説明

硫黄の分析方法および分析装置

【課題】紫外蛍光法によって試料中の硫黄量を分析する分析方法および分析装置であって、装置構成を簡素化でき、一酸化窒素による影響を受けることがなく、より低コストで分析可能な硫黄の分析方法ならびに硫黄の分析装置を提供する。
【解決手段】硫黄の分析方法では、試料の燃焼により生成された試料ガスに紫外線を照射して二酸化硫黄の蛍光強度を測定するに際し、光源4としてキセノンランプを使用すると共に、ピーク波長200〜220nmの光を選別する第1の光学部品5A及びピーク波長220〜260nmの光を選別する第2の光学部品5Bを使用し、第1及び第2の光学部品によって抽出された光を試料ガスに照射する。また、硫黄の分析装置は、試料ガスを生成する燃焼装置1と、試料ガスに紫外線を照射して蛍光強度を測定する紫外蛍光検出器3とから成り、紫外蛍光検出器3は、上記の第1の光学部品5A及び第2の光学部品5Bを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄の分析方法および分析装置に関するものであり、詳しくは、紫外蛍光法によって試料中の硫黄量を分析するに当たり、試料中の窒素成分による影響を受けることなく、高精度に硫黄を定量分析できる硫黄の分析方法ならびに硫黄の分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硫黄の分析は、例えば、ディーゼル燃料、オイル、ガソリン等の石油類などの品質を評価する際に行われるが、分析精度の観点から、通常、紫外蛍光法が利用されている。紫外蛍光法による硫黄分析においては、燃焼装置(燃焼管)で試料を燃焼分解し、試料中の硫黄を二酸化硫黄に変換して試料ガスとして取り出した後、紫外蛍光検出器を使用し、試料ガスに紫外線を照射して二酸化硫黄の蛍光強度を測定する。
【0003】
上記の紫外蛍光検出器における蛍光強度の測定では、光源としてキセノンランプを使用し、中心波長220nmのダイクロイックミラーに光源の光を照射させ、ダイクロイックミラーで選別した光を試料ガスに照射している。しかしながら、二酸化硫黄の励起波長ピークが220nmであるのに対し、燃焼分解で生じる一酸化窒素の励起波長ピークが210〜220nmの間ならびに220〜230nmの間に存在するため、波長220nmの光をダイクロイックミラーで選別するにせよ、選別される光の半値幅が広いため、二酸化硫黄だけではなく、一酸化窒素も励起する。そこで、試料ガスを生成する燃焼装置またははその下流側に前処理としてオゾンを添加することにより、試料ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に変換し、一酸化窒素による妨害を防止している(特許文献1)。
【0004】
一方、オゾンを使用しない分析方法として、波長が222nmで且つ半値幅の極めて狭い紫外線を照射可能なエキシマランプ(Kr・cl型誘電体バリア放電エキシマランプ)を光源として使用し、試料ガスに対して光源の光を直接照射する方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0074365号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0257203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、オゾンを使用する上記の分析方法では、オゾナイザー、オゾンジェネレータ等のオゾン発生器や、有害なオゾンを無害化する処理装置などの付帯設備が必要であり、設備費および管理コストが増加し、装置構成も複雑化する。一方、励起用の光源としてエキシマランプを使用する方法は、ランプ自体が高額であることに加えて、ランプの取扱いが難しく、また、紫外蛍光検出器に組み込む際の試料に対する距離調節が難しい等、実用性に欠ける。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、紫外線蛍光法により試料中の硫黄量を測定する硫黄の分析方法および分析装置であって、装置構成を簡素化でき、一酸化窒素による影響を受けることがなく、より低コストで分析可能な硫黄の分析方法ならびに硫黄の分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明においては、試料の燃焼分解により生成した試料ガスを紫外蛍光法で分析するに当たり、従来法と同様に光源としてキセノンランプを使用すると共に、中心波長が220nmから短波長側に僅かに外れた第1の光学部品、および、中心波長が220nmから長波長側に僅かに外れた第2の光学部品の2種類の光学部品を使用する。そして、第1の光学部品により、光源の光から、220nmよりも短波長側にピーク波長を有する光を選別して220nmよりも長波長側にピーク波長を有する光を除去すると共に、第2の光学部品により、光源の光から、220nmよりも長波長側にピーク波長を有する光を選別して220nmよりも短波長側にピーク波長を有する光を除去することにより、ピーク波長220nmの半値幅の狭い光を抽出し、斯かる光を試料ガスに照射する様にした。
【0009】
すなわち、本発明の第1の要旨は、硫黄および窒素成分が含まれる試料中の硫黄量を紫外蛍光法により測定する硫黄の分析方法であって、試料の燃焼分解により試料中の硫黄および窒素を二酸化硫黄および一酸化窒素に変換して試料ガスを生成し、当該試料ガスに紫外線を照射して二酸化硫黄の蛍光強度を測定するに際し、光源としてキセノンランプを使用すると共に、ピーク波長200〜220nmの光を選別する第1の光学部品およびピーク波長220〜260nmの光を選別する第2の光学部品に対して前記光源の光を照射し、前記第1及び第2の光学部品によって抽出された光を試料ガスに照射することを特徴とする硫黄の分析方法に存する。
【0010】
また、本発明の第2の要旨は、硫黄および窒素成分が含まれる試料中の硫黄量を紫外蛍光法により測定する硫黄分析装置であって、試料の燃焼分解により試料中の硫黄および窒素を二酸化硫黄および一酸化窒素に変換して試料ガスを生成する燃焼装置と、当該燃焼装置で生成された試料ガスに紫外線を照射して二酸化硫黄の蛍光強度を測定する紫外蛍光検出器とから成り、当該紫外蛍光検出器は、光源としてのキセノンランプと、ピーク波長200〜220nmの光を選別する第1の光学部品およびピーク波長220〜260nmの光を選別する第2の光学部品と、試料ガスの紫外蛍光線を受光する受光器とを備え、かつ、前記光源の光を前記第1及び第2の光学部品に照射し、これら第1及び第2の光学部品によって抽出された光を試料ガスに照射する様に光路構成されていることを特徴とする硫黄の分析装置に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光源としてキセノンランプを使用すると共に、中心波長の異なる2種類の光学部品を使用し、光源の光から、220nmよりも短波長側にピーク波長を有する光と、220nmよりも長波長側にピーク波長を有する光とを選別し、最終的にピーク波長220nmの半値幅の狭い光を抽出して試料ガスに照射できるため、試料ガス中の一酸化窒素による影響を受けることがなく高精度に硫黄を分析でき、そして、オゾンを添加する従来の方法に比べ、装置構成を簡素化でき、一層低コストでを分析することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る硫黄分析装置の主な構成を模式的に示すフロー図である。
【図2】図1中の紫外蛍光検出器における2種類の光学部品の配置と光路の例を概念的に示す斜視図である。
【図3】図2の光学部品により光源の光から抽出されるピーク波長220nmの光のスペクトルを示すグラフである。
【図4】本発明において抽出される試料照射用の光と従来法で使用されている試料照射用の光のスペクトルの違いを示すグラフである。
【図5】硫黄を測定し場合の窒素成分の影響について本発明と従来法とを対比して示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る硫黄の分析装置(以下、「分析装置」と略記する。)及び硫黄の分析方法(以下、「分析方法」と略記する。)の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、硫黄および窒素成分が含まれる試料中の硫黄量を紫外蛍光法により測定する分析方法および分析装置に関するものであり、本発明においては、後述する燃焼装置1の試料装入手段を選択することにより、ディーゼル燃料、オイル、ガソリン等の石油類などの液体試料の他、各種の気体試料を分析することが出来る。
【0014】
先ず、本発明に係る硫黄の分析装置(以下、「分析装置」と略記する。)について説明する。本発明の分析装置は、図1に示す様に、試料の燃焼分解により試料中の硫黄および窒素を二酸化硫黄および一酸化窒素に変換して試料ガスを生成する燃焼装置1と、当該燃焼装置で生成された試料ガスに紫外線を照射して二酸化硫黄の蛍光強度を測定する紫外蛍光検出器3とから主として構成される。
【0015】
燃焼装置1は、上記の様な試料から試料ガスを生成するために設けられる。燃焼装置1は、試料が装入され且つ酸素が供給される反応管10と、当該反応管を加熱する加熱炉13とから構成されており、当該加熱炉による加熱により反応管10内の試料を燃焼させ、試料中の硫黄および窒素をそれぞれ二酸化硫黄、一酸化窒素に変換して試料ガスを生成する機能を有する。
【0016】
反応管10は、試料導入用の内管11及び試料ガス生成用の外管12から成る二重管構造を備えている。内管11は、長軸の円筒管の頭部に例えば液体試料を装入するための試料装入手段としてのシリンジ構造の試料注入装置14を設けて構成される。気体試料の場合は、試料装入手段として、ガスタイトシリンジにより内管11に自動装入する装置が使用される。
【0017】
内管11は、外管12の内周面との間に通気用の隙間を確保するため、外管12の内径よりも小さな外径で且つ外管12の深さよりも短い長さに設計される。例えば、内管11の直径は20〜40mm程度とされ、内管11の長さは100〜200mm程度とされる。そして、内管11の上部には、燃焼促進用の酸素および移送用のアルゴン等の不活性ガスを導入するためのキャリアガス供給流路15が接続される。
【0018】
外管12は、上端が封止された長軸の有底円筒状の管で構成される。例えば、外管12の直径は30〜50mm程度とされ、外管12の長さは300〜450mm程度とされる。外管12の上部には、試料燃焼用の酸素を導入するための酸素供給流路16が接続され、外管12の底部には、燃焼によって得られた試料ガスを取り出して紫外蛍光検出器3へ供給するための試料ガス流路2が接続される。なお、試料ガス流路2は、試料ガス中の水分を除去するため、ナフィオン(登録商標)等のイオン交換膜のチューブにより構成される。
【0019】
加熱炉13は、上記の反応管10を加熱するための加熱手段であり、通常、反応管10を挿入する反応管装入穴が中心に設けられた円柱状の電気炉で構成される。具体的には、加熱炉13は、セラミックファイバーや、セラミックファイバーとアルミナファイバーの混合繊維の成形体から成る保温材を円筒状のケーシング内に収容し、かつ、保温材の内部に複数のヒーター、例えば、カンタル発熱体、ニクロム発熱体、シルバー発熱体などを金属管に収容して成るシーズドヒーターを埋設して構成され、合計出力を1kW程度に設計される。なお、燃焼装置1においては、反応管10の温度が所定の温度となる様に、反応管10の温度を検出してこれらヒーターへの通電を制御する様になされている。
【0020】
上記の燃焼装置1においては、試料装入手段である試料注入装置14から試料が装入され、キャリアガス供給流路15から供給された酸素および不活性ガス(アルゴン)によって前記の試料を内管11から外管12へ送り込むと共に、加熱炉13により外管12を加熱しながら、酸素供給流路16から供給された酸素により外管12内において酸化燃焼させる様になされている。そして、試料中の硫黄および窒素を二酸化硫黄および一酸化窒素にそれぞれ変換し、生成された試料ガスが試料ガス流路2を通じて紫外蛍光検出器3に供給される様に構成されている。
【0021】
紫外蛍光検出器3は、紫外線を照射する光源としてのキセノンランプ(以下、「光源」と言い、符号4で示す。)と、ピーク波長が特定の波長の光を各選別する2種類の光学部品5と、紫外線照射位置に設けられた試料ガス通過用の透明なセル6と、試料ガスの紫外蛍光線を受光してその光強度を検出する受光器7とを備えている。
【0022】
本発明においては、試料ガス中の二酸化硫黄の蛍光強度を測定するに当たり、一酸化窒素を励起させることなく且つ二酸化硫黄だけを励起させ得るピーク波長の半値幅の狭い光を抽出するため、上記の光学部品5としては、その中心波長が220nm近傍にあり且つ220nmから短波長側および長波長側にそれぞれ外れた2種類の光学部品が使用される。そして、光源4の光うち、220nmよりも短波長側および長波長側にそれぞれピーク波長を有する光を選別する様になされている。2種類の光学部品5で所定波長の光を選別することにより、最終的に、ピーク波長が220nmで且つ半値幅の狭い光を抽出することが出来る。
【0023】
具体的には、一酸化窒素の励起波長のピークは、215nm、225nmの2箇所に存在する。そこで、図2に示す様に、光学部品5は、ピーク波長200〜220nmの光を反射または通過させて選別する第1の光学部品5Aと、ピーク波長220〜230nmの光を反射または通過させて選別する第2の光学部品5Bとを組み合せて構成される。換言すれば、第1の光学部品5Aとしては、中心波長が200〜220nmの範囲内、好ましくは中心波長が212〜218nmの範囲内、更に好ましくは中心波長が略215nmの光学部品が使用される。そして、第2の光学部品5Bとしては、中心波長が220〜230nmの範囲内、好ましくは中心波長が222〜228nmの範囲内、更に好ましくは中心波長が略225nmの光学部品が使用される。
【0024】
利用可能な光学部品5としては、誘電体の多層膜を鏡面に形成し、特定の波長を反射し、それ以外の波長を透過させる様にしたダイクロイックミラーや、これにプリズム構造を組み合せたダイクロイックプリズム、特定の波長帯の光を通過させ、その短波長側および長波長側の光を反射させるバンドパスフィルターやカットフィルター等、所定の波長帯の紫外線を選別し得る限り、各種の光学部品を使用することが出来る。
【0025】
第1の光学部品5Aと第2の光学部品5Bは、それぞれ単独で設けられてもよいが、本発明の好ましい態様においては、第1の光学部品5A及び第2の光学部品5Bがそれぞれ複数設けられている。これにより、半値幅の一層狭い光を抽出することが出来る。第1の光学部品5A及び第2の光学部品5Bの種類および配置数は、特に制限されるものではなく、得られる光の減衰量を考慮して設定される。
【0026】
例えば図2に示す様に、紫外蛍光検出器3においては、第1の光学部品5Aとして、中心波長を215nmに設計された4枚のダイクロイックミラー51、53、55、57が配置されており、第2の光学部品5Bとして、中心波長を225nmに設計された4枚のダイクロイックミラー52、54、56、58が配置されている。そして、光源4の光を第1の光学部品5A及び第2の光学部品5Bに照射し、これら第1及び第2の光学部品によって抽出された光、すなわち、ピーク波長が略220nmの紫外光をセル6の試料ガスに照射する様に光路構成されている。
【0027】
具体的には、図2に例示する様に、紫外蛍光検出器3においては、光源4の照射方向前方に配置されたダイクロイックミラー51(第1の光学部品5A)により光源4の光を左水平方向(図の奥行方向)に反射させ、ダイクロイックミラー52(第2の光学部品5B)により上方に反射させ、ダイクロイックミラー53(第1の光学部品5A)により右水平方向(図の手前方向)に反射させた後、ダイクロイックミラー54(第2の光学部品5B)により再び光源4の照射方向と同方向に反射させ、ダイクロイックミラー55(第1の光学部品5A)により左水平方向(図の奥行方向)に反射させ、次いで、ダイクロイックミラー56(第2の光学部品5B)により下方に反射させ、ダイクロイックミラー57(第1の光学部品5A)により右水平方向(図の手前方向)に反射させ、そして、ダイクロイックミラー58(第2の光学部品5B)により再び光源4の照射方向と同方向に反射させ、その光をセル6に照射し、セル6を通過する試料ガスの紫外蛍光を受光器7で検出する様になされている。なお、第1の光学部品5Aと第2の光学部品5Bは任意に配置することが出来る。
【0028】
セル6は、照射する光(励起光)の入り口(図示省略)と、発生した蛍光の取り出し口(図示省略)とを有する中空の容器であり、前記の取り出し口には、紫外蛍光を受光してその強度を測定する受光器7が取り付けられている。そして、セル6には、前述の試料ガス流路2の先端、および、試料ガスを系外に排出する排気流路8が接続されている。また、上記の受光器7としては、各種UVセンサ、光電管、薄膜センサ等を使用できるが、受光感度の観点から、通常は光電子増倍管が使用される。なお、本発明の分析装置においては、燃焼装置1の制御、紫外蛍光検出器3における蛍光強度の測定、硫黄量(試料中の硫黄濃度)の算出は、別途設けられたコンピュータで行う様になされている。
【0029】
次に、上記の分析装置を使用した本発明の分析方法について説明する。本発明においては、先ず、燃焼装置1において、キャリアガス供給流路15を通じて反応管10の内管11にキャリアガスとして酸素および不活性ガス(アルゴン)を供給し、酸素供給流路16を通じて外管12に酸素を供給する。そして、試料注入装置14を操作して、内管11に試料(例えば燃料油)を10〜500μl注入する。キャリアガス及び酸素の圧力、流量は、キャリアガス供給流路5A及び酸素供給流路16にそれぞれ付設された流量調整弁(図示省略)の制御により、例えば、0.3〜0.5MPa、0.2〜1.0L/minに設定する。
【0030】
また、試料の注入に当たり、加熱炉13に通電し、反応管10の内部を600〜1100℃に加熱する。反応管10の加熱により、上記の試料を外管12において燃焼させ、試料中に含まれる硫黄および窒素をそれぞれ二酸化硫黄および一酸化窒素に変換し、得られた試料ガスを試料ガス流路2から紫外蛍光検出器3に供給する。
【0031】
次いで、紫外蛍光検出器3において、セル6を通過する試料ガスに紫外線を照射し、二酸化硫黄を励起させてその蛍光強度を測定する。蛍光強度の測定では、酸化燃焼によって生成された試料ガス中の二酸化硫黄に対して、光源4の光から抽出されたピーク波長220nm(波長帯約215〜225nm)の紫外線を照射し、これによって二酸化硫黄が発した波長300〜450nmの蛍光を受光器7で受光する。すなわち、[SO+hν→SO+hν(ν、νは振動数)]における蛍光の強度を測定する。そして、波形処理を行った後にこれをピーク面積値とし、予め標準試料で作成した検量線を使用して前記のピーク面積値から試料中の硫黄量を測定する。そして、コンピュータ等のデータ解析手段を使用し、蛍光強度から硫黄量を算出する。具体的には、予め標準試料から作成された検量線に基づいて硫黄量を算出し、その結果を試料中の全硫黄濃度として表示する。
【0032】
本発明においては、従来法と同様に光源4としてキセノンランプを使用すると共に、前述の様に、光源4の光からピーク波長220nmの光を抽出するに当たり、中心波長200〜220nmの第1の光学部品5A、例えばダイクロイックミラー51、53、55、57を使用し、かつ、中心波長220〜230nmの第2の光学部品5B、例えばダイクロイックミラー52、54、56、58の2種類の光学部品を使用する。そして、図3に示す様に、第1の光学部品5Aにより、光源4の光から、220nmよりも短波長側にピーク波長を有する光(図3のスペクトルHで表される光)を選別し、これにより、220nmよりも長波長側にピーク波長を有する光を除去する。また、第2の光学部品5Bにより、光源4の光から、220nmよりも長波長側にピーク波長を有する光(図3のスペクトルHで表される光)を選別し、これにより、220nmよりも短波長側にピーク波長を有する光を除去する。その結果、ピーク波長が略220nmで且つ半値幅の極めて狭い光(図3のスペクトルHで表される光)を抽出でき、これを試料ガスに照射することが出来る。
【0033】
従って、本発明によれば、二酸化硫黄を選択的にに励起させ、試料ガス中の一酸化窒素を励起させることがないため、一酸化窒素による妨害を殆ど受けることなく、二酸化硫黄の蛍光強度を高精度に測定でき、正確に硫黄量を算出することが出来る。そして、本発明によれば、オゾン発生器を使用する従来の方法に比べ、装置構成を簡素化でき、一層低コストでで硫黄を分析することが出来る。
【実施例】
【0034】
図1及び図2に示す構造の紫外蛍光検出器3を作製し、その光学部品(5)の構成を変えて、受光器7で検出される紫外線スペクトルの違いを確認した。また、硫黄濃度が既知の試料を本発明の分析装置によって分析し、試料中の窒素成分による影響を確認した。
【0035】
実施例1:
紫外蛍光検出器3においては、光源4としてのキセノンランプを使用し、受光器7として光電子増倍管を使用した。そして、光学部品5であるダイクロイックミラーを図2に示す状態に配置した。すなわち、第1の光学部品5Aとして、中心波長215nmのダイクロイックミラー51、53、55及び57の4枚を使用し、第2の光学部品5Bとして、中心波長225nmのダイクロイックミラー52、54、56及び58の4枚を使用し、これら第1及び第2の光学部品5A、5Bを交互に配置した。そして、セル6に試料ガスを供給せずに、光源(4)の光をセル6に照射して受光器7で検出した。その結果、図4に符号Hで表されるスペクトルが得られた。
【0036】
次に、基準となる試料として、硫黄濃度が一定(1ppm)で且つ硫黄に対する窒素の濃度比率(N/S)を0、10、100、500、700、1000に調整したトルエン溶液を準備した。上記の6種類の試料について、それぞれに硫黄濃度を分析したところ、図5に太線で示す様な変化が見られた。すなわち、窒素濃度の比率が500倍を超える試料においては、硫黄の蛍光に対して窒素成分による影響が僅かに見られることが確認された。
【0037】
比較例1:
紫外蛍光検出器3において光学部品5の構成を変更した。すなわち、光学部品5として、中心波長220nmのダイクロイックミラー8枚を図2に示す状態と同様に配置した。光学部品5であるミラーを変更した点を除き、実施例1と同様の構成で分析装置を作製した。そして、実施例1と同様に、セル6に試料ガスを供給せずに、光源(4)の光をセル6に照射して受光器7で検出した。その結果、図4に符号Hで表されるスペクトルが得られた。また、実施例1と同様の試料について、それぞれに硫黄濃度を分析したところ、図5に細線で示す様な変化が見られた。すなわち、窒素濃度の比率が100倍を超える試料においては、硫黄の蛍光強度に対して明らかに窒素成分の影響を受けていることが確認された。
【符号の説明】
【0038】
1 :燃焼装置
10:反応管
13:加熱炉
14:試料注入装置
2 :試料ガス流路
3 :紫外蛍光検出器
4 :光源(キセノンランプ)
5 :光学部品
5A:第1の光学部品
5B:第2の光学部品
51〜58:ダイクロイックミラー
6 :セル
7 :受光器
8 :排気流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄および窒素成分が含まれる試料中の硫黄量を紫外蛍光法により測定する硫黄の分析方法であって、試料の燃焼分解により試料中の硫黄および窒素を二酸化硫黄および一酸化窒素に変換して試料ガスを生成し、当該試料ガスに紫外線を照射して二酸化硫黄の蛍光強度を測定するに際し、光源としてキセノンランプを使用すると共に、ピーク波長200〜220nmの光を選別する第1の光学部品およびピーク波長220〜260nmの光を選別する第2の光学部品に対して前記光源の光を照射し、前記第1及び第2の光学部品によって抽出された光を試料ガスに照射することを特徴とする硫黄の分析方法。
【請求項2】
第1及び第2の光学部品として、それぞれ複数の光学部品を使用する請求項1に記載の硫黄の分析方法。
【請求項3】
第1及び第2の光学部品として、ダイクロイックミラー、バンドパスフィルター又はカットフィルターを使用する請求項1又は2に記載の硫黄の分析方法。
【請求項4】
硫黄および窒素成分が含まれる試料中の硫黄量を紫外蛍光法により測定する硫黄分析装置であって、試料の燃焼分解により試料中の硫黄および窒素を二酸化硫黄および一酸化窒素に変換して試料ガスを生成する燃焼装置と、当該燃焼装置で生成された試料ガスに紫外線を照射して二酸化硫黄の蛍光強度を測定する紫外蛍光検出器とから成り、当該紫外蛍光検出器は、光源としてのキセノンランプと、ピーク波長200〜220nmの光を選別する第1の光学部品およびピーク波長220〜260nmの光を選別する第2の光学部品と、試料ガスの紫外蛍光線を受光する受光器とを備え、かつ、前記光源の光を前記第1及び第2の光学部品に照射し、これら第1及び第2の光学部品によって抽出された光を試料ガスに照射する様に光路構成されていることを特徴とする硫黄の分析装置。
【請求項5】
第1及び第2の光学部品がそれぞれ複数設けられている請求項4に記載の硫黄の分析装置。
【請求項6】
第1及び第2の光学部品がダイクロイックミラー、バンドパスフィルター又はカットフィルターである請求項4又は5に記載の硫黄の分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−276486(P2010−276486A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129781(P2009−129781)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(591061208)株式会社三菱化学アナリテック (17)
【Fターム(参考)】