説明

硬化性樹脂組成物、硬化物及び光学部材

【課題】得られる硬化物が透明で耐熱黄変性が高い硬化性樹脂組成物、並びにその硬化物、並びにその硬化物を用いた発光ダイオード用封止材、発光ダイオード用レンズ及びカメラレンズ等の光学部材、並びに前記発光ダイオード用封止材又は発光ダイオード用レンズを用いた発光ダイオードデバイス及び前記カメラレンズを用いたカメラレンズモジュールを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系重合体(A)、1つの(メタ)アクリロイル基を有する単量体(B)、特定のポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート(C)及び重合開始剤(D)を含有する硬化性樹脂組成物、その硬化物及びその硬化物を用いた光学部材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性樹脂組成物、並びに硬化物、並びに発光ダイオード用封止材、発光ダイオード用レンズ及びカメラレンズ等の光学部材、並びに発光ダイオードデバイス及びカメラレンズモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードデバイスは、ほこりや衝撃から発光ダイオード素子を保護することや、光取り出し効率を向上することを目的として、発光ダイオード素子を封止材によって封止した構造をとる。また、発光ダイオードデバイスには、発光ダイオード素子から放射される光の導光や集光又は拡散を目的として、レンズが多用されている。携帯電話等に使用されるカメラレンズに関しては、リフロー工程への対応が本格化しており、従来使用されている熱可塑性樹脂から、熱硬化性樹脂への変換が進んでいる。上記封止材、レンズ等の光学部材にはエポキシ樹脂やシリコーン樹脂、無機粒子を樹脂に配合した有機無機ハイブリッド材料等の透明樹脂成形品が採用されており、その成形方法としては、常温で液状の硬化性樹脂組成物を所定の形状とした後、熱あるいは光で硬化する方法が主に採用されている。
【0003】
封止材、レンズ等の光学部材に用いられる硬化性樹脂組成物には成形性を良好とするための適度な粘度が求められ、その硬化物には高い透明性、デバイス作動時の発熱やハンダリフロー工程で黄変しない耐熱黄変性が求められる。
【0004】
上記以外の透明樹脂としてはポリメチルメタクリレートを代表とする(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂は特に透明性に優れるため、フラットパネルディスプレイ部材、光導波路等の光学部材に使用されており、上記封止材やレンズ等への適用も期待されている。しかし、(メタ)アクリル樹脂は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂、有機無機ハイブリッド材料と比較して耐熱黄変性に劣るため、この性能が要求される分野への適応は困難であった。
【0005】
このような(メタ)アクリル樹脂の問題点を改善する手法として、例えば特許文献1には、(A)成分として数平均分子量400以上のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、(B)成分として炭素数6以上の脂環式炭化水素基がエステル結合した(メタ)アクリレート化合物、(C)成分として重合開始剤を含有した光半導体封止材料が提案されている。また、特許文献1中では、予備重合した(B)成分等に(A)成分を配した光半導体封止材料とすることで、粘度調整ができ、硬化工程を容易にすることが可能であること、このような光半導体封止材料の硬化物は、透明性に優れ、熱で黄変しにくいことが開示されている。
また、特許文献2には、(A)アクリル酸系誘導体、(B)アクリル酸系誘導体ポリマー、及び(C)高分子量架橋剤を含有してなることを特徴とする光学用樹脂組成物について開示されており、(B)アクリル酸系誘導体ポリマーと(C)高分子量架橋剤の相溶性が低く、硬化物が白濁する場合、高分子量架橋剤の原料に炭素数1〜4のアルキレングリコールを用いることで、透明性が良好になることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/129536号パンフレット
【特許文献2】特開2008−248221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の光半導体封止材料は、数平均分子量400以上のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物が熱により黄変しやすいため、高い耐熱黄変性が要求される用途に使用する場合に問題となる恐れがある。
特許文献2では、(C)成分として、両末端が水酸基であるポリエステルのジ(メタ)アクリレートが記載されているが、例示されている当該ポリエステルの原料であるジオールおよびジカルボン酸の炭素鎖はいずれも直鎖状であり、このようなジ(メタ)アクリレートを光学用樹脂組成物に配した場合、その硬化物は白濁する。
【0008】
本発明は、得られる硬化物が透明で耐熱黄変性が高い硬化性樹脂組成物、その硬化物、並びにその硬化物を用いた発光ダイオード用封止材、発光ダイオード用レンズ及びカメラレンズ等の光学部材、並びに前記発光ダイオード用封止材又は発光ダイオード用レンズを用いた発光ダイオードデバイス、前記カメラレンズを用いたカメラレンズモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、(メタ)アクリル系重合体(A)(以下、「(A)成分」という)、1つの(メタ)アクリロイル基を有する単量体(B)(以下、「(B)成分」という)、下式(1)で表されるポリエステルジオールジ(メタ)クリレート(C)(以下、「(C)成分」という)及び重合開始剤(D)(以下、「(D)成分」という)を含有する硬化性樹脂組成物(以下、「本組成物」という)を第1の発明とする。
【0010】
【化1】


(式(1)において、Rは水素原子又はメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素数が1〜20の2価の炭化水素基であり、RまたはRの少なくとも一方は分岐構造を有する。nは1〜30の整数である。)
【0011】
また本発明の要旨とするところは、本組成物の硬化物(以下、「本硬化物」という)を第2の発明とする。
【0012】
更に本発明の要旨とするところは、本硬化物を用いた光学部材(以下、「本光学部材」という)を第3の発明とする。
【0013】
また本発明の要旨とするところは、本硬化物を用いた発光ダイオード用封止材(以下、「本発光ダイオード用封止材」という)を第4の発明とし、本発光ダイオード用封止材を用いた発光ダイオードデバイス(以下、「本発光ダイオードデバイス(1)」という)を第5の発明とする。
【0014】
更に本発明の要旨とするところは、本硬化物を用いた発光ダイオード用レンズ(以下、「本発光ダイオード用レンズ」という)を第6の発明とし、本発光ダイオード用レンズを用いた発光ダイオードデバイス(以下、「本発光ダイオードデバイス(2)」という)を第7の発明とする。
また本発明の要旨とするところは、本硬化物を用いたカメラレンズ(以下、「本カメラレンズ」という)を第8の発明とし、本カメラレンズを用いたカメラレンズモジュール(以下、「本カメラモジュール」)を第9の発明とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、透明で耐熱黄変性が良好な本硬化物を得ることができる本組成物、並びに透明で耐熱黄変性が良好な本硬化物、並びに透明で耐熱黄変性が良好な本発光ダイオード用封止材、本発光ダイオード用レンズ及び本カメラレンズ等の本光学部材、並びに本発光ダイオードデバイス(1)、本発光ダイオードデバイス(2)及び本カメラレンズモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発光ダイオード用封止材及び本発光ダイオード用レンズを備えた発光ダイオードデバイスの一実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」から選ばれる少なくとも1種を示し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種を示す。
また、「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」から選ばれる少なくとも1種を示し、CH=C(R)−C(=O)−(Rは水素原子又はメチル基)で表される基である。
【0018】
(A)成分
本発明で使用される(A)成分は本組成物の粘度を調整し、また、本組成物の硬化時の収縮率を抑制するための成分である。
本発明においては、(A)成分は本組成物中に溶解するものが好ましい。
【0019】
(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体単位50〜100質量%及び他のビニル基含有単量体単位0〜50質量%を含む重合体が挙げられる。尚、「単位」とは重合体を構成する繰り返し単位を意味する。
本発明においては、硬化物の透明性の点で、(メタ)アクリル系単量体単位は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系単量体単位を構成するための原料である(メタ)アクリル系単量体は単官能単量体であっても多官能単量体であってもよい。
ここで、単官能単量体は1つの(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味し、多官能単量体は2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
【0021】
単官能単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン及びジメチルアクリルアミドが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0022】
多官能単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート及び前式(1)で表されるポリエステルジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0023】
他のビニル基含有単量体単位を構成するための原料である他のビニル基含有単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体、アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体及び酢酸ビニル等のビニルエステルが挙げられる。
(A)成分を構成するための原料である単量体は単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0024】
本発明においては、(メタ)アクリル系単量体としては、本組成物に対する(A)成分の溶解性の点から、単官能単量体が好ましい。
本発明においては、(A)成分としては、本硬化物の耐熱黄変性を良好とする点で、アルキル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート単位とアルキル(メタ)アクリレート単位を有する共重合体が好ましい。
【0025】
アルキル(メタ)アクリレート単位を含有する重合体の具定例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリn−ブチル(メタ)アクリレート及びメチル(メタ)アクリレート単位とn−ブチル(メタ)アクリレート単位を有する共重合体が挙げられる。
【0026】
脂環式構造を有する(メタ)アクリレート単位とアルキル(メタ)アクリレート単位を有する共重合体としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート単位とメチル(メタ)アクリレート単位を有する共重合体、シクロヘキシル(メタ)アクリレート単位とn−ブチル(メタ)アクリレート単位を有する共重合体、イソボルニル(メタ)アクリレート単位とn−ブチル(メタ)アクリレート単位を有する共重合体及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレート単位とn−ブチル(メタ)アクリレート単位を有する共重合体が挙げられる。
【0027】
(A)成分の重量平均分子量(以下、「Mw」という)としては10,000〜300,000が好ましく、30,000〜200,000がより好ましい。Mwを10,000以上とすることで本硬化物の強度を良好とすることができる傾向にある。また、Mwを300,000以下とすることで本組成物中の(A)成分の溶解性を良好とすることができる傾向にある。
【0028】
(A)成分を得るための重合方法は特に限定されず、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、部分重合法等の公知の方法で重合することができる。
本発明においては、重合反応の制御や生成した重合体の分離が比較的容易であることから、懸濁重合法が好ましい。
【0029】
(B)成分
本発明で使用される(B)成分は本組成物の成形時の作業性を良好とし、本硬化物の透明性を良好とするための成分である。
【0030】
(B)成分の具体例としては、(A)成分の(メタ)アクリル系単量体単位を構成するための原料である単官能単量体と同様の単量体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0031】
(C)成分
本発明で使用される(C)成分は前式(1)で表されるポリエステルジオールジ(メタ)アクリレートであり、本硬化物の耐熱黄変性、透明性、強度及び銀メッキ、ポリフタルアミド樹脂等の発光ダイオードパッケージ構成材料との接着性を良好とし、さらに硬化時間を短縮化するための成分である。
【0032】
(C)成分としては市販品又は別途合成したものが挙げられる。
(C)成分の合成方法としては、例えば、ポリエステルジオールと(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させる方法を挙げることができる。合成に用いるポリエステルジオールとしては、市販品及び別途合成したものが挙げられる。
(C)成分は単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0033】
(C)成分として式(1)中のR及びRの炭素数が2以上のポリエステルジオールジ(メタ)アクリレートを使用することにより本硬化物の強度を良好とするができる。また、(C)成分として式(1)中のR及びRの炭素数が20以下のポリエステルジオールジ(メタ)アクリレートを使用することにより本硬化物の耐熱黄変性及び透明性を良好とするができ、RまたはRの少なくとも一方が分岐構造を有するポリエステルジオールジ(メタ)アクリレートを使用することにより本硬化物の透明性を良好とするができる。
【0034】
本発明において、(C)成分としては、通常、式(1)におけるnが異なるポリエステルジオールジ(メタ)アクリレートの混合物として、分子量分布を有するものが得られる。従って、分子量分布を有する(C)成分の場合には、式(1)におけるnは中央値を示す。
式(1)中のnとしては1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜15が更に好ましい。nが1以上で本硬化物の強度及び銀メッキ、ポリフタルアミド樹脂等の発光ダイオードパッケージ構成材料との接着性を良好とすることができる傾向にある。また、nが30以下で(A)成分及び(B)成分との相溶性を良好とすることができる傾向にある。
【0035】
本発明においては、(C)成分としては、(A)成分及び(B)成分との相溶性及び本硬化物の透明性の点で、式(1)中のR及びRの少なくとも一方の炭素数が7〜20のものが好ましく、式(1)中のR及びRが2価の飽和炭化水素基であることがより好ましい。特に式(1)中のRの炭素数が7〜20の2価の飽和炭化水素基が好ましい。
【0036】
本発明においては、(C)成分としては、(A)成分及び(B)成分との相溶性の点で、下式(2)〜(4)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
式(2)〜(4)で表されるポリエステルジオールジ(メタ)アクリレートは単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【化2】


【化3】


【化4】


(式(2)〜(4)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数2〜6の炭化水素基である。nは1〜30の整数である。)
式(2)〜(4)において、本硬化物の耐熱性の点で、Rがエチル基及びブチル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、(C)成分としては、本硬化物の耐熱性の点で、式(2)で表されるものがより好ましい。
【0037】
本発明においては、(C)成分としては、本硬化物の耐熱黄変性及び透明性の点で、式(1)中のRがメチル基であるものが好ましい。
【0038】
(D)成分
本発明で使用される(D)成分としては、例えば、熱重合開始剤及び光重合開始剤が挙げられる。
熱重合に用いられる熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
【0039】
有機過酸化物の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3−テトラメチルブチル−2−エチルヘキサノエート等のパーオキシエステルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0040】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリック酸及び2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジハイドロクロライドが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0041】
光重合に用いられる光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン及びメチルベンゾイルホルメートが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0042】
本発明においては、レドックス反応を利用して本組成物を硬化させる場合には、(D)成分としてジベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物とN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン等の芳香族3級アミン類との併用系;ハイドロパーオキサイドと金属石鹸類との併用系;ハイドロパーオキサイドとチオ尿素類との併用系等のレドックス系開始剤を使用することができる。
(D)成分は単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0043】
本発明においては、(D)成分としては、本硬化物の透明性及び耐熱黄変性の点で、熱重合に用いられる熱重合開始剤が好ましい。
また、熱重合開始剤としては、本硬化物に気泡が生じにくい点で、有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、本硬化物の耐熱黄変性の点で、ジラウロイルパーオキサイド、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート及び1,1,3,3−テトラメチルブチル−2−エチルヘキサノエートが好ましい。
(D)成分の種類は特に限定されず、重合方法に応じて適宜選択することができる。
【0044】
本組成物
本組成物は(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する。
本発明において、本組成物中に(A)成分が溶解した状態のものとする場合の(A)成分の溶解方法としては、例えば、(A)成分を(B)成分と(C)成分と共に常温で撹拌する方法及び(A)成分を(B)成分と(C)成分と共に加熱しながら撹拌する方法が挙げられる。これらの中で、短時間で溶解できることから加熱しながら撹拌する方法が好ましい。加熱しながら撹拌する条件としては、例えば、40〜100℃で0.5〜5時間撹拌する条件が挙げられる。
【0045】
本組成物中の(A)成分の配合量としては、本組成物の粘度を適正なレベルとし、硬化収縮率を抑制することにより成形時の作業性を良好なものとする点で、(A)〜(C)成分の合計量に対して20〜55質量%が好ましく、25〜50質量%がより好ましく、30〜45質量%が更に好ましい。
【0046】
本組成物中の(B)成分の配合量としては、(A)〜(C)成分の合計量に対して25〜75質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましく、35〜65質量%が更に好ましい。(B)成分の配合量を25質量%以上とすることで本組成物の粘度を適正なレベルとし、本組成物の成形時の作業性を良好とすることができ、本硬化物の透明性を良好なものとすることができる傾向にある。また、(B)成分の配合量を75質量%以下とすることで(A)成分の含有率を高くすることができ、本組成物の硬化収縮率を抑制することができる傾向にある。
【0047】
本組成物中の(C)成分の配合量としては、(A)〜(C)成分の合計量に対して1〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましく、5〜20質量%が更に好ましい。(C)成分の配合量を1質量%以上とすることで本硬化物の強度及び銀メッキ、ポリフタルアミド樹脂等の発光ダイオードパッケージ構成材料との接着性を良好とすることができる傾向にある。また、(C)成分の配合量を30質量%以下とすることで本硬化物の透明性、耐熱黄変性を良好とすることができる傾向にある。
【0048】
本組成物中の(D)成分の配合量としては、本硬化物の透明性及び強度の点で、(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して0.05〜5.0質量部が好ましく、0.1〜4.0質量部がより好ましく、0.3〜3.0質量部が更に好ましい。
【0049】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、本組成物中に(A)〜(D)成分以外の他の成分(以下、「他の成分」という)を配合することができる。
他の成分としては、例えば、(B)成分及び(C)成分以外のビニル基含有単量体及び酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、重合禁止剤、充填剤、拡散剤、顔料、蛍光体等の波長変換材料等の各種添加剤が挙げられる。
【0050】
(B)成分及び(C)成分以外のビニル基含有単量体の配合量としては、硬化物の透明性の点で、(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0051】
本発明においては、本硬化物の耐熱黄変性を良好とするために、本組成物中に、添加剤として酸化防止剤を配合することが好ましい。
酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオールビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール系酸化防止剤;及びトリフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
【0052】
本発明においては、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用することが好ましい。フェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の好ましい組み合わせとしては、フェノール系酸化防止剤としてテトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートから選ばれる少なくとも1種と、リン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトの組み合わせが挙げられる。
【0053】
本組成物中の酸化防止剤の配合量としては、本硬化物の耐熱黄変性を良好とする点で、(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がより好ましく、0.1〜2質量部が更に好ましい。
【0054】
本発明においては、本組成物を、例えば光の拡散を目的とした発光ダイオード用レンズ用途に使用する場合、炭酸カルシウム、架橋アクリル樹脂粉体等の拡散剤を配合することができる。
また、本組成物を、例えばフラットパネルディスプレイや発光ダイオードに用いられる反射部材に使用する場合、酸化チタン等の顔料を配合することができる。
更に、本組成物を、例えば太陽電池に用いられる波長変換部材に使用する場合、蛍光体等の波長変換材料を配合することができる。
【0055】
本組成物の製造方法としては、例えば、(A)〜(D)成分を常温で撹拌混合する方法及び加熱下で撹拌混合する方法等が挙げられる。
本組成物の製造方法としては、(A)〜(D)成分を短時間で溶液状態とすることができる点で、加熱下で撹拌混合する方法が好ましい。
加熱下で撹拌混合する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
まず、(A)〜(C)成分を加熱しながら攪拌混合して混合物を溶液状態とした後に常温に冷却する。次いで、得られた混合物の溶液に(D)成分を加え、攪拌混合し、本組成物を得る。他の成分を加える場合は、他の成分は(A)〜(C)成分と共に加熱しながら攪拌混合することが好ましい。
(A)〜(C)成分及び他の成分の攪拌混合では、(A)成分の溶解性が良好となるため、40〜100℃の加熱下で0.1〜5時間撹拌することが好ましい。
【0056】
本組成物の粘度としては、23℃においてB型粘度計を用いた測定値が50〜20,000mPa・sであることが好ましい。本組成物の粘度を50mPa・s以上とすることで、ディスペンサや鋳型からの樹脂漏れを抑制することができる。また、本組成物の粘度を20,000mPa・s以下とすることで、本組成物の流動性をより適度なものとすることができ、本組成物を使用する際の作業性を良好とすることができる。
【0057】
本硬化物
本硬化物は本組成物を硬化して得られるものである。
本組成物の硬化方法としては、用いる(D)成分の種類により、熱重合、光重合及びレドックス反応のいずれかの方法で重合させることができるが、本硬化物の透明性及び耐熱黄変性の点で、熱重合法が好ましい。
【0058】
熱重合法での硬化条件は特に限定されないが、気泡を含まない本硬化物を得る点で、硬化温度を(B)成分の沸点よりも低い温度とすることが好ましい。
具体的な硬化温度(加熱温度)としては40〜150℃が好ましく、40〜130℃がより好ましい。また、硬化時間(加熱時間)は硬化温度によって異なるが、5分〜5時間が好ましく、10分〜3時間がより好ましい。
【0059】
本発明においては、本組成物の硬化後に更にアフターキュアーを行うことが好ましい。これにより、本硬化物中に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、本硬化物の耐熱性や耐光性を良好とすることができる。
本硬化物のアフターキュアー条件としては90〜150℃で0.5〜3時間が好ましく、100〜130℃で1〜2時間がより好ましい。
【0060】
本発明においては、本硬化物を得る方法としては、例えば、本組成物を硬化させる際に本組成物を所定の形状としておき、本組成物を硬化させて所定の形状を有する本硬化物を得る方法が挙げられる。
所定の形状を有する本組成物を得る方式としては、例えば、ポッティング成型方式、キャスティング成型方式、プリンティング成型方式、LIM成型方式及びトランスファーモールド成型方式が挙げられる。
【0061】
本光学部材
本光学部材は本硬化物を用いたものである。
本光学部材としては、例えば、発光ダイオードデバイス、携帯電話、スマートフォン、カメラ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイス、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、電子ペーパー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池等に使用されるフィルム又はシート、レンズ、被覆塗料、光導波路、封止材、充填材、接着剤、粘着剤及び波長変換材が挙げられる。
本光学部材は高い透明性や耐熱黄変性が要求される発光ダイオード用封止材や発光ダイオード用レンズ、カメラレンズとして有用である。
【0062】
本発光ダイオード用封止材
本発光ダイオード用封止材は本硬化物を用いたものである。
本発光ダイオード用封止材は発光ダイオード素子をほこり、衝撃等から保護すること及び光取り出し効率の上昇のために用いられる光学部材である。
また、発光ダイオードが白色発光ダイオードの場合、本発光ダイオード用封止材は蛍光体を分散するためのバインダーとしての役割を担うことができる。
【0063】
本発光ダイオード用封止材は、例えば、図1に示すような形で発光ダイオードデバイスに使用することができる。
図1に示す発光ダイオードデバイス100は発光ダイオード素子6、表面に電極(アノード)5a及び電極(カソード)5bが形成されたパッケージ基板7、パッケージ基板7上に設けられたリフレクター4a及びリフレクター4bを備えている。
発光ダイオード素子6はパッケージ基板7、リフレクター4a及びリフレクター4bにより形成された凹部の底部にダイボンド材8を介して配置されると共に、ボンディングワイヤ3a及びボンディングワイヤ3bにより電極(アノード)5a及び電極(カソード)5bに接続されてパッケージが形成されている。
このパッケージの凹部内に本発光ダイオード用封止材1が充填され、発光ダイオード素子6が封止されている。また、本発光ダイオード用封止材1、リフレクター4a及びリフレクター4bの上面に発光ダイオード用レンズ2が設置されている。
【0064】
図1に示す発光ダイオードデバイス100において、本発光ダイオード用封止材1の形成方法としては、例えば、本組成物をパッケージ基板7、リフレクター4a及びリフレクター4bにより形成された凹部にポッティングにより充填した後に硬化させる方法が挙げられる。
【0065】
本発光ダイオード用レンズ
本発光ダイオード用レンズは本硬化物を用いたものである。
本発光ダイオード用レンズは発光ダイオードから放射される光の導光、集光又は拡散のために用いられる光学部材である。
発光ダイオードから放射される光の導光や集光を目的とする場合、本発光ダイオード用レンズとしては透明な本硬化物を用いることが好ましい。発光ダイオードから放射される光の拡散を目的とする場合、本発光ダイオード用レンズとしては透明な本硬化物中に拡散剤が分散されたものを用いることもできる。本発光ダイオード用レンズの成型方法としては、キャスティング成型、トランスファー成型、LIM成型等が挙げられる。
また、白色発光ダイオード用レンズとして蛍光体が分散された本発光ダイオード用レンズを使用する際には、熱源である発光ダイオード素子から蛍光体を隔離したリモートフォスファー型の発光ダイオードとすることにより、耐熱性の低い蛍光体を熱源から隔離することができるので、発光ダイオードデバイスを長寿命化できる。
【0066】
本発光ダイオード用レンズは、例えば、図1に示すような形で発光ダイオードデバイスに使用することができる。
図1に示す発光ダイオードデバイス100において、本発光ダイオード用レンズ2は発光ダイオード用封止材1、リフレクター4a及びリフレクター4bの上面に設置されている。
本発光ダイオード用レンズ2を発光ダイオード用封止材1、リフレクター4a及びリフレクター4bの上面に設置する方法としては、例えば、本組成物を発光ダイオード用封止材1、リフレクター4a及びリフレクター4bの表面に所定の形状に積層した後に硬化させる方法、及び予め所定の形状の本発光ダイオード用レンズ2を得た後に本発光ダイオード用レンズ2を発光ダイオード用封止材1、リフレクター4a及びリフレクター4bの上面に接着剤や粘着剤を使用して積層する方法が挙げられる。尚、後者による方法においては、本発光ダイオード用レンズ2と発光ダイオード用封止材1、リフレクター4a及びリフレクター4bとの間に空壁を設けることができる。
【0067】
本発光ダイオードデバイス(1)
本発光ダイオードデバイス(1)は本発光ダイオード用封止材を用いた発光ダイオードデバイスである。このような発光ダイオードデバイスとしては、図1において発光ダイオード用封止材1が本発光ダイオード用封止材である発光ダイオードデバイス100が挙げられる。
【0068】
本発光ダイオードデバイス(2)
本発光ダイオードデバイス(2)は本発光ダイオード用レンズを用いた発光ダイオードデバイスである。このような発光ダイオードデバイスとしては、図1において発光ダイオード用レンズ2が本発光ダイオード用レンズである発光ダイオードデバイス100が挙げられる。
本カメラレンズ
本カメラレンズは本硬化物を用いたものである。
本カメラレンズは、携帯電話やスマートフォン、パソコン、デジタルカメラ等の電子機器や自動車等に備え付けられるカメラに用いられる。本カメラレンズの成型方法としては、キャスティング成型、トランスファー成型、LIM成型等が挙げられる。本カメラレンズは、本硬化物の単独成型品を用いることもできるが、平面ガラスあるいはガラスウエハー上に、本硬化物を成型することで、ハイブリッドレンズ用材料として使用することもできる。カメラレンズを成型する際の硬化方法は、熱重合、光重合のいずれでも良い。
本カメラレンズモジュール
本カメラレンズモジュールは、本カメラレンズを用いたカメラレンズモジュールである。本カメラレンズモジュールの構成としては、1枚または複数枚の本カメラレンズとイメージセンサーに、さらにホルダーまたはスペーサーを使用するものが挙げられる。また、ウエハー状に成型したレンズとイメージセンサーウエハーの接着積層体をダイシングするウエハーレベル方式によって成型されるものも挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により説明する。以下において、「部」は「質量部」を意味する。また、実施例及び比較例におけるMw及び耐熱黄変性についての評価を以下の方法で実施した。
【0070】
(1)Mw
重合体を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解してゲルパーミュエーションクロマトグラフィーを用いて測定した分子量をポリスチレン換算により求めた値をMwとした。
【0071】
(2)透明性
3mm厚の板状の硬化物のヘーズをJIS−K7136に準じて測定した。ヘーズの測定には、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所製、HM−150型)を用いた。その結果から以下の基準で透明性を評価した。
◎:ヘーズが2.0%未満
○:ヘーズが2.0%以上、3.0%未満
×:ヘーズが3.0%以上
(3)耐熱黄変性
3mm厚の板状の硬化物を用いて、120℃の空気雰囲気下で500時間静置する耐熱性試験前後の硬化物のイエローネスインデックス(YI)を色差計(日本電色工業(株)製、商品名:SE2000)を用いて測定し、その差(ΔYI)から耐熱黄変性を以下の基準で評価した。尚、YIの測定は透過モードで行った。
◎:ΔYIが5未満。
○:ΔYIが5以上、10未満。
×:ΔYIが10以上。
【0072】
[合成例1]重合体1の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に脱イオン水145部、分散安定剤としてポリビニルアルコール(ケン化度:80%、重合度:1,700)0.5部を添加して撹拌した。
ポリビニルアルコールを完全に溶解した後、撹拌を停止し、シクロヘキシルメタクリレート50部、n−ブチルメタクリレート50部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(大塚化学(株)製、商品名:AMBN)0.3部、硫酸ナトリウム0.3部及びn−ドデシルメルカプタン0.3部を含有する単量体組成物を加えて再度撹拌して重合用溶液を得た。
【0073】
上記の重合溶液を撹拌下で窒素置換した後に80℃に昇温して重合を開始した。重合発熱のピークを検出後、95℃に昇温し、更に1時間重合を継続し、水性懸濁液を得た。
次いで、水性懸濁液を40℃に冷却した後に、目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄した。
濾過物を脱水した後、30℃で48時間乾燥して、粒状の重合体1を得た。得られた重合体1のMwは75,500であった。
【0074】
【表1】


表1中の略語は以下の化合物を示す。
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
IBXMA:イソボルニルメタクリレート
FA−513M:ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業(株)製、商品名:FA−513M)
MMA:メチルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
AMBN:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
NaSO4:硫酸ナトリウム
n−DM:n−ドデシルメルカプタン
【0075】
[合成例2〜5]重合体2〜5の合成
表1に示す組成の単量体組成物を使用する以外は合成例1と同様にして重合体2〜5を合成した。得られた重合体2〜5のMwを表1に示す。
【0076】
[合成例6]ポリエステルジオールジメタクリレート(PESDMA)1の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中にポリエステルジオール(豊国製油(株)製、アジピン酸と2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとのポリエステルジオール、OH価:57.3、数平均分子量:1,958)400.00g、メタクリル酸無水物66.12g(0.43モル)及び酸化マグネシウム0.82g(0.02モル)を添加した後に内温80℃にて3時間撹拌して、縮合反応を実施した。
次いで、反応装置内を室温まで冷却した後に5%水酸化カリウム水溶液200gを加え、1時間攪拌した。この混合液にジクロロメタンを加えた後に抽出操作を行い、得られた有機相を純水で洗浄した。
有機相をろ過した後、ろ液を減圧濃縮してPESDMA1(下式(5)で表される単量体)419.3gを得た。尚、反応追跡はH NMR法により確認した。
【化5】


(式(5)において、Etはエチル基、kは6.7である。)
【0077】
[合成例7]ポリエステルジオールジメタクリレート(PESDMA)2の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中にポリエステルジオール(豊国製油(株)製、セバシン酸と2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとのポリエステルジオール、OH価:56.6、数平均分子量:1,982)400.00g、メタクリル酸無水物65.31g(0.42モル)及び酸化マグネシウム0.81g(0.02モル)を添加した後に合成例6と同様に合成を行い、PESDMA2(下式(6)で表される単量体)422.6gを得た。
【化6】


(式(6)において、Etはエチル基、lは5.6である。)
【0078】
[合成例8]ポリエステルジオールジメタクリレート(PESDMA)3の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中にポリエステルジオール(豊国製油(株)製、アジピン酸と2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールとのポリエステルジオール、OH価:55.8、数平均分子量:2,011)400.00g、メタクリル酸無水物64.39g(0.42モル)及び酸化マグネシウム1.60g(0.04モル)を添加した後に合成例6と同様に合成を行い、PESDMA3(下式(7)で表される単量体)422.6gを得た。
【化7】


(式(7)において、Etはエチル基、n−Buはn−ブチル基、mは6.8である。)
【0079】
[合成例9]ポリエステルジオールジメタクリレート(PESDMA)4の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中にポリエステルジオール(DIC(株)製、アジピン酸とエチレングリコールとのポリエステルジオール、OH価:55.9、数平均分子量:2,008)400.00g、メタクリル酸無水物75.66g(0.49モル)及び炭酸カリウム2.76g(0.02モル)を添加した後に内温70℃にて7時間撹拌して、縮合反応を実施した。
次いで、反応装置内を室温まで冷却した後に5%水酸化カリウム水溶液200gを加え、1時間攪拌した。この混合液にジクロロメタンを加えた後に抽出操作を行い、得られた有機相を純水で洗浄した。
有機相を減圧濃縮してPESDMA4(下式(8)で表される単量体)425.0gを得た。
【化8】

(8)
(式(8)において、p=10.3である)
【0080】
[合成例10]ポリエステルジオールジメタクリレート(PESDMA)5の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中にポリエステルジオール(豊国製油(株)製、アジピン酸と1,4−ブタンジオールとのポリエステルジオール、OH価:57.5、数平均分子量:1,952)400.00g、メタクリル酸無水物75.66g(0.49モル)及び炭酸カリウム2.76g(0.02モル)、を添加した後に内温80℃にて7時間撹拌して、縮合反応を実施した。以降は合成例9と同様に合成を行い、PESDMA5(下式(9)で表される単量体)411.0gを得た。
【化9】

(9)
(式(9)において、q=9.5である)
【0081】
[合成例11]ポリエステルジオールジメタクリレート(PESDMA)6の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた反応装置中にポリエステルジオール(DIC(株)製、アジピン酸とジエチレングリコールとのポリエステルジオール、OH価:57.7、数平均分子量:1945)400.00g、メタクリル酸無水物75.66g(0.49モル)及び炭酸カリウム2.76g(0.02モル)、を添加した後に内温70℃にて7時間撹拌して、縮合反応を実施した。以降は合成例9と同様に合成を行い、PESDMA6(下式(10)で表される単量体)416.4gを得た。
【化10】

(10)
(式(10)において、r=8.8である)
【0082】
[実施例1]
冷却器を備えた反応容器に(B)成分としてn−ブチルメタクリレート24部、シクロヘキシルメタクリレート24部及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1部(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503)、(C)成分として合成例6で得たPESDMA1を10部、酸化防止剤としてn−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン(株)製、商品名:IRGANOX1076)0.2部及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン(株)製、商品名:IRGAFOS168)0.05部を添加した。
【0083】
反応容器内の液を攪拌しながら、反応容器内に(A)成分として合成例1で得た重合体1を41部添加した。
次いで、反応容器内を60℃に昇温し、温度を維持したまま2時間攪拌を行った。重合体1が完全に溶解したことを確認した後に常温まで冷却し、反応容器内に(D)成分としてジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油(株)製、商品名:パーロイルTCP)1部を添加して硬化性樹脂組成物を得た。
【0084】
得られた硬化性樹脂組成物を脱泡した後に、PETフィルムで被覆したガラス2枚をPETフィルム面が向き合うように対向させ、2枚のガラス板の隙間の端部に塩化ビニル樹脂製のガスケットを挟み込んで形成したセルの中に脱泡した硬化性樹脂組成物を流し込み、密閉した。
硬化性樹脂組成物を有するセルを70℃で2時間加熱して硬化を行い、更に100℃で1時間のアフターキュアーを行った。ついで、セルを常温に冷却後、セル両面のガラス及びPETフィルムを剥がし取り、厚さ3mmの硬化物を得た。得られた硬化物の透明性及び耐熱黄変性の評価結果を表2に示す。
【0085】
[実施例2〜13及び比較例1〜5]
硬化性樹脂組成物の組成を表2に示す組成とした以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物を調製し、厚さ3mmの硬化物を作製した。得られた硬化物の透明性及び耐熱黄変性の評価結果を表2に示す。なお、比較例3〜5では、透明性が極めて低かったので耐熱黄変性の評価は行わなかった。
表2の結果から明らかなように、本発明における(C)成分である分岐鎖構造を有するポリエステルジオールジ(メタ)アクリレートを含有する実施例1〜13では透明性及び耐熱黄変性が良好であった。しかしながら、(C)成分の代わりにポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含有する比較例1〜2では耐熱黄変性が不良であった。また、分岐構造を有さないポリエステルジオールジ(メタ)アクリレートを含有する比較例3〜5では、透明性が不良であった。
【0086】
【表2】


表2中の略語は以下の化合物を示す。
重合体1:合成例1で得た重合体1(シクロヘキシルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート=50:50(単量体質量比)の共重合体、Mw=75,500)。
重合体2:合成例2で得た重合体2(シクロヘキシルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート=75:25(単量体質量比)の共重合体、Mw=74,500)。
重合体3:合成例3で得た重合体3(イソボルニルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート=30:70(単量体質量比)の共重合体、Mw=86,000)。
重合体4:合成例4で得た重合体4(ジシクロペンタニルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート=30:70(単量体質量比)の共重合体、Mw=88,600)。
重合体5:合成例5で得た重合体5(メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート=40:60(単量体質量比)の共重合体、Mw=60,000)。
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
IBXMA:イソボルニルメタクリレート
FA−513M:ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成工業(株)製、商品名:FA−513M)
MMA:メチルメタクリレート
KBM−503:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−503)
PESDMA1:合成例6で得たポリエステルジオールジメタクリレート
PESDMA2:合成例7で得たポリエステルジオールジメタクリレート
PESDMA3:合成例8で得たポリエステルジオールジメタクリレート
PESDMA4:合成例9で得たポリエステルジオールジメタクリレート
PESDMA5:合成例10で得たポリエステルジオールジメタクリレート
PESDMA6:合成例11で得たポリエステルジオールジメタクリレート
パーロイルTCP:ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油(株)製、商品名:パーロイルTCP)
PEGDMA:ポリエチレングリコールジメタクリレート、重合度n≒14(新中村化学工業(株)製、商品名:NKエステル14G)
PBGDMA:ポリブチレングリコールジメタクリレート、重合度n=8〜9(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルPBOM)
IRGANOX1076:n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン(株)製、商品名:IRGANOX1076)
IRGAFOS168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン(株)製、商品名:IRGAFOS168)
【符号の説明】
【0087】
1:発光ダイオード用封止材
2:発光ダイオード用レンズ
3a:ボンディングワイヤ
3b:ボンディングワイヤ
4a:リフレクター
4b:リフレクター
5a:電極(アノード)
5b:電極(カソード)
6:発光ダイオード素子
7:パッケージ基板
8:ダイボンド材
100:発光ダイオードデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系重合体(A)、1つの(メタ)アクリロイル基を有する単量体(B)、下式(1)で表されるポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート(C)及び重合開始剤(D)を含有する硬化性樹脂組成物。
【化1】


(式(1)において、Rは水素原子又はメチル基であり、R及びRはそれぞれ独立して炭素数が1〜20の2価の炭化水素基であり、RまたはRの少なくとも一方は分岐構造を有する。nは1〜30の整数である。)
【請求項2】
ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート(C)のR及びRの少なくとも一方の炭素数が7〜20である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート(C)が下式(2)〜(4)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】


【化3】


【化4】


(式(2)〜(4)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数2〜6の炭化水素基である。nは1〜30の整数である。)
【請求項4】
重合開始剤(D)が熱重合開始剤である請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を用いた光学部材。
【請求項7】
請求項5に記載の硬化物を用いた発光ダイオード用封止材。
【請求項8】
請求項7に記載の発光ダイオード用封止材を用いた発光ダイオードデバイス。
【請求項9】
請求項5に記載の硬化物を用いた発光ダイオード用レンズ。
【請求項10】
請求項9に記載の発光ダイオード用レンズを用いた発光ダイオードデバイス。
【請求項11】
請求項5に記載の硬化物を用いたカメラレンズ。
【請求項12】
請求項11に記載のカメラレンズを用いたカメラレンズモジュール。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−60587(P2013−60587A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182671(P2012−182671)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】