説明

移動体周辺監視システム

【課題】送信波を放射することにより障害物を検知する複数の検知センサを備えた移動体周辺監視システムにおいて、各検知センサ間の干渉を抑制し、検知精度の向上を図る。
【解決手段】各検知センサ2は、信号源20の発振周波数を掃引する周波数制御回路21と、上記発振周波数と同じ周波数の送信波を放射する送受信回路22と、電源制御回路24とを備える。電源制御回路24は、上記発振周波数が掃引される期間だけ、上記送信出力をオンし、他の期間は、上記送信出力をオフする。従って、いずれかの検知センサ2で上記発振周波数が掃引され上記送信出力がオンであるときに、他の検知センサ2で上記発振周波数が掃引されていなければ、他の検知センサの上記送信出力はオフされている。このため、各検知センサ2の送信波又は反射波と他の検知センサの送信波又は反射波との間の干渉の発生を防ぐことができ、検知センサ2の検知精度の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体周辺に存在する障害物の存在を検知センサにより検知する移動体周辺監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の移動体周辺監視システム(以下、監視システムという)の検知センサに適用される技術として、レーダ波又は超音波を利用した障害物検知技術が知られている。この障害物検知技術には定在波方式とFM−CW方式とが含まれており、これらの方式のいずれかを採用した検知センサが知られている。
【0003】
いずれの方式の検知センサにおいても、信号源の発振周波数が掃引され、その掃引された発振周波数と同じ周波数の送信波が障害物に放射され、送信波と、その送信波が障害物で反射して生じた反射波との合成波が検出される。そして、その検出信号が増幅され、サンプリングされ、周波数分析され、その分析結果に基づいて障害物の存在が検知され、さらにその障害物までの距離が算出される。
【0004】
上記2方式における相違点は、送信波の周波数(以下、送信周波数という)の掃引の仕方である。従って、上記2方式においては、送信波と反射波との合成波形が異なり、合成波の検出部分、及び、検出信号に対する分析内容等も相違する。
【0005】
以下、上記2方式の距離測定技法について詳述する。図13は、従来及び本発明の定在波方式による距離測定原理を示す。図13における上側の図において、第1象限の横軸は時間tを示し、縦軸は送信周波数fを示し、第2象限の横軸は任意の検出地点において検出される定在波のパワーpを表す。上記検出地点は、送信波の放射地点と障害物とを通る直線上の任意の地点である。
【0006】
この方式においては、送信周波数fの一定期間の保持と一定幅の上昇とが繰り返されるように送信周波数fが掃引される。この掃引により、送信周波数fが階段状に変調される(上記第1象限参照)。各周波数fにおける一定の保持期間は、レーダ波又は超音波が障害物までの間を伝搬して往復するのに必要な時間よりも長く設定されており、その保持期間毎に、送信波と、上記往復により位相が遅延した反射波とが干渉し、合成波として定在波が生成される。
【0007】
上記検出地点における定在波パワーpは、送信周波数の掃引に応じて周期的に増減する(上記第2象限参照)。この原理について図14を参照して説明する。ここでは、送信周波数が上昇するとする。この上昇により、検出地点D1と障害物B1との間の送信波W及び反射波Wの波数は増え、そのため、定在波Wの波数が増加し、検出地点D1における定在波Wの位相が変位する。これにより、検出地点D1における定在波Wの振幅がA1からA2に変わり、振幅に比例する定在波パワーpが変化する。従って、送信周波数の掃引により、検出地点D1における定在波Wの位相が2π以上掃引されると、定在波パワーpは周期性を持つようになる。
【0008】
ここに、送信周波数の掃引による定在波パワーpの変動周期と、障害物B1までの距離と、光速とを、それぞれ、Δf、d、cとすると、下記の式(1)の関係式が成立する。
【0009】
【数1】

【0010】
従って、変動周期Δfを求めることにより、距離dを算出することができる。ところで、定在波パワーpを、任意の期間、検出すると、定在波パワーpの時系列信号(以下、定在波パワー信号という)が得られ、定在波パワーpを時間関数として表すことができる。しかしながら、上記式(1)は時間を変数に含まないので、定在波パワー信号と、式(1)とだけから、距離dを算出することはできない。
【0011】
そこで、上記式(1)を時間領域の数式に変換することが考えられる。ここに、変動周期Δfに対応する期間と、送信周波数の掃引幅と、掃引期間とを、それぞれ、T、ΔF、τとすると、下記式(2)が求まる(上記図13参照)。
【0012】
【数2】

【0013】
上記式(2)に上記式(1)を代入し、また、定在波パワー信号の周波数をf(=1/T)とすると、周波数fについての下記式(3)が導き出される。
【0014】
【数3】

【0015】
従って、定在波パワー信号の周波数fを計測することにより、障害物の存在を検知することができ、また、その計測値と、予め設定された掃引幅ΔF及び掃引期間τと、光速cとを、上記式(3)に代入することにより、距離dを求めることができる。
【0016】
次に、図15を参照して、従来及び本発明のFM−CW方式による距離測定原理を説明する。この方式における送信波Wは、その周波数を掃引期間τに周波数掃引幅ΔFだけ連続掃引することにより、鋸波状にFM変調された連続波(CW波)である。反射波Wは、送信波Wに対して時間的に遅れるが、その遅延時間Δtは、レーダ波又は超音波が障害物までの距離dの空間を往復するのに必要な時間である。この遅延により送信波Wと反射波Wとの周波数には差が生じる。ここに、この周波数差、すなわち、ビート周波数をfとすると、下記式(4)の関係式が成り立つ。
【0017】
【数4】

【0018】
遅延時間Δtは、Δt=2d/c(c:光速)と表され、この式を上記式(4)に代入すると、ビート周波数fと距離dとの関係を示す下記式(5)が求められる。
【0019】
【数5】

【0020】
従って、ビート周波数fを測定し、上記式(5)に代入することにより、距離dを割り出すことができる。ビート周波数fは、送信波Wと反射波Wとの合成波から計測することができる。
【0021】
図16は、上記合成波Wの波形を示す。送信周波数が掃引されると、合成波Wにはうなりが生じ、合成波Wの振幅は、ビート周波数fでもって増大、減少を繰り返す。そのため、合成波Wを例えば包絡線検波することにより、合成波Wから上記うなりの信号、すなわち、ビート信号を抽出して、その周波数を計測することにより、ビート周波数fを得て障害物の存在を検知することができ、また、上記式(5)を基に障害物までの距離dを算出することができる。
【0022】
ここで、FM−CW方式の従来の検知センサを備えた監視システムにおける送信周波数の時間的変化を図17に示す。同図に示されるように、検知センサの送信波は、周波数が掃引されない障害物非検知期間であっても、一定周波数で検知センサから放射され続ける(例えば、特許文献1参照)。
【0023】
ところで、上記監視システムにおいて、障害物検知範囲を広くするため、検知センサを複数設け、各検知センサをそれぞれ移動体の各部に取り付けるよう改良することが考えられる。
【0024】
しかしながら、上記改良を施した監視システムにおいては、いずれかの検知センサが、送信周波数を掃引する障害物検知期間であるとき、他の検知センサは、送信周波数を掃引しない障害物非検知期間であってもなくても、送信波を放射する。そのため、各検知センサの送信波又は反射波と他の検知センサの送信波又は反射波との間で干渉が発生し、検知センサによる障害物の検知精度が低下する虞がある。この問題は、上記検知センサが定在波方式のものであっても生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2008−292264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、上記の従来の問題を解決するためになされたものであり、送信波を放射することにより移動体周辺の障害物を検知する複数の検知センサを備えた移動体周辺監視システムにおいて、各検知センサ間の干渉を抑制することにより、検知精度の向上を図ることができる移動体周辺監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するために本発明の移動体周辺監視システムは、信号源の発振周波数を掃引する周波数掃引部と、前記周波数掃引部により掃引された発振周波数に対応した周波数の送信波を放射する送信部と、前記送信波が移動体周辺に在る障害物により反射されて生じた反射波を受信する受信部と、前記送信波と前記反射波との合成波のパワー又は振幅を検出する検出部と、前記検出部による検出信号をサンプリングして、その周波数成分を分析する周波数成分分析部と、前記周波数成分分析部による分析結果に基づき、前記障害物の有無を判定する判定部と、を有した検知センサを複数備えた移動体周辺監視システムにおいて、前記各検知センサは、前記送信部の送信出力をオン/オフする送信制御部をさらに有し、前記送信制御部は、前記発振周波数が掃引される期間だけ、前記送信出力をオンし、他の期間は、前記送信出力をオフすることを特徴とする。
【0028】
上記移動体周辺監視システムにおいて、前記送信制御部は、前記信号源の電源をオン/オフする電源制御部を有することが好ましい。
【0029】
上記移動体周辺監視システムにおいて、前記送信制御部は、前記信号源による発振信号の前記送信部への伝送をオン又はオフする伝送制御部を有することが好ましい。
【0030】
上記移動体周辺監視システムにおいて、前記検知センサのいずれかの送信制御部がオン状態であるとき、他の検知センサの送信制御部はオフ状態になることが好ましい。
【0031】
上記移動体周辺監視システムにおいて、障害物の検知が不能な前記検知センサを報知する報知部をさらに備え、前記各検知センサは、前記送信制御部がオフ状態であるときの前記受信部による受信波のパワーを検出するパワー検出部をさらに有し、前記報知部は、前記検知センサのいずれかの送信制御部がオフ状態であり、かつ、その検知センサのパワー検出部による検出レベルが閾レベル以上であるとき、その検知センサが検知不能であることを報知することが好ましい。
【0032】
上記移動体周辺監視システムにおいて、前記各検知センサは、前記送信制御部がオフ状態であるときの前記受信部による受信波のパワーを検出するパワー検出部をさらに有し、前記送信制御部は、前記パワー検出部による検出レベルが閾レベル以上である場合、オフ状態からオン状態への切り替わりを遅らせ、該検出レベルが閾レベル未満になってから、オン状態に切り替わることが好ましい。
【0033】
上記移動体周辺監視システムにおいて、前記各検知センサは、前記送信制御部がオフ状態であるときの前記受信部による受信波の周波数を検出する周波数検出部をさらに有し、前記周波数掃引部は、前記周波数検出部による周波数検出後に、前記発振周波数を掃引するとき、該周波数検出部による検出周波数を避けて該発振周波数を掃引することが好ましい。
【0034】
上記移動体周辺監視システムにおいて、前記各検知センサは、前記送信制御部がオフ状態であるときの前記受信部による受信波の受信周期を検出する周期検出部をさらに有し、前記周波数掃引部は、前記周期検出部により検出された受信周期に基づいて、前記受信部による受信波の受信タイミングを予測し、その予測した受信タイミングとは重ならないタイミングで前記発振周波数を掃引することが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、いずれかの検知センサで発振周波数が掃引され送信出力がオンであるときに、他の検知センサで発振周波数が掃引されていない場合、上記他の検知センサの送信出力はオフされているので、各検知センサの送信波又は反射波と他の検知センサの送信波又は反射波との間の干渉の発生を防ぐことができる。従って、検知センサによる障害物の検知精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動体周辺監視システムの構成を示す平面図。
【図2】上記システムの電気的ブロック図。
【図3】上記システムの電源制御回路及び信号源の動作チャート。
【図4】上記システムの各検知センサの動作チャート。
【図5】上記実施形態の第1の変形例に係る移動体周辺監視システムの電気的ブロック図。
【図6】上記実施形態の第2の変形例に係る移動体周辺監視システムの電気的ブロック図。
【図7】(a)(b)は上記システムにおけるノイズ波非検出時とノイズ波検出時の発振周波数の掃引処理を説明するための図。
【図8】上記実施形態の第3の変形例に係る移動体周辺監視システムの電気的ブロック図。
【図9】上記システムにおけるノイズ周波数検出時の発振周波数の掃引処理を説明するための図。
【図10】上記実施形態の第4の変形例に係る移動体周辺監視システムの電気的ブロック図。
【図11】上記システムにおけるノイズ周期検出時の発振周波数の掃引処理を説明するための図。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る移動体周辺監視システムの電気的ブロック図。
【図13】従来及び本発明の定在波方式による距離測定原理を説明するための図。
【図14】上記方式において送信波の周波数が上昇したときの任意の地点の定在波パワー変動を示す図。
【図15】従来及び本発明のFM−CW方式による距離測定原理を説明するための図
【図16】上記方式における送信波と反射波との合成波形図。
【図17】従来の検知センサの送信周波数の時間的変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の各種実施形態に係る移動体周辺監視システム(以下、監視システムという)について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る監視システムの構成を示す。この監視システム1は、車両C(移動体)周辺に在る障害物を検知する複数の検知センサ2と、これらの検知センサ2を制御するコントローラ4と、各検知センサ2による検知結果をそれぞれ表示又は音声により報知する報知装置5とを備え、車両Cに搭載されている。
【0038】
検知センサ2は、車両Cの前端左側、前端右側、後端左側、及び後端右側に、それぞれ、配置されている。以下、これらの各位置に配置された検知センサ2をそれぞれ検知センサ2a、2b、2c、2dという。各検知センサ2は、上記のFM−CW方式により、周波数掃引した送信波を放射し、その送信波が障害物で反射した反射波を受信し、送信波と反射波とを基に、障害物の存在を検知し、さらに、センサから障害物までの距離を測定する。検知センサ2は図示された数に限定されない。
【0039】
コントローラ4は、各検知センサ2における周波数掃引と送信出力のオン/オフとを制御し、報知装置5の報知制御を行う。コントローラ4及び報知装置5は、それぞれ、車両CのECU(Engine Control Unit)及びメータパネルと兼用のものであってもよい。
【0040】
図2は、監視システム1の電気的構成を示す。各検知センサ2は、信号源20と、周波数制御回路21と、送受信回路22、通信回路23、電源制御回路24とを備える。周波数制御回路21は、信号源20の発振周波数を掃引する。送受信回路22は、上記発振周波数に対応した周波数、具体的には、発振周波数と同じ周波数を有するレーダ波又は超音波である送信波Wを放射する。また、送受信回路22は、送信波Wが障害物B1により反射されて生じた反射波Wを受信する。通信回路23は、コントローラ4と検知センサ2内の各種回路との間の通信を行い、コントローラ4から送信される各種信号を上記の各種回路に転送する。電源制御回路24は、信号源20の電源をオン/オフし、これにより、送受信回路22の送信出力をオン/オフする。
【0041】
また、各検知センサ2は、ビート成分検出回路(以下、ビート検出回路という)25と、増幅回路26と、周波数成分分析回路(以下、分析回路という)27と、距離算出回路28とをさらに備える。ビート検出回路25は、送信波Wと反射波Wとの合成波からビート信号を検出する。増幅回路26は、ビート検出回路25による検出信号を増幅し、分析回路27は、増幅回路26により増幅された検出信号の周波数成分を分析する。距離算出回路28は、分析回路27による分析結果から、車両C(上記図1参照)周辺の障害物B1の有無を判定し、さらに、検知センサ2から障害物B1までの距離dを算出する。
【0042】
信号源20は、例えば電圧制御発振回路等により構成され、周波数制御回路21から信号源20に入力される電圧に対応した周波数で発振し、その発振周波数を有した発振信号を送受信回路22に出力する。
【0043】
周波数制御回路21(周波数掃引部)は、掃引パターン及び周波数掃引における発振周波数の下限値が予め格納されたメモリと、上記掃引パターンに従って信号源20への入力電圧を掃引することにより上記発振周波数を掃引する掃引回路とを有する。上記発振周波数の掃引により、送信波Wの周波数(以下、送信周波数という)が掃引される。上記掃引パターンに含まれる情報は、周波数掃引幅、掃引期間、及び、掃引方向を指定する情報である。掃引方向は、周波数を上昇させる上昇方向であっても、又は周波数を下降させる下降方向であってもよいが、本実施形態においては上昇方向とする。上記掃引期間は、上記発振周波数が掃引される期間である。
【0044】
上記掃引回路は、上記メモリに格納された各種情報に従って、上記掃引期間の間に、周波数掃引における発振周波数の下限値から、その下限値に上記周波数掃引幅を加えた上限値までの範囲で、発振周波数を連続して上昇掃引する。この掃引処理により、送信周波数は、上記図15に示されるような鋸波状に変調される。この変調により、送信波Wと反射波Wとの合成波形は上記図16に示す波形となり、合成波はビート信号を含む。上記掃引処理において、発振周波数は下降掃引されてもよい。
【0045】
上記掃引回路は、電源制御回路24による上記送信出力のオフ状態からオン状態への切り替えを検知し、上記掃引処理を開始する。そして、上記掃引期間が終了したとき、掃引回路は、その終了を通知する掃引終了信号を電源制御回路24に送出する。
【0046】
送受信回路22(送信部、受信部)は、パッチアンテナ等により構成される。送受信回路22は、周波数制御回路21により掃引された発振周波数を有する発振信号を受信し、その発振周波数と同じ周波数の送信波Wを放射する。また、送受信回路22は、送信波Wが障害物B1により反射されて生じた反射波Wを受信する。送受信回路22は、送信波Wを放射されていない間であっても、ノイズ等の受信が可能な状態である。信号源20と送受信回路22とは、信号源20の発振信号、すなわち、送信波Wと反射波Wとを伝送するマクロストリップ線路等の信号伝送線路29により電気的に結ばれている。反射波Wは微弱であるので、反射波Wが信号源20の信号発振に与える影響等は無視する。通信回路23は、コントローラ4との間で有線又は無線により通信可能に構成されている。
【0047】
電源制御回路24(送信制御部、電源制御部)は、コントローラ4から送信される送信オン信号に基づき、信号源20への給電をオンし、周波数制御回路21の掃引回路から送出される掃引終了信号に基づき、信号源20への給電をオフする。この給電のオン/オフにより、信号源20による発振信号の出力がオン/オフされ、これにより、送受信回路22による送信出力が間欠的にオン/オフされる。
【0048】
ビート検出回路25(検出部)は、信号伝送線路29中の特定地点における上記合成波の振幅を検出し、すなわち、合成波を包絡線検波し、その合成波からビート信号を抜き出す包絡線検波回路等により構成される。
【0049】
増幅回路26は、ビート検出回路25により抜き出されたビート信号の波高値が分析回路27による分解能に応じた値になるように当該検出信号を増幅する。
【0050】
分析回路27(周波数成分分析部)は、増幅回路26により増幅されたビート信号をサンプリングし、符号化し、高速フーリエ変換(FFT)することにより、ビート信号の周波数スペクトルを計測する。
【0051】
距離算出回路28(判定部)は、分析回路67により計測された周波数スペクトルにおいてピーク周波数の有無を検知し、ピーク周波数が無ければ、障害物B1は車両周辺に無いと判定する。距離算出回路28は、ピーク周波数が在れば、障害物B1が車両周辺に在ると判定し、上記ピーク周波数を基に、検知センサ2から障害物Bまでの距離dを算出する。この算出処理においては、上記式(5)のf、ΔF、τに、それぞれ、上記ピーク周波数、上記掃引パターンの周波数掃引幅、及び掃引パターンの掃引期間が代入され、距離dが算出される。なお、周波数掃引幅及び掃引期間の情報は周波数制御回路21から得られる。
【0052】
コントローラ4は、上記掃引パターンの掃引期間を予め記憶したメモリと、上記送信オン信号を各検知センサ2に周期的に送信する送信回路とを有する。
【0053】
報知装置5は、液晶ディスプレイ等の表示器と、その表示器を駆動する表示駆動回路と、スピーカと、スピーカ駆動回路と、上記の表示駆動回路及びスピーカ駆動回路を制御する制御回路とを有する。この制御回路は、各検知センサ2により検知された障害物B1の存在及び/又は障害物B1までの距離dを、表示駆動回路を用いて表示器に表示させ、スピーカ駆動回路を用いてスピーカから音声で報知する。
【0054】
次に、各検知センサ2の電源制御回路24及び周波数制御回路21の動作について、上記図1及び図2に加えて、新たに図3を参照して説明する。図3は、電源制御回路24及び信号源20の動作チャートを示す。以下の説明において、電源制御回路24が信号源20への給電をオン/オフした状態を、電源制御回路24がオン/オフ状態であるという。
【0055】
電源制御回路24は、コントローラ4から送信される送信オン信号を受信したとき、オフ状態からオン状態に切り替わり、信号源20は給電され、発振する。上記送信オン信号は、それぞれ、コントローラ4から周期T1で送信される。周期T1は例えば略30[ms]である。
【0056】
周波数制御回路21は、電源制御回路24のオフ状態からオン状態への切り替わりを検知し、信号源20の発振周波数の掃引を開始し、上記掃引期間だけ、当該発振周波数を掃引する。上記掃引期間の経過後、周波数制御回路21は掃引終了信号を電源制御回路24に送信する。その掃引終了信号を受信した電源制御回路24はオン状態からオフ状態に遷移し、これにより、信号源20の発振は停止する(発振周波数は略ゼロになる)。
【0057】
電源制御回路24がオン状態である期間T2(T2<T1)は、上記掃引期間に略等しい。周期T1の期間うち、上記掃引期間外である他の期間(周期T1から期間T2を減じた期間)、電源制御回路24はオフ状態になる。
【0058】
次に、各検知センサ2(2a、2b、2c、2d)の検知動作について、上記図1及び図2に加えて、新たに図4を参照して説明する。図4は、検知センサ2a、2b、2c、2dの動作チャートを示す。
【0059】
コントローラ4は、上記送信オン信号の送信対象の検知センサ2a、2b、2c、2dを、切替周期T3で順次、切り替える。切替周期T3は、上記掃引期間(期間T2)よりも長く、上記周期T1よりも短い。従って、いずれかの検知センサ2の電源制御回路24がオン状態であるとき、他の検知センサ2の電源制御回路24はオフ状態になる。そのため、いずれかの検知センサ2の送受信回路22から送信波Wが出力されているとき、他の検知センサ2の送受信回路22からは送信波Wが出力されない。切替周期T3は、上記の周期T1を検知センサ2の個数で除して得られる時間である。切替周期T3は、この固定値(の時間)に限られず、変動させてもよい。
【0060】
各検知センサ2においては、送受信回路22による送信波Wの送信及び反射波Wの受信の後に続いて、分析回路27による周波数分析と、距離算出回路28による障害物B1の有無の判定及び距離dの算出が行われる。上記の送受信、周波数分析、判定、及び算出に要する合計時間は、切替周期T3よりも短いことが望ましい。
【0061】
本実施形態においては、いずれかの検知センサ2で信号源20の発振周波数が掃引され送受信回路22の送信出力がオンであるとき、他の検知センサ2では上記発振周波数が掃引されず、上記送信出力がオフされる。従って、各検知センサ2の送信波W又は反射波Wと他の検知センサ2の送信波W又は反射波Wとの間の干渉の発生を確実に防ぐことができる。このため、検知センサ2における障害物B1の検知精度の向上を図ることができる。その結果、報知装置5において、障害物B1の存在についての誤報知や、障害物B1までの距離dについての誤報知を防ぐことができる。
【0062】
次に、上記第1の実施形態の各種変形例に係る監視システムについて図面を参照して説明する。各種変形例を示す各図において、第1の実施形態と同等の構成には、同一の符号を付す。
【0063】
(第1の変形例)
図5は、第1の変形例に係る監視システム1の構成を示す。本変形例の各検知センサ2は、上記第1の実施形態における電源制御回路24(上記図2参照)の代わりに、伝送制御回路30(送信制御部、伝送制御部)を有する。伝送制御回路30は、コントローラ4からの送信オン信号に基づいて信号伝送線路29を導通し、周波数制御回路21からの掃引終了信号に基づいて信号伝送線路29を遮断し、これにより、信号源20から送受信回路22への発振信号の伝送をオン又はオフする。伝送制御回路30は、FET(Field effect transistor)等のスイッチング素子により構成することができる。本変形例においても、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0064】
(第2の変形例)
図6は、第2の変形例に係る監視システム1の構成を示す。本変形例の監視システム1において、各検知センサ2は、上記第1の実施形態の構成と比べ、ノイズパワー検出回路(以下、パワー検出回路という)31(パワー検出部)をさらに有する。パワー検出回路31は、電源制御回路24がオフ状態であるときに送受信回路22により受信されるノイズ波のパワーを検出する。パワー検出回路31は、パワー検出用のダイオード等により構成され、信号伝送線路29の特定地点における上記パワーを検出する。本変形例の通信回路23は、コントローラ4とパワー検出回路31との間の通信を行うように構成されている。
【0065】
コントローラ4は、各検知センサ2のパワー検出回路31に、動作開始を指示するノイズモニタ開始信号と、動作停止を指示するノイズモニタ停止信号とを送信する。コントローラ4は、上記のノイズモニタ開始信号の送信後、各検知センサ2のパワー検出回路31による検出レベルが閾レベル以上であるか否かを判定する。この判定処理により、いずれかの検知センサ2において、上記検出レベルが閾レベル以上であると判定されたとき、コントローラ4は、その検知センサ2のパワー検出回路31周辺に、測定に誤差を生じさせ得る外来ノイズが発生していると推測し、その検知センサ2は障害物B1を検知不能であると判断する。そして、コントローラ4は、検知不能と判断された検知センサ2を通知する報知制御信号を報知装置5に送信する。また、コントローラ4は、その検知センサ2への上記の送信オン信号の送信を一時停止する。
【0066】
報知装置5(報知部)は、コントローラ4から送信される報知制御信号に基づき、検知不能な検知センサ2を表示又は音声により報知する。報知装置5は、各検知センサ2に対応したランプと、それらのランプを点灯させる点灯回路とをさらに有する。報知装置5の制御回路は上記点灯回路を制御する。この制御回路は、上記の報知制御信号に基づき、点灯回路を用いて、検知不能な検知センサ2に対応したランプを点灯又は点滅させる。また、上記制御回路は、上記の報知制御信号に基づき、スピーカ駆動回路を用いて、検知不能の検知センサ2を報知する警告音か、又は検知センサ2のいずれかが検知不能であることを報知する警告音をスピーカから出力させる。報知装置5の構成は上記に限定されない。報知装置5の上記表示器に検知不能な検知センサ2を表示させてもよい。
【0067】
次に、本変形例の監視システム1の動作について、上記図6に加えて、新たに図7(a)(b)を参照して説明する。図7(a)(b)は、パワー検出回路31による検出レベルが閾レベルL以上であるときと閾レベルL未満であるときのパワー検出回路31及び信号源20の動作例を示す。
【0068】
コントローラ4は、電源制御回路24に送信オン信号を送る予定時刻を求め、その予定時刻の所定期間前に、パワー検出回路31に上記のノイズモニタ開始信号を送信する。上記の所定期間は、予め設定されたノイズモニタ期間T4(T4<T3)であり、例えば略5[ms]である。ノイズモニタ期間T4の間、電源制御回路24はオフ状態とされ、送受信回路22の送信出力はオフされている。
【0069】
パワー検出回路31は、上記のノイズモニタ開始信号に基づき、パワー検出動作を開始する。コントローラ4は、ノイズモニタ期間T4をタイマにより計時し、ノイズモニタ期間T4の間、パワー検出回路31による検出レベルを計測する。
【0070】
ここで、図7(a)に示されるように、ノイズモニタ期間T4の間、外来ノイズ等が殆んど無く、上記検出レベルが閾レベルL未満であったとする。このとき、コントローラ4は、ノイズモニタ期間T4の経過後に、パワー検出回路31及び電源制御回路24に、それぞれ、上記のノイズモニタ停止信号及び送信オン信号を送信する。これらのノイズモニタ停止信号及び送信オン信号に基づき、パワー検出回路31は動作を停止し、電源制御回路24はオフ状態からオン状態に切り替わり、周波数制御回路21は発振周波数の掃引を開始する。
【0071】
一方、図7(b)に示されるように、ノイズモニタ期間T4の間に、外来ノイズ等に起因して上記検出レベルが閾レベルL以上になったとする。このとき、コントローラ4は、上記検出レベルが閾レベルL以上であると判定し、報知装置5に上記の報知制御信号を送信する。そして、コントローラ4は、ノイズモニタ期間T4の終了予定時においても、上記検出レベルが閾レベルL以上であった場合、上記のノイズモニタ停止信号及び送信オン信号の送信を遅らせる。これにより、パワー検出回路31の動作が継続し、ノイズモニタ期間T4は延長され、電源制御回路24のオフ状態からオン状態への切り替わりが遅れ、周波数制御回路21の掃引開始が遅れる。
【0072】
その後、コントローラ4は、上記検出レベルが閾レベルL未満になったときに、パワー検出回路31及び電源制御回路24に、それぞれ、上記のノイズモニタ停止信号及び送信オン信号を送信する。これにより、パワー検出回路31は動作を停止し、電源制御回路24はオフ状態からオン状態に切り替わり、周波数制御回路21は掃引を開始する。
【0073】
コントローラ4は、上記検出レベルが閾レベルL以上になった検知センサ2のみについて、上記の信号送信を遅らせることにより、検知動作を遅らせてもよい。又は、全ての検知センサ2について、上記の信号送信を遅らせることにより、検知動作を遅らせてもよい。ノイズモニタ期間T4の延長期間が、一定の期間以上になれば、上記ノイズモニタ停止信号及び送信オン信号の今回の送信を中止してもよい。
【0074】
本変形例においては、報知装置5からの報知により、障害物B1を検知不能の検知センサ2をユーザが認知することができる。また、ノイズ波が発生する環境下であっても、検知センサ2においてノイズレベルに起因する検知誤差を低減することができ、従って、検知精度がさらに向上する。このため、報知装置5による誤報知の発生をさらに抑制することができる。なお、本変形例においても、上記第1の実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0075】
(第3の変形例)
図8は、第3の変形例に係る監視システム1の構成を示す。本変形例の監視システム1において、各検知センサ2は、上記第1の実施形態と比べ、ノイズ周波数検出回路(以下、周波数検出回路という)32(周波数検出部)をさらに有する。周波数検出回路32は、電源制御回路24がオフ状態であるときに送受信回路22により受信されるノイズ波の周波数(以下、ノイズ周波数という)を検出する。周波数検出回路32は、信号伝送線路29の特定地点におけるノイズ周波数を検出する。
【0076】
周波数制御回路21は、周波数検出回路32によるノイズ周波数の検出後に信号源20の発振周波数を掃引するとき、上記検出信号に基づき、周波数検出回路32により検出されたノイズ周波数を避けて発振周波数を掃引する。通信回路23は、コントローラ4と周波数検出回路32との間の通信を行うように構成されている。コントローラ4は、通信回路23を介して、上記のノイズモニタ開始信号及びノイズモニタ終了信号を周波数検出回路32に転送する。
【0077】
次に、本変形例の監視システム1の動作について、上記図8に加えて、新たに図9を参照して説明する。図9は、信号源20の発振周波数と、周波数検出回路32により検出されるノイズ周波数の時間的変化を示す。
【0078】
コントローラ4は、電源制御回路24に上記の送信オン信号を送る予定時刻のノイズモニタ期間T4の前に、周波数検出回路32に上記のノイズモニタ開始信号を送信する。周波数検出回路32は、上記のノイズモニタ開始信号に基づき、周波数検出動作を開始する。
【0079】
ノイズモニタ期間T4の間にノイズ周波数が検出されたとき、周波数検出回路32は、検出されたノイズ周波数を周波数制御回路21に通知する。この通知を受けた周波数制御回路21は、上記ノイズ周波数を跨いで掃引することによりノイズ周波数を避けるのではなく、掃引する周波数範囲をノイズ周波数未満の周波数範囲とすることによりノイズ周波数を避けて、上記発振周波数を掃引する。この掃引処理においては、上記発振周波数をノイズ周波数よりも高い周波数範囲で掃引してもよい。
【0080】
上記の周波数掃引処理においては、いずれかの検知センサ2の周波数検出回路32によりノイズ周波数が検出されたとき、コントローラ4が、他の全ての検知センサ2に、上記検出されたノイズ周波数の情報を通知し、これにより、全ての検知センサ2において上記ノイズ周波数を避けて発振周波数が掃引されてもよい。コントローラ4は、ノイズモニタ期間T4の経過後、周波数検出回路32及び電源制御回路24に、それぞれ、上記のノイズモニタ停止信号及び送信オン信号を送信する。これにより、周波数検出回路32は動作を停止し、電源制御回路24はオフ状態からオン状態に切り替わり、周波数制御回路21は掃引を開始する。
【0081】
本変形例においては、ノイズ波が発生する環境下であっても、検知センサ2においてノイズ周波数に起因する検知誤差を低減することができ、従って、検知精度がさらに向上する。このため、報知装置5による誤報知の発生をさらに抑制することができる。なお、本変形例においても、上記第1の実施形態と同等の効果が得られる。
【0082】
(第4の変形例)
図10は、第4の変形例に係る監視システム1の構成を示す。本変形例の監視システム1において、各検知センサ2は、上記第1の実施形態と比べ、ノイズ周期検出回路(以下、周期検出回路という)33(周期検出部)をさらに有する。周期検出回路33は、電源制御回路24がオフ状態であるときに送受信回路22により受信される周期的なノイズ波の周期(以下、ノイズ周期という)を検出する。周期検出回路33は、信号伝送線路29の特定地点におけるノイズ周期を検出する。周波数制御回路21は、上記ノイズ周期に基づき、送受信回路22によるノイズ波の受信タイミング(以下、ノイズ受信タイミングという)を予測する。そして、周波数制御回路21は、上記の予測したノイズ受信タイミングとは重ならない周波数掃引タイミングで信号源20の発振周波数を掃引する。
【0083】
周期検出回路33は、周波数制御回路21から送信される掃引終了信号と、コントローラ4から送信される送信オン信号とを受信する受信回路を有する。周期検出回路33は、上記受信回路による掃引終了信号の受信時から送信オン信号の受信時までの期間を、電源制御回路24がオフ状態の期間(以下、送信オフ期間という)と認識する。周期検出回路33は、この送信オフ期間を、電源制御回路24のオン/オフ状態を直接検知することにより、把握してもよい。周期検出回路33は、この送信オフ期間に、上記ノイズ周期と、上記送信オン信号の受信タイミングと上記ノイズ受信タイミングとの相対的な時間的ずれと、各ノイズ波の発生期間(以下、各ノイズ発生期間という)とを検出する。上記ノイズ期間、時間的ずれ、及び各ノイズ発生期間は、複数の送信オフ期間に跨る計測により検出されてもよい。
【0084】
周波数制御回路21は、周期検出回路33によるノイズ周期検出後に、上記検出されたノイズ周期、時間的ずれ、各ノイズ発生期間に基づき、これらの検出時以降のノイズ受信タイミングを予測し、上記周波数掃引タイミングを求める。そして、周波数制御回路21は、コントローラ4から送信された送信オン信号を時間的に遅延させて、上記周波数掃引タイミングで電源制御回路24に入力する。また、周波数制御回路21は、電源制御回路24に、コントローラ4から直接入力される送信オン信号よりも、上記の時間的に遅延した送信オン信号を優先させ、その優先された送信オン信号を基に、電源制御回路24をオフ状態からオン状態に切り替える。これにより、周波数制御回路21は、上記の予測したノイズ受信タイミングとは重ならない周波数掃引タイミングで上記発振周波数を掃引する。
【0085】
通信回路23は、コントローラ4と周期検出回路33との間の通信を行うように構成されており、コントローラ4からの送信オン信号を周期検出回路33に転送する。
【0086】
次に、本変形例の監視システム1の動作について、上記図10に加えて、新たに図11を参照して説明する。図11は、上記のノイズ受信タイミングと周波数掃引タイミングとの関係を示す。ここで、ノイズ周期T5は、送信オフ期間T6よりも短く、送信オフ期間T6に検出可能な周期であるとする。また、上記の時間的ずれはなく、ノイズ受信タイミングと現在の周波数掃引タイミングとが重なっているとする。周期検出回路33が送信オフ期間T6にノイズ周期T5を検出した後、周波数制御回路21は、その送信オフ期間T6の経過直後から、周期掃引タイミングを、例えばノイズ周期T5の半分程度の時間だけ遅延させる。この遅延期間は各ノイズ発生期間T7よりも長い。周波数掃引タイミングは、次の送信オフ期間T6以降から時間的に遅らせてもよい。
【0087】
本変形例においては、ノイズ波が発生する環境下であっても、検知センサ2においてノイズ周波数に起因する検知誤差を低減することができ、従って、検知精度がさらに向上する。このため、報知装置5による誤報知の発生をさらに抑制することができる。なお、本変形例においても、上記第1の実施形態と同等の効果が得られる。
【0088】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る監視システムについて図面を参照して説明する。第2の実施形態の監視システムは、上記第1の実施形態と同様に、車両に適用可能である。図12は、第2の実施形態に係る監視システムの電気的構成を示す。同図において、上記第1の実施形態と同等の電気的ブロック構成には同一の符号を付す。第2の実施形態の監視システム1は、コントローラ4と、報知装置5と、上記第1の実施形態の検知センサ2に対応する検知センサ6とを備える。検知センサ6は、車両周辺の障害物B1の有無と、検知センサ6から障害物B1のまでの距離dを定在波方式により検知する。不図示であるが、検知センサ6は、4個、設けられている。検知センサ6の個数はこれに限定されない。
【0089】
各検知センサ6は、信号源60と、周波数制御回路61と、送受信回路62と、通信回路63と、電源制御回路64とを備える。また、各検知センサ6は、パワー検出回路65と、時間軸変換回路66と、増幅回路67と、周波数成分分析回路(以下、分析回路という)68と、距離算出回路69と、信号伝送線路70とをさらに備える。
【0090】
信号源60、送受信回路62(送受信部)、通信回路63、電源制御回路64(電源制御部)、及び信号伝送線路70は、それぞれ、上記第1の実施形態の信号源20、送受信回路22、通信回路23、電源制御回路24、及び信号伝送線路29と同等の構成である。
【0091】
周波数制御回路61(周波数掃引部)は、掃引パターン及び周波数掃引における発振周波数の下限値が予め格納されたメモリと、上記掃引パターンに従って信号源60への入力電圧を掃引することにより上記発振周波数を掃引する掃引回路とを有する。上記発振周波数の掃引により、送信波Wの周波数(以下、送信周波数という)が掃引される。上記掃引パターンに含まれる情報は、周波数掃引幅、掃引期間、及び、掃引方向を指定する情報である。掃引方向は、周波数を上昇させる上昇方向であっても、又は周波数を下降させる下降方向であってもよい。
【0092】
上記掃引回路は、上記メモリに格納された各種情報に従って、上記掃引期間の間に、周波数掃引における発振周波数の下限値から、その下限値に上記周波数掃引幅を加えた上限値までの範囲で、発振周波数を一定の周波数間隔で上昇/下降掃引する。また、上記掃引回路は、各周波数毎に、その周波数期間を一定期間だけ保持する(以下、この期間を保持期間という)。この保持期間は、送受信回路62と障害物B1との間のレーダ波又は超音波による往復時間よりも長く設定されており、その保持期間毎に、周波数の異なる定在波が発生する。
【0093】
パワー検出回路65(検出部)は、信号伝送線路70中の特定地点における定在波のパワーを検出するダイオード等により構成される。パワー検出回路65による検出信号は、上記定在波パワー信号に相当し、送信周波数が掃引されると、検出値が周期的に変動する。
【0094】
ところで、周波数掃引幅が同じであっても、掃引期間が変われば、すなわち、掃引速度が異なれば、定在波パワー信号の周波数が変わる(図13参照)。従って、掃引期間を考慮した補正を行うことなく、定在波パワー信号の周波数から単純に距離dを算出すると、距離dは不正確な値になる。そのため、定在波パワー信号の時間軸を、掃引期間に応じた圧縮/伸長率で圧縮又は伸長し、掃引期間が基準掃引期間であるときの時間軸に変換する補正が必要になる。
【0095】
そこで、時間軸変換回路66は、周波数制御回路61のメモリから、掃引パターンの掃引期間の情報を取得し、その掃引期間に応じた圧縮/伸長率で、上記検出信号を時間軸方向に圧縮/伸長し、これにより、上記補正を行う。この補正においては、基準掃引期間に対する上記掃引期間の比を求め、その比の逆数を上記圧縮/伸長率とする。
【0096】
増幅回路67と分析回路68(周波数成分分析部)とは、それぞれ、上記第1の実施形態の増幅回路26と分析回路27とによるビート信号への処理を上記検出信号に施す。
【0097】
距離算出回路69(判定部)は、分析回路68により計測された周波数スペクトルにおいてピーク周波数の有無を検知し、ピーク周波数が無ければ、障害物B1は車両周辺に無いと判定する。距離算出回路69は、ピーク周波数が在れば、障害物B1が車両周辺に在ると判定し、上記ピーク周波数を基に、検知センサ2から障害物Bまでの距離dを算出する。この算出処理においては、上記式(3)のf、ΔF、τに、それぞれ、上記ピーク周波数、上記掃引パターンの周波数掃引幅、及び上記基準掃引期間が代入され、距離dが算出される。なお、周波数掃引幅の情報は周波数制御回路61から得られる。
【0098】
本実施形態においても、上記第1の実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0099】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものでなく、使用目的に応じ、様々な変形が可能である。例えば、周波数制御回路21又は周波数制御回路61による発振周波数の掃引処理において、任意の発振周波数を周波数掃引幅の中心又は上限とし、この中心又は上限の発振周波数を基準に発振周波数を掃引してもよい。また、送受信回路22又は送受信回路62はホーンアンテナにより構成され、信号伝送線路29又は信号伝送線路70の代わりとして導波管が用いられ、パワー検出回路65が方向性結合器により構成されていても構わない。また、第1の実施形態、その各種変形例、及び第2の実施形態のうち、いずれかを他の実施形態又は変形例と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 移動体周辺監視システム
2、6 検知センサ
20、60 信号源
21、61 周波数制御回路(周波数掃引部)
22、62 送受信回路(送信部、受信部)
24、64 電源制御回路(送信制御部、電源制御部)
25 ビート成分検出回路(検出部)
27、68 周波数成分分析回路(周波数成分分析部)
28、69 距離算出回路(判定部)
30 伝送制御回路(送信制御部、伝送制御部)
31 ノイズパワー検出回路(パワー検出部)
32 ノイズ周波数検出回路(周波数検出部)
33 ノイズ周期検出回路(周期検出部)
65 パワー検出回路(検出部)
5 報知装置(報知部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号源の発振周波数を掃引する周波数掃引部と、
前記周波数掃引部により掃引された発振周波数に対応した周波数の送信波を放射する送信部と、
前記送信波が移動体周辺に在る障害物により反射されて生じた反射波を受信する受信部と、
前記送信波と前記反射波との合成波のパワー又は振幅を検出する検出部と、
前記検出部による検出信号をサンプリングして、その周波数成分を分析する周波数成分分析部と、
前記周波数成分分析部による分析結果に基づき、前記障害物の有無を判定する判定部と、を有した検知センサを複数備えた移動体周辺監視システムにおいて、
前記各検知センサは、前記送信部の送信出力をオン/オフする送信制御部をさらに有し、
前記送信制御部は、前記発振周波数が掃引される期間だけ、前記送信出力をオンし、他の期間は、前記送信出力をオフすることを特徴とする移動体周辺監視システム。
【請求項2】
前記送信制御部は、前記信号源の電源をオン/オフする電源制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の移動体周辺監視システム。
【請求項3】
前記送信制御部は、前記信号源による発振信号の前記送信部への伝送をオン又はオフする伝送制御部を有することを特徴とする請求項1に記載の移動体周辺監視システム。
【請求項4】
前記検知センサのいずれかの送信制御部がオン状態であるとき、他の検知センサの送信制御部はオフ状態になることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の移動体周辺監視システム。
【請求項5】
障害物の検知が不能な前記検知センサを報知する報知部をさらに備え、
前記各検知センサは、前記送信制御部がオフ状態であるときの前記受信部による受信波のパワーを検出するパワー検出部をさらに有し、
前記報知部は、前記検知センサのいずれかの送信制御部がオフ状態であり、かつ、その検知センサのパワー検出部による検出レベルが閾レベル以上であるとき、その検知センサが検知不能であることを報知することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の移動体周辺監視システム。
【請求項6】
前記各検知センサは、前記送信制御部がオフ状態であるときの前記受信部による受信波のパワーを検出するパワー検出部をさらに有し、
前記送信制御部は、前記パワー検出部による検出レベルが閾レベル以上である場合、オフ状態からオン状態への切り替わりを遅らせ、該検出レベルが閾レベル未満になってから、オン状態に切り替わることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の移動体周辺監視システム。
【請求項7】
前記各検知センサは、前記送信制御部がオフ状態であるときの前記受信部による受信波の周波数を検出する周波数検出部をさらに有し、
前記周波数掃引部は、前記周波数検出部による周波数検出後に、前記発振周波数を掃引するとき、該周波数検出部による検出周波数を避けて該発振周波数を掃引することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の移動体周辺監視システム。
【請求項8】
前記各検知センサは、前記送信制御部がオフ状態であるときの前記受信部による受信波の受信周期を検出する周期検出部をさらに有し、
前記周波数掃引部は、前記周期検出部により検出された受信周期に基づいて、前記受信部による受信波の受信タイミングを予測し、その予測した受信タイミングとは重ならないタイミングで前記発振周波数を掃引することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の移動体周辺監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−232055(P2011−232055A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100236(P2010−100236)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】