真偽判別可能な模様形成体対
【課題】 本発明は、特別な判別具を必要とせず、種別は同じで、同一の資産価値又は異なる資産価値を有する貴重印刷物同士を重ね合わせた際に、有意味な情報を出現させることで真偽判別することが可能な模様形成体対に関する。
【解決手段】 種別が同一で、かつ、資産価値が同じ又は異なる少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対であって、少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対には、各々の基材上の少なくとも一部に凹形状から成る模様形成要素が形成され、模様形成要素は、基材よりも透過率が高く、かつ、少なくとも二つの模様形成体に形成されている模様形成要素同士が、形状、大きさ、配置の向き及び配置位置の少なくとも一つが対応して形成された真偽判別可能な模様形成体対。
【解決手段】 種別が同一で、かつ、資産価値が同じ又は異なる少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対であって、少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対には、各々の基材上の少なくとも一部に凹形状から成る模様形成要素が形成され、模様形成要素は、基材よりも透過率が高く、かつ、少なくとも二つの模様形成体に形成されている模様形成要素同士が、形状、大きさ、配置の向き及び配置位置の少なくとも一つが対応して形成された真偽判別可能な模様形成体対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、商品券等の資産価値を有し、種別は同じで、異なる価値を有する(例えば、銀行券における千円、五千円、一万円など。)貴重印刷物に関するものであり、偽造、変造、改ざん等を防止すると共に、簡易的に真偽判別が行えることを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
従来から資産価値を有する銀行券、商品券等の貴重印刷物には、その印刷物の持つ価値を有益に保持するため、様々なセキュリティ技術が用いられてきている。セキュリティ技術として一般に使われているのは、ホログラム、マイクロ文字が印刷されたスレッド、透かし模様等を盛り込んだ用紙、光学的に変化するインキ(OVI)等の機能性インキ、オフセット印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等の印刷技術、特異な画線配置等が挙げられ、これらを効果的に組み合わせて、偽造、変造、改ざん等の抑止効果の向上を図っている。
【0003】
これらの偽造防止技術の中でも、印刷技術及び各種基材への加工技術を利用して、一つの領域では、その領域に付与された模様や情報のみが認識されるが、判別具を用いることで新たなる情報が認識できるという技術が広く開示されている。例えば、ルーペ等の拡大鏡を用いることにより初めて視認可能となる微小文字、一見すると1色の模様が、カラーフィルタを通すと2色から成る模様として確認できるメタメリックペア印刷、さらには、紫外線や赤外線の特定光源を照射することで、発光色が異なったり、異なる模様が確認できたりする特殊材料を用いた印刷物がある。しかし、これらの判別具を用いて行う真偽判別に対しては、簡易な判別具で真偽判別が行えるという利点がある一方、判別具を持ち合わせていない状況下では、真偽判別が行えないという問題があった。
【0004】
そこで、基材上に、位置を離して配置してある複数の暗号化情報形成部が形成され、異なる暗号化情報形成部には、所望の暗号の一部分ずつが形成されており、さらに、それらの暗号化情報形成部の間に、基材を分離可能な分離部が形成されており、基材を分離部で分離した後、見当を合せて暗号化情報形成部を重ね合わせると、所望の情報が復号される情報記録媒体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、一方の印刷物には第1の情報が印刷された凹部が形成され、他方の印刷物には、その凹部にはめ込みが可能な形状を具備し、かつ、第2の情報が印刷されたタグを有し、一方の印刷物の凹部にタグをはめ込むことで、第1の情報と第2の情報が重なってコード情報を表現する印刷物対が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−67558号公報
【特許文献2】特許第4204275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1については、所望の情報を分割して異なる領域に形成し、お互いの暗号化情報形成部を重ね合わせることで、所望の情報の各部分が合体し、初めて所望の情報として視認できるものであり、基材を分離することを要することで不正に復号した形跡を残すためには有用ではあるが、分離する前の段階での情報の確認が行えず、分離前の段階における真偽判別が困難であるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2については、二つの情報を重ねて一つの有意味情報(特許文献2においては、コード情報)を形成する際、確実に有意味情報が形成可能なように、凹部の形状にはめ込み可能な形状を具備したタグを用いるものであり、二つの異なる領域(基材)を合わせて情報を出現させる技術ではあるものの、あくまでも所望の情報を形成するための印刷物であり、デザイン面を踏まえて付与された偽造防止技術ではなかった。また、必ず一方の情報が形成される基材には、透明性のフィルムを用いる必要があり、二つの情報を異なる材質の基材に形成するという、コスト面及び製造工程においての課題があった。
【0009】
更には、特許文献1及び2においては、いずれも特別な判別具を必要としていないため、合成情報の出現については、誰もが簡易的に行えるという利点はあるが、情報を出現させるための一方の基材は、情報が形成されているのみであり、その物自体は、他の資産価値を有するものではなかった。
【0010】
そこで、本発明は、特別な判別具を必要とせず、種別は同じで、同一の資産価値又は異なる資産価値を有する貴重印刷物同士を重ね合わせたときに、有意味な情報を出現させることで真偽判別することが可能な模様形成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、種別が同一で、かつ、資産価値が同じ又は異なる少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対であって、少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対には、各々の基材上の少なくとも一部に凹形状から成る模様形成要素が形成され、模様形成要素は、基材よりも透過率が高く、かつ、少なくとも二つの模様形成体に形成されている模様形成要素同士が、形状、大きさ、配置の向き及び配置位置の少なくとも一つが対応して形成され、二つの模様形成体を、基準位置で重ね、模様形成要素を重ね合わせて透過により視認すると、所望する合成模様が形成されて確認できることを特徴とする真偽判別可能な模様形成体対である。
【0012】
また、本発明における少なくとも二つの模様形成体に形成されている模様形成要素同士において、形状、大きさ、配置の向き及び配置位置の少なくとも一つが対応して形成されているとは、少なくとも二つの模様形成要素が、合成模様と同じ形状又は合成模様を分割した形状で形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、少なくとも二つの模様形成体に形成された模様形成要素が、形状、大きさ、配置向き及び配置位置のいずれか一つが異なる又はすべて同じであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、模様形成要素が、基材上の所定の位置を基準位置とし、基準位置に対して所定の距離を設けて形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、基準位置に対する所定の距離が、異なる少なくとも二つの模様形成体ごとに、すべて同じ又は少なくとも一つが異なることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、異なる少なくとも二つの模様形成体を重ね合わせた際の合成模様が、重ね合わされる少なくとも二つの模様形成体ごとに、形状が同じ又は少なくとも一つが異なることを特徴とする
【0017】
また、本発明における少なくとも二つの模様形成体に形成された模様形成要素は、各模様形成要素同士の透過率が同じ又は少なくとも一つが異なることを特徴とする。
【0018】
また、本発明における模様形成要素は、一つの模様形成要素内において、透過率が連続的又は段階的に変化して形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明における模様形成要素は、すき入れ又はレーザ加工により形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明における模様形成要素を重ね合わせる目安とする基準位置は、印刷、すき入れ又はレーザ加工により形成された基準要素から成ることを特徴とする。
【0021】
また、本発明における模様形成要素は、基材上に形成されている他の印刷模様又は貼付部材の周囲又は内部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、特殊な判別具を用いる必要がなく、種別が同じで、異なる又は同じ資産価値を有する少なくとも二つの貴重印刷物を保持しているだけで、真偽判別を行いたい貴重印刷物の模様形成領域に、保持している貴重印刷物の模様形成領域を重ね合わせ、特定の有意味な情報(模様)が出現するか否かにより真偽判別するものであり、誰もがその場で簡易的に真偽判別を行うことができる。
【0023】
また、本発明は、模様形成要素をすき入れによって形成した場合、用紙製造段階において形成しなければならず、偽造や変造等への防止効果は非常に高い。
【0024】
また、本発明は、模様形成要素をすき入れによって形成した場合、用紙製造段階において、同一基材上に形成されるすき入れ模様と同じ工程で形成可能であり、製造工程を増やす必要がなく、偽造防止及び簡易的な真偽判別が行えるという高い効果を備えているにも関わらず、効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の真偽判別可能な模様形成体の一例を示す図である。
【図2】本発明における模様形成要素の一例を説明する図である。
【図3】真偽判別可能な模様形成体の断面図である。
【図4】二つの模様形成要素を重ね合わせたときの合成模様を説明する図である。
【図5】模様形成要素を形成する他の態様を示す図である。
【図6】二つの模様形成要素を重ね合わせたときの他の合成模様を説明する図である。
【図7】基準位置を説明する図である。
【図8】基準位置を基準として形成された合成模様を示す図である。
【図9】基準要素を説明する図である。
【図10】角度を変えて模様形成要素同士を重ね合わせる状態を説明する図である。
【図11】透過率を段階的に変化させた模様形成要素を説明する図である。
【図12】透過率をグラデーション的に変化させた模様形成要素を説明する図である。
【図13】彩紋模様内に形成された模様形成要素を示す図である。
【図14】OVD箔を利用した模様形成要素を示す図である。
【図15】実施例1における真偽判別可能な模様形成体を示す図である。
【図16】実施例1における模様形成要素を説明する図である。
【図17】実施例1における合成模様を説明する図である。
【図18】実施例2における真偽判別可能な模様形成体を示す図である。
【図19】実施例2における模様形成要素を示す図である。
【図20】実施例2における基準要素と模様形成要素との関係を示す図である。
【図21】実施例2における合成模様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな形態が実施可能である。
【0027】
図1は、本発明の真偽判別可能な模様形成体対の一例を示す図である。本発明の真偽判別形成体対は、資産価値を有する印刷物において、種別は同じで、かつ、資産価値が異なる又は同じ資産価値を有する複数の印刷物が存在するものである。本発明が対象とする貴重印刷物の構成としては、図1に示すように、基材(2)と、その基材上に印刷、貼付及び加工等の技術を用いて形成された印刷物の種別を示す名称(3)と、資産価値を示す料額文字(4)があり、更には、偽造及び改ざんを防止するための様々な偽造防止技術やデザイン効果を奏するための模様(5)が形成されている。
【0028】
例えば、種別が一つの商品券の場合、図1(a)は1000円の価値を有するための料額文字(4)が形成され、図1(b)は5000円の価値を有するための料額文字(4)が形成されている。更には、図示していないが、この商品券については10000円の価値を有する別の印刷物も存在している。本発明は、このように、同一の種別であるが、異なる複数種類の価値を有する印刷物において、それぞれの印刷物に形成された模様形成要素(6)を重ね合わせることで、所望の模様が形成され、真偽判別を行うものである。
【0029】
本発明においては、少なくとも二つ以上の同一種別の印刷物を模様形成体対と総称し、一つ一つの印刷物を模様形成体と定義する。本発明の模様形成体(1)は、図1(a)に示すように、基材(2)上の少なくとも一部の領域に模様形成要素(6)が形成されている。この模様形成要素(6)は、資産価値の異なる模様形成体、例えば、図1(a)における模様形成体(1−1)と図1(b)における模様形成体(1−2)の同一箇所に形成されることが好ましい。同一箇所に形成することで、真偽判別を行う際に、異なる二つの模様形成体(1)を長辺及び短辺が同じ向きとなるように重ね合わせるだけで、双方の模様形成要素(3)が定位置で重なり合うことが可能となる。ただし、重ね合わせる際に、基準となる箇所を決めておけば、同一箇所に限定するものではない。
【0030】
まず、各模様形成体(1)に形成される模様形成要素(6)について説明する。図2は、本発明の模様形成体(1)に形成される各模様形成要素(6)の一例を示す図である。本実施の形態では、前述のとおり、三つの異なる資産価値を有する商品券を例としており、図2(a)から(c)は、その異なる三つの模様形成体(1)にそれぞれ形成された模様形成要素(6−1、6−2、6−3)を示している。例えば、図2(a)は1000円の商品券に、図2(b)は5000円の商品券に、図2(c)は10000円の商品券にそれぞれ形成されている。なお、図面上では、各模様形成要素(6)の形状を明確に表現するために黒色にて示唆しているが、実際は、透過により視認される程度の色彩である。
【0031】
それぞれの模様形成体(1)に形成されている各模様形成要素(6−1、6−2、6−3)は、基材(2)に対して凹形状に形成されている。それを説明しているのが図3であり、図3は、図1(a)に示した模様形成体(1−1)のA1−A2断面図である。基材(2)には、印刷により施されている模様(5)と、本発明の特徴である模様形成要素(6)が形成されており、模様形成要素(6)は、凹形状を成している。
【0032】
本発明における模様形成体(1)を真偽判別する場合、価値の異なる二つの模様形成体(1)の模様形成要素(6)を重ね合わせて、光の透過により確認することから、模様形成要素(6)を凹形状とすることで、基材の他の領域よりも、模様形成要素(6)の透過率が高くなる。
【0033】
基材よりも模様形成要素(6)の透過率を高くするために、基材(2)又は少なくとも模様形成要素(6)の周囲については、透明又は半透明以外の色彩を要する。なお、透過率を高くするということは、不透明度が低くなるということであり、基材(2)の不透明度よりも、模様形成要素(6)の不透明度を低くするということである。
【0034】
不透明度については、模様形成要素(6)の不透明度が、基材(2)の不透明度よりも低くなれば特に限定しないが、本発明の模様形成体(1)は、前述のとおり、種別が同じで、かつ、資産価値の異なる貴重印刷物、例えば、日本銀行券や各種商品券を対象としていることから、基材(2)については対象が基本的に紙となるため、紙の種類にも起因するところであるが、本発明における基材の不透明度はコントラストを得るために90%より高く、模様形成要素(6)の不透明度は90%以下となる。
【0035】
基材(2)に対して、模様形成要素(6)を形成する方法としては、用紙製造工程においてすき入れとして形成したり、YAGレーザ等のレーザ加工により形成することが可能である。
【0036】
図2を用いて説明した各模様形成要素(6−1、6−2、6−3)は、すべて異なる形状の模様であるが、それぞれの模様形成要素(6)を真偽判別を行う際に重ね合わせると、別の所望する合成模様(7)を形成することとなる。例えば、図4(a)は、1000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−1)と、5000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−2)同士を重ね合わせたときに形成される合成模様(7−1)である。また、図4(b)は、1000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−1)と、10000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−3)同士を重ね合わせたときに形成される合成模様(7−2)である。さらには、図4(c)は、5000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−2)と、10000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−3)同士を重ね合わせたときに形成される合成模様(7−3)である。
【0037】
本実施の形態では、商品券を一例とし、3券種の模様形成体(1)としたため、三つの模様形成要素(6)を要することとしたが、2券種の場合には、模様形成要素(6)が二つとなり、4券種の場合には四つとなる。いずれの場合でも、すべての模様形成要素(6)は、それぞれを対応した形状とすることが必要である。
【0038】
模様形成要素(6)の形状としては、図2において、各模様形成要素(6−1、6−2、6−3)は、すべて異なる形状として説明したが、これに限定されるものではなく、各模様形成要素の形状が同じであっても、その配置される向き、大きさ又は配置位置を変えることでも良い。
【0039】
例えば、図5に示すように、三つの模様形成体(1)に形成される各模様形成要素(6’−1、6’−2、6’−3)において、図5(a)と図5(c)に示した模様形成要素の形状は同じ大きさの三角形であるが、その配置される向きが異なっている。同じ形状及び大きさを有する模様形成要素であっても、配置する向きを異ならせることで、図6に示すように、合成模様(7’−1、7’−2、7’−3)は、各模様形成要素の形状とは異なる新たな模様として形成される。
【0040】
さらには、各模様形成要素がすべて同じ大きさ、形状及び向きでも良く、その場合には、重ね合わせた際の合成模様(7)も模様形成要素(6)と同じ形状となる。仮に、模様形成要素(6)がすべて同じ大きさ、形状及び向きとした場合、重ね合わせたときに形成される合成模様(7)も模様形成要素(6)と同じ形状となるが、同じ形状となることが真正品とすれば良く、異なる形状となった場合には偽造品と判断することができる。
【0041】
また、模様形成要素(6)がすべて同じ大きさ、形状及び向きとした場合でも、重ね合わせる基準位置に対して、各々の模様形成要素(6)の形成する位置を異ならせることで、合成模様(7)の形状は、模様形成要素(6)と異なる新たな形状となって形成することが可能となる。
【0042】
例えば、図7に示した模様形成要素(6)は、異なる三つの模様形成体(1)に形成されているすべての模様形成要素(6)が同じ大きさの円形である。ただし、各模様形成要素(6’−1、6’−2、6’−3)が配置されている箇所は、基材の1箇所(図7では、基材の左角)を基準位置(V)とし、その基準位置(V)に対して、それぞれX1、X2、X3の距離を有して異なる位置に配置されている。これらの各模様形成要素(6’−1、6’−2、6’−3)を、基準位置(V)を基準として重ね合わせると、図8(a)〜(c)に示すように、異なる合成模様(7’−1、7’−2、7’−3)を形成することとなる。
【0043】
したがって、本発明における模様形成要素(6)は、前述のとおり、重ね合わせた際に所望の合成模様(7)となれば良く、すべてが異なる形状か、同じ形状であっても大きさが異なっている又は同じ形状及び大きさであっても、配置する向きが異なっているか、すべて同じ形状、大きさ及び配置向きであっても、基準位置(V)に対してそれぞれ異なる箇所に配置する、又はすべて同じ形状、大きさ及び向きで、かつ、基準位置(V)に対しても同じ箇所に配置して、合成模様も各模様形成要素と同じとすることでも良い。
【0044】
異なる模様形成体(1)における各模様形成要素(6)を重ね合わせて形成された合成模様(7)の形状については、図4、図6及び図8に示した図形に限らず、文字、記号等でも良い。さらに、一つ一つの模様形成要素(6)の形状についても、前述したように、合成模様(7)に対して対応した形状となれば良く、合成模様(7)と同一形状又は分割した形状となり、合成模様自体の形状に限定がないことから、各模様形成要素の形状についても特に限定されるものではない。
【0045】
なお、本発明における各模様形成要素(6)の形状が合成模様(7)を分割した形状となるというのは、模様形成要素(6’−1)が図5(a)の三角形と模様形成要素(6’−2)が図5(b)の平行四辺形であり、それを輪郭線同士を合わせて図6(a)のような台形の合成模様(7’−1)とする方法のように、合成模様を輪郭線を基に分割しても良いが、図6(b)の合成模様のように、元々の模様形成要素(6’−1)及び(6’−3)を一部が重畳するように重ね合わせて合成模様(7’−2)としても良い。このように、図6(b)に示した合成模様(7’−2)に対しても、図5(a)及び図5(c)の各模様形成要素(6’−1)及び(6’−3)は、本発明では合成模様を分割した形状であるとする。
【0046】
ここで、基準位置(V)について説明する。資産価値の異なる少なくとも二つの模様形成体(1)を重ね合わせる際、前述のとおり、基準位置(V)を決めておくことで、正確に各模様形成要素(6)を重ねあわせることが可能となる。したがって、基準位置(V)に対して所定の距離(X)を設けて各模様形成要素(6)を形成すれば良い。なお、この基準位置(V)からの所定の距離(X)については、特に限定されるものではなく、適宜設定すれば良いが、あまり基準位置(V)と模様形成要素(6)が離れ過ぎると、基準位置(V)を重ね合わせても、各模様形成要素(6)を適切な位置で重ね合わせることが困難となるため、3cm以内が好ましい。
【0047】
基準位置(V)については、図7及び図8に示したように、基材の一角としても良いが、基材上に、模様形成要素(6)とは別に形成しても良い。例えば、図9(a)に示すように、基材上の所定の位置に基準位置(V)を設ける。なお、このように基材上に新たに基準位置を設ける場合、設けられた基準位置を基準要素(V’)という。この基準要素(V’)は、公知の印刷方式(例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、凹版印刷等、基準要素(V’)が形成可能であれば、特にどの印刷方式でも良い)、すき入れやレーザ加工により形成することが可能である。また、形状及び大きさについても特に限定されないが、デザインを考慮すると、あまり大き過ぎない方が好ましい。
【0048】
図9(a)は、基準要素(V’)を1箇所設けてあるが、基準要素(V’)は1箇所に限定されるものではなく、図9(b)のように、2箇所形成しても良く、更には3箇所以上形成しても良い。基準要素(V’)を2箇所以上形成すると、資産価値の異なる模様形成体(1)を重ね合わせる際に、より正確な位置で模様形成要素(6)を重ね合わせることが可能となる。
【0049】
ただし、基準要素(V’)を2箇所以上形成する場合には、図9(b)及び(c)に示すように、異なる模様形成体(1)及び(1’)に対して、必ず同じ位置関係で形成する必要がある。図9(b)の模様形成体(1)では、模様形成要素(6−1)は、基準要素(V’)から所定の距離(X)及び基準要素(V’’)から所定の距離(X’)の位置に配置されており、図9(c)の模様形成体(1’)では、模様形成要素(6−2)は、基準要素(V’)から所定の距離(X’)及び基準要素(V’’)から所定の距離(X)の位置に配置されている。したがって、二つの異なる模様形成体(1)及び(1’)は、二つの基準要素(V’)及び(V’’)は同じ位置に配置されており、各模様形成要素(6−1)及び(6−2)は、異なる位置に配置されている。そこで、同じ位置に配置されている各基準要素(V’)及び(V’’)を重ね合わせれば、必然的に各模様形成要素(6−1)及び(6−2)が重なり、所望の合成模様(7)を形成することとなる。
【0050】
各模様形成体において複数配置した各基準要素(V)を同じ位置関係で形成しないと、すべての基準要素(V)を重ね合わせることが出来なくなると共に、模様形成要素(6)同士も適正に重ね合わせることが出来なくなってしまう。
【0051】
このように、基準要素(V)を形成し、各模様形成体(1)を重ね合わせるようにすれば、同じ資産価値を有する模様形成体(1)同士であっても、基材同士を角度を変えて基準要素(V)を重ね合わせることで、各模様形成要素(6)は同じ形状、大きさ、配置向き及び配置位置であっても、合成模様を模様形成要素(6)とは異なる形状で形成することも可能となる。
【0052】
例えば、図10は、1000円の商品券に形成された模様形成要素(6)であるが、この商品券には、四つの基準要素(V−1、V−2、V−3、V−4)が形成されている。この商品券を同じ1000円同士、90°回転させて基準要素(V−1)と基準要素(V−4)を重ね合わせ、かつ、基準要素(V−2)と基準要素(V−3)を重ね合わせる。なお、各基準要素はすべて模様形成要素(6)までの所定の距離(X)は同じである。
【0053】
このように、同じ形状、配置向き、大きさ及び配置位置の模様形成要素(6)であっても、重ね合わせる方向を基準要素(V)を目安として所定の角度回転させて重ね合わせることで、図10(c)に示すような、模様形成要素(6)とは異なる合成模様(7)を形成することも可能となる。
【0054】
回転させる所定の角度については、形成する基準要素(V)の配置及び個数により自由であり、適宜設定することができる。また、図10においては、同じ1000円の資産価値を有する商品券を例として説明したが、資産価値の異なる模様形成体(1)、例えば、1000円と5000円の商品券に同じ形状、配置向き、大きさ及び配置位置の模様形成要素(6)を形成しても良い。
【0055】
また、模様形成要素(6)については、同じ形状、配置向き、大きさ及び配置位置を同じ又は異ならせるだけではなく、各模様形成要素同士の透過率を同じ又は異ならせても良い。模様形成要素(6)については、基材(2)よりも透過率が高い、言い換えれば不透明度が低いことが条件となるが、その条件をクリアさえしていれば、模様形成要素(6)内又は他の模様形成要素(6)に対して透過率を変化させても良いこととなる。
【0056】
例えば、図11に示すように、図11(a)は1000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−1)であり、星が複数配置されて形成されている。また、図11(b)は5000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−2)であり、これも星が複数配置されて形成されている。配置されている星の位置は、基準位置に対して、模様形成要素(6−1)と模様形成要素(6−2)は同じ位置と異なっている位置と両方ある。同じ位置に形成されている模様形成要素(6−1)と模様形成要素(6−2)は、重ね合わせた際には完全に重畳する。
【0057】
図11(a)に示した模様形成要素(6−1)は、複数ある星のうち、異なる2種類の透過率を有して形成されている。同様に、図11(b)に示した模様形成要素(6−2)も、複数ある星のうち、異なる2種類の透過率を有して形成されている。一つの模様形成要素(6)内において異なる透過率を有するように形成された二つの模様形成要素(6−1)及び(6−2)を重ね合わせると、図11(c)のような合成模様(7)を形成することとなるが、一つの模様形成要素(6)内において、それぞれ異なる透過率を有することから、合成模様(7)については、四つの異なる透過率を有することとなる。
【0058】
透過率の詳細を説明すると、模様形成要素(6−1)は、透過率が異なる模様形成要素(6−1’)と(6−1’’)から構成されており、また、模様形成要素(6−2)は、透過率が異なる模様形成要素(6−2’)と(6−2’’)から構成されている。したがって、重ね合わせた合成模様(7)は、四つの透過率(7−1、7−2、7−3、7−4)を有している。
【0059】
重ね合わせた際の透過率の関係を示したのが、図11(d)となっており、基材(2)同士が重なった箇所の透過率が最も低く、次に合成模様(7)となっているが、この合成模様(7)を構成している複数の星についても、それぞれ透過率が異なっている。一方の商品券のみに形成されている模様形成要素(6)の星については、重ね合わせた際に、基材(2)と重なることとなるため、重ねる前の透過率と比較すると透過率は下がる。したがって、重ね合わせる前の1000円の商品券と5000円の商品券のそれぞれに形成されている段階での模様形成要素(6)を構成している星の透過率が高い状態を示している。ただし、前述したとおり、それぞれの模様形成要素(6−1)及び(6−2)内においても、透過率が異なっていることを図11(d)で示している。
【0060】
図11では、透過率が異なっている複数の個別の要素(図11では星)が一つの模様形成要素(6)内に配置されている態様を説明したが、図12のように、透過率が連続的に変化した状態で模様形成要素(6)を形成しても良い。このように連続的に変化させることで、グラデーションや階調表現をすることが可能となり、意匠的にも効果が高くなる。
【0061】
図12(a)は、1000円の商品券に形成されている模様形成要素(6)であり、一つの模様形成要素内において透過率を連続的に異ならせてグラデーションを表現してある。この模様形成要素(6)が形成されている1000円の商品券を二つ重ね合わせると、図12(b)のように、一つ一つの模様形成要素(6)よりも全体的に透過率が低くなったグラデーションを示す合成模様(7)が形成される。この透過率の状態をグラフ化して示したのが図12(c)及び図12(d)となっている。
【0062】
図12(a)においては、連続的、かつ、滑らかに透過率を異ならせたが、連続して段階的に異ならせても良いし、連続していなくても段階的に異ならせることでも良い。図11に示した模様形成要素(6−1)及び(6−2)は、一つの模様形成要素(6)内において異なる透過率を有しており、このような状態も、一つの模様形成要素(6)内において段階的に透過率が異なって形成されていることとなる。本発明では、少なくとも二つの透過率の差があれば、段階的であると言う。
【0063】
さらに、図11では、資産価値の異なる二つの商品券に透過率を異ならせて模様形成要素(6)を形成し、また、図12では、一つの模様形成要素(6)内において、グラデーション的に透過率を変化させた模様形成要素(6)を、同じ資産価値を有する商品券同士を重ねて合成模様(7)を形成する例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一つの模様形成要素(6)内で透過率を変化させても良いし、異なる資産価値を有する模様形成体(1)において透過率を異ならせても良い。
【0064】
したがって、本発明においては、重ね合わせた際に形成される合成模様(7)を形成するための各模様形成要素(6)は、形状、大きさ、配置向き及び配置位置の少なくとも一つが互いに対応している上で、更に透過率が同じ又は異なっていても良い。
【0065】
また、模様形成要素(6)を形成する領域においては、透過による模様の視認状態を妨げなければ、公知のオフセット印刷、フレキソ印刷、凹版印刷等の印刷方式による他の印刷模様の形成や、OVD箔やスレッド等の貼付部材を施しても良い。他の模様等を形成することにより、デザイン効果が上がることとなると共に、他の偽造防止技術と複合させることも可能となり、高い偽造防止効果を奏することとなる。
【0066】
例えば、図13には、模様形成要素(6)の周囲にオフセット印刷を用いた彩紋模様(8)が形成されている。この図13に示した模様形成要素(6)は、すき入れにより形成されており、製造方法としては、先に用紙製造工程において、公知のすき入れ技法により模様形成要素(6)を形成し、その後、別の印刷工程において、模様形成要素(6)との位置関係に注意しながら彩紋模様(8)を印刷している。彩紋模様(8)を印刷する際には、高度な印刷精度を要することとなるが、その印刷精度自体が偽造防止効果を更に高めることとなる。
【0067】
図13に示した模様形成要素(6)と対応した形状の模様形成要素(6)が異なる模様形成体に形成され、重ね合わせることにより、所望の合成模様(7)を形成することが可能となる。
【0068】
図13では、彩紋模様(8)の内部に模様形成要素(6)を形成した例で説明したが、彩紋模様(8)の周囲に模様形成要素(6)を形成しても良く、更には、透過により視認する際に、合成模様の形成の妨げにならなければ、彩紋模様(8)と重なる位置に模様形成要素(6)を形成しても良い。この場合には、彩紋模様(8)の色彩を淡くすることが好ましい。
【0069】
また、別の態様として、図14を用いて説明する。図14は、アルミ層を基材とするOVD箔(9)の外側部分のアルミ部分をレーザ加工機により除去し、その除去された部分に該当する箇所に、模様形成要素(6)をすき入れにより形成しているものである。OVD箔(9)には、回折格子により「日本」という文字が形成されている。
【0070】
製造方法としては、先に用紙製造工程において、公知のすき入れ技法により模様形成要素(6)を形成する。この際、後工程で貼付するOVD箔(9)のアルミ部分をレーザ加工機で除去した箇所に該当する形状のみ、ドーナツ状にすき入れを形成しても良く、また、OVD箔(9)を貼付する箇所に該当する箇所をOVD箔(9)と同じ形状及び大きさにすき入れを形成しても良い。ただし、OVD箔(9)と同じ形状及び大きさにすき入れを形成する場合、すき入れが形成された箇所は、繊維密度が低くなるため、強度的に弱くなる可能性もあることから、OVD箔(9)のアルミ部分を除去する箇所のみにすき入れを形成することが好ましい。
【0071】
図14に示したようなOVD箔(9)のアルミ部分を除去した箇所に形成された模様形成要素(6)と対応した形状の模様形成要素(6)が異なる模様形成体に形成されることで、重ね合わせると、所望の合成模様(7)を形成することが可能となる。
【0072】
なお、図14では、OVD箔(9)の外側部分のアルミ箔を除去する形態で説明したが、これに限定されず、OVD箔(9)の回折格子により形成されている文字や図柄を損なわなければ、OVD箔(9)のどの箇所のアルミ箔を除去しても構わず、模様形成要素(6)は、そのアルミ箔を除去した箇所に対応して形成されれば良い。
【0073】
図14に示したように、本発明の模様形成要素(6)をOVD箔(9)の一部と複合させることで、デザイン的効果も高くなると共に、OVDにおける偽造防止効果に加え、本発明における真偽判別効果も奏することとなる。さらには、すき入れやレーザ加工技術により模様形成要素(6)が基材に対して凹形状となっているため、その形成されている箇所は、他の基材自体の厚みよりも薄くなっており、仮にOVD箔(9)を剥がそうとした場合、基材自体が破壊されることとなり、偽造防止効果は断然高くなる。
【0074】
以下、本発明における真偽判別可能な模様形成体について、実施例を用いて詳細に説明するが、以下の実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的な範疇であれば、適宜、変更が可能なことは言うまでもない。
【実施例1】
【0075】
実施例1として、図15に示す商品券(1’)に対して、左側下部に本発明の模様形成要素(6’)を形成した。実施例1の商品券は、図15に示す1000円の価値を有する商品券以外に、図示していないが、5000円及び10000円の商品券がある。なお、すべての商品券の寸法は、縦70mm、横150mmで、同一の大きさを有している。
【0076】
この三つの商品券(1’)に形成されている各模様形成要素(6’−1、6’−2、6’−3)を図示したのが図16であり、図16(a)は1000円、図16(b)は5000円、図16(c)は10000円に形成されている模様形成要素(6’)であり、基材(2’)に対して同じ箇所に形成されている。
【0077】
これらの模様形成要素(6’)は、長網抄紙機において用紙を製造する工程において、公知のすき入れ技法により、すき入れとして形成している。基材(2’)は、坪量が85g/m2、紙の厚みが87μm、不透明度が91%(JIS−P8149)の褐色の紙材を用いている。
【0078】
また、模様形成要素(6’)が形成されている箇所の紙の厚みは40μm(デジタルリニアゲージ DG−925 小野測器製)で、不透明度は52%(JIS−P8149)となっており、基材よりも透過率が高く形成されている。
【0079】
模様形成要素(6’)が形成されている商品券(1’)の1000円と5000円を長辺及び短辺を合わせるように重ね合わせ、重ね合わせた二つの商品券を透過により視認すると、基材の同じ箇所に形成されている模様形成要素同士が同じ箇所で重なり合い、図17(a)に示した合成模様(7’−1)が確認できた。同様にして、1000円と10000円の商品券(1’)を重ね合わせて、透過により視認すると、図17(b)に示した合成模様(7’−2)が、また、5000円と10000円の商品券(1’)を重ね合わせて、透過により視認すると、図17(c)に示した合成模様(7’−3)が確認できた。
【実施例2】
【0080】
実施例2として、図18に示す商品券(1’’)を作製した。本実施例2における商品券(1’’)は、基材(2’’)上に、印刷物の種別を示す名称(3’’)と、資産価値を示す料額文字(4’’)と、全面に格子による地紋模様(5’’)がオフセット印刷により形成され、更には、本発明における模様形成要素(6’’)を、左側下部に形成し、その近傍に、基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)を形成した。
【0081】
本実施例2の商品券は、1000円と5000円の二つの資産価値を有する商品券であり、それぞれの商品券に形成されている模様形成要素は、図19に示すとおりであり、図19(a)が1000円に形成されている模様形成要素(6’’−1)、図19(b)が5000円に形成されている模様形成要素(6’’−2)である。なお、二つの商品券の寸法は、縦70mm、横150mmで、同一の大きさを有している。
【0082】
本実施例2における模様形成要素(6’’)は、OVD箔の一部を利用して形成したものである。このOVD箔は、アルミ層を基材としたものであり、アルミ層の上層に反射により視認可能な画像(本実施例では「★」及び「ハートマーク」)が回折格子により形成されており、OVD箔の外側部分のアルミ層をレーザ加工機(レーザマーカ MD−V キーエンス製)により除去してある。アルミ層が除去された領域に、すき入れにより図19(a)及び(b)のような線幅500μmの円形(中抜き)の模様形成要素(6’’−1)又は(6’’−2)を形成している。
【0083】
図19(a)に示した1000円の模様形成要素(6’’−1)は、二重の円形から成り、図19(b)に示した5000円の模様形成要素(6’’−2)は、1000円の模様形成要素(6’’−1)の二重の円形の間に配置される大きさの円形である。二つの商品券に貼付されているOVD箔は、回折格子(9’’)以外の箇所はアルミ層がレーザ加工により除去されているため、各模様形成要素(6’’−1)及び(6’’−2)以外のアルミ層が除去されている箇所は、基材色が確認されることとなり、所謂、基材の透過率を有する領域となる。
【0084】
これらの模様形成要素(6’’−1)及び(6’’−2)並びに基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)は、長網抄紙機において用紙を製造する工程において、公知のすき入れ技法により、すき入れとして形成している。なお、基材(2’)は、坪量が85g/m2、紙の厚みが87μm、不透明度が91%(JIS−P8149)の褐色の紙材を用いている。
【0085】
また、模様形成要素(6’’−1)及び(6’’−2)並びに基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)が形成されている箇所の紙の厚みは40μm(デジタルリニアゲージ DG−925 小野測器製)で、不透明度は52%(JIS−P8149)となっており、基材よりも透過率が高く形成されている。
【0086】
基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)は、共に「★」型の形状を有しており、大きさは2mm四方である。各基準要素の配置について図20を用いて説明する。基準要素(V’’−1)は、基材(2’’)の左端から3mm(S)、下端から20mm(h)に形成し、外側の模様形成要素(6’’−1)との所定の距離(X)は8mmとした。なお、OVD箔のアルミ層の外側から除去されているため、外側の模様形成要素(6’’−1)は、OVD箔自体と同じ大きさとなる。
【0087】
もう一方の基準要素(V’’−2)は、基準要素(V’’−1)である「★」の右側頂点とOVD箔の中心を結ぶ線の延長線上において、OVD箔の右端から所定の距離(X)の8mmを有して形成した。
【0088】
各模様形成要素(6’’−1)及び(6’’−2)は、基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)と同じすき入れ技法により形成するため、同じ製造工程において形成する。1000円の商品券に形成した外側の模様形成要素(6’’−1)は、前述のとおり、各基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)から所定の距離(X)の8mm内側に線幅500μmで形成し、その外側の模様形成要素(6’’−1)内に1.5mmの距離を空けて、内側の模様形成要素(6’’−2)を形成した。
【0089】
また、5000円の商品券に形成した模様形成要素(6’’−2)は、各基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)から所定の距離(X)の8mmに、更に1mmを加えた9mmの距離に線幅500μmで形成した。
【0090】
基材(2’’)に貼付したOVD箔については、OVD箔のアルミ層を外側から3mm(T)内側まで除去した。アルミ層を除去したOVD箔を、基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)を結ぶ線の中心にOVD箔の中心が配置されるように貼付した。その位置にOVD箔を貼付することにより、1000円の商品券については、図19(a)に示したような模様形成要素(6’’−1)とOVD箔が合成された状態となり、5000円の商品券については、図19(b)に示したような模様形成要素(6’’−2)とOVD箔が合成された状態となった。
【0091】
この二つの商品券に対して、各基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)を重ね合わせて光の透過により視認すると、図21に示したように、OVD箔同士は同じ位置で重なり、1000円に形成した二つの模様形成要素(6’’−1)の中間に、5000円に形成した模様形成要素(6’’−2)が嵌り、規則性のある三重の円形(輪)の合成模様として確認できた。
【0092】
本実施例2においては、基準要素(V’’−1)、(V’’−2)及びOVD箔は、共に基材(2’’)に対して、同じ箇所に形成した例で説明したが、基準要素を形成して模様形成要素同士を重ね合わせることとする場合には、各基準要素と模様形成要素との位置関係が各模様形成体において同じ位置関係であれば、必ずしも同じ箇所に形成する必要はない。あくまでも、基準要素を一つの基準として重ね合わせることができれば、模様形成体ごとに異なる箇所に形成しても良い。
【0093】
なお、本実施の形態及び実施例においては、真偽判別するために重ね合わせる二つの模様形成体(1)を、異なる資産価値を有する模様形成体として説明したが、同じ資産価値、例えば、実施例1における1000円の商品券を二つ用いても真偽判別を行うことが可能である。当然、同じ資産価値を有する模様形成体(1)同士については、模様形成要素(6)は同じ形状、大きさ及び向きとなり、各々の模様形成体(1)を重ね合わせても、合成模様(7)は各模様形成要素(6)と同じ形状となる。ただし、仮に偽造品と重ね合わせた場合には、合成模様(7)が異なる形状となるため、所望する合成模様(7)とはならず、偽造品であることが判明する。
【符号の説明】
【0094】
1、1’、1’’ 模様形成体
2、2’、2’’ 基材
3、3’、3’’ 印刷物の種別を示す名称
4、4’、4’’ 資産価値を示す料額
5、5’、5’’ 模様
6、6’、6’’ 模様形成要素
7、7’、7’’ 合成模様
8 彩紋模様
9、9’’ OVD箔
X、X’ 基準位置からの所定の距離
V 基準位置
V’、V’’ 基準要素
S 短辺から基準要素までの距離
h 長辺から基準要素までの距離
T OVD箔のアルミ層を除去した距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、商品券等の資産価値を有し、種別は同じで、異なる価値を有する(例えば、銀行券における千円、五千円、一万円など。)貴重印刷物に関するものであり、偽造、変造、改ざん等を防止すると共に、簡易的に真偽判別が行えることを目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
従来から資産価値を有する銀行券、商品券等の貴重印刷物には、その印刷物の持つ価値を有益に保持するため、様々なセキュリティ技術が用いられてきている。セキュリティ技術として一般に使われているのは、ホログラム、マイクロ文字が印刷されたスレッド、透かし模様等を盛り込んだ用紙、光学的に変化するインキ(OVI)等の機能性インキ、オフセット印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等の印刷技術、特異な画線配置等が挙げられ、これらを効果的に組み合わせて、偽造、変造、改ざん等の抑止効果の向上を図っている。
【0003】
これらの偽造防止技術の中でも、印刷技術及び各種基材への加工技術を利用して、一つの領域では、その領域に付与された模様や情報のみが認識されるが、判別具を用いることで新たなる情報が認識できるという技術が広く開示されている。例えば、ルーペ等の拡大鏡を用いることにより初めて視認可能となる微小文字、一見すると1色の模様が、カラーフィルタを通すと2色から成る模様として確認できるメタメリックペア印刷、さらには、紫外線や赤外線の特定光源を照射することで、発光色が異なったり、異なる模様が確認できたりする特殊材料を用いた印刷物がある。しかし、これらの判別具を用いて行う真偽判別に対しては、簡易な判別具で真偽判別が行えるという利点がある一方、判別具を持ち合わせていない状況下では、真偽判別が行えないという問題があった。
【0004】
そこで、基材上に、位置を離して配置してある複数の暗号化情報形成部が形成され、異なる暗号化情報形成部には、所望の暗号の一部分ずつが形成されており、さらに、それらの暗号化情報形成部の間に、基材を分離可能な分離部が形成されており、基材を分離部で分離した後、見当を合せて暗号化情報形成部を重ね合わせると、所望の情報が復号される情報記録媒体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、一方の印刷物には第1の情報が印刷された凹部が形成され、他方の印刷物には、その凹部にはめ込みが可能な形状を具備し、かつ、第2の情報が印刷されたタグを有し、一方の印刷物の凹部にタグをはめ込むことで、第1の情報と第2の情報が重なってコード情報を表現する印刷物対が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−67558号公報
【特許文献2】特許第4204275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1については、所望の情報を分割して異なる領域に形成し、お互いの暗号化情報形成部を重ね合わせることで、所望の情報の各部分が合体し、初めて所望の情報として視認できるものであり、基材を分離することを要することで不正に復号した形跡を残すためには有用ではあるが、分離する前の段階での情報の確認が行えず、分離前の段階における真偽判別が困難であるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2については、二つの情報を重ねて一つの有意味情報(特許文献2においては、コード情報)を形成する際、確実に有意味情報が形成可能なように、凹部の形状にはめ込み可能な形状を具備したタグを用いるものであり、二つの異なる領域(基材)を合わせて情報を出現させる技術ではあるものの、あくまでも所望の情報を形成するための印刷物であり、デザイン面を踏まえて付与された偽造防止技術ではなかった。また、必ず一方の情報が形成される基材には、透明性のフィルムを用いる必要があり、二つの情報を異なる材質の基材に形成するという、コスト面及び製造工程においての課題があった。
【0009】
更には、特許文献1及び2においては、いずれも特別な判別具を必要としていないため、合成情報の出現については、誰もが簡易的に行えるという利点はあるが、情報を出現させるための一方の基材は、情報が形成されているのみであり、その物自体は、他の資産価値を有するものではなかった。
【0010】
そこで、本発明は、特別な判別具を必要とせず、種別は同じで、同一の資産価値又は異なる資産価値を有する貴重印刷物同士を重ね合わせたときに、有意味な情報を出現させることで真偽判別することが可能な模様形成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、種別が同一で、かつ、資産価値が同じ又は異なる少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対であって、少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対には、各々の基材上の少なくとも一部に凹形状から成る模様形成要素が形成され、模様形成要素は、基材よりも透過率が高く、かつ、少なくとも二つの模様形成体に形成されている模様形成要素同士が、形状、大きさ、配置の向き及び配置位置の少なくとも一つが対応して形成され、二つの模様形成体を、基準位置で重ね、模様形成要素を重ね合わせて透過により視認すると、所望する合成模様が形成されて確認できることを特徴とする真偽判別可能な模様形成体対である。
【0012】
また、本発明における少なくとも二つの模様形成体に形成されている模様形成要素同士において、形状、大きさ、配置の向き及び配置位置の少なくとも一つが対応して形成されているとは、少なくとも二つの模様形成要素が、合成模様と同じ形状又は合成模様を分割した形状で形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、少なくとも二つの模様形成体に形成された模様形成要素が、形状、大きさ、配置向き及び配置位置のいずれか一つが異なる又はすべて同じであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、模様形成要素が、基材上の所定の位置を基準位置とし、基準位置に対して所定の距離を設けて形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、基準位置に対する所定の距離が、異なる少なくとも二つの模様形成体ごとに、すべて同じ又は少なくとも一つが異なることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、異なる少なくとも二つの模様形成体を重ね合わせた際の合成模様が、重ね合わされる少なくとも二つの模様形成体ごとに、形状が同じ又は少なくとも一つが異なることを特徴とする
【0017】
また、本発明における少なくとも二つの模様形成体に形成された模様形成要素は、各模様形成要素同士の透過率が同じ又は少なくとも一つが異なることを特徴とする。
【0018】
また、本発明における模様形成要素は、一つの模様形成要素内において、透過率が連続的又は段階的に変化して形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明における模様形成要素は、すき入れ又はレーザ加工により形成されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明における模様形成要素を重ね合わせる目安とする基準位置は、印刷、すき入れ又はレーザ加工により形成された基準要素から成ることを特徴とする。
【0021】
また、本発明における模様形成要素は、基材上に形成されている他の印刷模様又は貼付部材の周囲又は内部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、特殊な判別具を用いる必要がなく、種別が同じで、異なる又は同じ資産価値を有する少なくとも二つの貴重印刷物を保持しているだけで、真偽判別を行いたい貴重印刷物の模様形成領域に、保持している貴重印刷物の模様形成領域を重ね合わせ、特定の有意味な情報(模様)が出現するか否かにより真偽判別するものであり、誰もがその場で簡易的に真偽判別を行うことができる。
【0023】
また、本発明は、模様形成要素をすき入れによって形成した場合、用紙製造段階において形成しなければならず、偽造や変造等への防止効果は非常に高い。
【0024】
また、本発明は、模様形成要素をすき入れによって形成した場合、用紙製造段階において、同一基材上に形成されるすき入れ模様と同じ工程で形成可能であり、製造工程を増やす必要がなく、偽造防止及び簡易的な真偽判別が行えるという高い効果を備えているにも関わらず、効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の真偽判別可能な模様形成体の一例を示す図である。
【図2】本発明における模様形成要素の一例を説明する図である。
【図3】真偽判別可能な模様形成体の断面図である。
【図4】二つの模様形成要素を重ね合わせたときの合成模様を説明する図である。
【図5】模様形成要素を形成する他の態様を示す図である。
【図6】二つの模様形成要素を重ね合わせたときの他の合成模様を説明する図である。
【図7】基準位置を説明する図である。
【図8】基準位置を基準として形成された合成模様を示す図である。
【図9】基準要素を説明する図である。
【図10】角度を変えて模様形成要素同士を重ね合わせる状態を説明する図である。
【図11】透過率を段階的に変化させた模様形成要素を説明する図である。
【図12】透過率をグラデーション的に変化させた模様形成要素を説明する図である。
【図13】彩紋模様内に形成された模様形成要素を示す図である。
【図14】OVD箔を利用した模様形成要素を示す図である。
【図15】実施例1における真偽判別可能な模様形成体を示す図である。
【図16】実施例1における模様形成要素を説明する図である。
【図17】実施例1における合成模様を説明する図である。
【図18】実施例2における真偽判別可能な模様形成体を示す図である。
【図19】実施例2における模様形成要素を示す図である。
【図20】実施例2における基準要素と模様形成要素との関係を示す図である。
【図21】実施例2における合成模様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな形態が実施可能である。
【0027】
図1は、本発明の真偽判別可能な模様形成体対の一例を示す図である。本発明の真偽判別形成体対は、資産価値を有する印刷物において、種別は同じで、かつ、資産価値が異なる又は同じ資産価値を有する複数の印刷物が存在するものである。本発明が対象とする貴重印刷物の構成としては、図1に示すように、基材(2)と、その基材上に印刷、貼付及び加工等の技術を用いて形成された印刷物の種別を示す名称(3)と、資産価値を示す料額文字(4)があり、更には、偽造及び改ざんを防止するための様々な偽造防止技術やデザイン効果を奏するための模様(5)が形成されている。
【0028】
例えば、種別が一つの商品券の場合、図1(a)は1000円の価値を有するための料額文字(4)が形成され、図1(b)は5000円の価値を有するための料額文字(4)が形成されている。更には、図示していないが、この商品券については10000円の価値を有する別の印刷物も存在している。本発明は、このように、同一の種別であるが、異なる複数種類の価値を有する印刷物において、それぞれの印刷物に形成された模様形成要素(6)を重ね合わせることで、所望の模様が形成され、真偽判別を行うものである。
【0029】
本発明においては、少なくとも二つ以上の同一種別の印刷物を模様形成体対と総称し、一つ一つの印刷物を模様形成体と定義する。本発明の模様形成体(1)は、図1(a)に示すように、基材(2)上の少なくとも一部の領域に模様形成要素(6)が形成されている。この模様形成要素(6)は、資産価値の異なる模様形成体、例えば、図1(a)における模様形成体(1−1)と図1(b)における模様形成体(1−2)の同一箇所に形成されることが好ましい。同一箇所に形成することで、真偽判別を行う際に、異なる二つの模様形成体(1)を長辺及び短辺が同じ向きとなるように重ね合わせるだけで、双方の模様形成要素(3)が定位置で重なり合うことが可能となる。ただし、重ね合わせる際に、基準となる箇所を決めておけば、同一箇所に限定するものではない。
【0030】
まず、各模様形成体(1)に形成される模様形成要素(6)について説明する。図2は、本発明の模様形成体(1)に形成される各模様形成要素(6)の一例を示す図である。本実施の形態では、前述のとおり、三つの異なる資産価値を有する商品券を例としており、図2(a)から(c)は、その異なる三つの模様形成体(1)にそれぞれ形成された模様形成要素(6−1、6−2、6−3)を示している。例えば、図2(a)は1000円の商品券に、図2(b)は5000円の商品券に、図2(c)は10000円の商品券にそれぞれ形成されている。なお、図面上では、各模様形成要素(6)の形状を明確に表現するために黒色にて示唆しているが、実際は、透過により視認される程度の色彩である。
【0031】
それぞれの模様形成体(1)に形成されている各模様形成要素(6−1、6−2、6−3)は、基材(2)に対して凹形状に形成されている。それを説明しているのが図3であり、図3は、図1(a)に示した模様形成体(1−1)のA1−A2断面図である。基材(2)には、印刷により施されている模様(5)と、本発明の特徴である模様形成要素(6)が形成されており、模様形成要素(6)は、凹形状を成している。
【0032】
本発明における模様形成体(1)を真偽判別する場合、価値の異なる二つの模様形成体(1)の模様形成要素(6)を重ね合わせて、光の透過により確認することから、模様形成要素(6)を凹形状とすることで、基材の他の領域よりも、模様形成要素(6)の透過率が高くなる。
【0033】
基材よりも模様形成要素(6)の透過率を高くするために、基材(2)又は少なくとも模様形成要素(6)の周囲については、透明又は半透明以外の色彩を要する。なお、透過率を高くするということは、不透明度が低くなるということであり、基材(2)の不透明度よりも、模様形成要素(6)の不透明度を低くするということである。
【0034】
不透明度については、模様形成要素(6)の不透明度が、基材(2)の不透明度よりも低くなれば特に限定しないが、本発明の模様形成体(1)は、前述のとおり、種別が同じで、かつ、資産価値の異なる貴重印刷物、例えば、日本銀行券や各種商品券を対象としていることから、基材(2)については対象が基本的に紙となるため、紙の種類にも起因するところであるが、本発明における基材の不透明度はコントラストを得るために90%より高く、模様形成要素(6)の不透明度は90%以下となる。
【0035】
基材(2)に対して、模様形成要素(6)を形成する方法としては、用紙製造工程においてすき入れとして形成したり、YAGレーザ等のレーザ加工により形成することが可能である。
【0036】
図2を用いて説明した各模様形成要素(6−1、6−2、6−3)は、すべて異なる形状の模様であるが、それぞれの模様形成要素(6)を真偽判別を行う際に重ね合わせると、別の所望する合成模様(7)を形成することとなる。例えば、図4(a)は、1000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−1)と、5000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−2)同士を重ね合わせたときに形成される合成模様(7−1)である。また、図4(b)は、1000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−1)と、10000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−3)同士を重ね合わせたときに形成される合成模様(7−2)である。さらには、図4(c)は、5000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−2)と、10000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−3)同士を重ね合わせたときに形成される合成模様(7−3)である。
【0037】
本実施の形態では、商品券を一例とし、3券種の模様形成体(1)としたため、三つの模様形成要素(6)を要することとしたが、2券種の場合には、模様形成要素(6)が二つとなり、4券種の場合には四つとなる。いずれの場合でも、すべての模様形成要素(6)は、それぞれを対応した形状とすることが必要である。
【0038】
模様形成要素(6)の形状としては、図2において、各模様形成要素(6−1、6−2、6−3)は、すべて異なる形状として説明したが、これに限定されるものではなく、各模様形成要素の形状が同じであっても、その配置される向き、大きさ又は配置位置を変えることでも良い。
【0039】
例えば、図5に示すように、三つの模様形成体(1)に形成される各模様形成要素(6’−1、6’−2、6’−3)において、図5(a)と図5(c)に示した模様形成要素の形状は同じ大きさの三角形であるが、その配置される向きが異なっている。同じ形状及び大きさを有する模様形成要素であっても、配置する向きを異ならせることで、図6に示すように、合成模様(7’−1、7’−2、7’−3)は、各模様形成要素の形状とは異なる新たな模様として形成される。
【0040】
さらには、各模様形成要素がすべて同じ大きさ、形状及び向きでも良く、その場合には、重ね合わせた際の合成模様(7)も模様形成要素(6)と同じ形状となる。仮に、模様形成要素(6)がすべて同じ大きさ、形状及び向きとした場合、重ね合わせたときに形成される合成模様(7)も模様形成要素(6)と同じ形状となるが、同じ形状となることが真正品とすれば良く、異なる形状となった場合には偽造品と判断することができる。
【0041】
また、模様形成要素(6)がすべて同じ大きさ、形状及び向きとした場合でも、重ね合わせる基準位置に対して、各々の模様形成要素(6)の形成する位置を異ならせることで、合成模様(7)の形状は、模様形成要素(6)と異なる新たな形状となって形成することが可能となる。
【0042】
例えば、図7に示した模様形成要素(6)は、異なる三つの模様形成体(1)に形成されているすべての模様形成要素(6)が同じ大きさの円形である。ただし、各模様形成要素(6’−1、6’−2、6’−3)が配置されている箇所は、基材の1箇所(図7では、基材の左角)を基準位置(V)とし、その基準位置(V)に対して、それぞれX1、X2、X3の距離を有して異なる位置に配置されている。これらの各模様形成要素(6’−1、6’−2、6’−3)を、基準位置(V)を基準として重ね合わせると、図8(a)〜(c)に示すように、異なる合成模様(7’−1、7’−2、7’−3)を形成することとなる。
【0043】
したがって、本発明における模様形成要素(6)は、前述のとおり、重ね合わせた際に所望の合成模様(7)となれば良く、すべてが異なる形状か、同じ形状であっても大きさが異なっている又は同じ形状及び大きさであっても、配置する向きが異なっているか、すべて同じ形状、大きさ及び配置向きであっても、基準位置(V)に対してそれぞれ異なる箇所に配置する、又はすべて同じ形状、大きさ及び向きで、かつ、基準位置(V)に対しても同じ箇所に配置して、合成模様も各模様形成要素と同じとすることでも良い。
【0044】
異なる模様形成体(1)における各模様形成要素(6)を重ね合わせて形成された合成模様(7)の形状については、図4、図6及び図8に示した図形に限らず、文字、記号等でも良い。さらに、一つ一つの模様形成要素(6)の形状についても、前述したように、合成模様(7)に対して対応した形状となれば良く、合成模様(7)と同一形状又は分割した形状となり、合成模様自体の形状に限定がないことから、各模様形成要素の形状についても特に限定されるものではない。
【0045】
なお、本発明における各模様形成要素(6)の形状が合成模様(7)を分割した形状となるというのは、模様形成要素(6’−1)が図5(a)の三角形と模様形成要素(6’−2)が図5(b)の平行四辺形であり、それを輪郭線同士を合わせて図6(a)のような台形の合成模様(7’−1)とする方法のように、合成模様を輪郭線を基に分割しても良いが、図6(b)の合成模様のように、元々の模様形成要素(6’−1)及び(6’−3)を一部が重畳するように重ね合わせて合成模様(7’−2)としても良い。このように、図6(b)に示した合成模様(7’−2)に対しても、図5(a)及び図5(c)の各模様形成要素(6’−1)及び(6’−3)は、本発明では合成模様を分割した形状であるとする。
【0046】
ここで、基準位置(V)について説明する。資産価値の異なる少なくとも二つの模様形成体(1)を重ね合わせる際、前述のとおり、基準位置(V)を決めておくことで、正確に各模様形成要素(6)を重ねあわせることが可能となる。したがって、基準位置(V)に対して所定の距離(X)を設けて各模様形成要素(6)を形成すれば良い。なお、この基準位置(V)からの所定の距離(X)については、特に限定されるものではなく、適宜設定すれば良いが、あまり基準位置(V)と模様形成要素(6)が離れ過ぎると、基準位置(V)を重ね合わせても、各模様形成要素(6)を適切な位置で重ね合わせることが困難となるため、3cm以内が好ましい。
【0047】
基準位置(V)については、図7及び図8に示したように、基材の一角としても良いが、基材上に、模様形成要素(6)とは別に形成しても良い。例えば、図9(a)に示すように、基材上の所定の位置に基準位置(V)を設ける。なお、このように基材上に新たに基準位置を設ける場合、設けられた基準位置を基準要素(V’)という。この基準要素(V’)は、公知の印刷方式(例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、凹版印刷等、基準要素(V’)が形成可能であれば、特にどの印刷方式でも良い)、すき入れやレーザ加工により形成することが可能である。また、形状及び大きさについても特に限定されないが、デザインを考慮すると、あまり大き過ぎない方が好ましい。
【0048】
図9(a)は、基準要素(V’)を1箇所設けてあるが、基準要素(V’)は1箇所に限定されるものではなく、図9(b)のように、2箇所形成しても良く、更には3箇所以上形成しても良い。基準要素(V’)を2箇所以上形成すると、資産価値の異なる模様形成体(1)を重ね合わせる際に、より正確な位置で模様形成要素(6)を重ね合わせることが可能となる。
【0049】
ただし、基準要素(V’)を2箇所以上形成する場合には、図9(b)及び(c)に示すように、異なる模様形成体(1)及び(1’)に対して、必ず同じ位置関係で形成する必要がある。図9(b)の模様形成体(1)では、模様形成要素(6−1)は、基準要素(V’)から所定の距離(X)及び基準要素(V’’)から所定の距離(X’)の位置に配置されており、図9(c)の模様形成体(1’)では、模様形成要素(6−2)は、基準要素(V’)から所定の距離(X’)及び基準要素(V’’)から所定の距離(X)の位置に配置されている。したがって、二つの異なる模様形成体(1)及び(1’)は、二つの基準要素(V’)及び(V’’)は同じ位置に配置されており、各模様形成要素(6−1)及び(6−2)は、異なる位置に配置されている。そこで、同じ位置に配置されている各基準要素(V’)及び(V’’)を重ね合わせれば、必然的に各模様形成要素(6−1)及び(6−2)が重なり、所望の合成模様(7)を形成することとなる。
【0050】
各模様形成体において複数配置した各基準要素(V)を同じ位置関係で形成しないと、すべての基準要素(V)を重ね合わせることが出来なくなると共に、模様形成要素(6)同士も適正に重ね合わせることが出来なくなってしまう。
【0051】
このように、基準要素(V)を形成し、各模様形成体(1)を重ね合わせるようにすれば、同じ資産価値を有する模様形成体(1)同士であっても、基材同士を角度を変えて基準要素(V)を重ね合わせることで、各模様形成要素(6)は同じ形状、大きさ、配置向き及び配置位置であっても、合成模様を模様形成要素(6)とは異なる形状で形成することも可能となる。
【0052】
例えば、図10は、1000円の商品券に形成された模様形成要素(6)であるが、この商品券には、四つの基準要素(V−1、V−2、V−3、V−4)が形成されている。この商品券を同じ1000円同士、90°回転させて基準要素(V−1)と基準要素(V−4)を重ね合わせ、かつ、基準要素(V−2)と基準要素(V−3)を重ね合わせる。なお、各基準要素はすべて模様形成要素(6)までの所定の距離(X)は同じである。
【0053】
このように、同じ形状、配置向き、大きさ及び配置位置の模様形成要素(6)であっても、重ね合わせる方向を基準要素(V)を目安として所定の角度回転させて重ね合わせることで、図10(c)に示すような、模様形成要素(6)とは異なる合成模様(7)を形成することも可能となる。
【0054】
回転させる所定の角度については、形成する基準要素(V)の配置及び個数により自由であり、適宜設定することができる。また、図10においては、同じ1000円の資産価値を有する商品券を例として説明したが、資産価値の異なる模様形成体(1)、例えば、1000円と5000円の商品券に同じ形状、配置向き、大きさ及び配置位置の模様形成要素(6)を形成しても良い。
【0055】
また、模様形成要素(6)については、同じ形状、配置向き、大きさ及び配置位置を同じ又は異ならせるだけではなく、各模様形成要素同士の透過率を同じ又は異ならせても良い。模様形成要素(6)については、基材(2)よりも透過率が高い、言い換えれば不透明度が低いことが条件となるが、その条件をクリアさえしていれば、模様形成要素(6)内又は他の模様形成要素(6)に対して透過率を変化させても良いこととなる。
【0056】
例えば、図11に示すように、図11(a)は1000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−1)であり、星が複数配置されて形成されている。また、図11(b)は5000円の商品券に形成されている模様形成要素(6−2)であり、これも星が複数配置されて形成されている。配置されている星の位置は、基準位置に対して、模様形成要素(6−1)と模様形成要素(6−2)は同じ位置と異なっている位置と両方ある。同じ位置に形成されている模様形成要素(6−1)と模様形成要素(6−2)は、重ね合わせた際には完全に重畳する。
【0057】
図11(a)に示した模様形成要素(6−1)は、複数ある星のうち、異なる2種類の透過率を有して形成されている。同様に、図11(b)に示した模様形成要素(6−2)も、複数ある星のうち、異なる2種類の透過率を有して形成されている。一つの模様形成要素(6)内において異なる透過率を有するように形成された二つの模様形成要素(6−1)及び(6−2)を重ね合わせると、図11(c)のような合成模様(7)を形成することとなるが、一つの模様形成要素(6)内において、それぞれ異なる透過率を有することから、合成模様(7)については、四つの異なる透過率を有することとなる。
【0058】
透過率の詳細を説明すると、模様形成要素(6−1)は、透過率が異なる模様形成要素(6−1’)と(6−1’’)から構成されており、また、模様形成要素(6−2)は、透過率が異なる模様形成要素(6−2’)と(6−2’’)から構成されている。したがって、重ね合わせた合成模様(7)は、四つの透過率(7−1、7−2、7−3、7−4)を有している。
【0059】
重ね合わせた際の透過率の関係を示したのが、図11(d)となっており、基材(2)同士が重なった箇所の透過率が最も低く、次に合成模様(7)となっているが、この合成模様(7)を構成している複数の星についても、それぞれ透過率が異なっている。一方の商品券のみに形成されている模様形成要素(6)の星については、重ね合わせた際に、基材(2)と重なることとなるため、重ねる前の透過率と比較すると透過率は下がる。したがって、重ね合わせる前の1000円の商品券と5000円の商品券のそれぞれに形成されている段階での模様形成要素(6)を構成している星の透過率が高い状態を示している。ただし、前述したとおり、それぞれの模様形成要素(6−1)及び(6−2)内においても、透過率が異なっていることを図11(d)で示している。
【0060】
図11では、透過率が異なっている複数の個別の要素(図11では星)が一つの模様形成要素(6)内に配置されている態様を説明したが、図12のように、透過率が連続的に変化した状態で模様形成要素(6)を形成しても良い。このように連続的に変化させることで、グラデーションや階調表現をすることが可能となり、意匠的にも効果が高くなる。
【0061】
図12(a)は、1000円の商品券に形成されている模様形成要素(6)であり、一つの模様形成要素内において透過率を連続的に異ならせてグラデーションを表現してある。この模様形成要素(6)が形成されている1000円の商品券を二つ重ね合わせると、図12(b)のように、一つ一つの模様形成要素(6)よりも全体的に透過率が低くなったグラデーションを示す合成模様(7)が形成される。この透過率の状態をグラフ化して示したのが図12(c)及び図12(d)となっている。
【0062】
図12(a)においては、連続的、かつ、滑らかに透過率を異ならせたが、連続して段階的に異ならせても良いし、連続していなくても段階的に異ならせることでも良い。図11に示した模様形成要素(6−1)及び(6−2)は、一つの模様形成要素(6)内において異なる透過率を有しており、このような状態も、一つの模様形成要素(6)内において段階的に透過率が異なって形成されていることとなる。本発明では、少なくとも二つの透過率の差があれば、段階的であると言う。
【0063】
さらに、図11では、資産価値の異なる二つの商品券に透過率を異ならせて模様形成要素(6)を形成し、また、図12では、一つの模様形成要素(6)内において、グラデーション的に透過率を変化させた模様形成要素(6)を、同じ資産価値を有する商品券同士を重ねて合成模様(7)を形成する例で説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一つの模様形成要素(6)内で透過率を変化させても良いし、異なる資産価値を有する模様形成体(1)において透過率を異ならせても良い。
【0064】
したがって、本発明においては、重ね合わせた際に形成される合成模様(7)を形成するための各模様形成要素(6)は、形状、大きさ、配置向き及び配置位置の少なくとも一つが互いに対応している上で、更に透過率が同じ又は異なっていても良い。
【0065】
また、模様形成要素(6)を形成する領域においては、透過による模様の視認状態を妨げなければ、公知のオフセット印刷、フレキソ印刷、凹版印刷等の印刷方式による他の印刷模様の形成や、OVD箔やスレッド等の貼付部材を施しても良い。他の模様等を形成することにより、デザイン効果が上がることとなると共に、他の偽造防止技術と複合させることも可能となり、高い偽造防止効果を奏することとなる。
【0066】
例えば、図13には、模様形成要素(6)の周囲にオフセット印刷を用いた彩紋模様(8)が形成されている。この図13に示した模様形成要素(6)は、すき入れにより形成されており、製造方法としては、先に用紙製造工程において、公知のすき入れ技法により模様形成要素(6)を形成し、その後、別の印刷工程において、模様形成要素(6)との位置関係に注意しながら彩紋模様(8)を印刷している。彩紋模様(8)を印刷する際には、高度な印刷精度を要することとなるが、その印刷精度自体が偽造防止効果を更に高めることとなる。
【0067】
図13に示した模様形成要素(6)と対応した形状の模様形成要素(6)が異なる模様形成体に形成され、重ね合わせることにより、所望の合成模様(7)を形成することが可能となる。
【0068】
図13では、彩紋模様(8)の内部に模様形成要素(6)を形成した例で説明したが、彩紋模様(8)の周囲に模様形成要素(6)を形成しても良く、更には、透過により視認する際に、合成模様の形成の妨げにならなければ、彩紋模様(8)と重なる位置に模様形成要素(6)を形成しても良い。この場合には、彩紋模様(8)の色彩を淡くすることが好ましい。
【0069】
また、別の態様として、図14を用いて説明する。図14は、アルミ層を基材とするOVD箔(9)の外側部分のアルミ部分をレーザ加工機により除去し、その除去された部分に該当する箇所に、模様形成要素(6)をすき入れにより形成しているものである。OVD箔(9)には、回折格子により「日本」という文字が形成されている。
【0070】
製造方法としては、先に用紙製造工程において、公知のすき入れ技法により模様形成要素(6)を形成する。この際、後工程で貼付するOVD箔(9)のアルミ部分をレーザ加工機で除去した箇所に該当する形状のみ、ドーナツ状にすき入れを形成しても良く、また、OVD箔(9)を貼付する箇所に該当する箇所をOVD箔(9)と同じ形状及び大きさにすき入れを形成しても良い。ただし、OVD箔(9)と同じ形状及び大きさにすき入れを形成する場合、すき入れが形成された箇所は、繊維密度が低くなるため、強度的に弱くなる可能性もあることから、OVD箔(9)のアルミ部分を除去する箇所のみにすき入れを形成することが好ましい。
【0071】
図14に示したようなOVD箔(9)のアルミ部分を除去した箇所に形成された模様形成要素(6)と対応した形状の模様形成要素(6)が異なる模様形成体に形成されることで、重ね合わせると、所望の合成模様(7)を形成することが可能となる。
【0072】
なお、図14では、OVD箔(9)の外側部分のアルミ箔を除去する形態で説明したが、これに限定されず、OVD箔(9)の回折格子により形成されている文字や図柄を損なわなければ、OVD箔(9)のどの箇所のアルミ箔を除去しても構わず、模様形成要素(6)は、そのアルミ箔を除去した箇所に対応して形成されれば良い。
【0073】
図14に示したように、本発明の模様形成要素(6)をOVD箔(9)の一部と複合させることで、デザイン的効果も高くなると共に、OVDにおける偽造防止効果に加え、本発明における真偽判別効果も奏することとなる。さらには、すき入れやレーザ加工技術により模様形成要素(6)が基材に対して凹形状となっているため、その形成されている箇所は、他の基材自体の厚みよりも薄くなっており、仮にOVD箔(9)を剥がそうとした場合、基材自体が破壊されることとなり、偽造防止効果は断然高くなる。
【0074】
以下、本発明における真偽判別可能な模様形成体について、実施例を用いて詳細に説明するが、以下の実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的な範疇であれば、適宜、変更が可能なことは言うまでもない。
【実施例1】
【0075】
実施例1として、図15に示す商品券(1’)に対して、左側下部に本発明の模様形成要素(6’)を形成した。実施例1の商品券は、図15に示す1000円の価値を有する商品券以外に、図示していないが、5000円及び10000円の商品券がある。なお、すべての商品券の寸法は、縦70mm、横150mmで、同一の大きさを有している。
【0076】
この三つの商品券(1’)に形成されている各模様形成要素(6’−1、6’−2、6’−3)を図示したのが図16であり、図16(a)は1000円、図16(b)は5000円、図16(c)は10000円に形成されている模様形成要素(6’)であり、基材(2’)に対して同じ箇所に形成されている。
【0077】
これらの模様形成要素(6’)は、長網抄紙機において用紙を製造する工程において、公知のすき入れ技法により、すき入れとして形成している。基材(2’)は、坪量が85g/m2、紙の厚みが87μm、不透明度が91%(JIS−P8149)の褐色の紙材を用いている。
【0078】
また、模様形成要素(6’)が形成されている箇所の紙の厚みは40μm(デジタルリニアゲージ DG−925 小野測器製)で、不透明度は52%(JIS−P8149)となっており、基材よりも透過率が高く形成されている。
【0079】
模様形成要素(6’)が形成されている商品券(1’)の1000円と5000円を長辺及び短辺を合わせるように重ね合わせ、重ね合わせた二つの商品券を透過により視認すると、基材の同じ箇所に形成されている模様形成要素同士が同じ箇所で重なり合い、図17(a)に示した合成模様(7’−1)が確認できた。同様にして、1000円と10000円の商品券(1’)を重ね合わせて、透過により視認すると、図17(b)に示した合成模様(7’−2)が、また、5000円と10000円の商品券(1’)を重ね合わせて、透過により視認すると、図17(c)に示した合成模様(7’−3)が確認できた。
【実施例2】
【0080】
実施例2として、図18に示す商品券(1’’)を作製した。本実施例2における商品券(1’’)は、基材(2’’)上に、印刷物の種別を示す名称(3’’)と、資産価値を示す料額文字(4’’)と、全面に格子による地紋模様(5’’)がオフセット印刷により形成され、更には、本発明における模様形成要素(6’’)を、左側下部に形成し、その近傍に、基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)を形成した。
【0081】
本実施例2の商品券は、1000円と5000円の二つの資産価値を有する商品券であり、それぞれの商品券に形成されている模様形成要素は、図19に示すとおりであり、図19(a)が1000円に形成されている模様形成要素(6’’−1)、図19(b)が5000円に形成されている模様形成要素(6’’−2)である。なお、二つの商品券の寸法は、縦70mm、横150mmで、同一の大きさを有している。
【0082】
本実施例2における模様形成要素(6’’)は、OVD箔の一部を利用して形成したものである。このOVD箔は、アルミ層を基材としたものであり、アルミ層の上層に反射により視認可能な画像(本実施例では「★」及び「ハートマーク」)が回折格子により形成されており、OVD箔の外側部分のアルミ層をレーザ加工機(レーザマーカ MD−V キーエンス製)により除去してある。アルミ層が除去された領域に、すき入れにより図19(a)及び(b)のような線幅500μmの円形(中抜き)の模様形成要素(6’’−1)又は(6’’−2)を形成している。
【0083】
図19(a)に示した1000円の模様形成要素(6’’−1)は、二重の円形から成り、図19(b)に示した5000円の模様形成要素(6’’−2)は、1000円の模様形成要素(6’’−1)の二重の円形の間に配置される大きさの円形である。二つの商品券に貼付されているOVD箔は、回折格子(9’’)以外の箇所はアルミ層がレーザ加工により除去されているため、各模様形成要素(6’’−1)及び(6’’−2)以外のアルミ層が除去されている箇所は、基材色が確認されることとなり、所謂、基材の透過率を有する領域となる。
【0084】
これらの模様形成要素(6’’−1)及び(6’’−2)並びに基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)は、長網抄紙機において用紙を製造する工程において、公知のすき入れ技法により、すき入れとして形成している。なお、基材(2’)は、坪量が85g/m2、紙の厚みが87μm、不透明度が91%(JIS−P8149)の褐色の紙材を用いている。
【0085】
また、模様形成要素(6’’−1)及び(6’’−2)並びに基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)が形成されている箇所の紙の厚みは40μm(デジタルリニアゲージ DG−925 小野測器製)で、不透明度は52%(JIS−P8149)となっており、基材よりも透過率が高く形成されている。
【0086】
基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)は、共に「★」型の形状を有しており、大きさは2mm四方である。各基準要素の配置について図20を用いて説明する。基準要素(V’’−1)は、基材(2’’)の左端から3mm(S)、下端から20mm(h)に形成し、外側の模様形成要素(6’’−1)との所定の距離(X)は8mmとした。なお、OVD箔のアルミ層の外側から除去されているため、外側の模様形成要素(6’’−1)は、OVD箔自体と同じ大きさとなる。
【0087】
もう一方の基準要素(V’’−2)は、基準要素(V’’−1)である「★」の右側頂点とOVD箔の中心を結ぶ線の延長線上において、OVD箔の右端から所定の距離(X)の8mmを有して形成した。
【0088】
各模様形成要素(6’’−1)及び(6’’−2)は、基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)と同じすき入れ技法により形成するため、同じ製造工程において形成する。1000円の商品券に形成した外側の模様形成要素(6’’−1)は、前述のとおり、各基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)から所定の距離(X)の8mm内側に線幅500μmで形成し、その外側の模様形成要素(6’’−1)内に1.5mmの距離を空けて、内側の模様形成要素(6’’−2)を形成した。
【0089】
また、5000円の商品券に形成した模様形成要素(6’’−2)は、各基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)から所定の距離(X)の8mmに、更に1mmを加えた9mmの距離に線幅500μmで形成した。
【0090】
基材(2’’)に貼付したOVD箔については、OVD箔のアルミ層を外側から3mm(T)内側まで除去した。アルミ層を除去したOVD箔を、基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)を結ぶ線の中心にOVD箔の中心が配置されるように貼付した。その位置にOVD箔を貼付することにより、1000円の商品券については、図19(a)に示したような模様形成要素(6’’−1)とOVD箔が合成された状態となり、5000円の商品券については、図19(b)に示したような模様形成要素(6’’−2)とOVD箔が合成された状態となった。
【0091】
この二つの商品券に対して、各基準要素(V’’−1)及び(V’’−2)を重ね合わせて光の透過により視認すると、図21に示したように、OVD箔同士は同じ位置で重なり、1000円に形成した二つの模様形成要素(6’’−1)の中間に、5000円に形成した模様形成要素(6’’−2)が嵌り、規則性のある三重の円形(輪)の合成模様として確認できた。
【0092】
本実施例2においては、基準要素(V’’−1)、(V’’−2)及びOVD箔は、共に基材(2’’)に対して、同じ箇所に形成した例で説明したが、基準要素を形成して模様形成要素同士を重ね合わせることとする場合には、各基準要素と模様形成要素との位置関係が各模様形成体において同じ位置関係であれば、必ずしも同じ箇所に形成する必要はない。あくまでも、基準要素を一つの基準として重ね合わせることができれば、模様形成体ごとに異なる箇所に形成しても良い。
【0093】
なお、本実施の形態及び実施例においては、真偽判別するために重ね合わせる二つの模様形成体(1)を、異なる資産価値を有する模様形成体として説明したが、同じ資産価値、例えば、実施例1における1000円の商品券を二つ用いても真偽判別を行うことが可能である。当然、同じ資産価値を有する模様形成体(1)同士については、模様形成要素(6)は同じ形状、大きさ及び向きとなり、各々の模様形成体(1)を重ね合わせても、合成模様(7)は各模様形成要素(6)と同じ形状となる。ただし、仮に偽造品と重ね合わせた場合には、合成模様(7)が異なる形状となるため、所望する合成模様(7)とはならず、偽造品であることが判明する。
【符号の説明】
【0094】
1、1’、1’’ 模様形成体
2、2’、2’’ 基材
3、3’、3’’ 印刷物の種別を示す名称
4、4’、4’’ 資産価値を示す料額
5、5’、5’’ 模様
6、6’、6’’ 模様形成要素
7、7’、7’’ 合成模様
8 彩紋模様
9、9’’ OVD箔
X、X’ 基準位置からの所定の距離
V 基準位置
V’、V’’ 基準要素
S 短辺から基準要素までの距離
h 長辺から基準要素までの距離
T OVD箔のアルミ層を除去した距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種別が同一で、かつ、資産価値が同じ又は異なる少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対であって、
前記模様形成体対は、各々の基材上の少なくとも一部に凹形状から成る模様形成要素が形成された模様形成体で構成され、
前記模様形成体対に各々形成される前記模様形成要素は、前記基材よりも透過率が高く、かつ、前記模様形成要素同士において、形状、大きさ、配置の向き及び配置位置のうち少なくとも一つが対応して形成され、
少なくとも二つの前記模様形成体を、基準位置で重ね合わせ、前記模様形成要素を透過により視認すると、所望する合成模様が形成されて確認できることを特徴とする真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項2】
前記少なくとも二つの模様形成体に形成された模様形成要素は、各模様形成要素同士の透過率が同じ又は少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項3】
前記模様形成要素は、一つの前記模様形成要素内において、透過率が連続的又は段階的に変化して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項4】
前記模様形成要素は、すき入れ又はレーザ加工により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項5】
前記基準位置は、印刷、すき入れ又はレーザ加工により形成された基準要素から成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項6】
前記模様形成要素は、前記基材上に形成されている他の印刷模様又は貼付部材の周囲又は内部に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項1】
種別が同一で、かつ、資産価値が同じ又は異なる少なくとも二つの真偽判別可能な模様形成体対であって、
前記模様形成体対は、各々の基材上の少なくとも一部に凹形状から成る模様形成要素が形成された模様形成体で構成され、
前記模様形成体対に各々形成される前記模様形成要素は、前記基材よりも透過率が高く、かつ、前記模様形成要素同士において、形状、大きさ、配置の向き及び配置位置のうち少なくとも一つが対応して形成され、
少なくとも二つの前記模様形成体を、基準位置で重ね合わせ、前記模様形成要素を透過により視認すると、所望する合成模様が形成されて確認できることを特徴とする真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項2】
前記少なくとも二つの模様形成体に形成された模様形成要素は、各模様形成要素同士の透過率が同じ又は少なくとも一つが異なることを特徴とする請求項1記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項3】
前記模様形成要素は、一つの前記模様形成要素内において、透過率が連続的又は段階的に変化して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項4】
前記模様形成要素は、すき入れ又はレーザ加工により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項5】
前記基準位置は、印刷、すき入れ又はレーザ加工により形成された基準要素から成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【請求項6】
前記模様形成要素は、前記基材上に形成されている他の印刷模様又は貼付部材の周囲又は内部に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の真偽判別可能な模様形成体対。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−46033(P2011−46033A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194921(P2009−194921)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
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