説明

眼鏡レンズ

【構成】ポリカーボネート樹脂(A)97〜99.95重量%および重量平均分子量が1000〜18000であるポリスチレン樹脂(B)0.05〜3重量%からなる樹脂成分100重量部、リン系酸化防止剤(C)および/またはフェノール系酸化防止剤(D)0.02〜2重量部および紫外線吸収剤(E)0.15〜0.9重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物(F)を成形してなる眼鏡レンズであって、眼鏡レンズの1.5mm厚みにおける全光線透過率が85.0%以上であり、かつ400nmの分光透過率が2.0%以下であり、さらに複屈折の減少率が5%以上である
ことを特徴とする眼鏡レンズ。
【効果】本発明の眼鏡レンズは、透明性、機械的性質、耐熱性及び色相安定性に優れているため、レンズの成形加工においても色相が変化したり、樹脂そのものが劣化したりすることがなく、また人間の目に有害な紫外線を効率よくカットできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂製の眼鏡レンズに関する。さらに詳しくは、ポリスチレン樹脂、紫外線吸収剤およびリン系酸化防止剤および/またはフェノール系酸化防止剤を使用することで、透明性および色調安定性に優れ、更には低い複屈折により優れた光学特性を示すと共に人間の目に有害な紫外線に対して優れた吸収能を保有するポリカーボネート樹脂製眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は透明性や耐衝撃性などに優れており、光学用レンズ用材料としての期待が高まっている。ポリカーボネート樹脂製の光学用レンズは、従来のガラス製レンズやアクリル製のプラスチックレンズより薄肉、軽量であっても耐衝撃性が高いために安全であり、また着色性などの機能性にも優れるため、保護眼鏡、サングラス、視力補正用眼鏡、スキー用ゴーグル、バーコードリーダー用レンズ、携帯電話のカメラ用レンズ、ピックアップレンズ等各種レンズ用材料として用いられるようになってきた。
【0003】
また最近では、紫外線により角膜炎や白内障を誘発する可能性が指摘されており、紫外線から目を保護する為に、紫外線吸収能を付与した眼鏡レンズの開発が望まれていた。一般的に、レンズの厚みは遠視用や近視用等の用途によって異なるが、近視用の凹レンズの場合、1.5mm程度の厚みが中心部で採用される。したがって、厚み1.5mmの眼鏡レンズにおける紫外線透過率を低減させることが重要であった。
【0004】
従来のポリカーボネート樹脂製眼鏡レンズにおいては、複屈折率が大きく、光学的異方性が生じるという問題があった。これは、ポリカーボネート樹脂を溶融状態で射出成形等を行う際、ポリマー分子の配向が起こり、配向方向に偏光した直線偏光に対する屈折率と、配向方向に直交する方向に偏光した直線偏光に対する屈折率とが異なり、得られた眼鏡レンズ成形品の内部で複屈折が生じることに起因している。(この現象を配向複屈折という。)大きな配向複屈折を有した眼鏡レンズに光を透過させると、互いに垂直な振動方向を持つ2つの光の速度が異なることから、結像点がずれて結像性能が大きく低下する問題があり、その解決が求められていた。
【0005】
この解決のために、特許文献1では複屈折の低い変性メチルメタクリレート樹脂を使用する方法が提案されている。しかしながら、変性メチルメタクリレート樹脂は耐熱性および衝撃強度が低いため、眼鏡レンズとしては使用範囲が限定されてしまうという問題があった。
一方、特許文献2では、ポリカーボネート樹脂自身が持つ固有の複屈折、すなわち光弾性係数を低減させるために、特定構造を有するビスフェノール化合物を用いて得られた芳香族ポリカーボネート共重合体が提案されている。しかしながら、該共重合体は光学式ディスク基板の複屈折を改善することを目的としたものであり、眼鏡レンズに有用で、かつ優れた透明性および色調安定性をも具備させることに関しては何ら教示されていない。
【0006】
従来の技術では、紫外線吸収剤の添加により、ポリカーボネート樹脂製眼鏡レンズにおいて375nm以下の紫外線を吸収することは可能であったが、これ以上の波長領域(400nm以下)の紫外線を吸収するためには、紫外線吸収剤を多量に添加する必要があった。この場合、紫外線吸収剤は一般的に昇華性があるために、金型を汚染したり、得られるレンズに曇りが生じたりするという問題を有していた。
特許文献3には、波長300〜345nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤と、波長346〜400nmに吸収極大を有する紫外線吸収剤を併用して、波長400nm以下の紫外線をカットする方法が開示されている。また、特許文献4には、ベンゾトリアゾリルフェノール基を分子中に2個有する特定構造の紫外線吸収剤を用いることで波長400nm以下の紫外線をカットする方法が開示されている。しかしながら、いずれの文献でも厚み1.5mmの眼鏡レンズにおける波長400nmの紫外線の分光透過率は10%以下であって、紫外線から目を保護するためには必ずしも充分ではなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平10−300901号公報
【特許文献2】特開平2−99521号公報
【特許文献3】特開平9−263694号公報
【特許文献4】特開平9−291205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、透明性および色調安定性に優れ、更には低い複屈折により優れた光学特性を示し、かつ有害な紫外線の吸収能の高いポリカーボネート樹脂製眼鏡レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂に、特定のポリスチレン樹脂、紫外線吸収剤およびリン系酸化防止剤および/またはフェノール系酸化防止剤を添加することによって、透明性および色調安定性に優れ、かつ低い複屈折を示し、優れた紫外線吸収能を有するポリカーボネート樹脂製眼鏡レンズが得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)97〜99.95重量%および重量平均分子量が1000〜18000であるポリスチレン樹脂(B)0.05〜3重量%からなる樹脂成分100重量部、リン系酸化防止剤(C)および/またはフェノール系酸化防止剤(D)0.02〜2重量部および紫外線吸収剤(E)0.15〜0.9重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物(F)を成形してなる眼鏡レンズであって、
・前記眼鏡レンズの1.5mm厚みにおける全光線透過率が85.0%以上
であり、かつ400nmの分光透過率が2.0%以下であり、かつ
・次式にて算出される、複屈折の減少率が5%以上である、
ことを特徴とする眼鏡レンズを提供するものである。
複屈折の減少率(%)=(σPC−σ)× 100/σPC
(ここで、
σは、ポリカーボネート樹脂組成物(E)から得られた厚み1mmの試験片
を用いて測定した複屈折を、
σPCは、当該ポリカーボネート樹脂組成物(E)の構成成分として使用し
たものと同一のポリカーボネート樹脂(A)から得られた厚み1mm
の試験片を用いて測定した複屈折を、
それぞれ表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の眼鏡レンズは、透明性、機械的性質、耐熱性及び色相安定性に優れているため、レンズの成形加工においても色相が変化したり、樹脂そのものが劣化したりすることがなく、また人間の目に有害な紫外線を効率よくカットできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0013】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0014】
これらは、単独又は2種類以上混合して使用される。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0015】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。
3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0016】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、通常10000〜100000、好ましくは12000〜30000、さらに好ましくは15000〜24000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0017】
上記の粘度平均分子量は、塩化メチレンを溶媒として0.5重量%のポリカーボネート樹脂溶液とし、キャノンフェンスケ型粘度管を用い温度20℃で比粘度(ηsp)を測定し、濃度換算により極限粘度〔η〕を求め下記のSCHNELLの式から算出した。
〔η〕=1.23×10−40.83
【0018】
本発明にて使用されるポリスチレン樹脂(B)の重量平均分子量は、1000〜18000である。ポリスチレン樹脂(B)の重量平均分子量がこの範囲から外れると、全光線透過率に劣り、複屈折の低下が期待できないので、好ましくはない。より好ましくは、1500〜10000、さらに好ましくは2000〜4000の範囲である。
【0019】
ポリスチレン樹脂(B)の組成比は、(A)および(B)からなる樹脂成分に基づいて0.05〜3重量%である。ポリスチレン樹脂(B)の組成比がこの範囲から外れると、全光線透過率に劣り、複屈折の低下が期待できないので好ましくない。好ましい範囲は0.1〜1重量%である
【0020】
商業的に入手可能なポリスチレン樹脂(B)としては、BASF社製JONCRYL ADF−1300があげられる。
【0021】
本発明にて使用されるリン系酸化防止剤(C)および/またはフェノール系酸化防止剤(D)としては、次の化合物が挙げられる。
リン系酸化防止剤(C)としては、下記一般式1、2および3で表わされる化合物のうち1種またはそれ以上からなるものが挙げられる。
一般式1
【0022】
【化1】

(一般式1において、R1〜4は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で
置換されてもよいアリール基を示す。)
一般式2
【0023】
【化2】

(一般式2において、R5、R6は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
一般式3
【0024】
【化3】

(一般式3において、R7は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、cは0〜3の整数を示す。)
【0025】
一般式1の化合物としてはクラリアントジャパン社製サンドスタブP−EPQが、一般式2の化合物としてはアデカ社製アデカスタブPEP−36が、また、一般式3の化合物としては住友化学社製スミライザーP−168が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0026】
また、フェノール系酸化防止剤(D)としては、下記一般式4の化合物が挙げられる。一般式4
【0027】
【化4】

(一般式4において、R8は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
【0028】
一般式4の化合物としては、チバスペシャルティケミカルズ社製イルガノックス1076が商業的に入手可能である。
【0029】
リン系酸化防止剤(C)および/またはフェノール系酸化防止剤(D)の配合量は、(A)および(B)からなる樹脂成分100重量部あたり、0.02〜2重量部である。配合量が0.02重量部未満では、熱安定性が劣るため好ましくない。また、2重量部を超えると全光線透過率が下がるため好ましくない。配合量は、0.04〜1重量部が好適で、さらに好ましくは0.05〜0.2重量部である。この範囲では、全光線透過率が低下せず、優れた熱安定性を示す。
【0030】
本発明にて使用される紫外線吸収剤(E)としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、サリシレート系、トリアリールトリアジン系等の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。このうち、下記一般式5の化合物が好適に用いることができる。
一般式5
【0031】
【化5】

【0032】
(一般式5において、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、各Rが同一でも異なっても良い。)
なかでも、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールまたは2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが特に好適に使用できる。
【0033】
紫外線吸収剤(E)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)97〜99.95重量%および重量平均分子量が1000〜18000であるポリスチレン樹脂(B)0.05〜3重量%からなる樹脂成分100重量部に対して、0.15〜0.9重量部である。配合量が0.15重量部未満では紫外線吸収能が不充分であり、また、0.9重量部を越えると全光線透過率が低下することで、眼鏡レンズとしての光学特性が不充分となるので好ましくない。特に好ましくは0.3〜0.5重量部の範囲である。
【0034】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化材、帯電防止剤、等の添加剤、衝撃性改良材、他のポリマーを配合してもよい。
【0035】
本発明の眼鏡レンズに使用されるポリカーボネート樹脂組成物の各種配合成分の混合方法には、特に制限はなく、公知の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー等による混合や押出機による溶融混練が挙げられる。
【0036】
本発明の眼鏡レンズに使用されるポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法には、特に制限はなく、公知の射出成形法、圧縮成形法、押出成形法等を用いることができる。
【0037】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれら実施例に制限されるものではない。尚、「部」、「%」はそれぞれ重量基準に基づく。
【実施例】
【0038】
(ポリカーボネート樹脂組成物のペレットの作成)
表1〜表5に示す配合成分、配合量に基づき、タンブラーを用いて各種配合成分を混合し40mm径の単軸押出機(田辺プラスチック社製)を用いて、シリンダー温度260℃にて溶融混練し、各種ペレットを得た。
使用した配合成分は、それぞれ次のとおりである。
1.ポリカーボネート樹脂:
ビスフェノールAと塩化カルボニルから合成されたポリカーボネート樹脂
住友ダウ社製カリバー301−6(粘度平均分子量:24000)
(以下「PC」と略記する。)
【0039】
2.ポリスチレン樹脂:
BASF社製 JONCRYL ADF−1300
(重量平均分子量:2800、以下「PS1」と略記する。)
Aldrich社製 ポリスチレン(重量平均分子量:800)
(以下「PS2」と略記する。)
Aldrich社製 ポリスチレン(重量平均分子量:4000)
(以下「PS3」と略記する。)
Aldrich社製 ポリスチレン(重量平均分子量:20000)
(以下「PS4」と略記する。)
【0040】
3.リン系酸化防止剤:
クラリアントジャパン社製P−EPQ
(以下「P系AO1」と略記する。)
アデカ社製アデカスタブPEP−36
(以下「P系AO2」と略記する。)
住友化学社製P−168
(以下「P系AO3」と略記する。)
4.フェノール系酸化防止剤:
チバスペシャルティケミカルズ社製イルガノックス1076
(以下「Ph系AO」と略記する。)
【0041】
5.紫外線吸収剤
シプロ化成株式会社製 シーソーブ703
(以下「UVA」と略記する。)
【0042】
(色度、全光線透過率、分光透過率および複屈折測定用試験片の作成方法)
得られた各種ペレットを120℃で4時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所製J−100SAII)を用いて280℃、射出圧力1200Kg/cm2にて色度および全光線透過率、分光透過率測定用試験片(90x50x1.5mm)を作成した。また、複屈折測定用としては、90x50x1mmの試験片とした。
【0043】
(色度の評価方法)
色度の測定は、村上色彩研究所製スペクトロフォトメーターCMS35−SPを用い、D65光源、視野角10°で行った。色度測定をn=10で行った際のxおよびyの値の最大値と最小値の差が0.0005以下を合格とした。結果を表1から表4に示した。
【0044】
(全光線透過率の評価方法)
全光線透過率の測定は、村上色彩研究所製ヘーズメーターHM−150を用いて行った。全光線透過率Ttが85.0%以上を合格とした。結果を表1から表4に示した。
【0045】
(複屈折の評価方法)
複屈折は、神港精機の偏光歪み計(ポーラリメーター)を用いて測定した。
尚、複屈折は次式の通り定義される。
複屈折σn[−]
=位相差(nm)/サンプル厚み(nm)=(θ×589/180) / t
θ :回転検光子の回転角度等価直線偏光の消光角度(単位 : °)
589:使用している単色光の波長(Na放電灯の黄色光)(単位:nm)
180:回転検光子半回転角度(単位:°)
複屈折の減少率は、次式に基づき算出し、5%以上のものを合格とした。
複屈折の減少率(%)=(σPC−σ)× 100/σPC
(ここで、
σは、ポリカーボネート樹脂組成物(E)から得られた厚み1mmの試験片
を用いて測定した複屈折を、
σPCは、当該ポリカーボネート樹脂組成物(E)の構成成分として使用し
たものと同一のポリカーボネート樹脂(A)から得られた厚み1mm
の試験片を用いて測定した複屈折を、
それぞれ表す。)
結果を表1から表4に示した。
【0046】
(分光透過率の評価方法)
日立製作所社製U−4100型分光光度計を用いて、400nmの分光透過率の測定を行った。400nmの分光透過率が2%以下を合格とした。結果を表1から表4に示した。
【0047】
【表1】

判定: 合格(○)、不合格(×)
【0048】
【表2】

判定: 合格(○)、不合格(×)
【0049】
【表3】

判定: 合格(○)、不合格(×)
【0050】
【表4】

判定: 合格(○)、不合格(×)
【0051】
実施例1〜10に示すように、本発明の要件を具備したポリカーボネート系樹脂組成物は高い全光線透過率と輝度、優れた色相安定性および低い曇価率を示した。
【0052】
比較例1は、PS1の配合量が規定量よりも少ない場合で、全光線透過率および複屈折減少率が劣っていた。
比較例2は、PS1の配合量が規定量よりも多い場合で、全光線透過率が劣っていた。
比較例3は、リン系酸化防止剤の配合量が規定よりも少ない場合で、色相安定性が劣っていた。
比較例4は、リン系酸化防止剤の配合量が規定よりも多い場合で、全光線透過率が劣っていた。
比較例5は、重量平均分子量が800のPS2を使用した場合で、全光線透過率が劣っていた。
比較例6は、重量平均分子量が20000のPS4を使用した場合で、全光線透過率および複屈折減少率が劣っていた。
比較例7は、UVAの配合量が規定よりも少ない場合で、400nmでの分光透過率が劣っていた。
比較例8は、UVAの配合量が規定よりも多い場合で、全光線透過率が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)97〜99.95重量%および重量平均分子量が1000〜18000であるポリスチレン樹脂(B)0.05〜3重量%からなる樹脂成分100重量部、リン系酸化防止剤(C)および/またはフェノール系酸化防止剤(D)0.02〜2重量部および紫外線吸収剤(E)0.15〜0.9重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物(F)を成形してなる眼鏡レンズであって、
・前記眼鏡レンズの1.5mm厚みにおける全光線透過率が85.0%以上
であり、かつ400nmの分光透過率が2.0%以下であり、かつ
・次式にて算出される、複屈折の減少率が5%以上である、
ことを特徴とする眼鏡レンズ。
複屈折の減少率(%)=(σPC−σ)× 100/σPC
(ここで、
σは、ポリカーボネート樹脂組成物(F)から得られた厚み1mmの試験片
を用いて測定した複屈折を、
σPCは、当該ポリカーボネート樹脂組成物(F)の構成成分として使用し
たものと同一のポリカーボネート樹脂(A)から得られた厚み1mm
の試験片を用いて測定した複屈折を、
それぞれ表す。)
【請求項2】
ポリスチレン樹脂(B)の重量平均分子量が、1500〜10000であることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
ポリスチレン樹脂(B)の重量平均分子量が、2000〜4000であることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
ポリスチレン樹脂(B)の組成比が、前記樹脂成分に基づき0.1〜2重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
リン系酸化防止剤(C)および/またはフェノール系酸化防止剤(D)の配合量が、樹脂成分100重量部あたり、0.05〜0.2重量部であることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項6】
リン系酸化防止剤(C)が、下記一般式1、2および3に示す化合物から選択された一種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ。
一般式1
【化1】

(一般式1において、R1〜4は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
一般式2
【化2】

(一般式2において、R5、R6は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
一般式3
【化3】

(一般式3において、R7は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、cは0〜3の整数を示す。)
【請求項7】
フェノール系酸化防止剤(D)が、下記一般式4に示す化合物であることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ。
一般式4
【化4】

(一般式4において、R8は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
【請求項8】
紫外線吸収剤(E)が、下記一般式5に示す化合物であることを特徴とする請求項1に記載の眼鏡レンズ。
一般式5
【化5】

(一般式5において、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、各Rが同一でも異なっても良い。)

【公開番号】特開2011−43557(P2011−43557A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190026(P2009−190026)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(396001175)住友ダウ株式会社 (215)
【Fターム(参考)】