説明

睫毛用化粧料

【課題】睫毛のカール固定力、ツヤ効果に優れ、しかも液ぶくみがよくボリュームがあり、かつロング効果に優れた睫毛用化粧料を提供する。
【解決手段】(a)デキストリン脂肪酸エステル 3〜15質量%と、(b)シリコーン化多糖化合物 0.15〜9質量%と、(c)タルク、カオリンから選ばれる一種又は二種の粉末 2.0〜8.0質量%と、(d)水 3.0〜10.0質量%と、(e)長さが4mm以上のファイバー 0.5〜2.0質量%と、を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は睫毛用化粧料に関し、さらに詳しくは睫毛一本一本が均一に長く仕上がる睫毛用化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
睫毛用化粧料であるマスカラは、睫毛の一本一本を長く美しく見せるためのメーキャップ化粧料の一つである。マスカラの剤型としては、水中油型タイプ(例えば特許文献1参照)、油中水型タイプ(例えば特許文献2参照)、油性タイプ(例えば特許文献3参照)のものが知られている。このうち、水中油型(O/W)の基剤では耐水性やまつ毛のカール効果において不十分であった。また油中水型(W/O)の基剤では耐水性は向上するが、カール効果においてはいまだ不十分であった。さらに油性タイプでワックスを多量に配合した基剤では耐水性、カール効果は十分であるが、塗布したときののびのなめらかさに欠け、仕上がりが不均一になるという欠点があった。
そこで、デキストリン脂肪酸エステルと有機変性粘土鉱物を併用して少量の水で増粘させた油性基剤が開発されている(特許文献4)。この油性基剤は、耐水性、カール効果を有し、かつ基剤クリームののびもよく、均一な仕上がりが得られる。また基剤のつやもワックス高配合の油性タイプと比較して有意に大きい。
しかしながら、この基剤は、塗布部に多くつく、いわゆる液ぶくみのよさがなく、ボリューム効果に乏しいと共に、ロング効果も不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−119140号公報
【特許文献2】特開平9−124444号公報
【特許文献3】特開2006−306829号公報
【特許文献4】特開2010−83843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑み、睫毛のカール固定力、ロング効果、ツヤ効果に優れ、液ぶくみがよくボリュームのある睫毛用化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはデキストリン脂肪酸エステル、シリコーン化多糖化合物および特定の粉末を併用し、水を多めに配合した油性基剤とすることで、これまでになく液ぶくみのよいボリューム感のある睫毛用化粧料が得られることを見出し、本発明に至った。
【0006】
本発明は、次の(a)〜(e)を含有することを特徴とする睫毛用化粧料である。
(a)デキストリン脂肪酸エステル 3〜15質量%
(b)シリコーン化多糖化合物 0.15〜9質量%
(c)タルク、カオリンから選ばれる一種又は二種の粉末 2.0〜8.0質量%
(d)水 3.0〜10.0質量%
(e)長さが4mm以上のファイバー 0.5〜2.0質量%
【発明の効果】
【0007】
本発明の睫毛用化粧料は、睫毛のカール固定力、ロング効果、ツヤ効果に優れ、しかもこれまでになく液ぶくみがよくボリュームがある。また、従来よりも長いファイバーを配合することが可能で、かかる場合も毛先が揃って均一となり、美しくかつロング効果に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
本発明においては、油ゲル化剤であるデキストリン脂肪酸エステルとシリコーン化多糖化合物と、水を多めに配合して粘度と硬度のバランスをとり、さらに長さ4mm以上のファイバーを配合した油性基剤とすることにより、カール力がありながら液ぶくみがよく、ロング効果に優れた仕上がりとなる。
【0009】
((a)デキストリン脂肪酸エステル)
本発明において用いられる(a)デキストリン脂肪酸エステルは、特に炭素数8〜24の脂肪酸と、平均重合度10〜50のデキストリンとのエステル化合物であって、そのエステル置換度が1グルコース当たり0.5以上であることが好ましい。例えば、デキストリンパルミチン酸エステル、デキストリンステアリン酸エステル、デキストリンパルミチン酸ステアリン酸エステル、デキストリンオレイン酸エチル、デキストリンイソステアリン酸エステル等が挙げられ、これらの一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
(a)デキストリン脂肪酸エステルとしては、例えば市販品として、デキストリンパルミチン酸エステルであるレオパール KL(千葉製粉株式会社製)を用いることが出来る。
【0010】
(a)デキストリン脂肪酸エステルの含有量は、睫毛用化粧料全量の3〜15質量%であり、より好ましくは4〜6質量%である。(a)デキストリン脂肪酸エステルの配合量が3質量%未満ではマスカラとして使用するのに適正な粘度が得られず安定性が低下し、15質量%を越えると油性ゲル自体が強固となりすぎ、均一に塗布することが困難となる。
【0011】
((b)シリコーン化多糖化合物)
本発明において用いられる(b)シリコーン化多糖化合物は皮膜剤であり、下記一般式(1)で示される。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Gluは多糖化合物の糖残基、Xは2価の結合基、Yは2価脂肪族基を意味し、R1は炭素数1〜8の1価有機基、R2、R3、R4はそれぞれ炭素数1〜8の1価有機基又は−OSiR567で示されるシロキシ基を意味する。ただし、R5、R6、R7はそれぞれ炭素数1〜8の1価有機基、aは0、1又は2を意味する。)
【0014】
一般式(1)において、Gluは多糖化合物の糖残基を表すが、このような多糖化合物としては、公知の各種多糖化合物を用いることができ、例えば、セルロース、ヘミセルロース、アラビアガム、トラガントガム、タマリンドガム、ペクチン、デンプン、マンナン、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシードガム、アルギン酸、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸の他、これら多糖化合物の誘導体、例えば、カルボキシメチル化、硫酸化、リン酸化、メチル化、エチル化、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの付加、アシル化、カチオン化、低分子量化等を行った多糖化合物誘導体が挙げられる。これらの内、好ましくはエチルセルロース又はプルランであり、特に好ましくはプルランである。なお、本発明において多糖化合物の平均分子量は多糖化合物の種類により異なるが、通常約1,000〜5,000,000が好ましい。
【0015】
これらの多糖化合物はその種類に応じて水酸基、カルボキシル基等の反応性官能基の1種又は2種以上を少なくとも1つ以上含有している。Xで示される2価結合基は、この多糖化合物の有する反応性官能基と、下記一般式(2)で示されるシリコーン化合物とを反応させることにより形成されるA由来の結合基である。なお、このようなシリコーン化合物と多糖化合物との反応には、従来より公知の方法を用いることができる。
【0016】
【化2】

【0017】
上記式中、Y、R1、R2、R3、R4及びaは前記一般式(1)と同じである。また、Aは多糖化合物の反応性官能基と反応しうる官能基であり、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、イミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基等が挙げられる。
【0018】
Xを例示すると、カルバモイル基、−CH2CH(OH)−、カルボニル基、アミノ基、エーテル基等が挙げられるが、反応性の点から、Aがイソシアネート基(O=C=N−)である前記一般式(2)の化合物と、多糖化合物の水酸基が反応して形成される、カルバモイル基(−CONH−)であるものが好ましい。なお、この場合の多糖化合物の糖残基はイソシアネート基と反応している水酸基の水素原子を除いた多糖化合物の残り部分を意味する。また、その他の反応の場合にも、多糖化合物の糖残基とはこれに準ずるものを意味する。
【0019】
Yで示される2価の脂肪族基としては、アルキレン基、主鎖中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有するアルキレン基、主鎖中にフェニレン基等のアリーレン基を有するアルキレン基、主鎖中にカルボニルオキシ基又はオキシカルボニル基を有するアルキレン基を挙げることができる。これらの2価脂肪族基はヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキル基等の置換基を有することができ、また、脂肪族基の末端原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子であってもよい。Yを例示すると、−(CH22−、−(CH23−、−(CH24−、−(CH26−、−(CH28−、−[CH2CH(CH3)]−、−(CH22O(CH23−、−CH2CH(OH)−CH2−等が挙げられるが、好ましくは−(CH23−で示されるプロピレン基である。
【0020】
前記一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7に見られる炭素数1〜8の1価有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、3,3,3-トルフロロプロピル基等のフッ化アルキル基等を例示することができる。
【0021】
また、R2、R3、R4はそれぞれ−OSiR567で示されるシロキシ基であってもよい。このようなシロキシ基としては、トリメチルシロキシ基、エチルジメチルシロキシ基、フェニルジメチルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基、3,3,3-トリフルオロプロピルジメチルシロキシ基等が例示される。なお、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は同一又は異なっていても良いが、本発明のシリコーン化多糖化合物においては、a=0で、R2、R3、R4がメチル基であることが特に好ましい。
【0022】
本発明において用いるシリコーン化多糖化合物として、特に好ましいものは下記式(3)で示されるシリコーン化プルランである。なお、式(3)中、PLはプルランのグルコース残基を表す。
【0023】
【化3】

【0024】
なお、本発明の(b)シリコーン化多糖化合物において、多糖化合物の反応性官能基に対するシリコーン化合物の結合割合はその種類によって異なるが、通常、多糖化合物の構成糖1単位当たりのシリコーン化合物の平均結合数(置換度)が0.5〜3.0であることが好適である。なお、本発明において置換度は化合物中のSi含有量(質量%)から換算したものである。
なお、(b)シリコーン化多糖化合物の配合の際には、低分子量シリコーン油や軽質イソパラフィンに溶解して配合すると、配合のし易さや使用感等を高めることができる。
【0025】
シリコーン化プルランの市販品としては、例えばTSPL−30−D5(トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルラン、信越化学工業社製、30wt%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)が挙げられる。
【0026】
(b)シリコーン化多糖化合物の好ましい配合量は、30質量%溶液としての質量%で、0.5〜30質量%(実分で0.15〜9質量%)であり、好ましくは1〜20質量%であり、最も好ましくは3〜10質量%である。(b)シリコーン化多糖化合物を0.5質量%以上配合することにより、ゲルの改質剤として作用し、ゲルのなめらかさと密着性を向上させ、まつ毛と中味液をからみやすくする効果を奏する。
(b)シリコーン化多糖化合物の配合量が0.5質量%未満ではロング効果やカール固定力が損なわれ、4mm以上のファイバーを配合すると睫毛がきれいに整わなくなる。また30質量%を越えると、ゲルに強い曳糸性が現れ、操作性上での不具合が生じ、またベタベタとした質感が強くなり乾きの遅さや二次付着などの原因となる。
本発明においては(b)シリコーン化多糖化合物以外の皮膜剤を使用することができ、この場合、カール固定力が高くなる。
【0027】
((c)粉末)
本発明に用いられる(c)粉末は、タルク、カオリンから選ばれる一種又は二種であり、このうち特にタルクが好ましい。上記以外の粉末では十分なボリュームを出すことが困難であり、ボリュームを出すためには多量に配合する必要が生じる。
上記以外の粉末として、例えば球状樹脂粉末であるポリメチルシルセスキオキサンを配合することができる。
【0028】
(c)粉末の配合量は、2.0〜8.0質量%であり、好ましくは3.0〜7.0質量%である。粉末の配合量が2.0質量%未満では睫毛のボリュームを出すことができず、8.0質量%を超えると、仕上りのツヤ感が損なわれる。
【0029】
((d)水)
本発明において(d)水の配合量は、3.0〜10.0質量%であり、好ましくは4.0〜7.0質量%であり、最も好ましくは5〜7質量%である。(d)水の配合量が3.0質量%未満では硬度が不十分で液ぶくみが悪くなり、ボリュームが低下する。水の配合量が10.0質量%を越えると化粧料全体の硬度が高くなり、脆くなってなめらかさを損ない、カール固定力が悪くなると共に、ツヤも低下する。
【0030】
((e)ファイバー)
本発明で用いられる(e)ファイバーは長さが4mm以上のもので、長さ4〜5mmのものが好ましい。本発明においては、(a)〜(d)成分を配合していることで従来よりも長いファイバーを用いても睫毛に均一に塗布され、美しいロング効果を有する睫毛とすることができる。特に(b)シリコーン化多糖化合物を配合し、かつ後記するような硬度と粘度のバランスの取れたものとすることにより、液ぶくみがよく4mm以上の長さのファイバーを配合しても、睫毛に塗布した時に睫毛が乱れることなくきれいに並ぶ状態とすることができる。
ファイバーは長さ4mm以上のもののほか、長さが4mm未満のファイバーを併用することもできる。
【0031】
本発明の睫毛用化粧料で用いるファイバーとしては、従来公知の各種繊維が挙げられ、例えばナイロン、ポリエステル等の合成繊維、レーヨン等の人造繊維、セルロース等の天然繊維、アセテート人絹等の半合成繊維等が挙げられるが、特にナイロン系繊維が好ましい。
【0032】
また、本発明のファイバーはさらに各種の表面処理をすることが可能である。撥水化表面処理の例としては、例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン処理、シリコーンレジン処理、シリコーンガム処理、アクリルシリコーン処理、フッ素化シリコーン処理などのオルガノシロキサン処理、ステアリン酸亜鉛処理などの金属石鹸処理、シランカップリング剤処理、アルキルシラン処理などのシラン処理、有機チタネート処理、有機アルミネート処理、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩、パーフルオロポリエーテル処理などのフッ素化合物処理、N−ラウロイル−L−リジン処理などのアミノ酸処理、スクワラン処理などの油剤処理、アクリル酸アルキル処理などのアクリル処理などが挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて使用することが可能である。
また、親水化表面処理の例としては、寒天処理、デオキシリボ核酸処理、レシチン処理、ポリアクリル酸処理、シリカ処理、アルミナ処理、ジルコニア処理などが挙げられる。
【0033】
本発明において、(e)長さが4mm以上のファイバーの配合量は、0.5〜2.0質量%であり、好ましくは0.8〜1.8質量%である。(e)長さが4mm以上のファイバーの配合量が0.5質量%未満では目的とするロング効果を発揮するには十分でなく、2.0質量%を越えると塗布された後にファイバーが中味液で十分にコーティングされにくいため、経時でファイバー落ちしやすいことなどがある。
【0034】
((f)非イオン界面活性剤)
本発明においては、さらに、(f)非イオン界面活性剤を含むことが望ましい。(f)非イオン界面活性剤としては、親油性非イオン界面活性剤が好ましく、例えば市販品として、ポリエチレングリコール(10)ジメチコンであるKF6017(信越化学工業社製)、トリイソステアリン酸PEG−20水添ヒマシ油であるエマレックスRWIS 320(日本エマルジョン社製)が挙げられる。これらの非イオン界面活性剤を用いることで、ゲル形成が十分に行われ、また透明性の高いゲルをつくることができる。
【0035】
本発明において、上記(f)非イオン界面活性剤の配合量は、0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜7質量%であり、最も好ましくは2〜5質量%である。(f)非イオン界面活性剤の配合量が0.1質量%未満ではゲルの形成が不十分で増粘が不足する場合があり、10質量%を越えるとマスカラが乾燥した後も残存するためべたつくようになる。
【0036】
((g)有機変性粘土鉱物)
本発明においては、(g)有機変性粘土鉱物を配合することが望ましい。(g)有機変性粘土鉱物は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものである。粘土鉱物に対する第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤の配合割合は、粘土鉱物100gに対して60〜120meq、好ましくは80〜100meqの第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤である。
【0037】
具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等の天然または合成(この場合、式中の(OH)基がフッ素で置換されたもの)のモンモリロナイト群(市販品ではビーガム、クニピア、ラポナイト等がある。)およびナトリウムシリシックマイカやナトリウムまたはリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母(市販品ではダイモナイト:トピー工業(株)等がある。)等の粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られる。
【0038】
(g)有機変性粘土鉱物の代表的なものとしては、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。
【0039】
本発明で用いられる(g)有機変性粘土鉱物としては、例えば市販品として、ベントン38VCG(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティススペシャリティーズ社製)が挙げられる。
【0040】
本発明において、上記(g)有機変性粘土鉱物の配合量は、3〜15質量%であり、好ましくは5〜10質量%であり、最も好ましくは5〜7質量%である。(g)有機変性粘土鉱物の配合量が3質量%未満ではマスカラとして好ましいチキソトロー性(ブラシへの中味液の採取性と塗布時の引き伸ばし性)が得られない場合があり、15質量%を越えるとこれもゲル自体が強固となり、均一に塗布することが困難となるのと同時につやも減少しマットな質感となる。
【0041】
本発明の睫毛用化粧料は、全体としての硬度が15〜80で、好ましくは20〜60であり、粘度が15000〜500000mPa・sで、好ましくは80000〜400000mPa・sである。
ここで、硬度および粘度は次の方法で測定した値をいう。
【0042】
(硬度の測定方法)
サン科学レオメータを用い、負荷重:2kg、針の径:8φ、針入深度:10mm、上昇速度:300mm/min、測定温度:30℃で測定する。
【0043】
(粘度の測定方法)
芝浦システム製BH型粘度計を用い、ロータ回転数:4rpmで測定する。
またロータ番号は6ないしは7(粘度により選定)で測定する。
【0044】
本発明においては油性基剤であって、水を従来用いられている量よりも多く用いることで硬度が上昇し、油性基剤でありながら液ぶくみがよく、ボリュームを出すことができるが、硬度が高すぎるとマスカラ液の睫毛への付きが悪くなる。硬度が低すぎると上記した所期の効果が出ない。また、粘度については、低すぎるとカール固定力に劣ることとなり、高すぎると仕上りのセパレート感が損なわれる。
【0045】
本発明の睫毛用化粧料は、粘度と硬度が上記範囲となり、バランスが取れたものとすることにより、液ぶくみがよくボリュームのある仕上がりとなり、また長さが4mm以上のファイバーを配合しても塗布した時に睫毛が不揃いにならず、かつカール固定力を付与することが可能である。
【0046】
本発明の睫用化粧料においては、上記必須成分の他に、本発明の所期の効果を損なわない質的・量的範囲内で、化粧料に配合され得る一般的な成分を、必要に応じて添加することができる。具体的には、例えば、他の粉末や樹脂や油分、薬剤、乳化剤、増粘剤、防腐剤、保湿剤、アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、薬剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、香料等を配合することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0048】
(1)使用性(ロング効果、液ぶくみのよさ、カール固定力、ツヤ、ボリューム)の評価試験
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。各試料をマスカラ化粧料として使用した時の使用性を評価した。
使用性項目は、ロング効果、液ぶくみのよさ、カール固定力、ツヤ、ボリュームであり、それぞれの評価項目について、下記の評価点基準に基づいて5段階官能評価(スコア)した。そのスコア平均値により、下記評価基準で判定した。
【0049】
(スコア)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
【0050】
(評価基準)
◎:評価値(平均値)4.0以上5.0点以下
○:評価値(平均値)3.0以上4.0点未満
△:評価値(平均値)2.0以上3.0点未満
×:評価値(平均値)1.0以上2.0点未満
【0051】
(2)粘度の測定試験
芝浦システム製BH型粘度計を用い、ロータ回転数:4rpmで測定した。
またロータ番号は6ないしは7(粘度により選定)で測定した。
(3)硬度の測定試験
サン科学レオメータを用い、負荷重:2kg、針の径:8φ、針入深度:10mm、上昇速度:300mm/min、測定温度:30℃で測定した。
【0052】
試験例1〜16
次の表1,2に示すような種々のマスカラ化粧料を常法により調製し、上記の方法で使用性、粘度および硬度を評価した。その結果を併せて表1,2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
※1:アイソパーH(エクソンモービル社)
※2:KF6017(信越化学工業社製)
※3:エマレックス GWIS320(日本エマルジョン社製)
※4:脱臭ポリブテンP(日興リカ社製)
※5:シュガーワックスA−10E(第一工業製薬株式会社製)
※6:レオパール KL(千葉製粉株式会社製)
※7:ベントン38(エレメンティス スペシャリティーズ社製)
※8:TSPL−30−D5(トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルラン(30質量%)−デカメチルシクロペンタシロキサン(70質量%)溶液、信越化学工業社製)
※9:SSD−R2(信越化学社製)
※10:トスパール2000B(東芝シリコーン社製)
【0056】
試験例4は水が多すぎるため液ぶくみはよいが、カール固定力が劣り、ツヤも悪くなる。試験例5は水が少なすぎるため、カール固定力やツヤは良いが液ぶくみやボリュームに劣っている。
試験例6は4mm以上の長さのファイバーが配合されていないため、ロング効果に欠ける。試験例7はトリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルランが配合されていないため、ロング効果に欠けるものとなっている。
試験例13は、粉末としてタルク、カオリン以外のものを用いているため、ボリュームに劣るものとなっている。
それに対して試験例1〜3、8〜12、14〜16は、ロング効果、液ぶくみのよさ、カール固定力、ツヤ、ボリュームがいずれも優れたものとなっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)〜(e)を含有することを特徴とする睫毛用化粧料。
(a)デキストリン脂肪酸エステル 3〜15質量%
(b)シリコーン化多糖化合物 0.15〜9質量%
(c)タルク、カオリンから選ばれる一種又は二種の粉末 2.0〜8.0質量%
(d)水 3.0〜10.0質量%
(e)長さが4mm以上のファイバー 0.5〜2.0質量%
【請求項2】
更に(f)非イオン界面活性剤を配合することを特徴とする請求項1に記載の睫毛用化粧料。
【請求項3】
更に(g)有機変性粘土鉱物を配合することを特徴とする請求項1又は2に記載の睫毛用化粧料。
【請求項4】
後記する方法で測定した時の硬度が全体として5〜80であり、後記する方法で測定した時の粘度が15000〜500000mPa・sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の睫毛用化粧料。
(硬度の測定方法)
サン科学レオメータを用い、負荷重:2kg、針の径:8φ、針入深度:10mm、上昇速度:300mm/min、測定温度:30℃で測定する。
(粘度の測定方法)
芝浦システム製BH型粘度計を用い、ロータ回転数:4rpmで測定する。

【公開番号】特開2013−79211(P2013−79211A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220096(P2011−220096)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】