説明

着色電線の製造方法

【課題】電線の外表面に塗布された着色材の接着力を高めることができる着色電線の製造方法を提供する。
【解決手段】着色電線10は、芯線2の外周に絶縁性の被覆部3が設けられた電線1の外表面に複数の凹み4による凹凸が形成され、続いてこの外表面に着色材5が塗布されて製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外表面の少なくとも一部が着色された着色電線の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車は、搭載された電子機器に電力や制御信号を伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。このワイヤハーネスは、導電性の芯線とこの芯線を被覆する絶縁性の被覆部とを有した複数の電線と、この電線の端部などに取り付けられたコネクタなどを有している。
【0003】
このワイヤハーネスを組み立てる際には、電線を所定の長さに切断した後、この電線の端部に端子金具を取り付ける。その後、端子金具をコネクタハウジング内に挿入する。こうして、前述したワイヤハーネスを組み立てる。このように組み立てられたワイヤハーネスは、コネクタが電子機器のコネクタにコネクタ結合して、この電子機器に信号や電力を供給する。
【0004】
一方、上述した自動車には、より多種多様な電子機器を搭載することが望まれており、ワイヤハーネスを構成する電線の数が増加する傾向であった。このため、ワイヤハーネスを組み立てる際に複数の電線同士を識別できるように、従来から前述した電線の外表面の一部に着色材を塗布するなどして、外表面を着色するようにしていた(例えば特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−49228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した着色処理が施された電線は、曲げられたり擦れたりすることにより、着色材が電線から剥がれてしまうという問題があった。このため、ワイヤハーネスを組み立てる際に、複数の電線同士を識別することが困難になってしまうという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、電線の外表面に塗布された着色材の接着力を高めることができる着色電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、外表面の一部が着色された着色電線を製造する着色電線の製造方法であって、前記外表面の一部に針を突き刺すことにより、前記外表面の一部に凹凸を形成してから、当該凹凸が形成された外表面の一部に着色材を塗布して、該外表面の一部を着色することを特徴とする着色電線の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明によれば、電線の外表面の一部に凹凸を形成してから、当該凹凸が形成された外表面の一部に着色材を塗布して、該外表面の一部を着色することから、アンカー効果により、電線の外表面に塗布された着色材の接着力を高めることができるので、着色材が電線から剥がれることを防止できる。また、この電線の外表面が擦られるなどして着色材が剥がれた場合でも、この外表面の凹みの中に前記着色材が残るので、当該着色電線の識別を可能にすることができる。また、前記外表面の一部に針を突き刺すことにより、前記凹凸を形成することから、この凹凸の凹み(穴)の深さや凹みの数などを正確にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明又は参考例の着色電線の製造方法により製造された着色電線を示す斜視図である。
【図2】図1中のX―X線に沿う断面図である。
【図3】図2に示された着色電線から着色材が剥がれた状態を示す断面図である。
【図4】参考例の着色電線の製造方法を説明する説明図であり、図1に示された着色電線の製造方法を説明する説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る着色電線の製造方法を説明する説明図であり、図1に示された着色電線の製造方法を説明する説明図である。
【図6】同じく本発明の一実施形態に係る着色電線の製造方法を説明する説明図であり、図1に示された着色電線の製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明ではないが、参考となる参考例の着色電線の製造方法を図1ないし図4を参照して説明する。
【0012】
参考例の着色電線の製造方法は、図4に示すショットブラスト装置6を用いて電線1の外表面に凹凸を形成してから、図示しない着色装置によりこの電線1の凹凸が形成された外表面に着色材5を塗布して、図1及び図2に示す着色電線10を製造する方法である。また、この着色電線10は、自動車に搭載され、この自動車の各種電子機器間に電力や信号を伝達するワイヤハーネスを構成する。
【0013】
上記着色電線10の電線1は、複数の導線が撚られて形成された導電性の芯線2と、この芯線2を被覆した絶縁性の被覆部3とを有している。また、本明細書では、着色処理が施されていない電線を単に「電線1」と呼び、この電線1に着色処理が施されたものを「着色電線10」と呼ぶ。
【0014】
上記被覆部3は、例えば、ポリ塩化ビニル(Polyvinylchloride:PVC)などの合成樹脂で構成される。被覆部3を構成する合成樹脂は、各種の着色材が混入されて所望の色に着色されている。また、被覆部3を構成する合成樹脂に、各種の着色材を混入せずに、該合成樹脂を無着色にしても良い。この被覆部3自体の色を本明細書では、地色と呼ぶ。また、被覆部3の外表面は、電線1即ち着色電線10の外表面をなしている。
【0015】
また、被覆部3の外表面の一部には、後述のショットブラスト装置6により微小な穴、即ち凹み4が複数形成されている。即ち、被覆部3の外表面の一部には複数の凹み4による凹凸が形成されている。また、この凹み4は、被覆部3の外表面から芯線2側に向かって凹の凹みであり、その深さは、芯線2に到達しない深さにされている。
【0016】
また、上記凹み4が形成された被覆部3の外表面の一部は、上述した被覆部3の地色とは異なる色の着色材5により着色されている。参考例では、着色材5により、電線1の長手方向に沿って延びた線状のマーキングが施されている。また、この着色材5は、色材としての顔料が溶媒に分散した塗料である。また、着色材5は、被覆部3を構成する合成樹脂と親和性のあるものが望ましい。
【0017】
参考例では、上述したように、電線1の被覆部3の外表面の一部に凹凸、即ち複数の凹み4、を形成してから、この凹み4が形成された外表面の一部に着色材5を塗布して、この外表面の一部を着色することから、着色材5が凹み4に浸入して得られるアンカー効果により、該着色材5の前記外表面への接着力を高めることができる。よって、着色材5が電線1から剥がれることを防止できる。また、前記外表面が擦られるなどして着色材5が剥がれた場合でも、図3に示すようにこの外表面の凹み4の中に着色材5が残るので、着色電線10の識別を可能にすることができる。なお、このアンカー効果については、本発明においても同様である。
【0018】
また、上述した着色電線10の製造装置は、図4に示すショットブラスト装置6と、電線1の外表面に向かって着色材5を塗布する図示しない着色装置と、電線1をその長手方向に沿って走行させる図示しない走行装置と、を有している。
【0019】
上記ショットブラスト装置6は、ガラスビーズや金属粒子などの多数の砥粒7を遠心ファンによって噴射して被加工物の外表面に当てる周知の装置である。参考例では、このショットブラスト装置6を用いて、上記走行装置により走行中の電線1の外表面の一部に砥粒7を吹き付けることにより、この外表面に複数の凹み4による凹凸を連続的に形成する。
【0020】
そして、上記ショットブラスト装置6により外表面に凹凸が形成された電線1が、上記走行装置により上記着色装置の直下に移動され、続いて、該着色装置によりこの電線1の外表面に着色材5が塗布されて、図1に示した着色電線10が製造される。
【0021】
参考例では、このように、ショットブラスト装置6を用いて電線1の外表面に凹凸を形成するようにしていることから、上記走行装置を止めずに電線1を送り出しながら連続的に凹凸を形成することができ、着色電線10の生産性を向上させることができる。
【0022】
続いて、本発明の一実施形態に係る着色電線の製造方法を図5及び図6を参照して説明する。また、同図において、上述した参考例と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0023】
本発明の一実施形態に係る着色電線の製造方法は、図5及び図6に示す穴あけ装置8を用いて電線1の外表面に凹凸を形成してから、図示しない着色装置によりこの電線1の凹凸が形成された外表面に着色材5を塗布して、図1及び図2に示す着色電線10を製造する方法である。
【0024】
上記穴あけ装置8は、複数の針80を有した剣山状の穴あけ部材81と、この穴あけ部材81を電線1の径方向に沿って移動させる図示しない移動装置とにより構成されている。また、この穴あけ装置8は、本実施形態では、図5に示すように、穴あけ部材81が電線1を囲むようにして4つ設けられている。
【0025】
上記穴あけ装置8は、図5に示すように、複数の穴あけ部材81の中心に電線1が位置付けられると、図6に示すように、複数の穴あけ部材81を電線1に向かって近付け、この電線1の外表面に針80を突き刺すことにより、複数の凹み4による凹凸を、電線1の全周に形成する。
【0026】
本発明では、このように、電線1の外表面に針80を突き刺すことにより、複数の凹み4による凹凸を形成することから、この凹凸の凹み4の深さや凹み4の数などを正確にコントロールすることができる。
【0027】
また、上述した実施形態では、穴あけ装置8を用いて電線1の外表面に凹凸を形成していたが、本発明では、例えば上述した穴あけ部材81などを作業員が手で電線1に押し付けて電線1の外表面に凹凸を形成しても良い。
【0028】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
5 着色材
7 砥粒
10 着色電線
80 針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面の一部が着色された着色電線を製造する着色電線の製造方法であって、
前記外表面の一部に針を突き刺すことにより、前記外表面の一部に凹凸を形成してから、当該凹凸が形成された外表面の一部に着色材を塗布して、該外表面の一部を着色する
ことを特徴とする着色電線の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−110113(P2013−110113A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282748(P2012−282748)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2007−229684(P2007−229684)の分割
【原出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】