説明

目標追跡装置

【課題】等速直線運動を行う目標と等速直線以外の運動を行う目標の両方に対して追跡性能を向上させることができる目標追跡装置を得る。
【解決手段】目標を追跡するアクティブセンサ3からの観測値に基づく目標航跡と、目標の角度を測定するパッシブセンサ1からの観測値に基づく目標航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら2つの目標航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部5と、データ融合部からのデータ融合航跡に基づいて、パッシブセンサからの観測値を入力して目標の航跡を算出するための補正情報を算出する補正情報算
出部6aと、パッシブセンサからの観測値と補正情報算出部からの補正情報に基づいて、複数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標の航跡を加重平均して目標航跡として出力するパッシブセンサ処理部2aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電磁波または音波を放射し、これによって目標から反射される電
磁波または音波を測定するアクティブセンサと、目標から放射される電磁波または音波の
角度を測定するパッシブセンサとを用いて、目標の追跡を行なう目標追跡装置に関し、特
に等速直線運動を行う目標と等速直線以外の運動を行う目標の両方に対して追跡性能を向
上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の目標追跡装置の構成の一例を示すブロック図である。この目標追跡装置
は、パッシブセンサ1、パッシブセンサ処理部2、アクティブセンサ3、アクティブセン
サ処理部4およびデータ融合部5を備えている。アクティブセンサ3およびアクティブセ
ンサ処理部4は、外部装置である。
【0003】
パッシブセンサ1は、目標から放射(再放射を含む)される電磁波または音波の角度、
換言すれば、目標の角度を測定し、観測値(測角データ)としてパッシブセンサ処理部2
に送る。パッシブセンサ処理部2は、パッシブセンサ1からの観測値に基づいて、予測値
および平滑値を算出し、目標航跡としてデータ融合部5に送る。また、パッシブセンサ処
理部2は、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する制御信号を生成し
、パッシブセンサ1に送る。
【0004】
アクティブセンサ3は、電磁波または音波を放射し、これによって目標から反射される
電磁波または音波を測定し、観測値としてアクティブセンサ処理部4に送る。アクティブ
センサ処理部4は、パッシブセンサ処理部2と同様に、アクティブセンサ3からの観測値
に基づいて、予測値および平滑値を算出し、目標航跡としてデータ融合部5に送る。また
、アクティブセンサ処理部4は、目標航跡に基づいて、アクティブセンサ3の姿勢等を制
御する制御信号を生成し、アクティブセンサ3に送る。データ融合部5は、パッシブセン
サ処理部2からの目標航跡とアクティブセンサ処理部4からの目標航跡とが同一目標を示
していると判定した場合に、これらの目標航跡のデータ融合を行い、データ融合航跡とし
て外部に出力する。
【0005】
次に、上記のように構成される従来の目標追跡装置の動作を説明する。図10(a)は
、従来の目標追跡装置で行われる目標追跡処理のうち、パッシブセンサ処理部2において
行われる処理の流れを示すフローチャートであり、図10(b)は、データ融合部5にお
いて行われる処理の流れを示すフローチャートである。なお、アクティブセンサ処理部4
において行われる処理は周知であるので、説明は省略する。
【0006】
まず、パッシブセンサ処理部2において行われる処理を、図10(a)に示すフローチ
ャートを参照しながら説明する。処理が開始されると、パッシブセンサ処理部2では、ま
ず、観測値が入力される(ST101)。すなわち、パッシブセンサ1は、パッシブセン
サ処理部2からの制御信号に基づいて目標の観測を行い、目標の観測値を算出してパッシ
ブセンサ処理部2に送る。パッシブセンサ処理部2は、パッシブセンサ1から送られてく
る観測値を入力する。
【0007】
次いで、予測処理が実行される(ST102)。すなわち、パッシブセンサ処理部2は
、前回観測時のステップST103において算出された目標の平滑値およびその共分散行
列に基づいて、目標の予測値およびその共分散行列を算出する。次いで、平滑処理(航跡
出力)が実行される(ST103)。すなわち、パッシブセンサ処理部2は、パッシブセ
ンサ1からの目標の観測値と、ステップST102において算出された目標の予測値およ
びその共分散行列に基づいて、目標の平滑値およびその共分散行列を算出し、目標航跡と
して出力する。次いで、制御処理が実行される(ST104)。すなわち、パッシブセン
サ処理部2は、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する制御信号を生
成し、パッシブセンサ1に送る。
【0008】
次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST105)。ステップST105におい
て、終了でないことが判断されると、ステップST101に戻り、上述した処理が繰り返
される。一方、ステップST105において、終了であることが判断されると、パッシブ
センサ処理部2における処理は終了する。
【0009】
次に、データ融合部5において行われる処理を、図10(b)に示すフローチャートを
参照しながら説明する。データ融合部5では、まず、航跡が入力される(ST201)。
すなわち、データ融合部5は、パッシブセンサ処理部2からの目標航跡を入力するととも
に、アクティブセンサ処理部4からの目標航跡を入力する。次いで、データ融合処理が実
行される(ST202)。すなわち、データ融合部5は、パッシブセンサ処理部2からの
目標航跡とアクティブセンサ処理部4からの目標航跡とのデータ融合を行い、データ融合
航跡として外部に出力する。データ融合処理の詳細は後述する。
【0010】
次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST203)。ステップST203におい
て、終了でないことが判断されると、ステップST201に戻り、上述した処理が繰り返
される。一方、ステップST203において、終了であることが判断されると、データ融
合部5における処理は終了する。
【0011】
次に、パッシブセンサ処理部2で行われる処理内容について、詳細に説明する。目標の
運動モデルを以下のように定義する。なお、以下において、バーxは「x(−)」と表記
する。
【数1】


【数2】


【数3】


【数4】


【数5】

【0012】

ここで、x(−)は、観測時刻tにおける方位角a、高低角eおよびそれらの
速度成分からなる状態ベクトル、Fk+1とGk+1は、観測時刻tから観測時刻t
+1への遷移行列と駆動行列、wは、観測時刻tの平均0、共分散行列Qのプロセ
ス雑音ベクトル、σとσは、観測時刻tにおけるプロセス雑音の水平面と垂直
面の標準偏差、rは、観測時刻tにおけるパッシブセンサ1から目標までの距離であ
る。また、Aは、ベクトルまたは行列Aの転置、Iは、n行n列の単位行列、O
、n行n列の零行列を示す。
【0013】
パッシブセンサ1の観測モデルを以下のように定義する。
【数6】


【数7】


【数8】

【0014】

ここで、yは、観測時刻tのパッシブセンサ1の観測ベクトル、Hは、観測時刻
のパッシブセンサ1の観測行列、vは、観測時刻tのパッシブセンサ1の平均0
、共分散行列Rの観測雑音ベクトル、σとσは、観測時刻tにおける観測雑
音の方位角と高低角の標準偏差である。
【0015】
上述したステップST101では、パッシブセンサ1からの観測値を観測ベクトルy
として入力する。上述したステップST102においては、前回観測時の平滑処理の結果
を用いて、以下の式で表される予測処理が実施される。なお、以下において、ハットxは
「x(^)」と表記する。
【数9】


【数10】


【数11】

【0016】

ここで、x(^)k|k−1とPk|k−1は、観測時刻tの予測ベクトルと予測誤
差共分散行列であり、x(^)k−1|k−1とPk−1|k−1は、観測時刻tk−1
の平滑ベクトルと平滑誤差共分散行列である。なお、プロセス雑音共分散行列Qk−1
算出は、目標距離の真値rk−1が得られないため、予め設定された目標距離rpres
etが用いられる。
【0017】
上述したステップST103においては、パッシブセンサ1からの観測ベクトルと予測
処理の結果を用いて、以下の式で表される平滑処理が実施される。なお、以下において、
チルダyは「y(〜)」と表記する。
【数12】


【数13】


【数14】


【数15】


【数16】

【0018】

ここで、y(〜)は、観測時刻tのパッシブセンサ1の残差ベクトル、Sは、観
測時刻tのパッシブセンサ1の残差共分散行列、Kは、観測時刻tのパッシブセン
サ1のカルマンゲイン行列、x(^)k|kとPk|kは、観測時刻tの平滑ベクトル
と平滑誤差共分散行列である。また、A−1は、行列Aの逆行列を示す。
【0019】
上述したステップST104では、制御処理が実行される。上述したステップST10
5では、終了判定処理が実施される。
【0020】
次に、上記ステップST202で行われるデータ融合処理の詳細を、図11に示すフロ
ーチャートを参照しながら説明する。データ融合処理が開始されると、まず、同一目標判
定処理が行われる(ST301)。すなわち、データ融合部5は、パッシブセンサ処理部
2からの目標航跡とアクティブセンサ処理部4からの目標航跡とが同一の目標の航跡であ
るかどうかを判定する。次いで、データ融合航跡算出処理が行われる(ST302)。す
なわち、データ融合部5は、パッシブセンサ処理部2からの目標航跡とアクティブセンサ
処理部4からの目標航跡とが同一の目標の航跡であることを判定した場合に、これら2つ
の目標航跡のデータ融合処理を行い、データ融合航跡として外部に出力する。その後、デ
ータ融合処理は終了する。
【0021】
なお、データ融合処理(同一目標判定処理とデータ融合航跡算出処理)としては、非特
許文献4等に開示されているデータ融合処理を用いることができる。また、同一目標判定
処理としては、特許文献4に開示されている処理を用いることができる。
【0022】
以上説明したように、パッシブセンサ1による目標追跡処理では、パッシブセンサ1か
ら目標までの距離情報が得られないため、プロセス雑音共分散行列Qk−1に誤差が発生
する。この結果、この値から間接的に算出され、航跡算出に用いられるフィルタゲイン(
カルマンゲイン行列)も、最適値が算出されず航跡誤差が大きくなる。また、上述したよ
うに、パッシブセンサ処理部2において算出する目標航跡の航跡誤差が大きいため、パッ
シブセンサ処理部2とアクティブセンサ処理部4からの目標航跡に基づいて、データ融合
部5において算出されるデータ融合航跡の航跡誤差が大きくなる。
【0023】
そこで本願出願人は、特願2009−198348により、この問題の解決を行うための提案を行った。この特願2009−198348によれば、データ融合部は、パッシブセンサとアクティブセンサから入力される目標航跡に基づいてデータ融合航跡を算出し、補正情報算出部は、データ融合部からのデータ融合航跡に基づいて、パッシブセンサからの観測値を入力して目標の航跡を算出するための補正情報を算出し、パッシブセンサ処理部は、補正情報算出部からの補正情報に基づいて目標の航跡を算出することにより、パッシブセンサ処理部からの追跡精度を向上させる技術が開示されている。これにより、特に等速直線運動を行う目標に対する追跡性能を向上させることができる。
【0024】
なお、等速直線運動を行う目標と等速直線以外の運動を行う目標の両方に対して追跡性
能を向上させる技術として、複数の運動モデルを並列動作させるIMM(Interac
ting Multiple Model)フィルタが、非特許文献3等に開示されてい
るが、一般的に、多くの運動モデルが3次元直交座標系の運動として定義してあるために
、アクティブセンサ処理部4に適用できるものの、2次元極座標系等で目標航跡の推定を
行なうパッシブセンサ処理部2に適用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平7−128436号公報
【特許文献2】特開2009−38777号公報
【特許文献3】特開2002−181926号公報
【特許文献4】特開平6−94830号公報
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】D. Howard, "Tracking Radar," in Radar Handbook, 2nd ed., ch.18, ed. M. Skolnik, McGraw-Hill, New York, 1990.
【非特許文献2】吉田孝監修,改訂 レーダ技術,pp.264-267,電子情報通信学会, 1996.
【非特許文献3】Y. Bar-Shalom, X. R. Li, T. Kirubarajan, Estimation with Applications to Tracking and Navigation, Wiley-Interscience, 2001
【非特許文献4】S. S. Blackman, Multiple-Target Tracking with Radar Applications, Artech House, 1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上述したように、パッシブセンサを用いた目標追跡装置では、一般的には、パッシブセ
ンサ1から目標までの距離情報が得られないため、航跡算出に用いられるフィルタゲイン
も、最適値が算出されず航跡誤差が大きくなる。また、同じ理由により、パッシブセンサ
を中心とするローカル座標系で目標を追跡することになるが、例えばローカル座標系とし
て極座標系を用いる場合、非特許文献1に示すように、目標が直交座標系で等速直線運動
を行なっていても、極座標系では角加速度、角加速度の微分成分が発生する。これに対応
しようとして、非特許文献2に示すように、フィルタゲインを大きくすると、航跡誤差の
ランダム成分が大きくなり、航跡誤差のランダム成分を小さくしようとしてフィルタゲイ
ンを小さくすると、航跡誤差のバイアス成分が大きくなるため、パッシブセンサを用いた
目標追跡装置の追跡性能を向上させることが難しく、パッシブセンサを用いた目標追跡装
置からの航跡を用いてデータ融合を行っても、データ融合航跡の精度を向上させることが
できないという問題がある。
【0028】
また、本願出願人が特願2009−198348に開示した技術は上述したように優れた技術であるが、単一の運動モデルを前提としているために、等速直線運動を行う目標に最適化すると、等
速直線以外の運動を行う目標に対する追跡性能が劣化し、等速直線以外の運動を行う目標に最適化すると、等速直線運動を行う目標に対する追跡性能が劣化して、等速直線運動を行う目標と等速直線以外の運動を行う目標の両方に対して追跡性能を向上させることができないという問題がある。
【0029】
なお、特許文献1には、パッシブセンサとアクティブセンサを組み合わせ、パッシブセ
ンサとアクティブセンサからの情報に基づいて、アクティブセンサを制御する低被探知性
センサ装置が開示され、特許文献2には、パッシブセンサとしてカメラを用い、カメラの
パン・チルト制御を制御ベクトルとして考慮する自動追尾装置が開示されている。
【0030】
本発明の課題は、等速直線運動を行う目標と等速直線以外の運動を行う目標の両方に対
して追跡性能を向上させることができる目標追跡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題を解決するために、本実施形態の目標追跡装置は、目標の角度を測定して観測
値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力して複数の運動モデルに対応する目
標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標の航跡を加重平均して目標の航跡と
して出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセンサからの観測値を入力して目標の
航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と前記パッシブセンサ処理部からの航
跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら2つの航跡のデータ融合を行ってデ
ータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パッシブセンサ処理部に補正情報を出
力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって、前記補正情報算出部は、前記デー
タ融合部からのデータ融合航跡に基づいて、補正情報として、前記パッシブセンサから目
標までの距離を算出することと、前記パッシブセンサ処理部は、前記補正情報算出部で算
出された目標までの距離に基づいて、複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行
列を算出し、算出した複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列に基づいて、
目標の航跡を算出することとを特徴とする。
【0032】
また、目標の角度を測定して観測値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力
して複数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標
の航跡を加重平均して目標の航跡として出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセ
ンサからの観測値を入力して目標の航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と
前記パッシブセンサ処理部からの航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら
2つの航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パ
ッシブセンサ処理部に補正情報を出力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって
、前記補正情報算出部は、前記データ融合部からのデータ融合航跡とデータ融合航跡に対
応し前記アクティブセンサ処理部から出力されるプロセス雑音共分散行列を含む目標航跡
に基づいて、補正情報として、前記パッシブセンサから目標までの距離と前記パッシブセ
ンサの位置における目標のプロセス雑音共分散行列を算出することと、前記パッシブセン
サ処理部は、前記補正情報算出部で算出された前記パッシブセンサから目標までの距離と
プロセス雑音共分散行列に基づいて、複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行
列と運動モデル確率を算出し、算出した複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散
行列と運動モデル確率に基づいて、目標の航跡を算出することとを特徴とする。
【0033】
また、目標の角度を測定して観測値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力
して複数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標
の航跡を加重平均して目標の航跡として出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセ
ンサからの観測値を入力して目標の航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と
前記パッシブセンサ処理部からの航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら
2つの航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パ
ッシブセンサ処理部に補正情報を出力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって
、前記補正情報算出部は、前記データ融合部からのデータ融合航跡に基づいて、補正情報
として、前記パッシブセンサの位置における目標のバイアス誤差を算出して制御入力とし
て出力することと、前記パッシブセンサ処理部は、前記補正情報算出部から出力される制
御入力に基づいて、複数の運動モデルに対応する目標の予測値を算出し、算出した複数の
運動モデルに対応する予測値に基づいて、目標の航跡を算出することとを特徴とする。
【0034】
また、目標の角度を測定して観測値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力
して複数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標
の航跡を加重平均して目標の航跡として出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセ
ンサからの観測値を入力して目標の航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と
前記パッシブセンサ処理部からの航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら
2つの航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パ
ッシブセンサ処理部に補正情報を出力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって
、前記補正情報算出部は、前記データ融合部からのデータ融合航跡に基づいて、補正情報
として、前記パッシブセンサの位置における目標のバイアス誤差を算出して制御入力とし
て出力し、かつ、前記パッシブセンサから目標までの距離を算出することと、前記パッシ
ブセンサ処理部は、前記補正情報算出部から出力される制御入力に基づいて、複数の運動
モデルに対応する目標の予測値を算出し、かつ、前記補正情報算出部で算出された目標ま
での距離に基づいて、複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列を算出し、算
出した複数の運動モデルに対応する目標の予測値とプロセス雑音共分散行列に基づいて、
目標の航跡を算出することとを特徴とする。
【0035】
また、目標の角度を測定して観測値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力
して複数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標
の航跡を加重平均して目標の航跡として出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセ
ンサからの観測値を入力して目標の航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と
前記パッシブセンサ処理部からの航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら
2つの航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パ
ッシブセンサ処理部に補正情報を出力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって
、前記補正情報算出部は、前記データ融合部からのデータ融合航跡とデータ融合航跡に対
応し前記アクティブセンサ処理部から出力されるプロセス雑音共分散行列を含む目標航跡
に基づいて、補正情報として、前記パッシブセンサの位置における目標のバイアス誤差を
算出して制御入力として出力し、かつ、前記パッシブセンサから目標までの距離と前記パ
ッシブセンサの位置における目標のプロセス雑音共分散行列を算出することと、前記パッ
シブセンサ処理部は、前記補正情報算出部から出力される制御入力に基づいて、複数の運
動モデルに対応する目標の予測値を算出し、かつ、前記補正情報算出部で算出された目標
までの距離とプロセス雑音共分散行列に基づいて、複数の運動モデルに対応するプロセス
雑音共分散行列と運動モデル確率を算出し、算出した複数の運動モデルに対応する目標の
予測値、プロセス雑音共分散行列および運動モデル確率に基づいて、目標の航跡を算出す
ることとを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施形態に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る目標追跡装置において行われる目標追跡処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態に係る目標追跡装置において行われる目標追跡処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】第3の実施形態に係る目標追跡装置において行われる目標追跡処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第4の実施形態に係る目標追跡装置において行われる目標追跡処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第5の実施形態に係る目標追跡装置において行われる目標追跡処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態〜第5の実施形態の変形例に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。
【図8】第1の実施形態〜第5の実施形態の他の変形例に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。
【図9】従来の目標追跡装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図10】従来の目標追跡装置において行われる目標追跡処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】従来の目標追跡装置における目標追跡処理の中で行われるデータ融合処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下におい
ては、背景技術の欄で説明した構成部分と同一または相当する部分には、背景技術の欄で
使用した符号と同じ符号を用いて説明する。
【実施例1】
【0038】
図1は、第1の実施形態に係る目標追跡装置の構成を示すブロック図である。この目標
追跡装置は、パッシブセンサ1、パッシブセンサ処理部2a、アクティブセンサ3、アク
ティブセンサ処理部4、データ融合部5および補正情報算出部6aを備えている。アクテ
ィブセンサ3およびアクティブセンサ処理部4は、外部装置である。
【0039】
パッシブセンサ1は、目標から放射(再放射を含む)される電磁波または音波の角度、
換言すれば、目標の角度を測定し、観測値(測角データ)としてパッシブセンサ処理部2
aに送る。パッシブセンサ処理部2aは、パッシブセンサ1からの観測値と補正情報算出
部6aからの補正情報(目標距離)とに基づいて、複数の運動モデルに対応する予測値お
よび複数の運動モデルに対応する平滑値を算出すると共に、複数の運動モデルに対応する
平滑値を加重平均した平滑値を算出し、目標航跡としてデータ融合部5に送る。また、パ
ッシブセンサ処理部2aは、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する
制御信号を生成し、パッシブセンサ1に送る。
【0040】
アクティブセンサ3は、電磁波または音波を放射し、これによって目標から反射される
電磁波または音波を測定し、観測値としてアクティブセンサ処理部4に送る。アクティブ
センサ処理部4は、パッシブセンサ処理部2aと同様に、アクティブセンサ3からの観測
値に基づいて、予測値および平滑値を算出し、目標航跡としてデータ融合部5に送る。ま
た、アクティブセンサ処理部4は、目標航跡に基づいて、アクティブセンサ3の姿勢等を
制御する制御信号を生成し、アクティブセンサ3に送る。
【0041】
データ融合部5は、パッシブセンサ処理部2aからの目標航跡とアクティブセンサ処理
部4からの目標航跡とが同一目標を示していると判定した場合に、これらの目標航跡のデ
ータ融合を行い、データ融合航跡として補正情報算出部6aに送る。補正情報算出部6a
は、データ融合部5から送られてくるデータ融合航跡に基づいて、目標距離(パッシブセ
ンサ1から目標までの距離)を算出し、補正情報としてパッシブセンサ処理部2aに送る

【0042】
次に、上記のように構成される第1の実施形態に係る目標追跡装置の動作を説明する。
図2(a)は、第1の実施形態に係る目標追跡装置で行われる目標追跡処理のうち、パッ
シブセンサ処理部2aにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートであり、図2(
b)は、データ融合部5と補正情報算出部6aにおいて行われる処理の流れを示すフロー
チャートである。なお、アクティブセンサ処理部4において行われる処理は周知であるの
で、説明は省略する。また、以下においては、図10のフローチャートに示した従来の目
標追跡装置で行われる処理と同じ処理を行うステップには、図10で使用した符号と同じ
符号を付して説明する。
【0043】
まず、パッシブセンサ処理部2aにおいて行われる処理を、図2(a)に示すフローチ
ャートを参照しながら説明する。処理が開始されると、パッシブセンサ処理部2aでは、
まず、観測値が入力される(ST101)。すなわち、パッシブセンサ1は、パッシブセ
ンサ処理部2aからの制御信号に基づいて目標の観測を行い、目標の観測値を算出してパ
ッシブセンサ処理部2aに送る。パッシブセンサ処理部2aは、パッシブセンサ1から送
られてくる観測値を入力する。
【0044】
次いで、補正情報入力処理(目標距離)が実行される(ST111)。すなわち、パッ
シブセンサ処理部2aは、補正情報算出部6aから補正情報(目標距離)を入力する。次
いで、共分散算出処理が実行される(ST112)。すなわち、パッシブセンサ処理部2
aは、補正情報算出部6aからの補正情報(目標距離)に基づいて、複数の運動モデルに
対応するプロセス雑音共分散行列を算出する。
【0045】
次いで、予測処理が実行される(ST113)。すなわち、パッシブセンサ処理部2a
は、前回観測時のステップST114において算出された複数の運動モデルに対応する目
標の平滑値およびその共分散行列とステップST112において算出された複数の運動モ
デルに対応するプロセス雑音共分散行列とに基づいて、複数の運動モデルに対応する目標
の予測値およびその共分散行列を算出する。
【0046】
次いで、平滑処理(航跡出力)が実行される(ST114)。すなわち、パッシブセン
サ処理部2aは、パッシブセンサ1からの目標の観測値とステップST113において算
出された複数の運動モデルに対応する目標の予測値およびその共分散行列とに基づいて、
複数の運動モデルに対応する目標の平滑値およびその共分散行列を算出すると共に、これ
らを加重平均して、目標の平滑値とその共分散行列を算出し、目標航跡として出力する。
【0047】
次いで、制御処理が実行される(ST104)。すなわち、パッシブセンサ処理部2a
は、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する制御信号を生成し、パッ
シブセンサ1に送る。次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST105)。ステッ
プST105において、終了でないことが判断されると、ステップST101に戻り、上
述した処理が繰り返される。一方、ステップST105において、終了であることが判断
されると、パッシブセンサ処理部2aにおける処理は終了する。
【0048】
次に、データ融合部5と補正情報算出部6aにおいて行われる処理を、図2(b)に示
すフローチャートを参照しながら説明する。データ融合部5では、まず、航跡が入力され
る(ST201)。すなわち、データ融合部5は、パッシブセンサ処理部2aからの目標
航跡を入力するとともに、アクティブセンサ処理部4からの目標航跡を入力する。次いで
、データ融合処理が実行される(ST202)。すなわち、データ融合部5は、パッシブ
センサ処理部2aからの目標航跡とアクティブセンサ処理部4からの目標航跡とのデータ
融合を行い、データ融合航跡として補正情報算出部6aに送る。このデータ融合処理は、
図11のフローチャートを参照して説明した従来の目標追跡装置で行われるデータ融合処
理と同じである。
【0049】
次いで、補正情報算出処理(目標距離)が実行される(ST211)。すなわち、補正
情報算出部6aは、データ融合部5からのデータ融合航跡に基づいてパッシブセンサ1か
ら目標までの距離を算出し、パッシブセンサ1からの観測値を入力して目標の航跡を算出
するための補正情報(目標距離)としてパッシブセンサ処理部2aに送る。次いで、終了
であるかどうかが調べられる(ST203)。ステップST203において、終了でない
ことが判断されると、ステップST201に戻り、上述した処理が繰り返される。一方、
ステップST203において、終了であることが判断されると、データ融合部5における
処理は終了する。
【0050】
次に、補正情報算出部6aとパッシブセンサ処理部2aで行われる処理内容について、
詳細に説明する。目標の運動モデルを以下のように定義する。
【数17】


【数18】


【数19】


【数20】


【数21】

【0051】

ここで、xは、i番目の運動モデルに対応する観測時刻tにおける方位角a
、高低角eとそれらの速度成分からなる状態ベクトル、Fk+1とGk+1は、観測
時刻tから観測時刻tk+1への遷移行列と駆動行列、wは、i番目の運動モデル
に対応する観測時刻tの平均0、i番目の運動モデルに対応する共分散行列Qのプ
ロセス雑音ベクトル、σh,iとσv,iは、i番目の運動モデルに対応する観測時
刻tにおけるプロセス雑音の水平面と垂直面の標準偏差、rは、観測時刻tにおけ
るパッシブセンサ1から目標までの距離である。また、Aは、ベクトルまたは行列Aの
転置、Iは、n行n列の単位行列、Oは、n行n列の零行列を示す。
【0052】
パッシブセンサ1の観測モデルを以下のように定義する。
【数22】


【数23】


【数24】

【0053】

ここで、yは、観測時刻tのパッシブセンサ1の観測ベクトル、xは、観測時
刻tの真の状態ベクトル、Hは、観測時刻tのパッシブセンサ1の観測行列、v
は、観測時刻tのパッシブセンサ1の平均0、共分散行列Rの観測雑音ベクトル、σ
とσは、観測時刻tにおける観測雑音の方位角と高低角の標準偏差である。
【0054】
上述したステップST101では、パッシブセンサ1からの観測値を観測ベクトルy
として入力する。また、上述したステップST111では、ステップST211において
算出された目標距離r(^)k−1を入力する。なお、目標距離r(^)k−1は、デー
タ融合航跡に基づいて、以下の式で算出する。
【数25】

【0055】

ここで、xk−1、yk−1、zk−1は、観測時刻tk−1の目標のデータ融合航跡
の位置のx、y、z成分、x、y、zは、パッシブセンサ1の位置のx、y、z成
分である。
【0056】
なお、外部装置(アクティブセンサ3とアクティブセンサ処理部4)としては、レーダ
装置等を使用できる。また、パッシブセンサ1と、略同位置に置かれたレーザ測距装置等
の測距装置を用いて、目標距離を直接測定するように構成することができる。
【0057】
上述したステップST112では、補正情報算出部6aからの補正情報(目標距離)に
基づいて、以下の式によりi番目の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列Q
−1を算出する。
【数26】

【0058】

上述したステップST113では、前回観測時の平滑処理の結果とステップST112
で算出したi番目の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列Qk−1を用いて、
以下の式で表される予測処理を実施する。
【数27】


【数28】

【0059】

ここで、x(^)k|k−1とPk|k−1は、i番目の運動モデルに対応する観
測時刻tの予測ベクトルと予測誤差共分散行列であり、x(^)k−1|k−1とP
k−1|k−1は、i番目の運動モデルに対応する観測時刻tk−1の平滑ベクトルと
平滑誤差共分散行列である。
【0060】
上述したステップST114では、パッシブセンサ1からの観測ベクトルと予測処理の
結果を用いて、以下の式で表される平滑処理を実施する。
【数29】


【数30】


【数31】


【数32】


【数33】


【数34】


【数35】


【数36】

【0061】

ここで、y(〜)は、i番目の運動モデルに対応する観測時刻tのパッシブセン
サ1の残差ベクトル、Sは、i番目の運動モデルに対応する観測時刻tのパッシブ
センサ1の残差共分散行列、Kは、i番目の運動モデルに対応する観測時刻tのパ
ッシブセンサ1のカルマンゲイン行列、x(^)k|kとPk|kは、i番目の運動
モデルに対応する観測時刻tの平滑ベクトルと平滑誤差共分散行列、pは、i番目
の運動モデルに対応する観測時刻tの運動モデル確率、lは、i番目の運動モデル
に対応する観測時刻tの運動モデル尤度、x(^)k|kとPk|kは、複数の運動モ
デルを加重平均した観測時刻tの平滑ベクトルと平滑誤差共分散行列である。また、A
−1は、行列Aの逆行列を示す。
【0062】
上述したステップST104では、制御処理が実行される。そして、上述したステップ
ST105では、終了判定処理が実行される。
【0063】
以上説明したように、第1の実施形態に係る目標追跡装置によれば、補正情報算出部6
aは、データ融合部5から出力されるデータ融合航跡に基づいて、補正情報(目標距離)
をパッシブセンサ処理部2aに送り、パッシブセンサ処理部2aは、補正情報から間接的
に算出される複数の運動モデルに対応するフィルタゲイン(カルマンゲイン行列)を航跡
算出に用いるので、パッシブセンサ処理部2aからの等速直線運動を行う目標の航跡誤差
(ランダム成分)と等速直線以外の運動を行う目標の航跡誤差(バイアス成分)を小さく
することができる。その結果、データ融合部5において算出するデータ融合航跡の航跡誤
差を小さくすることができる。
【0064】
なお、上記では、目標の運動モデルとして、等速運動モデルを用いたが、等加速度運動
モデル等の他の運動モデルと組み合わせることができる。また、上記では、パッシブセン
サ処理部2aで実施する処理として、非特許文献3等に開示されているIMMフィルタの
処理を簡略化して示しているが、IMMフィルタの処理を適用できるのは、勿論である。
【0065】
なお、上記では、パッシブセンサ処理部2aの目標の状態ベクトルとして、極座標系を
用いた例を示したが、特許文献2に示されているように、カメラの画像上の目標の位置等
(水平、垂直座標とその速度)を用いるように構成することができる。また、上述した第
1の実施形態に係る目標追跡装置では、補正情報算出部6aは補正情報として目標距離を
算出し、パッシブセンサ処理部2aは、この補正情報(目標距離)に基づいて複数の運動
モデルに対応するプロセス雑音共分散行列を算出したが、補正情報算出部6aは補正情報
として複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列を算出し、パッシブセンサ処
理部2aは、この補正情報(複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列)に基
づいてフィルタゲインを算出するように構成することができる。
【実施例2】
【0066】
第2の実施形態に係る目標追跡装置の構成は、図1に示した第1の実施形態に係る目標
追跡装置の補正情報算出部6aおよびパッシブセンサ処理部2aが、補正情報算出部6b
およびパッシブセンサ処理部2b(いずれも図示は省略)にそれぞれ変更されて構成され
ている。以下では、第1の実施形態に係る目標追跡装置と異なる部分を中心に説明する。
【0067】
補正情報算出部6bは、データ融合部5から送られてくるデータ融合航跡とデータ融合
航跡に対応しアクティブセンサ処理部4から出力されるプロセス雑音共分散行列を含む目
標航跡に基づいて、目標距離(パッシブセンサ1から目標までの距離)と目標のプロセス
雑音共分散行列を算出し、補正情報としてパッシブセンサ処理部2bに送る。パッシブセ
ンサ処理部2bは、パッシブセンサ1からの観測値と補正情報算出部6bからの補正情報
(目標距離とプロセス雑音共分散行列)とに基づいて、複数の運動モデルに対応する予測
値および複数の運動モデルに対応する平滑値を算出すると共に、複数の運動モデルに対応
する平滑値を加重平均した平滑値を算出し、目標航跡としてデータ融合部5に送る。
【0068】
次に、上記のように構成される第2の実施形態に係る目標追跡装置の動作を説明する。
図3(a)は、第2の実施形態に係る目標追跡装置で行われる目標追跡処理のうち、パッ
シブセンサ処理部2bにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートであり、図3(
b)は、データ融合部5と補正情報算出部6bにおいて行われる処理の流れを示すフロー
チャートである。なお、アクティブセンサ処理部4において行われる処理は周知であるの
で、説明は省略する。また、以下においては、図2のフローチャートに示した第1の実施
形態に係る目標追跡装置で行われる処理と同じ処理を行うステップには、図2で使用した
符号と同じ符号を付して説明する。
【0069】
まず、パッシブセンサ処理部2bにおいて行われる処理を、図3(a)に示すフローチ
ャートを参照しながら説明する。処理が開始されると、パッシブセンサ処理部2bでは、
まず、観測値が入力される(ST101)。すなわち、パッシブセンサ1は、パッシブセ
ンサ処理部2bからの制御信号に基づいて目標の観測を行い、目標の観測値を算出してパ
ッシブセンサ処理部2bに送る。パッシブセンサ処理部2bは、パッシブセンサ1から送
られてくる観測値を入力する。
【0070】
次いで、補正情報入力処理(目標距離)が実行される(ST111)。すなわち、パッ
シブセンサ処理部2bは、補正情報算出部6bから補正情報(目標距離)を入力する。次
いで、補正情報入力処理(共分散)が実行される(ST121)。すなわち、パッシブセ
ンサ処理部2bは、補正情報算出部6bからの補正情報(プロセス雑音共分散行列)を入
力する。
【0071】
次いで、共分散算出処理が実行される(ST112)。すなわち、パッシブセンサ処理
部2bは、補正情報算出部6bからの補正情報(目標距離)に基づいて、複数の運動モデ
ルに対応するプロセス雑音共分散行列を算出する。次いで、運動モデル確率算出処理が実
行される(ST122)。すなわち、パッシブセンサ処理部2bは、補正情報算出部6b
からの補正情報(プロセス雑音共分散行列)に基づいて、複数の運動モデルに対応する運
動モデル確率を算出する。
【0072】
次いで、予測処理が実行される(ST113)。すなわち、パッシブセンサ処理部2b
は、前回観測時のステップST114において算出された複数の運動モデルに対応する目
標の平滑値およびその共分散行列とステップ112において算出された複数の運動モデル
に対応するプロセス雑音共分散行列とに基づいて、複数の運動モデルに対応する目標の予
測値およびその共分散行列を算出する。
【0073】
次いで、平滑処理(航跡出力)が実行される(ST114)。すなわち、パッシブセン
サ処理部2bは、パッシブセンサ1からの目標の観測値とステップST113において算
出された複数の運動モデルに対応する目標の予測値およびその共分散行列とに基づいて、
複数の運動モデルに対応する目標の平滑値およびその共分散行列を算出すると共に、これ
らを加重平均して、目標の平滑値およびその共分散行列を算出し、目標航跡として出力す
る。
【0074】
次いで、制御処理が実行される(ST104)。すなわち、パッシブセンサ処理部2b
は、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する制御信号を生成し、パッ
シブセンサ1に送る。次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST105)。ステッ
プST105において、終了でないことが判断されると、ステップST101に戻り、上
述した処理が繰り返される。一方、ステップST105において、終了であることが判断
されると、パッシブセンサ処理部2bにおける処理は終了する。
【0075】
次に、データ融合部5と補正情報算出部6bにおいて行われる処理を、図3(b)に示
すフローチャートを参照しながら説明する。データ融合部5では、まず、航跡が入力され
る(ST201)。すなわち、データ融合部5は、パッシブセンサ処理部2bからの目標
航跡を入力するとともに、アクティブセンサ処理部4からの目標航跡を入力する。次いで
、データ融合処理が実行される(ST202)。すなわち、データ融合部5は、パッシブ
センサ処理部2bからの目標航跡とアクティブセンサ処理部4からの目標航跡とのデータ
融合を行い、データ融合航跡として補正情報算出部6bに送る。このデータ融合処理は、
図11のフローチャートを参照して説明した従来の目標追跡装置で行われるデータ融合処
理と同じである。
【0076】
次いで、補正情報算出処理(目標距離)が実行される(ST211)。すなわち、補正
情報算出部6bは、データ融合部5からのデータ融合航跡に基づいてパッシブセンサ1か
ら目標までの距離を算出し、パッシブセンサ1からの観測値を入力して目標の航跡を算出
するための補正情報(目標距離)としてパッシブセンサ処理部2bに送る。
【0077】
次いで、補正情報算出処理(共分散)が実行される(ST221)。すなわち、補正情
報算出部6bは、データ融合部5からのデータ融合航跡とデータ融合航跡に対応しアクテ
ィブセンサ処理部4から出力されるプロセス雑音共分散行列を含む目標航跡に基づいて目
標のプロセス雑音共分散行列を算出し、パッシブセンサ1からの観測値を入力して目標の
航跡を算出するための補正情報(プロセス雑音共分散行列)としてパッシブセンサ処理部
2bに送る。なお、外部装置(アクティブセンサ3とアクティブセンサ処理部4)として
は、目標のプロセス雑音共分散行列を推定できる特許文献3等に開示されたアダプティブ
カルマンフィルタや非特許文献3等に開示されたIMMフィルタを備えたレーダ装置等を
使用できる。
【0078】
次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST203)。ステップST203におい
て、終了でないことが判断されると、ステップST201に戻り、上述した処理が繰り返
される。一方、ステップST203において、終了であることが判断されると、データ融
合部5における処理は終了する。
【0079】
次に、補正情報算出部6bとパッシブセンサ処理部2bで行われる処理内容について、
詳細に説明する。目標の運動モデルとパッシブセンサ1の観測モデルは、第1の実施形態
と同じであるので説明を省略する。また上述したステップST101とステップST11
1の処理内容も、第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0080】
上述したステップST121では、ステップST221において算出されたプロセス雑
音共分散行列を入力する。なお、ステップST211では、アクティブセンサ処理部4か
ら出力されるプロセス雑音共分散行列Qk−1とデータ融合部5から出力されるデータ
融合航跡とに基づいて、補正情報として、パッシブセンサ1から見たプロセス雑音共分散
行列Qk−1を算出する。
【数37】

【0081】

ここで、アクティブセンサ処理部4から出力されるプロセス雑音共分散行列Qk−1
が以下の(38)式で表されるとすると、変換行列Tk−1は、(39)式のようになる
。なお、(xk−1、yk−1、zk−1)、(ak−1、ek−1)は、座標変換によ
って、データ融合航跡をパッシブセンサ1から見た目標の位置ベクトル(直交座標系と極
座標系)に変換した値である。
【数38】


【数39】

【0082】

なお、上記の(xk−1、yk−1、zk−1)、(ak−1、ek−1)は、データ
融合航跡から算出したが、アクティブセンサ処理部4から出力される航跡に基づいて算出
するように構成することができる。上述したステップST112の処理内容は、第1の実
施形態と同じであるので説明を省略する。
【0083】
上述したステップST122では、ステップST121で入力したプロセス雑音共分散
行列Qk−1とステップST112で算出したi番目の運動モデルに対応するプロセス雑
音共分散行列Qk−1を用いて、(40)式を満足するi番目の運動モデルに対応する
運動モデル確率pk−1を算出する。
【数40】

【0084】

なお、定義(設定)した運動モデルが実際の運動モデルと厳密に当てはまらない場合、
モデル化の誤差成分を加味して、i番目の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列
k−1を補正するように構成することができる。上述したステップST113の処理
内容は、第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0085】
上述したステップST114では、前回観測時の平滑処理(ST114)の(34)式
の代わりに、ステップST122の(40)式で算出したi番目の運動モデルに対応する
運動モデル確率pk−1を用いて、平滑処理を実施する。上述したステップST104
とステップST105の処理内容は、第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0086】
以上説明したように、第2の実施形態に係る目標追跡装置によれば、補正情報算出部6
bは、データ融合部5から出力されるデータ融合航跡に基づいて、補正情報(目標距離と
プロセス雑音共分散行列)をパッシブセンサ処理部2bに送り、パッシブセンサ処理部2
bは、補正情報(目標距離)から間接的に算出される複数の運動モデルに対応するフィル
タゲイン(カルマンゲイン行列)を航跡算出に用いるので、パッシブセンサ処理部2bか
らの等速直線運動を行う目標の航跡誤差(ランダム成分)と等速直線以外の運動を行う目
標の航跡誤差(バイアス成分)を小さくすることができる。また、パッシブセンサ処理部
2bは、補正情報(プロセス雑音共分散行列)から間接的に算出される複数の運動モデル
に対応する運動モデル確率を航跡算出に用いるので、等速直線運動を行う目標と等速直線
以外の運動を行う目標に対し、観測回数が少ない追跡初期段階や、前回観測以降に目標の
運動モデルが変化した場合でも、パッシブセンサ処理部2bからの航跡誤差を小さくする
ことができる。その結果、データ融合部5において算出するデータ融合航跡の航跡誤差を
小さくすることができる。
【実施例3】
【0087】
第3の実施形態に係る目標追跡装置の構成は、図1に示した第1の実施形態に係る目標
追跡装置の補正情報算出部6aおよびパッシブセンサ処理部2aが、補正情報算出部6c
およびパッシブセンサ処理部2c(いずれも図示は省略)にそれぞれ変更されて構成され
ている。以下では、第1の実施形態に係る目標追跡装置と異なる部分を中心に説明する。
【0088】
補正情報算出部6cは、データ融合部5から送られてくるデータ融合航跡に基づいて、
(17)式で定義(設定)した極座標系の等速運動モデルが直交座標系の等速運動モデル
と厳密に当てはまらないことにより発生する目標の角加速度を制御入力ベクトルとみなし
て算出し、補正情報(制御入力ベクトル)としてパッシブセンサ処理部2cに送る。
【0089】
パッシブセンサ処理部2cは、パッシブセンサ1からの観測値と補正情報算出部6cか
らの補正情報(制御入力ベクトル)とに基づいて、複数の運動モデルに対応する予測値お
よび複数の運動モデルに対応する平滑値を算出すると共に、複数の運動モデルに対応する
平滑値を加重平均した平滑値を算出し、目標航跡としてデータ融合部5に送る。また、パ
ッシブセンサ処理部2cは、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する
制御信号を生成し、パッシブセンサ1に送る。
【0090】
次に、上記のように構成される第3の実施形態に係る目標追跡装置の動作を説明する。
図4(a)は、第3の実施形態に係る目標追跡装置で行われる目標追跡処理のうち、パッ
シブセンサ処理部2cにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートであり、図4(
b)は、データ融合部5と補正情報算出部6cにおいて行われる処理の流れを示すフロー
チャートである。なお、アクティブセンサ処理部4において行われる処理は周知であるの
で、説明は省略する。また、以下においては、図2および図3のフローチャートに示した
第1の実施形態および第2の実施形態に係る目標追跡装置で行われる処理と同じ処理を行
うステップには、図2および図3で使用した符号と同じ符号を付して説明する。
【0091】
まず、パッシブセンサ処理部2cにおいて行われる処理を、図4(a)に示すフローチ
ャートを参照しながら説明する。処理が開始されると、パッシブセンサ処理部2cでは、
まず、観測値が入力される(ST101)。すなわち、パッシブセンサ1は、パッシブセ
ンサ処理部2cからの制御信号に基づいて、目標の観測を行い、目標の観測値を算出して
パッシブセンサ処理部2cに送る。パッシブセンサ処理部2cは、パッシブセンサ1から
送られてくる観測値を入力する。次いで、補正情報入力処理(制御入力)が実行される(
ST131)。すなわち、パッシブセンサ処理部2cは、補正情報算出部6cからの補正
情報(制御入力ベクトル)を入力する。
【0092】
次いで、予測処理が実行される(ST132)。すなわち、パッシブセンサ処理部2c
は、前回観測時のステップST114において算出された複数の運動モデルに対応する目
標の平滑値およびその共分散行列と補正情報算出部6cからの補正情報(制御入力ベクト
ル)とに基づいて、複数の運動モデルに対応する目標の予測値およびその共分散行列を算
出する。
【0093】
次いで、平滑処理(航跡出力)が実行される(ST114)。すなわち、パッシブセン
サ処理部2cは、パッシブセンサ1からの目標の観測値とステップST132において算
出された複数の運動モデルに対応する目標の予測値およびその共分散行列とに基づいて、
複数の運動モデルに対応する目標の平滑値およびその共分散行列を算出すると共に、これ
らを加重平均して、目標の平滑値およびその共分散行列を算出し、目標航跡として出力す
る。
【0094】
次いで、制御処理が実行される(ST104)。すなわち、パッシブセンサ処理部2c
は、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する制御信号を生成し、パッ
シブセンサ1に送る。次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST105)。ステッ
プST105において、終了でないことが判断されると、ステップST101に戻り、上
述した処理が繰り返される。一方、ステップST105において、終了であることが判断
されると、目標追跡処理は終了する。
【0095】
次に、データ融合部5と補正情報算出部6cにおいて行われる処理を、図4(b)に示
すフローチャートを参照しながら説明する。データ融合部5では、まず、航跡が入力され
る(ST201)。すなわち、データ融合部5は、パッシブセンサ処理部2cからの目標
航跡を入力するとともに、アクティブセンサ処理部4からの目標航跡を入力する。
【0096】
次いで、データ融合処理が実行される(ST202)。すなわち、データ融合部5は、
パッシブセンサ処理部2cからの目標航跡とアクティブセンサ処理部4からの目標航跡と
のデータ融合を行い、データ融合航跡として補正情報算出部6cに送る。このデータ融合
処理は、図11のフローチャートを参照して説明した従来の目標追跡装置で行われるデー
タ融合処理と同じである。
【0097】
次いで、補正情報算出処理(制御入力)が実行される(ST231)。すなわち、補正
情報算出部6cは、データ融合部5からのデータ融合航跡に基づいて目標の制御入力ベク
トルを算出し、パッシブセンサ1からの観測値を入力して目標の航跡を算出するための補
正情報(制御入力ベクトル)としてパッシブセンサ処理部2cに送る。
【0098】
次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST203)。ステップST203におい
て、終了でないことが判断されると、ステップST201に戻り、上述した処理が繰り返
される。一方、ステップST203において、終了であることが判断されると、データ融
合部5における処理は終了する。
【0099】
次に、補正情報算出部6cとパッシブセンサ処理部2cで行われる処理内容について、
詳細に説明する。目標の運動モデルを以下のように定義する。
【数41】


【数42】


【数43】


【数44】


【数45】


【数46】

【0100】

ここで、xは、i番目の運動モデルに対応する観測時刻tにおける方位角a
、高低角eとそれらの速度成分からなる状態ベクトル、uは、観測時刻tにおけ
る方位角a、高低角eの加速度成分からなる制御入力ベクトル、Fk+1とGk+1
は、観測時刻tから観測時刻tk+1への遷移行列と駆動行列、wは、i番目の運
動モデルに対応する観測時刻tの平均0、i番目の運動モデルに対応する共分散行列Q
のプロセス雑音ベクトル、σh,iとσv,iは、i番目の運動モデルに対応す
る観測時刻tにおけるプロセス雑音の水平面と垂直面の標準偏差、rは、観測時刻t
におけるパッシブセンサ1から目標までの距離である。Aは、ベクトルまたは行列A
の転置、Iは、n行n列の単位行列、Oは、n行n列の零行列を示す。また、パッシ
ブセンサ1の観測モデルは、第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0101】
上述したステップST101の処理内容は、第1の実施形態と同じであるので説明を省
略する。上述したステップST131では、ステップST231において算出された制御
入力ベクトルを入力する。なお、ステップST231では、データ融合部5から出力され
る目標のデータ融合航跡に基づいて、補正情報として、制御入力ベクトル(角加速度)u
k−1を算出する。
【数47】

【0102】

なお、制御入力ベクトル(角加速度)uk−1は、以下の式で算出する。
【数48】

【0103】

ここで、(xk−1、yk−1、zk−1)、(x(・)k−1、y(・)k−1、z
(・)k−1)、(a(・)k−1、e(・)k−1)は、座標変換によって、データ融
合航跡をパッシブセンサ1から見た目標の位置ベクトル、速度ベクトルおよび角速度ベク
トルに変換した値である。
【0104】
上述したステップST132では、前回観測時の平滑処理の結果と制御入力ベクトルu
k−1を用いて、以下の式で表される予測処理を実施する。
【数49】


【数50】


【数51】

【0105】

なお、i番目の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列Qk−1の算出は、目
標距離の真値rk−1が得られないため、予め設定された目標距離rpresetが用い
られる。上述したステップST114、ステップST104およびステップST105の
処理内容は、第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0106】
以上説明したように、第3の実施形態に係る目標追跡装置によれば、補正情報算出部6
cは、データ融合部5から出力されるデータ融合航跡に基づいて、補正情報(制御入力ベ
クトル)をパッシブセンサ処理部2cに送り、パッシブセンサ処理部2cは、補正情報(
制御入力ベクトル)から間接的に算出される複数の運動モデルに対応する予測値を航跡算
出に用いるので、等速直線運動を行う目標と等速直線以外の運動を行う目標に対し、パッ
シブセンサ処理部2cからの航跡誤差(バイアス成分)を小さくすることができる。その
結果、データ融合部5において算出するデータ融合航跡の航跡誤差を小さくすることがで
きる。
【0107】
なお、上記では、目標の運動モデルとして、等速運動モデルを用いたが、等加速度運動
モデル等の他の運動モデルと組み合わせることができる。また、制御入力ベクトルuk−
は、運動モデルによらず一定としたが、運動モデル毎に異なる値や微分次数(角加加速
度等)を取るように構成することができる。さらに、上記では、パッシブセンサ処理部2
cで実施する処理として、非特許文献3等に開示されているIMMフィルタの処理を簡略
化して示しているが、IMMフィルタの処理を適用できるのは、勿論である。
【実施例4】
【0108】
第4の実施形態に係る目標追跡装置の構成は、図1に示した第1の実施形態に係る目標
追跡装置の補正情報算出部6aおよびパッシブセンサ処理部2aが、補正情報算出部6d
およびパッシブセンサ処理部2d(いずれも図示は省略)にそれぞれ変更されて構成され
ている。以下では、第1の実施形態に係る目標追跡装置と異なる部分を中心に説明する。
【0109】
補正情報算出部6dは、データ融合部5から送られてくるデータ融合航跡に基づいて、
目標距離(パッシブセンサ1から目標までの距離)と制御入力ベクトルを算出し、補正情
報としてパッシブセンサ処理部2dに送る。
【0110】
パッシブセンサ処理部2dは、パッシブセンサ1からの観測値と補正情報算出部6dか
らの補正情報(目標距離と制御入力ベクトル)に基づいて、複数の運動モデルに対応する
予測値および複数の運動モデルに対応する平滑値を算出すると共に、複数の運動モデルに
対応する平滑値を加重平均した平滑値を算出し、目標航跡としてデータ融合部5に送る。
また、パッシブセンサ処理部2dは、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を
制御する制御信号を生成し、パッシブセンサ1に送る。
【0111】
次に、上記のように構成される第4の実施形態に係る目標追跡装置の動作を説明する。
図5(a)は、第4の実施形態に係る目標追跡装置で行われる目標追跡処理のうち、パッ
シブセンサ処理部2dにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートであり、図5(
b)は、データ融合部5と補正情報算出部6dにおいて行われる処理の流れを示すフロー
チャートである。なお、アクティブセンサ処理部4において行われる処理は周知であるの
で、説明は省略する。また、以下においては、図2〜図4のフローチャートに示した第1
の実施形態〜第3の実施形態に係る目標追跡装置で行われる処理と同じ処理を行うステッ
プには、図2〜図4のフローチャートで使用した符号と同じ符号を付して説明する。
【0112】
まず、パッシブセンサ処理部2dにおいて行われる処理を、図5(a)に示すフローチ
ャートを参照しながら説明する。処理が開始されると、パッシブセンサ処理部2dでは、
まず、観測値が入力される(ST101)。すなわち、パッシブセンサ1は、パッシブセ
ンサ処理部2dからの制御信号に基づいて、目標の観測を行い、目標の観測値を算出して
パッシブセンサ処理部2dに送る。パッシブセンサ処理部2dは、パッシブセンサ1から
送られてくる観測値を入力する。
【0113】
次いで、補正情報入力処理(目標距離)が実行される(ST111)。すなわち、パッ
シブセンサ処理部2dは、補正情報算出部6dからの補正情報(目標距離)を入力する。
次いで、補正情報入力処理(制御入力)が実行される(ST131)。すなわち、パッシ
ブセンサ処理部2dは、補正情報算出部6dからの補正情報(制御入力ベクトル)を入力
する。次いで、共分散算出処理が実行される(ST112)。すなわち、パッシブセンサ
処理部2dは、補正情報算出部6dからの補正情報(目標距離)に基づいて、複数の運動
モデルに対応するプロセス雑音共分散行列を算出する。
【0114】
次いで、予測処理が実行される(ST132)。すなわち、パッシブセンサ処理部2d
は、前回観測時のステップST114において算出された複数の運動モデルに対応する目
標の平滑値およびその共分散行列、補正情報算出部6dからの補正情報(制御入力ベクト
ル)およびステップST112で算出した複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分
散行列に基づいて、複数の運動モデルに対応する目標の予測値およびその共分散行列を算
出する。
【0115】
次いで、平滑処理(航跡出力)が実行される(ST114)。すなわち、パッシブセン
サ処理部2dは、パッシブセンサ1からの目標の観測値とステップST132において算
出された複数の運動モデルに対応する目標の予測値およびその共分散行列とに基づいて、
複数の運動モデルに対応する目標の平滑値およびその共分散行列を算出すると共に、これ
らを加重平均して、目標の平滑値およびその共分散行列を算出し、目標航跡として出力す
る。
【0116】
次いで、制御処理が実行される(ST104)。すなわち、パッシブセンサ処理部2d
は、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する制御信号を生成し、パッ
シブセンサ1に送る。次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST105)。ステッ
プST105において、終了でないことが判断されると、ステップST101に戻り、上
述した処理が繰り返される。一方、ステップST105において、終了であることが判断
されると、目標追跡処理は終了する。
【0117】
次に、データ融合部5と補正情報算出部6dにおいて行われる処理を、図5(b)に示
すフローチャートを参照しながら説明する。データ融合部5では、まず、航跡が入力され
る(ST201)。すなわち、データ融合部5は、パッシブセンサ処理部2dからの目標
航跡を入力するとともに、アクティブセンサ処理部4からの目標航跡を入力する。
【0118】
次いで、データ融合処理が実行される(ST202)。すなわち、データ融合部5は、
パッシブセンサ処理部2dからの目標航跡とアクティブセンサ処理部4からの目標航跡と
のデータ融合を行い、データ融合航跡として補正情報算出部6dに送る。このデータ融合
処理は、図11のフローチャートを参照して説明した従来の目標追跡装置で行われるデー
タ融合処理と同じである。
【0119】
次いで、補正情報算出処理(目標距離)が実行される(ST211)。すなわち、補正
情報算出部6dは、データ融合部5からのデータ融合航跡に基づいてパッシブセンサ1か
ら目標までの距離を算出し、パッシブセンサ1からの観測値を入力して目標の航跡を算出
するための補正情報(目標距離)としてパッシブセンサ処理部2dに送る。
【0120】
次いで、補正情報算出処理(制御入力)が実行される(ST231)。すなわち、補正
情報算出部6dは、データ融合部5からのデータ融合航跡に基づいて目標の制御入力ベク
トルを算出し、パッシブセンサ1からの観測値を入力して目標の航跡を算出するための補
正情報(制御入力ベクトル)としてパッシブセンサ処理部2dに送る。
【0121】
次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST203)。ステップST203におい
て、終了でないことが判断されると、ステップST201に戻り、上述した処理が繰り返
される。一方、ステップST203において、終了であることが判断されると、データ融
合部5における処理は終了する。
【0122】
次に、補正情報算出部6dとパッシブセンサ処理部2dで行われる処理内容について、
詳細に説明する。目標の運動モデルは、第3の実施形態と同じであるので説明を省略する
。また、パッシブセンサ1の観測モデルは、第1の実施形態と同じであるので説明を省略
する。また、上述したステップST101、ステップST111およびステップST11
2の処理内容は、第1の実施形態と同じであり、ステップST131の処理内容は、第3
の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0123】
上述したステップST132では、(51)式の代わりに、ステップST112の(2
6)式のi番目の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列Qk−1を用いて、予
測処理を実施する。上述したステップST114、ステップST104およびステップS
T105の処理内容は、第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0124】
以上説明したように、第4の実施形態に係る目標追跡装置によれば、補正情報算出部6
dは、データ融合部5から出力されるデータ融合航跡に基づいて、補正情報(目標距離と
制御入力ベクトル)をパッシブセンサ処理部2dに送り、パッシブセンサ処理部2dは、
補正情報(目標距離と制御入力ベクトル)から間接的に算出される複数の運動モデルに対
応するフィルタゲイン(カルマンゲイン行列)と予測値を航跡算出に用いるので、パッシ
ブセンサ処理部2dからの等速直線運動を行う目標の航跡誤差(ランダム成分とバイアス
成分)と等速直線以外の運動を行う目標の航跡誤差(バイアス成分)を小さくすることが
できる。その結果、データ融合部5において算出するデータ融合航跡の航跡誤差を小さく
することができる。
【実施例5】
【0125】
第5の実施形態に係る目標追跡装置の構成は、図1に示した第1の実施形態に係る目標
追跡装置の補正情報算出部6aおよびパッシブセンサ処理部2aが、補正情報算出部6e
およびパッシブセンサ処理部2e(いずれも図示は省略)にそれぞれ変更されて構成され
ている。以下では、第1の実施形態に係る目標追跡装置と異なる部分を中心に説明する。
【0126】
補正情報算出部6eは、データ融合部5から送られてくるデータ融合航跡とデータ融合
航跡に対応しアクティブセンサ処理部4から出力されるプロセス雑音共分散行列を含む目
標航跡に基づいて、目標距離(パッシブセンサ1から目標までの距離)、目標のプロセス
雑音共分散行列および制御入力ベクトルを算出し、補正情報としてパッシブセンサ処理部
2eに送る。
【0127】
パッシブセンサ処理部2eは、パッシブセンサ1からの観測値と補正情報算出部6eか
らの補正情報(目標距離、プロセス雑音共分散行列および制御入力ベクトル)に基づいて
、複数の運動モデルに対応する予測値および複数の運動モデルに対応する平滑値を算出す
ると共に、複数の運動モデルに対応する平滑値を加重平均した平滑値を算出し、目標航跡
としてデータ融合部5に送る。また、パッシブセンサ処理部2eは、目標航跡に基づいて
、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する制御信号を生成し、パッシブセンサ1に送る。
【0128】
次に、上記のように構成される第5の実施形態に係る目標追跡装置の動作を説明する。
図6(a)は、第5の実施形態に係る目標追跡装置で行われる目標追跡処理のうち、パッ
シブセンサ処理部2eにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートであり、図6(
b)は、データ融合部5と補正情報算出部6eにおいて行われる処理の流れを示すフロー
チャートである。なお、アクティブセンサ処理部4において行われる処理は周知であるの
で、説明は省略する。また、以下においては、図2〜図5のフローチャートに示した第1
の実施形態〜第4の実施形態に係る目標追跡装置で行われる処理と同じ処理を行うステッ
プには、図2〜図5のフローチャートで使用した符号と同じ符号を付して説明する。
【0129】
まず、パッシブセンサ処理部2eにおいて行われる処理を、図6(a)に示すフローチ
ャートを参照しながら説明する。処理が開始されると、パッシブセンサ処理部2eでは、
まず、観測値が入力される(ST101)。すなわち、パッシブセンサ1は、パッシブセ
ンサ処理部2eからの制御信号に基づいて、目標の観測を行い、目標の観測値を算出して
パッシブセンサ処理部2eに送る。パッシブセンサ処理部2eは、パッシブセンサ1から
送られてくる観測値を入力する。
【0130】
次いで、補正情報入力処理(目標距離)が実行される(ST111)。すなわち、パッ
シブセンサ処理部2eは、補正情報算出部6eから補正情報(目標距離)を入力する。次
いで、補正情報入力処理(共分散)が実行される(ST121)。すなわち、パッシブセ
ンサ処理部2eは、補正情報算出部6eからの補正情報(プロセス雑音共分散行列)を入
力する。
【0131】
次いで、補正情報入力処理(制御入力)が実行される(ST131)。すなわち、パッ
シブセンサ処理部2eは、補正情報算出部6eからの補正情報(制御入力ベクトル)を入
力する。次いで、共分散算出処理が実行される(ST112)。すなわち、パッシブセン
サ処理部2eは、補正情報算出部6eからの補正情報(目標距離)に基づいて、複数の運
動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列を算出する。次いで、運動モデル確率算出処
理が実行される(ST122)。すなわち、パッシブセンサ処理部2eは、補正情報算出
部6eからの補正情報(プロセス雑音共分散行列)に基づいて、複数の運動モデルに対応
する運動モデル確率を算出する。
【0132】
次いで、予測処理が実行される(ST132)。すなわち、パッシブセンサ処理部2e
は、前回観測時のステップST114において算出された複数の運動モデルに対応する目
標の平滑値およびその共分散行列、補正情報算出部6eからの補正情報(制御入力ベクト
ル)およびステップST112で算出した複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分
散行列に基づいて、複数の運動モデルに対応する目標の予測値およびその共分散行列を算
出する。
【0133】
次いで、平滑処理(航跡出力)が実行される(ST114)。すなわち、パッシブセン
サ処理部2eは、パッシブセンサ1からの目標の観測値とステップST132において算
出された複数の運動モデルに対応する目標の予測値およびその共分散行列とに基づいて、
複数の運動モデルに対応する目標の平滑値およびその共分散行列を算出すると共に、これ
らを加重平均して、目標の平滑値およびその共分散行列を算出し、目標航跡として出力す
る。
【0134】
次いで、制御処理が実行される(ST104)。すなわち、パッシブセンサ処理部2e
は、目標航跡に基づいて、パッシブセンサ1の姿勢等を制御する制御信号を生成し、パッ
シブセンサ1に送る。次いで、終了であるかどうかが調べられる(ST105)。ステッ
プST105において、終了でないことが判断されると、ステップST101に戻り、上
述した処理が繰り返される。一方、ステップST105において、終了であることが判断
されると、目標追跡処理は終了する。
【0135】
次に、データ融合部5と補正情報算出部6eにおいて行われる処理を、図6(b)に示
すフローチャートを参照しながら説明する。データ融合部5では、まず、航跡が入力され
る(ST201)。すなわち、データ融合部5は、パッシブセンサ処理部2eからの目標
航跡を入力するとともに、アクティブセンサ処理部4からの目標航跡を入力する。
【0136】
次いで、データ融合処理が実行される(ST202)。すなわち、データ融合部5は、
パッシブセンサ処理部2eからの目標航跡とアクティブセンサ処理部4からの目標航跡と
のデータ融合を行い、データ融合航跡として補正情報算出部6eに送る。このデータ融合
処理は、図11のフローチャートを参照して説明した従来の目標追跡装置で行われるデー
タ融合処理と同じである。
【0137】
次いで、補正情報算出処理(目標距離)が実行される(ST211)。すなわち、補正
情報算出部6eは、データ融合部5からのデータ融合航跡に基づいてパッシブセンサ1か
ら目標までの距離を算出し、パッシブセンサ1からの観測値を入力して目標の航跡を算出
するための補正情報(目標距離)としてパッシブセンサ処理部2eに送る。
【0138】
次いで、補正情報算出処理(共分散)が実行される(ST221)。すなわち、補正情
報算出部6eは、データ融合部5からのデータ融合航跡とデータ融合航跡に対応しアクテ
ィブセンサ処理部4から出力されるプロセス雑音共分散行列を含む目標航跡に基づいて目
標のプロセス雑音共分散行列を算出し、パッシブセンサ1からの観測値を入力して目標の
航跡を算出するための補正情報(プロセス雑音共分散行列)としてパッシブセンサ処理部
2eに送る。
【0139】
次いで、補正情報算出処理(制御入力)が実行される(ST231)。すなわち、補正
情報算出部6eは、データ融合部5からのデータ融合航跡に基づいて目標の制御入力ベク
トルを算出し、パッシブセンサ1からの観測値を入力して目標の航跡を算出するための補
正情報(制御入力ベクトル)としてパッシブセンサ処理部2eに送る。次いで、終了であ
るかどうかが調べられる(ST203)。ステップST203において、終了でないこと
が判断されると、ステップST201に戻り、上述した処理が繰り返される。一方、ステ
ップST203において、終了であることが判断されると、データ融合部5における処理
は終了する。
【0140】
次に、補正情報算出部6eとパッシブセンサ処理部2eで行われる処理内容について、
詳細に説明する。目標の運動モデルは、第3の実施形態と同じであるので説明を省略する
。また、パッシブセンサ1の観測モデルは、第1の実施形態と同じであるので説明を省略
する。また、上述したステップST101、ステップST111およびステップST11
2の処理内容は、第1の実施形態と同じであり、上述したステップST121とステップ
ST122の処理内容は、第2の実施形態と同じであり、上述したステップST131の
処理内容は、第3の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0141】
上述したステップST132では、(51)式の代わりに、ステップST112の(2
6)式のi番目の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列Qk−1を用いて、予
測処理を実施する。上述したステップST114では、前回観測時の平滑処理(ST11
4)の(34)式の代わりに、ステップST122の(40)式で算出したi番目の運動
モデルに対応する運動モデル確率pk−1を用いて、平滑処理を実施する。上述したス
テップST104とステップST105の処理内容は、第1の実施形態と同じであるので
説明を省略する。
【0142】
以上説明したように、第5の実施形態に係る目標追跡装置によれば、補正情報算出部6
eは、データ融合部5から出力されるデータ融合航跡とデータ融合航跡に対応しアクティ
ブセンサ処理部4から出力されるプロセス雑音共分散行列を含む目標航跡に基づいて、補
正情報(目標距離、プロセス雑音共分散行列および制御入力ベクトル)をパッシブセンサ
処理部2eに送り、パッシブセンサ処理部2eは、補正情報(目標距離と制御入力ベクト
ル)から間接的に算出される複数の運動モデルに対応するフィルタゲイン(カルマンゲイ
ン行列)と予測値を航跡算出に用いるので、パッシブセンサ処理部2eからの等速直線運
動を行う目標の航跡誤差(ランダム成分とバイアス成分)と等速直線以外の運動を行う目
標の航跡誤差(バイアス成分)を小さくすることができる。
【0143】
また、パッシブセンサ処理部2eは、補正情報(プロセス雑音共分散行列)から間接的
に算出される複数の運動モデルに対応する運動モデル確率を航跡算出に用いるので、等速
直線運動を行う目標と等速直線以外の運動を行う目標に対し、観測回数が少ない追跡初期
段階や、前回観測以降に目標の運動モデルが変化した場合でも、パッシブセンサ処理部2
eからの航跡誤差を小さくすることができる。その結果、データ融合部5において算出す
るデータ融合航跡の航跡誤差を小さくすることができる。
【0144】
(変形例)上述した第1の実施形態〜第5の実施形態に係る目標追跡装置は、図7およ
び図8に示すように変形することができる。図7は、パッシブセンサ処理部2a〜2eと
データ融合部5との間を通信部7aおよび通信部7cを介して接続するとともに、アクテ
ィブセンサ処理部4とデータ融合部5との間を通信部7bおよび通信部7cを介して接続
し、さらに、補正情報算出部6a〜6eとパッシブセンサ処理部2a〜2eとの間を通信
部7aおよび通信部7dを介して接続したので、パッシブセンサ1、パッシブセンサ処理
部2a〜2e、アクティブセンサ3およびアクティブセンサ処理部4を含むブロックと、
データ融合部5および補正情報算出部6a〜6eを含むブロックとを別体に構成できる。
【0145】
図8は、図7に示した構成において、さらに、パッシブセンサ1とパッシブセンサ処理
部2a〜2eとの間を通信部8eおよび通信部8fを介して接続したものである。この構
成により、パッシブセンサ1を含むブロックと、パッシブセンサ処理部2a〜2e、アク
ティブセンサ3およびアクティブセンサ処理部4を含むブロックと、データ融合部5およ
び補正情報算出部6a〜6eを含むブロックとを別体に構成できる。これらの変形例のい
ずれにおいても、第1の実施形態〜第5の実施形態において記載した効果と同様の効果を
得ることができる。
【0146】
以上説明したように、上述した本実施形態の目標追跡装置によれば、データ融合部は、
パッシブセンサとアクティブセンサから入力される目標航跡に基づいて、データ融合航跡
を算出し、補正情報算出部は、データ融合部からのデータ融合航跡に基づいて、パッシブ
センサからの観測値を入力して目標の航跡を算出するための補正情報を算出し、パッシブ
センサ処理部は、補正情報算出部からの補正情報に基づいて、複数の運動モデルに対応す
る目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標の航跡を加重平均して目標の航
跡として出力することにより、パッシブセンサ処理部からの追跡性能を向上させることが
できる。その結果、データ融合部において算出するデータ融合航跡の航跡精度を向上させ
ることができる。
【符号の説明】
【0147】
1 パッシブセンサ
2、2a、2b、2c、2d、2e パッシブセンサ処理部
3 アクティブセンサ
4 アクティブセンサ処理部
5 データ融合部
6a、6b、6c、6d、6e 補正情報算出部
7a、7b、7c、7d、8a、8b、8c、8d、8e、8f 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標の角度を測定して観測値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力して複
数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標の航跡
を加重平均して目標の航跡として出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセンサか
らの観測値を入力して目標の航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と前記パ
ッシブセンサ処理部からの航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら2つの
航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パッシブ
センサ処理部に補正情報を出力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって、
前記補正情報算出部は、前記データ融合部からのデータ融合航跡に基づいて、補正情報
として、前記パッシブセンサから目標までの距離を算出することと、
前記パッシブセンサ処理部は、前記補正情報算出部で算出された目標までの距離に基づ
いて、複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列を算出し、算出した複数の運
動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列に基づいて、目標の航跡を算出することと
を特徴とする目標追跡装置。
【請求項2】
目標の角度を測定して観測値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力して複
数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標の航跡
を加重平均して目標の航跡として出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセンサか
らの観測値を入力して目標の航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と前記パ
ッシブセンサ処理部からの航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら2つの
航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パッシブ
センサ処理部に補正情報を出力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって、
前記補正情報算出部は、前記データ融合部からのデータ融合航跡とデータ融合航跡に対
応し前記アクティブセンサ処理部から出力されるプロセス雑音共分散行列を含む目標航跡
に基づいて、補正情報として、前記パッシブセンサから目標までの距離と前記パッシブセ
ンサの位置における目標のプロセス雑音共分散行列を算出することと、
前記パッシブセンサ処理部は、前記補正情報算出部で算出された前記パッシブセンサか
ら目標までの距離とプロセス雑音共分散行列に基づいて、複数の運動モデルに対応するプ
ロセス雑音共分散行列と運動モデル確率を算出し、算出した複数の運動モデルに対応する
プロセス雑音共分散行列と運動モデル確率に基づいて、目標の航跡を算出することと
を特徴とする目標追跡装置。
【請求項3】
目標の角度を測定して観測値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力して複
数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標の航跡
を加重平均して目標の航跡として出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセンサか
らの観測値を入力して目標の航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と前記パ
ッシブセンサ処理部からの航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら2つの
航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パッシブ
センサ処理部に補正情報を出力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって、
前記補正情報算出部は、前記データ融合部からのデータ融合航跡に基づいて、補正情報
として、前記パッシブセンサの位置における目標のバイアス誤差を算出して制御入力とし
て出力することと、
前記パッシブセンサ処理部は、前記補正情報算出部から出力される制御入力に基づいて
、複数の運動モデルに対応する目標の予測値を算出し、算出した複数の運動モデルに対応
する予測値に基づいて、目標の航跡を算出することと
を特徴とする目標追跡装置。
【請求項4】
目標の角度を測定して観測値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力して複
数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標の航跡
を加重平均して目標の航跡として出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセンサか
らの観測値を入力して目標の航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と前記パ
ッシブセンサ処理部からの航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら2つの
航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パッシブ
センサ処理部に補正情報を出力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって、
前記補正情報算出部は、前記データ融合部からのデータ融合航跡に基づいて、補正情報
として、前記パッシブセンサの位置における目標のバイアス誤差を算出して制御入力とし
て出力し、かつ、前記パッシブセンサから目標までの距離を算出することと、
前記パッシブセンサ処理部は、前記補正情報算出部から出力される制御入力に基づいて
、複数の運動モデルに対応する目標の予測値を算出し、かつ、前記補正情報算出部で算出
された目標までの距離に基づいて、複数の運動モデルに対応するプロセス雑音共分散行列
を算出し、算出した複数の運動モデルに対応する目標の予測値とプロセス雑音共分散行列
に基づいて、目標の航跡を算出することと
を特徴とする目標追跡装置。
【請求項5】
目標の角度を測定して観測値として出力するパッシブセンサからの観測値を入力して複
数の運動モデルに対応する目標の航跡を算出し、複数の運動モデルに対応する目標の航跡
を加重平均して目標の航跡として出力するパッシブセンサ処理部と、アクティブセンサか
らの観測値を入力して目標の航跡を算出するアクティブセンサ処理部からの航跡と前記パ
ッシブセンサ処理部からの航跡とが同一目標を示していると判定した場合にこれら2つの
航跡のデータ融合を行ってデータ融合航跡として出力するデータ融合部と、前記パッシブ
センサ処理部に補正情報を出力する補正情報算出部を備える目標追跡装置であって、
前記補正情報算出部は、前記データ融合部からのデータ融合航跡とデータ融合航跡に対
応し前記アクティブセンサ処理部から出力されるプロセス雑音共分散行列を含む目標航跡
に基づいて、補正情報として、前記パッシブセンサの位置における目標のバイアス誤差を
算出して制御入力として出力し、かつ、前記パッシブセンサから目標までの距離と前記パ
ッシブセンサの位置における目標のプロセス雑音共分散行列を算出することと、
前記パッシブセンサ処理部は、前記補正情報算出部から出力される制御入力に基づいて
、複数の運動モデルに対応する目標の予測値を算出し、かつ、前記補正情報算出部で算出
された目標までの距離とプロセス雑音共分散行列に基づいて、複数の運動モデルに対応す
るプロセス雑音共分散行列と運動モデル確率を算出し、算出した複数の運動モデルに対応
する目標の予測値、プロセス雑音共分散行列および運動モデル確率に基づいて、目標の航
跡を算出することと
を特徴とする目標追跡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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