説明

磁気情報記録媒体

【課題】機械的耐久性に優れた磁気情報記録媒体を提供すること。
【解決手段】少なくとも一方の面が熱可塑性樹脂を含む支持体と、該支持体の少なくとも前記熱可塑性樹脂を含む側の面に設けられた熱融着層と、前記支持体と前記熱融着層との界面に配置された磁気記録層及び画像とを少なくとも備え、前記磁気記録層が、磁性材料層と該磁性材料層の片面に設けられた接着剤層とから構成され、前記磁性材料層側の面が前記支持体の前記熱可塑性樹脂を含む面と接触するように、前記磁気記録層が前記支持体と前記熱融着層との界面に配置されていることを特徴とする磁気情報記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像と磁気記録層とを有する磁気情報記録媒体に関し、より詳細には、顔写真入りキャッシュカードや社員証、学生証、個人会員証、居住証、各種運転免許証、各種資格取得証明等の非接触式又は接触式個人情報画像情報入り磁気情報記録媒体、RFIDタグさらに医療現場などで用いる本人照合用画像シートや画像表示板、表示ラベルなどに用いることができる磁気情報記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キャッシュカードなどの画像と磁気記録層とを設けたカード類は、予め磁気テープを貼り付けたカード用の基材(支持体)の磁気テープが設けられた面に、オフセット印刷などにより画像を形成する工程を経て作製されていた。しかし、このカードは、支持体の表面に磁気テープを貼り付けて形成された磁気記録層と画像とが形成されており、磁気記録層や画像が磨耗したり傷つけられやすいという問題があった。
【0003】
一方、カードに形成された画像が保護できることから、転写体を利用してカードを作製する方法も提案されている(特許文献1参照)
この方法では、基体表面に熱融着性の画像受像層を設けた転写体を用いて、既存の電子写真方式の画像形成装置によりこの転写体表面に画像を一旦形成した後、プラスチックシートのような画像支持体に積層し、加熱加圧によりラミネートし、続いて、転写体の基体部分を剥離することにより、画像支持体と画像受像層との界面に画像が形成されたカードを作製することができる。
【特許文献1】特開2005−227377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえ、上述した方法を利用して、画像支持体と画像受像層との界面に画像と共に磁気記録層を形成して得られたカード(磁気情報記録媒体)では、画像や磁気記録層を外部の機械的刺激から保護することができる。
しかし、画像支持体と画像受像層との界面に画像と共に磁気記録層を設けた磁気情報記録媒体では、磁気情報読み取り(及び/または書き込み)装置により磁気記録情報を読み取ったり書き込んだりするために、磁気情報記録媒体を装置の読み取り(及び/又は書き込み)センサが配置されたカード用の溝部分を繰り返し通過させた場合、界面での剥離が発生し、機械的耐久性に欠ける場合があった。
本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、機械的耐久性に優れた磁気情報記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
少なくとも一方の面が熱可塑性樹脂を含む支持体と、該支持体の少なくとも前記熱可塑性樹脂を含む側の面に設けられた熱融着層と、前記支持体と前記熱融着層との界面に配置された磁気記録層及び画像とを少なくとも備え、
前記磁気記録層が、磁性材料層と該磁性材料層の片面に設けられた接着剤層とから構成され、
前記磁性材料層側の面が前記支持体の前記熱可塑性樹脂を含む面と接触するように、前記磁気記録層が前記支持体と前記熱融着層との界面に配置されていることを特徴とする磁気情報記録媒体である。
【発明の効果】
【0006】
以上に説明したように本発明によれば、機械的耐久性に優れた磁気情報記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の磁気情報記録媒体は、少なくとも一方の面が熱可塑性樹脂を含む支持体と、該支持体の少なくとも前記熱可塑性樹脂を含む側の面に設けられた熱融着層と、前記支持体と前記熱融着層との界面に配置された磁気記録層及び画像とを少なくとも備え、前記磁気記録層が、磁性材料層と該磁性材料層の片面に設けられた接着剤層(ホットメルト接着面)とから構成され、前記磁性材料層側の面が前記支持体の前記熱可塑性樹脂を含む面と接触するように、前記磁気記録層が前記支持体と前記熱融着層との界面に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明者らは、上記本発明を見出すにおいて、まず、転写体を用いて作製された磁気情報記録媒体の機械的耐久性に不具合が発生する原因について鋭意検討した。その結果、磁気情報読み取り(及び/または書き込み)装置の溝部分を繰り返し通過させて、界面での剥離が生じた磁気情報記録媒体について調査したところ、磁気記録層が配置された部分を中心として剥離が発生していることがわかった。また、この剥離は、磁気記録層と支持体との界面部分において起こっていた。このことから、剥離の原因は、磁気記録層と支持体との接着力が不足している点にあるものと考えられる。
【0009】
一方、磁気記録層の形成には通常、市販の磁気テープを用いる。この磁気テープは、磁性材料から構成される磁性材料層と、加熱によって溶融することにより接着性を発揮するような熱溶融性接着剤などから構成される接着剤層とを含む磁気記録層部分と、磁気テープを使用するまで磁気記録層を保持する支持体の役目を果たすPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどから構成され、使用時には磁気記録層から剥離される離型フィルムとを有するものである。また、この磁気テープは、片面が離型フィルムにより構成され、他方の面が、磁気テープを貼り付けたい対象物に対して接着可能なように接着層が配置された構成を有する。
【0010】
また、磁気情報記録媒体の作製に際しては、基体とこの基体の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを有する転写体の熱融着層が設けられた側の面に磁気テープを貼り付けてから離型フィルムを剥離することにより、磁気記録層が表面に貼り付けられた転写体を使用する。よって、磁気情報記録媒体中においては、磁気記録層の離型フィルムが設けられていた側の面が支持体表面と接触することになる。
そこで、剥離の発生した磁気情報記録媒体に用いられていた磁気テープについて調査したところ、磁気記録層は、接着層とこの接着層の接着面と反対側の面に配置された磁性材料層の他に、磁性材料層を被覆する保護層が設けられていることが判った。この保護層は、磁気テープから離型フィルムを剥離した後に、磁気情報が記録される磁性材料層を保護するために設けられる比較的離型性の高い樹脂から構成されるものである。
【0011】
よって、本発明者らは、磁気記録層の保護層側の面が支持体と接触しているために剥離が起こるものと考えた。一方、転写体を用いて作製される磁気情報記録媒体は、転写体の熱融着層と支持体との界面に磁気記録層が配置されるため、磁気記録層は、熱融着層によって保護される。それゆえ、上述したような保護層は不要である。よって、このような保護層を有さない磁気テープを用いれば、無機磁性材料から構成される磁性材料層が支持体表面と直接接触できるため、比較的離型性の高い樹脂から構成される保護層が支持体表面と直接接触する場合と比較して、転写体と支持体とを接合する際の加熱により、支持体表面の熱可塑性樹脂が磁性材料層に対して十分な接着性を発揮できるものと考えられる。
【0012】
本発明者らは、以上に説明した知見に基づいて上述した本発明を見出した。それゆえ、本発明の磁気情報記録媒体は、磁気記録層と支持体との界面での剥離が抑制されるため機械的耐久性に優れる。
【0013】
なお、上述した説明において、本発明の磁気情報記録媒体は、基体とこの基体の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを有する転写体や、磁気記録層の形成に保護層を有さない磁気テープを用いて作製されることを前提としているが、これらの部材を用いなくても本発明の磁気情報記録媒体が製造できるのであればその製造方法は特に限定されるものではない。しかしながら、通常は、転写体および保護層を有さない磁気テープを用いて作製される。
【0014】
以下に、転写体および保護層を有さない磁気テープを用いることを前提として、本発明の磁気情報記録媒体の製造方法や、これに用いる部材等についてより詳細に説明する。
【0015】
−磁気情報記録媒体の製造方法−
本発明では、(1)少なくとも一方の面が熱可塑性樹脂を含む支持体、(2)基体とこの基体の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを少なくとも有する転写体、および、(3)離型フィルムと、その片面に設けられた磁気記録層(当該磁気記録層は、無機磁性材料から構成され離型フィルムと接して配置される磁性材料層と、磁性材料層の離型フィルムが設けられる側の面と反対側の面に配置される接着層とから構成される)、以上の3つの主要部材を用いて磁気情報記録媒体を作製する。
【0016】
−画像及び磁気記録層の形成−
ここで、磁気情報記録媒体の作製に際しては、まず、転写体の熱融着層が設けられた側の面(以下、「接合面」と称す場合がある)に、画像および磁気記録層を形成する。なお、接合面に形成される画像と磁気記録層とはいずれを先に形成してもよいが、通常は両者が重なり合わないように形成することが好ましい。
接合面に形成される画像は、電子写真方式の画像形成装置を利用して形成されるトナー画像であることが好適である。しかし、本発明ではこれに限定されるものではなく、例えば、インクジェット方式の画像形成装置を利用して形成されるインク画像など、公知の画像形成装置により接合面に形成可能な画像であれば特に限定されるものではない。なお、転写体の接合面に形成されるトナー画像は、未定着画像であってもよい。この場合は、後述する転写体と支持体とを接合する接合工程における加熱処理を利用して未定着画像を定着することができる。
【0017】
また、磁気テープは、転写体の接合面の任意の位置に貼り付けることができる。なお、磁気テープの形状が帯状であり、磁気記録層を接合面に転写してから電子写真方式の画像形成装置を利用して接合面に画像を形成する場合、磁気記録層は、この層の長手方向が、転写体が画像形成装置に給紙される際の給紙方向に対して0度±45度の範囲内、特に好ましくは0度(すなわち磁気記録層の長手方向と給紙方向とが一致)となるように転写体の接合面に転写することが好ましい。
この場合、転写体が、画像形成装置内に配置された定着機のロールやベルト状の部材から構成される一対の定着部材間を通過する際に、転写シートの接合面と磁気記録層との界面に残留する空気が外部へと効率的に押し出される。転写シートの接合面と磁気記録層との界面に残留する空気は、磁気情報記録媒体の見栄えを悪くしてしまうが、上述した方法を利用すれば、界面に残留する空気が殆ど存在しないため、得られる磁気情報記録媒体の見栄えが悪くなることがない。
なお、本発明において、磁気記録層は、磁気情報記録媒体を構成する支持体と熱融着層との界面に配置されるが、上述した方法は磁気情報記録媒体の表面に磁気記録層が配置される場合についても利用することができる。
【0018】
−重ね合わせ工程−
接合面に画像と磁気記録層とが形成された転写体を作製した後は、この転写体の接合面と支持体の熱可塑性樹脂を含む面とを重ね合わせた積層体を形成する。
ここで、必要であれば、重ね合わせ工程を終えて、後述する接合工程を実施する前に、転写体表面と支持体表面(および/または保持体表面)とを熱溶着や接着剤などによる接着、ホチキス針などによる機械的固定を利用して仮留を実施することも可能である。これにより転写体と支持体との位置ずれが生じるのを確実に防止することができる。
【0019】
なお、本発明の磁気情報記録媒体の作製に用いられる支持体および転写体のサイズは特に限定されるものではないが、小判サイズのものが好適に用いられる。
この場合は、支持体を保持する保持体を用いて重ね合わせ工程および後述する接合工程、剥離工程を実施することが好ましい。小判サイズの支持体および転写体をそのまま用いて磁気情報記録媒体を作製できれば、A3サイズやA4サイズといった定形で大判サイズの支持体および転写体を用いて最終的に小判サイズの磁気情報記録媒体を作製する場合と比べて、裁断工程を省くことができるため生産性を大幅に向上させることができる。
【0020】
一方、小判サイズの支持体を用いて、重ね合わせ工程や接合工程、剥離工程を機械的手段を利用して実施する場合には、支持体のサイズが小さすぎるために、一旦重ね合わせて得られた積層体の支持体と転写体との位置ずれが発生するなど機械的なハンドリングが困難になることも挙げられる。この場合、結果的に、磁気情報記録媒体の熱融着層と支持体との界面に形成される画像の位置ずれを招きやすくなる。しかしながら、保持体を利用すればこのような問題の発生も抑制できる。
【0021】
ここで、「小判サイズ」とは、市販の用紙の規格サイズのうち最も小さいサイズ(はがきサイズ)よりも小さいサイズを意味する。
具体的には 支持体の形状が四角形である場合、例えば縦横の長さが各々10mm以上120mm以下の範囲内であり、縦:横のアスペクト比が1:1乃至1:12の範囲内にあるものを意味する。なお、縦横の長さは各々30mm以上90mm以下の範囲内がより好ましく、縦と横とのアスペクト比が1:1乃至1:3の範囲内にあることがより好ましい。また、実用性の観点からはJIS X−6302で規定されているサイズが好適である
一方、支持体の形状が四角形以外の形状、例えば、円形、楕円形、三角形、星型等の場合、最大長が10mm以上120mm以下の範囲内であり、最大長と最大長方向と直交する方向の長さとのアスペクト比が1:1乃至1:12の範囲内にあるものを意味する。なお、最大長は30mm以上90mm以下の範囲内がより好ましく、最大長と最大長方向と直交する方向の長さとのアスペクト比は1:1乃至1:3の範囲内にあることがより好ましい。なお、保持体の詳細については後述する。
【0022】
−接合工程−
重ね合わせ工程を経て得られた積層体を加熱処理、より好ましくは加熱処理と共に加圧処理を行うことにより、転写体の接合面と支持体の熱可塑性樹脂を含む面とを接合して接合体を得る。
接合方法としては特に限定されるものではなく、従来公知の各種ラミネート技法をいずれも好適に採用することができる。例えば、積層体を、互いに押圧するように対向配置された加熱ロールと加圧ロールとが互いに押圧するように接触して形成される接触部に挿通させることにより、画像及び磁気記録層と支持体とをある程度熱溶融させ熱融着させる通常のラミネート技法や、熱プレス技法が利用できる。
【0023】
なお、接合工程で実施される加熱処理によって、磁気記録層を構成する磁性材料層が、支持体の熱可塑性樹脂を含む面と熱融着して接着するため、磁気記録層と支持体との界面での剥離が抑制される。ここで、この加熱処理は、支持体の熱可塑性樹脂を含む面を構成する熱可塑性樹脂が熱融着できる温度(90℃以上130℃以下程度の範囲)で実施される。
【0024】
−剥離工程−
接合工程を経て得られた接合体については、接合体を構成する転写体部分の基体と熱融着層との界面を剥離する剥離工程が実施される。
剥離工程の実施方法は、特に限定されず、例えば、手作業で剥離してもよく、剥離爪などを用いて機械的に実施してもよい。なお、剥離工程を経て得られた媒体中に個別の画像が複数形成されている場合、この各画像毎に裁断し、所定サイズの複数の磁気情報記録媒体を得る。
【0025】
−磁気情報記録媒体の作製例−
次に、本発明の磁気情報記録媒体の作製例を図面を用いてより詳細に説明する。
図1は、本発明の磁気情報記録媒体の作製過程の一例を示す概略図であり、図1中、101は転写体、102は基体、104は熱融着層、106はトナー画像、108は磁気記録層、110は支持体、120は積層体、130は磁気情報記録媒体を表す。
【0026】
ここで、図1(C)に示す磁気情報記録媒体130は次のように作製される。まず、転写体101と、支持体110とを準備する(図1(A))。なお、図1中に示す転写体101は、基体102と、この基体102の片面に設けられた熱融着層104と、熱融着層104の所望の位置に配置されたトナー画像106および磁気記録層108とを有するものであり、基体102と熱融着層104との界面は離型性を有する。
次に、転写体101の熱融着層104が設けられた面(接合面)と、支持体110の片面(熱可塑性樹脂を含む面)に重ね合わせて、図1(B)に示すような積層体120を形成した後、不図示の加熱圧着手段によって積層体120の両面から加圧しながら加熱して、転写体101と支持体110とを加熱圧着する。
続いて、加熱圧着された積層体120(接合体)の基体102と熱融着層104との界面を剥離することによって、支持体110の少なくとも片面に熱融着層104が設けられ、支持体110および熱融着層104の界面に磁気記録層108およびトナー画像106を有する磁気情報記録媒体130を得ることができる。
【0027】
−磁気情報記録媒体作製装置−
次に、本発明の磁気情報記録媒体の作製に利用できる磁気情報記録媒体作製装置について説明する。
この場合、本発明に用いることのできる磁気情報記録媒体形成装置は、接合面に画像および磁気記録層を有する転写体と、基体とこの基体の少なくとも片面に支持体を保持する保持部材とを少なくとも有し、保持部材が設けられた面に支持体を保持する保持体とを、転写体の接合面と保持体により保持された支持体表面とが対面するように重ね合わせる重ね合わせ手段と、重ね合わされた転写体と支持体とに加熱処理(または、加熱処理と共に加圧処理)を行うことにより、転写体の接合面と支持体の熱可塑性樹脂を含む面とを接合する接合手段とを、少なくとも有するものであることが好ましい。
なお、上述した装置では、小判サイズの支持体を保持する保持体を用いているが、勿論、保持体の代わりに、A3やA4の定形サイズの大判の支持体を用いることも可能である。
以下、この磁気情報記録媒体形成装置について具体例を挙げてより詳細に説明する。
【0028】
図2は、本発明の磁気情報記録媒体の作製に用いられる磁気情報記録媒体形成装置の一例を示す概略模式図である。
図2に示す磁気情報記録媒体形成装置10は、重ね合わせ手段である丁合い装置12と接合手段である接合装置14(接合部)とを有し、丁合い装置12と接合装置14とは、例えば水平方向に互いに隣接するように配置されている。
【0029】
丁合い装置12は、(接合面に画像及び磁気記録層を有する)転写体20を収納する転写体収納部32と、転写体収納部32の下方に配置され、保持体22を収納する保持体収納部34と、保持体収納部34の接合装置14が配置された側に、保持体収納部34と隣接して配置された丁合い手段36(位置決め部)と、転写体収納部32の接合装置14が配置された側に設けられ、転写体収納部32から丁合い手段36へと転写体20を供給する搬送路40と、保持体収納部34の接合装置14が配置された側に設けられ、保持体収納部34から丁合い手段36へと保持体22を供給する搬送路42とを有する。
【0030】
搬送路40、42としては、表面が平滑な板状部材と、その表面を転写体20、保持体22を搬送させるための搬送ロールが設けられた構成であってもよく、また回転可能な無端ベルトで構成されていてもよい。
これらの搬送路40、42は、磁気情報記録媒体を形成する際に、丁合い手段36において、保持体22と転写体20とが重ね合わせられるように所定のタイミングで搬送ロールやベルトが回転し、転写体収納部32および保持体収納部34から、転写体20および保持体22を丁合い手段36に搬送する。
【0031】
保持体収納部34には、支持体が保持された保持体22が収納されると共に、通常の給紙装置に備えられているピックアップロールや給紙ロールが備えられ、給紙ロール等が回転し、丁合い手段36に保持体22を1個搬送する。
転写体収納部32には、接合面に所定の画像が例えば電子写真方式などを利用して形成されると共に、磁気記録層が形成された転写体20が収納されると共に、通常の給紙装置に備えられている送り出しロールや給紙ロールが備えられ、丁合い手段36に保持体22が排出された直後のタイミングで送り出しロールや給紙ロール等が回転し、丁合い手段36に転写体20を1枚搬送する。
【0032】
丁合い手段36は、搬送路40の転写体を排出する側の鉛直方向下方で、且つ、搬送路42の保持体22を排出する部分と同じ高さの位置に設けられている。また、転写体20表面の画像や磁気記録層が、保持体22に保持された支持体表面の所望の位置に対面するように、転写体と保持体22との位置を合わせて重ね合わせる位置決め手段が設けられている。
【0033】
位置決め手段の構成としては特に限定されるものではないが、例えば、図3および図4に示される構成が挙げられる。
図3および図4は、図2に示す磁気情報記録媒体形成装置に利用される位置決め手段の一例を説明するための模式図であり、図3が丁合い手段36を上側から見た場合の平面図を、図4が丁合い手段36の断面図(図3中の記号X1−X2間の断面図)を意味し、図中、61、61a、61b、62は基準壁、63,64は規制部材、70は受け、71は接続部を表す。
【0034】
丁合い手段36は、図中矢印で表される搬送方向(図2中、丁合い手段36に対して転写体収納部32、保持体収納部34が配置された側)に対して、4辺のうち2辺が直交する方形の受け70と、搬送方向下流側の辺に沿って配置された基準壁61と、当該辺と直交する2辺のうちの一方の辺に沿って配置された基準壁62と、受け70表面を矢印A方向(搬送方向と平行な方向)に不図示の駆動機構により移動可能に配置された規制部材63と、受け70表面を矢印B方向(矢印A方向と直交する方向)に不図示の駆動機構により移動可能に配置された規制部材64と、を含むものである。
【0035】
ここで位置決めは、搬送路40、42を経て受け70表面に、転写体20と保持体22とが重ね合わせられるように積層された積層体P(図3中、点線で示される部材)に対して、規制部材63,64を押し当てて、基準壁61,62に突き当てることにより実施する。具体的には積層体Pの直交する2辺のうちの一辺(第1の辺)に対して、規制部材63を押し当て、この状態で規制部材63を記号C(搬送方向下流側)の位置まで移動させて積層体Pの規制部材63に接する辺と対向する辺を基準壁61に突き当てると共に、第1の辺と直交する辺(第2の辺)に対して規制部材64を押し当て、この状態で規制部材64を基準壁62方向に移動させて積層体Pの規制部材64に接する辺と対向する辺を基準壁62に突き当てる。
このように2つの規制部材63、64および2つの基準壁61、62を組み合わせて用いることにより、積層体PのサイズがA4やA3サイズ等、様々であっても精度よく位置決めされた丁合いが可能である。
【0036】
なお、図3に示される基準壁61は、搬送方向に直交する位置に設けられているため、
丁合いが完了し、必要に応じて実施される仮止めが終了した後に、積層体Pの搬送を妨げないように移動可能なことが必要である。
基準壁61にこのような機能を付与するためには、例えば、図4に示すように基準壁61が移動可能であることが好ましい。
例えば、図4(a)に示されるように、基準壁61は、矢印D方向(つまり、上下移動)に可動し、61aで示される箇所に移動することで、積層体Pの搬送方向下流側への搬送が可能となる。
また、図4(b)に示されるように、基準壁61が、受け70の端部に接続部71を介して矢印E方向(つまり、接続部71を中心とした円周方向)に可動可能に接続されている場合は、基準壁61を61bで示される箇所に移動することで、積層体Pの搬送方向下流側への搬送が可能となる。
【0037】
丁合い手段36には、保持体22と転写体20とを重ね合わせた積層体を仮止めする仮止め装置が設けられていてもよい。この仮止め装置としては、例えば、ヒータなどにより加熱されるよう金属からなる一対の突片で構成されたものが利用でき、この装置を利用すれば加熱された一対の突片により積層体を挟むことで、転写体20と、保持体22および/または保持体22により保持された支持体とが熱により溶着され、積層体が仮止めされる。
【0038】
ここで接合装置14は、例えば、一対の無端ベルトを用いた構成を有する装置が利用できる。
図中に示す接合装置14は、外周面同士が互いに押圧するように接触して配置された一対の無端ベルト46と、各々の無端ベルト46を張架するように、丁合い装置12側に配置された1対の加熱・加圧ロール48およびこの加熱・加圧ロール48の丁合い装置12が配置された側と反対側に配置された1対の張架ロール50と、1対の張架ロール50の加熱・加圧ロール48が配置された側と反対側に配置された磁気情報記録媒体排出部56とを有する。
【0039】
なお、接合装置14の構成は図中に示す構成にのみ限定されるものではなく、従来公知の各種ラミネート技法や、熱プレス技法を実施できる構成を有する装置であればいずれも利用できる。
【0040】
次に、図2に示す磁気情報記録媒体形成装置による磁気情報記録媒体の形成プロセスを説明する。
まず、丁合い装置12において、保持体22が、保持体収納部34から搬送路42を経て、丁合い手段36へと供給され、丁合い手段36の所定の位置へセットされる。
次いで、転写体20が、転写体収納部32から搬送路40を経由して丁合い手段36へと供給される。ここで、搬送路40排出部を出た転写体20は、画像が設けられた面が下側を向くように、その自重により丁合い手段36へ供給され、保持体22と重ね合わせられる(重ね合わせ工程)。
この重ね合わせに際しては、転写体20表面の画像や磁気記録層が、保持体22に保持された支持体表面の所望の位置に対面するように、転写体と保持体22との位置を合わせて重ね合わせられる。
【0041】
次に、丁合い手段36で重ね合わされた転写体20と保持体22とから構成される積層体は、仮止め装置により仮止めが施された後、不図示の搬送手段により接合装置14へ搬送される。
【0042】
次に、接合装置14において、転写体20及び保持体22から構成される積層体を、一対の無端ベルト46の外周面同士が接触する接触部を通過させて加熱・加圧処理することにより転写体20と支持体とを接合し、接合体を得る(接合工程)。
接触部を通過した接合体は、磁気情報記録媒体排出部56に排出される。続いて、この接合体から、基体を剥離すると共に、保持体22から取り外すことにより画像が形成された磁気情報記録媒体を得ることができる。
【0043】
−転写体−
本発明に用いられる転写体は、基体とこの基体の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを有するものであり、基体表面に、必要に応じて1層以上の中間層と熱融着層とをこの順に積層した構成であってもよい。また、転写体に形成される画像は、熱融着層に形成される。
ここで、熱融着層に形成される画像は公知の記録方式により形成されたものであれば特に限定されない。例えば、熱融着層表面に固体状や液体状の画像形成材料を付与する方法により形成された画像であってもよく、この場合、代表的には、電子写真法やインクジェット記録法により形成された画像が挙げられる。さらに、熱融着層が、熱や光などの外部刺激の付与によって変色または発色する機能を有する場合には、外部刺激の付与により熱融着層表面を変色または発色させることにより形成された画像であってもよく、この場合、代表的には、感光記録法や感熱記録法、感光感熱記録法により形成された画像が挙げられる。
【0044】
以下、本発明に用いられる好適な転写体について、転写体表面に設けられる画像が一例として電子写真法により形成されたものであることを前提としてより詳細に説明する。
【0045】
本発明に用いられる転写体においては、電子写真法により形成される画像の転写性を良好なものとするために熱融着層の表面抵抗率が、23℃、55%RHにおいて、1.0×10以上3.2×1013Ω以下の範囲であることが好ましく、1.0×10以上1.0×1011Ω以下の範囲であることが好ましい。
【0046】
上記表面抵抗率が1.0×10Ωに満たないと、特に、高温高湿時に画像受像体として使用される転写体の抵抗値が低くなりすぎる。このため、電子写真装置内にて転写体表面へ未定着の画像(トナー像)を転写する際にトナー像が乱れる場合がある。また、表面抵抗率が3.2×1013Ωを超えると、画像受像体として使用される転写体の抵抗値が高くなりすぎ、電子写真装置内にてトナー像を転写体表面に移行できず、転写不良による画像欠陥が発生する場合がある。
【0047】
また、同様の理由により熱融着層が基体の片面のみに設けられる場合には、基体の熱融着層が設けられない側の基体表面の23℃、55%RHにおける表面抵抗率は、1.0×10Ω以上1.0×1013Ω以下の範囲であることが好ましく、1.0×10Ω以上1.0×1011Ω以下の範囲であることが好ましい。
【0048】
そして、転写体の23℃、55%RHにおける表裏面の表面抵抗率差は、4桁以内であることが好ましく、3桁以内であることがより好ましい。表裏面の表面抵抗率差が4桁を超えると、トナーの転写不良が起こりやすくなり画像の劣化を引き起こす場合がある。尚、表面抵抗率差が4桁以内とは、それぞれの表面抵抗率を常用対数で表したとき、その常用対数値の差が4以内であることを意味する。
【0049】
尚、表面抵抗率はJIS K 6911における二重リング電極法に準拠した方法で測定し、同時に提示されている計算式に則ることにより求めたものである。より具体的には、(株)アドバンテスト社製 デジタル超高抵抗/微小電流計R8340に円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を接続したものに、23℃、55%RHの環境下で、印加電圧1000Vで60秒後の電流値を基にJIS K 6911に規定されている計算式から求めた。
【0050】
熱融着層の表面抵抗率を1.0×10Ω以上1.0×1013Ω以下の範囲内に制御するにあたっては、熱融着層中に帯電制御剤を含有させることが好ましい。該帯電制御剤としては、例えば高分子導電剤、界面活性剤や、導電性の金属酸化物粒子等を用いることができる。
【0051】
また、熱融着層のビカット軟化温度は、70℃以上130℃以下の範囲であることが好ましく、80℃以上120℃以下の範囲であることがより好ましい。少なくとも熱融着層は前記のビカット軟化温度を有することが好ましい。
ビカット軟化温度が130℃を超えると、支持体に転写体を十分密着・接着させることができない場合がある。また、ビカット軟化温度が70℃に満たないと、密着・接着は十分であっても熱融着層が軟化しすぎてしまい、画像に欠陥(画像流れ)が発生したりしてしまう場合がある。
【0052】
ここで、ビカット軟化温度とは、熱可塑性樹脂の軟化温度評価の一方法から測定されたものであって、その測定方法は、成形されたプラスチック材料の耐熱性を試験する方法として、熱可塑性樹脂に対しては、JIS K7206やASTM D1525、ISO306にその方法が規定されている。
本発明においては、厚さ2.5mmの試験片を用い、その表面に断面積が1mm2の針状圧子をセットし、この圧子に1kgの荷重を載せ、試験片を加熱する油槽の温度を50℃/hで上昇させていき、前記圧子が、試験片中に1mm進入したときの油温をビカット軟化温度とした。
【0053】
電子写真装置内での転写体の搬送をより良好なものとするために、熱融着層にはフィラーが含まれていてもよい。このフィラーの体積平均粒子径としては、0.1μm以上30μm以下であることが好ましいが、熱融着層膜厚を考慮すると、熱融着層膜厚の1.2倍以上が好ましい。大き過ぎるとフィラーが熱融着層から脱離して、転写体表面が摩耗損傷し易くなり、さらに曇り(ヘイズ度)が増大する場合がある
【0054】
フィラーの形状としては、球状粒子が一般的であるが、板状、針状、不定形状であってもよい。また、フィラーを構成する材料としては公知の樹脂材料や、無機材料が利用できる。
【0055】
基体としては、特に限定されないが、プラスチックフィルムを代表的に用いることができる。この中でも、OHPフィルムとして使用できる光透過性のあるフィルムである、ポリアセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリフェニレンエーテルフィルム、シクロオレフィンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂フィルムなどを用いることが好適できる。また、紙(普通紙、コート紙等)、金属(アルミニウム等)、セラミックス(アルミナ等)も用いることができる。
【0056】
なお、基体の熱融着層が設けられる側の面は、表面粗さ(中心線平均粗さRa)で1μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。表面粗さ(中心線平均粗さRa)が1μmを超える場合には、高い光沢度を得ることができなくなる場合がある。
【0057】
また、転写体は、基体の同一面上に、熱融着層を含む少なくとも1層の層が設けられており、これら層の内の少なくとも1層が硬化性樹脂を含有する層であることが特に好ましい。この場合、この硬化性樹脂を含有する層は、基体、又は基体側に隣接する層から、剥離可能な層である。
このように硬化性樹脂を含有する層が、基体又は基体側で隣接する層から剥離することにより、電子写真法で形成された画像を支持体上に転写させた場合に、基体又は基体側に隣接する層から、硬化性樹脂を含有する層が剥離し、支持体上に転写された画像および磁気記録層を覆い、この画像および磁気記録層を保護することとなる。
【0058】
この転写体における硬化性樹脂を含有する層と、基体又は硬化性樹脂を含有する層が基体側に接する層との界面での剥離力は、0.098N/cm以上4.90N/cm以下(10gf/cm以上500gf/cm以下)であることが好ましく、0.196N/cm以上3.92N/cm以下(20gf/cm以上400gf/cm以下)であることがより好ましく、0.490N/cm以上2.41N/cm以下(50gf/cm以上250gf/cm以下)であることが更に好ましい。
【0059】
剥離力が0.098N/cm(10gf/cm)未満であると、離型層と硬化性樹脂を含有する層とが剥がれやすくなり、画像定着時に、電子写真装置の定着器に硬化性樹脂を含有する層が転移してしまったり、あるいは磁気情報記録媒体を作製するときに前記硬化性樹脂を含有する層と、基体又は基体側で隣接する層との界面ですべりを生じ、最終的に画像が乱れて転移されてしまうことがある。一方、剥離力が4.90N/cm(500gf/cm)を超えてしまうと、部分的に硬化性樹脂を含有する層が基体又は基体側で隣接する層の表面に残ることがあるため、これが磁気情報記録媒体表面の欠陥の発生を招いてしまう場合がある。
ここで、剥離力とは、JIS規格Z0237の粘着力の測定における180度引き剥がし粘着力に準じた測定で行った時の測定値である。
【0060】
また、熱融着層(あるいは、剥離工程後に、熱融着層と共に支持体側に残留する全ての層)の厚みは5μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましく、7μm以上10μm以下の範囲内であることがより好ましい。
熱融着層の厚みが20μmを超えると、磁気情報記録媒体の熱融着層が設けられた側の面から磁気記録層までの媒体厚み方向の距離が厚くなり過ぎるために、媒体表面からの磁気情報読み取り手段による磁気情報の読み取り出力が低くなり、読み取りエラー等が発生しやすくなる場合がある。一方、熱融着層の厚みが5μm未満であると、熱融着層と支持体との界面に設けられた画像や磁気記録層を保護することが困難となる場合がある。
【0061】
基体の厚さは、50μm以上200μm以下の範囲が好ましく、75μm以上150μm以下の範囲がより好ましい。厚さが50μmに満たないと、画像形成装置で搬送不良となる場合があり、200μmを超えると接合工程で画質劣化を招く場合がある。
【0062】
転写体のサイズは特に限定されないが、支持体がA4やA3などの定形サイズである場合には、これと同様のサイズであることが好ましい。また、上述したように小判サイズの支持体と保持体とを用いて磁気情報記録媒体を作製する場合は、転写体のサイズは、保持体と同じサイズか、あるいは、支持体と同じサイズであることが好ましい。
なお、保持体を用いる場合には、転写体および保持体の4隅が一致するように重ね合わせた際に、保持体に保持された支持体表面の所望の位置に画像が対面するように、転写体表面に画像を形成しておく。また、このような位置合わせを容易にするために、転写体の表面には、保持体に保持された支持体の輪郭線や、この輪郭線よりも若干外側を示す線、あるいは、支持体の4隅を示すマークなどが画像と共に形成されていることが望ましい。
【0063】
−第一の転写体−
次に、上述した転写体の各形態について説明する。
転写体の第一の形態(以下、「第一の転写体」という場合がある。)は、基体の熱融着層が設けられている面に、この基体側から離型層、硬化性樹脂層、及び熱融着層が順次設けられている構成を有する。
【0064】
第一の転写体では、硬化性樹脂層が上述した硬化性樹脂を含有する層であり、硬化性樹脂層が基体側に隣接する層である離型層から剥離可能な層である。つまり剥離工程では、離型層から硬化性樹脂層が剥離し、硬化性樹脂層および熱融着層が、支持体上に転写された画像および磁気記録層を覆い、この画像および磁気記録層を保護することとなる。
【0065】
第一の転写体は、熱融着層が硬化性樹脂層上に設けられているため、熱融着層上にトナーで画像を形成する場合、トナーが広がらず、解像度が向上する。
【0066】
一方、第一の転写体における熱融着層は、熱可塑性樹脂と、熱融着層の膜厚よりも大きい体積平均粒子径を有する粒子と、を含有していることが好ましい。この場合、熱融着層には、この層の厚みより大きい粒子が含まれており、離型層は後述する画像形成材料を支持体に良好に転写が可能である上に、電子写真方式での画像定着特性にも優れたものである。
また、上述したように、画像や磁気記録層の保護および磁気記録情報の読み取りエラー防止という観点から、熱融着層と硬化性樹脂層との厚みの総和は5μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましいが、この条件を満たした上で熱融着層の厚みは、5μm以上12μm以下の範囲内であることが好ましく7μm以上10μm以下の範囲内がより好ましい。熱融着層の厚みが上記範囲内であれば画像を熱融着層の膜厚方向に埋め込むことで、画質の低下がおこり難くなる上に、画像を保護する効果も得られる。
【0067】
離型層には離型性材料が含まれる。これにより、転写工程において離型層と硬化性樹脂層との界面での剥離性を確保することができる。
離型性材料としては、特に制限されないが、シリコーン系ハードコート材料が利用できる。このシリコーン系ハードコート材料には、シラン系組成物を含む縮合物樹脂や、このシラン系組成物を含む縮合物樹脂とコロイダルシリカ分散液との混合物からなる材料が含まれていてもよい。
【0068】
第一の転写体における硬化性樹脂層は、磁気情報記録媒体の片側表面の層を構成し、画像や磁気記録層を保護する機能を担うことになる。
この機能を発揮するためには、硬化性樹脂層は傷や薬剤などに強い必要がある。よって既述したシリコーン系ハードコート材料などの光硬化性や熱硬化性の樹脂を含むことが好ましい。これら以外にも、必要に応じて種々の材料が添加できるが、硬化性樹脂層を構成する樹脂全体のうち、シリコーン系ハードコート材料は0.5質量%以上98質量%以下の範囲で含まれることが好ましく、1質量%以上95質量%以下の範囲で含まれることがより好ましい。シリコーン系ハードコート材料の含有量が0.5質量%に満たないと、転写工程において離型層と硬化性樹脂層との界面での剥離が困難となる場合があり、98質量%を超えると、画像の転写や定着状況が悪くなり、画質劣化を引き起こす場合がある。
【0069】
熱融着層には、樹脂が含まれる。樹脂としては例えばポリエステル樹脂やスチレンアクリル樹脂が1種以上用いられる。一般的に、ポリエステル樹脂やスチレンアクリル樹脂は画像形成材料用として用いられるものであるため、これと同系統の樹脂を熱融着層に含有させることにより、転写体表面への画像形成材料の定着性を適性に制御することができる。なお、ポリエステル樹脂としては、一般的なポリエステル樹脂の他に、例えばシリコーン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステルなどを用いてもよい。
また、熱融着層は、電子写真装置により画像を定着する際に、電子写真装置の定着部材への付着、巻き付きを防止するために、天然ワックスや合成ワックス、あるいは離型性樹脂、反応性シリコーン化合物、変性シリコーンオイルなどの離型剤を含有していてもよい。
【0070】
−第二の転写体−
転写体の第二の形態(以下、「第二の転写体」という場合がある。)は、基体の表面に熱融着層が設けられており、熱融着層は、硬化性シリコーン樹脂と、硬化性シリコーン樹脂以外の樹脂とを含むものである。
第二の転写体では、熱融着層が硬化性樹脂を含有する層であり、熱融着層が基体から剥離可能な層である。これは熱融着層を構成する樹脂が、硬化性シリコーン樹脂と硬化性シリコーン樹脂以外の樹脂とを含む混合樹脂であるため、基体からの剥離が可能となり、電子写真法で形成された画像を支持体上に転写させた場合に、熱融着層が基体から剥離し、支持体上に転写された画像および磁気記録層を覆い、この画像および磁気記録層を保護することとなる。また、硬化性シリコーン樹脂は強靭であるため、磁気情報記録媒体の耐傷性にも優れる。
【0071】
硬化性シリコーン樹脂としては公知の硬化性シリコーン樹脂が利用できるが、定着時における熱融着層と画像との相溶を促進するために、トナーの結着樹脂として用いられるアクリル樹脂やポリエステル樹脂と相溶性に優れる硬化性シリコーン樹脂を含んでいることが好ましい。また、硬化性シリコーン樹脂以外の樹脂としては、同様の理由からアクリル樹脂やポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0072】
熱融着層に含まれる前記硬化性シリコーン樹脂について、以下に説明する。
一般に、シリコーン樹脂は、その分子構造により、シリコーンオイルやシリコーンゴム等の材料となる直鎖状構造をとるシリコーン樹脂と、3次元に架橋した構造のシリコーン樹脂とに分類される。また、離型性、接着性、耐熱性、絶縁性及び化学的安定性等の諸性質は、シリコン原子に結合している分子(有機分子)やその重合度等によって決定される。
【0073】
硬化性シリコーン樹脂は、3次元に架橋した構造のシリコーン樹脂が好ましい。3次元に架橋した構造のシリコーン樹脂は、通常、多官能性(3官能性、4官能性)単位から重合され、架橋構造を持つ。
尚、直鎖状構造をとるシリコーン樹脂には、分子量が低く、シリコーンオイルとして、絶縁油、液体カップリング、緩衝油、潤滑油、熱媒、撥水剤、表面処理剤、離型剤、消泡剤等に利用されるものや、加硫剤等を添加後、加熱硬化によって、分子量(シロキサン単位)5000〜10000程度に重合されたシリコーンゴム等がある。
【0074】
硬化性シリコーン樹脂は、その分子量単位によって、有機溶媒に溶解可能で比較的低分子量であるシリコーンワニスと、高重合度のシリコーン樹脂等とに分類される。また、前記硬化性シリコーン樹脂は、生成段階における硬化反応によって、縮合型、付加型、輻射線型(紫外線硬化型、電子線硬化型)等に分類される。また、塗布形態によっては、溶剤型、無溶剤型等に分類される。
【0075】
熱融着層が硬化性シリコーン樹脂を含有することが必要である理由としては、以下の通りである。即ち、先ず、硬化性シリコーン樹脂は、Si−O結合に起因して、表面エネルギーが低いため、本質的に、離型性、非相溶性に優れる。しかし、その硬化条件等を制御することにより、優れた接着性をも発現させることが可能であるため、画像剥離性と、画像定着性とを両立した磁気情報記録媒体を得ることが可能となるためである。
【0076】
硬化性シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、公知の硬化性シリコーン樹脂の中から選択することができるが、以下の理由により、硬化性アクリル変性シリコーン樹脂(硬化性アクリルシリコーン樹脂)が特に好ましい。
硬化性アクリルシリコーン樹脂は、画像形成材料として通常用いられている、スチレン−アクリル樹脂や、ポリエステル樹脂と化学的親和性が高いアクリル鎖を分子中に含み、離型性を発現させるシリコーン樹脂部分を併せ持つ。したがって、一分子中に、トナーと接着し易い部分と、接着しにくい部分が存在する。また、これらが均質に相溶していることにより、分子オーダーで、画像剥離性及び画像定着性が発現される。
また、硬化性アクリルシリコーン樹脂においては、アクリル鎖とシリコーン鎖との比率、その硬化条件及び後述の硬化性シリコーン化合物及び変性シリコーンオイルの添加量等を制御することにより、画像定着性や画像剥離性を更に自由に制御することが可能である。
【0077】
硬化性シリコーン樹脂としては、熱硬化型シリコーン樹脂も特に好ましく用いることができる。
熱硬化型シリコーン樹脂は、光硬化型として知られている前記アクリルシリコーン樹脂に比べてその表面硬度が低く、その分画像形成材料が受像層に包み込まれる状態となりやすく、画像定着性に優れる傾向がある。
また、前記熱硬化性シリコーン樹脂はアクリルシリコーン樹脂などに比べて離型性が高く、その結果、画像剥離性にも優れる。
また、熱硬化性シリコーン樹脂は、シリコーン成分と非シリコーン成分との混合系の場合、この比率、その硬化条件及び硬化性シリコーン化合物及び変性シリコーンオイルの添加量等を制御することにより、画像定着性や画像剥離性を更に自由に制御することが可能である。
【0078】
アクリルシリコーン樹脂と熱硬化性シリコーン樹脂とを混合しても好ましく用いることができる。前記アクルリシリコーン樹脂と熱硬化性シリコーン樹脂を混合する場合、その混合割合により両者の中間の性能を示すことになり、この比率、その硬化条件及び硬化性シリコーン化合物及び変性シリコーンオイルの添加量等を制御することにより、画像定着性や画像剥離性を更に自由に制御することが可能である。
【0079】
硬化性シリコーン樹脂としては、例えば、縮合型、付加型及び紫外線硬化型に分類すると、以下のものが好適に挙げられる。
【0080】
縮合型の硬化性シリコーン樹脂としては、例えば末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンのなどのポリシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリメチルハイドロジェンシロキサン等を配合し、有機スズ触媒等の有機酸金属塩やアミン類等の存在下で加熱縮合して合成した硬化性シリコーン樹脂や、水酸基、アルコキシ基等の反応性の官能性基を末端に持つポリジオルガノシロキサンを反応させて合成した硬化性シリコーン樹脂や、3官能性以上のクロロシラン又はこれらと1、2官能性のクロロシランとの混合物等を加水分解したシラノールを縮合して合成したポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
尚、縮合型は、形態的には、溶液型とエマルジョン型とに分類され、そのいずれも好適に使用することができる。
【0081】
付加型の硬化性シリコーン樹脂としては、例えばビニル基を含有するポリジメチルシロキサンのなどのポリシロキサンをベースポリマーとし、架橋剤としてポリジメチルハイドロジェンシロキサンを配合して、白金触媒の存在下で反応・硬化させて合成した硬化性シリコーン樹脂等が挙げられる。
尚、付加型は、形態的には、溶剤型、エマルジョン型及び無用剤型に分類され、そのいずれも好適に使用することができる。
【0082】
紫外線硬化型の硬化性シリコーン樹脂としては、例えば光カチオン触媒を利用して合成した硬化性シリコーン樹脂や、ラジカル硬化機構を利用して合成した硬化性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0083】
また、ケイ素原子と結合した水酸基又はアルコキシ基等を有する低分子量ポリシロキサンと、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン又はメラミン樹脂等とを反応させて得られる変性シリコーン樹脂等も好適に挙げられる。これらの硬化性シリコーン樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
熱融着層に用いる硬化性シリコーン樹脂の分子量としては、重量平均分子量で、10,000以上1,000,000以下が好ましい。また、硬化性シリコーン樹脂における全有機基中のフェニル基の割合としては、0.1モル%以上50モル%以下が好ましく、官能性としては、1以上4以下が好ましい。
【0085】
硬化性シリコーン樹脂の熱融着層における含有量としては、30質量%以上100質量%以下が好ましく、50質量%以上100質量%以下がより好ましい。含有量が、30質量%未満の場合には、離型性能が発揮できないことがある。
【0086】
硬化性シリコーン樹脂以外の樹脂としては、トナーとの相溶性に優れるアクリル樹脂やポリエステル樹脂が好ましく用いられるが、これ以外の熱溶融性樹脂や硬化性樹脂なども用いることができる。
硬化性シリコーン樹脂以外の樹脂としてのアクリル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が50℃以上120℃以下の範囲であることが好ましく、60℃以上105以下℃の範囲であることがより好ましい。
【0087】
また、熱融着層は、硬化性シリコーン樹脂以外の樹脂としてのアクリル樹脂やポリエステル樹脂の他に、必要に応じて、他の樹脂を併用することもできる。
【0088】
熱融着層は、画像の定着時、定着部材への付着、巻き付きを防止するためには、定着部材への低付着性材料である天然ワックスや合成ワックス、あるいは離型性樹脂、反応性シリコーン化合物、変性シリコーンオイルなどを含有することが好ましい。
【0089】
−第三の転写体−
転写体の第三の形態(以下、「第三の転写体」という場合がある。)は、基体の熱融着層が設けられている面に、基体側から離型層及び熱融着層が順次設けられており、熱融着層は、硬化性シリコーン樹脂を含有するものである。
第三の転写体は、熱融着層が硬化性樹脂を含有する層であり、熱融着層が基体側に隣接する層である離型層から剥離可能な層である。
【0090】
第三の転写体は、離型層を有するため、剥離工程において、離型層から熱融着層が剥離し、この熱融着層が支持体上に転写された画像および磁気記録層を覆い、画像および磁気記録層を保護することとなる。また、熱融着層が含有する硬化性シリコーン樹脂は強靭であるため、画像を覆うことにより耐傷性にも優れる。
【0091】
第三の転写体では、熱融着層において、硬化性シリコーン樹脂と、硬化性シリコーン樹脂以外の樹脂とを含む混合樹脂の代わりに、硬化性シリコーン樹脂のみを用い、さらに、基体表面に離型剤層と熱融着層とをこの順に設けた構成とした以外は、第二の転写体と同様の構成であり、好適な態様も同様である。
【0092】
また、第三の転写体において、熱融着層に用いられる硬化性シリコーン樹脂は、第二の転写体において、熱融着層に用いられる硬化性シリコーン樹脂と同様であり、好ましい態様も同様である。 さらに、第三の転写体における離型層は、第一の転写体における離型層と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0093】
−第四の転写体−
転写体の第四の形態(以下、「第四の転写体」という場合がある。)は、基体の少なくとも一方の面に、熱融着層が設けられており、この熱融着層は、光硬化性樹脂を含有し、自己修復性を有するものである。なお、基体表面に、必要に応じて離型層を設け、その表面に熱融着層を設けた構成とすることもできる。
第四の転写体は、熱融着層が前記硬化性樹脂を含有する層であり、この熱融着層が基体又は基体側に隣接する層(離型層)から剥離可能な層である。
【0094】
ここで、「自己修復性を有する熱融着層」とは、以下の性質を有する熱融着層のことをいう。自己修復性を有するとは、23℃、相対湿度55%の雰囲気下で、10cm×10cmのカラーOHPフィルム(カラーOHPフィルムHG)を両面テープで測定台に固定し、この上に10cm×10cmの被測定物を熱融着層側を内側にして重ね合わせ、この上に500gの重りを載せ、被測定物のみを水平に10cm動かす行為を100回繰り返すことにより生じた傷の有無を、スガ試験機(株)製、ヘーズメーター HGM−2を用いてヘイズ測定した値であり、上述の一連の動作の前後のヘイズ値の差が10%以内である場合をいう。
【0095】
ヘイズ値の差が10%以内であると、傷により生じた表面光散乱が目立ち難いため好ましい。ヘイズ値の差は5%以内であることが好ましく、3%以内であることがより好ましい。
【0096】
第四の転写体は、剥離工程において、熱融着層が基体又は離型層(離型層を有する場合)から剥離し、支持体上に転写された画像および磁気記録層を覆い、この画像および磁気記録層を保護することとなる。また、熱融着層は自己修復性を有するため耐傷性にも優れる(傷が目立たない)。
【0097】
第四の転写体における熱融着層は、以下の光硬化性樹脂を含有するため、自己修復性を有する。
この光硬化性樹脂は、光重合性モノマーと光硬化開始剤とを含有する組成物であり、紫外線等の電磁波を照射することにより硬化して、自己修復性を有する硬化物となるものであり。光硬化開始剤は光エネルギーを吸収することによりそれ自身が励起状態となり、光重合性モノマーの重合反応を開始させるラジカルを発生させるものである。
【0098】
光重合性モノマーの反応基としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、メルカプト基、アミノ基等が挙げられるが、特に反応性が高いことからアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましく用いられる。
【0099】
光重合性モノマーの具体例としては、例えば不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルアクリレート、アルキッドアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリエン・ポリチオール系スピラン、アミノアルキッド、ヒドロキシエチルアクリレート、ビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、透明性や光硬化時の収縮率が低いことよりウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレートが好ましく用いられる。また、これらのモノマーは2種以上を併用することもできる。
【0100】
ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレートとしては、例えば無黄変ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。無黄変ポリイソシアネート化合物としては、4,4‘―メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0101】
光硬化開始剤としては、例えばベンゾイルエーテル、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパンー1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタンー1−オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、2−クロロチオキサントン、ミヒラーケトン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、9,10−フェナントレンキノン、9,10―アントラキノンなどが挙げられる。これらの光硬化開始剤は、2種以上を併用することもできる。
【0102】
光硬化開始剤の添加量は、光重合性モノマーに対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好適であり、0.2質量%以上5質量%以下がより好適である。さらに、光硬化性樹脂に対して光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤を添加してもよい。
【0103】
光硬化性樹脂を硬化させるための光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線レーザ、無電極放電ランプ、電子線、X線などがあるが、硬化反応を起こさせるものであればどれでもよい。
【0104】
第四の転写体は、上述の光硬化性樹脂と共に、この光硬化性樹脂以外の樹脂を併用することも好適である。光硬化性樹脂以外の樹脂としては硬化性シリコーン樹脂が挙げられる。この硬化性シリコーン樹脂は、第二の転写体において、熱融着層に用いられる硬化性シリコーン樹脂と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0105】
第四の転写体における光硬化性樹脂、硬化性シリコーン樹脂以外の成分は、第三の転写体における硬化性シリコーン樹脂以外の成分と同様である。また、第三の転写体における離型層は、第一の転写体における離型層と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0106】
−支持体−
本発明に用いられる支持体は、少なくとも一方の面が熱可塑性樹脂を含むものであれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂からなるプラスチックシートであることが最も好ましい。なお、支持体が2以上の層から構成される場合は、少なくとも一方の面を構成する層が熱可塑性樹脂を含む層であり、その他の層は、熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を含む樹脂層であってもよいが、紙、金属、セラミックなどから構成される層であってもよい。
なお、熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂が利用できるが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、塩化ビニル、アセテート、三酢酸セルローズ、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、セロハンなどがあり、中でもPETやポリエステルが好ましく用いられる。特に、PETのエチレングリコール成分の半分前後を1,4−シクロへキサンメタノール成分に置き換えた変性PET(PETG)や二軸延伸ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0107】
支持体は不透明であることが好ましく、必要に応じて、顔料や染料を用いることにより着色されていてもよい。なお、着色する場合、支持体は白色であることが好ましい。
【0108】
支持体の厚みとしては特に限定されないが、50μm以上5000μm以下の範囲内が好ましく、100μm以上1000μm以下の範囲内がより好ましい。
【0109】
また、本発明に用いられる支持体はフィルム状であっても板状であってもよい。さらに、市販の電子写真用やインクジェット用の記録紙などと異なり、手で容易に折り曲げることが出来ない程度の剛性を有することが好ましい。
【0110】
なお、本発明の磁気情報記録媒体は磁気記録層を有するために、磁気情報の読み取り(及び/または書き込み)に利用できるが、この他に、例えば、ICカードとしての機能も更に付加する場合には、支持体には、ICメモリ、アンテナ、外部端子等が予め埋め込まれてもよい。また、支持体にはホログラム等が別途印刷されていてもよい。
【0111】
−磁気テープ−
本発明に用いられる磁気テープは、離型フィルムと磁気記録層とから構成される。但し、この磁気記録層は、離型フィルムと接する面が無機磁性材料から構成される磁性材料層からなり、磁性材料層の離型フィルムが設けられた側と反対側の面に接着層が設けられたものである。すなわち、本発明に用いられる磁気テープは、離型フィルムと磁性材料層との間には比較的離型性の高い樹脂から構成される保護層が設けられないタイプのものである。
ここで、磁性材料層は、公知の無機磁性材料から構成されるものであれば特に限定されないが、例えば、γ−Fe2 3 、Fe3 4 、CrO2 、Fe、Fe−Cr、Fe−Co、Co−Cr、Co−Ni、MnAl、Baフェライト、Srフェライト等を用いることができる。γ−Feなどの磁性微粒子が分散される樹脂あるいはインキビヒクルとしては、ブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合体樹脂などが用いられ、必要に応じて、ニトリルゴムなどのゴム系樹脂あるいはウレタンエラストマーなどが添加される。また、接着層は、転写体の接合面に対して接着性を有するものであれば特に限定されないが、加熱によって溶融することにより接着性を発揮するような熱溶融性接着剤(例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂などの接着剤を単独または混合)から構成されることが好ましい。離型フィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ナイロン、セルロースジアセテート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等の樹脂フィルム、銅、アルミニウムなどの金属、紙、含浸紙などを単独であるいは組合せて複合体として用いることができる。
【0112】
なお、磁性材料層の厚みと接着層の厚みとの総和(磁気記録層の厚み)は、特に限定されるものではないが、実用上は1μm以上100μm以下の範囲内が好ましく、5μm以上20μm以下の範囲内が好ましい。また、磁気テープの形状は特に限定されるものではないが、通常は、帯状であることが好ましい。
このような磁気テープとしては市販のものが利用でき、例えば、ダイニック製:TSP407NR、TSP207NP3R、グリーンコーポレーション製:TAL N29等が挙げられる。
【0113】
−保持体−
本発明の磁気情報記録媒体の作製に際して利用される保持体は、基体と、該基体の少なくとも片面に支持体を保持する保持部材とを少なくとも有するものである。
【0114】
−基体−
ここで、保持体に用いられる基体は、磁気情報記録媒体を作製する装置により磁気情報記録媒体を形成する過程において機械的なハンドリングが容易なサイズおよび形状を有するものであることが好ましく、この観点からは保持体により保持しようとする支持体よりも大きいサイズを有するものであれば特に限定されないが、100×148mm〜64×521mmの範囲内の四角形状であることがより好ましく、A3(297×420mm)やA4(210×297mm)などの定型サイズであることが更に好ましい。
【0115】
また、基体の厚みは、基体の表面に設けられる保持部材の形状などにも依存するが、75μm以上500μm以下の範囲内であることが好ましい。基体の厚みが75μm未満では、保持体の剛性が不足して保持体が変形しやすくなるため、支持体が位置ずれを起こしたり、機械的ハンドリングが困難になる場合がある。また、基体の厚みが500μmを超える場合には、支持体へ裏面から熱が伝わりにくくなり、転写体と支持体との接合が不十分となる場合がある。
【0116】
基体を構成する材料としては、上述した厚み範囲内において、磁気情報記録媒体を形成する過程において支持体が位置ずれを起こしたり、機械的ハンドリングが困難とならない程度に保持体の剛性が確保できる材料であれば公知の材料が利用でき、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
例えば、無機材料としては、ステンレスや、アルミニウムなどの金属類が挙げられる。また、有機材料としては、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセタールなどの樹脂類や、檜などの木材類、また、紙なども挙げられる
【0117】
なお、保持部材が設けられていない基体の表面には、支持体が保持される領域が目視によって容易に把握できるように支持体が保持される領域の若干外側を示す線や支持体が保持される領域の四隅を示すマークなどが印刷されていることが好ましい。
【0118】
−保持部材−
保持部材には、基体の少なくとも片面に支持体を保持する保持部材が設けられる。
保持部材としては、磁気情報記録媒体を形成する過程において、支持体が保持体の基体平面方向に対してずれないように固定し続けることができる機能を有するものであれば特に限定されないが、基体表面に設けられた凸部材であることが特に好ましい。
この凸部材は、基体表面に設けられ、その側面が支持体の辺と接触することによって支持体を保持する機能を有するものである。よって、凸部材はこの機能が達成できるのであれば、基体平面方向の形状や配置位置は特に限定されないが、基本的には保持しようとする支持体の輪郭線に沿うように基体表面に設けられ、支持体の4辺のいずれにも接するように配置されることが好ましい。
【0119】
上述した凸部材は、基体表面の支持体が保持される領域を囲むように連続的に基体表面に設けられていてもよい。この場合、支持体の位置ずれをより確実に防止できる。これに加えて、支持体が熱可塑性樹脂を主成分としたプラスチックシートから構成される場合に、接合工程における加熱によって支持体平面方向に伸びて変形しやすい場合においても、これを抑制できる。それゆえ、磁気情報記録媒体の平面方向の伸び変形を抑制できる。
【0120】
なお、凸部材は、基体表面の支持体が保持される領域を囲むように連続的に基体表面に設けられる場合には、凸部材も保持体の剛性確保に寄与させることができる。よって、保持体全体の剛性を確保する上で、基体の厚みは75μm以上であることがより好ましい。
一方、凸部材が、基体表面の支持体が保持される領域を囲むように離散的に設けられる場合には、凸部材を保持体の剛性確保に寄与させることは困難である。よって、保持体全体の剛性を確保する上で、基体の厚みは150μm以上であることがより好ましい。
【0121】
凸部材の高さは、磁気情報記録媒体を形成する過程において、支持体が保持体の基体平面方向に対してずれないように固定し続けることができる機能が確保できるのであれば特に限定されないが、磁気情報記録媒体の端部周辺欠陥を抑制する観点からは、支持体の厚み−150μm以上支持体の厚み+60μm以下の範囲内であることが好ましく、支持体の厚み−100μm以上支持体の厚み以下であることがより好ましく、支持体の厚みと同一であることが最も好ましい。
【0122】
凸部材の高さが支持体の厚み−150μm未満では、転写体が保持体に保持された支持体表面に押し付けられた場合に、支持体の端部周辺に加わる押圧力が強くなりすぎ、磁気情報記録媒体の端部周辺の変形が発生してしまう場合がある。また、画像が、磁気情報記録媒体の端部周辺にまで形成される場合には端部周辺の変形に伴う当該端部周辺の画像延びが発生してしまう場合がある。
また、凸部材の高さが支持体の厚み+60μmを超えると、転写体が保持体に保持された支持体表面に押し付けられた場合に、支持体の端部周辺には転写体が接触できないため、画像が、磁気情報記録媒体の端部周辺にまで形成される場合には、磁気情報記録媒体の端部周辺の画像抜けが発生してしまう場合がある。
なお、キャッシュカードなどのカード類の作製に用いられる支持体の厚みは通常760μmであるため、この観点からは凸部材の高さは、上述の範囲内を満たすように、610μm以上820μmとすることが特に好適である。
【0123】
凸部材を構成する材料としては、転写体が保持体に押し付けられた場合に、変形して押し潰されないものであれば特に限定されず、例えば、基体を構成する材料と同様のものを用いることができる。なお、基体を構成する材料と凸部材を構成する材料とは同一であっても異なっていてもよい。
【0124】
一方、保持部材が凸部材から構成される保持体は、使い捨てでもよいが繰り返し利用できることが好ましい。しかし、転写体表面に設けられる画像がトナーやインクなどの固体状または液体状の画像形成材料からなる場合、保持体を繰り返し用いて磁気情報記録媒体を作製すると、凸部材表面にトナーなどの画像形成材料が付着して汚染されてしまうことがある。この汚染は、磁気情報記録媒体の端部周辺まで画像を設ける場合に特に起こりやすい。それゆえ、凸部材表面が画像形成材料で汚染されると、凸部材表面の画像形成材料が他の部材へ移着し、最終的には磁気情報記録媒体に形成される画像の画質劣化を招いてしまう場合がある。
例えば、磁気情報記録媒体を作製する装置内で、支持体を保持した状態の保持体を積層した状態で収納した場合に、凸部材表面の画像形成材料が、隣接する他の保持体の基体側に移着し、更に、当該他の保持体が搬送される際にこの保持体の基体側に接して配置された保持体に保持された支持体表面に再移着して支持体表面を汚染してしまうことなどが挙げられる。
【0125】
それゆえ、この問題の発生を抑制するために、凸部材の表面には離型層が設けられていることが好ましい。なお、離型層を構成する材料としては例えばポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体,テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体,テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体などのフッ素系樹脂やシリコーンゴムなどが好適に利用できる。
【0126】
なお、凸部材の表面には、支持体が保持される領域が目視によって容易に把握できるように支持体が保持される領域の若干外側を示す線や支持体が保持される領域の四隅を示すマークなどが印刷されていることが好ましい。
【0127】
一方、保持部材としては、上述した凸部材以外にも、両端が基体表面および/または端面に固定されたベルト部材なども用いることができる。このベルト部材は、ベルト部材と基体表面と隙間に支持体を挟持することによって、支持体が基体平面方向にずれないように保持することができる。なお、この機能を確実に発揮させるためには、例えば保持しようとする支持体の対向する2つの角部分が挟持できる位置にベルト部材を基体表面に配置することができる。また、保持体への支持体の装着や、保持体からの磁気情報記録媒体の取り外しを容易にするために、ベルト部材の片端あるいは両端が、基体に対して脱着可能であってもよい。
ベルト部材としては、例えば、樹脂フィルムや、ゴムバンドなどが利用できるが、120℃以上の耐熱性を有する材料から構成されることが好ましい。
一方、ベルト部材を基体に設けた保持体を用いて磁気情報記録媒体を形成する場合には、画像は、ベルト部材が位置する部分からある程度離れたところに形成することが好ましい。画像抜けの発生を防止するためである。
【0128】
また、保持部材は、1枚の支持体のみを保持できるように構成されたものであってもよいが、磁気情報記録媒体の生産性をより向上させるためには2枚以上の支持体を保持できるように構成されていることが好ましい。
【0129】
次に、保持体の具体例を説明する。図5は保持体の一例を示す平面図であり、保持体の保持部材が設けられた側の面について示したものである。図中、202が基体、204が凸部材(保持部材)、210、220、230、240が保持体を表し、斜線部は支持体が保持される領域を意味する。
ここで、図5(A)に示す保持体210は、基体202と、この基体202の表面に凸部材204が支持体が保持される領域を囲むように連続的に設けられたものであり、図5(B)に示す保持体220は、基体202と、この基体202の表面に「L字状」の4つの凸部材204が支持体が保持される領域の四隅に接するように設けられたものであり、図5(C)に示す保持体230は、基体202と、この基体202の表面に帯状の4つの凸部材204が支持体が保持される領域の4辺に接するように設けられたものである。
また、図5(D)に示す保持体240は、基体202と、この基体202の表面に円形の6つの凸部材204が支持体が保持される領域の4辺に接するように設けられており、ここで、支持体が保持される領域の2つの長辺に接するように各々2つの凸部材204が配置され、支持体が保持される領域の2つの短辺に接するように各々1つの凸部材204が配置されたものである。
【0130】
なお、図5には1枚の支持体が保持できる構成の保持体について示したが、これらの図に例示した保持体が平面方向に2次元的に配置された複数枚の支持体が保持できる構成の保持体であってもよい。以下にこの例を図示する。
図6は、保持体の他の例を示す平面図であり、最大で6枚の支持体が保持できる保持体ついて、保持体の保持部材が設けられた側の面について示したものである。
図中、260は保持体を表し、その他の符号や斜線部は、図5中に示したものと同様である。図6に示す長方形状の保持体260は、図5(A)に示す保持体210をひとつの単位とした場合に、短手方向に2単位、長手方向に3単位配列した構成を有するものである。
【0131】
また、図7は、保持体の断面構成の一例を示す断面図であり、具体的には図5(A)に示す保持体210の符号A−A間における断面構成について示したものである。図中、210Aは保持体、204Aは離型層、204Bは凸部材本体部分を表し、その他の符号は図5中に示したものと同様である。
図6に示される保持体210Aは、基体202表面の両端に、凸部材204が設けられており、この凸部材204は基体202表面に凸部材本体部分204Bと離型層204Aがこの順に積層された構成を有する。
【実施例】
【0132】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下の説明において「部」は「質量部」を意味する。
(実施例1)
<転写体1の作製>
−非接合面側層塗工液A−1の調製−
ポリエステル樹脂(綜研化学社製、フォレット4M、固形分30質量%)20部と架橋型アクリル微粒子(綜研化学社製、MX300、体積平均粒径:3μm)0.6部と帯電制御剤(日本油脂社製、エレガン264WAX)0.3部とを、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液80部に添加して十分撹拌し非接合面側層塗工液A−1を調製した。
【0133】
−離型層塗工液1の調製−
有機シラン縮合物、メラミン樹脂、アルキド樹脂を含むシリコーンハードコート剤(GE東芝シリコーン社製、SHC900、固形分30質量%)20部を、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液30部に添加して十分撹拌し離型層塗工液1を調製した。
【0134】
−熱融着層塗工液B−3の調製−
ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、バイロン290、ビカット軟化温度:72℃)20部と架橋型アクリル微粒子(綜研化学社製、MX−1000、体積平均粒径10μm)1部と帯電制御剤(日本油脂社製、エレガン264WAX)0.3部とを、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液80部に添加して十分撹拌し熱融着層塗工液B−3を調製した。
【0135】
−転写体1の作製−
基体としてPETフィルム(東レ社製、ルミラー100T60、厚み:100μm)を用い、この基体の片面に前記非接合面側層塗工液A−1をワイヤーバーを用いて塗布し、110℃で30秒乾燥させ、膜厚0.15μmの非接合面側層を形成した。この非接合面側層表面の表面抵抗率は8.2×10Ωであった。
また、この基体のもう一方の面(未処理面)に、前記離型層塗工液1をワイヤーバーを用いて同様に塗布し、120℃で30秒乾燥させ、膜厚0.5μmの離型層を形成した。続いて、この離型層上に、さらに熱融着層塗工液B−3をワイヤーバーを用いて塗布し、120℃で60秒乾燥させ、膜厚5μmの熱融着層を形成し、転写体1を作製した。この熱融着層が形成された面(接合面)の表面抵抗率は1.7×1010Ωであった。
【0136】
−磁気記録層の形成−
磁気記録層の形成には、帯状(210mm×7mm)の黒色の磁気テープ(ダイニック製:TSP207H INR)を用いた。
なお、この磁気テープは、離型フィルムと、この離型フィルムの片面に、無機磁性材料から構成され且つ離型フィルムと直接接触する磁性材料層およびこの磁性材料層の離型フィルムが設けられた側の面と反対側の面に配置された接着剤層から構成される磁気記録層を有するものである。
この磁気テープを転写体1接合面の所定の位置に配置して、100℃、10s、5kgf/cmで加熱処理した後、離型フィルムを剥離して、転写体1の接合面に磁気記録層を熱転写し、その後、転写体1をA4サイズ(210mm×297mm)に裁断した。
なお、磁気テープの熱転写および転写体の裁断は、裁断後の転写体の短手方向と帯状の磁気記録層の長手方向とを一致させ、且つ、裁断後の転写体の長手方向に対して等間隔に3本の帯状の磁気記録層が配列できるように実施した。
【0137】
−トナー画像の形成−
続いて、磁気記録層が形成された転写体接合面の所定の位置に、富士ゼロックス(株)社製カラー複写機DocuColor1256改造機によりベタ画像を含むカラーの鏡像画像を磁気記録層が形成された部分と重複しないように形成した。
この際、転写体を、その短手方向が給紙方向と一致するように複写機に供給した。その後、画像形成後の磁気記録層が形成された部分を目視により確認したところ、磁気記録層と転写体との間には気泡の混入は確認できず、見栄えは良好であった。
また、画像は、使用する支持体に相当するサイズ(85.6mm×54mm)の絵柄を、磁気記録層が形成された部分を除くように短手方向に等間隔に2つ、長手方向に等間隔に3つ配列するようにで合計6個形成した。
ここで、画像の形成に用いたマゼンタ、シアン、イエローおよびブラックの各色のトナーの溶融温度はいずれも130℃であり、定着は、転写体の表面温度が95〜100℃の範囲内となるように実施した。
なお、参考までに、転写体を、その短手方向が、給紙方向と直交するように複写機に供給したところ、磁気記録層と転写体との間には気泡の混入して見栄えが悪く、この転写体を用いて磁気情報記録媒体を作製しても品質上問題となるレベルであることが確認された。
【0138】
−保持体−
保持体は、個々の支持体を保持するために基体表面に設けられる保持部材が、図5(A)に示す配置を有し、この単位が図6に示すように6つ配置されたA4サイズ(297mm×210mm)のものを用いた。
この保持体は、断面構造が図7に示す構造を有するものであり、基体202がPET基材(厚み100μm)、凸部材本体部分204Bが85.65×54.05mmの窓穴が6つ設けられたステンレス板(厚み645μm)、離型層204Aがテフロン(登録商標)製のシート(日東電工社製、ニトフロンテープNo903UL、厚み100μm)からなり、ステンレス板の両面にそれぞれPET基材とテフロン(登録商標)製のシート(日東電工社製、ニトフロンテープNo903UL、厚み100μm)とを接着することにより作製したものである。
なお、保持体の窓穴は、上記の画像と磁気記録層とが形成された転写体を保持体と位置を合わせて重ね合わせた場合に、転写体に形成された個々の絵柄の輪郭線が、個々の窓穴(支持体を保持する領域)とに一致するように設けられている。
【0139】
−磁気情報記録媒体作製装置−
磁気情報記録媒体作製装置としては、上述した図2に示す磁気情報記録媒体作製装置を用いた。以下に詳細な条件を記載する。なお、この装置の丁合い手段36は図3および図4(a)に示す構成を有するものである。
【0140】
<カード(磁気情報記録媒体)の作製>
両面がPETG樹脂層で内部がPC(ポリカーボネイト)である3層構造の白色シート(三菱樹脂社製:ディアフィックスWHI、総厚み:740μm、PETG樹脂層のビカット軟化温度:85℃)を裁断して、縦横の長さが85.6mm×54mmの小判サイズの支持体を準備した。
【0141】
続いて、画像および磁気記録層が形成された転写体を転写体収納部32に、6枚の支持体を保持する保持体を保持体収納部34にセットし、転写手段における加熱温度を140℃、接合手段における1対の加熱・加圧ロール48間の荷重を5kN、無端ベルトの送り速度を10mm/sに設定した。
この設定条件で、磁気記録層の長手方向が、転写体および支持体の搬送方向と一致するように転写体収納部32と保持体収納部34とからそれぞれ転写体と保持体とを丁合い手段36へと供給することにより、接合体を作製した。続いて、得られた接合体を室温まで自然冷却した後に、接合体の基体と熱融着層とを剥離して図1(C)に示す態様のカード(磁気情報記録媒体)1を得た。
【0142】
(比較例1)
実施例1において、磁気記録層の形成に帯状(210mm×7mm)の黒色の磁気テープ(ダイニック製:TSP407NR)を用いた以外は、実施例1と同様にして図1(C)に示す態様のカード(磁気情報記録媒体)2を得た。
なお、この磁気テープは、離型フィルムと、この離型フィルムの片面に、離型フィルムと直接接触する保護層、この保護層の離型フィルムが設けられた側の面と反対側の面に配置された無機磁性材料から構成される磁性材料層およびこの磁性材料層の保護層が設けられた側の面と反対側の面に配置された接着剤層から構成される磁気記録層を有するものである。
【0143】
(剥離評価)
作製されたカード1およびカード2を各々12枚用いて、磁気カードリーダー(エリート社製MR321/PS)にカードを500回連続で通過させ、そのときの熱融着層と支持体との界面での剥離の発生状況を目視で観察した。結果を表1に示す。なお、表1に示す剥離評価の評価基準は以下の通りである。
○:評価した全てのカードで、剥離は確認されない。
△:評価した全てのカードのうち、少なくとも1枚以上のカードについて磁気記録層が配置された部分を中心に部分的な剥離が確認された。
×:評価した全てのカードのうち、少なくとも1枚以上のカードについて500回の連続通過テストが終了する前に、熱融着層と支持体との界面で著しい剥離が発生し、カードとして利用できなくなった。
【0144】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】図1は、本発明の磁気情報記録媒体の作製過程の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の磁気情報記録媒体の作製に用いられる磁気情報記録媒体形成装置の一例を示す概略模式図である
【図3】図2に示す磁気情報記録媒体形成装置に利用される位置決め手段の一例を説明するための模式図である。
【図4】図2に示す磁気情報記録媒体形成装置に利用される位置決め手段の一例を説明するための模式図である。
【図5】保持体の一例を示す平面図である。
【図6】保持体の他の例を示す平面図である。
【図7】保持体の断面構成の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0146】
10 磁気情報記録媒体形成装置
12 丁合い装置
14 接合装置
20 転写体
22 保持体
32 転写体収納部
34 保持体収納部
36 丁合い手段
40、42 搬送路
46 無端ベルト
48 加熱・加圧ロール
50 張架ロール
56 磁気情報記録媒体排出部
61,61a、61b、62 基準壁
63,64 規制部材
71 接続部
101 転写体
102 基体
104 熱融着層
106 トナー画像
108 磁気記録層
110 支持体
120 積層体
130 磁気情報記録媒体
202 基体
204 凸部材
204A 離型層
204B 凸部材本体部分
210、210A、220、230、240、260 保持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面が熱可塑性樹脂を含む支持体と、該支持体の少なくとも前記熱可塑性樹脂を含む側の面に設けられた熱融着層と、前記支持体と前記熱融着層との界面に配置された磁気記録層及び画像とを少なくとも備え、
前記磁気記録層が、磁性材料層と該磁性材料層の片面に設けられた接着剤層とから構成され、
前記磁性材料層側の面が前記支持体の前記熱可塑性樹脂を含む面と接触するように、前記磁気記録層が前記支持体と前記熱融着層との界面に配置されていることを特徴とする磁気情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−105346(P2008−105346A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292564(P2006−292564)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】