説明

着色フレークとこれを配合した塗料

【課題】 多彩模様塗料に利用されるフレークは、その色の組合せが特定になることが多かった。塗料製造時に複数のフレークを配合する際には、色の数だけ計量する手間が必要となっていた。この発明では、新規な着色フレークと着色フレークを利用した塗料を提供する。
【解決手段】 薄片状のフレークにあって表裏面の色調が異なること、フレークの着色が顔料による着色であること、あるいは、着色骨材あるいは天然石による着色であることを要旨とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗料に配合して用いると多色の多彩模様が簡単に形成できる着色フレークとその着色フレークを利用した塗料に関するものである。塗料の利用範囲としては、構築物の表面、建築物の内外壁、床面、建築用ボードの表面が例示される。
【背景技術】
【0002】
従来、フレークを利用した多彩模様塗料は、多彩とするための色数に応じた複数のフレークを添加することにより、塗料が形成されていた。
【0003】
従来のフレークには、不定形で大きさがランダムにあり、フレークの外縁に向かって連続的に薄くなる、フレークの最長径が30mm以下、最大肉厚が5mm以下にあり、その組成に粒径が0.05〜5mmの骨材が混入されたり、更には体質顔料、添加剤、顔料を含んだ樹脂を結合剤とするものが有った(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2832424号公報 また、この特許文献1のフレーク入り塗料では、塗料化するため3種以上の異なる色の樹脂フレークと硬化後ほぼ無色透明となる結合材とを混練するようにしていた。
【0004】
更に、別のフレークの発明では、フィルム状チップと記してあるが、結合材に水性樹脂と水溶性のポリイソシアネートを配合し、骨材又は顔料のいずれかを充填材とするものが有った。この発明のフレークでは、一片の厚みを0.1〜1mmとするものであった。塗料(公報の中では、塗材と記す。)とする時には、フィルム状チップと骨材を重量比で5:95〜30:70として、結合材中に混入していた(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献2】特開2002−179999号公報
【0005】
他に、フレークとしてマイカ薄片を用いたフレーク入り塗料の例が、特許文献3にあり、合成樹脂エマルション固形分とマイカ薄片を所定の重量割合により配合したものであった。但し、この特許文献3ではフレーク入り塗料単独で塗装するものでは無く、第1の吹付材を塗装した後、その上塗りとして、マイカ薄片が第1の吹付材の5〜60%を覆うようにして用いるものであった。
【特許文献3】特開平11−319698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、多彩模様塗料に利用されるフレークは、その色の組合せが特定になることが多かった。塗料製造時に複数のフレークを配合する際には、色の数だけ計量する手間が必要となるのも、自然な成り行きであった。
【0007】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、新規な塗料用フレークを提供し、この塗料用フレークを利用して新規な多彩模様塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の着色フレークは、薄片状のフレークにあって表裏面の色調が異なることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明の着色フレークは、請求項1に記載の発明において、フレークの着色が顔料による着色であることことを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明の着色フレークは、請求項1記載の発明において、フレークの着色が着色骨材あるいは天然石による着色であることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明の着色フレークは、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明において、フレークの厚みが0.1〜3mmにあることを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明の着色フレーク入り塗料は、請求項1ないし請求項4の発明を利用したものであり、塗料の主成分が、請求項1ないし請求項4に記載した不定形で大きさがランダムな着色フレーク及び合成樹脂であることを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明の着色フレーク入り塗料は、請求項5記載の発明において、主成分に粒径3mm以下の骨材を含むことを要旨とする。
【0014】
請求項7に記載の発明の着色フレーク入り塗料は、請求項5または請求項6に記載の発明において、複数種類の着色フレークを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の着色フレークによれば、一片の着色フレークが表裏面で異なった色調を有するので厚みを確保しながら2色分のフレークと同じ機能を持たせることができる。フレーク入り塗料製造における、フレーク配合量およびフレークの混合に掛かる手間を少なくすることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明の着色フレークによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、顔料によって隠ぺいが確保されるのでフレークの厚みを比較的薄いものとすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明の着色フレークによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、フレークの表裏面の色が骨材による点の集合として形成されるので、平板でない深みのある色形成ができる。
【0018】
請求項4に記載の発明の着色フレークによれば、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加え、表裏面の色形成を経済的に行うことができ、塗料に配合した時に無駄のない多色形成が可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明の着色フレーク入り塗料によれば、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載した発明の不定形で大きさがランダムな着色フレークを利用して、数少ない原材料により多彩感のある塗料を製作することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明の着色フレーク入り塗料によれば、請求項5に記載した発明の効果に加え、塗装適性に優れた塗料となすことが可能となり、また、被塗装物への隠ぺいを確保し易い塗料を提供することができる。また、フレーク部分と骨材部分によって意匠形成することになり、より変化に富んだ意匠を提供することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明の着色フレーク入り塗料によれば、請求項5または請求項6に記載した発明の効果に加え、色の変化に富んだ意匠形成することができる塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
この発明の着色フレークを図1、図2、図3の断面図により例示する。図1、図2、図3による例では、何れも不定形の平面形状を有している。図1のものは厚みが均一にあって表面と裏面の色調がA色部分1とB色部分2にあるものであり、図2は片面が平坦であり片面が外縁に向かって薄くなっているもの、図3ではA色部分1とB色部分2ともに外縁に向かって薄くなっているものを示している。明細書中では色調が異なることを分かりやすくするため、便宜上A色、B色と表記した。
【0023】
図1、図2、図3による例は、形状としての一例であり不定形であり大きさもランダムとなった千差万別なものとなる。また、塗料の成分の一つとして利用する際に、定形形状の着色フレークと不定形形状の着色フレークを任意の割合により組み合わせることもできる。
【0024】
着色フレークの製作方法の例を数例説明する。
まず始めに、着色フレークとなる液状フレーク原料を作成する。液状フレーク原料には結合材としての合成樹脂あるいは合成樹脂エマルション、着色成分となる顔料、体質顔料あるいは固有の色を持つ細骨材を主成分とするものが利用される。液状フレーク原料は大別すると、結合材と顔料、体質顔料を主成分とするものと結合材と細骨材を主成分とするものが有る。
【0025】
合成樹脂あるいは合成樹脂エマルションには、アクリル樹脂、エチレン−アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン−アクリル樹脂、シリコン−アクリル樹脂等公知の合成樹脂の他、クロロプレンラテックス、アクリルブタジエンラテックス等のゴムラテックスも利用できる。
【0026】
顔料には、酸化チタン、黄色酸化鉄、酸化第二鉄(ベンガラ)、フタロシアニンブルー、オーカー、群青等、体質顔料には炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、ベントナイト、珪石粉、珪藻土、ホワイトカーボン等が利用される。
【0027】
細骨材としては、珪砂のように産出時において細かい粒のもの、寒水石、御影石、大理石等の天然石を粉砕して細粒としたものの他、ガラスビーズ、プラスチックビーズ、寒水砂あるいは珪砂を核として塗料を被覆したもの、釉薬を被覆したものが利用される。細骨材に利用される天然石等の平均粒径は、0.05〜2mmにあるものが好ましく用いられる。
【0028】
例えば、厚みが均一な着色フレークを製作するには、液状フレーク原料を平坦な可剥離性のある基布の上にドクターブレードコーターを例とする一定膜厚が確保できる塗装手段によりA色を塗って乾燥させ、次にB色を塗って乾燥させた後、基布から剥がし、粉砕手段により着色フレークの長辺長さが3mm〜1cmにある着色フレークを得た。
【0029】
また、A色、B色ともに外縁に向かって薄くなる着色フレークを製作するには、先の例では平坦な基布を用いた部分では、ゆず肌状の凹凸を持つ基布を用い、A色の液状フレーク原料の塗布はドクターブレードコーターにより行い、片面にはゆず肌状の凹凸が形成されるようにし、A色塗布後の平坦面にタイルガンを例とするノズル口径が5mm〜10mm程度のスプレーガンを用いて、B色液状フレーク原料を塗布する。この時B色は不定形で大きさもランダムな島状の模様を形成することとなる。この例でも液状フレーク原料を塗布し乾燥させた後、基布から剥がし、粉砕手段により着色フレークの長辺長さが3mm〜1cmにある着色フレークを得ることができる。
【0030】
この製法例では、A色の形とB色の形が異なることがあり、表裏面が100%一致しないこともあるが、この発明の目的であるフレーク入り塗料製造の簡略化を達成できるので、利用することができる。
【0031】
また、表裏面が一致した着色フレークは、窪みを作った型の中にA色を流し込んだ後、窪み部分以外がマスクされた状態でスプレーガン塗布することによって作成することができる。
【0032】
上記した着色フレークは外縁に向かって薄くなると表現したが、実際出来上がるものは、着色フレークを平面的に捉えた時に、部分的に窪みをもつものも発生するが、このような着色フレークであっても良い。
【0033】
上記着色フレークを利用してフレーク入り塗料となすためには、フレーク以外の塗料の主成分としては、結合材、骨材が挙げられる。結合材には、合成樹脂あるいは合成樹脂エマルションがあり、その樹脂組成の例としてはアクリル樹脂、エチレン−アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ウレタン−アクリル樹脂、シリコン−アクリル樹脂等公知の合成樹脂の他、シリカゾルあるいは水溶性珪酸塩が用いられる。
【0034】
塗料主成分としての骨材としては、天然骨材、人工骨材がある。天然骨材には白色のもの、有色のものがあり、白色骨材では石灰岩、方解石、白色珪砂、純度の高い珪石、白色雲母を粉砕分級したものがあり、有色骨材には、大理石、蛇紋岩、御影石、ミノガスミ石、有色珪石、有色雲母などを粉砕分級したものがある。人工の骨材としては、上記したガラスビーズ、プラスチックビーズ、寒水砂あるいは珪砂を核として塗料を被覆したもの、釉薬を被覆したものが利用される。これら骨材の粒径範囲は、さきほどのフレークを作成するために用いた細骨材に比べ、やや大きめの骨材を用いるのが良く、平均粒子径では0.05〜5mmの範囲にあるものが良い。
【0035】
上記した主成分を配合して着色フレークとなす場合、着色フレークを作製するための塗料の配合は、次に示すものが例示できる。この配合では、主たる固形分となるものだけを示している。
合成樹脂エマルション(固形分50%) 10〜90重量%
着色骨材 0〜90重量%
寒水砂 0〜90重量%
炭酸カルシウム(平均粒径0.7〜150μm) 0〜90重量%
但し、着色骨材、寒水砂、炭酸カルシウム(体質顔料)の合計は、90〜10重量%となる。また、寒水砂および/または炭酸カルシウムを骨材・充填材・体質顔料とする場合には、顔料による着色が好ましい。
【0036】
さらに、一つのあるいは複数の着色フレークを用いて、着色フレーク入り塗料となす場合、その配合には次に示すものが例示できる。この配合では、主たる固形分となるものだけを示している。
合成樹脂エマルション(固形分50%) 20〜90重量%
着色フレーク 5〜80重量%
着色骨材 0〜75重量%
寒水砂 0〜75重量%
炭酸カルシウム(平均粒径0.7〜2μm) 0〜75重量%
但し、着色骨材、寒水砂、炭酸カルシウム(体質顔料)の合計は、75〜5重量%となる。また、顔料を添加する場合は、着色フレークが顔料により被覆されその色調が不鮮明とならない程度とする範囲に抑える必要がある。
【0037】
上記の主成分以外には、通常塗料に利用される、消泡剤、湿潤剤、分散剤などの界面活性剤、配合水、顔料、造膜助剤、増粘剤、防凍剤、防腐剤、防黴剤、紫外線吸収剤などが適宜選択の上使用される。
【0038】
実施例1
実施例1では、厚みが均一な着色フレークを製作した。製作に用いた塗料の組成は、顔料成分を別にして、以下に記す配合とした。
合成樹脂エマルション(固形分50%) 60重量部
酸化チタン 20重量部
界面活性剤 5重量部
造膜助剤 4重量部
増粘剤 3重量部
水 10重量部
尚、合成樹脂エマルションにはスチレン−アクリル系合成樹脂を成分とするものを利用し、界面活性剤には湿潤剤、分散剤、消泡剤を含んでいる。
【0039】
顔料成分として、赤色顔料にはベンガラ、黄色顔料にはオーカー、青色顔料にはフタロシアニンブルー、黒色顔料にはカーボンブラックを界面活性剤、溶剤中に練り込んだものを利用した。
【0040】
着色フレークの一種類は、上記ベース塗料に顔料を適宜添加して調色の上、片面がれんが色であり、反対側の面が土色の厚みがほぼ均一なフレークを製作し、別の一種類のフレークは片面が灰色であり、反対側の面が黒色の厚みがほぼ均一なフレークとした。例えばその製作は、平坦な剥離性シート上に、まず一色目となるれんが色塗料を約1mmの膜厚となるようにドクターブレードにより塗り付け、乾燥させた後にもう一色となる土色塗料を再度ドクターブレードにより塗り付けて乾燥させた。乾燥後に、剥離性シートから塗膜を剥がし、粉砕し、目開きが4.0mmと11.1mmの篩を利用して、所定範囲のフレークを得た。それぞれのフレークを区別するために、前者をフレークAとし、後者をフレークBとする。フレークAあるいはフレークBは、厚みが1.0〜1.5mmであり、平面的な大きさでは短辺がほぼ4.0mm〜11.1mmにある不定形形状となっている。
【0041】
フレークを含んだ塗料は、上記フレークA、同B以外に乾燥又は硬化すると透明又はほぼ透明になる合成樹脂および粒径が0.05〜2.0mm程度の天然あるいは人工の有色骨材を混練することにより容易に得られる。但し、着色顔料を加えることは、その隠ぺい力によりフレーク固有の色を覆ってしまうことになるので、なるべく使用を控えた方が良い。
【0042】
フレーク入り塗料の配合例を以下に記す。また、この配合の塗料を混合するに当たっては、低回転数のドラム型ミキサーを利用して、なるべくフレークが破砕されないようにした。
フレークA 5重量部
フレークB 5重量部
合成樹脂エマルション(固形分50%) 20重量部
寒水砂(粒径0.05〜0.25mm) 55重量部
造膜助剤 14重量部
防腐、防黴剤 1重量部
水 10重量部
尚、合成樹脂エマルションにはアクリル系合成樹脂を成分とするものを利用した。
【0043】
上記の手順により得られた、フレーク入り塗料の施工は次のように行った。
予め素地調整を行ったコンクリート、モルタル金ゴテ仕上げ面に対して、塗料吐出ノズル口径が12mmのスタッコガンを用いて、エアー圧力0.5N/cmの条件にて吹付塗装を行い、塗料の厚みが1mm程度となるよう塗付した。塗料が未乾燥状態の間に押さえ用ローラーを用いて、立ちはねたフレークを押さえ付けた。
【0044】
実施例2
実施例2では、大凡厚みが外縁に向かって薄くなる着色フレークを製作した。
フレーク作成に用いられる塗料の組成は、以下の配合イ、配合ロ、配合ハ、配合ニとした。その後の工程で、配合イの塗料と配合ロの塗料を用いて、フレークCを作成し、配合ハの塗料と配合ニの塗料を用いて、フレークDを作成している。
【0045】
配合イ(白色となる塗料)
アクリル系合成樹脂エマルション(固形分50%) 16重量部
寒水砂(粒径 0.5〜2.0mm) 55重量部
寒水砂(粒径 0.05〜1.0mm) 20重量部
界面活性剤 1重量部
造膜助剤 5重量部
増粘剤 1重量部
水 10重量部
【0046】
配合ロ(ピンク色となる塗料)
アクリル系合成樹脂エマルション(固形分50%) 16重量部
ピンク色の着色けい砂(粒径 0.05〜2.0mm) 5重量部
寒水砂(粒径 0.5〜2.0mm) 45重量部
寒水砂(粒径 0.05〜1.0mm) 25重量部
界面活性剤 1重量部
造膜助剤 5重量部
増粘剤 1重量部
水 10重量部
【0047】
配合ハ(赤茶色となる塗料)
アクリル系合成樹脂エマルション(固形分50%) 16重量部
赤色の着色けい砂(粒径 0.05〜2.0mm) 13重量部
茶色の着色けい砂(粒径 0.05〜2.0mm) 27重量部
寒水砂(粒径 0.5〜2.0mm) 27重量部
寒水砂(粒径 0.05〜1.0mm) 8重量部
界面活性剤 1重量部
造膜助剤 5重量部
増粘剤 1重量部
水 10重量部
【0048】
配合ニ(灰色となる塗料)
アクリル系合成樹脂エマルション(固形分50%) 16重量部
黒色の着色けい砂(粒径 0.05〜2.0mm) 14重量部
灰色の着色けい砂(粒径 0.05〜2.0mm) 2重量部
寒水砂(粒径 0.5〜2.0mm) 30重量部
寒水砂(粒径 0.05〜1.0mm) 15重量部
界面活性剤 1重量部
造膜助剤 5重量部
増粘剤 1重量部
水 10重量部
【0049】
着色フレークの一種類は、片面が白色であり、反対側の面がピンク色のフレークであり、別の一種類のフレークは片面が赤茶色であり、反対側の面が灰色のフレークとした。例えばその製作は、液滴状の凹部を設けたプラスチック製シート上に、まず一色目となる白色塗料を凹部を充填するようにドクターブレードにより塗り付け、乾燥させた後にもう一色となるピンク色塗料をノズル口径8mmのタイルガンを用いて吹き付け塗装を行い乾燥させた。乾燥後に、プラスチック製シートを撓ませて剥がし、粉砕し、目開きが4.0mmと11.1mmの篩を利用して、所定範囲のフレークを得た。それぞれのフレークを区別するために、白色、ピンク色のフレークをフレークCとし、赤茶色、灰色のフレークをフレークDとする。フレークCあるいはフレークDは、厚みが1.5〜2.5mmであり、平面的な大きさでは短辺がほぼ4.0mm〜11.1mmにある不定形形状となっている。
【0050】
フレーク入り塗料の配合例を以下に記す。また、この配合の塗料を混合するに当たっては、低回転数のドラム型ミキサーを利用して、なるべくフレークが破砕されないようにした。
フレークC 5重量部
フレークD 5重量部
合成樹脂エマルション(固形分50%) 20重量部
寒水砂(粒径0.05〜0.25mm) 55重量部
造膜助剤 14重量部
防腐、防黴剤 1重量部
水 10重量部

尚、合成樹脂エマルションにはアクリル系合成樹脂を成分とするものを利用した。
【0051】
上記の手順により得られた、フレーク入り塗料の施工は次のように行った。
予め素地調整を行ったコンクリート、モルタル金ゴテ仕上げ面に対して、塗料吐出ノズル口径が12mmのスタッコガンを用いて、エアー圧力0.5N/cmの条件にて吹付塗装を行い、塗料の厚みが3mm程度となるよう塗付した。塗料が未乾燥状態の間に押さえ用ローラーを用いて、立ちはねたフレークを押さえ付けた。
【0052】
実施例3
実施例3では、実施例2において利用した、着色フレーク作成用塗料の他、配合ホ、配合ヘの塗料を準備し、大凡厚みが外縁に向かって薄くなる着色フレークを製作した。フレーク作成に用いた塗料の組成は、以下に記す配合ホ、配合ヘである。
【0053】
配合ホ(ベージュ色となる塗料)
アクリル系合成樹脂エマルション(固形分50%) 16重量部
黄色の着色けい砂(粒径 0.05〜2.0mm) 2重量部
淡灰色の着色けい砂(粒径 0.05〜2.0mm) 2重量部
寒水砂(粒径 0.5〜2.0mm) 50重量部
寒水砂(粒径 0.05〜1.0mm) 27重量部
界面活性剤 1重量部
造膜助剤 5重量部
増粘剤 1重量部
水 10重量部
【0054】
配合ヘ(アイボリー色となる塗料)
アクリル系合成樹脂エマルション(固形分50%) 16重量部
淡灰色の着色けい砂(粒径 0.05〜2.0mm) 25重量部
淡黄色の着色けい砂(粒径 0.05〜2.0mm) 25重量部
寒水砂(粒径 0.5〜2.0mm) 10重量部
寒水砂(粒径 0.05〜1.0mm) 20重量部
界面活性剤 1重量部
造膜助剤 5重量部
増粘剤 1重量部
水 10重量部
【0055】
着色フレーク製造に当たっては、配合イ、配合ホ、配合ヘおよび配合ニの塗料を用い、一種類は片面が白色であり、反対側の面がベージュ色の着色フレークであり、別の一種類の着色フレークは片面がアイボリー色であり、反対側の面が灰色のものとした。前者の着色フレークをフレークEとし、後者のフレークをフレークFとする。製造方法については、実施例2に記載の方法を利用した。
【0056】
これら着色フレークを用いた着色フレーク入り塗料の配合を下記に記す。
フレークE 5重量部
フレークF 5重量部
合成樹脂エマルション(固形分50%) 20重量部
寒水砂(粒径0.05〜0.25mm) 55重量部
界面活性剤 5重量部
造膜助剤 14重量部
防腐、防黴剤 1重量部
水 10重量部

尚、合成樹脂エマルションにはアクリル系合成樹脂を成分とするものを利用した。
【0057】
上記の手順により得られた、着色フレーク入り塗料の施工は次のように行った。予め素地調整を行ったコンクリート、モルタル金ゴテ仕上げ面に対して、塗料吐出ノズル口径が12mmのスタッコガンを用いて、エアー圧力0.3N/cmの条件にて吹付塗装を行い、塗料の厚みが5mm程度となるよう塗付した。塗料が未乾燥状態の間に金ゴテを用いて、立ちはねたフレークを押さえ付けた。
【0058】
実施例4
実施例4では、実施例2において利用した、段落[0050]に記載の着色フレークC、同Dを配合した塗料を上吹きにすることとし、下吹きとする塗料を別に作成し塗装した。
【0059】
下吹きに用いた塗料の配合は、次の通りである。
合成樹脂エマルション(固形分50%) 40重量部
酸化チタン 10重量部
炭酸カルシウム(平均粒径2.2μm) 30重量部
界面活性剤 10重量部
造膜助剤 6重量部
増粘剤 3重量部
水 10重量部
尚、合成樹脂エマルションにはアクリル系合成樹脂を成分とするものを利用し、界面活性剤には湿潤剤、分散剤、消泡剤を含んでいる。
【0060】
上記、下吹きと上吹きを用い、下吹きを200g〜1Kg/mの塗布量により、上吹きを300g〜1Kg/mの塗布量により仕上げることができる。この実施例4では、灰色であるフレキシブルボード上に、下吹きを200g/m、上吹き300g/mの塗布量により施工を行った。実施例による仕上がりでは、少ない塗布量ではあるが、下吹きにより下地を隠し、上吹きによりその多彩感が得られるものとなった。
【0061】
以上のように、この実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ 一片の着色フレークにより2色分の色表現をなすことが可能となる。
・ 着色フレーク入り塗料製造におけるフレーク計量の手間を減らすことができる。
・ 顔料着色された着色フレークでは、薄い厚みにおいてフレーク製造が可能となる。
・ 骨材着色された着色フレークでは、骨材ごと微妙に色が異なることとなるので、着色フレーク自体が、そして、このフレークを用いた塗料が平板でなく深みのある色形成をなすことができる。
・ 着色フレーク入り塗料の主成分が、着色フレークと合成樹脂であるとき、少ない原材料により多彩感のある塗料を製造することができる。
・ 着色フレークと粒径3mm以下の骨材を含んだ着色フレーク入り塗料では、塗装適性に優れた塗料となすことができ、フレーク部分と骨材部分の両者の色形成による微妙な色合いを持った塗膜を形成することができる。
・ この発明の着色フレークを複数種配合した着色フレーク入り塗料では、着色フレークの数に応じた色の変化に富んだ塗膜形成をすることができる。
・ 着色フレーク入り塗料の施工に当たって、下吹きを併用する仕様では、フレーク入り塗料の塗布量が小さくても多彩感に優れ、隠ぺいに優れた仕上がりが得られる。
・仕上がり感としては、平坦なものから凹凸を形成したものまで、意匠形成が可能である。
【0062】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 着色フレークの製造に用いられる合成樹脂のTgを0℃以下のものを用いることができる。
・ 着色フレーク入り塗料中に、薄片状のマイカ、着色マイカを添加することもできる。
【0063】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 着色フレークに用いる合成樹脂の選択により、着色フレーク自体を柔らかくすることができ、着色フレークの径が大きくても、スプレーガンの吐出ノズルからの塗料の吐出が、着色フレークが変形可能になることによって、スムーズに塗装することが可能となった。
・ マイカ、着色マイカを加えることにより、着色フレーク入り塗料が形成する意匠に様々な変化を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】着色フレークの実施例を示す断面図。
【図2】着色フレークの他の実施例を示す断面図。
【図3】着色フレークの他の実施例を示す断面図。
【符号の説明】
【0065】
1…A色部分
2…B色部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状のフレークにあって表裏面の色調が異なることを特徴とする着色フレーク。
【請求項2】
フレークの着色が顔料による着色であることを特徴とする請求項1に記載の着色フレーク。
【請求項3】
フレークの着色が着色骨材あるいは天然石による着色であることを特徴とする請求項1に記載の着色フレーク。
【請求項4】
フレークの厚みが0.1〜3mmにあることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の着色フレーク。
【請求項5】
塗料の主成分が、請求項1ないし請求項4に記載の不定形で大きさがランダムな着色フレーク及び合成樹脂であることを特徴とする着色フレーク入り塗料。
【請求項6】
請求項5記載の塗料が、主成分に粒径3mm以下の骨材を含むことを特徴とする着色フレーク入り塗料。
【請求項7】
請求項5または請求項6記載の塗料が、複数種類の着色フレークを含むことを特徴とする着色フレーク入り塗料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−36872(P2006−36872A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216909(P2004−216909)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】