説明

監視カメラ用の防曇ガラス装置

【課題】多湿気施設に面したガラスが曇らないようにすると共に、一時的にガラスが曇ったとしても、その曇りを直ちに除去できる防曇ガラス装置を提供する。
【解決手段】監視カメラの前側に配置したガラス5の親水性処理が施された処理面5aに対して、水Wを供給するための細長状の吐出口12を有する吐出部10が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水着着用のリゾート型浴場や温水プール等の湿気が多い施設内に面して配置される防曇ガラス装置に係り、特には前記施設内の監視のために設置された監視カメラの前側に配置される防曇ガラス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
観光地の温泉施設には、温泉につかりながら外の景色を眺めることができるようにしてあるものがある。ところが、浴室と外部とを隔てるガラスが曇ることにより、眺望が遮られることがある。このガラスの曇りを除くために、散水したりハンドワイパーで擦ったりすることが行われるが、いずれも手間や費用がかかることであって、曇ったままに放置されることがあった。このため、人手によらず、自動的にガラスの曇りを取り除く技術が提案されている。
【0003】
特許文献1の窓ガラスの曇り除去装置では、窓ガラスの光透過の状態をセンサにより検出して、曇り除去が必要か否かを制御部により判断している。そして曇り除去が必要と判断された時、ノズルから水又は温水がガラスに対してスプレー状に吐出されるようになっている。
【0004】
特許文献2の浴室用窓ガラスの曇り止め機構では、浴室の窓際付近の天井にシャワーヘッドが設置されている。このシャワーヘッドには、窓ガラスの幅方向に沿って多数の散水口が設けられている。そして、この散水口から散水された水が、飛沫となって跳ね返ることなく、緩やかにガラスに当たるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−76987号公報
【特許文献2】特開平5−156874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2における散水では、ガラスに水滴が残ったり、場合によっては散水停止後に直ちに曇ったりして、必ずしも視界が良好になるとは限らなかった。このため、散水を継続することにより良好な視界を維持することも行われるが、ガラスを透してみる景色が、流れ落ちる水により揺らぎ状態となることが避けられなかった。しかも、上水による散水を継続すると、水道料金が高額になる。これを避けるために、循環水により散水を行うと、例え循環経路に濾過装置を設けたとしても、ガラスの被散水面が次第に黒ずんでしまうことになる。
【0007】
ところで、近年、水着着用のリゾート型浴場、子供が利用する温水プール、要介護の老人が多い老人ホームの浴室等の施設において、これらの施設を利用する人達の安全確保が重要課題となっている。この安全確保のために、監視員が直接監視したり、監視カメラからの映像をモニターで監視したりすることが行われている。
【0008】
この監視カメラが設置される監視室と被監視室との間を隔てるガラスは、被監視室が湿気の多い場所であるため曇り易いものである。そして、曇ったガラスの曇りを除去するために前記特許文献1、2における散水を用いても、水滴が残ったり水流による揺らぎがあったりして、カメラから遠い位置の被写体の安全状況を適切に確認することは難しい。
【0009】
また、ガラスや鏡の表面に親水性処理を施すことにより、水滴が付き難くすることが一般に行われている。そして、前記特許文献1、2における曇り除去方法に替えて、監視室のガラスの表面を親水性とすることで水滴が付き難いようにして、クリアな視界を確保することが考えられる。
【0010】
ところが、前記監視すべきリゾート型浴場等の施設に、一度に多数の利用者が入浴した場合等、大量の湯気が短時間にうちに発生すると、水滴が付き難いはずの親水性処理面が一時的に曇る場合がある。親水性処理面の親水作用により、この曇りは徐々に消えるものであるが、この間に、安全確認のために不可欠な視界が遮られることになる。
【0011】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、多湿気施設に面したガラスが曇らないようにすると共に、一時的にガラスが曇ったとしても、その曇りを直ちに除去できる防曇ガラス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために請求項1に記載の防曇ガラス装置の発明は、多湿気施設の施設に面して配置される防曇ガラス装置において、前記多湿気施設に面する側のガラスの表面には親水性処理が施されていると共に、その処理面の上部に対して水を供給するための吐出口を有する吐出部が備えられたことを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、多湿気施設に面する親水性処理が施されたガラス面に対して、水を供給するための吐出口を有する吐出部が備えられている。このため、親水性処理されたガラス面は曇ることなくクリアな視界が得られるようになっていると共に、ガラス面が一時的に曇ることがあっても、水がガラス面を伝い落ちる時に、曇りを除去する。この曇り除去においては、ガラス面が親水性処理面であることにより、伝い落ちる水が一様な厚さの皮膜状態となるので、ガラスを透して見る対象は揺らぎ状態に見えることがない。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の防曇ガラス装置において、前記ガラスは、監視カメラが設置された監視室と前記多湿気施設との間を隔てるものであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の防曇ガラス装置において、前記吐出口からの水の吐出及び停止を切り替えるためのバルブを前記監視室内に配置したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の防曇ガラス装置において、前記バルブの上流側にウォーターハンマー防止手段を設けたことを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の防曇ガラス装置において、前記親水性処理には光触媒が用いられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし5のうちいずれか一項に記載の防曇ガラス装置において、前記ガラスに対して、前記監視カメラの撮影可能域に対応する部分に水が吐出されるように、前記吐出口が配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載の防曇ガラス装置において、前記吐出口は、水平方向の帯状に水を供給するための細長状に形成され、その吐出口の上側の開口端縁が、前記ガラスに接触状態で配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の防曇ガラス装置において、前記吐出部には、前記吐出口を開閉する開閉装置が備えられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、が、親水性処理されたガラス面を一様な厚さの皮膜状態となって伝い落ちるため、ガラスを透して見る対象は揺らぎ状態に見えることがないので、常にクリアな視界を得ることが可能な防曇ガラス装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の防曇ガラス装置を示す斜視図。
【図2】第1実施形態の防曇ガラス装置の断面図。
【図3】第1実施形態の吐出部の断面図。
【図4】第2実施形態の吐出部の断面図。
【図5】図4のA−A矢視断面図。
【図6】第3実施形態の吐出部の断面図。
【図7】第4実施形態の吐出部を示し、(a)は吐出口ば閉じた状態の断面図、(b)は吐出口が開いた状態の断面図。
【図8】第1実施形態の配管図及び制御回路図。
【図9】第3、4実施形態の配管図及び制御回路図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜3及び図8を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の防曇ガラス装置1は、多湿気施設として、水着着用のリゾート型温泉における浴室2と、監視カメラ7が設置された監視室3とを隔てるガラス5に吐出口12から水を供給する長尺パイプ状の吐出部10を備えると共に、ガラス5の曇り度合いを検出する光センサ6を備えている。ガラス5は、浴室2の壁2aに設けられた開口4内に設けられると共に、浴室2側の表面が、二酸化チタンからなる光触媒コーティング材によりコーティングされて親水性が付与された処理面5aとなっている。親水性が付与されることにより、ガラス5の処理面5aには、水は水滴の形で存在することなく、薄い均一な厚さの水膜の形となるため、常にクリアな視界が得られる。
【0023】
なお、ガラス5の表面を親水性とするためには、光触媒としての二酸化チタンに限らず、他の金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、二酸化錫、二酸化珪素等を用いることができる。また、親水性フィルムをガラス5の表面に貼着するようにしてもよい。
【0024】
吐出部10は、開口4の上枠面4cの二ヶ所に設けられたブラケット9により懸架されて、監視カメラ7の撮影可能域に対応する部分の全幅に亘って水Wが吐出されるように配置されている。そして、吐出部10の一方の端部には供給管8が連結されている。供給管8は、壁2aに沿うように配管されて、壁2aの配管口2bを通り、図8に示すように監視室3内において後述の開閉バルブ42に連結されている。
【0025】
また、図2に示すように、監視室3内において、開口4の下枠面4aには反射型の光センサ6が設置されている。この光センサ6の位置は、ガラス5において、監視カメラ7の前側に位置する部分の直下となっている。従って、監視カメラ7の撮影方向に当たるガラス5の曇りの有無の検知を、光センサ6により行うことができる。
【0026】
吐出口12は、パイプ状基体11の長さ方向(水平方向)の複数箇所に形成されている。そして、図3に示すように、吐出口12は、その指向方向を示す中心線Cと処理面5aとのなす角度Kが鈍角となるように下方に向かって配置されている。このため、開口部14から吐出された水Wは、処理面5aに沿って円滑に流れ落ちることができる。この場合、処理面5aが親水性を有しているため、水Wは広がりながら処理面5aを伝い落ちることができる。そして、諸条件により曇ったガラス5の処理面5aから曇りを直ちに除去することができる。
【0027】
次に、図8を用いて、吐出部10から水を吐出するための配管及び制御回路を説明すると共に、作動態様を説明する。
本実施形態における上水の給水源41と吐出部10とを連結する配管には、監視室3内において、元栓としての手動式の開閉バルブ42、U字管44、電磁式の開閉バルブ43が接続されている。給水源41から供給される水の流路は、開閉バルブ42により開閉される。従って、開閉バルブ43が開となった時、水は供給管8を経て吐出部10に供給される。U字管44は、開閉バルブ43が閉じられた時、ウォーターハンマー現象が配管中に生じないようにするために設置されている。
【0028】
開閉バルブ43の開閉を制御する制御回路には、電源47からの制御部46への通電をオンオフするためのスイッチ48、光センサ6からの検出結果を受けて開閉バルブ43をオンオフする制御部46が設けられている。また、光センサ6の検知の有無に関わらず、開閉バルブ43を開放させて、吐出部10から水を吐出させるための手動スイッチ45が設けられている。スイッチ48、手動スイッチ45及び制御部46は監視員のいる部屋、例えば、モニタ室に設けられる。
【0029】
そして、光センサ6がガラス5上の曇りを検知した時、その検知結果を受けた制御部46により開閉バルブ43が開状態となる。すると、水は供給管8を経て吐出部10に供給されて、ガラス5の曇りを除去することができる。
【0030】
また、ガラス5の曇り度合いが光センサ6により検知される程度以下であっても、監視モニターを見る監視員は、必要に応じて手動スイッチ45を操作することにより、制御部46を介して開閉バルブ43を開状態とすることができるようになっている。なお、この手動スイッチ45の操作により、吐出部10からの水の吐出をオンオフすれば足りる監視態様においては、光センサ6の設置を省くことができる。
【0031】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、浴室を監視するための開口4のガラス5の浴室側に親水性処理が施されているため、ガラス5の曇りを防止することができる。このため、監視カメラ7による監視や監視カメラ7を用いない直接監視を支障なく行うことができる。
【0032】
(2)上記実施形態では、監視カメラ7の撮影方向の前側に配置されたガラス5の親水性処理が施された処理面5aに対して、水Wを供給するための吐出口12を有する吐出部10が備えられている。このため、ガラス5の処理面5aは、常に曇ることなくクリアな視界が得られるようになっていると共に、大量の湯気が発生した場合等、処理面5aが一時的に曇ることがあっても、水Wは、処理面5aを伝い落ちて、曇りを除去することができる。そして、処理面5aは、開口部14からの水Wによって一旦濡れてしまえば、その後は、吐水を停止しても、処理面5aの親水作用により、処理面5a上に薄い水膜が形成されて、曇りのないクリアな状態が継続される。従って、処理面5aに対する吐水はごく短時間でよい。
【0033】
(3)上記実施形態では、吐出口12は、その中心線Cと処理面5aとのなす角度Kが鈍角となるように斜め下方に向かって配置されている。このため、開口部14から吐出された水Wは、一様な厚さの膜状となって処理面5aに沿って流れ落ちることができる。従って、水Wの落下中であっても、ガラスを透して見る対象は揺らいで見えることが殆どない。また、監視カメラから遠い位置にある対象であっても容易に視認することができる。また、親水性処理により水Wが広がって膜状になるため、吐出部10の吐出口12として、パイプ材の水平方向の複数箇所に孔開けするだけでよい。従って、吐出部10の加工が容易である。
【0034】
(4)上記実施形態では、吐出部10が、監視カメラ7の撮影可能域に対応する部分の全幅に亘って水Wが水平方向の帯状に吐出されるように配置されている。このため、監視モニターは、いずれの部分にも曇りや水流による見にくい部分がなく、視認しやすい映像を映し出すことができる。
【0035】
(5)上記実施形態では、親水性処理として光触媒が用いられている。このため、親水性処理された面がセルフクリーニング機能を備えることになる。従って、開口部14から吐出される水として、循環水や中水が用いられたとしても、ガラス5の処理面5aの面の汚損を防止できて、監視に適するクリアな透明状態を得ることができるとともに、循環水や中水を使用できて、ランニングコストを低減できる。
【0036】
(6)上記実施形態では、開閉バルブ43の上流側に、U字管44が配置されている。従って、開閉バルブ43の閉鎖にともなうウォーターハンマーを防止できる。このため、開閉バルブ43が吐出部10に近い監視室3内に配置されていることと相まって、開口部14からの吐水を瞬間的に閉鎖することができる。
【0037】
(7)上記実施形態では、供給管8が監視室3内に巡らされ、その供給管8上の開閉バルブ42、43が監視室3内に設けられている。このため、開閉バルブ42、43や供給管8の保守管理が容易となる。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に図4及び図5を用いて説明する。
【0039】
吐出部10は、パイプ状基体11と、パイプ状基体11の開口部11aに連結された吐出口12とよりなっている。吐出口12は、互いに先細状となって細長状の開口部14を形成するように配置された下板部12aと上板部12bとより構成されると共に、吐出口12の長手方向(紙面に直交する方向)の両端部には図示しない側板が設けられている。また、下板部12aと上板部12bとの間には、適宜間隔で補強板13が設けられている。この補強板13により、下板部12a及び上板部12bの剛性を高くする必要はないので、これらの材質の選定の自由度が高まることになるが、逆に、下板部12a及び上板部12bが適宜剛性を持っていれば、補強板13を設けないようにすることもできる。
【0040】
図4に示すように、吐出口12は、その中心線Cと処理面5aとのなす角度K1が鋭角となるように斜め下方に向かって配置されていると共に、上板部12bの端縁がガラス5の処理面5aに接触している。このため、開口部14から吐出された水Wは、水平方向の帯状となって処理面5aに沿って流れ落ちることができる。この時、上板部12bの端縁がガラス5の処理面5aに接触しているので、水Wが、開口部14から溢れ出るように処理面5aに供給されれば十分である。言い換えれば、開口部14から吐出される水は、高い水圧や流速を必要としない。
【0041】
そして、この第2実施形態においては、第1の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(8)上記実施形態では、上板部12bの端縁がガラス5の処理面5aに接触している。このため、開口部14から吐出された水Wは、水平方向の帯状となって処理面5aに沿って流れ落ちることができる。この時、上板部12bの端縁がガラス5の処理面5aに接触しているので、水Wが、高い水圧や速い流速を伴わずに、開口部14から溢れ出るように処理面5aに供給されれば十分である。このため、水Wの供給開始と停止とを容易に行うことができるので、効率的な防曇ガラス装置1を提供することができる。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態を、第1、2実施形態と異なる部分を中心に図6及び図9を用いて説明する。
【0043】
本実施形態の吐出部20は、吐出口12の内部において、下板部12a及び上板部12bの内面に密着状態に当接可能な形状の弁体22を備えている。弁体22は、パイプ状基体21の開口部21bに設けられた電磁式のリニアアクチュエータ24のロッド23の先端に固定されて開閉装置を構成している。このリニアアクチュエータ24は、励磁された時のみロッド23が後退するように作動するが、常にはロッド23が前進状態にあるものである。そして、リニアアクチュエータ24の作動により、ロッド23と共に弁体22がわずかでも後退した時、下板部12a及び上板部12bのそれぞれの内面と弁体22との間のテーパー状接触部には隙間ができる。このため、弁体22は容易に後退して、更に隙間を広げるので、水Wはその隙間を通過して開口部14から処理面5aに供給される。なお、本実施形態においても、上板部12bがガラス5の処理面5aに接しているため、水が吐出口12から溢れ出るように、水を処理面5aに供給すればよいので、水圧は低く調整されている。このため、水圧に抗して弁体22を後退させることは容易である。
【0044】
また、リニアアクチュエータ24の励磁が停止された場合、ロッド23と共に前進した弁体22は、下板部12a及び上板部12bのそれぞれの内面に密着状態で接触して開口部14を塞ぐことになる。この密着状態は、ロッド23の前進側への付勢力と、弁体22の後部にわずかでも作用する水圧とにより維持されるので、ロッド23を前進側へ押す電磁石力は不要となる。
【0045】
図9に示すように、光センサ6の検知結果を受けた制御部46によりリニアアクチュエータ24が励磁されるようになっている。そして、リニアアクチュエータ24の作動により、吐出口12の開口部14を塞いでいた弁体22が後退すると、水Wは、直ちに吐出部20から処理面5aに供給されて、処理面5aの曇りを除去することができる。
【0046】
そして、この第3実施形態においては、第1、2の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(9)上記実施形態では、吐出口12の内部において、下板部12a及び上板部12bのそれぞれの内面に密着状態で接触して開口部14を塞ぐ位置と、後退して開口部14を開放する位置との間で往復移動が可能な弁体22を備えるようにした。そして、弁体22を先端に固定したロッド23を有するリニアアクチュエータ24の作動により、弁体22の後退が行われるようにした。このため、光センサ6の検知により処理面5aに対する水Wの供給が必要とされた時、時間差を伴うことなく制御部46の制御により弁体22の後退を行って、吐出口12の開口部14から処理面5aに直ちに水Wを供給することができる。
【0047】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した第4実施形態を、第1〜3実施形態と異なる部分を中心に図7を用いて説明する。
【0048】
本実施形態の吐出部30では、吐出口35が、パイプ状基体31の開口部31aの上側端縁に一体に形成された上板部32と、開口部31aの下側端縁に基体側端部33aが固着された可撓性材料からなる下板部33とより構成されている。上板部32と下板部33とのそれぞれの長手方向(紙面に直交する方向)の端部は互いに固着されている。mた、上板部32はガラス5の処理面5aに接触している。
【0049】
更に、下板部33の長手方向の長さ以上の長さを有する丸棒状のカム状体34が、下板部33の下方において、上板部32の端部32aの長手方向に沿うように、図示しない回動型アクチュエータによって回動可能に支持されている。カム状体34には、カット面34aが形成されている。このカム状体34等により開閉装置が構成されている。
【0050】
この吐出部30においては、図7(a)に示すように、カム状体34の外周面が下板部33の開口側端部33bに当接することにより、開口側端部33bは端部32aに押し付けられるので、吐出口35は閉じた状態となる。
【0051】
そして、図7(b)に示すように、カム状体34が反時計方向に回動して、カット面34aが開口側端部33bに対向する位置に配置された時、開口側端部33bは、端部32aに対して押し付けられた状態から開放される。すると、開口側端部33bは、水圧により端部32aとの密着部分を広げられるので、端部32aと開口側端部33bとの隙間から水Wが処理面5aに供給されるようになる。
【0052】
なお、下板部33を形成する可撓性材料としては特に限定されるものではないが、合成樹脂エラストマー製シートやゴム製シート等が好適に選択される。ゴム製シートの採用に当たっては、カム状体34が摺動する部分に自己潤滑性を有する合成樹脂製フィルムを貼着することが好ましい。
【0053】
そして、この第4実施形態においては、第3実施形態における効果に替えて、以下の効果を得ることができる。
(10)上記実施形態では、カット面34aを有する丸棒状のカム状体34の回動により、可撓性材料からなる下板部33の開口側端部33bを、上板部32の端部32aに押し付けて吐出口35を閉じたり、開口側端部33bの押し付け状態を開放して吐出口35を開いたりするようにした。このため、簡単な構造により吐出口35の開閉を行うことができる吐出部30を備えた防曇ガラス装置1を提供することができる。
【0054】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 施設がリゾート型温泉の浴室2であるとしたが、施設が、子供が利用する温水プール或いは老人ホームの浴室であること。
・ 光センサ6の設置位置を下枠面4aとしたが、開口4の他の面である縦枠面4b或いは上枠面4cとすること。また、監視カメラ7の撮像の妨げとならない限りにおいて、ガラス5の他の適宜位置とすること。
・ 電磁式の開閉バルブ43を壁2aの内側の監視室3内に配置したが、吐出部10の端部と供給管8との間に配置すること。また、壁2aの外側且つ供給管8の途中に配置すること。
・ 防曇ガラス装置1を、監視カメラ7が設置された監視室3と浴室2との間を隔てるガラス5における装置としたが、監視カメラ7を収容したケースの前面に配置された防曇ガラス装置とすること。
・ 防曇ガラス装置1を、監視カメラ7が設置された監視室3と浴室2との間を隔てるガラス5における装置としたが、湿気が多い施設の施設内と屋外とを隔てるガラスにおける装置とすること。
・ ウォーターハンマー防止手段としてU字管44を設けたが、U字管44に替わり公知の衝撃解除弁又は衝撃防止装置を用いること。
【符号の説明】
【0055】
W…水、1…防曇ガラス装置、3…監視室、5…ガラス、5a…処理面、7…監視カメラ、10,20,30…吐出部、12,35…吐出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多湿気施設の施設に面して配置される防曇ガラス装置において、前記多湿気施設に面する側のガラスの表面には親水性処理が施されていると共に、その処理面の上部に対して水を供給するための吐出口を有する吐出部が備えられたことを特徴とする防曇ガラス装置。
【請求項2】
前記ガラスは、監視カメラが設置された監視室と前記多湿気施設との間を隔てるものであることを特徴とする請求項1に記載の防曇ガラス装置。
【請求項3】
前記吐出口からの水の吐出及び停止を切り替えるためのバルブを前記監視室内に配置したことを特徴とする請求項2に記載の防曇ガラス装置。
【請求項4】
前記バルブの上流側にウォーターハンマー防止手段を設けたことを特徴とする請求項3に記載の防曇ガラス装置。
【請求項5】
前記親水性処理には光触媒が用いられていることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか一項に記載の防曇ガラス装置。
【請求項6】
前記ガラスに対して、前記監視カメラの撮影可能域に対応する部分に水が吐出されるように、前記吐出口が配置されていることを特徴とする請求項2ないし5のうちいずれか一項に記載の防曇ガラス装置。
【請求項7】
前記吐出口は、水平方向の帯状に水を供給するための細長状に形成され、その吐出口の上側の開口端縁が、前記ガラスに接触状態で配置されていることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか一項に記載の防曇ガラス装置。
【請求項8】
前記吐出部には、前記吐出口を開閉する開閉装置が備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防曇ガラス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−236678(P2011−236678A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110246(P2010−110246)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】