説明

神経活性の測定

本発明は、試料における神経活性を決定するための方法を提供する。本発明の方法は、インビボ試料及びインビトロ試料の両方の神経活性を決定するのに有用であり、神経伝達障害をもたらす神経学的病態を有する疑いがある被験体の診断情報を得るのに特に有用である。また、本発明では、本発明の方法での使用に適した化合物並びに本発明の方法の実施に有用な医薬組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経活性の測定に関する。詳細には、本発明は、活性化神経細胞を標的とし得る検出可能な標識で標識された化合物を使用して、神経活性を測定する方法に関する。本方法は、神経伝達障害に関連した病態の診断に用途を有する。
【背景技術】
【0002】
神経活性は電位開口型ナトリウムチャネル(VGSC)によって媒介され、膜電位の変化を契機としてナトリウムイオンを流入させることによって活性化電位を伝達する。活性化すると、VGSCは素早く(約1ミリ秒以内)閉じ、長期にわたる不活性化状態に入り、その後、それらの休止状態に戻る(閉じるが活性化可能である。)。不活性化状態を選択的に目標とする化合物が、従来技術で周知である。
【0003】
Shao et al[2004 J.Med.Chem.47 pp4277−4285]には、強力な状態依存性VGSC遮断薬であるフェノキシフェニルピリジン化合物が開示されている。この化合物の2種について、有痛性ニューロパシーのChungインビボラットモデルで試験をし、化合物が用量依存的な手法で触覚性異痛症を逆行させたことが実証された。したがって、これらの化合物は、神経因性疼痛の治療に可能性があると結論付けられた。Yang et al[2004 J.Med.Chem.47 pp1547−1552]には、やはり強力な状態依存性VGSC遮断薬である一群の3−(4−フェノキシフェニル)ピラゾールが開示されている。これらの化合物の1種を、Chungモデルで試験した。化合物は、カルバメゼピン、即ち神経因性疼痛の治療に現在使用されている抗痙攣薬に引けを取らない抗異痛症効果を発揮することが示された。Liberatore et at[Bioorg.Med,Chem.Lett.2004 14 pp3521−3523]には、それらのラット脳部位2ナトリウムチャネルに対するトリチウム化バトラコトキシンの結合を阻害する能力に関してナノモルIC50値を示す、一群の2−アルキル−4−アリールイミダゾールが開示されている。これらの化合物のナトリウムチャネル結合特性は、Liberatore et alによって、リドカインやカルバマゼピン、ラモトリジンなどの神経障害に使用される公知の薬剤と比べて遜色ないことが示されている。
【0004】
ヒトの脳の活動組織を撮像する幾つかの技術が開発されており、18FDG、血流トレーサ及びfMRIが広く用いられている。しかし、これらの方法の中で、神経活性を直接測定するものはなく、エネルギー/酸素消費及び血流束への変化など、2次的作用を標的としている。その結果、現行の方法は、精度が低く、スパイク活性よりも入ってくる入力及び局所処理が過大評価されることが多々あり、活性化領域間の神経経路を明らかにすることができない(NK Logothetis,Nature,412,2001,pp 150−157)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Shao et al[2004 J.Med.Chem.47 pp4277−4285]
【非特許文献2】Yang et al[2004 J.Med.Chem.47 pp1547−1552]
【非特許文献3】Liberatore et at[Bioorg.Med.Chem.Lett.2004 14 pp3521−3523]
【非特許文献4】NK Logothetis,Nature,412,2001,pp 150−157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、神経活性の決定を改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、試料における神経活性を求める方法を提供する。本発明の方法は、インビボ試料及びインビトロ試料の両方の神経活性を決定するのに有用であり、特に、神経伝達障害に関連した病態を有することが疑われる被験体の診断情報を得るのに有用である。本発明の方法での使用に適した化合物並びに本発明の方法の実施に有用な医薬組成物も、本発明によって提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
神経活性の測定方法
一態様では、本発明は、試料中に存在する標識化合物の発する信号の決定を含む、試料における神経活性を求める方法であって、標識化合物が、電位開口型ナトリウムチャネル(VGSC)の不活性化又は活性状態に関して選択的親和性を有することを特徴とする方法に関する。
【0009】
本発明の方法は、以下の段階を含む。
(i)標識化合物を試料と接触させて、不活性化又は活性状態にある試料中のVGSCに標識化合物を結合させる段階、
(ii)標識化合物の発する信号を検出する段階、及び
(iii)信号を数値データ又は画像に変換する段階。
【0010】
本発明の方法は、正常な生理機能の評価に用途があるが、神経伝達障害に関連した神経学的病態の診断に好ましく適用される。かかる病態の例としては、特に限定されないが、癲癇、病理的疼痛、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー、統合失調症及び鬱病が挙げられる。
【0011】
試料のタイプ
「試料」という用語は、ヒト及び動物のインビトロ、エキソビボ及びインビボ試料を包含する。
【0012】
「インビトロ試料」は、ヒト又は動物の身体から採取され、体外で分析される組織又は流体試料である。標識化合物を試料と接触させる段階は、それらを生理的緩衝液のような適当な培地で一緒にすることによって実施される。本発明の方法で使用される好ましいインビトロ試料は、中枢若しくは末端神経系から採取された組織試料、又は血液、血清、血漿、若しくは脳脊髄液などの流体試料である。最も好ましいインビトロ試料は、流体試料である。本方法をインビトロ試料で実施する場合、標識化合物は、好適には、インビトロ診断法に適したレポーターである検出可能な標識を含む。かかる検出可能な標識は、以下でさらに詳しく説明する。かかる標識化合物の発する信号を検出する方法は、当業者に周知である。したがって、例えば放射標識は、写真用フィルム又はシンチレーションカウンタを使用して検出することができ、蛍光マーカーは、光検出器を使用して検出することができ、放出されたイルミネーションを検出する。酵素標識は、典型的には、酵素に基質を与え、基質に対する酵素の作用によって生成する反応生成物を検出することによって検出され、比色標識は、着色標識を単に視覚化することによって検出される。検出された信号は、問題とする試料の活性化VGSCの数を表す。
【0013】
エキソビボという用語は、生細胞の外又は生物の外部で生じる生物学的プロセス又は反応をいう。典型的な「エキソビボ試料」は細胞培養物であり、本発明の方法で使用される好ましい細胞培養物は、中枢又は末梢神経系の細胞から得られる。本発明の方法をエキソビボ試料で実施する際に用いられる検出可能な標識は、インビトロ試料で使用するものと同様である。
【0014】
「インビボ試料」は、生きたヒト又は動物被験体に存在するものであり、本発明では典型的には器官又は器官系である。好ましくは、インビボ試料は被験体の神経系の一部であり、最も好ましくは脳である。試料がインビボ試料である場合、接触段階は、VGSCの発現が高まる可能性のある試料中の細胞と確実に接触するように、標識化合物をヒト又は動物被験体に投与することによって実施してもよい。投与は、好ましくは静脈内投与によって達成される。
【0015】
本発明の方法は、好ましくはインビボ試料中、最も好ましくは患者又は患者の器官若しくは器官系で実施される。
【0016】
本発明の方法をインビボで実施する場合、標識化合物の発する信号は好ましくは画像に変換される。変換は、インビボ撮像技術、例えば単光子放射断層撮影(SPECT)、陽電子放射断層撮影(PET)、磁気共鳴画像(MRI)又は光学イメージングによって実施し得る。好ましいインビボ撮像技術はSPECT及びPETであり、最も好ましくはPETである。
【0017】
好ましくは、本発明の方法で使用される標識化合物はインビボで容易に代謝されず、最も好ましくは人体で60〜240分のインビボ半減期を示す。標識化合物は好ましくは腎臓経由で排泄(つまり尿中排泄)され、好ましくは病巣で1.5以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上の信号対バックグラウンド比を示す。標識化合物が放射性同位体を含む場合、インビボで非特異的に結合しているか或いは遊離している標識化合物のピーク値の半量のクリアランスは、好ましくは放射性同位体の放射性崩壊の半減期以下の時間で起こる。
【0018】
標識化合物又はその塩の有効インビボ用量は、投与すべき標識化合物、患者の体重その他当業者に自明な変数に応じて変動する。一般に、用量は、0.001μg/kg〜10μg/kg、好ましくは0.01μg/kg〜1.0μg/kgである。
【0019】
別の実施形態では、本発明の方法は、被験体の神経活性をインビボ撮像する方法であって、被験体に本発明の医薬組成物が予め投与されている方法を提供する。「予め投与」とは、医療従事者が関与する段階であり、患者に造影剤が投与されていること、例えば、静脈内注射が既に実施されていることを意味する。
【0020】
本発明の方法は、神経伝達障害に関連した神経学的病態に対処するための薬剤による被験体の治療効果をモニタリングする方法であって、本発明の放射性医薬組成物を被験体に投与し、標識化合物の取込を検出し、任意ではあるが好ましくは、上記投与と検出を、薬剤による治療の前後途中に実施する方法を行うのにも適用できる。
【0021】
別の態様では、本発明は、本発明の方法で使用するための本発明の標識化合物を提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、本発明の方法で用いられる医薬組成物の製造のための、標識化合物の使用を提供する。
【0023】
検出可能な標識
本発明の方法では、電位開口型ナトリウムチャネル(VGSC)の不活性化又は活性状態に対して選択的親和性を有する標識化合物は、以下の(i)〜(vvv)から選択される検出可能な標識を含む。
(i)γ線放出型放射性ハロゲン、
(ii)陽電子放出型放射性非金属、
(iii)過分極NMR活性核種、
(iv)血管内検出に適したβ線放射体、
(v)インビボ光学イメージングに適したレポーター、
(vi)インビトロ診断法に適したレポーター、
(vii)放射性金属イオン、及び
(viii)常磁性金属イオン。
【0024】
検出可能な標識が「γ線放出型放射性ハロゲン」である場合、放射性ハロゲンは好適には123I、125I、131I又は77Brから選択される。好ましいγ線放出型放射性ハロゲンは123Iである。
【0025】
検出可能な標識が「陽電子放出型放射性非金属」である場合、かかる陽電子放射体の好適なものとして、11C、13N、15O、17F、18F、75Br、76Br又は124Iが挙げられる。好ましい陽電子放出型放射性非金属は11C、13N、18F及び124Iであり、特に好ましくは11C及び18Fである。
【0026】
検出可能な標識が「過分極NMR活性核種」である場合、かかるNMR活性核種はゼロ以外の核スピンを有し、13C、15N、19F、29Si及び31Pが挙げられる。これらのうち、13Cが好ましい。
【0027】
検出可能な標識が「血管内検出に適したβ線放射体」である場合、かかるβ線放射体の好適なものとして、放射性金属の67Cu、89Sr、90Y、153Sm、186Re、188Re又は192Ir並びに非金属の32P、33P、38S、38Cl、39Cl、82Br及び83Brが挙げられる。38Cl、39Cl、82Br及び83Brが好ましい。
【0028】
検出可能な標識が「インビボ光学イメージングに適したレポーター」である場合、レポーターは光学イメージング法で直接又は間接的に検出できる部分であればよい。レポーターは光散乱体(例えば着色又は未着色粒子)でも、光吸収体でも、発光体でもよい。さらに好ましくは、レポーターは発色団又は蛍光化合物のような色素である。色素は紫外乃至近赤外域の波長を有する電磁スペクトルの光と相互作用する色素であればよい。最も好ましくはレポーターは蛍光特性を有する。
【0029】
好ましい有機発色団及び蛍光団レポーターとしては、広範な非局在化電子系を有する基、例えばシアニン、メロシアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン、ポルフィリン、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、インドアニリン、ベンゾフェノキサジニウム色素、ベンゾチアフェノチアジニウム色素、アントラキノン、ナフトキノン、インダスレン、フタロイルアクリドン、トリスフェノキノン、アゾ色素、分子内及び分子間電荷移動色素及び色素錯体、トロポン、テトラジン、ビス(ジチオレン)錯体、ビス(ベンゼン−ジチオレート)錯体、ヨードアニリン色素、ビス(S,O−ジチオレン)錯体が挙げられる。蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)及び吸収/発光特性の異なるGFPの修飾体も有用である。ある種の希土類金属(例えばユーロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の錯体も、蛍光ナノ結晶(量子ドット)と同様に、特定の状況で用いられる。
【0030】
使用し得る発色団の具体例としては、フルオレセイン、スルホローダミン101(テキサスレッド)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーン、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Cy7.5、マリーナブルー、パシフィックブルー、オレゴングリーン88、オレゴングリーン514、テトラメチルローダミン並びにAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700及びAlexa Fluor 750が挙げられる。
【0031】
特に好ましいのは、400nm〜3μm、特に600〜1300nmの可視又は近赤外(NIR)域に吸収極大を有する色素である。光学イメージングモダリティ及び測定法としては、特に限定されないが、発光イメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光干渉断層撮影、透過イメージング、時間分解透過イメージング、共焦点イメージング、非線形顕微鏡、光音響イメージング、音響光学イメージング、分光法、反射分光法、干渉分光法、コヒーレンス干渉法、拡散光トモグラフィー及び蛍光媒介拡散光トモグラフィー(連続波、時間領域及び周波数領域システム)、並びに光散乱、吸収、偏光、発光、蛍光寿命、量子収率及び消光の測定が挙げられる。
【0032】
「インビトロ診断法に適したレポーター」は、分光、光化学、生化学、免疫化学、電子、光又は化学的手段によって検出可能な標識である。本発明で有用なかかる標識としては、磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(商標))、蛍光色素(例えば、イソチオシアン酸フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14C又は32P)、酵素(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼその他ELISA法で慣用されているもの)及びコロイド金又は着色ガラス若しくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどの比色ビーズが挙げられる。当然ながら、放射性標識が好ましく、特に3H、125I及び14Cが好ましい。
【0033】
造影基が「放射性金属イオン」つまり放射性金属である場合、好適な放射性金属は、64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Gaのような陽電子放射体、或いは99mTc、111In、113mIn又は67Gaのようなγ線放射体である。好ましい放射性金属は99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。最も好ましい放射性金属はγ放射体、特に99mTcである。
【0034】
造影基が「常磁性金属イオン」である場合、かかる金属イオンの好適なものとして、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III)、Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)又はDy(III)が挙げられる。好ましい常磁性金属イオンはGd(III)、Mn(II)及びFe(III)であり、Gd(III)が特に好ましい。
【0035】
好ましい検出可能な標識は、インビボ投与後に、SPECT、PET及びMR(特にSPECT又はPET)のような非侵襲的方法で外部から検出できるものである。最も好ましい検出可能な標識は放射性のもの、特に上記の検出可能な標識のリストの(i)、(ii)及び(vii)、特に(i)及び(ii)が好ましい。これらの中で、123I、18F及び11Cが好ましい。
【0036】
標識化合物
本発明の方法は、好ましくは、特定の標識化合物を使用して実施されるが、これらの化合物は本発明の別の態様をなす。特定の標識化合物については、以下でさらに詳しく説明する。
【0037】
「標識化合物」という用語は、本明細書では、標識化合物自体、又はその塩若しくは溶媒和物を意味するのに使用される。
【0038】
本発明で好適な塩としては、(i)生理学的に許容される酸付加塩、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸などの鉱酸から誘導される塩、並びに酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸などの有機酸から誘導される塩、(ii)生理学的に許容される塩基の塩、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、トリエタノールアミン、N−メチル−D−グルカミン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン及びモルホリンなどの有機塩基との塩、及びアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩が挙げられる。
【0039】
本発明で好適な溶媒和物としては、エタノール、水、生理的食塩水、生理的緩衝液及びグリコールで形成されたものが挙げられる。
【0040】
VGSCの不活性化又は活性状態に関する「選択的親和性」とは、標識化合物が、休止状態よりも不活性化又は活性状態で大きな結合能力を有することを意味する。かかる選択的親和性は、例えば、HEK−293細胞内で安定に発現したrNav1.2チャネルの休止状態との結合に関する解離定数を測定することによって求めることができる(Yang et al,J.Med.Chem.2004 47 pp1547−1552)。
【0041】
好ましくは、不活性化又は活性化状態の標識化合物のKiは、1nM〜100nMであり、最も好ましくは1nM〜50nMであり、最も特に好ましくは1nM〜30nMである。
【0042】
本発明の特定の標識化合物は、検出可能な標識で標識された式Iの化合物である。
【0043】
【化1】

式中、
1a〜R1cは、独立に、水素、C13アルキル、C13アルコキシ、ヒドロキシル、C13ヒドロキシアルキル、チオール、C13チオアルキル、C13チオアルコキシ、ハロ、C13ハロアルキル、C13ハロアルコキシ、ニトロ、C13ニトロアルキル、C13ニトロアルコキシ、C46シクロアルキル、又はC13アルキルを介して結合したC35ヘテロシクロアルキル基から選択されるR1基であり、
2は、水素、C16アルキル、C16ハロアルキル、又はC16アルキルを介して結合したC46シクロアルキル基であり、
Aは、S又はOであり、
XはCであって破線の結合が二重結合であるか、或いはXはNであって破線の結合が単結合であり、
Yは、CH2又はCH=CHである。
【0044】
「検出可能な標識で標識」という表現は、(i)式Iに固有の原子の同位体からなるものが検出可能な標識であるか、或いは(ii)検出可能な標識を含む化学基が、式Iの化合物に結合されることを意味する。
【0045】
別途記載しない限り、「アルキル」という用語は、それ単独で又は他の用語との組合せで、好ましくは炭素原子数1〜10、さらに好ましくは炭素原子数1〜5、最も好ましくは炭素原子数1〜3の直鎖又は枝分れアルキル基を意味する。かかる基の例としては、特に限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチルが挙げられる。
【0046】
別途記載しない限り、「ヒドロキシアルキル」という用語は、それ単独で又は他の用語との組合せで、上記で定義したアルキル基において、1個以上(炭素1原子当たり1個以下)の水素原子、好ましくは1〜4個の水素原子、さらに好ましくは1〜2個の水素原子、最も好ましくは1個の水素原子がヒドロキシル基で置換されたものを意味する。
【0047】
別途記載しない限り、「アルコキシ」という用語は、それ単独で又は他の用語との組合せで、アルキルエーテル基(但し、アルキルは上記で定義した通りである。)を意味する。適当なアルキルエーテル基の例としては、特に限定されないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシが挙げられる。
【0048】
別途記載しない限り、「シクロアルキル」という用語は、それ単独で又は他の用語との組合せで、飽和又は部分飽和単環式、二環式又は三環式アルキル基を意味し、各環は、好ましくは環炭素原子数3〜8、さらに好ましくは環炭素原子数3〜7、最も好ましくは環炭素原子数4〜6のものであり、適宜ベンゾ縮合環であってもよく、本明細書でアリールの定義に関して規定したように置換されていてもよい。かかるシクロアルキル基の例としては、特に限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、オクタヒドロナフチル、2,3−ジヒドロ−1H−インデニル、アダマンチルが挙げられる。
【0049】
「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択される置換基を意味する。「ハロアルキル」及び「ハロアルコキシ」は、それぞれ、上記で定義したアルキル及びアルコキシ基が1個以上のハロ基で置換されたものである。
【0050】
「チオール」という用語は、−SH基を意味する。「チオアルキル」及び「チオアルコキシ」は−SR基であり、Rはそれぞれ上記で定義したアルキル又はアルコキシである。
【0051】
「ニトロ」という用語は、−NO2基を意味する。「ニトロアルキル」及び「ニトロアルコキシ」はそれぞれ上記で定義したアルキル及びアルコキシ基が−NO2基で置換されたものである。
【0052】
好ましくは、式Iの化合物では、
1は水素、メチル、メトキシ、チオール、チオメチル、チオメトキシ、ハロ、ハロメチル、ハロメトキシ、ニトロ、ニトロメチル又はニトロメトキシであり、
2は水素又はC16ハロアルキルであり、
AはOであり、
XはNであって破線の結合は単結合であり、
YはCH2である。
【0053】
さらに好ましくは、式Iの化合物では、
1は水素、メチル又はハロであり、
2は水素であり、
AはOであり、
XはNであって破線の結合は単結合であり、
YはCH2である。
【0054】
代替例において、式Iの好ましい化合物では、
1は水素、メチル、メトキシ、チオール、チオメチル、チオメトキシ、ハロ、ハロメチル、ハロメトキシ、ニトロ、ニトロメチル又はニトロメトキシであり、
2は、水素又はC13アルキルを介して結合したC46シクロアルキル基若しくはC35ヘテロシクロアルキル基であり、
AはOであり、
XはCであって破線の結合は二重結合であり、
YはCH=CHである。
【0055】
これらの代替例の好ましい式Iの化合物では、最も好ましくは、
1は、水素、メチル又はハロであり、
2は、水素又はC13アルキルを介して結合したC35ヘテロシクロアルキル基であり、
AはOであり、
XはCであって破線の結合は二重結合であり、
YはCH=CHである。
【0056】
最も好ましくは、上述の2通りの式Iの好ましい標識化合物に関して、R1a、R1b、R1c又は−C=O−NHR2のいずれかは、検出可能な標識を含む。検出可能な標識が123I又は18Fである場合、好ましくはR1a、R1b又はR1cのいずれかに存在し、最も好ましくはR1b又はR1cのいずれかに存在する。123I又は18FのいずれかがR1b又はR1cに存在する場合、酸素橋に対して3、4又は5位にあるのが好ましい。検出可能な標識が11Cである場合、−C=O−NHR2基のカルボニル炭素であるのが好ましい。
【0057】
検出可能な標識で標識された式Iの最も好ましい化合物の例の幾つかを以下に挙げる。
【0058】
【表1】



別の実施形態では、本発明の標識化合物は、検出可能な標識で標識された式IIの化合物である。
【0059】
【化2】

式中、
3及びR4は、独立に、水素、C110アルキル、C110アルコキシ、C110アルコキシアルキル、C14ハロアルキル、C14ハロアルケニル、C13ハロアルコキシ、C46シクロアルキル、C120PEGアルキル又はC120PEGから選択され、
5a及びR5bは、独立に、C14アルキル、ハロ、C13ハロアルケニル、C13アルコキシ、或いはN、S及びOから選択される0〜3個のヘテロ原子を有する五員又は六員芳香族環系であって適宜C13アルキル、ハロ又はC13ハロアルキルで適宜置換されたものから選択されるR5基である。
【0060】
「PEG」という用語は、ポリエチレングリコール単位のみからなる鎖をいい、「PEGアルキル」という用語は、アルキルとポリエチレングリコール単位を含む鎖をいう。ポリエチレングリコール単位は、構造−(CH22−O−を有する。
【0061】
好ましくは、式IIに関して、
3は、C16アルキル、C16アルコキシ、C14ハロアルケニル、C14ハロアルキル又はC13ハロアルコキシであり、
4は、C16アルキル、C16アルコキシであり、
5は、水素、ヨード、2−ヨード−C13アルケニル、メトキシメチル、フェニル、4−フルオロフェニル、4−ヨードフェニル、ピリジル、2−フルオロエチル−1,2,3−トリアゾールである。
【0062】
最も好ましくは、式IIに関して、
3は、プロピル、メトキシエチル、ヨードプロペニル、フルオロプロピル又はフルオロエトキシであり、
4は、プロピル又はメトキシエチルであり、
5は、水素、ヨード、2−ヨードアルケニル、メトキシメタン、フェニル、4−フルオロフェニル、4−ヨードフェニル、ピリジン又は2−フルオロエチル−1,2,3−トリアゾールである。
【0063】
式IIに関して最も好ましくは、R3、R5a又はR5bのいずれかは、検出可能な標識を含む。検出可能な標識が123I又は18Fの場合、R3又はフェニル環の4位のR5bに存在するのが好ましい。検出可能な標識が11C又は99mTcの場合、フェニル環の4位のR5bに存在するのが好ましい。好ましい式IIの標識化合物の例の幾つかを以下に挙げる。
【0064】
【表2】

標識化合物の調製
式Iの様々な非標識化合物に関する合成経路は、Shao[J.Med.Chem.2004 47 pp4277−4285]及びYang[J.Med.Chem.2004 47 pp1547−1552]に記載されている。式IIの様々な非標識化合物に関する合成経路は、Liberatore[Bioorg.Med.Chem.Lett.2004 14 pp3521−3523]に記載されている。
【0065】
式I及びIIの標識化合物は、前駆体化合物と、所望の検出可能な標識の適当な原料との反応によって簡便に調製できる。
【0066】
「前駆体化合物」には、標識化合物の誘導体であって、適当な化学的形態の検出可能な標識との化学反応が部位特異的に起こり、最小限の段階数(理想的には一段階)で実施でき、しかも多大な精製を行わずに(理想的にはそれ以上精製しなくても)所望の造影剤が得られるように設計されたものが包含される。かかる前駆体化合物は合成品であり、良好な化学的純度で得ることができる。前駆体化合物は、適宜、前駆体化合物の官能基に対する保護基を含んでいてもよい。
【0067】
「保護基」という用語は、不都合な化学反応は阻害又は抑制するが、分子の残りの部分を修飾しない十分穏和な条件下で当該官能基から脱離させることができる十分な反応性をもつように設計された基を意味する。脱保護後に、所望の生成物が得られる。保護基は当業者に周知であり、好適には、アミン基については、Boc(Bocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(Fmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[すなわち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]又はNpys(すなわち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から、カルボニル基については、メチルエステル、tert−ブチルエステル又はベンジルエステルから選択される。ヒドロキシ基に対する適当な保護基は、メチル、エチル又はtert−ブチル、アルコキシメチル又はアルコキシエチル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル[Trt]或いはテトラブチルジメチルシリルのようなトリアルキルシリルである。チオール基に対する適当な保護基は、トリチル及び4−メトキシベンジルである。その他の保護基の使用については、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(Third Edition、John Wiley & Sons,1999)に記載されている。
【0068】
以下、本発明の標識化合物を得るための方法について説明する。
【0069】
放射性ヨウ素化
検出可能な標識が放射性ヨウ素である場合、適当な前駆体化合物は、求電子又は求核ヨウ素化或いは標識アルデヒド又はケトンとの縮合を起こすような誘導体を含むものである。前者に属するものの例としては、以下の(a)〜(c)が挙げられる。
(a)トリアルキルスタンナン(例えばトリメチルスタンニル又はトリブチルスタンニル)、トリアルキルシラン(例えばトリメチルシリル)又は有機ホウ素化合物(例えば、ボロン酸エステル又はオルガノトリフルオロボレート)のような有機金属誘導体、
(b)ハロゲン交換のための非放射性臭化アルキル、或いは求核ヨウ素化のためのアルキルトシレート、メシレート又はトリフレート、
(c)求電子ヨウ素化用の活性化芳香族環(例えばフェノール)及び求核ヨウ素化用の活性化芳香族環(例えばアリールヨードニウム、アリールジアゾニウム、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)。
【0070】
放射性ヨウ素化のための前駆体化合は、好ましくは、ヨウ化又は臭化アリールのような非放射性ハロゲン原子(放射性ヨウ素交換を可能とするため)、活性化アリール環(例えばフェノール基)、有機金属置換物(例えばトリアルキルスズ、トリアルキルシリル又は有機ホウ素化合物)、トリアゼンのような有機置換物、或いはヨードニウム塩のような求核置換反応のための良好な脱離基を含む。放射性ヨウ素化では、好ましくは、前駆体化合物は有機金属置換物を含み、最も好ましくはトリアルキルスズを含む。
【0071】
前駆体化合物及び放射性ヨウ素を有機分子に導入する方法は、Bolton[J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)]に記載されている。適当なボロン酸エステル有機ホウ素化合物及びその製造方法は、Kabalaka et al[Nucl.Med.Bioi.,29,841−843(2002)and 30,369−373(2003)]に記載されている。適当なオルガノトリフルオロボレート及びその製造方法は、Kabalaka et al[Nucl.Med.Biol.,31,935−938(2004)]に記載されている。
【0072】
放射性ヨウ素を結合させることのできるアリール基の例としては、以下のものがある。
【0073】
【化3】

式中、アルキルは、好ましくはメチル又はブチルである。これらの基は、芳香族環での放射性ヨウ素置換が容易な置換基を含んでいる。
【0074】
放射性ヨウ素を含む他の置換基は、例えば以下のような放射性ハロゲン交換による直接ヨウ素化によって合成することができる。
【0075】
【化4】

飽和脂肪族系に結合したヨウ素原子はインビボで代謝され易く、放射性ヨウ素が失われ易いことが知られているので、放射性ヨウ素原子は好ましくは芳香族環(ベンゼン環など)又はビニル基に直接共有結合で結合させる。
【0076】
式Iの標識化合物については、放射性ヨウ素化のための前駆体化合物は式Iaのものである。
【0077】
【化5】

式中、
1c〜R1eのいずれかは、非放射性ヨウ素、ヒドロキシル又は[C16アルキル]3Sn−Z−(式中、Zは結合、C16アルキル又はC16アルケニルである。)であり、残りの2つは独立に、式Iで定義したR1基であり、
2は式Iで定義した通りであり、
X及びYは式Iで定義した通りである。
【0078】
放射性ヨウ素化のための式Iaの前駆体化合物の例を以下に挙げる。
【0079】
【化6】

式IIの標識化合物については、放射性ヨウ素化のための前駆体化合物は式IIaのものである。
【0080】
【化7】

式中、
3a又はR4aのいずれかが[C16アルキル]3Sn−Z−(式中、Zは結合、C16アルキル又はC16アルケニルである。)であるか、或いはR5c又はR5dのいずれかが非放射性ヨウ素、水素又は[C16アルキル]3Sn−Z−(式中、Zは結合、C16アルキル又はC16アルケニルである。)であり、残りの基に関しては、
3aは、式IIに関して上記で定義したR3であり、
4aは、式IIに関して上記で定義したR4であり、
5c又はR5dは、独立に、式IIに関して上記で定義したR5基である。
【0081】
放射性ヨウ素化のための式IIaの前駆体化合物の例を如何に挙げる。
【0082】
【化8】

上記トリアルキルスズ前駆体化合物は、放射性ヨウ素化合物の非放射性の形態のものから、[アルキル]3SnSn[アルキル]3とのパラジウム反応によって製造される。置換基で生じる反応は、以下の通りである。
【0083】
【化9】

放射性フッ素化
検出可能な標識がフッ素の放射性同位体である場合、フッ化アルキルはインビボ代謝に抵抗性であるので、放射性フッ素原子はフルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基の一部をなすものであってもよい。フルオロアルキル化は、フェノール、チオール、アミドのような反応性基を有する前駆体化合物とフルオロアルキル基との反応によって実施できる。18Fは、18F(CH23OH反応体を用いたN−ハロアセチル基のアルキル化によって導入することもでき、−NH(CO)CH2O(CH2318F誘導体が得られる。
【0084】
或いは、放射性フッ素原子は、芳香族環(例えばベンゼン環)に直接共有結合で結合させてもよい。アリール系については、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール第四級アンモニウム塩からの18F−フッ化物求核置換が、アリール−18F誘導体への好適な経路である。
【0085】
放射性フッ素化は、臭化アルキル、アルキルメシレート又はアルキルトシレートのような良好な脱離基を有する前駆体化合物の適当な化学基と18F−フッ化物との反応を用いた直接標識法でも実施できる。
【0086】
18F−標識化合物は、18Fフルオロジアルキルアミンの形成、及び18Fフルオロジアルキルアミンが例えば塩素、P(O)Ph3又は活性化エステルを含有する前駆体化合物と反応する場合にはその後のアミド形成によって、得ることもできる。
【0087】
トリアゾールを含有する標識化合物の場合、18Fを導入するための別の方法は、アルキン又はアジド置換基を含む前駆体化合物を、[18F]フルオロアルキルアジド又は[18F]フルオロアルキンとそれぞれ反応させることである。この標識戦略は、国際公開第2006/067376号に詳細に記載されている。
【0088】
18F−標識誘導体への合成経路のさらなる詳細は、Bolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。
【0089】
式Iの標識化合物について、放射性フッ素化のための前駆体化合物は式Ibのものである。
【0090】
【化10】

式中、
1f、R1g、R1h又はR2bのいずれかは、アジド、C16末端アルキン、ヒドロキシル、N−ハロアセチルであるか、或いはフェノール、チオール又はアミドのような反応性基であるか、或いはニトロ、トリメチルアンモニウム、臭化アルキル、アルキルメシレート又はアルキルトシレートのような脱離基を含むものであり、
残りの基に関しては、
1f〜R1hは独立に、式Iに関して上記で定義したR1基であり、
2bは、式Iに関して上記で定義したR2であり、
X及びYは、式Iに関して上記で定義した通りである。
【0091】
式Ibの好ましい前駆体の場合、
1g及びR1hの一方は、ニトロ又はトリメチルアンモニウムであり、他方はフッ素、塩素、ニトロ又は臭素であり、残りの基に関しては、
1f〜R1hは独立に、式Iに関して上記で定義したR1基であり、
2bは、式Iに関して上記で定義したR2である。
【0092】
ニトロ又はトリメチルアンモニウム基は、18F−で置換できる脱離基(LG)として働き、フッ素、塩素、ニトロ又は臭素基は、電子求引基(EWG)、例えば次式のように働く。
【0093】
【化11】

式中、PGは、上記で定義した保護基である。
【0094】
式Ibの前駆体化合物の例は、以下の通りである。
【0095】
【化12】

式IIの標識化合物について、放射性フッ素化のための前駆体化合物は式IIbのものである。
【0096】
【化13】

式中、R3b及びR4bの一方はニトロ、トリメチルアンモニウム、臭化アルキル、アルキルメシレート又はアルキルトシレートのような脱離基を含み、R5e及びR5fの一方はアルキン又はアジドであり、残りの基に関しては、
3bは、式IIに関して上記で定義したR3であり、
4bは、式IIに関して上記で定義したR4であり、
5e及びR5fは独立に、式IIに関して上記で定義したR5基である。
【0097】
式IIbの前駆体化合物の例は、以下の通りである。
【0098】
【化14】

放射性カルボニル化
陽電子放出型非金属が11Cである場合、一つの標識法は、メチル化合物の脱メチル化型である前駆体化合物と、[11C]メチルヨウ化物とを反応させることである。所望の標識化合物の特定の炭化水素鎖のグリニャール試薬と[11C]CO2との反応によって11Cを導入することもできる。11Cは、芳香族環のメチル基として導入することもでき、その場合、前駆体化合物は、トリアルキルスズ基又はB(OH)2基を含んでもよい。
【0099】
11Cの半減期はわずか20.4分にすぎないので、中間体の11C部分が高い比活性を有していて、できるだけ迅速な反応プロセスを用いて生成させることが重要である。
【0100】
かかる11C標識技術の概説は、Antoni et al“Aspects on the Synthesis of 11C−Labelled Compounds”in Handbook of Radiopharmoceuticals,Ed.M.J.Welch and C.S.Redvanly(2003,John Wiley and Sons)に記載されている。
【0101】
式Iの標識化合物について、放射性カルボニル化のための前駆体化合物は式Icのものである。
【0102】
【化15】

式中、
1i、R1j又はR1kのいずれかはトリメチルスズ、トリブチルスズ又はB(OH)2であり、R2cは、水素又はヒドロキシルであり、残りの基に関しては、
1i〜R1kは独立に、式Iに関して上記で定義したR1基であり、
2cは、式Iに関して上記で定義したR2であり、
X及びYは、式Iに関して上記で定義した通りである。
【0103】
式Icの前駆体化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0104】
【化16】

式IIの標識化合物について、放射性カルボニル化のための前駆体化合物は式IIcのものである。
【0105】
【化17】

式中、
5cは、ヒドロキシル、トリメチルスズ、トリブチルスズ又はB(OH)2であり、R3c又はR4cは、C16ヒドロキシアルキルであり、残りの基に関しては、
3cは、式IIのR3に関して上記で定義した通りであり、
4cは、式IIのR4に関して上記で定義した通りであり、
5cは、式IIのR5に関して上記で定義した通りである。
【0106】
式IIcの前駆体化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
【0107】
【化18】

過分極
「過分極」という用語は、NMR活性核種の分極の程度がその平衡分極を超えていることを意味する。幾つかの過分極法が知られている。その幾つかは、Golman et al[Magn.Reson.Med.2001,46,1−5 and Acad.Radiol.2002,9(suppl.2),S507−S510]に記載されている。
【0108】
13Cの天然存在比(12Cに対して)は約1%である。NMR活性核種を天然存在比で含む化合物について過分極を実施することは可能であるが、投与前にNNR活性核種を濃縮しておくのが好ましい。適当な13C濃縮化合物は、標識化合物を得るため過分極する前に、好適には5%以上、好ましくは50%以上、最も好ましくは90%以上の存在比となるように濃縮される。濃縮は1以上の部位での選択的濃縮であっても、すべての部位での均一な濃縮であってもよい。声は化学合成又は生物学的標識によって達成される。
【0109】
放射性金属化
検出可能な標識が放射性金属イオンである場合、標識化合物は好ましくは放射性金属イオンと合成配位子との金属錯体を含む。「金属錯体」という用語は、金属イオンと1以上の配位子との配位錯体を意味する。金属錯体は「キレート交換耐性」、つまり金属の配位部位に対する他の潜在的な競合配位子との配位子交換を容易には起こさないものであるのが極めて好ましい。潜在的な競合配位子としては、インビトロ製剤中の他の賦形剤(製剤に使用される例えば放射線防護剤又は抗菌保存剤)又はインビボでの内在性化合物(例えばグルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)がある。「合成」という用語はその通常の意味を有し、天然源(例えば哺乳類の身体)から単離されるものではなく、人工のものであるを意味する。かかる化合物は、その製造及び不純物プロフィルを完全に制御できるという利点を有している。
【0110】
キレート交換耐性の金属錯体を形成する本発明での使用に適した配位子としては、(金属ドナー原子同士が炭素原子又は非配位ヘテロ原子の非配位骨格で連結されて)五又は六員キレート環が形成されるように2〜6個、好ましくは2〜4個の金属ドナー原子が配列したキレート剤、或いはイソニトリル、ホスフィン又はジアゼニドのように金属イオンに強く結合するドナー原子を含む単座配位子が挙げられる。キレート剤の一部として金属によく結合するドナー原子の例は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンである。ホスフィン類は強固な金属錯体を形成し、単座又は二座ホスフィンであっても適当な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドの線状構造は、それらをキレート剤に導入するのが容易ではないので、通例、単座配位子として使用される。適当なイソニトリルの例としては、tert−ブチルイソニトリルのような単純なアルキルイソニトリル、並びにMIBI(すなわち、1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)のようなエーテル置換イソニトリルが挙げられる。適当なホスフィンの例としては、テトロホスミン及び単座ホスフィン類、例えばトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンが挙げられる。適当なジアゼニドの例としては、HYNIC系配位子、すなわちヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミドが挙げられる。
【0111】
キレート交換耐性金属錯体を形成するテクネチウムに適したキレート剤の例としては、特に限定されないが、以下の(i)〜(iv)のものが挙げられる。
(i)ジアミンジオキシム
(ii)チオールトリアミドドナーセットを有するN3S配位子、例えばMAG3(メルカプトアセチルトリグリシン)及び関連配位子、又はジアミドピリジンチオールドナーセットを有するもの、例えばPica。
(iii)ジアミンジチオールドナーセットを有するN22配位子、例えばBAT又はECD(すなわちエチルシステイネート二量体)又はアミドアミンジチオールドナーセットを有するもの、例えばMAMA。
(iv)テトラミン、アミドトリアミン又はジアミンジアミンドナーセットを有する開環又はマクロ環状配位子であるN4配位子、例えばサイクラム、モノオキシサイクラム又はジオキシサイクラム。
(v)ジアミンジフェノールドナーセットを有するN22配位子。
【0112】
幾つかの好ましいキレート剤の合成方法は、国際公開第03/006070号及び同第06/008496号に記載されている。
【0113】
医薬組成物
本発明の標識化合物は、好ましくは、標識化合物と生体適合性担体とを含む医薬組成物としてインビボ用途のため投与される。「医薬組成物」とは、本発明では、標識化合物又はその塩をヒトへの投与に適した形態で含む製剤と定義され、本発明の別の態様を構成する。投与は、好ましくは医薬組成物を水溶液として注射することによって行われる。かかる医薬組成物は、他の成分、例えば緩衝剤、薬学的に許容される可溶化剤(例えばシクロデキストリン又はPluronic、Tween若しくはリン脂質のような界面活性剤)、薬学的に許容される安定剤又は酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、ゲンチジン酸又はp−アミノ安息香酸))を適宜含んでいてもよい。好ましくは、医薬組成物は放射性医薬組成物であり、標識化合物は検出可能な放射性標識を含む。
【0114】
「生体適合性担体」とは、標識化合物を懸濁又は溶解できる流体、特に液体であって、組成物が生理学的に認容できるもの、つまり毒性も耐え難い不快感も伴わずに哺乳類の身体に投与することができるようなものである。生体適合性担体は好適には注射可能な担体液であり、例えば、発熱物質を含まない注射用の滅菌水、生理的食塩液のような水溶液(これは注射用の最終製剤が等張性又は非低張性となるように調整するのに都合がよい)、1種以上の張度調節物質(例えば血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えばグルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えばソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えばグリセロール)その他の非イオン性ポリオール材料(例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液である。生体適合性担体は、エタノールのような生体適合性の有機溶媒を含んでいてもよい。かかる有機溶媒は、親油性の高い化合物又は製剤の可溶化に有用である。好ましくは、生体適合性担体はパイロジェンフリーの注射用水、等張塩類溶液又はエタノール水溶液である。静脈内注射用の生体適合性担体のpHは好適には4.0〜10.5の範囲内である。
【0115】
かかる医薬品は、好適には、無菌健全性を維持したまま皮下注射針で一回又は複数回穿刺するのに適したシール(例えばクリンプオン式セプタムシール蓋)を備えた容器に入れて供給される。かかる容器は、患者の1回又は複数回分の用量を含むものでよい。好ましい多用量用容器は、患者の複数回分の用量を収容した単一バルクバイアル(例えば容積10〜30cm3のもの)からなり、臨床症状に応じて製剤の有効期間中様々な時間間隔で1回分の用量を臨床グレードのシリンジに吸引することができる。プレフィルドシリンジは患者1回分の用量つまり「単位用量」を収容するように設計され、そのため好ましくは使い捨て又はその他臨床用に適したシリンジである。医薬組成物が放射性医薬組成物の場合、プレフィルドシリンジは、適宜、オペレーターを放射能被曝から保護するためのシリンジシールドを備えていてもよい。かかる適当な放射性医薬品シリンジシールドは当技術分野で公知であり、好ましくは鉛又はタングステンからなる。
【0116】
放射性医薬組成物は、SPECT又はPETイメージングのため所望の信号が得られる十分な量で患者に投与すればよく、典型的な放射性核種投与量は体重70kg当たり0.01〜100mCi、好ましくは0.1〜50mCiで通常は十分である。
【0117】
本発明の医薬組成物は、キットから調製することもできる。或いは、医薬組成物は、所望の滅菌生成物が得られるような無菌製造条件下で製造してもよい。医薬組成物を非滅菌条件下で調製した後、例えばγ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は化学的処理(例えばエチレンオキサイドでの処理)を用いて最終的に滅菌してもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物はキットから調製される。かかるキットは、前駆体組成物(好ましくは滅菌された非発熱性の形態のもの)を含んでいて、検出可能な標識の滅菌供給源との反応で所望の医薬組成物を最低限の操作数で生ずる。かかる配慮は、放射性医薬組成物、特に放射性同位体の半減期が比較的短い放射性医薬品で重要であり、取扱いの容易さ及び放射性医薬品の取扱者の放射線被曝量の低減という点でも重要である。したがって、かかるキットの再構成用の反応溶媒は、好ましくは上記で定義した生体適合性担体であり、最も好ましくは水性担体である。
【0118】
適当なキット容器は、無菌健全性及び/又は放射能の安全性並びに適宜、不活性ヘッドスペースガス(例えば窒素又はアルゴン)を維持することができ、しかも、シリンジで溶液の添加及び吸引もできる密封容器である。かかる容器として好ましいのはセプタムシールバイアルであり、気密蓋をオーバーシール(通例アルミニウム製)でクリンプしたものである。かかる容器は、適宜、例えば、ヘッドスペースガスの交換又は溶液の脱気などのため、蓋が真空に耐えることができるという追加の利点も有する。
【0119】
前駆体化合物をキットに用いる際の好ましい態様は、上記で説明した通りである。キットに用いられる前駆体化合物は、望ましい無菌の非発熱性物質を生じるように無菌製造条件下で用いられる。前駆体化合物を非滅菌条件下で使用し、最後に例えばγ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は化学的処理(例えばエチレンオキサイドでの処理)を用いて滅菌してもよい。好ましくは、前駆体化合物は無菌非発熱性の形態で用いられる。最も好ましくは、無菌の非発熱性の前駆体化合物を上述の密封容器内で用いる。
【0120】
キットは、適宜、放射線防護剤、抗菌保存剤、pH調節剤、充填剤のような追加の成分をさらに含んでいてもよい。
【0121】
「放射線防護剤」という用語は、水の放射線分解で生成する含酸素フリーラジカルのような反応性の高いフリーラジカルを捕捉することによって、酸化還元プロセスのような分解反応を阻害する化合物をいう。本発明の放射線防護剤は、好適には、アスコルビン酸、パラアミノ安息香酸(すなわち4−アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(すなわち2,5−ジヒドロキシ安息香酸)並びにこれらと生体適合性陽イオンとの塩から選択される。生体適合性陽イオン及びその好適な実施形態は上述の通りである。
【0122】
「抗菌保存剤」という用語は、細菌、酵母又はカビなどの有害微生物の増殖を阻害する薬剤を意味する。抗菌保存剤は、濃度に応じてある程度の殺菌作用を示すこともある。本発明の抗菌保存剤の主な役割は、再構成後の医薬組成物(つまり造影剤自体)での微生物の増殖を阻害することである。ただし、抗菌保存剤は、再構成前の本発明の非放射性キットの1以上の成分における有害微生物の増殖の防止にも適宜使用できる。適当な抗菌保存剤としては、パラベン類、すなわちメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン又はこれらの混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールが挙げられる。好ましい抗菌保存剤はパラベン類である。
【0123】
「pH調節剤」という用語は、再構成したキットのpHが、ヒト又は哺乳類への投与に関して許容範囲(約pH4.0〜10.5)内に収まるようにするのに有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。かかる適当なpH調節剤としては、トリシン、リン酸塩又はTRIS(すなわちトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)のような薬学的に許容される緩衝剤、並びに炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物などの薬学的に許容される塩基が挙げられる。前駆体化合物を酸塩の形態で用いる場合、キットのユーザーが多段階法の一部としてpHを調節できるようにpH調節剤を適宜別のバイアル又は容器で提供してもよい。
【0124】
「充填剤」という用語は、製造及び凍結乾燥時の材料の取扱いを容易にする薬学的に許容される増量剤を意味する。適当な充填剤としては、塩化ナトリウムのような無機塩並びに水溶性糖類又は糖アルコール、例えばスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースが挙げられる。
【0125】
実施例の簡単な説明
実施例1及び実施例2は、本発明の方法での使用に適した特定の標識化合物の合成経路について記載する。
【0126】
実施例3は、正常ウィスターラットにおける3H−標識化合物の生体内分布を示す。
【実施例】
【0127】
実施例1:3−[2,4−(ジフルオロ−フェノキシ)]−フェニル−ピラゾール−1−[(11C)カルボン酸]アミドの合成
【0128】
【化19】

適当な有機溶媒(ジクロロメタン、ジメチルホルミアミド、アセトニトリル又はテトラヒドロフランなど)中の前駆体の溶液に、C−11標識ホスゲンを室温で導入する。ホスゲンが消費された後で、アンモニアを(溶液又はガスとして)導入し、得られた反応混合物を加熱する。次いで粗生成物の混合物を、セミ分取HPLCで精製する。
【0129】
実施例2:3−[2−フルオロ,4−(18F−フルオロ)−フェノキシ]−フェニル−ピラゾール−1−カルボン酸アミドの合成
【0130】
【化20】

18F標識用の前駆化合物を、Yang et al[J.Med.Chem.2004 47 pp1547−1552]に概説された方法で調製し、Boc保護基(上記スキームにおけるPG)をアミンに添加した後、放射性フッ素化を行う。
【0131】
前駆体化合物を、アリールニトロ基の[18F]−フッ素化物核置換によって放射性フッ素化した後、酸加水分解によって脱保護することにより、標記化合物を得る。
【0132】
実施例3:ラットにおける3H化合物の生体内分布
トリチウム化型の3−[2,4−ジフルオロ−フェノキシ]−フェニル−ピラゾール−1−カルボン酸アミド(図1の「ハマースミス化合物」)は、GE Healthcare社(英国カーディフ)でカスタムメイドされたものであった。
【0133】
ラット(ウィスター、約150g;Charles River UK社)に、尾静脈から、[3H]−3−[2,4−ジフルオロ−フェノキシ]−フェニル−ピラゾール−1−カルボン酸アミド0.37MBqを静脈内ボーラスとして注射した。注射後(p.i.)2分、5分、20分及び40分で、ラットを頸部脱臼によって殺した。脳(皮質及び海馬として分離した)、血液及び主な器官を収集し、計量し、Packard Tissue Oxidizerモデル307(Packard Instrument社(米国コネティカット州メリデン)を用いて燃焼させた。次いで試料を、β線計測器(Rack Beta、Perkin Elmer LAS(UK)社製)でカウントした。グラム当たりの注射用量のパーセンテージ(%id/g)を、各試料ごとに決定し、結果を図1に示す。これは、化合物の脳摂取が良好であり、時間活性曲線が可逆的結合と一致しており、プローブは灰質及び白質を描いていることを実証している(異なるレベルのVGSCを有すると予測される)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在する標識化合物の発する信号を検出することを含む、試料における神経活性を求める方法であって、標識化合物が、電位開口型ナトリウムチャネルの不活性化又は活性状態に対して選択的親和性を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
(i)標識化合物を試料と接触させて、不活性化又は活性状態にある試料中のVGSCに標識化合物を結合させる段階、
(ii)標識化合物の発する信号を検出する段階、及び
(iii)信号を数値データ又は画像に変換する段階
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
神経伝達障害に関連した神経学的病態の診断に用いられる、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記試料がインビボ試料である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記インビボ試料が患者又は患者体内の器官若しくは器官系である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記検出段階がSPECT、PET、MRI又は光学イメージングによって実施される、請求項4又は請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記検出段階がSPECT又はPETによって実施される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
神経伝達障害に関連した神経学的病態に対処するための薬剤による被験体の治療効果をモニタするための請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法であって、薬剤による治療の前後及び途中に請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法を実施することを含む方法。
【請求項9】
前記標識化合物が、検出可能な標識で標識された式Iの化合物である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【化1】

式中、
1a〜R1cは、独立に、水素、C13アルキル、C13アルコキシ、ヒドロキシル、C13ヒドロキシアルキル、チオール、C13チオアルキル、C13チオアルコキシ、ハロ、C13ハロアルキル、C13ハロアルコキシ、ニトロ、C13ニトロアルキル、C13ニトロアルコキシ、C46シクロアルキル、又はC13アルキルを介して結合したC35ヘテロシクロアルキル基から選択されるR1基であり、
2は、水素、C16アルキル、C16ハロアルキル、又はC16アルキルを介して結合したC46シクロアルキル基であり、
Aは、S又はOであり、
XはCであって破線の結合が二重結合であるか、或いはXはNであって破線の結合が単結合であり、
Yは、CH2又はCH=CHである。
【請求項10】
1が水素、メチル、メトキシ、チオール、チオメチル、チオメトキシ、ハロ、ハロメチル、ハロメトキシ、ニトロ、ニトロメチル又はニトロメトキシであり、
2が水素又はC16ハロアルキルであり、
AがOであり、
XがNであって破線の結合が単結合であり、
YがCH2である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
1が水素、メチル又はハロであり、
2が水素である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
1が、水素、メチル、メトキシ、チオール、チオメチル、チオメトキシ、ハロ、ハロメチル、ハロメトキシ、ニトロ、ニトロメチル又はニトロメトキシであり、
2が、水素又はC13アルキルを介して結合したC46シクロアルキル基若しくはC35ヘテロシクロアルキル基であり、
AがOであり、
XがCであって破線の結合が二重結合であり、
YがCH=CHである、請求項9記載の方法。
【請求項13】
1が水素、メチル又はハロであり、
2が水素又はC13アルキルを介して結合したC35ヘテロシクロアルキル基である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記標識化合物が、検出可能な標識で標識された式IIの化合物である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【化2】

式中、
3及びR4は、独立に、水素、C110アルキル、C110アルコキシ、C14ハロアルキル、C14ハロアルケニル、C13ハロアルコキシ、C46シクロアルキル、C120PEGアルキル又はC120PEGから選択され、
5a及びR5bは、独立に、水素、C14アルキル、ハロ、C13ハロアルケニル、C13アルコキシ、或いはN、S及びOから選択される0〜3個のヘテロ原子を有する五員又は六員芳香族環系であって適宜C13アルキル、ハロ又はC13ハロアルキルで置換されたものから選択されるR5基である。
【請求項15】
3がC16アルキル、C16アルコキシ、C14ハロアルケニル、C14ハロアルキル又はC13ハロアルコキシであり、
4がC16アルキル又はC16アルコキシであり、
5が、水素、ヨウ素、2−ヨードアルケニル、メトキシメタン、フェニル、4−フルオロフェニル、4−ヨードフェニル、ピリジン又は2−フルオロエチル−1,2,3−トリアゾールである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
3がプロピル、メトキシエチル、ヨードプロペニル、フルオロプロピル又はフルオロエトキシであり、
4がプロピル又はメトキシエチルである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
標識化合物が、以下の(i)〜(viii)から選択される検出可能な標識で標識される、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の方法。
(i)γ線放出型放射性ハロゲン、
(ii)陽電子放出型放射性非金属、
(iii)過分極NMR活性核種、
(iv)血管内検出に適したβ線放射体、
(v)インビボ光学イメージングに適したレポーター、
(vi)インビトロ診断法に適したレポーター、
(vii)放射性金属イオン、及び
(viii)常磁性金属イオン。
【請求項18】
検出可能な標識が、
(i)γ線放出型放射性ハロゲン、又は
(ii)陽電子放出型放射性非金属
である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか1項記載の方法で使用するための、電位開口型ナトリウムチャネルの不活性化又は活性状態に対して選択的親和性を有する標識化合物。
【請求項20】
請求項1乃至請求項18のいずれか記載の方法で使用される医薬組成物の製造のための、電位開口型ナトリウムチャネルの不活性化又は活性状態に対して選択的親和性を有する標識化合物の使用。
【請求項21】
請求項9乃至請求項13のいずれか1項で定義される式Iの標識化合物。
【請求項22】
請求項14乃至請求項16のいずれか1項で定義される式IIの標識化合物。
【請求項23】
請求項21又は請求項22記載の標識化合物と生体適合性担体とを含む、請求項1乃至請求項18のいずれか1項記載の方法で使用するための医薬組成物。
【請求項24】
放射性医薬組成物である、請求項23記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2010−529173(P2010−529173A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511649(P2010−511649)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057418
【国際公開番号】WO2008/152109
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(504000591)ハマースミス・イメイネット・リミテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】Hammersmith Imanet Ltd
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】