定の化粧品製品使用前後の皮膚トーンの変化を分かりやすく可視的に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、一実施例に係る皮膚色相測定システムのブロック図である。
【図2】図2は、皮膚を撮影したイメージをRGBログ(log)の座標系に投影した色相データを示すグラフである。
【図3a】図3aは、それぞれ異なる被験者の皮膚を撮影したイメージを利用して得た色相データを示すグラフである。
【図3b】図3bは、それぞれ異なる被験者の皮膚を撮影したイメージを利用して得た色相データを示すグラフである。
【図3c】図3cは、それぞれ異なる被験者の皮膚を撮影したイメージを利用して得た色相データを示すグラフである。
【図4a】図4aは、一実施例に係る皮膚色相測定システムにおける、赤み、黒み及び黄みの出力形態を示す概略図である。
【図4b】図4bは、一実施例に係る皮膚色相測定システムにおける、赤み、黒み及び黄みの出力形態を示す概略図である。
【図4c】図4cは、一実施例に係る皮膚色相測定システムにおける、赤み、黒み及び黄みの出力形態を示す概略図である。
【図5】図5は、一実施例に係る皮膚色相測定方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について詳細に見ていく。
図1は、一実施例に係る皮膚色相測定システムのブロック図である。
図1を参照すると、皮膚色相測定システムは、変換モジュール20、第1測定モジュール30と第2測定モジュール40を含んでいてよい。他の実施例において、皮膚色相測定システムは、撮影モジュール10及び/又は出力モジュール50をさらに含んでいてもよい。本明細書において、部(unit)、モジュール(module)又はシステム(system)等は、特定の機能を実装するためのハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組合せ、又はソフトウェアを指してよい。たとえば、部、モジュール又はシステムは、実行中のプロセス(process)、プロセッサ(processor)、オブジェクト(object)、実行ファイル(executable)、実行スレッド(thread of execution)又はプログラム(program)等を指してよく、特定のアプリケーション(application)及びこれを実行するための装置の両方を指してもよい。
【0008】
撮影モジュール10は、被験者の皮膚をイメージとして撮影するための部分である。たとえば、撮影モジュール10は、電荷結合素子(Charge Coupled Device;CCD)が具備された移動装置又はデジタルカメラ等を含んでいてよく、対象被験者の皮膚を撮影してイメージを生成してよい。一実施例において、撮影モジュール10は、皮膚色相測定システムの一部として構成されてよい。しかし、他の実施例においては、皮膚色相測定システムに撮影モジュール10を含めずに、別途の装置を使用して撮影された対象被験者の皮膚イメージの伝達を受けて色相測定のみを遂行してもよい。
【0009】
変換モジュール20は、撮影された皮膚イメージの各ピクセル(pixel)の色相を、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の各原色に対応する座標軸によって形成されるRGBログ(log)座標系に投影して色相データを生成する部分である。皮膚の色相は、皮膚の基本色を示す光がメラニン(melanin)又はヘモグロビン(hemoglobin)等の色素により暗くなって発現されるものと理解することができる。皮膚から発現される色相をcskin、皮膚の基本色をcbase、皮膚のメラニンの量をm、皮膚のヘモグロビンの量をhとする場合、皮膚から発現される色相cskinは、次式1によりモデリング(modeling)することができる。
【0010】
【数1】

【0011】
前記式1において、σm及びσhはそれぞれメラニン及びヘモグロビンの吸収係数であり、klightは皮膚から発現される色相に光が寄与する効果を示すスカラー(scalar)値である。皮膚の色素が全くない場合、皮膚から発現される色相は、cbase・klightである。皮膚にメラニン及び/又はヘモグロビン等の色素がある場合、皮膚から発現される光は、色素の量が増加するに伴い、皮膚の基本色から指数関数的に減少する。
【0012】
一方、前述した式1の両辺のログを取ると、次式2のような線形式に変換することができる。
【0013】
【数2】

【0014】
前記式2のように、皮膚から発現される光は、皮膚の基本色に対応する−log(cbase)と、照明効果に対応する−log(klight)と、メラニンによる光吸収に対応するσmm及びヘモグロビンによる光吸収に対応するσhhの線形和で表現することができる。
【0015】
前述した式1及び2は、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)のそれぞれについて独立的に適用されてよい。すなわち、式2の各項は、それぞれ色赤(R)、緑色(G)及び青色(B)に対応する成分を持つ3次元ベクトルで表現されてよい。本明細書においては、これをRGBベクトルと称する。また、本明細書において、−log(cbase)は基本色ベクトルと称し、−log(klight)は照明ベクトルと称し、σmはメラニンベクトルと称し、σhはヘモグロビンベクトルと称する。すなわち、皮膚から発現される色相は、基本色ベクトル、照明ベクトル及び複数個の色素ベクトル(たとえば、メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトル)のベクトル和で表現されてよい。
【0016】
本明細書において記述される実施例に係る皮膚色相測定システム及び方法においては、皮膚イメージの各ピクセルに発現される色相をRGBベクトルに変換し、RGBベクトルから前述した式1及び2に基づいたモデリングを利用して皮膚の基本色及び各色素分布を調べてよい。このためにまず、変換モジュール20は、皮膚イメージの各ピクセルの色相をRGBログ座標系に投影することにより、これを色相データに変換してよい。
【0017】
図2は、変換モジュール20によりRGBログ座標系に投影された色相データを示すグラフである。
【0018】
図1及び図2を参照すると、変換モジュール20は、皮膚イメージの各ピクセルの色相を赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3原色にそれぞれ対応する3つの座標軸により形成されるログ座標系に投影してもよい。たとえば、皮膚イメージにおいてi番目のピクセルの色相は、[CiR,CiG,CiB]の3次元ベクトルで表現されてよく、CiR,CiG,CiBはそれぞれi番目のピクセルの色相のうち赤色、緑色及び青色の成分に対応する。RGBそれぞれに分離された色相値のログをとって[log(CiR),log(CiG),log(CiB)]に変換し、これを前述したRGBログ座標系上に表してより。皮膚イメージのすべてのピクセルに対して前述した方法を適用すると、図2に示されたような色相データを得ることができる。
【0019】
図2に示された色相データにおいて、それぞれの点は、RGBログ座標系に投影された皮膚イメージの一つのピクセルの色相に対応する。本明細書に添付された図面において、RGBログ座標系上の点は、グレイスケール(gray scale)で図示されたが、これは、それぞれの点に対応するピクセルの実際の色相を示すものではない。それぞれの点に対応するピクセルは、当該点のRGBログ座標系上の座標に対応する赤色、緑色及び青色成分が組み合わされてなる色相を持つという点が、当業者に容易に理解されるであろう。
【0020】
第1測定モジュール30は、変換モジュール20により生成された色相データを利用して、皮膚の黄みを算出してよい。一実施例において、第1測定モジュール30は、基本色算出部310と黄み算出部320を含んでいてよい。基本色算出部310は、色相データから皮膚基本色ベクトルを算出してよい。基本色算出部310は、事前に方向が決定されている照明ベクトル及び複数個の色素ベクトルを、変換モジュール20によりRGBログ座標系に投影された色相データを囲む多角錐形状に配置してよい。
【0021】
照明ベクトルは、前述した式2において、−log(klight)を指す。RGB成分を均一に含む白色照明を使用したものと仮定する場合、照明ベクトルの方向は(1,1,1)で表現されてよい。しかし、これは例示的なものであり、照明ベクトルは、光源の特性及び/又は皮膚イメージ撮影に使用されるカメラのホワイトバランス(white balance)特性等を考慮して、他の異なる方向を持つように構成されてもよい。
【0022】
複数個の色素ベクトルは、たとえば、メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルであってよく、前述した式2において、σm及びσhをそれぞれ指す。メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルの方向は、多数の被験者の色相データを利用して事前に決定されてよい。任意のイメージからメラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルを抽出する方法は当業者によく知られているが、このとき、多数の被験者のイメージから抽出したメラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルに基づいて、本発明の実施例に使用されるメラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルの方向を決定してよい。
【0023】
たとえば、本発明の実施例に使用されるメラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルの方向は、多数の被験者の皮膚イメージから抽出されたメラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルそれぞれの平均に基づいて決定されてもよい。又は、多数の被験者の皮膚イメージから抽出されたメラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルのうち、前述した照明ベクトルとともに三角錐の形に配置した場合に、多数の被験者の色相データを囲むことができる特定のメラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルの方向に選択してもよい。
【0024】
本明細書において多角錐とは、照明ベクトル及び複数個の色素ベクトルを一つの同一の開始点に配置する場合に、これらベクトルのうち2つのベクトルにより形成される平面で囲まれる空間を意味する。たとえば、複数個の色素ベクトルがメラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルである場合、多角錐は、照明ベクトルとメラニンベクトルにより形成される平面、照明ベクトルとヘモグロビンベクトルにより形成される平面、及びメラニンベクトルとヘモグロビンベクトルにより形成さされている平面の3つの平面で囲まれた三角錐形状の空間を指す。
【0025】
また、本明細書において多角錐(たとえば、三角錐)により色相データを囲んだということは、必ずしも色相データのすべてのピクセルが多角錐の内部に位置するようになることを意味するものではなく、色相データのすべてのピクセルのうち一定比率だけのピクセルが多角錐内部に位置されることといった配置形態を指してよい。たとえば、約90%以上のピクセルが多角錐内部に位置するように多角錐を配置してよいが、これは例示的なものであって、前記数値に限定されるものではない。
【0026】
基本色算出部310は、方向が事前に決定されている照明ベクトル、メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルを、対象被験者の色相データを囲む三角錐の形態に配置してよい。図2を参照すると、照明ベクトル、メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルの方向が、それぞれ−log(klight)、σm及びσhとして図示される。次に、基本色算出部310は、前記三角錐の頂点の位置を利用して、対象被験者の皮膚の基本色を表す基本色ベクトルである−log(cbase)を算出してよい。このとき、−log(cbase)は、座標系の原点又は特定の基準点に対する相対的な位置で表示されてよい。
【0027】
一方、基本色ベクトルである−log(cbase)の大きさ及び/又は方向は、人によって異なり得る。図3a〜3cは、それぞれ異なる試験者の皮膚を撮影したイメージから得られた色相データを示したグラフである。図3a〜3cの各グラフにおいて、−log(cbase)は、該当する被験者の皮膚基本色ベクトルであり、被験者ごとに基本色ベクトルの大きさ及び/又は方向が異なることを確認することができる。人ごとに皮膚の基本色が異なるのは、全般的な皮膚トーンが異なって現れる現象であり、本明細書においては、これを黄みと称する。
【0028】
黄み算出部320は、基本色算出部310により色相データから算出された基本色ベクトルを利用して、皮膚の黄みを測定してよい。まず、黄み算出部320は、基本色ベクトル−log(cbase)を、前述した照明ベクトル方向の成分とこれを除いた残りの成分とに分離することができる。すなわち、各方向の成分に分離された基本色ベクトルは、次式3のように表現することができる。
【0029】
【数3】

【0030】
前記式3において、α及びβはスカラー値であり、γはベクトル値である。(1,1,1)は、照明ベクトルを表すベクトルであり、vstbaseは多数の被験者から得た標準皮膚色を表すベクトルであって、詳細に後述する。
【0031】
一実施例においては、前記式3のように各成分に分離される基本色ベクトル−log(cbase)のうち、照明ベクトル方向の成分であるα(1,1,1)を除いた残りの成分の大きさ、すなわちβvstbase+γの絶対値を皮膚の黄みと定義してよい。たとえば、対象被験者の皮膚基本色ベクトルが(3,4,5)と仮定する場合、このうち照明ベクトル方向の成分である(3,3,3)を除き、残りの成分である(0,1,2)の絶対値が当該被験者の皮膚の黄みとなる。
【0032】
他の実施例においては、皮膚基本色ベクトルである−log(cbase)のうち照明ベクトル方向の成分であるα(1,1,1)を除いた残りの成分を、さらに所定の標準皮膚色ベクトル方向の成分と残りの成分とに分離してよい。標準皮膚色ベクトルは、多数の被験者から測定された皮膚基本色ベクトルに基づいて、その中で最も薄い色に対応するベクトルと定義されてよい。標準皮膚色ベクトルは、前記式3においてvstbaseで表される。本実施例によれば、皮膚基本色ベクトルから照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分であるβvstbase+γの中から、さらに標準皮膚色ベクトル方向の成分であるβvstbaseを除いた残りであるγの絶対値が黄みとして定義される。たとえば、前述したところのように、皮膚基本色ベクトルから照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分が(0,1,2)である被験者の場合、標準皮膚色ベクトルが(0,1,1)であると仮定すると、(0,1,2)から(0,1,1)を差し引いた残りである(0,0,1)の絶対値が、当該被験者の皮膚の黄みとなる。
【0033】
前述した実施例のように定義される黄みは、被験者の皮膚から発現される色相が照明ベクトルから外れた程度を示すものであり、対象被験者の皮膚色のうち色素による影響を除いた全体的な皮膚トーンを単一の数値で表現したものである。したがって、特定の化粧品製品の使用前及び使用後にそれぞれの皮膚の黄みを測定することにより、製品使用による皮膚トーンの変化を容易に追跡することができるという利点がある。
【0034】
一方、第2測定モジュール40は、変換モジュール20によりRGBログ座標系に投影された色相データにおいて、メラニンベクトル方向及びヘモグロビンベクトル方向の成分をそれぞれ算出してよい。メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルの方向は、前述したところのように、多数の被験者の色相データを利用して事前に決定されてよい。このように算出されたメラニンベクトル方向の成分及びヘモグロビンベクトル方向の成分は、それぞれ対象被験者の皮膚のメラニン分布及びヘモグロビン分布に対応する。また、メラニン分布は皮膚の黒みとして発現され、ヘモグロビン分布は皮膚の赤みとして発現される。つまり、皮膚においてメラニン又はヘモグロビンの量が増加すればするほど、それぞれ黒み又は赤みが増加することになる。
【0035】
一実施例において、皮膚色相測定システムは、第1測定モジュール30により算出された黄み、並びに第2測定モジュール40により算出されたメラニン分布(すなわち、黒み)及びヘモグロビン分布(すなわち、赤み)を表示するための出力モジュール50を含んでよい。たとえば、出力モジュール50は、皮膚の黄み、黒み及び赤みの数値を、これらの数値に対応する座標系上の特定の位置に表示してよい。また、出力モジュール50は、前述した特定の位置に、実際に撮影された皮膚イメージを表示してもよい。
【0036】
図4a〜4cは、一実施例に係る皮膚色相測定システムにおける、出力モジュールによる出力形態を図示した図である。
【0037】
図4aを参照すると、出力モジュールは、黄み、黒み及び赤みにそれぞれ対応する座標軸により形成される座標系上に、対象被験者の皮膚から測定された数値を表示してよい。図4aにおいて、黄み、黒み及び赤みに対応する座標軸は、複数回の測定を実施する場合、最初の測定結果を100%として、0%〜200%の範囲を図示するように設定されてよい。しかし、これは例示的なものであり、他の実施例においては、黄み、黒み及び赤みに対応する各座標軸が、たとえば90%〜110%の範囲又は他の異なる範囲を図示するように設定してもよい。
【0038】
出力モジュールは、最初の撮影時点である第1時点(たとえば、化粧品の使用前)に測定された対象被験者の黄み、黒み及び赤みの数値に対応する第1イメージ520と、第2時点(たとえば、一定期間、化粧品を使用した後)に測定された対象被験者の黄み、黒み及び赤みの数値に対応する第2イメージ530を表示してよい。
【0039】
単純化のために、図4aには第1及び第2イメージ520,530のみを図示したが、第1及び第2イメージ520,530が位置している位置だけでなく、座標系上の他の各場所にも、当該位置の黄み、黒み及び赤みの数値に対応するイメージが表示されてもよい。また、こうした他のイメージは、実際の被験者の撮影イメージにおいて、黄み、黒み及び/又は赤みを調節して生成されてよい。
【0040】
第1イメージ520は、当該赤みの数値により決定される平面500上に位置するようになり、同様に、第2イメージ530は、当該赤みの数値により決定されるまた別の平面510上に位置するようになる。第1時点と比較して第2時点において対象被験者の赤みの数値が減少し、その結果、第1平面500に比べて第2平面510が、赤みが0%の方向に近接して移動したことを確認することができる。
【0041】
一方、図4bは、図4aにおいて第1平面500のみを図示した概略図であり、図4cは、図4aにおいて第2平面510のみを図示した概略図である。図4b及び4cを参照すると、第1イメージ520は、最初に撮影されたイメージであるため、黄み及び黒みの数値がそれぞれ100%に該当し、第1平面500上の中心に表示され得る。これに対し、第2イメージ530は、第1イメージ520と比較して黄み及び黒みの数値がそれぞれ減少したので、第2平面510上において中心から左下端へ移動した地点に表示され得る。
【0042】
たとえば、第1時点に測定された対象被験者の赤み、黒み及び黄みの数値をそれぞれ100%とするとき、第2時点に測定された対象被験者の赤み、黒み及び黄みがそれぞれ80%、70%及び50%であると仮定し得る。このとき、第1時点に撮影された対象被験者のイメージである第1イメージ520は、座標系上において(100,100,100)の位置に表示されるのに対し、第2時点に撮影された対象被験者のイメージである第2イメージ530は、座標系上において(80,70,50)の位置に出力され得る。
【0043】
このように、3次元イメージアレイ(array)を利用して皮膚の赤み、黒み及び黄みを表示することにより、皮膚の状態を分かりやすく可視的に表示してよい。また、第1時点及び第2時点をそれぞれ特定の化粧品製品の使用前と使用後の一定期間後と設定すると、第1イメージ520から第2イメージ530への位置変化を通じ、該当製品の効能を可視的に把握してよい。たとえば、第1イメージ520の特定のピクセルから第2イメージ530の対応するピクセルを連結するベクトルの長さにより製品の効能を示してよい。又は、赤み、黄み及び黒みそれぞれの数値ごとに、数値の減少程度を%で表して、製品の効能を示してもよい。
【0044】
図4a〜4cに示される黄み、黒み及び赤みの出力形態はただ例示的なものであり、出力モジュールは、第1測定モジュールにおいて測定された皮膚の黄み、並びに第2測定モジュールにおいて測定された皮膚の黒み及び赤みを、他の適当な表示形態を利用して出力してもよい。
【0045】
図5は、一実施例に係る皮膚色相測定方法を示すフロー図である。
【0046】
図5を参照すると、まず、対象被験者の皮膚をイメージとして撮影してよい(S1)。次に、撮影された皮膚イメージの各ピクセルの色相をRGBログ座標系に投影して、色相データを生成してよい(S2)。RGBログ座標系は、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3原色にそれぞれ対応する座標軸により形成される座標系であってよく、このとき、それぞれの座標軸は、ログスケール(log scale)で表示されてよい。イメージの各ピクセルは、RGBログ座標系においてRGBベクトルの形態で表現される。
【0047】
次に、事前に方向が決定されている照明ベクトル及び複数個の色素ベクトルを、投影された色相データを囲む多角錐(たとえば、三角錐)形状に配置してよい(S3)。照明ベクトルは、照明による効果に対応するベクトルであり、白色光の場合(1,1,1)のRGBベクトルで表現されてよい。色素ベクトルは、メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルであってよい。メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルの方向は、多数の被験者の皮膚イメージから得られた色相データを利用して事前に決定されてよい。
【0048】
次に、照明ベクトル、メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルからなる三角錐の頂点位置を利用して、基本色ベクトルを算出してよい(S4)。基本色ベクトルは、対象被験者の皮膚において、色素による光吸収効果を除外した、皮膚本来の全般的な皮膚トーンを表す。
【0049】
次に、基本色ベクトルを利用して黄みを算出してよい(S5)。黄みは、基本色ベクトルを照明ベクトル方向の成分と、これを除いた残りの方向の成分に区分して得てよい。一実施例において、黄みは、基本色ベクトルから照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分の大きさと定義されてよい。一方、他の実施例において、黄みは、基本色ベクトルから照明ベクトル方向を除いた残りの成分のうち、さらに所定の標準皮膚色ベクトル方向の成分を除いた残りの成分のみの大きさと定義されてよい。
【0050】
一方、前述した色相データにおいて、メラニンベクトル方向の成分及びヘモグロビンベクトル方向の成分を算出してよい(S6)。メラニンベクトル方向の成分及びヘモグロビンベクトル方向の成分は、それぞれ対象被験者の皮膚のメラニン分布及びヘモグロビン分布に対応する。また、皮膚のメラニン分布は皮膚の黒みとして発現され、皮膚のヘモグロビン分布は皮膚の赤みとして発現され得る。
【0051】
次に、前述した過程により算出された赤み、黒み及び黄みを出力してよい(S7)。たとえば、赤み、黒み及び黄みのそれぞれに対応する座標軸により形成される座標系において、対象被験者の赤み、黒み及び黄み数値に対応する位置に撮影された皮膚イメージを出力してよい。このとき、特定の化粧品製品使用前のイメージと使用後一定期間経過後のイメージを一緒に表示すれば、使用前後のイメージの位置変化を通じて、製品使用による皮膚トーンの変化を可視的に確認することができる。
【0052】
本明細書において、一実施例に係る皮膚色相測定方法は、図面に提示された順序図を参照として説明された。簡単に説明するために、前記方法は、一連のブロックにより図示されて説明されたが、本発明は、前記ブロックの順序に限定されず、いくつかのブロックは、他のブロックと、本明細書において図示され、記述されたものと異なる順序で、又は同時に起こってもよく、同一又は類似な結果を達成する多様な他の分岐、流れ経路、及びブロックの順序が具現されてよい。また、本明細書において記述される方法の具現のために、図示されたすべてのブロックが要求されなくともよい。
【0053】
以上において説明した本発明は、図面に図示された実施例を参考として説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、このことから多様な変形及び実施例の変形が可能であるという点を理解するであろう。しかし、このような変形は、本発明の技術的保護範囲内にあると見なければならない。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付された特許請求の範囲の技術的思想により定められなければならない。
【0054】
実施例は、皮膚色相測定システム及び方法に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚を撮影したイメージの色相を、原色に対応する座標軸を持つログ座標系上の色相データに変換する変換モジュール;
あらかじめ設定された照明ベクトル及び複数個の色素ベクトルを、前記色相データを囲む多角錐形状に配置し、前記多角錐の頂点位置を利用して黄みを測定する第1測定モジュール;及び
前記色相データを、前記照明ベクトル方向の成分及び前記各色素ベクトル方向の成分に分離して複数個の色素分布を測定する第2測定モジュール
を含むことを特徴とする皮膚色相測定システム。
【請求項2】
前記複数個の色素ベクトルは、メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の皮膚色相測定システム。
【請求項3】
前記第1測定モジュールは、
前記色相データから、前記多角錐の頂点位置に対応する基本色ベクトルを算出する基本色相算出部;及び
前記基本色ベクトルを、前記照明ベクトル方向の成分及び前記照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分に分離して黄みを算出する黄み算出部を含むことを特徴とする、請求項1に記載の皮膚色相測定システム。
【請求項4】
前記黄みは、前記基本色ベクトルにおいて前記照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分に対応することを特徴とする、請求項3に記載の皮膚色相測定システム。
【請求項5】
前記黄み算出部は、前記基本色ベクトルにおいて前記照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分を、あらかじめ設定された標準皮膚色ベクトル方向の成分と前記標準皮膚色ベクトル方向の成分を除いた残りの成分とに分離し、
前記黄みは、前記基本色ベクトルにおいて前記照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分のうち、前記標準皮膚色ベクトル方向の成分を除いた残りの成分に対応することを特徴とする、請求項3に記載の皮膚色相測定システム。
【請求項6】
前記第1測定モジュールにおいて算出された黄み及び前記第2測定モジュールで算出された複数個の色素分布を、黄み及び複数個の色素分布それぞれに対応する座標軸を持つ座標系上に表示する出力モジュールをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の皮膚色相測定システム。
【請求項7】
前記出力モジュールは、前記黄み及び複数個の色素分布それぞれに対応する座標軸を持つ座標系上に、皮膚を撮影したイメージを表示することを特徴とする、請求項6に記載の皮膚色相測定システム。
【請求項8】
皮膚を撮影したイメージの色相を、原色に対応する座標軸を持つログ座標系上の色相データに変換するステップ;
あらかじめ設定された照明ベクトル及び複数個の色素ベクトルを、前記色相データを囲む多角錐形状に配置するステップ;
前記多角錐の頂点位置を利用して黄みを測定するステップ;及び
前記色相データを、前記照明ベクトル方向の成分と前記各色素ベクトル方向の成分とに分離して複数個の色素分布を測定するステップ
を含むことを特徴とする皮膚色相測定方法。
【請求項9】
前記複数個の色素ベクトルは、メラニンベクトル及びヘモグロビンベクトルを含むことを特徴とする、請求項8に記載の皮膚色相測定方法。
【請求項10】
前記皮膚の黄み測定するステップは、
前記色相データから前記多角錐の頂点位置に対応する基本色ベクトルを算出するステップ;及び
前記基本色ベクトルを、前記照明ベクトル方向の成分及び前記照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分に分離して黄みを算出するステップを含むことを特徴とする、請求項8に記載の皮膚色相測定方法。
【請求項11】
前記黄みは、前記基本色ベクトルにおいて前記照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分に対応することを特徴とする、請求項10に記載の皮膚色相測定方法。
【請求項12】
前記黄みを算出するステップは、前記基本色ベクトルにおいて前記照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分を、あらかじめ設定された標準皮膚色ベクトル方向の成分と前記標準皮膚色ベクトル方向の成分を除いた残りの成分とに分離するステップを含み、
前記黄みは、前記基本色ベクトルにおいて前記照明ベクトル方向の成分を除いた残りの成分のうち、前記標準皮膚色ベクトル方向の成分を除いた残りの成分に対応することを特徴とする、請求項10に記載の皮膚色相測定方法。
【請求項13】
算出された黄み及び複数個の色素分布を、黄み及び複数個の色素分布それぞれに対応する座標軸を持つ座標系上に表示するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の皮膚色相測定方法。
【請求項14】
前記黄み及び複数個の色素分布それぞれに対応する座標軸を持つ座標系上に表示するステップは、算出された黄み及び複数個の色素分布に対応する位置に、皮膚を撮影したイメージを表示するステップを含むことを特徴とする、請求項13に記載の皮膚色相測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−520274(P2013−520274A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554900(P2012−554900)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001154
【国際公開番号】WO2011/105731
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(505118718)アモーレパシフィック コーポレイション (21)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【Fターム(参考)】