説明

積層シート及び発泡積層シート

【課題】基材上に、発泡樹脂層及び光触媒層を順に形成した発泡積層シートであって、光触媒層側にエンボス加工を施した場合でも、光触媒機能の低下が抑制されている発泡積層シートを提供する。
【解決手段】基材上1に、少なくとも発泡剤含有樹脂層3及び非発泡樹脂層A4が順に形成され、前記非発泡樹脂層Aの上に発泡抑制剤層5及び光触媒層7を有する積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート及び発泡積層シートに関する。前記発泡積層シートは、発泡樹脂層を有しており、発泡壁紙及び各種装飾材等として有用である。また、前記積層シートは、前記発泡積層シートの発泡前の状態であり、いわゆる未発泡原反を意味する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅部材から発生するホルムアルデヒド等の有機ガスによるシックハウスの問題、ペット臭、及び生活臭等の問題への対策として、揮発性有機化合物(VOC)を分解する光触媒機能を有する建築用内装材のニーズが高まってきている。光触媒は紫外光領域で光触媒活性を発揮するものが多いが、建築用内装材に適用することを考慮し、室内の可視光でも触媒活性を発揮する可視光型光触媒及び該触媒薄膜が注目され、開発が進められてきている。
【0003】
光触媒機能を有する建築用内装材としては、例えば、壁材、天井材及び床材等があるが、内装部材として最も大きな面積を有する壁材として用いることが、VOC分解のために有効と考えられており、光触媒機能を有する壁紙が種々提案されている(特許文献1及び2)。
【0004】
しかしながら、これまでの発泡壁紙では、発泡層上に直接光触媒層を設けられているため、発泡工程において発生する発泡剤からのガス等の影響により光触媒機能が十分に発揮されないという問題がある。また、意匠性付与のため、発泡後の壁紙に熱圧エンボスロールを用いてエンボス加工(以下、メカニカルエンボスとも言う。)を施すと、光触媒粒子が下地(発泡樹脂層等)に埋没して、光触媒粒子の有機物分解性能(特に初期性能)が低下してしまうという問題がある。
【0005】
従って、基材上に、発泡樹脂層及び光触媒層を順に形成した発泡積層シートであって、光触媒層側にエンボス加工を施した場合でも、光触媒粒子の有機物分解性能が低下しない発泡積層シートの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−180943号公報
【特許文献2】特開2009−279813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基材上に、発泡樹脂層及び光触媒層を順に形成した発泡積層シートであって、光触媒層側にエンボス加工を施した場合でも、光触媒機能の低下が抑制されている発泡積層シートを提供することを目的とする。また、当該発泡積層シートの製造に有用な、積層シート(未発泡原反)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aを順に形成し、更に、前記非発泡樹脂層Aの上に発泡抑制剤層及び光触媒層を形成することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の積層シート及び発泡積層シートに関する。
1. 基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aが順に形成され、前記非発泡樹脂層Aの上に発泡抑制剤層及び光触媒層を有する積層シート。
2. 前記非発泡樹脂層Aの上に、更に表面保護層が形成されている、上記項1に記載の積層シート。
3. 前記発泡抑制剤層が着色剤を含む、上記項1又は2に記載の積層シート。
4. 前記発泡抑制剤層と前記表面保護層とが同調するように形成されている、上記項2又は3に記載の積層シート。
5. 前記基材と前記発泡剤含有樹脂層との間に非発泡樹脂層Bが形成されている、上記項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
6. 前記基材は、繊維質シートである、上記項1〜5のいずれかに記載の積層シート。
7. 上記項1〜6のいずれかに記載の積層シートの前記発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シート。
【0010】
以下、本発明の積層シートについて詳細に説明する。
【0011】
≪積層シート≫
本発明の積層シートは、基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aが順に形成され、前記非発泡樹脂層Aの上に発泡抑制剤層及び光触媒層を有することを特徴とする。
【0012】
上記特徴を有する本発明の積層シートは、発泡剤含有樹脂層上に非発泡層樹脂層Aを備えることで、発泡時に発生するガスを非発泡樹脂層Aで遮断でき、光触媒機能の低下を抑制できる。
【0013】
また、本発明の積層シートは、発泡抑制剤層をパターン状に設けてケミカルエンボスを施すことで、光触媒機能の低下を抑制できる。具体的には、発泡樹脂層と光触媒層との間に発泡抑制剤層を設けることで、エンボス模様を付与する際に、エンボス版を用いたメカニカルエンボス加工により光触媒粒子が下地(発泡樹脂層等)へ埋没するこれまでの技術と比較して、光触媒粒子の下地への埋没がなく、光触媒粒子が有機汚染物質に近接する機会を減らすことができる。
【0014】
更に、本発明の積層シートは、表面保護層を形成することで、積層体の表面物性を高めることができる。また、非発泡樹脂層Aと光触媒層との間にプライマー層を有することで、光触媒層と非発泡樹脂層Aの密着性が向上するだけでなく、光触媒粒子の下地への埋没を更に抑制でき、その結果、より高い有機物分解性能を有する。
【0015】
このように、本発明の積層シートは、発泡時に発生するガスによる影響及びエンボス加工時の光触媒粒子の下地への埋没が低減できるため、光触媒粒子の大気中の有機物の分解性能が発現するまでの時間(初期化時間)を短縮でき、有機物分解の初期性能を向上させることができる。
【0016】
前記「初期性能」について説明する。光触媒粒子の有機物分解性能は、光触媒粒子の光照射側表面に近接する有機汚染物質を分解して後に発現する。そのため、本発明では、光触媒粒子がその近接する有機汚染物質を分解して、大気中の有機物を分解し始めるまでの時間が短いものを「初期性能」が高いとする。具体的には、図1に示す様に、積層シート(又は発泡積層シート)に対してブラックライト(BL)を照射後、アセトアルデヒド濃度の低下が始まる時間を初期化時間(時間)(図1において矢印で示した時間)として記録することで、評価することができる。なお、上記有機汚染物質が、光触媒粒子に近接する要因としては、インキ中の有機物、発泡時に発生するガス及びエンボス加工時の光触媒粒子の下地への埋没などが考えられる。
【0017】
基材
基材としては限定されず、公知の繊維質シート(裏打紙)などが利用できる。
【0018】
具体的には、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理したもの);難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0019】
基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜120g/m程度がより好ましい。
【0020】
発泡剤含有樹脂層
本発明で用いる発泡剤含有樹脂層は、樹脂成分としてオレフィン系樹脂を含有することが好ましく、具体的には、エチレン系樹脂を含有することが好ましい。エチレン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)だけでなく、エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体(以下、「エチレン共重合体」と略記する)が挙げられる。
【0021】
エチレン共重合体は融点及びMFRの観点で押出し製膜に適している。エチレン共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等が挙げられる。これらのエチレン共重合体は単独又は2種以上を混合して使用できる。これらのエチレン共重合体の中でも特にエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体が好ましく、これらのいずれか1種と他の樹脂の1種以上とを併用する場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体の含有量は、それぞれ70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0022】
また、エチレン共重合体は、エチレン以外のモノマーの含有量としては、5〜25質量%が好ましく、9〜20質量%がより好ましい。このような共重合比率を採用することにより、押出し製膜性がより高まる。具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの共重合比率(VA量)としては9〜25質量%が好ましく、9〜20質量%がより好ましい。また、エチレン−メチルメタクリレート共重合体は、メチルメタクリレートの共重合比率(MMA量)としては5〜25質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
【0023】
本発明では、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分は、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFR(メルトフローレート)が10〜25g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲内の場合には、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する際の温度上昇が少なく、非発泡状態で製膜できるため、後に絵柄模様層を形成する場合には、平滑な面に印刷処理をすることができて柄抜け等が少ない。MFRが大きすぎる場合は、樹脂が軟らかすぎることにより、形成される発泡樹脂層の耐傷性が不十分となるおそれがある。
【0024】
発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物としては、例えば、上記樹脂成分、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤、発泡助剤、架橋助剤及びセル調整剤等を含む樹脂組成物を好適に使用できる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として使用できる。
【0025】
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、7倍以上、好ましくは7〜10倍程度であり、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部程度とすることが好ましい。
【0026】
発泡助剤は、金属酸化物及び/又は脂肪酸金属塩が好ましく、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を使用することができる。これらの発泡助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.001〜20質量部程度が好ましく、0.001〜10質量部程度がより好ましい。
【0027】
なお、これらの発泡助剤とEMAAとADCA発泡剤とを組み合わせて用いる場合には、発泡工程において、EMAAのアクリル酸部分と発泡助剤が反応することにより本来の発泡助剤の効果が損なわれるという問題がある。そのため、EMAAとADCA発泡剤とを組み合わせて用いる場合には、特開2009−197219号公報に説明されている通り、発泡助剤としてカルボン酸ヒドラジド化合物を用いることが好ましい。このとき、カルボン酸ヒドラジド化合物はADCA発泡剤1質量部に対して0.2〜1質量部程度用いることが好ましい。
【0028】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度が好ましく、20〜70質量部程度がより好ましい。
【0029】
顔料については、無機顔料として、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料として、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部程度が好ましく、15〜30質量部程度がより好ましい。
【0030】
本発明では、発泡剤含有樹脂層は電子線照射により樹脂架橋されていてもよい。発泡剤含有樹脂層に電子線を照射する方法及び発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すればよい。なお、発泡剤含有樹脂層の厚さは40〜100μm程度が好ましく、発泡後の発泡樹脂層の厚さは300〜700μm程度が好ましい。
【0031】
非発泡樹脂層A
前記発泡剤含有樹脂層のおもて面に非発泡樹脂層Aを有する。非発泡樹脂層Aは、発泡樹脂層を形成する際の発泡工程で発泡剤から生じる発泡ガス等の揮発分成分による光触媒機能の低下を防止する機能を有する。具体的には、酸化チタン等の光触媒機能を有する物質(表面)への、前記発泡ガスによる悪影響を防止できる。また、非発泡樹脂層Aを有することで、絵柄模様層を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする(発泡樹脂層を保護する)こともできる。
【0032】
非発泡樹脂層Aの樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、その中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、アイオノマー及びエチレン−アクリル酸共重合体等の少なくとも1種が挙げられる。
【0034】
非発泡樹脂層Aの厚さは限定的ではないが、5〜50μm程度が好ましい。
【0035】
本発明では、更に、発泡剤含有樹脂層の裏面(基材が積層される面)に、基材との接着力を向上させる目的で非発泡樹脂層B(接着樹脂層)を有してもよい。
【0036】
接着樹脂層の樹脂成分としては、特に限定はないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。EVAは公知又は市販のものを使用することができる。特に、酢酸ビニル成分(VA成分)が10〜46質量%であるものが好ましく、15〜41質量%であるものがより好ましい。
【0037】
接着樹脂層の厚さは限定的ではないが、5〜50μm程度が好ましい。
【0038】
本発明では、後記製造上の観点からも、基材上に非発泡樹脂層B、発泡剤含有樹脂層及非泡樹脂層Aが順に形成された態様が好ましい。
【0039】
発泡抑制剤層
発泡抑制剤層を発泡剤含有樹脂層上に設けることで、発泡剤含有樹脂を発泡させて発泡樹脂層とした場合に、該発泡抑制剤層の形成された領域は凹部になり、該発泡抑制剤層の形成されていない領域は凸部になることで、発泡樹脂層の表面に凹凸模様が形成さできる。
【0040】
発泡抑制剤層に含まれる発泡抑制剤としては、例えば、無水トリメリット酸、1−{N,N−ビスアルキルアミノメチル}ベンゾトリアゾール系化合物、1−{N,N−ビス(ヒドロキシアルキレン)アミノメチル}ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。1−{N,N−ビスアルキルアミノメチル}ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、1−{N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール或いはその誘導体が好ましい。1−{N,N−ビス(ヒドロキシアルキレン)アミノメチル}ベンゾトリアゾールとしては、例えば、1−{N,N−ビス(ヒドロキシエチレン)アミノメチル}ベンゾトリアゾール或いはその誘導体が好ましい。
【0041】
発泡抑制剤層を形成する際は、上記発泡抑制剤に結着材樹脂やメチルエチルケトン及び酢酸ブチル等の溶剤、並びに水及びアルコールを適宜加えて発泡抑制剤含有インキを調製し、ダイレクト印刷や転写印刷等により塗工すればよい。
【0042】
結着材樹脂は、基材シートの種類に応じて設定できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0043】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。
【0044】
発泡抑制剤含有インキの発泡抑制剤の含有量は限定されないが、結着剤樹脂100質量部に対し、5〜80質量部程度が好ましく、20〜60質量部程度がより好ましい。
【0045】
また、発泡抑制剤層は、着色剤を含んでもよく、着色剤としては発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用できる。
【0046】
絵柄模様層
非発泡樹脂層Aと光触媒層との間には、必要に応じて絵柄模様層を形成してもよい。
【0047】
絵柄模様層は、発泡積層シートに意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、目的に応じて選択できる。
【0048】
絵柄模様層は、例えば、絵柄模様を印刷することで形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用してもよい。また、着色剤、結着材樹脂、溶剤については、発泡抑制剤層で使用されるものを使用すればよい。
【0049】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類により異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0050】
プライマー層
非発泡樹脂層Aと光触媒層との間、非発泡樹脂層Aと発泡抑制剤層若しくは絵柄模様層の間等、各層の間には必要に応じてプライマー層を形成してもよい。
【0051】
プライマー層に含有される樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタン−アクリル系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂の中から、プライマー層の隣接層の種類に応じて接着性の向上などを考慮して適宜選択できる。特に、有機分(樹脂分)と光触媒粒子との過度の接触を避けるためシリカなどのフィラーを含むことが望ましい。
【0052】
プライマー層の塗布量は限定的ではないが、0.2〜5.0g/m程度が好ましく、0.5〜2.0g/m程度がより好ましい。
【0053】
光触媒層
非発泡樹脂層Aの上には光触媒層が形成されている。この光触媒層は、有機ガスによるシックハウス、ペット臭、生活臭等の原因物質を光触媒作用により分解する作用を有する。
【0054】
光触媒層に含まれる光触媒粒子としては限定的ではないが、発泡積層シートの室内での使用を考慮し、可視光線により光触媒作用を発揮するものが好ましい。具体的には、蛍光灯の光照射に対して光触媒作用を発揮するものが好ましく、特に波長約430〜830nmの光照射に対して光触媒作用を発揮するものが好ましい。
【0055】
光触媒粒子の具体例としては、例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Bi、La、Ce等の金属元素の1種又は2種以上の酸化物、窒化物、硫化物、酸窒化物、酸硫化物、窒弗化物、酸弗化物、酸窒弗化物等が挙げられる。これらの光触媒粒子の中でも、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタンが好ましく、可視光線又は蛍光灯の照射で効率よく触媒作用を発揮する点ではアナターゼ型酸化チタンが好ましい。
【0056】
光触媒粒子の平均一次粒子径は限定されないが、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、180nm以下が最も好ましい。また、その平均二次粒子径は15μm以下が好ましい。
【0057】
光触媒層は、光触媒粒子を保持するバインダーを通常含有する。ここで、バインダーとしては、公知の有機バインダーや無機バインダーを使用することができる。光触媒粒子の有機物分解性能を考慮すると無機バインダーを使用し、その多孔質層中に光触媒粒子の表面を多く露出させることが好ましい。
【0058】
無機バインダーの具体例としては、アルコキシシラン類の縮合物、オルガノポリシロキサン、有機ポリシロキサン化合物の重縮合物、加水分解物、シリコンワニス等のシリカ化合物;リン酸亜鉛、重リン酸塩、リン酸アルミニウムなどのリン酸塩;シリカ、コロイダルシリカ、水ガラス、セメント、石灰、セッコウ、ほうろう用フリット、グラスライニング用の上薬、プラスターなどの無機系バインダーを挙げることができる。
【0059】
光触媒層中のバインダーの含有量は、限定的ではないが、光触媒粒子100質量部に対して、5〜80質量部程度が好ましく、10〜40質量部程度がより好ましい。
【0060】
光触媒層は、その他、艶調整のために、シリカ等の無機フィラーに例示される艶調整剤及び増粘剤を適宜添加することができる。
【0061】
本発明の光触媒層は、例えば、前記した光触媒粒子と無機バインダーを溶媒に分散させた分散液を、グラビアコート、スプレーコート、ディップコート、又はハケ塗りなどの方法により、発泡抑制剤層上(又はプライマー層上)に塗布し、その後、分散液中の溶媒を除去しうる温度で加熱・乾燥する方法が挙げられるが、本発明は該方法に限定されるものではない。乾燥が完了した後、30〜60℃程度の温度で所要時間エージングを行うこともできる。これにより、コーティングした光触媒層の剥離強度を向上させることができる。
【0062】
光触媒層の厚さは限定的ではなく、目的、用途に応じて、塗布量(乾燥重量)に換算して、0.2〜5g/m程度の範囲で塗布することが好ましい。
【0063】
表面保護層
本発明の積層シートでは、艶調整及び表面の保護を意図して、非発泡樹脂層Aの上に、さらに表面保護層が形成されていてもよい。
【0064】
表面保護層の種類は限定的ではない。アクリル系樹脂やウレタン系樹脂など絵柄模様層と同等な結着剤樹脂や溶剤を使用した1液硬化型または2液硬化型樹脂などが使用できる。
【0065】
また、発泡壁紙の表面強度(耐スクラッチ性等)、耐汚染性及び絵柄模様層の保護等を目的として表面保護層を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。
【0066】
電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、電子線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂を使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。汚染性の向上目的でシリコーン樹脂を含むことが望ましい。
【0067】
また、艶調整のためには、シリカなどの既知フィラーを含有する表面保護層の形成が望ましい。また、滑り性や汚れの拭取り易さを付与するために、シリコーンなどの添加剤も加えることができる。なお、必要に応じて、消臭剤や抗菌剤、抗アレルゲン剤等を添加し、機能性を付与してもいい。
【0068】
表面保護層の形成方法としては、グラビア印刷などの公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層と表面保護層との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層を設けることもできる。
【0069】
表面保護層の厚みは限定的ではないが、0.1〜15μm程度が好ましい。
【0070】
発泡抑制剤層、光触媒層及び表面保護層の形成態様
本発明の積層シートでは、例えば、図2〜5に示すように、非発泡樹脂層Aの上であって、光触媒層よりも下の層に発泡抑制剤層をパターン状に形成することができる。
【0071】
パターン状の例示としては、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン及び万線条溝等の模様が挙げられる。
【0072】
この発泡抑制剤層を形成した領域は、積層シートの発泡工程において発泡抑制剤成分が発泡剤含有樹脂層に浸透し、当該浸透部分の発泡が抑制されることにより他部分よりも凹むため、発泡抑制剤層のパターンに応じた凹凸模様を形成することができる。
【0073】
なお、表面保護層の形成は、図4に示すように、光触媒層7の上にパターン状の表面保護層9を形成ことができる。このとき、発泡抑制剤層と表面保護層のパターンを同調させると、発泡後(図示なし)の凹部が表面保護層、凸部が光触媒層となるため汚染性及び光触媒機能に優れた発泡積層シートを得ることができる。また、本発明では、表面保護層を光触媒層の下層に形成してもよく、図5に示すように、光触媒層7と表面保護層9とを同一平面層上に形成することができる。
【0074】
≪発泡積層シート≫
本発明の発泡積層シートは、上記積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得ることができる。発泡時の加熱条件は、発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
【0075】
本発明の発泡積層シートは、前記パターン状の発泡抑制剤層を有するため、表面はケミカルエンボス加工が施される。このケミカルエンボス加工により、光触媒層に含まれる光触媒粒子が基材側に深く押し込まれて埋没することが抑制されているため、エンボス加工後でも光触媒機能の低下が抑制されている。
【0076】
また、発泡抑制剤により形成される凹凸模様の深さ(発泡抑制剤層の形成されている領域と形成されていない領域との高低差)は、50〜300μm程度であればよい。この高低差は、上記発泡抑制剤の使用量に応じて適宜調整できる。
【0077】
≪発泡積層シートの製造方法≫
積層シートの製造方法としては、先ず、基材上に発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aを、押出し機等を用いて製膜し、余熱した基材に貼り合わせて積層体を得ることができる。このとき、2つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより2層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。この場合、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物及び非発泡樹脂層Aを形成するための樹脂組成物をそれぞれ別個のシリンダー中に入れ、2種2層を同時に押出し成膜・積層すればよい。また、予め2種2層を同時成膜した積層体を用意して、それを基材上に載せて、熱ラミネートすることにより基材と接着してもよい。
【0078】
発泡剤含有樹脂層がその両面に非発泡樹脂層を有する場合(非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層B)には、3層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイ押出し機を用いて、3つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出し製膜することが好適である。
【0079】
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合であって、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する場合には、押出し機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これが発泡剤含有樹脂層表面の異物となり易い。そのため、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、上記のように3層同時押出し製膜することが好ましい。即ち、発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し製膜することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0080】
発泡剤含有樹脂層を製膜後は、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋して発泡樹脂層の表面強度及び発泡特性等を調整することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましく、175〜200kV程度がより好ましい。照射量は、10〜100kGy程度が好ましく、10〜50kGy程度がより好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0081】
基材上に同時積層後は、前記非発泡樹脂層A上に、必要に応じて絵柄模様層及びプライマー層を形成した後、発泡抑制剤層(着色剤を含んでもよい)をパターン状に塗布させることにより、パターン状の発泡抑制剤層が形成される。
【0082】
次に、光触媒層を印刷で設ける。更に、前記光触媒層上に表面保護層を設けても良い。
【0083】
これらの各層は、印刷の他、塗布などのコーティング、押出し製膜等を組み合わせることにより積層することができる。
【0084】
次に、発泡剤含有樹脂層を加熱することにより発泡樹脂層を形成する。上記発泡工程において、発泡抑制剤層が形成されている領域が、発泡抑制剤の作用により他の領域に比べて有意に凹むことにより凹凸模様が形成される。
【発明の効果】
【0085】
本発明の発泡積層シートは、発泡剤含有樹脂層上に非発泡層樹脂層Aを備えることで、発泡時に発生するガスを非発泡樹脂層Aで遮断でき、更に、発泡抑制剤層を設けてケミカルエンボスを施すことで、その表面に凹凸模様を形成することができる。その結果、発泡時に発生するガスによる影響及び光触媒粒子の下地への埋没が低減できるため、光触媒の大気中の有機物の分解性能(ガス分解)が発現するまでの時間(初期化時間)を短縮できる。そのため本発明の発泡積層シートは、より高い有機物分解性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】光触媒粒子の有機物分解性能を評価する際の、初期性能及び初期化時間を説明する図である。
【図2】積層シートの別の形態の断面図である。
【図3】積層シートの別の形態の断面図である。
【図4】積層シートの別の形態の断面図である。
【図5】積層シートの別の形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0088】
実施例1
可視光型光触媒機能を有する壁紙を以下に記載する方法で作製した。
【0089】
3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に厚み8μm/75μm/8μmになるように押出し製膜した。基材としては、裏打紙「WK−665(興人製)」を用意し、これを90℃に加熱した後、上記3層を積層し、これにより、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層B/基材からなる積層体を得た。
【0090】
押出し条件は、非発泡樹脂層Aを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は140℃とし、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物を収容したシリンダー温度は120℃とし、非発泡樹脂層Bを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は100℃とした。また、ダイス温度はいずれも120℃とした。次に、電離放射線硬化型樹脂層側から電子線(200kV,30kGy)を照射して発泡剤含有樹脂層を架橋させた。
【0091】
図2に示すように、上記積層体の非発泡樹脂層Aの上にグラビア印刷により、発泡抑制剤及び着色剤を添加した水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いてストライプ状の発泡抑制剤層を印刷した。水性インキには、樹脂分100質量部に対し、発泡抑制剤として、1−(N,N−ビス(ヒドロキシエチレン)アミノメチル)ベンゾトリアゾール50質量部を混合した。
【0092】
次いでプライマー層(オーデプライマー9、DICグラフィックス製、アクリル系1液硬化型樹脂、シリカ含有)を印刷し、最表層として、可視光型光触媒層(可視光型酸化チタン光触媒コーティング剤TC−S4115、住友化学(株)製、N.V.5wt%)を乾燥後の質量が1g/mとなるように印刷して設け、積層シートを得た。次に、前記積層シートを発泡炉で加熱(220℃で35秒)し、発泡剤含有樹脂層を発泡させた。これにより、発泡樹脂層を形成するとともに、最表面にケミカルエンボスによる凹凸模様を形成し、発泡積層シートを得た。
【0093】
各樹脂層は、それぞれ以下の成分を用いて形成した。
【0094】
非発泡樹脂層Aは、EMAA「ニュクレルN1560(MMA含有量:15質量%)、三井・デュポン ポリケミカル製」により形成した。
【0095】
発泡剤含有樹脂層は、EVA「エバフレックスV406(VA含有量:20質量%、MFR=20)、三井・デュポン ポリケミカル製」100質量部、流動改質剤「P−100、荒川化学製」10質量部、酸化チタン「R103、デュポン製」20質量部、ADCA発泡剤「ユニフォームウルトラAZ3050I 大塚化学製」5質量部、発泡助剤「OF−101、ADEKA製」5質量部とした。
【0096】
非発泡樹脂層Bは、EVA「エバフレックスEV150(VA含有量:33質量%、融点:61℃)、三井・デュポン ポリケミカル製」により形成した。
【0097】
実施例2
図3に示すように、実施例1で作製した積層体の非発泡樹脂層Aの上に着色剤を添加した水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)で絵柄模様層(布目模様)を形成した後、プライマー層(オーデプライマー9、DICグラフィックス製、アクリル系1液硬化型樹脂、シリカ含有)を形成し、発泡抑制剤を添加した水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いてストライプ状に発泡抑制剤層を印刷した。水性インキには、樹脂分100質量部に対し、発泡抑制剤として、1−(N,N−ビス(ヒドロキシエチレン)アミノメチル)ベンゾトリアゾール50質量部を混合した。その後、実施例1と同じ可視光型光触媒層を形成した以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。
【0098】
実施例3
図4に示すように、実施例1の光触媒層の上に表面保護層(ALTOP−402B、大日精化工業製)を発泡抑制剤層と同調するようにストライプ状に印刷した以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。
【0099】
実施例4
図5に示すように、光触媒層と表面保護層が同一平面層中に重ならないように形成し、前記表面保護層を発泡抑制剤層と同調するように印刷したした以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。
【0100】
比較例1
絵柄模様層に発泡抑制剤を添加せずに形成したほかは、実施例1に同様にして積層体を形成し、発泡剤含有樹脂層を発泡させた。そののち、発泡体の表側にエンボス版を用いてエンボス加工(メカニカルエンボス)を施して凹凸模様を形成し、発泡壁紙を得た。
【0101】
比較試験1(初期化時間)
各実施例及び比較例について、以下の通り、初期化時間を測定した。
【0102】
サンプル(60mm×100mm)を、内容量5リットルのテドラーバッグ内に挿入した。99.5%アセトアルデヒド液と合成空気〔(窒素:酸素)容積比:4/1、RH50%〕を用いてアセトアルデヒド濃度50ppmのガスを調製し、テドラーバッグ内に3リットル送り込んだ。
【0103】
その後、ブラックライト(BL)2mW/cmを照射して、アセトアルデヒドの分解試験を実施した。テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度の経時変化は1.5時間ごとに検知管により測定した。
【0104】
評価としては、図1に示すように、ブラックライトを照射後、アセトアルデヒド濃度の低下が始まる時間を初期化時間(時間)(矢印で示した時間)として記録した。そして、初期化時間が短いものを、初期性能が高いと評価した。
【0105】
比較試験2(耐汚染性:パターン品の性能として)
汚染物質として赤インクをサンプル上に乗せたガーゼに各々滴下し、24時間後に水及び中性洗剤を用いて拭取った。
【0106】
目視評価にて、拭取り不可の場合は「×」、拭き残りがみられる場合は「△」、拭取り可能であれば「○」とした。
【0107】
【表1】

【0108】
考察
比較例1は、メカニカルエンボス加工による凹凸模様を形成したものであり、アセトアルデヒドの濃度低下が始まる時間(初期化時間)が12時間と長かった。これは、メカニカルエンボス加工により光触媒粒子が下地への埋没することで、光触媒粒子の大気中の有機物の分解性能(ガス分解)が発現するまでの時間が長くなったと考えられる。
【0109】
一方、実施例1〜4は、ケミカルエンボス加工による凹凸模様を形成したものであり、アセトアルデヒドの濃度低下が始まる時間(初期化時間)が9時間前後と短かった。これは、ケミカルエンボス加工により光触媒粒子が下地への埋没することなく、光触媒の大気中の有機物の分解性能(ガス分解)が発現するまでの時間が短くなったと考えられる。つまり、ケミカルエンボス加工では、光触媒層の初期性能発現までの時間(初期化時間)が短縮されたことがわかった。
【0110】
更に、表面保護層をパターン形成する実施例3、4では、初期化時間を短縮できるとともに、発泡積層シートの耐汚染性を向上させることができた。
【符号の説明】
【0111】
1.基材
2.非発泡樹脂層B
3.発泡剤含有樹脂層
4.非発泡樹脂層A
5.発泡抑制剤層(着色剤を含んでも良い)
6.プライマー層
7.光触媒層
8.絵柄模様層
9.表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層及び非発泡樹脂層Aが順に形成され、前記非発泡樹脂層Aの上に発泡抑制剤層及び光触媒層を有する積層シート。
【請求項2】
前記非発泡樹脂層Aの上に、更に表面保護層が形成されている、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記発泡抑制剤層が着色剤を含む、請求項1又は2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記発泡抑制剤層と前記表面保護層とが同調するように形成されている、請求項2又は3に記載の積層シート。
【請求項5】
前記基材と前記発泡剤含有樹脂層との間に非発泡樹脂層Bが形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の積層シート。
【請求項6】
前記基材は、繊維質シートである、請求項1〜5のいずれかに記載の積層シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の積層シートの前記発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−56436(P2013−56436A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195149(P2011−195149)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】