説明

移動通信方式

【目的】 移動機の識別情報を複製して不正に移動機および網を使用することを防止し、正当な利用者およびシステム運用者の不利益ならびに社会的な混乱を防止できる。
【構成】 交換機230は加入者メモリ240を使用し、移動機100は制御部118、移動機格納データ処理部119、移動機格納データ用メモリ120を使用して通信の度に変化する共通の識別用のコードを保持し、この識別用のコードに基づき通信の都度確認する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、通信網に接続された基地局と多数の移動機とが無線通信を行う方式に利用する。移動通信方式の移動通信端末認証方式に利用する。本発明は、移動通信端末の不正使用防止に利用する。
【0002】
【従来の技術】移動通信方式では、無線が使用され端末が移動することから、移動機の識別情報は移動機に格納されているために、その識別情報のセキュリティが重要である。一旦その識別情報が盗まれると、正当な利用者またはシステム運用者が経済的に大きな不利益を被ることになる。
【0003】従来、移動通信方式では、無線区間の通信は暗号化を施すことにより、無線区間での通信情報の秘匿性を上げる方法があった。
【0004】また、移動機自身からその識別情報を盗むなどして不正に使用される複製の移動機に対する場合には、以下のような防止策があった。
■ 格納方式および読出形式にスクランブルを施すことにより、番号を読出し難くする。
■ 交換機で位置検出を行い、当該時間内に移動可能な範囲外であることを警告する。
■ 交換機で使用頻度の急激な増加の検出を行う。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従来の移動通信方式では、移動機自身からその識別情報を盗むなどして不正に使用される複製の移動機に対する防止策はコストが掛かり過ぎ、かつ実際に正当な使用か否かを区別することができないなどの問題点があり、適切な方法がなかった。
【0006】本発明は上記の問題点を解決するもので、移動機の識別情報を複製して不正に移動機および網を使用することを防止し、正当な利用者およびシステム運用者の不利益ならびに社会的な混乱を防止することができる移動通信方式を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、通信網に接続された複数の基地局と、この基地局に無線回線を介して接続された多数の移動機とを備え、前記移動機には割り当てられた固有の識別情報を保持する格納手段を備え、前記網にはその移動機の識別情報を保持するメモリ手段を備えた移動通信方式において、前記格納手段は前記識別情報とは別に識別用コードを記憶する格納領域を含み、前記メモリ手段は前記識別用コードを前記識別情報と対応させて記憶する記憶領域を含み、前記網には、前記移動機からの発信要求に付加された識別情報が適正であるときにその移動機に対して識別用コードの送信要求を送信する手段を備え、前記移動機は、前記識別用コードの送信要求に基づきその格納領域に記憶された識別用コードを読出して送信する手段を備え、前記網には、前記送信された識別用コードとその記憶領域内に記憶された識別用コードとを比較し一致したときには通信を許可しこの記憶された識別用コードと異なる新たな識別用コードを生成して送信する手段を備え、前記移動機は、その格納領域に記憶された識別用コードに代えて送信された新たな識別用コードを記憶して記憶完了通知を前記網に送信する手段を備え、前記網には、前記記憶完了通知に基づきその領域内に記憶された識別用コードを新たな識別用コードにおき代える手段を備えたことを特徴とする。
【0008】また、本発明は、前記網には、前記移動機から前記記憶完了通知を受信できなかったときには、再度識別用コードの送信要求を送信して確認する手段を含むことができる。
【0009】
【作用】網は移動機から発信要求があったときその識別情報が適正なときにはこの移動機に対してその記憶している識別用コードの送信を要求し、移動機はその記憶している識別用コードを送信し、網はその記憶している識別用コードと一致すれば通信を許可し、前回と異なる新たな識別用コードを生成して移動機に送信し、移動機は新たな識別用コードを記憶し記憶完了通知を送信し、網は新たな識別用コードを記憶する。すなわち、網と移動機とで一致した識別用コードを保持し、これを通信の都度新たな識別用コードに更新し、この識別用コードで確認を行うことにより移動機の識別情報を複製して不正に移動機および網を使用することを防止し、正当な利用者およびシステム運用者の不利益ならびに社会的な混乱を防止することができる。
【0010】また、網は、移動機からの記憶完了通知を受信できなかったときには、新たな識別用コードが移動機に受信されていない場合、または新たな識別用コードが移動機に受信され移動機の識別用コードは更新されたが確認信号が網で受信できない場合を想定し、再度前回または新たな識別用コードを送信して確認する。
【0011】
【実施例】本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明一実施例移動通信方式のブロック構成図である。
【0012】図1において、移動通信方式は、通信網として網200に接続された複数の基地局として基地局220と、基地局220に無線回線を介して接続された多数の移動機として移動機100とを備え、移動機100には割り当てられた固有の識別情報を格納する格納手段として移動機格納データ用メモリ120を備え、網200として交換機230には移動機100の識別情報を保持するメモリ手段として加入者メモリ240を備え、基地局220はアンテナ210、無線部221および制御部222を含み、また移動機100は電話機111、変調器112、送信機113、共用器114、アンテナ115、受信機116、復調器117、制御部118および周波数シンセサイザを含み、さらに制御部118は移動機格納データ処理部119を含む。
【0013】ここで本発明の特徴とするところは、移動機格納データ用メモリ120は前記識別情報とは別に識別用コードを記憶する格納領域を含み、加入者メモリ240は前記識別用コードを前記識別情報と対応させて記憶する記憶領域を含み、交換機230には、移動機100からの発信要求に付加された識別情報が適正であるときに移動機100に対して識別用コードの送信要求を送信する手段を備え、移動機100は、前記識別用コードの送信要求に基づきその格納領域に記憶された識別用コードを読出して送信する手段を備え、交換機230には、前記送信された識別用コードとその記憶領域内に記憶された識別用コードとを比較し一致したときには通信を許可しこの記憶された識別用コードと異なる新たな識別用コードを生成して送信する手段を備え、移動機100は、その格納領域に記憶された識別用コードに代えて送信された新たな識別用コードを記憶して記憶完了通知を交換機230に送信する手段を備え、交換機230には、前記記憶完了通知に基づきその記憶領域内に記憶された識別用コードを新たな識別用コードにおき代える手段を備えたことにある。
【0014】さらに、具体的に移動機100の送信する手段は制御部118、移動機格納データ処理部119、変調器112、共用器114、アンテナ115および周波数シンセサイザ121に含まれる。
【0015】また、交換機230には、移動機100から前記記憶完了通知を受信できなかったときには、再度識別用コードの送信要求を送信して確認する手段を含む。
【0016】このような構成の移動通信方式の動作について説明する。
【0017】図2は本発明の移動通信方式の不正が無い状態における移動機と網(交換機)との間の信号シーケンスおよび処理の説明図である。図3は本発明の移動通信方式の処理完了を示す「記憶完了」が網で受信できなかった場合の移動機と網(交換機)との間の信号シーケンスおよび処理の説明図である。図4は本発明の移動通信方式の不正コピーによる不正移動機が使われた場合の移動機と網(交換機)との間の信号シーケンスおよび処理の説明図である。
【0018】図2は正常時の処理を示し、移動機100からの発信要求に対して交換機230からコード要求(識別用コードの送信要求)を送信する。コード要求を受信した移動機100は、前回の通信で記憶したコードA(識別用コード)を送信する。交換機230は移動機100の加入者データ内の前回の通信で記憶したコードAと移動機100からのコードとを比較し一致した場合に通信を許可する。さらに、コードが一致した場合に交換機230は新たなコードB(識別用コード)を送信し、移動機100は記憶したコードAをコードBに更新し、処理が完了(記憶完了)したことを交換機230に通知する。記憶完了を受信した交換機230は、移動機100の加入者データ内のコードAをコードBに書き換える。
【0019】ここで、識別用のコードは、たとえば8ビットの数値で構成され、順序数を1づつ繰り上げて使用する。交換機230および移動機100はコードA(たとえば「00000010」)をそれぞれ加入者メモリ240および移動機格納データ用メモリ120に記憶しているとする。交換機230は移動機100の発信要求によりコードAの送信を要求し、移動機100は移動機格納データ用メモリ120からコードAを読出して送信する。交換機230は自機が記憶しているコードAと一致するので通信を許可し、コードAに「1」を加えてコードB(「00000011」)を移動機100に送信する。移動機100はコードBをコードAに代えて移動機格納データ用メモリ120に記憶し「記憶完了」の通知を送信する。交換機230は「記憶完了」を受信しコードBが記憶されたことを確認し、加入者メモリ240にコードBを記憶する。また、順序数をnビットづつ繰り上げてもよく、8ビットを32ビットにし乱数発生器の発生する乱数を使用すればさらにセキュリティを強化することができる。
【0020】図3は、処理が完了したことを表す「記憶完了」を受信できなかった場合の処理であり、「交換機230から送信された新たなコードBが受信されていない」場合と「新たなコードが移動機100に受信され、移動機100のコードは更新されたが、「記憶完了」が交換機230で受信できない」場合とに分けて記述している。
【0021】交換機230は、「記憶完了受信待ちタイムアウトで、再度コード要求を送出し、移動機100に記憶コードの送信を要求し、再送の場合は更新前のコードAまたは更新後のコードBのいずれかの場合に、網側200は移動機100が正当であると判断し、更新コードBを送出し、移動機100は再送の場合には、すでにコードBに更新の場合でも再度コードBを記憶する。移動機100は記憶完了時「記憶完了」を交換機230に送出し、交換機230は移動機100の加入者コード内のコードAをコードBに書き換える。
【0022】このような処理を行うことにより、図4に示すような不正な移動機に対して早期に対策を講ずることができる。
【0023】図4に示すように、正当な移動機のコードをコピーした不正な移動機を使用した場合に、不正な移動機が通信した時点で、交換機230の加入者データのコードBに書き換えられる。この状態で、正当な移動機が発信した場合に、交換機230からのコード要求に対して、正当な移動機はコードAを返し、交換機230のコードBと不一致となり、正当な移動機は通信不可となる。これにより、正当な移動機のユーザは自分の番号を使用している不正者がいることが分かり、システム運用者に連絡し、その番号を使用できないようにすることができ、これにより経済的打撃を回避することができる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、移動機と網とで通信するごとに変わる共通の情報を持ち、通信するごとにその情報を確認することにより、不正な移動機の出現に対して効果的に対策をうつことができ、不正な移動機の出現を無くすことができる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明一実施例移動通信方式のブロック構成図。
【図2】本発明の移動通信方式の不正が無い状態における移動機と網(交換機)との間の信号シーケンスおよび処理の説明図。
【図3】本発明の移動通信方式の処理完了を示す「記憶完了」が網で受信できなかった場合の移動機と網(交換機)との間の信号シーケンスおよび処理の説明図。
【図4】本発明の移動通信方式の不正コピーによる不正移動機が使われた場合の移動機と網(交換機)との間の信号シーケンスおよび処理の説明図。
【符号の説明】
100 移動機
111 電話機
112 変調器
113 送信機
114 共用器
115 アンテナ
116 受信機
117 復調器
118 制御部
119 移動機格納データ処理部
120 移動機格納データ用メモリ
121 周波数シンセサイザ
200 網
210 アンテナ
220 基地局
221 無線部
222 制御部
230 交換機
240 加入者メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 通信網に接続された複数の基地局と、この基地局に無線回線を介して接続された多数の移動機とを備え、前記移動機には割り当てられた固有の識別情報を保持する格納手段を備え、前記網にはその移動機の識別情報を保持するメモリ手段を備えた移動通信方式において、前記格納手段は前記識別情報とは別に識別用コードを記憶する格納領域を含み、前記メモリ手段は前記識別用コードを前記識別情報と対応させて記憶する記憶領域を含み、前記網には、前記移動機からの発信要求に付加された識別情報が適正であるときにその移動機に対して識別用コードの送信要求を送信する手段を備え、前記移動機は、前記識別用コードの送信要求に基づきその格納領域に記憶された識別用コードを読出して送信する手段を備え、前記網には、前記送信された識別用コードとその記憶領域内に記憶された識別用コードとを比較し一致したときには通信を許可しこの記憶された識別用コードと異なる新たな識別用コードを生成して送信する手段を備え、前記移動機は、その格納領域に記憶された識別用コードに代えて送信された新たな識別用コードを記憶して記憶完了通知を前記網に送信する手段を備え、前記網には、前記記憶完了通知に基づきその記憶領域内に記憶された識別用コードを新たな識別用コードにおき代える手段を備えたことを特徴とする移動通信方式。
【請求項2】 前記網には、前記移動機から前記記憶完了通知を受信できなかったときには、再度識別用コードの送信要求を送信して確認する手段を含む請求項1記載の移動通信方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−164493
【公開日】平成6年(1994)6月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−317411
【出願日】平成4年(1992)11月26日
【出願人】(392026693)エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社 (5,876)