説明

移動式栽培装置、植物栽培システム、及び植物栽培プラント

【課題】植物を適した育成環境の位置に移動させることができる移動式栽培装置を提供する。
【解決手段】移動式栽培装置は、植物が育成される育成床と、育成床を支持して移動可能な可動台と、植物の育成状況に応じて、可動台の位置を移動させる制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式栽培装置、植物栽培システム、及び植物栽培プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
育成される植物を、庫内において上下に移動させる植物の栽培装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−61623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す栽培装置にあっては、単に予め設定された条件等により植物を上下に移動させているため、移動させた位置が必ずしも植物の育成において適した位置になるとは限らなかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、植物を該植物の育成において適した位置に移動させることができる移動式栽培装置、植物栽培システム、及び植物栽培プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、植物が育成される育成床と、前記育成床を支持して移動可能な可動台と、前記植物の育成状況に応じて、前記可動台の位置を移動させる制御部と、を備えることを特徴とする移動式栽培装置である。
【0007】
また、本発明は、植物が育成される育成床と、前記育成床の位置を移動可能に設けられた可動台と、前記可動台の位置を移動させる制御部と、を備え、前記可動台は、育成環境が互いに異なる複数の育成エリアに移動可能であり、前記制御部は、前記複数の育成エリアから選択された育成エリアに前記可動台の位置を移動させることを特徴とする移動式栽培装置である。
【0008】
また、本発明は、上述の移動式栽培装置、を備えることを特徴とする植物栽培システムである。
【0009】
また、本発明は、上述の植物栽培システム、を備えることを特徴とする植物栽培プラントである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、植物を該植物の育成において適した位置に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による植物栽培プラントの概要を示す図である。
【図2】本実施形態における移動型検出装置を示す図である。
【図3】本実施形態における植物栽培システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図4】本実施形態における植物の収穫時期の制御を示す図である。
【図5】本実施形態において検出対象となる花と実の位置関係を示す図である。
【図6】本実施形態において検出対象となる実の成熟度の検出を説明する図である。
【図7】本実施形態において検出対象となる葉の状態を示す図である。
【図8】本実施形態における移動式栽培装置における可動台を示す図である。
【図9】本実施形態における移動式栽培装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図10】第1育成室内において可動台を移動させる場合の一例を示す図である。
【図11】第1育成室から第2育成室に可動台を移動させる場合の一例を示す図である。
【図12】複数の育成室それぞれに可動台を移動させる場合の一例を示す図である。
【図13】撮像されやすい位置に植物を移動させる場合を説明する図である。
【図14】撮像されやすい角度に植物を傾斜させる場合を説明する図である。
【図15】ベルトコンベアが可動台を搬送する例を示す図である。
【図16】水に浮いている育成床を可動台が移動させる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態による植物栽培プラント4の概要を示す図である。図1(a)は、その断面図を示し、図1(b)は、その平面図を示す。
植物栽培プラント4は、植物栽培システム1(図3)を備え、植物の栽培を行う設備である。
図1に示すように、植物栽培プラント4は、植物9が育成される植物栽培用の育成床6と、育成床6を支持して移動可能な可動台60と、可動台60の移動用のガイドレール70と、育成床6を外気空間7と隔てるために囲うプラント囲い8と、育成床6で育成される植物9に光を照射するランプ10とを備えている。植物栽培プラント雰囲気調整装置2はプラント囲い8の内側空間13の雰囲気を調整するものである。また、育成床6は、植物9の一苗毎に設けられている。そして、可動台60は、育成床6それぞれを支持して移動可能なように育成床6毎に複数設けられている。また、育成床6は、図示の例では土の床であるが、不図示の液肥循環装置を備える水耕栽培用の水耕床であってもよい。
【0013】
プラント囲い8は、育成床6の周辺を外気空間7と隔てて、栽培される植物に適した雰囲気に保つためのものである。ランプ10は、図示の例ではプラント囲い8の内部に設置されている。
【0014】
さらに、植物栽培プラント4はプラント囲い8の内部に、所定条件に調整された空気を供給するための空調機12を備える。通常、空調機12は内側空間13から吸入口16を通じて空気を取り込んで、調整し、排出口18から内側空間13に戻す。
【0015】
植物栽培プラント雰囲気調整装置2においては、ランプ10がランプ囲い20で囲われている。ランプ囲い20の壁の少なくとも一部は透明である。ランプ囲い20には、ランプ囲い20の内側と、内側空間13及び外気空間7とを選択的に導通する一の管路22が接続されている。また、ランプ囲い20には、ランプ囲い20の内側と、内側空間13及び外気空間7とを選択的に導通する他の管路24が接続されている。即ち、一の管路22は二股管26の根元で分岐し、二股管26の一方が内側空間13に通じ、他方が外気空間7に通じている。他の管路24は二股管28の根元で分岐し、二股管28の一方が内側空間13に通じ、他方が外気空間7に通じている。二股管26、28の根元には2方切り替え弁部30、32がそれぞれ設けられている。
【0016】
外気空間7の温度が内側空間13の設定温度より高いときには、一の管路22、他の管路24とも、外気空間7に通ずるように2方切り替え弁部30、32で設定する。外気空間7の温度が内側空間13の設定温度より低いときには、一の管路22、他の管路24とも、内側空間13に通ずるように2方切り替え弁部30、32で設定する。
【0017】
この選択的な設定により、外気空間7の温度が内側空間13の設定温度より高いときには、空気が外気空間7から取り込まれ、空気が一の管路22、ランプ囲い20、他の管路24をこの順に経由して矢印Aの方向に進行して再び外気空間7に放出されるので、ランプ10がこの空気で冷却される。また、ランプ10の熱で暖められた空気が内側空間13に流入することがない。従って、ランプ10の熱による空調機12の冷房負荷の増大を防ぎ、空調負荷が軽減される。
【0018】
また、選択的な設定により、外気空間7の温度が内側空間13の設定温度より低いときには、空気が内側空間13から取り込まれ、空気が一の管路22、ランプ囲い20、他の管路24をこの順に経由して矢印Bの方向に進行して再び内側空間13に放出されるので、ランプ10がこの空気で冷却されるとともにランプ10の熱で暖められた空気が内側空間13に還流する。従って、ランプ10の熱により空調機12の暖房負荷を軽減することができる。
なお、一の管路22には、空気を矢印A或いは矢印Bの方向に送風するためのファンのような送風手段36が備えられている。
また、図1(b)に示すように、プラント囲い8の内側空間13は、隔壁38によって分割され、内側空間13−1と13−2とに分かれている。内側空間13−1と13−2とのそれぞれが、異なる環境条件に設定することができる。また、隔壁38の一部には、内側空間13−1と13−2とを行き来することが可能な開閉式の通路が設けられている。
植物9が栽培されている育成床6の間の通路では、移動型検出装置40が自走して植物9の状態を検出する。
【0019】
また、可動台60は、育成床6を支持してガイドレール70に沿って自走する。すなわち、可動台60は、植物9の位置をガイドレール70に沿って移動させる。例えば、可動台60は、内側空間13−1及び13−2のそれぞれの空間内を移動する。また、可動台60は、内側空間13−1と13−2とを行き来する。ガイドレール70は、可動台60の走行をガイドするレールである。また、ガイドレール70は、平面状の台に凹形状に設けられているレールであり、移動型検出装置40の移動を妨げないように設置されている。さらに、このガイドレール70が設置されている平面状の台は、この台の上側空間と下側空間との環境が遮断されないような網目構造となっている。
【0020】
[植物の育成状況の管理]
最初に、植物栽培プラント4において、移動型検出装置40が移動しながら、植物の状態を検出する場合を例示する。
【0021】
図2を参照し、植物栽培プラント4における植物の状態を検出する移動型検出装置40を示す。
図2は、本実施形態における移動型検出装置40を示す図である。
移動型検出装置40は、移動型車両本体41を台車とする。移動型車両本体41は、移動手段とする車輪41Wを備え、駆動部(不図示)から供給される動力により移動する。
移動型車両本体41の上面には、鉛直軸を中心として回転自在に支持されるブラケット42Bが設けられる。そのブラケット42Bには、アーム部42が設けられ、ブラケット42Bは、アーム部42を前後方向に転動自在に支持している。また、図2に示すように、移動型検出装置40が、連続して接続される複数のアーム部42(42−1、42−2、42−3、42−4)を備え、アーム部42の移動型車両本体41と反対側の先端には、撮像部300が設けられている。
【0022】
移動型検出装置40は、アーム部42、撮像部300、移動型検出装置40の制御部(不図示)を機能させ、自走可能とする電源部(不図示)を備えている。
移動型検出装置40の制御部は、移動型車両本体41の移動制御、アーム部42を要求に応じて駆動して、撮像部300の位置及び方向を定める駆動制御、撮像部300を機能させる撮像制御、撮像した画像情報に基づいて検出処理、処理結果などを通信する通信制御などを行う。
移動型検出装置40は、植物栽培プラント4(図1)において栽培される植物9(図1)の状態を移動しながら検出する。
また、移動型検出装置40は、移動型車両本体41の代わりに固定的に設けられた台座であってもよい。
【0023】
次に、図3を参照し、植物、すなわち農作物の栽培を制御する植物栽培システムの概要について説明する。
図3は、本実施形態における植物栽培システム1の構成の一例を示す概略ブロック図である。
植物栽培システム1は、栽培する植物を収穫して出荷されるまでの工程において、育成環境などの環境条件について制御を施すことにより収穫時期を制御して、収穫予定時期の収穫量を高めることができる。
収穫予定時期の収穫量を高めるには、発芽から収穫までの各工程で、植物の成長を管理する直接的な制御と、間接的な制御とがある。
直接的な制御とは、間引き、剪定などにより植物自体を加工することなどが含まれる。
また、間接的な制御とは、各種環境条件の設定を行うことなどが含まれる。
植物栽培システムは、植物と、その植物を栽培する環境を制御対象として、その植物の育成状況、収穫時期などを最適化して、収穫予定時期の収穫量を増加するように制御する。
【0024】
本実施形態に示す植物栽培システムでは、植物の栽培環境を制御対象として、モデル化することにより、それぞれの栽培工程の制御を容易化する。
その制御にあたり、植物自体を直接的な方法だけで完全に制御しきれないこと、屋内環境であったとしても、バラツキがなくなるように環境の均一性を確保することが困難であることなどが、制御を困難とする要因となる。また、成長度合いが植物の個体差に依存することや、同一の個体内であっても、実の収穫時期がバラツクことにより、制御を困難とする要因となっている。
本実施形態では、その制御対象をモデル化し、制御を困難とする要因を外乱として捉え、育成状況に応じて、そのモデルを最適化することにより、収穫予定時期の収穫量を確保する制御を容易にする。
このような植物栽培システムの構成例について説明する。
【0025】
この図3に示される植物栽培システム1は、例えば、制御対象部100、判定部200、撮像部300、撮像位置移動部400、プラント制御部500、及び、移動式栽培装置600を備えている。
【0026】
制御対象部100は、管理対象である植物9と、植物9の育成環境を制御する環境駆動部120を備えている。
植物9は、発芽後の葉、茎、花・実、及び根の状態によって育成状況を判定できる。その育成状況は、基準時(発芽時など)からの経過時間に関係付けて判定することができる。
例えば、葉の状態による判定では、葉の枚数、1枚の葉の大きさ、生い茂った葉の投影面積、しおれ具合(角度、縦横比)などがあげられる。茎の状態による判定では、背丈、枝の張り具合、太さなどがあげられる。花・実の状態による判定では、数、密度、配置、実の成熟度などがあげられる。根の状態による判定では、長さ、広がり具合などがあげられる。
【0027】
環境駆動部120は、プラント制御部500から供給される環境制御量に応じて、植物が栽培される育成環境を制御する。ここで、育成環境とは、例えば、植物9に供給される光に関する条件、空気に関する条件、水に関する条件、又は、肥料に関する条件等に基づく環境である。光に関する条件としては、植物9に供給される光の光量、又は、波長等の条件があり、空気に関する条件としては、植物9の周囲の温度、湿度、風量、及び、二酸化炭素濃度等の条件がある。また、水に関する条件としては、植物9に供給される水の水量、又は、水温等の条件があり、肥料に関する条件としては、植物9に供給される水に含まれる養分濃度等の条件がある。
環境駆動部120は、光制御部121、空調設備122、二酸化炭素処理部123及び水調整設備124を備えている。
【0028】
光制御部121は、発光部又は遮光部を含み、植物9に与える光の光量又は波長を制御する。一般的な植物9は、適当な光の強度及び照射時間に依存する光の量により光合成が行われ、成長が促進される。また、植物9の好日性を利用して、光の照射方向を制御して、植物9の成長する方向を制御する。また、光制御部121は、太陽などの自然光と異なり、特定の波長を制限して与えることにより、特定の成長を促進させる。
例えば、発光波長を制限できる発光部としては、発光ダイオード、高圧ネオンランプなどがある。遮光部によって波長を制限する場合には、波長選択性のフィルターを用いる。
【0029】
空調設備122は、植物9が置かれている周囲温度、湿度、及び、風量を制御する。
十分な容量の空気を、適正な周囲温度、湿度、及び、風量に制御して与えることにより、植物9の成長にダメージを与えることなく成長を促進させることができる。
二酸化炭素処理部123は、空調設備122によって管理されている空気中の二酸化炭素濃度を制御する。適正量の二酸化炭素濃度を維持することにより、光合成を促進させることができる。二酸化炭素処理部123は、単に二酸化炭素を発生させるのではなく、他の設備が発生した二酸化炭素を再利用してもよい。
【0030】
水調整設備124は、植物9に給水する水量、水温、及び、養分濃度のうちから、少なくとも1つを制御する。特に水耕栽培である場合、水温及び養分濃度は大事な管理項目である。
このように、植物栽培システム1では、環境駆動部120を備えることにより、屋外環境の変化を遮蔽して、人工環境の元で栽培環境を構築する形態と、屋外環境の変化も利用しつつ、適切な環境を補助的に構築する管理支援型の栽培環境とする形態のいずれにも適用可能である。いずれの形態を採用するかは、栽培する植物の種別、栽培時期、成長過程、施設が置かれた環境などの条件により適宜選択される。
例えば、発芽から所定の期間は、人工光を用いて連続照射することにより、成長が促進される植物があることが知られている。また、照射する波長を選択することにより、成長量を制御して目的の成長を促進させることを可能とする。
また、環境駆動部120は、内側空間13−1と13−2との育成環境それぞれを、プラント制御部500から供給されるそれぞれの内側空間に対応する環境制御量に応じて、それぞれ制御することができる。すなわち、環境駆動部120は、内側空間13−1と13−2とのそれぞれを互いに異なる育成環境に制御することができる。
【0031】
判定部200は、撮像部300によって撮像された画像情報と、植物9の育成モデルとに基づいて、植物9の育成状況を判定する。
判定部200は、検出部210、育成モデル部220、状況記憶部230(記憶部)、及び、育成状況判定部240を備えている。
検出部210は、撮像された植物9の画像情報から、該植物9の育成状況を検出し、該画像情報と該育成状況を状況記憶部230に記憶させる。
また、検出部210は、撮像された植物9の画像情報と、その画像を撮像した位置情報から、その画像情報に含まれる植物9の特徴点の位置又は植物9の位置を検出し、検出した位置情報と撮像した時間情報とを、状況記憶部230に記憶される画像情報に関連づけて記憶する。
育成モデル部220は、複数の育成モデルを備える。育成モデル部220に設定される複数の育成モデルは、例えば、基準時(発芽時など)からの経過時間と植物9の育成状況とを関連づける、経過時間による育成状況モデル221(第1育成モデル)、花が成実した時の実の位置を推定した、花の位置に対する実の配置モデル222(第2育成モデル)、及び、大きさ、形又は色を基準とするパターンを用いて、検出する対象の特徴を抽出し、収穫時期を判定する収穫時期判定モデル223(第3育成モデル)を含む。
【0032】
状況記憶部230は、植物9の画像情報、育成状況、画像情報に含まれる植物9の特徴点の位置情報又は植物9の位置情報、及び、撮像した時間情報を関連づけて記憶する。
育成状況判定部240は、記憶された画像情報と育成状況との少なくとも一方を用いて、植物9の育成モデルに基づいて育成状況を判定する。
育成状況判定部240は、育成モデル部220に含まれる、経過時間による育成状況モデル221(第1育成モデル)、花の位置に対する実の配置モデル222(第2育成モデル)、及び、収穫時期判定モデル223(第3育成モデル)の少なくとも一つを基準として、植物9の育成状況を判定する。
【0033】
撮像部300は、植物9(と該植物9の周囲の状況)を撮像し、画像情報を生成する。
撮像部300は、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどを搭載した撮像装置、及び、撮像用の補助光の発光装置を備えている。
撮像部300は、撮像位置移動部400に含まれる移動型検出装置40(図2)が備えるアーム部42の先端部に搭載される。アーム部42の先端部の動きに応じて、撮像位置が変更され、被写体である植物9との相対位置が変化する。また、アーム部42の先端部に設けられた旋回台に撮像部300が搭載され、旋回台の制御により任意の方向に旋回可能となる。これらの制御を組み合わせることにより、撮像部300は、任意の位置、任意の方向から植物9を撮像することが可能となる。
【0034】
撮像位置移動部400は、指示された位置まで撮像部300が撮像する位置を移動させて、植物9を指示された方向から撮像可能とする。
撮像位置移動部400は、撮像する位置を移動させる移動型検出装置40(図2)を備え、移動型検出装置40(図2)には(多関節型の)アーム部42(ロボットアーム)が設けられる。
そのアーム部42の先端には、撮像部300に被写体からの光を導く光学系が設けられており、撮像位置移動部400は、その光学系の光軸を指示された方向に転回させる。
【0035】
移動式栽培装置600は、プラント制御部500からの指令に基づいて、可動台60を移動させることにより植物9の位置を移動させる。例えば、移動式栽培装置600は、植物9の位置を育成環境が互いに異なる複数の育成エリアに移動可能である。すなわち、移動式栽培装置600は、植物9の位置を移動させることにより植物9の育成環境を制御することができる。
【0036】
プラント制御部500は、撮像位置移動部400によって移動した位置から撮像された植物9の画像情報に基づいて、植物9の育成モデルを基準として育成状況を判定した結果に従って、植物9の育成環境を制御する。
プラント制御部500は、育成モデル生成部510、環境制御部520、位置制御部530(撮像位置制御部)、生産計画設計部540、収穫計画設計部550、剪定計画設計部570、及び、可動台制御部610(制御部)を備えている。
育成モデル生成部510は、育成モデルを画像情報に基づいて生成し、育成モデル部220に保持される育成モデルを更新する。
育成モデル生成部510は、画像情報から生成された育成状況によって第1育成モデルを決定する第1モデル生成部、画像情報から開花時の花の位置を検出し第2育成モデルを生成する第2モデル生成部、画像情報から収穫時期を判定する第3育成モデルを生成する第3モデル生成部を備えている。
【0037】
環境制御部520は、判定された育成状況に応じて育成環境を制御する環境制御量を生成する。例えば、環境制御部520は、判定された育成状況に応じて植物9に与える光を制御する場合には、光制御部121によって、植物9に与える光の光量又は波長を制御する。環境制御部520は、判定された育成状況に応じて植物9に与える二酸化炭素濃度を制御する場合には、二酸化炭素処理部123によって、植物9が置かれている二酸化炭素濃度を制御する。環境制御部520は、判定された育成状況に応じて植物9に与える空気を制御する場合には、空調設備122によって、植物9に給水する周囲温度、湿度、及び、風量の少なくともいずれか1つを制御する。環境制御部520は、判定された育成状況に応じて植物9に与える水を制御する場合には、水調整設備124によって、植物9に給水する水量、水温、周囲温度、及び、養分濃度の少なくともいずれか1つを制御する。また、環境制御部520は、内側空間13−1と13−2とのそれぞれに対する環境制御量を生成する。
位置制御部530は、撮像位置移動部400を制御して、植物9を撮像する位置及び方向を指示する。位置制御部530は、撮像部300の位置、撮像方向を変更して目的に応じた画像情報を撮像するために撮像位置移動部400を制御する。
【0038】
生産計画設計部540は、撮像された画像情報に基づいて生産計画を設計する。
収穫計画設計部550は、第3育成モデルに基づいて、収穫計画を設計する。
配置計画設計部560は、第1育成モデルに基づいて、植物栽培プラント4において栽培される植物9の配置計画を設計する。また、配置計画設計部560は、第1育成モデルと撮像された画像情報に基づいて判定された育成状況に応じて、植物9の配置計画を変更する。
剪定計画設計部570は、第1育成モデルに基づいて、植物9を剪定する剪定計画を設計する。また、剪定計画設計部570は、第2育成モデルに応じて、植物9の花(実)を剪定する剪定計画を設計する。
【0039】
可動台制御部610は、移動式栽培装置600に含まれる構成であり、植物9の育成状況に応じて、可動台60を制御する。例えば、可動台制御部610は、配置計画設計部560により設計された配置計画に基づいた指令を受けて、植物9が育成されている可動台60を植物9の育成状況に応じた位置に移動させる。また、可動台制御部610は、位置制御部530による撮像位置移動部400の制御と協調して可動台60を制御することにより、撮像部300が植物9を撮像する位置及び方向に応じて、植物9を移動、又は、傾斜させる。
なお、可動台制御部610は、収穫計画設計部550が設計した収穫計画に基づいた指令を受けて、収穫可能となった植物9が育成されている可動台60を収穫作業が行われる位置に移動させてもよい。
【0040】
(植物の収穫時期の制御)
次に、図4を参照し、本実施形態における植物の収穫時期の制御について説明する。
図4は、本実施形態における植物の収穫時期の制御を示す図である。
この図4に示されるグラフは、横軸を発芽からの経過日数(時間)、縦軸が植物の成長度合いを示し、いわゆる成長曲線の形状を有する。このグラフが示すように、成長度合いは経過日数に応じた関数として定義することができ、特定の環境条件下における傾向を、過去のデータに基づいて生成された育成モデルを植物9の育成状況管理の基準とする。
【0041】
グラフS4aは、植物9の育成状況管理の基準とする成長曲線を示す育成モデルである。このグラフS4aに基づいて、収穫時期を設定することができる。
グラフS4bは、植物の育成状況管理を行わずに、グラフS4aに示した育成モデルより遅れて成長する過程を示す。このグラフS4bに示すように育成すると収穫時期が、計画より遅れてしまうことになる。そこで、植物栽培システム1では、育成の過程で検出された育成状況の遅れを、周囲の環境を制御することにより、育成状況を促進させるように制御する。
育成状況を促進する場合には、制御対象である植物9の種別、及び、対策を実施する時期に応じて処理内容が選択される。例えば、対策の内訳として、光照射量を増加させたり、周囲温度、水温を高めたり、必要な養分量を増加させたりするなどの方法があげられる。
【0042】
一方、育成状況を遅らせる場合にも、制御対象である植物9の種別、及び、対策を実施する時期に応じて処理内容が選択される。例えば、対策の内訳として、光照射量を減少させたり、周囲温度、水温を低下させたり、必要な養分量を減少させたりするなどの方法があげられる。
【0043】
また、検出部210による育成状況の検出は、各個体の状況を検出し、それぞれ検出された結果に基づいて総合的に判定することも可能である。その総合的な判定では、それぞれ検出された検出結果を平均化したり、バラツキを検出したりするなど、各種統計処理の手法を適用できる。
例えば、全体を複数の区画に分割し、その区画に含まれる植物9から検出された結果を区画ごとにまとめて判定することも可能である。このように区画を分割することにより、配置された位置によるバラツキを検出することができる。
【0044】
また、異なる種類の植物を区画ごとに配置して、それぞれに適した環境を設定することも可能である。
植物9の育成状況の検出には、1つの判定基準によって検出してもよく、或いは、複数の判定基準によって検出した複数の変数に基づいて判定してもよい。
【0045】
(植物の育成状況の判定)
次に、図5から7を参照し、本実施形態における植物の育成状況の判定について説明する。
判定部200によって行われる植物9の育成状況の判定では、検出対象に応じて複数の判定項目を選択することができる。例えば、判定部200によって行われる植物9の育成状況の判定では、検出対象として、葉、茎、花・実、又は、根を選択することができ、選択された検出対象に応じて複数の判定項目を選択することができる。
検出部210は、以下に示す判定項目に応じて、選択された検出対象の状態を検出する。育成状況判定部240は、検出された検出対象の状態について、記憶された画像情報と育成状況との少なくとも一方を用いて、植物9の育成モデルに基づいて育成状況を判定する。また、育成状況判定部240は、判定の基準とする育成モデルを、育成モデル部220に備えられている複数の育成モデルの中から判定項目に応じて選択する。
【0046】
判定部200における葉の状態による判定では、葉の枚数、1枚の葉の大きさ、生い茂った葉の投影面積、しおれ具合(角度、一枚の葉の縦横比)などが判定項目としてあげられる。
葉の枚数は、予め定められた範囲内に存在する枚数、或いは、茎(特定された枝)に着いた葉の枚数を計数することにより検出される。
1枚の葉の大きさは、特定された葉の大きさ、予め定められた範囲内に存在する葉の大きさの平均、或いは、茎(特定された枝)に着いた葉の大きさの平均を算出することにより検出される。また、葉の大きさは、長手方向(縦)の長さ、長手方向と直交する方向(横)の長さ、面積とすることができる。
生い茂った葉の投影面積は、植物9の側面から鉛直面に投影された面積として検出される。
また、葉のしおれ具合によって、水分不足などのストレスを容易に検出することができる。しおれた状態では、葉先が下を向くことから、葉のしおれ具合は、水平面と葉の表面とがなす角度から検出される。或いは、葉のしおれ具合は、一枚の葉の縦横比から算出されてもよい。しおれたことにより葉の張りがなくなり、見かけ上の横幅が狭くなる。そのため、しおれ具合により、一枚の葉の縦横比が変化する。
【0047】
判定部200における茎の状態による判定では、茎の背丈、枝の張り具合、茎の太さなどが判定項目としてあげられる。
茎の背丈は、茎(或いは先端の葉)の先の高さから検出される。例えば、茎の背丈は、撮像部300の高さを茎の高さと一致させることにより、撮像部300の高さから検出できる。
枝の張り具合は、枝分かれしている分岐数、或いは、枝の長さから検出される。
茎の太さは、基準の高さの茎の太さから検出される。
【0048】
判定部200における花・実の状態による判定では、数、密度、配置、実の成熟度などが判定項目としてあげられる。
図5は、検出対象となる花と実の位置関係を示す図である。
図5(a)、(c)に開花期の状態を示し、図5(b)、(d)に成実期の状態を示す。
実の位置が花の位置に依存することから、花の数及び位置を特定することにより、実の数と位置を特定することができる。開花期に示す花f1、f2の位置は、成実期には実F1、F2の位置として変化する。
花(実)の数は、予め定められた範囲内に存在する数量、或いは、茎(特定された枝)に着いた花(実)の数量を計数することにより検出される。
花(実)の密度は、検出された花(実)の数量を単位容量で除算することにより算出される。或いは、花(実)の密度は、簡易的には、撮像された画像の所定の範囲に存在する花(実)の数量を計数することにより検出される。
花(実)の配置は、3次元計測の手法を用いることにより検出される。また、検出された花の位置から、成実期の実の位置を推定することができる。実の大きさ、重量を仮定して、その実がぶら下がる枝の強度と長さを演算条件とすることより、花の3次元位置に基づいて、実の推定位置を算出することができる。
この算出された推定位置から、隣接する実との干渉を推定することができる。つまり、実の大きさより、相対距離が近い場合には、干渉が生じると推定することができる。
【0049】
ところで、実の成熟度は、実の色の変化に基づいて検出できる場合がある。
図6は、検出対象となる実の成熟度の検出を説明する図である。
図6(a)に示されるように、熟した実F3の色と熟しきらない実F4の色とが異なる場合に適用できる。熟しきらない実F4の色C1に対し、熟した実F3の色C2への色の変化を検出することにより、実の成熟度を検出できる。
図6(b)に示されるように、実の一部(例えば、下側)の色C2が変色し、その変色した範囲(Z2)を検出することにより実の成熟度を検出できる。
実の成熟度は、成熟度が高くなるにつれ、光の透過量が高く変化する場合がある。実に対して所定の光量の光(測定補助光)を照射して、その透過光の量を検出する。例えば、実の下部(又は側面)に接近した位置から測定補助光を照射して、撮像部300は、透過された光を検出する。その際、撮像部300の画角に、補助光源からの直接光が入らないように位置関係を調整する。
【0050】
判定部200における根の状態による判定では、長さ、広がり具合などが判定項目としてあげられる。水耕栽培であれば、根の長さを検出できる場合がある。根の長さは、株の位置からの長さとして検出される。根の広がり具合は、株の位置から広がった根の面積により検出される。根の長さも広がり具合も、いずれも水中であることから直接的には検出されにくい。しかし、例えば、補助光を照射することにより生じる根にの影により、根の長さや広がり具合を間接的に検出することができる。
【0051】
上記に示した、検出部210は、植物9を検出する直接的な検出方法のほかに、直接検出された結果に基づいた3次元モデルを作成することにより、直接検出できない情報を間接的に検出してもよい。
図7は、検出対象となる葉の状態を示す図である。
図7(a)に、4枚の葉の着いた茎を俯瞰した画像として示す。
植物9の側面から撮像した画像情報では、この図に示されるような画像情報を取得できるが、平面的な状態を検出するのは困難である。そこで、4枚の葉を3次元情報として抽出する。
図7(b)に、図7(a)に示した4枚の葉を3次元情報とした結果に基づいて、水平面に投射した結果を示す。このような次数変換の方法を採ることにより、植物9の上部からの撮像が困難な場合でも、任意の高さの範囲に含まれる葉の平面投射図を作成することができる。破線の円は、葉の先端の近傍を通過する円を示す。
【0052】
図7(c)に、図7(a)に示した4枚の葉が、しおれた状態を示す。それぞれの葉の先端が地面に向かって垂れ下がった状態を示す。この状態の4枚の葉を3次元情報として抽出する。
図7(d)に、図7(b)と同様に図7(c)に示した4枚の葉を3次元情報とした結果に基づいて、水平面に投射した結果を示す。4枚の葉がしおれた状態となったことにより、葉の先端の近傍を通過する円は、図7(b)に示した葉の先端の近傍を通過する円より小さな円となる。
このように投射された葉のイメージが示す葉の先端の近傍を通過する円の直径により、葉の成長度合い、しおれ具合などの検出を行うことができる。
また、茎の先端に花が咲く「菊」のような植物の花の状態を検出することに応用できる。
【0053】
(育成モデルの生成)
次に、プラント制御部500において育成モデル生成部510が生成する育成モデルについて説明する。
前述の「(植物の育成状況の判定)」において、判定項目に応じて目的にあった検出条件による植物9の育成状況の検出について示した。ここでは、検出された育成状況を判定するための基準(判定項目)として用いる育成モデルの生成について示す。
最初に、基準時(発芽時など)からの経過時間に応じて、植物9の育成状況を判定するために、基準時(発芽時など)からの経過時間と植物9の育成状況とを関連づける経過時間による育成状況モデル(第1育成モデル)が必要とされる。
この第1育成モデルには、各種項目を選択することができる。例えば、葉の状態による判定では、葉の枚数、1枚の葉の大きさ、生い茂った葉の投影面積、しおれ具合(角度、縦横比)などがあげられる。茎の状態による判定では、背丈、枝の張り具合、太さなどがあげられる。花・実の状態による判定では、数、密度、配置、実の成熟度などがあげられる。根の状態による判定では、長さ、広がり具合などがあげられる。
選択された項目において、例えば、基準時(発芽時など)からの経過時間に応じ成長曲線に基づいた数値を基準値とすることにより、モデル化することができる。
この第1育成モデルは、個体の成長の基準とするだけでなく、隣接する個体との干渉を判定する場合にも用いることができる。
【0054】
また、花が成実した時の実の位置を推定した、花の位置に対する実の配置モデル(第2育成モデル)が必要とされる。
この第2育成モデルには、花・実の状態による判定では、数、密度、配置などがあげられる。
選択された項目において、花の位置に対する実の配置を推定した位置、実の大きさを基準値とすることにより、モデル化することができる。
この第2育成モデルは、個々の実の成長の基準とするだけでなく、隣接する実のそれぞれの大きさと隔離距離により、隣接する実の干渉を判定する場合にも用いることができる。
【0055】
また、大きさ、形又は色を基準とするパターンを用いて、検出する対象の特徴を抽出する、収穫時期を判定する収穫時期判定モデル(第3育成モデル)が必要となる。
【0056】
つまり、育成モデル生成部510は、判定項目として選択された項目に対応する数値をモデル化することにより基準値を生成し、育成モデル部220の初期値とする。
育成モデル生成部510は、育成モデルの生成を画像情報に基づいて生成して、更新する。生成した育成モデルと、実際の状態との乖離が大きい場合には、無理な制御量を与えることとなる場合がある。その場合には、育成モデル生成部510は、予め定めた閾値を基準に判定して育成モデルを補正し、育成モデル部に保持された値を更新する。なお、育成モデルの更新は、段階的に定めた成長課程によって更新周期を変更してもよい。
【0057】
判定部200では、検出部210によって検出された値と、育成モデル部220に保持された各育成モデルの値とに基づいて育成状況判定部240によって判定(演算)することにより、検出された値と、育成モデル部220に保持された各育成モデルの値との差を算定し、育成状況を判定する。
【0058】
なお、育成モデル生成部510は、育成モデルの値を、過去に検出された検出値、過去に設定されたモデルの値などを統計処理して算定しても良い。
【0059】
(周囲環境の制御)
環境制御部520は、判定された育成状況に応じて育成環境を制御する環境制御量を生成する。例えば、環境制御部520は、判定された育成状況に応じて植物9に与える光を制御する場合には、光制御部121によって、植物9に与える光の光量又は波長を制御する。環境制御部520は、判定された育成状況に応じて植物9に与える二酸化炭素濃度を制御する場合には、二酸化炭素処理部123によって、植物9が置かれている二酸化炭素濃度を制御する。環境制御部520は、判定された育成状況に応じて植物9に与える空気を制御する場合には、空調設備122によって、植物9に供給する空気の温度、湿度、及び、風量の少なくともいずれか1つを制御する。環境制御部520は、判定された育成状況に応じて植物9に与える水を制御する場合には、水調整設備124によって、植物9に給水する水量、水温、及び、養分濃度の少なくとも1つを制御する。
例えば、育成状況を促進させるためには、環境制御部520は、光制御部121によって、植物9に与える光の照度を高め、照射時間を長くして、光量が増加するように制御する。また、空調設備122によって、植物9の周囲温度を高めることにより、育成状況を促進させることができる。このような条件の制御では、植物の種類、育成過程などによって異なり、それぞれに適する制御内容が定められる。
周囲環境の制御は、栽培時には、環境制御部520により比較的短い周期で繰り返し行われ、異常値の検出を早く行うことにより、植物9へのダメージを低減し、適切な環境で栽培できるようにする。
【0060】
(撮像位置の制御)
位置制御部530は、撮像位置移動部400を制御して、植物9を撮像する位置及び方向を指示する。位置制御部530は、撮像部300の位置、撮像方向を変更して目的に応じた画像情報を撮像するために撮像位置移動部400を制御する。
撮像位置移動部400は、多間接型のアーム部42を備える移動型検出装置40を備えていることから、撮像部300の位置を柔軟に設定することができる。
植物9の実が、葉や他の実の影になるような位置であっても、それらに影響されない位置に撮像部300を容易に移動させることができる。これにより、撮影対象の植物9の実が葉や他の実の影に隠れていたとしても、それらに妨げられることなく、撮影対象の植物9の実を撮像部300で確実に撮像することができる。
なお、撮像部300は、アーム部42の先端部に配置するものとしたが、アーム部42の先端に近いアームや、同アームに設けられた雲台に設けられていても良い。また、アーム部42の先端としたが、アーム部42に内蔵されていても良い。
【0061】
(生産計画の設計)
生産計画設計部540は、撮像された画像情報に基づいて生産計画を設計する。画像情報に基づいた生産計画を設計することにより、収穫するか否かの判定に限らず、植物栽培システム1の設備を有効に利用して、効率良く植物9を栽培することが可能となる。また、この生産計画は、目的の時期の出荷量を調整することにも利用できる。
【0062】
(収穫計画の設計)
収穫計画設計部550は、第3育成モデルに基づいて、収穫計画を設計する。
第3育成モデルに基づいて設計することにより、収穫可能か否かの判定の精度を高めることができる。この判定を行うことにより、例えば、それぞれの実の収穫時期を適正化させることができ、品質を揃えることが可能となる。
収穫計画を設計するための画像情報は、各植物9に対して他の処理を行う際に接近した際に、取得することもできる。或いは、過去に設計した収穫計画によって、収穫順序が策定されていれば、その収穫順に応じて検出頻度を制御することも可能である。すなわち、収穫計画により収穫時期が遅くなると判定された実に対する検出頻度を粗くして、収穫時期が近い実に対する検出頻度を高めることができるので、検出効率を高めることができる。
また、収穫時期を繰り上げ、或いは延期させる判定条件として用いることもできる。これにより、必要な出荷量に応じた量を収穫することができる。
【0063】
(配置計画の設計)
配置計画設計部560は、第1育成モデルに基づいて、植物栽培プラント4において栽培される植物9の配置計画を設計する。第1育成モデルに基づいて設計することにより、成長後の植物9の個体の大きさを算定することができる。
この配置計画を策定することにより、成長過程で隣接する植物、或いは、施設との干渉を未然に防いで、効率良く植物を配置することができる。この配置計画は、いわゆる、間引きを行う場合や、互いの異なる種類の植物同士の相性が合わない場合の適切な配置等の判定基準となる。
また、配置計画設計部560は、第1育成モデルと撮像された画像情報に基づいて判定された育成状況に応じて、植物9の配置計画を変更する。配置計画設計部560は、育成状況に応じて適宜配置計画を変更することにより、植物9の個体毎の成長度合いに応じた配置に変更することができる。
【0064】
(剪定計画の設計)
剪定計画設計部570は、第1育成モデルに基づいて、植物9を剪定する剪定計画を設計する。
これにより、隣接する植物9、或いは、自らの枝に干渉する場合を推定することができ、剪定する枝とその位置を適正に選定することができる。
また、剪定計画設計部570は、第2育成モデルに基づいて、植物9の花(実)を剪定する剪定計画を設計する。
これにより、植物9に成実する位置を算定することにより、自らの枝や実に干渉する場合を推定することができ、剪定する枝や実を選定し、剪定する位置を適正に選定することができる。
【0065】
(植物栽培システムの制御)
本実施形態に示した植物栽培システム1では、撮像部300は、植物110を撮像し、画像情報を生成する。
撮像位置移動部400(撮像位置移動手段)は、撮像部300が撮像する位置を移動させる(多関節型の)アーム部42(ロボットアーム)を備えることにより、自由な位置と方向から植物9の状況を測定することができ、その測定された画像情報に基づいて、環境条件を制御することにより、収穫時期を制御することが可能となる。
【0066】
このような植物栽培システム1によって大規模栽培が可能になると、屋内環境であったとしても、バラツキがなくなるように育成環境の均一性を確保することが困難である。また、仮に育成環境が均一であったとしても、植物9の成長度合いは、植物9の個体毎に差が生じる場合がある。さらに、このような大規模栽培による広い栽培空間内における作業を効率よく行う必要がある。このようなことから、植物9の育成状況に応じて、植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させることが望まれる。
ここで、上述の植物9の育成において適した位置とは、適した育成環境の位置、又は、適した育成作業(育成状況の観測、収穫作業など)の位置などである。
【0067】
[植物の移動制御]
次に、植物栽培プラント4において、移動式栽培装置600が植物9を移動させる制御について説明する。
可動台制御部610は、植物9の育成状況に応じて、植物9が育成される育成床6を支持して移動可能な可動台60の位置を移動させる制御をする。例えば、状況記憶部230には、撮像された植物9の画像情報と育成モデルとに基づいて判定された植物9の育成状況が育成床6に対応付けられて記憶されている。そして、可動台制御部610は、状況記憶部230から読み出した植物9の育成状況に応じて、可動台60の位置を移動させる。
ここで、可動台60の位置の移動とは、水平方向への位置の変更、鉛直方向への位置の変更、又は、傾斜角度の変更、による移動のことである。つまり、移動式栽培装置600は、可動台60の位置を移動させることにより、植物9を水平方向に移動、植物9を鉛直方向に移動、又は、植物9を傾斜させることが可能である。
これにより、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させる。
【0068】
(移動式栽培装置600における可動台60の構成)
図8は、移動式栽培装置600における可動台60を示す図である。図8(a)に示すように、可動台60は、基台60Aと、育成床6を支持する支持台60Bと、育成床6を移動させる方向に対して回動自在な車輪60Wを備えている。そして、可動台60は、図9を用いて後述する可動台駆動部65が車輪60Wを駆動することにより、育成床6を支持して(載置して)移動する。また、図8(b)の可動台60の底面図に示すように、4つの車輪60Wは、可動台60の底面に直交する軸(鉛直軸)を中心として回動可能にそれぞれ支持されており、移動する方向を変更することができる。
また、図8(c)、(d)に示すように、可動台60は、さらに、傾斜機構部60M(傾斜部)を備えており、可動台駆動部65の駆動により育成床6を傾斜可能である。例えば、傾斜機構部60Mとして、空気圧により伸縮する複数の空気圧シリンダが支持台60Bを支えるように基台60Aに設置されている。そして、可動台60は、複数の空気圧シリンダを選択的に伸縮させることにより、基台60Aに対して支持台60Bを傾斜させる。これにより、可動台60は、支持台60Bに支持されている育成床6を傾斜させることができる。なお、傾斜機構部60Mは、空気圧シリンダが用いられる構成に限られるものではなく、ガス圧シリンダのように他の気体の圧力により伸縮するシリンダや油圧シリンダのように液体の圧力により伸縮するシリンダが用いられる構成であってもよいし、シリンダ以外の昇降機構が用いられる構成であってもよい。
【0069】
例えば、図8(c)、(d)に示すように、可動台60は、2つの傾斜機構部60Mを備えており、該2つの傾斜機構部60Mを排他的に伸縮することにより育成床6を傾斜させる。図8(c)は、可動台60が備えている2つの傾斜機構部60Mのうち、紙面上の右側の傾斜機構部60M(R)が伸びている状態であって、左側の傾斜気候部60M(L)が縮んでいる状態である場合を示している。この場合、基台60Aに対して支持台60Bの紙面上の右側のみが持ち上がることにより育成床6が傾斜している。一方、図8(d)は、可動台60が備えている2つの傾斜機構部60Mのうち、紙面上の右側の傾斜機構部60M(R)が縮んでいる状態であって、左側の傾斜気候部60M(L)が伸びている状態である場合を示している。この場合、基台60Aに対して支持台60Bの紙面上の左側のみが持ち上がることにより図8(c)とは反対方向に育成床6が傾斜している。
【0070】
なお、図示していないが、可動台60は、例えば、無線通信により制御信号を送受信するための送受信部を備えている。そして、可動台60は、可動台制御部610から無線通信により送信された制御信号を受信し、受信した制御信号に基づいて駆動する。さらに、図示していないが、可動台60は、蓄電池と蓄電池からの電力を供給する電源部とを備え、可動台60が備えている各部への電力を供給する。
なお、可動台60は、ガイドレール70から電力が供給される構成としてもよい。また、可動台60は、ガイドレール70を介して制御信号を送受信する構成としてもよい。
【0071】
(移動式栽培装置600の構成)
図9は、本実施形態における移動式栽培装置600の構成の一例を示す概略ブロック図である。同図において図3及び図8の各部と同様の構成には同一の符号を附す。
移動式栽培装置600は、可動台60と、可動台60を制御する可動台制御部610とを備えている。可動台60は、可動台制御部610の制御により車輪60W及び傾斜機構部60Mを駆動する可動台駆動部65を備えている。可動台制御部610は、例えば、無線通信等を用いて可動台60が備えている可動台駆動部65と制御信号の送受信を行うことにより可動台60を制御する。
また、可動台制御部610は、移動位置決定部620と、移動経路算出部630と、間隔算出部640と、移動制御部650と、傾斜位置決定部660と、傾斜制御部670と、を備えている。
【0072】
移動位置決定部620は、配置計画設計部560が設計した配置計画に基づいた指令を受けて、状況記憶部230から、撮像された植物9の画像情報と育成モデルとに基づいて判定された植物9の育成状況を読み出す。この植物9の育成状況は、該植物9が育成される育成床6に対応付けられて状況記憶部230に記憶されている。例えば、状況記憶部230には植物9の位置情報が座標情報として記憶されており、育成床6の位置を該育成床6で育成される植物9の座標情報によって示すことができる。そして、植物9の育成状況は、育成床6の位置を示す座標情報(位置座標)に対応付けられて状況記憶部230に記憶されている。また、育成床6の位置は、該育成床6を支持する可動台60の位置と一対となって定められている。すなわち、植物9の育成状況は、該植物9が育成される育成床6を支持する可動台60の位置を示す座標情報(位置座標)に対応付けられて状況記憶部230に記憶されている。なお、植物9の育成状況は、それぞれの可動台60に固有のIDナンバーが割り当てられていて、このIDナンバーに対応付けてられて状況記憶部230に記憶されていてもよい。
【0073】
また、移動位置決定部620は、状況記憶部230から読み出したそれぞれの可動台60に対応付けられている植物9の育成状況に応じて、移動させる対象となる可動台60(可動台60の位置)と、移動先の位置を決定する。例えば、移動位置決定部620は、移動させる可動台60として、育成状況が育成モデルと比較して遅れている(成長が遅れている)植物9が育成されている可動台60を選択し、該可動台60の移動先を、育成状況を促進させるような環境の位置の中から選択して決定する。一例としては、移動位置決定部620は、環境のバラツキにより光照射量の少ない位置で栽培されていて育成状況が遅れている植物9の可動台60の移動先を、光照射量の多い位置の中から選択して決定する。また、移動位置決定部620は、植物9の育成状況に応じて、位置制御部530による撮像位置移動部400の制御と協調して、撮像部300が植物9を撮像する位置及び方向に応じて、植物9の移動先の位置を決定する。また、移動位置決定部620は、間隔算出部640により算出された位置間隔に基づいて、可動台60の移動先の位置を補正する。
【0074】
移動経路算出部630は、移動位置決定部620により決定された移動させる可動台60の現在位置の位置座標と移動先の位置座標とに基づいて、移動経路を算出する。例えば、移動経路算出部630は、移動させる可動台60の現在位置の位置座標から移動先の位置座標までの移動経路を、ガイドレール70に沿って走行する場合の順路に従った座標上における移動量と移動方向として算出する。そして、移動経路算出部630は、算出した移動経路を移動制御部650に出力する。なお、移動経路算出部630は、移動経路を出力するのに代えて、現在位置の位置座標と移動先の位置座標とを移動制御部650に出力してもよいし、現在位置の位置座標から移動先の位置座標への移動経路上の複数の位置座標を移動制御部650に出力してもよい。
【0075】
間隔算出部640は、配置計画設計部560が設計した配置計画に基づいた指令を受けて、植物9の育成状況に応じて、複数の可動台60それぞれの互いの位置間隔を調整するための位置間隔(位置間隔の距離)を、座標値により示される位置間隔情報として算出する。例えば、間隔算出部640は、植物9の個体の大きさが成長によって大きくなるのに応じて、隣接する植物9又は施設との干渉が生じないような位置間隔情報を算出する。また、間隔算出部640は、配置計画設計部560により策定された植物9の成長後の個体の大きさに基づいて、位置間隔情報を算出してもよい。間隔算出部640は、算出した位置間隔情報を移動制御部650、又は、移動位置決定部620に出力する。
【0076】
移動制御部650は、移動経路算出部630により算出された移動経路に基づいて、可動台60が備えている可動台駆動部65を駆動する制御信号を、移動させる可動台60に出力する。これにより、移動制御部650は、該可動台60を現在位置から移動先の位置に移動させる。また、移動制御部650は、間隔算出部640により算出された位置間隔情報に基づいて、複数の可動台60それぞれの互いの位置間隔を調整するための制御信号を、位置間隔を調整する可動台60に出力する。
なお、移動制御部650は、慣性航法などの手段により可動台60の現在位置の位置座標を検出することができ、移動先の位置座標と、現在位置の位置座標との差がなくなるようにフィードバック制御を行って、移動先の位置に移動させてもよい。また、移動制御部650は、移動経路上の複数の位置座標に基づいて、該複数の位置座標のうち現在位置に近い位置座標から順に差がなくなるようにフィードバック制御を行って、移動先の位置に移動させてもよい。
【0077】
また、移動制御部650は、可動台駆動部65を介して可動台60の位置を移動させた後、可動台60の移動後の位置座標を状況記憶部230に記憶させる。この場合、移動制御部650は、状況記憶部230に記憶されている可動台60の移動前の位置座標を移動後の位置座標に更新してもよいし、移動前の位置座標とは別に移動後の位置座標を追加して記憶させて移動履歴が分かるようにしてもよい。
【0078】
傾斜位置決定部660は、植物9の育成状況に応じて、位置制御部530による撮像位置移動部400の制御と協調して、撮像部300が植物9を撮像する位置及び方向に応じて、植物9の傾斜位置を決定する。すなわち、傾斜位置決定部660は、可動台60が支持している育成床6を傾ける際の、傾斜方向と傾斜量とを決定する。
【0079】
傾斜制御部670は、傾斜位置決定部660により決定された傾斜させる育成床6の傾斜位置に基づいて、可動台駆動部65を駆動する制御信号を出力して、可動台60の傾斜機構部60Mを制御する。これにより、傾斜制御部670は、位置制御部530による撮像位置移動部400の制御と協調して、植物9を傾斜させる。また、位置制御部530によって撮像位置移動部400により制御された撮像部300が植物9を撮像する処理を終了した後、傾斜制御部670は、傾斜させた育成床6を傾斜させる前の位置に戻す制御をする。
【0080】
次に、移動式栽培装置600における可動台60の制御の例について説明する。
(1つの内側空間内を移動する例)
ここでは、内側空間13−1(以下、第1育成室)内において、バラツキにより育成環境が互いに異なる複数の育成エリアがあって、この複数のエリアに可動台60が移動可能である場合を例にして説明する。この場合、可動台制御部610は、植物9の育成状況に応じて、複数の育成エリアから選択された育成エリアに可動台の位置を移動させる。
【0081】
図10は、第1育成室内において可動台60を移動させる場合の一例を示す図である。この図においては、環境駆動部120により第1育成室内の育成環境が制御されているが、バラツキがなくなるように室内の環境の均一性を確保することが困難であることから、エリアSとエリアNとが互いに異なる育成環境となっている場合を示している。エリアSは、環境駆動部120による制御条件に応じた育成環境が保たれており、例えば、制御条件に応じた照射量の光が植物9に供給されている。よって、エリアSは、植物9の育成状況管理の基準とする成長曲線(図4のグラフS4a参照)に従った成長が見込める。それに対して、エリアNは、バラツキにより環境駆動部120による制御条件に応じた育成環境が保たれてなく、例えば、制御条件に応じた照射量よりも少ない照射量の光が植物9に供給されている。よって、エリアNは、植物9の育成状況管理の基準とする成長曲線より遅れて成長する可能性がある(図4のグラフS4b参照)。
【0082】
また、図10において、植物9の育成状況として、基準とする成長曲線よりも進んで成長している植物9を育成状況A、基準とする成長曲線に従って成長している植物9を育成状況B、及び、基準とする成長曲線よりも遅れて成長している植物9を育成状況Cとして示している。植物9の育成状況(成長度合い)は、同じ育成環境の中で育成されていても、個体毎に差が生じる場合がある。この図においては、エリアS内に育成状況Aの植物9と育成状況Bの植物9とがあり、エリアN内に育成状況Bの植物9と育成状況Cの植物9とがある場合を示している。
【0083】
この図10に示す例において、可動台制御部610は、エリアN内において育成されている育成状況Cの植物9の可動台60を、制御条件に応じた育成環境が保たれているエリアS内に移動させる。
【0084】
具体的には、まず、可動台制御部610の移動位置決定部620は、配置計画設計部560よりエリアN内において育成されている育成状況Cの植物9の位置をエリアS内の位置に移動させる指令を受ける。次に、移動位置決定部620は、配置計画設計部560より指令を受けることに応じて、状況記憶部230から、撮像された植物9の画像情報と育成モデルとに基づいて判定された植物9の育成状況を読み出す。続いて、移動位置決定部620は、状況記憶部230から読み出したそれぞれの可動台60に対応付けられている植物9の育成状況に応じて、エリアN内において育成されている育成状況Cの植物9の可動台60を移動させる対象として決定する。また、移動位置決定部620は、エリアS内において育成されている植物9の中から育成状況Aの植物9の可動台60の現在の位置を、エリアN内において育成されている育成状況Cの植物9の可動台60の移動先の位置として決定する。ここで、移動位置決定部620は、移動先の植物9と移動させる植物9との位置を交換するため、エリアS内の植物9の中から育成状況Aの植物9(最も成長が進んでいる植物9)の現在位置を移動先として選択している。つまり、移動位置決定部620は、第1育成室内の植物9それぞれの育成状況の差が減少するように移動先の位置を決定している。
【0085】
次に、移動経路算出部630は、移動位置決定部620により決定された移動させる可動台60の現在位置の位置座標と移動先の位置座標とに基づいて、移動経路を算出する。例えば、移動経路算出部630は、エリアN内において育成されている育成状況Cの植物9の可動台60の移動経路を、現在位置の位置座標と移動先の位置座標とに基づいて算出する。また、移動経路算出部630は、エリアS内において育成されている育成状況Aの植物9の可動台60の移動経路を、現在位置の位置座標と移動先の位置座標とに基づいて算出する。なお、移動経路算出部630は、育成状況Cの植物9の可動台60の移動経路(経路C−1)と育成状況Aの植物9の可動台60の移動経路(経路A−1)とを算出する際、それぞれが移動中に衝突しないように移動経路を算出する。
【0086】
続いて、移動制御部650は、移動経路算出部630により算出された移動経路に基づいて、可動台駆動部65を駆動する制御信号を、移動させる可動台60が備えている可動台駆動部65に出力する。これにより、移動制御部650は、エリアN内において育成されている育成状況Cの植物9の可動台60の位置と、エリアS内において育成されている育成状況Aの植物9の可動台60の位置とをそれぞれ移動させて位置を交換する。
【0087】
このように、移動式栽培装置600は、エリアN内において育成されている育成状況Cの植物9をエリアS内の位置に移動させることにより、育成状況Cの植物9(成長が遅れている植物9)を、成長を促進させるような環境の位置に移動させることができる。また、移動式栽培装置600は、第1育成室内の植物9それぞれの育成状況に応じて、植物9それぞれの育成状況の差を減少させるように植物9を移動させることができる。よって、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、該植物9を適した育成環境の位置に移動させることができる。すなわち、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させることができる。
【0088】
(複数の内側空間を移動する例)
次に、内側空間13−1(第1育成室)と、内側空間13−2(以下、第2育成室)との2つの育成エリアに、それぞれ互いに異なる育成環境が設定されており、この第1育成室と第2育成室とに可動台60が移動可能である場合について説明する。
図11は、第1育成室から第2育成室に可動台60を移動させる場合の一例を示す図である。この図に示す第1育成室内は、前述したように、植物9の育成状況管理の基準とする成長曲線(図4のグラフS4a参照)に従って植物9が成長するような育成環境に制御されている。それに対して、第2育成室内は、第1育成室内よりも植物9の成長を促進させるような育成環境に制御されている。第2育成室内における成長を促進させるような育成環境とは、植物9の種別、及び、成長度合いに応じて環境の条件が選択されるが、例えば、第1育成室内の育成環境に対して光照射量を増加させたり、周囲温度や水温を高めたり、養分量を増加させたりした育成環境である。
【0089】
また、図11において、植物9の育成状況A、育成状況B、及び、育成状況Cは、図10と同様の育成状況を示している。そして、この図においては、第1育成室内の植物9の中に、基準とする成長曲線よりも遅れて成長している育成状況Cの植物9が3個体ある場合を示している。この図に示す例において、可動台制御部610は、第1育成室内において育成されている育成状況Cの植物9の可動台60を、成長を促進させるような育成環境に制御されている第2育成室内に移動させる。
【0090】
以下に、具体的な処理について説明する。
なお、可動台制御部610の各部による移動処理は、前述した第1育成室内における移動処理と同様であり、詳細の説明を省略する。
可動台制御部610により、第1育成室内において育成されている育成状況Cの植物9の可動台60それぞれの移動経路(経路C−2(より正確には3種類の経路))を算出し、算出したそれぞれの移動経路に基づいて、3つの可動台60を第2育成室内に移動させる。また、第2育成室内に移動させた育成状況Cの植物9の育成状況が、時間の経過に従って育成状況A、又は、育成状況Bと判定された場合、可動台制御部610は、育成状況A、又は、育成状況Bと判定された植物9の可動台60を第1育成室内に戻す。
【0091】
このように、移動式栽培装置600は、第1育成室内において育成されている育成状況Cの植物9を、成長を促進させるような育成環境に移動させることができる。また、移動式栽培装置600は、植物9それぞれの育成状況の差を減少させるような育成環境に移動させることができる。さらに、移動式栽培装置600は、第1育成室内のみで可動台60を移動させる場合に比較して、植物9の育成状況に応じて、より多くの植物9の個体を移動させることができるとともに、より積極的に成長を促進させるような育成環境に移動させることができる。よって、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、該植物9を適した育成環境の位置に移動させることができる。すなわち、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させることができる。
【0092】
なお、第2育成室内の育成環境は、成長を促進させるような育成環境に代えて、成長を遅らせるような育成環境としてもよい。この場合、移動式栽培装置600は、第1育成室内で成長の進みが速い植物9(育成状況Aの植物9)を、成長を遅らせるような環境の第2育成室内に移動させることにより、他の個体との育成状況の差を減少させるような育成環境に移動させることができる。
【0093】
なお、育成室は、2つに限らず更に多くの複数の育成室であってもよい。また、これら複数の育成室内の環境は、それぞれ互いに異なる育成環境に設定されていてもよい。例えば、標準的な育成環境の育成室と、成長を促進させるような育成環境の育成室と、成長を遅らせるような育成環境の育成室と、が備えられていてもよく、さらに、複数の植物それぞれに適した育成環境の複数の育成室が備えられていてもよい。
このように、複数の互いに異なる育成環境の育成室が備えられている場合、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、複数の育成室の中から選択された育成環境の育成室に該植物9を移動させることができる。
【0094】
なお、可動台制御部610は、設定されている収穫時期に植物9の収穫対象が収穫可能になるように、植物9の育成状況に応じて、複数の育成室(育成エリア)から選択された育成室(育成エリア)に可動台60の位置を移動させてもよい。つまり、移動式栽培装置600は、設定されている収穫時期に植物9の収穫対象が収穫可能になるように、植物9の育成状況に応じて選択された育成環境の育成室に植物9を移動させる。これにより、移動式栽培装置600は、収穫時期を制御するように植物9を適した育成環境の位置に移動させることができる。
【0095】
以上のように、植物栽培システム1は、植物9を撮像した画像情報と植物9の育成モデルとに基づいて判定した育成状況に応じて、育成環境を制御するとともに、該育成状況に応じて、移動式栽培装置600により植物9を適した育成環境の位置に移動させることができる。すなわち、植物栽培システム1は、植物9の育成状況に応じて、移動式栽培装置600により植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させることができる。
これにより、植物栽培システム1は、植物9の育成環境を管理して植物9を適した育成環境において育成することができる。さらに、植物栽培システム1は、植物9の育成状況に応じて植物9の育成環境を変更することにより、収穫時期の制御及び管理も可能である。
【0096】
(複数の内側空間を移動する別の例)
続いて、複数の育成室(育成エリア)には、植物9の育成段階に対応した育成環境がそれぞれ予め設定されており、この複数の育成室それぞれに可動台60が移動可能である場合について説明する。
図12は、複数の育成室それぞれに可動台60を移動させる場合の一例を示す図である。
図12おいては、図11の内側空間13−1(第1育成室)と、内側空間13−2(第2育成室)に加えて、内側空間13−3(以下、第3育成室)と、植物9が廃棄される廃棄エリアとしての内側空間13−4(以下、廃棄室)と、植物9の収穫対象が収穫される収穫エリアとしての内側空間13−5(以下、収穫室)と、が備えられており、それぞれ、植物9の育成段階に対応した育成環境が予め設定されている。そして、可動台60は、これら複数の内側空間を移動可能である。
【0097】
第1育成室と第2育成室とは、図11を用いて説明した育成環境に制御されている。第3育成室は、第1育成室又は第2育成室において所定の成長度合いまで成長した植物9が、その後育成されるのに適した育成環境が設定されている。また、第1育成室又は第2育成室から、第3育成室に移動される植物9は、育成状況が所定の成長度合いに達しているものであって、この移動の際に間引きされることがある。また、第1育成室又は第2育成室から、第3育成室に移動される植物9は、個体の大きさが大きくなっていることにより、隣接する植物9等と干渉しないように位置間隔が調整される。
そして、これらの第3育成室への移動、間引き、及び、位置間隔の調整は、配置計画設計部560が設計した配置計画に基づいた指令を受けて、可動台制御部610が実行する。
【0098】
具体的には、まず、移動位置決定部620は、配置計画設計部560より指令を受けることに応じて、状況記憶部230から、撮像された植物9の画像情報と育成モデルとに基づいて判定された植物9の育成状況を読み出す。次に、移動位置決定部620は、状況記憶部230から読み出したそれぞれの可動台60に対応付けられている植物9の育成状況に応じて、第3育成室に移動させる対象となる可動台60(育成状況が所定の成長度合いに達している植物9が育成されている可動台60)を決定する。
【0099】
また、間隔算出部640は、配置計画設計部560が設計した配置計画に基づいた指令を受けて、植物9の育成状況に応じて、複数の可動台60それぞれの互いの位置間隔を調整するための位置間隔(位置間隔の距離)を、座標値により示される位置間隔情報として算出する。例えば、間隔算出部640は、第3育成室に移動させる可動台60の植物9の個体の大きさに応じて、隣接する植物9又は施設との干渉が生じないような位置間隔情報を算出する。間隔算出部640は、算出した位置間隔情報を移動位置決定部620に出力する。
【0100】
そして、移動位置決定部620は、配置計画設計部560が設計した配置計画と、間隔算出部640により算出された位置間隔情報と、に基づいて、第3育成室に移動させる対象となる可動台60の第3育成室内における移動先の位置を決定する。
【0101】
また、移動位置決定部620は、配置計画設計部560より指令を受けることに応じて、育成状況(成長度合い)が著しく悪い植物9が育成されている可動台60、又は、他の個体と比較して成長度合いが悪いために間引き対象とされた植物9が育成されている可動台60を廃棄対象の植物9が育成されている可動台60として決定し、移動先を廃棄室内の所定の位置とする。
【0102】
次に、移動経路算出部630は、移動位置決定部620により決定された移動させる可動台60の現在位置の位置座標と移動先の位置座標とに基づいて、第3育成室に移動させる移動経路(経路C−3)と廃棄室に移動させる移動経路(経路C−4)とを算出する。続いて、移動制御部650は、移動経路算出部630により算出された移動経路に基づいて、可動台駆動部65を介して可動台60を決定された移動先に移動させる。
【0103】
また、第3育成室内において育成されている植物9に対して、可動台制御部610は、収穫計画設計部550が設計した収穫計画に基づいた指令を受けて、収穫可能となった植物9が育成されている可動台60を収穫室に移動させる。
【0104】
具体的には、まず、移動位置決定部620は、収穫計画設計部550より指令を受けることに応じて、状況記憶部230から読み出したそれぞれの可動台60に対応付けられている植物9の育成状況に応じて、収穫室に移動させる対象となった可動台60(収穫対象が収穫可能となった植物9が育成されている可動台60)を決定し、移動先を収穫室内の所定の位置とする。また、移動位置決定部620は、植物9の育成状況に応じて、収穫対象が明らかに出荷品質を満たさない状態であって収穫可能となる見込みがない植物9が育成されている可動台60を廃棄対象とし、移動先を廃棄室内の所定の位置とする。
【0105】
次に、移動経路算出部630は、移動位置決定部620により決定された移動させる可動台60の現在位置の位置座標と移動先の位置座標とに基づいて、収穫室に移動させる移動経路(経路C−5)と廃棄室に移動させる移動経路(経路C−6)とを算出する。続いて、移動制御部650は、移動経路算出部630により算出された移動経路に基づいて、可動台駆動部65を介して可動台60を決定された移動先に移動させる。
【0106】
このように、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9の育成段階に対応した育成環境がそれぞれ予め設定されている複数の育成室(育成エリア)それぞれに可動台60を移動させることにより、植物9を適した育成環境が設定されている育成室(育成エリア)移動させることができる。
また、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、可動台60それぞれの互いの位置間隔を調整することにより、隣接する植物、或いは、施設との干渉を防止することができる。また、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、収穫対象が収穫可能となった植物9が育成されている可動台60を、収穫作業が行われる収穫室(収穫エリア)に移動させることができる。また、植物9の育成状況に応じて、廃棄対象、又は、間引き対象となった植物9が育成されている可動台60を、植物9が廃棄される廃棄室(廃棄エリア)に移動させることができる。
よって、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させることができる。
【0107】
また、移動式栽培装置600は、植物9の育成段階に対応した育成環境への移動、すなわち、適した育成環境への移動、収穫室(収穫エリア)への移動、又は、廃棄室(廃棄エリア)への移動等を、自動化することができる。これにより、大規模化した植物栽培システム1においても、植物9の育成状況に応じて、育成段階に適した育成環境、又は、育成段階に応じた作業エリアに、効率よく且つ少ない労力で植物9を移動させることができる。
【0108】
なお、図11における収穫室で行われる収穫作業、及び、廃棄室で行われる廃棄作業は、ロボットが作業を行う無人化された作業であってもよく、人手による作業であってもよく、また、その組み合わせによる作業であってもよい。
【0109】
(撮像されやすいように移動、傾斜)
次に、撮像部300が植物9を撮像する際に、移動式栽培装置600が植物9の育成状況に応じて、植物9を移動、又は、傾斜させる制御について説明する。
【0110】
前述したように、撮像位置移動部400は、アーム部42を介して撮像部300を柔軟に移動させることができる。これにより、撮像位置移動部400は、撮像対象の植物9の実が葉や他の実の影に隠れていたとしても撮像部300を移動させて撮像することができるが、植物9の育成状況によって複雑な位置にアーム部42を伸ばす場合がある。このような場合、撮像に要する時間が長くなることがあるため、撮像部300により撮像されやすい位置に植物9を移動させることが効果的である。また、同様に、撮像部300により撮像されやすい角度に植物9を傾斜させることも効果的である。
よって、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9が撮像される位置に可動台60を移動、又は、植物9が撮像される方向に基づいて可動台60が支持する育成床6を傾斜させる。すなわち、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、撮像されやすい位置に植物9を移動させる、又は、撮像されやすい角度に植物9を傾斜させる。
【0111】
図13は、撮像されやすい位置に植物9を移動させる場合を説明する図である。図13(a)は、可動台60−1、60−2、60−3が並んで配置されている場合を示している。この図に示す植物9の育成状況においては、例えば、可動台60−2に育成されている植物9の可動台60−1に隣接する側は、可動台60−1に育成されている植物9に遮られているため撮像されにくい。このような場合、図13(b)に示すように、移動式栽培装置600は、可動台60−1に育成されている植物9に遮られない位置に可動台60−2を移動させることにより、撮像部300により撮像されやすい位置に植物9を移動させることができる。
【0112】
また、図14は、撮像されやすい角度に植物9を傾斜させる場合を説明する図である。図14(a)は、撮像部300の位置する側に植物9を傾斜させた場合を示している。この場合、撮像部300は、植物9を上側から撮像しやすくなる。例えば、撮像部300は、撮像対象の葉L10の形等を撮像しやすくなる。一方、図14(b)は、撮像部300の位置する側と反対側に植物9を傾斜させた場合を示している。この場合、撮像部300は、植物9を下側から撮像しやすくなる。例えば、撮像部300は、葉の影に隠れていた撮像対象の実F10等を撮像しやすくなる。
つまり、植物9が傾斜することによって、撮像部300に撮像される方向に対する植物9の葉及び実(花)の重なり具合や、葉及び実(花)の向きが変化することにより、撮像部300は、この葉及び実(花)を撮像しやすくなる場合がある。このように、移動式栽培装置600は、撮像部300により撮像されやすい角度に植物9を傾斜させることができる。
【0113】
以下、移動式栽培装置600が、植物9を撮像されやすい位置に移動、又は、傾斜させる際の各部の動作について説明する。
例えば、可動台制御部610は、植物9の育成状況に応じて、植物9が撮像される位置に可動台60の位置を移動させる。また、可動台制御部610は、植物9の育成状況に応じて、植物9が撮像される方向に基づいて可動台60が支持する育成床6を傾斜させる。
【0114】
具体的には、移動位置決定部620は、植物9の育成状況に応じて、位置制御部530による撮像位置移動部400の制御と協調して、撮像部300が植物9を撮像する位置に基づいて、植物9の移動先の位置を決定する。また、傾斜位置決定部660は、植物9の育成状況に応じて、位置制御部530による撮像位置移動部400の制御と協調して、撮像部300が植物9を撮像する方向に基づいて、植物9の傾斜位置(傾斜方向及び傾斜量)を決定する。
【0115】
なお、位置制御部530による撮像位置移動部400の制御との協調とは、例えば、次のようにして実行される。位置制御部530は、撮像位置移動部400を制御して撮像部300を移動させるための制御内容を算出する。例えば、撮像部300により撮像される撮像対象の実が葉や他の実の影になるような位置である場合、位置制御部530は、それらの妨げとならないような位置に撮像部300を移動させるための制御内容を算出する。そして、位置制御部530は、算出した制御内容が複雑で時間を要すると判定した場合、撮像部300を移動させる制御内容が簡略化される位置に撮像対象となる実を位置させるように、可動台制御部610に可動台60の制御を指令する。可動台制御部610の移動位置決定部620及び傾斜位置決定部660は、位置制御部530からの指令に応じて、可動台60の移動位置、又は、可動台60が支持する育成床6の傾斜位置を決定する。このように協調して実行することにより、位置制御部530と、移動位置決定部620及び傾斜位置決定部660とは、撮像部300の移動位置と、可動台60の移動位置又は可動台60が支持する育成床6の傾斜位置とをそれぞれ決定する。
【0116】
次に、移動制御部650は、移動位置決定部620により決定された移動先の位置に可動台駆動部65を介して可動台60の位置を移動させる。また、傾斜制御部670は、傾斜位置決定部660により決定された傾斜させる育成床6の傾斜位置に基づいて、可動台駆動部65を介して可動台60の傾斜機構部60Mを制御する。これにより、可動台制御部610は、位置制御部530による撮像位置移動部400の制御と協調して、植物9が撮像される位置及び方向に基づいて、植物9を撮像されやすい位置に移動又は傾斜させることができる。
【0117】
なお、可動台60を移動、又は、可動台60が支持する育成床6を傾斜させた状態において、撮像部300が植物9を撮像した場合、検出部210は、その画像情報に含まれる植物9の位置、又は、植物9の特徴点の位置を、可動台60の移動位置、又は、可動台60が支持する育成床6の傾斜位置に基づいて補正して検出する。
【0118】
このように、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9が撮像される位置(撮像されやすい位置)に可動台60の位置を移動させる。また、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9が撮像される方向に基づいて、可動台60が支持する育成床6を撮像されやすい角度に傾斜させる。
これにより、移動式栽培装置600は、植物9を、植物9の育成状況に応じて、植物9の育成状況の観測に適した位置(撮像されやすい位置)に移動させることができる。すなわち、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させることができる。
また、移動式栽培装置600は、撮像位置移動部400が撮像部300を移動して植物9を撮像する制御を容易にすることができる。よって、移動式栽培装置600は、移動型検出装置40を用いて行う撮像処理を効率化することができる。また、移動型検出装置40が備えている多間接型のアーム部42の構造や制御を簡略化することが可能となる。
【0119】
なお、移動型検出装置40を用いずに、例えば、観測エリア(育成室内において観測される位置又は観測室等)に撮像部300が固定設置されている場合、移動式栽培装置600は、その観測エリア内の撮像される位置に撮像対象となる植物9が育成されている可動台60を移動させる(更には、育成床6を傾斜させる)といった制御をしてもよい。これにより、育成室内において撮像部300を広範囲に移動させることなく、植物9を撮像することが可能である。
また、例えば、観測者が植物9を観測する場合においても、上述のように観測室に植物9が移動されてくることにより、観測者の労力を低減することができる。また、この場合、移動式栽培装置600は、観測者の操作によって可動台が制御されるような構成としてもよい。
【0120】
なお、移動式栽培装置600は、植物9の収穫対象が収穫されやすい位置又は方向に、可動台60を移動、又は、可動台60が支持する育成床6を傾斜させる制御をしてもよい。これにより、収穫作業の効率化及び省力化が図れる。
【0121】
また、移動式栽培装置600は、光の照射方向に対面する位置又は方向、すなわち、照射される光量が増加する位置又は方向に、可動台60を移動、又は、可動台60が支持する育成床6を傾斜させる制御をしてもよい。これにより、移動式栽培装置600は、光の照射量が不足している植物9に対して、光の照射量を増加させることができる。よって、移動式栽培装置600は、植物9の成長が促進するように、植物9に適切な光量を供給させることができる。
【0122】
以上のように、移動式栽培装置600は、植物9の育成状況に応じて、植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させることができる。また、植物栽培システム1は、植物9の育成状況に応じて、移動式栽培装置600により植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させることができる。また、植物栽培システム1を備えている植物栽培プラント4においては、植物9の育成状況に応じて、移動式栽培装置600により植物9を該植物9の育成において適した位置に移動させることができる。
【0123】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
例えば、図1を用いて説明したように、可動台60の移動をガイドするガイドレール70を備えている場合について説明したが、ガイドレール70が無い構成としてもよい。ガイドレール70が無い構成であっても、可動台60は、移動型検出装置40と同様な構成とすることにより、移動可能である。また、1つの可動台60に支持されている育成床6において育成されている植物9の個体数は、1個体に限られるものではなく複数の個体であってもよい。また、育成床6と可動台60とは、一体構造であってもよいし、着脱可能な分割構造であってもよい。
【0124】
なお、移動式栽培装置600において、育成環境が互いに異なる複数の育成エリアがある場合、可動台制御部610は、複数の育成エリアから選択された育成エリアに可動台60の位置を移動させてもよい。例えば、第1育成室内にバラツキにより育成環境が互いに異なる複数の育成エリアがある場合、可動台制御部610は、植物9の育成状況に応じずとも、複数の育成エリアから選択された育成エリアに可動台60の位置を移動させてもよい。これにより、移動式栽培装置600は、例えば、第1育成室内において可動台60の位置を循環移動させることにより、位置による育成環境のバラツキを吸収することができる。また、移動式栽培装置600は、植物9の種類に応じて、複数の育成エリアから選択された育成エリアに可動台60の位置を移動させてもよい。
【0125】
また、移動式栽培装置600の可動台制御部610の各部は、その一部、又は、全ての構成を、可動台60の内部に備えている構成としてもよい。
【0126】
また、移動型検出装置40と移動式栽培装置600の可動台60とは、それぞれ複数台を稼動させ、それぞれ独立した処理を行うことができる。
【0127】
また、図3に示した構成において、プラント制御部500は、独立して設ける必要ななく、複数の植物栽培システム1、複数の移動式栽培装置600を制御する形態としてもよい。
【0128】
なお、上記実施形態の移動式栽培装置600においては、可動台60が水平面上の2次元空間を可動台60が移動する場合を例としたが、可動台60は、3次元空間を移動する構成としてもよい。例えば、移動式栽培装置600は、多段設置されている育成床6それぞれの可動台60を上下方向(鉛直方向)に移動させる場合、可動台60を上下方向に移動させるためのスロープが走行路に設けられており、このスロープにより可動台60が上下方向に移動可能な構成としてもよい。また、移動式栽培装置600は、フォークリフトやエレベータのような昇降機により可動台60が上下方向に移動可能な構成としてもよい。
【0129】
なお、可動台は、育成床6を移動させる方向に対して搬送するベルトコンベアに支持されている構成としてもよい。ベルトコンベアは、可動台を水平方向に搬送するベルトコンベアであってもよいし、鉛直方向に搬送するベルトコンベアであってもよいし、その組み合わせであってもよい。
図15は、ベルトコンベア80Wが可動台80を搬送する例を示す図である。図15(a)は、ベルトコンベア80Wが可動台80を水平方向に搬送する例を示している。また、15(b)は、ベルトコンベア80Wが可動台80を鉛直方向に搬送する例を示している。このように、移動式栽培装置600は、可動台80が支持する育成床6において育成される植物9をベルトコンベアにより搬送することができる。
【0130】
なお、可動台は、車輪駆動やベルトコンベアによる搬送により移動するのに限られるものではない。例えば、可動台は、リニアモータにより移動してもよいし、可動台の底面から空気を吹き出し、その風圧によって可動台を浮上させて移動してもよい。さらには、可動台は、クレーンにより移動される構成としてもよい。
【0131】
なお、水耕栽培の場合、可動台は、水に浮いている育成床6(水耕床)を移動させる構成としてもよい。
図16は、水に浮いている育成床6を可動台90が移動させる例を示す図である。図16に示す可動台90は、浮力部(不図示)として、例えば、可動台90の内部に空気などの気体を溜める空間を設けている。また、可動台90は、発泡材等の水に浮く材料を用いて作られていてもよい。これにより、可動台90は、育成床6を支持して水に浮くことができる。また、可動台90は、例えば、水流を生じさせることにより推進力を得るスクリュー(プロペラ)などのような推進機90Wを有しており、遠隔操作されることにより水面SUを移動可能である。これにより、水耕栽培における移動式栽培装置600は、可動台90が育成床6で育成される植物9を水に浮かせて移動させることができる。
なお、可動台90は、推進機90Wのような動力源を可動台90の内部に有していない構成としてもよい。例えば、可動台90は、外部に備えられている動力源により、ワイヤー等を介して牽引されて移動する構成としてもよい。また、可動台90は、水面に浮いており摩擦抵抗が少ないため、動力源が可動台90にあって移動する場合であっても、動力源が外部にあって可動台90を移動させる場合であっても、小さい動力で移動可能である。また、移動式栽培装置600は、水面の高さを変化させることにより、可動台90を上下方向(鉛直方向)に移動させる構成としてもよい。
さらに、可動台90は、おもりなどのバランサーを備えている構成としてもよく、おもりの位置を水平方向に移動することにより、可動台90を水面SUに対して傾斜させて育成床6を傾斜させてもよい。また、可動台90は、上述のバランサーの機能として、内部に複数の互いに隔てられている空間を設け、それらの複数の空間に対して選択的に水を出し入れさせてもよい。
なお、上述の可動台90を浮かせる水は、単なる水に限られるものではなく、養分などが含まれる水溶液であってもよいし、油などその他の任意の液体であってもよい。
【0132】
また、本実施形態の植物栽培プラント4は、陸上の施設であることを制限するものではない。例えば、植物栽培プラント4は、水上を航行する移動手段を備えることにより、海上を移動することも可能となる。植物栽培プラント4は、四季の気温変動に応じて、適正な緯度に移動することにより、気候による温度と、植物栽培プラントの温度差を少なくすることができ、空調設備や、水温制御設備による損失を低減させることが可能となる。その移動は、例えば、四季に応じて設定して4回程度とすることとしてもよい。
【0133】
また、例えば、植物栽培プラント4は、地中、水中に構築することにより、温度の変化の少ない環境を構築することが可能となる。
【0134】
なお、本実施形態の植物栽培プラント4は、一つのプラント内に複数の種類の植物9を一緒に栽培することができる。
植物栽培プラント4の内部の空間を分割する隔壁を設けて、隔てられた空間単位で栽培する植物9の種類を設定することにより実現できる。また、その隔壁の位置を移動可能な構造とすることにより、分割する空間の広さ(容量)を変更することができる。このような隔壁を設けたことにより、栽培する植物の量に応じて空間を分割することができる。
例えば、収穫が終わった空間を利用して、次の栽培の準備を開始することができる。
また、同じ種類を栽培する場合では、環境条件を変更して、収穫時期を分割された空間ごとに制御することができる。
【0135】
なお、上述の植物栽培システム1、移動型検出装置40、移動式栽培装置600は、コンピュータシステムを有している。そして、各機能部の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいうコンピュータシステムとは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。
【0136】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 植物栽培システム、4 植物栽培プラント、6 育成床、9 植物、60 可動台、60M 傾斜機構部、60W 車輪、80W ベルトコンベア、400 撮像位置移動部、610 可動台制御部(制御部)、600 移動式栽培装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が育成される育成床と、
前記育成床を支持して移動可能な可動台と、
前記植物の育成状況に応じて、前記可動台の位置を移動させる制御部と、
を備えることを特徴とする移動式栽培装置。
【請求項2】
前記制御部は、
撮像された前記植物の画像情報と育成モデルとに基づいて判定された前記植物の育成状況が前記育成床に対応付けられて記憶されている記憶部から読み出した前記植物の育成状況に応じて、前記可動台の位置を移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の移動式栽培装置。
【請求項3】
前記可動台は、
育成環境が互いに異なる複数の育成エリアに移動可能であり、
前記制御部は、
前記植物の育成状況に応じて、前記複数の育成エリアから選択された育成エリアに前記可動台の位置を移動させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動式栽培装置。
【請求項4】
前記複数の育成エリアには、前記植物の育成段階に対応した育成環境がそれぞれ予め設定されている
ことを特徴とする請求項3に記載の移動式栽培装置。
【請求項5】
前記制御部は、
設定されている収穫時期に前記植物の収穫対象が収穫可能になるように、前記植物の育成状況に応じて、前記複数の育成エリアから選択された育成エリアに前記可動台の位置を移動させる
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の移動式栽培装置。
【請求項6】
前記育成環境は、
前記植物に供給される光に関する条件、空気に関する条件、水に関する条件、または、肥料に関する条件のうち少なくとも1つの条件に基づく環境である
ことを特徴とする請求項3から請求項5の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記植物の育成状況に応じて、前記植物が撮像される位置に前記可動台の位置を移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記植物の育成状況に応じて、前記植物が撮像される方向に基づいて前記可動台が支持する育成床を傾斜させる
ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項9】
前記可動台は、
前記植物が廃棄される廃棄エリア、または、前記植物の収穫対象が収穫される収穫エリアに移動可能であり、
前記制御部は、
前記植物の育成状況に応じて、前記可動台の位置を前記廃棄エリア、または、前記収穫エリアに移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項10】
複数の前記育成床をそれぞれ支持して移動可能な複数の前記可動台、
を備え、
前記制御部は、
前記植物の育成状況に応じて、複数の前記可動台それぞれの互いの位置間隔を調整する
ことを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項11】
前記可動台は、
前記育成床を水平方向または鉛直方向に移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項10の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項12】
前記可動台は、
前記育成床を移動させる方向に対して回動自在な車輪、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項11の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項13】
前記可動台は、
前記育成床を移動させる方向に対して搬送するベルトコンベアに支持されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項11の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項14】
前記可動台は、
前記育成床を水に浮かせる浮力部、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項11の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項15】
前記可動台は、
前記育成床を傾斜させる傾斜部、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項14の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項16】
前記植物の画像情報は、
指示された位置まで撮像する位置を移動させて、指示された方向から前記植物を撮像可能とする撮像位置移動部によって移動した位置から撮像された前記植物の画像情報である
ことを特徴とする請求項1から請求項15の何れか1項に記載の移動式栽培装置。
【請求項17】
植物が育成される育成床と、
前記育成床の位置を移動可能に設けられた可動台と、
前記可動台の位置を移動させる制御部と、
を備え、
前記可動台は、
育成環境が互いに異なる複数の育成エリアに移動可能であり、
前記制御部は、
前記複数の育成エリアから選択された育成エリアに前記可動台の位置を移動させる
ことを特徴とする移動式栽培装置。
【請求項18】
請求項1から請求項17の何れか1項に記載の移動式栽培装置、
を備えることを特徴とする植物栽培システム。
【請求項19】
請求項18に記載の植物栽培システム、
を備えることを特徴とする植物栽培プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−87(P2013−87A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136459(P2011−136459)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】